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参考人(河合又平君) 本件につきましては、私たちの窯業労働者がこの問題を重要視いたしまして、窯業労働者の大半を占めますところの東海地方の窯業労働者は、その全員が声を大にいたしまして、この自由販買制、この制度が布かれることについて非常なシヨツクと恐怖を持ちまして、先に当
委員会にも東海地方
窯業労働組合連合会の名を以て陳情に及んだ次第でございます。なお、去る十八日におきましては全国
窯業労働組合連合会の中央執行
委員会の席上におきましても、この問題を非常に重視いたしまして、先に陳情いたしました東海窯連の
主張と同じういたしまして、以下申上げまするような状態を当
委員会に陳情いたしまして、善処方をお願いするということが決議されて、その代表といたしまして私たちの訴えを申上げたい、かように
考えるものでございます。この産金業者が
主張しておりますところの
自由販売制というものは、実施しないでおいて頂けないであろうかということが私たちのお願いしたい第一点でございます。
第二点といたしましては、若しこれが避けられないといたしまするならば、なおこの価格に対します一定の
制限を附しまして、例えば現在の一割値上げまで程度のところで
考えて頂けないものであろうか。なお同時に少くとも輸出陶磁器、この問題に関しましてはこの輸出を阻害しないような何らかの方針、特例を設けて頂きたいということがお願いする主要な要点でございます。
従いまして私たちの同志でありますところの金鉱連の労働者諸君の本件につきますところの切々たる要望につきましても、私たちはその意を一応諒とするものでございまするけれ
ども、半面私たちもの窯業に
関係しておるところの輸出陶磁器
生産をするところの労働者のこの
立場においても慎重に御配慮願いまして御検討を願いたいと思うわけでございます。
全国の輸出陶磁器業者の
生産に排
つている労働者は、およそ十万人の大半を占めておる地域が東海地方の窯業労働者でございますけれ
ども、国内に我我は
生産されるところの原石、或いは粘土等を立派な焼物にいたしまして輸出いたしまして、貴重なドルを獲得することに対しましては渾身の努力を払
つて現在まで参
つて来おるのでございます。
併しながらこの輸出用の陶磁器の絵付に対しましては絶対に欠くことのできないところの金地金の価格がこの場合上
つたというようなことになりますならば、現在の産金業者たちが提唱しておられるような自由価格の線では全くこれは大きな打撃であり、致命的な影響をこうむる。従
つてこれが輸出の障害となり、我々の生活が非常に脅かされるということは火を見るよりも明らかであるということが
考えられるわけでございます。
私たち窯業の労働者といたしましては、この輸出
産業に占めておるところの我々の任務の重要性を認識いたしまして、且つその誇りを持もまして、他
産業労働者の収入に比較いたしまして、現在我々の労働者の収入は二〇%、或いは三〇%を下廻
つておる賃金を得て、甘んじて我々の任務を果しておるのが現状でございます。特に愛知県或いはその方面の瀬戸方面、或いは九州の有田地方のこの輸出陶磁器労働者の賃金べースは六千円というような飢餓賃金でございます。なだ私たちはこの労働者の自覚の上に立ちまして、自重して現在まで来たのでございますが、そうした苦しいこの生活の中から今日の成果を得るべく信じて努力して参
つたのでございます。かような状態の下におきまして更にこれ以上の打撃を与えられるということになりますれば、私たちの事業といたしましてはその従事する労働者の生活が根抵から破滅に陥
つてしまうというようなことを申上げても、あえて過言ではないと思うわけでございます。
更に陶磁器の輸出の衰亡ということは、私たちも十万人の労働者の生活を脅威するばかりではなくして、延いては
関係労働者たもの陶土の採掘であるとか、或いは金液を製造するものであるとか、含金絵具を製造するものであるとか、或いは転写紙を作るもの、本函を作るもの、或いは紙函を作るものの多くの労働者がこのあとに続いておるのでございます。特に陶磁器の製造は、中小
企業或いは家内工業というものがそのうもの大半を占めておるのでございます。近代
産業と違いましてその内容は手工業的な要素を多分に含んでおるのでございまして、その作業を簡單に
合理化して行くような余地が極めて少いのでございます。私たちの労働組合は、この戦後我々の使命に徹しまして、率先して
生産復興運動を提唱いたしまして、作業の
合理化、
生産の増強に努力して参りました結果、よくイギリス、ドイツ、或いはチエツコ等の諸外国の業者の製品との激しい競争を克服いたしまして、年間三千五百万ドルというもののドルを稼いでおるのが現状でございます。戦前昭和十二年に比較いたしますと、昭和二十六年はアメリカの輸出のみについて比較して
考えまするならば、実に一四二%に輸出を上昇しておるのでございます。この場合アメリカの
物価を戦前の二倍として
考えたものでございます。かような点をよく御認識して頂きたいと思うのでございます。
更には又以上述べましたような窯業労働者の賃金べースは、
自由販売制を
主張する産金労働者の現在のベースよりもなお相当低い現状であるのでございます。同じ働く者といたしまして全金属労働者諸君の賃金ベースが高いのを我々はねたむ者ではございませんけれ
ども、
自由販売制の実施によりまして更に低い賃金のベースを余儀なくされ、或いは根本的な生活の破綻を懸念するという
立場から、私たち窯業の労働者の存在することも非常に危険な状態に曝されるというような
意味を
考えまして、ただ一方的な
主張でなくいたしまして、大局的な見地からこの問題を御賢察願いたいと思うのでございます。
なお、御
参考までに他
産業の賃金べースを簡單に比較さして頂きますと、陶磁器の製造業の二十六年五月現在の賃金を申上げますと、八千七百円を中心にいたしまして、これを一〇〇として対照いたしますと、鉱業
関係の賃金べースは一万一千九百円に上
つております。従
つて一三六%になるわけでございます。金属工業
関係といたしましては一万四千三百円ベース、従
つて一六三%、
機械器具工業
関係といたしましては一万一千六百円、一三二%、化学工業にこれを対照いたしました場合におきましても一万一千九百円、一三六%、以下いろいろございますけれ
ども、お手許に差上げてあります
資料にその数字がまだ載
つてございますので省略いたしますが、今申上げましたように私たちの賃金は非常に他
産業に比較いたしまして低いものでございます。
かような我々の中小
企業たる輸出陶磁器
生産並びに業態の現状は、輸出陶磁器は愛知、岐阜、三重、三県下において約九〇%の
生産をしておるのでございます。その工場は四千六百を数えております。従業員の数は約十万を数えております。そのうち従業員が二十人以下の工場が八四%を占めておる。私たちはかような業態の中に主原料たる、先ほど申しました陶土の採掘、或いは金液、含金絵具、転写紙、本函、ボール函等の業者を加えまして、或いはその家庭内職者等を包含して
考えますれば、二十万以上に上るのではなかろうかとかように思うものでございます。かような多数の零細なる手工業者がかような
生産に従事して多額の外国ドル資金を稼いでおるわけでございます。従いまして私たちの
産業、私たちの労働者同志大勢の者が零細な
企業、零細な家内工業的な中に働いております者でありますから、中央におきましては非常に私たちのこの血の叫びの反映が微々たるものではなかろうか、かように懸念いたすものでございます。併しながら先ほ
ども申上げましたように、私たちは戦後輸出
産業の一端を担いまして、与えられた輸出陶磁器
生産のために献身的な努力をいたして参
つたのでございます。なお且つ
日本の経済安定のためにも将来私たちの使命の重要性を痛感しておるものでございます。
かような見地から今回の問題を私たちは挙
つて重要視し、挙
つてこの問題に大きな関心を持つと共に、以上申上げましたような観点から是非この零細な
立場の働く者のこの血みどろの声をお取上げ下さいまして、この問題の善処方を要望いたしまして、
委員の
皆さんの御賢察の下に安定した生活が立ち得ることを切に切にお願いいたしまして私の申上げることを終ります。