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参考人(
田中榮一君)
只今全国の
自治体公安委員会の
連絡協議会の副
会長として、
大阪の
神宅公安委員長から、今回の
警察法一部
改正に関する
自治体公安委員会側の
意見は詳しく申上げましたので、私から特にこれに敷衍して申上げることはないのでございまするが、ただ
全国自治体警察長連絡協議会会長といたしまして、
警視総監ではたくして、
全国自治体警察長連絡協議会会長として、各
自治体警察長が今次の
警察法改正に関しまして、いろいろ
意見を申述べ、何か
機会があるならば、適当の
機会に
意見を具申してもらいたいということをかねがね私の所に申出
てございまして、その大部分は
只今大阪市の
神宅公安委員長から具体的に申上げたことで全部尽きておるものと考えておりまするが、ただ二、三私から補足的に申述べたいと存じまするのは、今日の
社会状態にて、皆さまも御
承知のように毎日
各地におきまして、いろいろな
集団暴行事件、或いは
騒擾事件等が発生をいたしております。この場合におきまして、一体どういう所に多く起るかと申しますると、大体におきまして、
自治体警察の置かれておる地域において最も頻繁にこういつた
事件が頻発いたしております。
東京を始め
大阪、
大阪附近周辺の
都市並びに京都、名古屋、そのほかいわゆる
都市警察の
範囲におきまして、
相当こうした
事件が頻繁に起
つております。従いまして、
自治体警察官といたしましては、恵まれざる装備、恵まれざる
財政、又そうした点を克服いたしまして、
身命を賭して
只今治安の
第一線におきまして活躍いたしておりまするが、勿論この点におきましては、
国警も同様に
治安の
第一線において
身命を賭して闘
つておりまするが、併しながら現在の
状況から見ますると、どうしても
都市警察の
範囲内におきまして、こうした
事態が非常に起りやすいということでございます。又現在の
自治体警察は、昨年の
警察法の一部
改正に伴いまして、一千余の小
自治体警察が廃止せられまして、現在四百七十七の
自治体警察が存続いたしておりまして、そうしてその有するところの
警察力は八万五千に上
つておりまして、現在の
国家地方警察の四万数千に優ること、その倍の
警察力を以て現在の
治安に面していろいろ苦心をいたしておるような
状況であります。従いまして、私
どもとしましては、今次の
警察法の
改正につきまして、少くともこうした大きな
治安面を持
つておる、
責任を持
つておる
自治体警察側の
意見というものは、
十分一つお取上げ願い、又この
意見を十分に尊重して頂きたいという念願をかねがね持
つてお
つたのでありまするが、併しながら、今次
警察法につきましては、いろいろ緊迫した
事情もあろうかと存じまするが、
前回の
警察法改正のときには、十分に
只今神宅公安委員長が御説明のことくに、両者十分に話合いをつけて、そうして
改正に従事したのでありまするが、今回はそうでなくして、
自治体警察側の
意見というものは殆んど述べる
機会も失しまして、漸く本日この参議院の
地方行政委員会の席上におきまして、我々の
自治体警察側の
意見を述ぶる
機会を与えて頂きましたことは、少くともこの八万有余の
自治体警察官としては、非常に私は無上の光栄とし、又且つ喜びとするところであろうと考えております。さような
状況でございまして、この
前回の
警察法改正につきましては、
警察長みずからが
相当表面に立ちまして、
警察法に対し批判を下し、又
反対もいたしました。併しながら、今次の
状況から見まして、
警察長みずからがこうしたことに没頭することは面白くない。かような考えからいたしまして、今回の
警察法改正につきましては、全員こうしたことは全部
公安委員会にお任せして、我々は先ず
治安の維持に最善を尽すべきである。かような点から何らこれに対して批判もいたしませんし、又
反対の意思表示もいたしておりません。この点は
一つ御了承願いたいと思うのであります。併しながら、
警察長みずからといたしましては、今次の
改正につきましては、いろいろな批判を持ち、又いろいろな
反対の
意見を持
つておるようであります。併しながらこれにつきましては、先ほど
神宅公安委員長から具体的に申述べましたので、それに尽きておりまするから、個々の問題については私から申上げるのを避けたいと思います。
それから、なお今
一つ申述べておきたいと存じまするのは、この
指示の問題でございます。
政府原案によりますると、六十一条の二に、「
内閣総理大臣は特に必要があると認めるときは、
国家公安委員会の
意見を聴いて、
都道府県会安委員会又は市町村
公安委員会に対し、
公安維持上必要な
事項について、
指示をすることができる。」と、かように明記されておるのでございまするが、この
公安維持上必要な
事項というものにつきましては、勿論私はこのいろいろな内乱、
騒擾的なそうしたものであろうと考えておりまするが、併しこれも解釈の如何によりましては、
公安維持上必要な
事項ということについて、すべて
意見が一致すれば何でもできるというようなことになると、勢い全部
内閣総理大臣において何でもできると、勿論
国家公安委員会の
意見を聞くからして、さようなことはないという御
意見は十分わかるのでありまするが、併し
公安維持上必要な
事項というだけでこれを実施するということになりますると、現在の
立案された御
当局のおる間はそれで結構だと思うのでありますが、やがて人が変り代が
変つて参りますれば、こうしたことがややもすれば非常に広く解釈せられ、それがときに濫用される虞れもないではない。こうした場合におきまして、一般の国民から、ややもすれば
警察国家再建の疑いを以て見られるというようなことにもなる虞れもありまするので、
警察長の全員の
意見としましては、この六十一条の二というものに対しまして、
相当強い
制限を附して、将来こうした心配のないような確固たる方法を講じてもらいたい。かような
意見が非常に強く出ておりまするので、これは私から
一つこの点を申上げておきたいと存じます。
それからいま
一つ、これも先ほど
神宅公安委員長から詳しく説明があ
つたのでございまするが、この
指示の場合における
国家公安委員会の
意見を聞いてということで、
国家公安委員会が
一つの諮問機関にな
つておりまするが、我々の考えといたしましては、この諮問機関というのは飽くまで客観性を持つべきでないかと思うのであります。広く社会情勢をあらゆる点から総合的に判断をして、そしてそこに適正妥当なる結論を出して総理に答申をすると、それによ
つて総理が
指示すると、そこにこの
治安維持極めて適正妥当なる
指示が行われるものと考えております。勿論
国家公安委員会にいたしましても、適正妥当なる御
意見を答申されるものと考えておりますが、更にこれに対しまして、少くともあらゆる点から検察的な
意見、それから今度新たにできました公安調査庁的な
意見、それから又実際に
治安の取締に従事しておりまする
自治体警察の代表の
意見と、こうしたものを取入れまして、そうして
総理大臣に極めて適正妥当なる
意見を具申いたしまして、これによ
つて指示してこそ、初めて適正なる取締、適正なる
指示ができるものであろうと考えておるものであります。
それからもう
一つ、この
指示をする部局の編成でございまするが、この
政府案によりますると、
国家地方警察がこの
指示に関する
事務を処理するということにな
つておりまするが、勿論
国家地方警察がこの
事務を処理されることも結構でございます。併しながら現在の
警察法の第五十四条の
規定から申しますると、市町村
警察は
国家地方警察の
運営管理又は
行政管理に服するものではないということにな
つております。
従つて自治体警察は、
国家地方警察の
指揮監督を受けないと、これはもう現
警察法のはつきりした原則でございます。
従つて指示することが、然らば
運営管理、
行政管理になるかと申しますると、決して私は
指示することが必ずしも
国警が
自治体警察に対して
行政管理、
運営管理をするものでないことは、これははつきりいたしておるのでありまするが、併し形の上におきまして、
国家地方警察が
指示の
事務を取扱うということは、形の上において
行政管理或いは
運営管理のような点に走る虞れがあるのではないかと、殊に中央部におきましては勿論そうした考えはないと思いまするが、
国警の末端部におきまして、こうした誤まつた考えを持つことによりまして、いわゆる
国家地方警察が
自治体警察の上にあ
つて、優位にあるという感じを一般国民に与え、又その衝に当る者自体がそうした錯覚を起すことによりまして、今日の民主
警察の原則を傷つけるということに相成るのであります。
従つてこうした誤まりを犯すようなことは成るべく未然に防止したほうがいいのではないか、かような点から申しまして、この
指示を掌る部局というものはやはりこれは独立して
内閣総理大臣の下に設置しまして、これは必ずしも大きな局であるとか、課であるとか、そういうものでなくて結構でありまするが、これには少くとも
国警も
代表者も入るであろうし、場合によ
つては
自治警のほうからも入る、又検察のほうからも入るというような、組織はいずれにいたしましても、何かそうした
総理大臣の直属の
一つの部局を
設けられまして、その部局が一切の
指示に関する
事務を掌り、そうして諮問機関に対する一切の
事務を掌
つて、そこできめたことを
総理大臣に答申をいたしまして、そうして
総理大臣がこれを流せと言つたときに、その部局が
国家地方警察並びに
自治体警察に平等にこれを流して行くと、勿論現在の通信施設は全部
国警がこれを管理いたしておりまするからして、実際の
事務は国家
警察がこれをやることは、これは差支えないのでありまするが、建前といたしましては、現在のこの
国家地方警察、
自治体警察というものを存置するこの
法制の上から申しますると、飽くまで両者平等でなくちやならんのであります。
従つてこの部局を通じまして、平等に
国家地方警察並びに
自治体警察にこれを流す。実際は、通信は
国警がお待ちにな
つておりますので、
国警がお流しになることは結構でございまするが、建前としてはそういう取扱をすべきが妥当ではないかと、かように、私
どもは考えておるわけであります。なお最後に、この今回の
政府案によりまする第五十二条の三でございまするが、「特別区に存する区域における
自治体警察に要する経費は、都の
負担とする。但し、
国庫は、その予算の
範囲内においてその一部を
負担することができる。」と、これは首都
警察としての警視庁に対する予算の
範囲内において
国庫が経費の一部を
負担して頂くのでありまして、これは首都
警察をお預りいたしまする私といたしましては、従来この点につきまして、
政府並びに衆参両院のそれぞれ担当の
委員会にかねがね陳情もいたしておりましたし、又都知事並びに都の
議会当局者も、かねがねこの点につきましては陳情もいたしておりまして、この点が実現さして頂けましたことは、誠に首都
警察といたしまして感謝に堪えないのでございまするが、ただこれは
自治体警察全体と申しますると、現在地方の
自治体警察におきましては、一般平衡交付金によりまして、大体
警察署の財源を賄
つておるわけでございます。
従つて大
都市に行くほどその一般平衡交付金の交付率が少い。小
都市は比較的恵まれておりまするが、大
都市は全然ない。殊に
大阪のごときは、警視庁はこれによ
つて或る程度
国庫負担ができるのでございますが、京都、名古屋、神戸のような所は、一部でも平衡交付金が交付されまするので、
財政的に援助があるのでありまするが、
大阪は全然ないのであります。こういう点につきまして、
大阪以外の、
大阪を初め、小
都市警察におきましても、やはり五十二条の二のような
規定によ
つて、全体が
一つ装備の改善のために地方
自治警の経費を
国庫において御
負担を願う。それによ
つて装備の強化を図
つてもらいたい。こういう強い要望がございまするので、この点は
自治体警察連合
協議会
会長の立場におきまして、特に
一つ御配慮のほどをお願いいたしたい。かように考えておる次第でございます。
以上極めて簡単でございまするが、大体紳宅
委員長から詳細お話がございましたから、私からは若干以上敷衍いたしまして、説明に代えた次第であります。