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参考人(中島
優治君)
只今委員長から御紹介頂きました福井県地方繊維産業
労働組合連合会の事務局長中島でございます。
本日私ども陳情団の者が各方面に陳情に上りまして、私ども現下非常に不況のために我々生活そのものの危機が参
つております、そのことを陳情いたしまして、何とか
政府当局においてもこの点を一刻も早く善処して頂きたいと、かように考えて陳情に上
つておるものでございます。そこで私本日のこの機会に私どもが、
労働組合の者がこの陳情、請願書に書いてございますような業界そのものが取扱
つておりますその問題について、真劍に
労働者大会を開催いたしましてまでもこの問題を取上げ、ここに参
つたという点についての
事情につきまして皆様の御了解を得、御協力をお願いしたい、かように考えておるものでございます。
御
承知のように福井県はその主産業が繊維産業でございます。而もその繊維産業の殆んどが絹、人絹
業者でございまして、全国のこの種の織機台数約二十万台と言われておりまするが、そのうちの五万三千台は福井県にあります。その殆んどが絹、人絹
関係だということに
なつております。そこでそれに従事しております
労働者の
実態はどうであろうかと申しますというと、これは昨年の十月、十一月分の
賃金を
企業の規模別に
調査をして見まして、約一万名の
調査を行いました。その結果によりますというと、最低一カ月
賃金が千二百円、平均が三千四百六十二円というような誠に信じがたいような数字を示しております。而もその
労働時間は十二時間というところの、平均十二時間でございます。平均十二時間というところの、これ又基準法云々というような問題よりも非常に遠い夢のような数字を示しておるような
状態でございます。そして又これが十二月になりますというと、先ほど申上げました数字は名目
賃金でございますが、十二月に実質手取り
賃金を調べてみましたところが、最低月五百円でございます。平均二千七百円というような数字を示して参りました。現在官公吏の
賃金ベースが一万円以上をまあ上廻
つておるような
状態であり、又繊維産業
労働者の全国
賃金も五千七百円平均というような形を示しております。この
事態におきまして、
只今申上げましたような形で私どもの生活はなされておるような
状態でございます。而も十一月から十二月に入
つて上昇いたしまするならば、昇給いたしまするならばいいのですが、だんだんと下
つて来ておるような
状態でございます。このだんだん下
つて来ておる、だんだん惡化して来ておるという
状態を失業保險からの給付額から見ましても、その実証を得ることができると思うわけでございます。六月におきまして三万八千名、失業保險の給付額は一日平均一人が百四十二円をまあ示しておりましたが、昨年の十二月になりますというと四万五千名に
増加いたしまして、その給付額は一日一人平均百十円に低上いたしました。これを見ましても、この
賃金状態が下
つて来ておるということが証明されるわけでございます。そこで現在福井県の各市町村或いは都市部におきまして、特殊飲食店とか或いは又旅館その他接客婦あたりの身許を
調査して見ますというと、最近にその業につきました者の前職はすべてどこどこの機屋にお
つたというようなことを
言つておるような
状態でございます。私が工場を以前に廻りまして、
労働運動をや
つておりましたそのときに顔見知りの人
たちが、この間まで工場にお
つたと思うような人
たちが、あちらのうどん屋或いはこちらのカフエーというような所に働いておるような
状態であります。又子供を抱えた未亡人
たちが而も今申しましたようなそういう職業についていなければ死んでしまうというような
状態に追い込まれて来ておるというのが、今日の我々北陸の
中小企業繊維産業に従事しておりまする
労働者の
実態でございます。このことはこれはひとり我々
労働者の問題だけではなくして、
国家的に見ましても大きな社会問題であろうかと存じます。私ども
労働組合といたしましては、従来の
労働運動の観点から見てみまするならば、我々はこういう生活ができるのであるから、
経営者に対しまして
賃金の要求をし、手当の要求をいたしまするのが、従来の
労働運動の簡單なことかと存じまするけれども、それをなしまするには余りにも
経営者自体が薄弱でございますということは、皆様自身御
承知の通りでございます。ない袖は振られないというような
実態が福井県の弱小機業の
実態でございます。昨年の十二月現在で国警のほうで調べて頂いた数字によりまするというと、借金の抵当に
なつておる工場と、
賃金の未拂をや
つております職工を残しまして夜逃げその他によりますところの行方不明に
なつた
経営者が四十二名にも上
つております。こういうような
実態で、私どもはもはや
経営者と
労働者の問題ではないということに着眼いたしました。健全な
労働組合のあり方というものは、このときにおいて労使の問題じやなくして、我々労使一体に
なつてこの問題のそのもとに対して解決に努力することが我々の
使命なんだ、こういうようなことに着眼いたしまして、今年の一月二十七日、福井県の福井市におきまして同種産業の
労働者蹶起大会を開催いたしまして、この請願書に書いておりますような問題を決議いたしまして陳情に参
つたような次第でございます。私どもこの陳情に書いてございますような問題につきましてはズブの素人でございまして、專門の皆様の前で私どもがこの問題を申上げることは誠に僭越でございます。ただ今申上げましたように私どもは、私どもがなぜこの問題を取上げて、この問題のためにわざわざここに参
つたかという点の我々の気持をお汲み取り願いたいと、かように考えるわけでございます。
そこでこの請願の
内容に入りまするところの簡單に
状態を御
説明申上げます。私どもが従事しております、俗に言う機屋の
状態でございますが、その機屋のその最も重要なことは、その機屋が使
つております糸の値段が安定していることであろうかと思います。然るにその原糸の
価格というものは非常に短い期間に上
つたり下
つたり、どれが本当の糸の値段であるやらさつぱりわからないという
状態を続けて参りました。その原糸の
価格の推移は本文に書いてございますので一つ御
検討願いたいと思います。こういうような
状態でありまするならば、如何に
経営者が
経営の合理化をいたしましても、如何に私ども
労働者が真劍に
労働を提供いたしましても、決して
経営の自主的運営ということもできませんし、又その
採算も合わないような
状態でございます。
従つて私どもは健全な
経営の樹立ということを願うがばかりに私ども苦しんで参りました。原糸の
価格の安定というものについて当局におきましては何か一つ適宜な
措置を講じて頂きたい、かように一番の一項目に書いてあるようなわけでございます。
そこで二番の問題といたしましては、なぜこういうような値段が上
つたり下
つたりしたか、或いは又非常に上
つたかというような点を考えてみまして、これを正常な
立場に復帰いたします一つの方法を二番の項目に書いて見たわけでございます。原糸が化繊六社の作られます原糸と、現在その下にぶら下
つております全国二十万台のこの織機の数から行きまして、約五万台が過剩であるという点も書いてございまするが、少い糸をたくさんの者が使う、こういうようなことから自然に糸の値段が釣上
つて来ておる、こういうようなことであります。そこでこの計画消費立法ということにつきましては、この糸の惡質な一つの、ブローカー的な問屋の
廃止ということもこの中に意味が含まれておりますし、又一つの原糸
会社と、良心的な商社と良心的な機屋との三者の一元化をここで何とかして頂かなければ、やはり如何なる方法を講じられても今までのようなことで、糸の値段は釣上
つて行くのじやないかというような点を考えて二番の問題に書いてあるようなわけでございます。
それから三項に至りましては、その一つの方法といたしまして、
中小企業協同
組合を強化いたしまして、この協同
組合を中心として、小さな弱小機業を救
つて頂きたいというようなことでございます。福井県の機屋さんの数は約二千工場ございます。そのうち二十人以下というのが四九%ございます。それから五十人以下というのがすでに九〇%に
なつております。そういうような
実態でございます。誠に小さい者が無数にたくさんあるというような
実態でありますので、これに対しまして一番、二番の問題を是正して行きますには、やはり
中小企業協同
組合を作らせて、而もその協同
組合を中心とした
経営をやらせなければこの再建はできないというようなことは、これは火を見るよりも朗らかでございます。併しながら現在の協同
組合法に至りましては非常に薄弱な
実態と存じます。そこでこの
中小企業協同
組合をもう少し條文よりも、実際の
施策を行います、融資或いはその他の方法を行います場合におきまして、協同
組合というものを重点的に、もう少し重点的にお考えになるような方法を講じてもらいたいと同時に、現在各業界において言われておりますところの協同
組合法の
改正或いは事
業者団体法の
改正につきましても、この点を十分一つ御勘考の上、一つ立法その他の処置を講じて頂くようにお願いしたいと、こういうことが三項に述べてあるようなわけでございます。
それから四番といたしましては、生産資金の枠のこれは擴大についてということで、現在私ども小さな機屋の者が生産資金を借り受けておりますけれども、それはただ單にたくさん貸しているというようなことを言われるかたもあるわけでございますが、我々
中小企業家にしてみますというと、それはただ單に今までの穴埋めを少ししたのだということに過ぎません。今後の生産資金に
なつておらないというのが実情でございますので、この際私どもは余りにも傷が大き過ぎるわけでありますが、生産資金をもう少し実際本当に生産資金になるような金を貸してもらわなければならないというようなことも我々はここにお願いするような次第でございます。
その次に五番目の問題でございますが、これは従来の
業者はこの問題については
言つておりません。併しながら今回私どもの
労働者大会におきまして初めてこの問題を
提案し、この問題を決定したような次第であ
つて、特に注目されるべき問題ではなかろうかと思うわけでございます。従来今の四番で申上げましたような生産資金の融資というものは、その機業家に、その
経営者に対しまして物件担保その他によ
つて貸付が市中銀行或いは中金等からなされてお
つたわけでございますけれども、その場合に現在の福井県或いは北陸、この各機業家におきましてはその担保の能力というものが限度に来ておるというのが
実態かと存じます。一番の項で申上げましたように、糸の値上りその他によりまして、この原糸
価格の変動によるところの損害を受けた額というものは、すでに機業家の
企業根源を殆んど壊滅しておるというような
状態まで大きな傷を負
つております。機業家にしてみますれば、今生産資金を借受ける場合におきまするところの担保能力を持
つておらないというのが
現状でございます。そこでそのままに放置しておきまするならば、これはもはや倒産或いは
労働者の失業、餓死ということに相成りまするので、私どもそこに働いておりまする民主的健全な
労働組合のあり方といたしましては、今ここでもう少し生産資金を與えれば完全にこの
会社は立上るのだがというようなことがはつきりわか
つておりましても、担保能力がないばかりに倒産しなければならない、私どもは餓死しなければならないというような
状態にある工場も無数にあるのでございます。そこでその場合に銀行におきましては担保能力がないからこれは貸せないというのも当然でございますが、その場合に一番担保能力を増しますのが、何を言いましてもそこに従事しておりますところの熱意を持
つた労働者の団結以外には信用の価値のあるものはないかと存じます。そこで私ども
労働組合が健全な
労働組合であるということを、この所管官庁において認められた場合におきましては、その
労働組合の団結保証によ
つて、信用保証によ
つて生産資金をその機業家にお貸し願いたい。かようなことを五番目の問題で提起しているような次第でございます。この問題につきましては
国家的にはまだなされておりませんけれども、地方的に見まして、北陸の新潟県におきましてもこの問題がなされているような
実態でございます。新潟県の例を見ますというと、県費を一千万円新潟信用
組合に預託しまして、丁度このような
賃金の未拂いその他あるような所に対しまして、
労働組合のある所に限
つて、而もその
労働組合が健全な
労働組合であるということを労政事務所において認定いたしました場合において、その裏付けを以て無担保で信用融資をしたようなことが去年も今年もありました。そのときの結果をよく
検討して見ますというと、物件担保で機業家に貸した金は焦げついてお
つたけれども、その
労働組合の信用保証で融資したものは一円も、一銭一厘も焦げついておらないというような実情であるようなわけであります。
従つて私どもはこの地方的に二、三取上げられているこの処置を
国家的にお考え願
つて、国の一つの
施策としてこの問題をお取上げ頂きたいということを私どもは特にお願いしたいのであります。
その次に六番目の問題といたしましては、これは私どもやはり絹、人絹、特に化繊は、その従来の市場がポンド地域でございます。そこでポンド地域に対する輸出制限というものが法的には何らないではないかというように言われておりますけれども、その
貿易の資金枠、その他ポンドの裏付けのドルというような問題のことから、非常に自然発生的に輸出が制限されるというようなことを聞いております、我々はそういう問題は、一つの大きな国際政治の下におけるところの国策として大きな問題であろうとは思いますけれども、そういう大きな問題からいたしましても、私どもの現在従事しておる化繊
関係の機屋、弱小機業家或いはその
労働者が直接それで苦しんでおりますので、その点を十分御
検討を願
つて、このポンド、ドルの問題或いはこのポンド地域に対する輸出の問題も御
検討を願いたい。かように考えて六番目の問題をここに御
提案申上げてお願いをしておるような次第でございます。
大体本文に対しまするところの
内容につきましては御
説明申上げておりませんけれども、その点は先ほど申上げましたように、私どもはズブの素人で、皆様方はいずれも御專門のかたがたでございますので、省略させて頂いたわけでございまして、本日ここで我々がこういうことをやるに至
つたという点の私どもの気持を皆様にお訴えいたしまして、よろしく御了解と御協力、及び私どものこの陳情に対しまするところの何らかの処置をおとり下されんことを切にお願いいたす次第でございます。