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衆議院議員(
野村專太郎君)
只今御審議中の
地方自治法の一部を改正する
法律案に対して、
衆議院が加えました
修正について便宜私からその理由を申述べたいと存じます。
政府が今回の改正案を提案いたしましたのは、新憲法と共に
地方自治法が施行せられてから満五年、時あたかも我が国の独立の機に際会いたしまして、ここに従来の
地方自治の実績と将来の新情勢とに深く思いをいたし、その根本的、全面的改革は他日に期するとするも、この際できる限りの一応の改正をしようとするものでありますので、その
内容は多くの重要問題を含んでおり、なお考慮を要するもののあることは各位の御承知のことと存じます。従いまして改正事項のうち、なお十分な検討を加える必要があると認められますものは今後の
研究調査を待
つてその結論を将来に期することとして見送り、又改正の結果、法の実施、運用において支障があり、或いは問題となる懸念のあるもの、又は現在の実際との間に調整を図る必要があると認められますものは、
政府の改正提案の趣旨は尊重しつつも、これに適当なる
修正を施そうとするものであります。先ず
修正の第一点は
地方議会に関するものでありますが、議員定数の基準に関する第九十條、第九十一條の改正規定を改め、議員定数は
現行通りとする。但し都道府県議員についても市町村議員におけると同じように、
條例を以て特にこれを減少することができるように改めるのであります。議員定数については、これを半減するというような
地方行政調査
委員会議の勧告の線もあり、改正
原案はおおむね戦前の定数を
目標といたしてありますが、議員定数の
増減は民主政治の中核たる議会制度の重要な問題点であり、現在の
地方議員の任期はなお両三年を余しておりますので急を要することではなく、問題の重要性に鑑み、将来の
研究に任す
意味においてこの際は一応見送ろうとするものであります。次に議会の運営に関しましては、第百一條の
改正部分を削り、第百二條の
改正部分を改めて
現行通り定例会制度を存続することとし、ただ
現行法が「定例会は、毎年六回以上これを招集しなければならない。」こととな
つているのを「毎年四回招集しなければならない。」ことに、改めるのであります。これは申すまでもなく議会活動の機会を十分に法律上保障すると共に、実際面との調和を図り、かねて運営の簡素化に資せんとするものであります。なお第二百三十四條第一項に後段を加え、「普通
地方公共団体の長は、遅くとも
年度開始前、都道府県及び第百五十五條の市」、即ち五大市にあ
つては、「三十日、その他の市及び町村にあ
つては二十日までに当該予算を議会に提出するようにしなければならない。」とするのであります。これは
政府の改正案が、通常会と臨時会の制度をとり、通常会は、毎年二月又は三月にこれを招集しなければならないこととしようとしているのを、この
修正案は
現行通り定例会制度をとることにいたします関係上、
年度予算を付議すべき議会の招集の時期の調整を図ろうとするものであります。
修正の第二点は都道府県の事務合掌のための部局に関するものであります。即ち第百五十八條の改正規定を改めて、都の置くべきものの中に更に「主税局」、「港湾局」の二つを加え、道及び人口二百五十万以上の府県の置くべきものの中に、「建築部」を加えるように
修正するのであります。これは東京都における税務行政及び港湾行政の規模及びその特殊性に考慮を拂うと共に、大府県における住宅及び建築行政の重要性に鑑み、その行政の円滑なる処理に対処せんとするものであります。
修正の第三点は特別市に関するものでありますが、先ず第二百七十一條は第四項中「法律又は政令」とあるを「法律又はこれに基く政令」と改正する部分のほかの改正はこれを削除し、第二百七十三條第一項の改正規定に必要な
修正を施すと共に、第二百七十六條の改正に関する部分を削
つて特別市の行政区の区長は
現行通り公選とし、選挙管理
委員会は存置することとするのであります。その理由は、実際に徴しその必要が認められるからであります。
修正の第四点は特別区に関するものであります。先ず第二百八十一條第一項の改正規定を「都の区は、これを特別区という。」に改め、特別区の性格に変化を與えるような印象を避けることとすると共に、特別区の行うべき事務については、区民に身近なものは成るべく区に行わせるべきでありますから、すでに現在区で行な
つている事務は今後引続き行わせることが妥当と考えられますので、第一百八十一條第二項の改正規定の特別区の行うべき公共事務及び行政事務を法定したものの中に更に診療所、小売市場、共同作業場を設置し及び管理することを加えるように
修正しようとするのであります。次に特別区の区長の任命制の問題は最も論議の対象と
なつたところであり、法理上も実際上も影響するところが多いと思います。
政府の改正案が大都市行政の一元化に大いなる考慮を拂い、兼ねて行政の簡素合理化を図ろうとすることはよくわかるのでありますが、一面従来の沿革や実際面をも併せ考えるとき、両面の調整を図り、行政の統一、簡素化と住民の意思及び議会政治との調和点を見出すことが必要と考えられますので、改正案が、第二百八十一條の二で、特別区の区長は都知事が区議会の同意を得て選任することにな
つているのを、特別区の区長は都知事の同意を得て区議会がこれを選任することに改めるのであります。なおこれに関連して、現在区長の職にあるものはこの改正の規定にかかわらず、その任期中はなお従前の例によ
つて在職するものといたそうとするものであります。この経過規定は附則において定めるものであります。次に特別区の財政に関連する事項でありますが、従来、ともすれば区の処理すべき事務に要する経費の財源について都と区との間に円滑を欠いたような傾向がありますので、この際明文を以てその弊を根絶やすため、第三百八十二條の改正に関する部分中「特別区について」を「特別区の事務について特別区相互の間の調整上」に改めると共に、更に一項を附加して区及びその機関が法律上又は委任によ
つて処理しなければならない事務を処理したり、管理したり、執行したりするために要する経費の財源については政令の定めるところにより特別区の
意見を聞いて
條例で都と特別区及び特別区相互間の調整上必要な措置を講じなければならないとするのであります。最後に、特別区について現になされている競馬法第一條の指定は引続きその効力を有することを附則で定めようとするのでありまあ。以上が
修正案の
内容であります。何とぞ御審議の上御賛同あらんことをお願い申上げます。