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1952-02-02 第13回国会 参議院 地方行政委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二日(土曜日)    午前十時四十一分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     西郷吉之助君    理事      中田 吉雄君            岩木 哲夫君    委員      石村 幸作君            堀  末治君            岡本 愛祐君            原  虎一君            林屋亀次郎君            石川 清一君   国務大臣    法 務 総 裁 木村篤太郎君    国 務 大 臣 大橋 武夫君   政府委員    警察予備隊本部    次長      江口見登留君    国家地方警察本    部次長     谷口  寛君    国家地方警察本    部総務部長   加藤 陽三君    法務法制意見    第一局長    高辻 正己君    法務検務局長 岡原 昌男君    法務特別審査    局長      吉河 光貞君   事務局側    常任委員会專門    員       福永與一郎君    常任委員会專門    員       武井 郡嗣君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○地方行政の改革に関する調査の件  (防衛隊設置及び治安警察機構の改  革に関する件)   —————————————
  2. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは只今から委員会を開会いたします。  本日は昨日委員会において御要求のございました従来の警察予備隊を、先般衆議院予算委員会において防衛隊にこれを切替えるというふうな政府説明がありましたので、これに関する問題並びに治安関係機構全般に関する問題につきまして審議をいたしたいと思います。只今大橋国務大臣並びに国警谷口次長加藤総務部長等も来ておりまするが、併せて後刻木村法務総裁も出席される予定でございまするが、只今大橋国務大臣がおいでになりましたから、審議を開始いたします。
  3. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 木村法務総裁行政管理庁長官が来て頂くと都合がいいのですが、まだお見えにならんようですから、又お見えなつたときには質問を繰返すかも知れませんけれども、一応大橋国務大臣質問いたしたいと思います。  政府総理大臣以下大橋国務大臣木村法務総裁参議院の本会議における各会派の代表質問に対しまして、この警察予備隊軍隊じやない、再軍備ではないということをしばしば答弁をされ、又そういう認識を国民から払拭するように努力をしておられたように思うのであります。ところが一昨日でありますか、衆議院予算委員会におきまして、突如総理大臣から警察予備隊は十月で打切りをして、そうして防衛隊というものに再組織をするという意味の御発表があつたのであります。そこでまあ国民は驚いたのでありますが、なぜ参議院の本会議における質問にはそういうことはちつともお答えにならないで、突如として防衛隊なんということに切替えを予算委員会で発表されたかどういう必要があつてそういうことになつたのかどういう構想であるのか、これは主として大橋国務大臣並びに木村法務総裁がその衝にお当りになつておるようですから、一応そのことからお尋ねいたします。つまり防衛隊というものに切替えるのであるかどうか、切替える目的は何であるか、どういうふうな組織切替えるのか、そういうことから先ず伺います。
  4. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 一昨日の衆議院予算委員会におきまして、吉田総理大臣から防衛隊というものに十月から警察予備隊切替えたい、こういう答弁があつたのであります。御承知通り現在の警察予備隊は、一昨年の八月ポツダム政令に基きましてマツカーサー元帥書簡基礎として組織されたものでございましてその目的国内治安確保するために警察力を補うものであるというのでありまして、その名称も特に警察予備隊ということに相成つてつたのでございます。当時の創設に際しましては、何分急速の間に七万五千を募集いたし、且つこれを訓練するという必要があつたのであります。特に当時朝鮮におきまする動乱が如何ような経過を迫るかについて予想が付かなかつたのでありまして、従つで国内治安確保するということが非常に急を要することと相成つたのでございまして、このために取急ぎの措置として編成をいたしたわけでございます。当時御承知のように一般から募集いたしまする隊員につきましては、これを取りあえず二年を一応の期限として募集をいたして、二年後において更に措置を決定するという條件募集をいたして参りました。その二年が今年の十月に大体各人について到来いたすわけでございます。その後、警察予備隊訓練を進めて参る上から申しまして、特に幹部教育重点を置いて参つたのでございますが、あたかも昨年夏以後におきまして旧職業軍人に対する追放解除措置が行われまして、警察予備隊の実情から申しまして、これらの諸君を新たに幹部として迎えるということは極めて適切ではなかろうかという考えの下に、昨年八月先ずいち早く解除なつておりました陸士及び海兵昭和二十年の卒業生でございます。これらの者を約二百名募集いたしまして、そして二カ月間の訓練の後に各部隊幹部として送り出したわけでございます。第二回には、昨年の十一月に四百名の旧陸海軍の中佐及び大佐、これを募集いたしまして、同じく二カ月の訓練をいたしまして、十一月の初めに各隊に幹部として赴任ぜしめました。第三回には十二月の初めに同じく四百名の、これは陸海軍の大尉、中尉、少尉の前歴のかたがたを募集いたしまして、これは現に教育終つたばかりでございます。去る一月三十一日に一応の教育課程終つて只今赴任せしめる手続中であります。かようにいたしまして昨年の八月以後、約千名の旧陸海軍将校を特に陸士海兵等專門的教育を受けました人々を幹部として募集いたしたような次第でございます。これらはいずれも警察予備隊国内治安に専念する機構でありまするが、併しその機構たる一般行政的措置によつて目的を達するという組織ではなく、治安の破壊の原因となる対象に対しまして、実力を以て措置をし、これによつて治安確保する、こういう組織でありますから、その実力を以てかような措置をいたすにつきましては、おのずから部隊組織をとる必要がある。かような部隊幹部といたしましては、旧陸海軍将校は特殊の技能を持つておりまするので、これを運営上十分に活用いたしたいという趣旨に出たものなのでございます。これとは別個に、私は総理から昨年の上半期の末項であつたと存じますが、警察予備隊は来年の十月、即ち今年の十月に満期になる、そのときにはこれを保安隊のごときものに改組することが適当と思うから、その研究をするようにという命令を受けておつたわけでございます。この前後の事情につきましては、総理から直接私は伺つてはおりません。併し時期並びに考え方等から推察をいたしたに過ぎないのでございまするが、それによりますると、日本自衛力強化ということが今日最も必要である。従いまして国内治安確保というこの警察予備隊が、何分倉卒の際に出発いたしました関係上、自衛力強化という点においてなお幾多検討補足すべき事柄がありはしないか、これらの点はあたかも切替の時期が参りまするので、その機会にできるだけ補足をいたしまして、そうして真に国内治安確保の強力な組織改編すべきものである。こういう意味であつたと私は当時了解をいたしたわけでございます。この点は講和條約を控えまして、日本の再軍備というようなことについて世界的にいろいろな議論があつたと思うのでございまするが、総理考えといたしましては、何分あの大戦争のあとまだ幾ばくもたつておらない。国民においてこの戦争の記憶というものが消えていないのであるから、従つて国民が再軍備をしようという気持に今日まだなつておらない。それから第二に、再軍備をいたすには何分莫大な財政支出を必要とするのでありまするが、国力これを許さない。第三には、日本憲法第九條の規定から考えまして、本格的画軍備につきましては、当然憲法九條の改正を必要といたすのでありますが、憲法改正ということは軽々に考えるべきことではない。こういう三つの理由から、総理といたしましては、今日再軍備はなすべきものではない。併しながら内外の情勢に鑑みまして、国内自衛力というものを強化しなければならない。それについては警察予備隊切替の時期にいろいろな点を再検討し、その強力化を図る上に必要な措置をその際にしよう。かねて名称につきましても、当時私は保安隊というような名前総理から聞いたように記憶いたしておりまするが、そういうふうな名称にいたしまして、予備隊の本来の性格と適合するように改めたらどうか、こういうふうな話を当時総理から聞いたわけでございます。爾来その線に沿いまして、私としましても研究を続けているのでございまするが、未だまとまつた構想として発表するような段階にはなつておりません。併しいろいろな点について御質問がございますれば、構想として発表いたすわけには参りませんが、併し只今までの研究経過については率直に申上げたいと思います。
  5. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 警察予備隊保安隊又は防衛隊という名前に変えるほかに、国内治安維持確保の上で十分な必要な措置をやる、軍隊にはしないのであるけれども、必要な措置をするように今構想考えている、こういう意味だと思います。そこでまだおまとまりになつていないようでありますが、すでに新聞等でいろいろ発表されておりますし、国民が誤解を起すと惡いのでありますから、その構想をどういうふうに、治安確保の上で強化をするために、警察予備隊の今までの組織から保安隊乃至防衛隊にするのにどうすれば強化ができるか、そういう構想の一端をお示し願いたい、強化するにはどうしたらよいかとお考えになるか。
  6. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊につきましては、その創設の過程がマツカーサー元帥書簡に基き、特に国会の御審議を頂かずして、ポツダム政令によつて創設いたさなければならんというような事情でございました。これがポツダム政令を立案いたしまする際におきましては、本来国内治安確保のための最後の手段となるべき実力的な組織を作り上げるにつきましては、いろいろな法律上の点において、こういう事柄が必要ではなかろうかと思われる点もあつたのでございます。例えて申しますると、何分にも実力を以て必要な措置に当るものでございますから、その仕事というものは非常に危險仕事であるということは当然予想しなければならん。そうして隊員につきましては、その危險仕事に挺身して従事させるために、多年の間に亘つて基礎的な訓練もいたして参らなければならん、この訓練は一朝一夕にできるものではなく数年を要する、而もかように数年を費して訓練をいたしました場合においても、いざその部隊の活動が必要であるとして要請される場合におきまして、隊員が自己の都合任意退職することができるというようなことでありまするけれども、折角多年に亘つて訓練をし、又これが国内治安上重大な時機に働いてもらわなければならんという国民期待に反して、必要なときに十分な力が発揮できないというような結果にならないとも限らないのでございまして、かような任意退職ということについては或る制限が必要となる、これはこの組織本質的使命から見まして考えなければならん点である、こう思つたわけであります。それから次には例えて申しますると、この部隊というものが平生七万五千なら七万五千という定数を以て組織されております。併し国内治安の上から申しますると、七万五千で常に十分であるということは言えないかも知らない。併しそういう予想できないような非常の事態に備えまして、平素から数十万というようなものを常備するということは、これはなかなか困難でございます。そこでやはり平生の定員のほかに必要な場合においては召集に応じ得るような人口を用意して置いて、そうしてこれが現在の隊員が基幹となつて、そういう応召者をも含めて、必要に応じてはより数の多い部隊編成するということも考えて置かなければならんのであります。そうなりますると、これはやはり訓練を受けて退職いたしましたる隊員の中から、そういう必要な場合に応召してもらうという体制を準備して置く。つまり退職一定年数の間、一定條件の場合においては部隊召集に応じて部隊に参加してもらうというような事柄も用意して置かなければならんでしよう。こういうふうな任意退職制限でありまして、或いは退職一定期間応召義務、こういうようなものは予備隊の本来の性格使命というようなことから考えて十分考慮しなければならん事柄であるということは、これは警察予備隊令立令の当時からも私考えておつたのでございます。併しながら事は極めて国民権利義務に関する重大な問題でございまして、これらの点につきましては国会の御審議を頂いて、そうして国会の名においてさような重大なる義務創設するということが正しいのではなかろうか、多少予備隊の本来の使命を達成するという上から申すと不十分ではありますが、併しポツダム政令の現在の予備隊令という、そういうふうな行きかたポツダム政令でこれを出上まする以上は、多少は目的を達し得ない点がありましても、そういう点は他日国会の御審議を頂く機会を待つまで差し控えるほうがよろしいではなかろうかという考慮の下に、当時予想はいたしておりましたが、特にポツダム政令には入れられなかつた條項もあるわけでございます。で、今回保安隊というふうに名称を改め、そうして国会の御審議によつて、これを法律案として御検討を頂きまする際におきましては、これらの事柄については更に私どもの手許で再検討いたしまして、どうしても必要だということならば、そういう條項をも、補足して御審議を頂くということが必要だと思つております。
  7. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 隊員の勤務についての変更と言いますか、その点はわかりましたが、組織とか、装備とかの点についてどういう構想をお持ちになつているか伺いたいと思います。
  8. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 組織といたしましては、現在の組織を先ず以て申しますると、警察予備隊本部というものは長官以下百名の部員を以て組織いたしておりますが、これは專ら予備隊管理をいたす機構でございまして、実力部隊ではございません。これは行政管理の面でございます。その最高の責任内閣総理大臣にあるわけでございます。いわば内閣総理大臣を輔佐する行政的な、政治的な幕僚機構が、この警察予備隊本部というものと関連いたしております。この本部隷下機関といたしまして警察予備隊総隊というものがございます。この警察予備隊総隊というものは、七万五千の正副部隊全体を総合いたしました名称でございます。この総嫁が、内閣総理大臣を首脳といたしまする幕僚陣に隷属をいたしておるという恰好であります。この総隊それ自体も内部管理のための機構を持つておりまして、総隊全体を統轄いたしまする機構は総隊総監部でございまして、これは総隊総監並びにその幕僚から成立つておるわけであります。いわばこの総隊総監部というものが七万五千の正副部隊の全体の司令官的な、司令部的な存在なつておるわけであります。この下に現在では一つ管理総監部管理補給隊でございますが、管理補給部隊一つございます、その司令部管理補給総監部、こういうことに相成つております。それから四つ管区隊というものがありまして、各管区隊ごと管区総監部というものがございます。これはその管区全体の司令部的な存在でございます。これは人員の数から申しますると、只今管理補給隊が約一万ぐらいだと思います。それから四つ管区はおのおの一万五千程度に相成つております。これは人員の数からだけ申しますと。大体昔の一個師団相当ぐらいの人員を擁しております。各管区隊の構成はおのおのほぼ同一でございまして、大きく分けまして三つ普通科連隊、それから一つ火器連隊、それから一つ施設大隊、それから一つ衛生大隊、こういうものから成立つておるのでございまして、各連隊はいずれも三つ大隊から成立つております。大体一個大隊が八百乃至一千という隊員を持つておるわけであります。これが現在の組織でございまして、なおこのほかに警察予備隊といたしましては、最も只今訓練重点を置いておりまするものは幹部訓練でございまして、このために各專門別によるところの幹部教育施設を持つております。総隊学校というのが一般的な幹部の再教育施設でございます。これは久里浜にございます。そのほか普通科幹部学校、それから火砲についての幹部学校、それから施設というのは、これは土木の技術等でございますが、こういつたものの施設科幹部学校、こういつた幹部学校がそれぞれ総隊総監部に附置せられておりまして、これは学校によりまして、或いは短期間のものは二週間くらい、長期のものは二カ月くらい、各除からそれぞれの幹部を交替に招集いたしまして幹部としての專門的教育をするのであります。今回予算におきまして三万五千の増員計画いたしておるのでありますが、この三万五千の増員というものは大体人員の数から言いますと、二管区隊に相当するものでございますが、これを今までの四管区を六管区にいたしますか、それとも管区隊としては一管区だけを増加いたしまして、特殊な作業に従事せしめるための特別な部隊を新設いたしますか、その点についての計画はなお只今研究中でございまして、三万五千の増員についての具体的な計画はまだ確定するに至つておりません。で、今後保安隊ということに相成りましても、この隊の編成につきましては何ら基本的な変更はないと考えております。ただ併し現在問題となつておりますのは、四つ管区隊のほかに一つ管理補給部というものを設け、特別の管理補給総監部という司令部を置いておりまするが、かような管理補給部はむしろ総隊総監部機構と一緒にしてしまつたらどうかという点を今研究をいたしておる次第でございまして、組織についてはそういう状況でございます。装備の点でございますが、只今までの装備といたしましては、各隊につきましては、当初一般隊員に対しまして、米軍から借受けました装備といたしましては騎兵銃と申しますか、極く小型の小銃でございます。それが昨年中に普通の歩兵銃切替えられまして、彈著距離等も延びまするし、射撃としては威力を増加いたしております。これは大体昔の陸軍騎兵銃程度のものが歩兵銃に変つたというわけでございます。特殊火器といたしましては、普通科連隊におきましては、それぞれ若干の軽機関銃を持つておりますし、又バズーカを持ち、これを訓練いたしております。一般的に扱かつておりまする装備はそれだけでございます。併しながらすでに組織編成において申上げましたるごとく、火器連隊というようなものがありまして、これは当然それ以上の小口径の火砲、殊に機関砲程度のもの声装備するということを予定して出発いたしております。併しな武器の入手ができておりませんので、その訓練をいたす段階なつておりません。火器につきましては、先ほど申上げました火器についての学校において若干の幹部訓練を受けておるという状態でございます。
  9. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 大体構想はわかりましたが、こういうふうな機関砲とか、小品径ではあるが、砲とか、そういうものを装備して来ると、憲法の第九條の陸軍、海軍、空軍その他の戰力を持つことができないという、この戰力に当ることになりはせんかというような心配をさえ当然我々は持つわけですが、その点はどうお考えなつておりますか、もつとはつきり御答弁を願いたい。
  10. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 憲法上の問題につきましては法務総裁からお答えいたすことが適当かと存じます。
  11. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 関連質問をいたします。自衛力漸増というものに関連性のある今回の改編官房長官は声明いたしておるが、これらも今の装備の問題と関連しております。自衛力漸増という構想に基いて今回の改編ポツダム政令期限が切れたから改組したとは言われますが、自衛力漸増等に関連して改組の意味も含めた今の装備の問題ではないか、或いは将来の装備がこれらによつて増強或いはその内容が変化するというようなことはあり得ますか、どうか。
  12. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 御承知のごとく安全保障條約におきましては、日本漸増的に日本みずからの自衛に対して責任を負うことをアメリカ期待しておるということが書いてあるわけであります。勿論これは條約上はアメリカの一方的な期待であるかも知れません。併し日本といたしましては、この期待を條約の上にはつきりいたしておるのでありますから、おのずからこの條約を締結するに際しましては、日本といたしましては條約上の義務としてではなく、飽くまでも自主的に自衛力増強を図りまして、アメリカ期待する線に沿う覚悟は当然持たなければならんことと存ずるわけであります。現存おきまして警察予備隊武器装備につきましては、一切米側の援助によつておりますが、これらの援助を与えられます趣旨も、又米国が日本自衛力漸増ということについて支援、協力をしようという気持ちの現われであると存ずるのでございます。予備隊の今年度におけ三万五千増員ということも、これはやはり自衛力漸増一環であることは当然のことであると存じまするし、今後の装備等につきましても、そういう考えを以ちまして、強化拡充を図つて行くべきものと考えております。
  13. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 自衛力漸増のもとより方途であるということを言われておるのでありますが、ポツダム政令において、警察予備隊令ができる場合には国内警察力補足、補充ということによる国内治安確立、これが本来の性格であつたのであります。ところが今回保安隊又は防衛隊名称の下に切替えるといえども、その内容安全保障條約に則る、或いは平和條約による日本自衛力増強という一環のものに乗るということは、一昨日来政府衆議院その他で声明されている警察予備隊性格は変えずに国内治安増強を図るために、ただポツダム政令期限が切れたから保安隊に変えるというものとは、今の大橋国務大臣のお話は一歩進んでおると私は思うのです。それがよいとか、惡いとかいう問題を私はお尋ねしておるのではない。そういう性格が今の御答弁によりましては明らかになつて来たと思う。そこで私がお尋ねいたしたいのは、自衛力漸増というものは、而もこれが日米委員会に提案される事項に関連するがごときことが新聞紙上にも現われておりまするし、自衛力漸増ということは国内治安という問題より飛躍をいたしておる。つまり国内治安という線よりは一歩外に出ている。国内治安確立というものも自衛力漸増の幾分にはなりますが、元来安全保障條約に則る自衛力漸増というものは、外敵に当ることという解釈が起る。外敵に当る国内治安外敵に当る国土防衛というものが自衛力漸増の大部分を意味していると思う。従つてこの自衛力漸増という観点に立つて装備も改善進捗するという只今の御答弁は、いわゆる日本の、名称は違いますけれども、軍力拡充という解釈と表裏一体のものであると私は思いますが、如何ですか。
  14. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) これは岩木さんのおつしやいました自衛力漸増というお言葉をそのまま受けまして私は申し上げました次第でありまして、岩木さんのお考えなつておられる自衛力というものと、私の考えておりまする自衛力ということに或いは多少の食い違いがあるのではないかと存じますが、実は自衛力というものにつきましては、私は安全保障條約に用いられておる自衛力というものを基礎にして御説明をいたしたつもりでございます。御承知通り日米安全保障條約におきましては、日本が将来外国の脅威となるような軍備を持つことを避けつつ直接間接侵略に対して漸増的に自衛責任をとる、こう書いてあるわけでございまして、安全保障條約における自衛力というものは專ら外敵に対するものであるばかりでなく、直接、間接侵略と謳つておりまするから、国内治安のための自衛措置も当然この安全保障條約における自衛力漸増というその自衛力の中に入るものである。こう私は解釈いたしておるのであります。
  15. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 今大橋国務大臣の言われる自衛力は直接間接外敵の侵入に当る場合においてのその間接侵略、つまり国内における間接侵略或いは思想侵略といつたようなものに当る自衛力である、こういう工合に消極感を御披瀝になつておりますけれども、この自衛力という場合におきましては、内部におきまするいわゆる防衛体制はもとより、いわゆる間接侵略における防衛体制も自衛力になりまするけれども、直接侵略即ち外敵侵略ということも、この自衛力には含まれることは、私は当然だと思うのです。そうじやなくして、特に自衛力漸増という言葉に則る今回の改組の方針というものは意味がないのです。で、内部におけるいわゆる間接侵略である。間接侵略ということは、具体的に言えば思想侵略等を中心とした、或いは特殊の思想精神を持つておる一つの団体の暴動が起つた場合における意味間接侵略に当るか知れませんけれども、直接侵略はこれらの後ろに紐を引いておる外敵日本の海辺、日本の領域に侵略を企図ぜんとする、或いは進出を実現する場合に当る意味合も含めて、これが即ち自衛力であろうと思うのでありまするから、今回の自衛力はこの内外の侵略に対するいわゆる面接間接侵略に対する防衛体制であるから、その自衛力というもの私は軍備の新らしい塗り替えや、従来の警察予備隊が温存されたる、このヴエールをかけたる軍備であつたが、これからはヴエールをとつた軍備の第一歩である。こう解釈ぜざるを得ないので、これを仮に国務大臣の御議論が成立つとしても、そういう言い廻し方は国民に対する非常な疑惑或いは海外に及ぼす惡影響、今日の漫画にあつたように、総理の上衣の下に軍服が現われておるといつたようなことがこれ即ち国務大臣の言い廻しじやないかと思うのでありますが、この際私は自衛力漸増にこの方法を持つて行くのだということをなぜ政府がはつきり言わないか、この点に僕は極めて不可解な感じを持つのですが、如何ですか。
  16. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 自衛力漸増も直接間接侵略に対しまする自衛力漸増という事柄一環として考えておるということは先に申上げた通りであります。
  17. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 法務総裁がおられないので困りますが、今自衛力の話が出ましたから、私はこういうふうに考えておるのです。自衛力というものは、戰力にあらざる自衛力もあるし、勿論戰力によつて自衛する自衛力もある、つまり自衛力には戰力にあらざる自衛力戰力と、こうある、そこで警察予備隊外敵に当り得るものでありませんから、これは戰力にあらざる自衛力ということは納得が行きます。ところがだんだんこういうふう火器やその他大きなものを持つて来るということになりますと、一応外敵に当り得るものになつて来る、それが即ち戰力じやなかろうか、そうすると、自衛力がだんだん漸増して行くと、いつか戰力なつて来る、そう私は考えざるを得ないのであります。そうすると、即ち憲法の第九條に違反して来るから、もう大砲やなんか持つようになつて来れば、政府はやはり憲法改正なさる必要が私はあるだろうと思う。そうでなければいつまでたつても、それは戰力じやないのだ、戰力じやないのだと口先で言うだけであつて、実は一応外敵に当り得る戰力なつておる。そうすると、これは全く国民を欺くものである。そうすると、憲法に違反するものである、戰力であるかないかということは、外敵に当り得る装備を持つておるかどうかということに含まれて来るのだろうと思います。そうすると、人数が十一万人ということになつて来る。又今おつしやるように勤務の工合も、応召して直ぐ充実ができるというようなことになつて来るということになりますと、これは私は戰力に当るということになつて来るのだろうと思う。ですからそういうことになつて来ると、やはり憲法改正なさらなければいかん、大橋法務総裁も、憲法改正して初めてその戰力を持ち得るのだということは先ほども御説明があつた。だからもう今日になつたら憲法改正ということをぜざるを得ないのじやないか、こういうふうに考えるのですが、これは法務総裁に改めてお伺いいたしますけれども、大橋国務大臣のお考え伺つて私の考えが間違つているかどうかということを伺いたい。
  18. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 岡本先生の申されました自衛力には、戰力であるものと戰力でないものという二つが考えられるというお考えにつきましては、私も全く同感でございます。問題は警察予備隊保安隊に改組して、装備も一段と強化して、その場合においてその保安隊がもはや戰力の城まで入つておるのではないか、その点はどうかという点が問題であろうと思います。これにつきましては私どもは警察予備隊にいたしましても、又保安隊装備にいたしましても、国内治安のためにこの程度装備が必要であると考え装備を備えたい、こう思つておるわけでございまして、これは戰力という段階には至つておらない、こう考えておるわけでございますが、私は結論だけを申上げまして、法律的な点につきましては、法務総裁からお聞き取りを願いたいと思います。
  19. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 それは戰力なつたかどうかということは国民全体の認識の上に立たなければならんと思います。ただ政府のほうは、これは戰力でないと飽くまで言い張られますれば、どのような装備をし、三十万、三十一万というふうな人数になり、大きな大砲を持つても、これは戰力でないのだと言葉の上じや言われても、私は国民の認識はそうじやないと思う。やはりそんなに大きなものになれば、一応外国から侵入して来たものを防ぐ力が出て来る、それが即ち戰力だと私はそう思うのでございまして、そこで私は戰力でないか、戰力であるかということをきめるよりきめる方法がないのだ、一応外敵に当り得る装備を持ち、人数を持つておるということになるだろうと私は思うのであります。とにかく私は国民が疑いを持つているのですから、そうして本会議でも申しましたように、日米安全保障條約の前文でも、アメリカ側はいつまでも日本にとどまることは困るのだ、日本が早く外敵も防ぎ得るような自衛力を充実して呉れ、それを期待するのだということを言つております。それ則つてだんだん漸増をして行く、漸増をして行く途中に必ず戰力なつて来ると思う。この点は明らかだと思うのです。アメリカにもう日本から去つてもらう、成るべく早い機会にそうし左ければなりませんが、そのときまでにはもう戰力には私はなつておる、戰力なつておるから、アメリカも安心して日本から去つて行けるということになるだろうと思う。だからそれまでに戰力になるということは確かなんですから、成るべく早く憲法改正ということをされて、そうして国民の意見を問うて、国民の大多数が憲法改正して、自衛のためには止むを得ず戰力を持つという意思がはつきりしますれば憲法改正して、そうして堂々とやつて行かれるということが必要だろうと思います。又この世界の自衛力、集団的自衛の問題、これは国連憲章の枠内で集団安全保障方式というものが今できておるのでありますから、日本もどうせその一環に加わらなければならない。そうすれば、日本だけが外国から助けてもらつて日本は外国を助けて上げることができないということは国際信義上どうしてもできない。だからどうしてもこれは日本戰力を持たなければならんということに運命付けられておると私は思う。だから大橋国務大臣に申上げるだけでなく、この大問題は総理大臣によく申上げなければなりませんが、いずれその機会を得ることにしますが、よく政府も反省されて、はつきりして頂きたいということを申上げて置きます。なおもう一つ大橋国務大臣にお尋ねして置きたいことはこれも新聞記事でありますが、警察制度を変更せられる御意思があるようであります。大橋国務大臣の御意思はこれまでこの委員会においてたびたび警察問題について御発表がありましたから、大体わかつておりますが、これまでのお考え、その後警察法を一部改正をいたしましたが、そのほかに今の警察法ではどうしてもやつて行けない、もつと強くしなければならんというお考えを持つておるならば、それを一度伺つて置きたいと思います。そうして何だか新聞によると、国警本部の持つております情報網、それを法務府のほうに移してしまい、そうして何か特審局と一緒になつて、警察のほうは情報網を持たないようにもとれるのですが、それじや警察が動けないのじやないかと思う。私はこの間本会議で申上げましたように、国警つまり国家公安委員会を伴つて国警法務府の中に入つて来て、法務総裁総理大臣の所轄権を代行される、その組織は私はいいと思うのです。そうしてその後に法務総裁の下に情報網を一本にするということならわかるのですが、警察を法務府の外に置いて、現在の警察法通りにして置いて、情報網を法務府のほうに取上げるということはどうしてもおかしい。そういう点に触れてお話し願いたいと思います。
  20. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察法の問題につきましては、只今私といたしましては、まだ結論に到達しておらないのでありまして、研究中の問題でございます。ただ研究の過程におきまして、いろいろ法務府と打合せをいたしておりまする関係上、それらから推測いたしまして、新聞紙等におきましていろいろ推測的な記事が出ておるのでございますが、丁度いい機会でございますので、これ又研究中ということで誠に恐縮でございまするが、率直に只今研究いたしております事項を申上げまして、御批判を仰ぎたいと思います。実は御承知通り昨年以来政府といたしましては、行政機構の簡素化ということを考えて参つたのでございます。私丁度昨年暮まで一年半の間法務総裁と警察担当の大臣とをかけ持ちをいたしておりました。その経験等から考えまして、いろいろ警察法につきましても研究をいたしたわけでございます。現状を先ず申上げますると、現在の警察法におきましては、国家公安委員会内閣総理大臣の所轄機関ということに相成つております。この所轄機関ということの意味は極めて軽い意味の監督権であつて、指揮命令権を伴わないものであるというふうに法律的には説明をせられております。そうしてその警察の担当の機関でありまする国家公安委員会に対して内閣総理大臣が指揮命令権を持たないという理由は、警察本来の職務というものは專ら法規の執行であるべきものである。法規の執行については法規の金ずるところによつて動くべきであつて、政治的な指揮、命令に従うことは警察の性質から見て面白くない、即ち政治と警察というものは分離をしなければならない、その警察と政治を分離せしめる一つの制度上の保障といたしまして、国家公安委員会という上部機関からの指揮命令に従うことの一番困難な会議制の官庁を作り、而も法律上最も軽度な監督権しかこの機関に与えない、この機構が警察の政治からの独立性を保障いたしておるわけなんであります。而してその政治機構から独立いたしました国家公安委員会にいたしましても、その職務の範囲というものは警察全体の運営についての指揮監督権というものはないわけでございまして、これは国家地方警察の行政管理面だけを担当することに相成つております。そうして国家地方警察の運営面につきましては、都道府県知事の推薦により都道府県議会の承認を得て任命されましたる都道府県公安委員会が運営監理に当る、こういうことになつておるのであります。一方全く自治体の公安委員会によつて管理されまする自治体警察と相並びましていずれも地方的な独立機関が警察の運営面は完全にコントロールするということによつて、より一層警察の政治からの独立性を確保しておる、これが現在の実情なのでございます。併しながらこの機構の運営につきましては先ず政府におきましては、国家地方警察に関する法規の制定、予算の決定、こういう面は国家公安委員会みずからではできないために政府といたしましても、国家公安委員会と事実上密接な連絡関係を持たなければならないことにあるわけであります。もとより法規につきましては国家公安委員会が法規上制定を必要とすると認めるものは公安委員会みずからが決議し、そうしてその意思によつて国会の常任委員会にお願いをいたして、議員提出法案としてこれを推進して行くという方法は可能ではありまするが、併しながらいずれの法規にいたしましても、やはり予算的の措置を伴わないものは稀でございまするから、どうしても予算という面において政府と相当密接な関係を持たなければならんことは、これは実際の事実でございます。そこで政府といたしましては吉田内閣になりましてから、特に国務大臣のうち一名を指名いたしまして專らこの公安委員会と内閣との予算問題、法規問題等に対する実際上の連絡の仕事を担当せしめる、こういうことに相成りまして、先には樋貝国務大臣、のちには私が法務総裁として兼ねてその仕事を仰せ付かつてつたことはすでに御承知通りであります。そこで一体かような国務大臣が果して必要かどうかという問題があるわけでございます。まあ現実の形態においては、必要上止むを得ずそういう国務大臣を命じておつたのでありまするが、併しこれを命じなければならん理由は何かと申しますと、たまたま国家公安委員会の所轄する機関が内閣総理大臣でございまして、内閣総理大臣は職務の性質上、なかなかみずからそういう峯上の作業に当るだけの余裕がございませんので、そこでその代りに他の国務大臣を指名するというのが実情であります。で、これを若し他の大臣の所轄にいたしておきまするならば、さような国務大臣を別に指定して連絡に当らせるという必要はないではないか、事実上法令或いは予算上の問題について政府と公安委員会の連絡に当るということでございまして、事務の分量から申しましても、特に国務大臣を一人充てなければならんほどの量的なものもないし、従いまして、これは他に適当な大臣がありますならば、その所轄に公安委員会を移すことによつて、そういう特別の国務大臣が一人置かれるということを省かなければならない、率直に言えば簡素化が可能になると、こう考えまして、この問題をいろいろ研究をいたしておるような次第でございます。勿論このことは成るべく職務上全然無関係でない大臣よりも、職務上連絡が適当であるものがいい、そうなりますると、現在では法務総裁が一番適当であろうというので、内閣総理大臣の所轄機関でありまする公安委員会法務総裁の所轄に移してはという点を只今研究をいたしております。なおその場合において、法務総裁が新らしく所轄になつて来た公安委員会に対して、その職務の執行について指揮監督をするというような改正をするかどうか、或いは又その代りに公安委員会委員長法務総裁が当るというようなことによつて、事実上公安委員会法務総裁管理できるような改正を行うかどうかという点も一つ研究題目でございますが、この点は私は適当でないと只今考えております。と申しますのは、やはり一般警察事務というものは、これと政治と分離するという現在の警察法の精神が正しいのでありまするし、又若し法務総裁が国家公安委員会を指揮したり、或いは国家地方警察を指揮するというようなことにしなければならんというならば、これはひとり国家地方警察ばかりではなく、より以上重要な地域を管轄いたしております自治体警察についてこそ、法務総裁が指揮する必要があれば指揮できるように改正考えなければならん問題である、これはいずれも警察本来の地方分権民主化という点から申しまして、私はそういう措置は政治的に適当でないとこう考えておりまして、只今法務総裁が公安委員長になる、或いは公安委員会に対して指揮権を持つ、或いは自治警察に指揮権を持つというようなことはしないほうがよろしい、こう思つております。そこでかようにいたしまして、法務府に仮にこの案を進めまして、公安委員会の所轄を移すということになりますると、これはただ総理府から国家地方警察が法務府の所轄に移つただけでございまして、そのほかには実質的な変更は現状に比べて何らないわけでございます。そこでもともと警察制度について今残つておる問題は何か、これは昨年御審議を頂きました警察法の改正ということによりまして、おおむね従来の欠陥が是正されまして、非常にうまくなつて来ておりまするが、併し一つだけ残つた問題は法務府の特審局というものと警察というものとで、同じような職務について同じような二重の組織を持つていることになつておる。この点が二重、三重に機関があれば、却つて競争的にうまく行くという仕事もありまするが、併し情報の收集、調査、捜査というような隠密を要するような性格仕事でございまするので、却つて競争がお互いに突つつき散らすということは能率を上げるよりも下げることが多い。この問題はなお研究を必要とするのでありまして、今申上げただけではこの問題の解決は困難であります。何となれば、成るほど法務府の特審局というものはこれは法務総裁行政管理面も運営管理面も統轄いたしまして、自己の指揮監督下にあるものでありまするから、法務総裁はこの動きについては完全なる統轄をすることができますが、併しこれと協力しなければならんところの国家地方警察或いは自治体警察というものについては何ら指揮監督権がないわけであります。所轄にはなりましても、国家地方警察に対する指揮監督を与えないという、私の先ほど申上げた考え方によりますと指揮監督権がないのでありまして、これを法律上調整するということは事実上方法がないということになる。そこでこの問題を何とか解決いたしまして、国の重大な治安に関する調査並びに捜査面については両者の協力できるような調整の措置が必要である、こう存じております。それでこの調整といたしましては、若し両方の機関に対しまして法務総裁が平等に指揮監督ができる場合におきましては法務総裁がその調整の責任をとればいいわけですが、一方については指揮監督ができるが、一方については指揮監督ができないという條件がありまするので、これを調整するということは現状のままにおいては法務総裁の手に余る仕事なんでございまして、そこで機構の点において何か考える必要がありはしないか。で、無論これは私まだ全然研究中でございまして、そういうふうにしたいというような考えも持つに至つておりませんが、ただ考えられまする方法といたしましては国警においてやつておりまする、又自治警においてやつておりまする対共関係の捜査活動、この活動面と今後特審の活動の重点になる部面は全くまあ対象が一致しておりますから、この部面を両方から引出して合体させてはどうか、きようになつた場合に、この特審と国警のその面が合体して、その場合にその所属をどうするかという点があるわけであります。若しこれを国家公安委員会の下に付けるということになると、これを特審をやめて特審を国警に合併さぜるということでありますが、その場合において国家の治安上最も重大なる問題でありまするこの間接侵略に対する取締面、こういう面について政府の立場、又国家の中央政府というそういう立場から見まして、これを政府の指揮監督の及ばない公安委員会にその仕事を一任するということが果して適当であるかどうかという問題があります。それからもう一つ警察法自体の内部の問題といたしましては、仮にこの機構を国家地方警察に合体し、現在の国警本部のその機構が特審を吸收して大きくなつた場合においても、現在の警察法上のこれの運用については疑義があるわけです。と申しますのは、この使命は各地方警察に対する行政管理仕事ではなくして、それ自体が中心となつて捜査を指揮命令し、そうして各地方機関の協力を受け、その責任において捜査を続けて行くという、それがこの使命になるわけであります。これは警察法上は警察についての行政管理にあらずして、運営管理でなければならないわけです。そうなりますると、運営上の問題でありまするその運営上の中心となるべきこの新らしい機構というものが、本来行政管理だけしかできないところの国家公安委員会の事務局でありまする国警本部も一組織としてあるということが、警察法の運営管理行政管理をきちつと分け、これによつて警察の政治との独立性ということを維持して行こうというこの根本の精神をぶち壊すことになるわけでございまして、この点において法律上(「議事の進行上簡單に願います」と呼ぶ者あり)無理がありはしなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございまして、そういう機構を仮に作るといたしましたならば、どちらかというと公安委員会の下の国警本部の附属機関といたしまするよりは、法務総裁直接の機構として編成するほうが運用上至当ではないかと考えております。併しこの点はなお研究中に属することを申上げて置きます。
  21. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 議事進行でお尋ねいたしますが、丁度大橋国務大臣防衛隊御担任の主務大臣として臨まれておるのですが、警察の解釈問題については大橋国務大臣も以前から御関係があるし、或いは将来あるかも存じませんけれども、当面の木村法務総裁……。
  22. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 業務は今私が担当しております。それで御質問がございましたら……。
  23. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 最初に防衛隊の問題を一応区切りを付けて次の議題に入つて頂いたほうがいいんじやないかと思いますが、如何でしようか。
  24. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 御尤もなお話ですが、木村法務総裁が今見えんものですから、防衛隊解釈上の問題があるんですが、その間便宜警察法のほうに触れたので、その点は御了承願いたいと思います。
  25. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 お尋ねしますが、日本との平和條約と警察予備隊或いは保安隊にいたしましても、いずれにしましようが、それとの関係です。海外派兵の問題であります。その点について平和條約の第三章の安全、第五條の(a)項の(iii)ですか、その(iii)には日本は国際連合に入つておらんでも国連の決定によつてあらゆる援助の義務を負うという規定があるわけであります。その際にそれがどのような名称であろうが、朝鮮事変が收まつておりませんでしたら、この平和條約を受諾した限りにおいては朝鮮派兵を拒絶することは平和條約の第五條(a)項の規定から言つてできないと思いますが、その辺はどういうふうに行政協定その他でやられているかという問題が一つありましよう。  それから岡本議員の質問に対しましてお答えになりました今度任期が満了いたしまして除隊する人を何か予備役制度のようなことをして召集する、或いは自由にやめさせないというような従来の軍隊のような考慮をされていますが、その点は憲法第二十二條の居住、移転及び職業選択の自由、外国移住及び国籍離脱の自由、いわゆる職業選択の自由という憲法に規定された第二十二條の規定に反する重要な規定だと思うわけであります。そういう際に、今度除隊した人を召集するというような場合にそれをレフユーズした場合にはどうなるか。憲法上のこの規定とどういう関係において考慮されておるか。その二点を先ずお伺いしたい。
  26. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 講和條約につきまして御質問の点でございまするが、警察予備隊は又保安隊と改称されましても飽くまでも国内治安のための組織でございまするから、これを海外に出動せしめるというようなことは政府としては到底考えられないと思います。従いまして、さような要求がありましてもそれは拒絶いたします。そして拒絶することは平和條約第五條に違反しないかと、こういう御質問でございまするが、これは違反しないと思います。というのは国連に対する協力というものは、各国の国内法上可能なる問題について協力するという義務があるわけでありまして国内法上不可能なところの予備隊或いは保安隊の朝鮮派兵ということについては日本政府は何らの義務を負うものでないからであります。  それから第二の点でございまするが、退職後の応召義務であるとか、或いは又在職中の自由退職制限、これらの事項は、現在入つておりまする隊員について適用する考えはございません。これが立法化されました後において入隊する人たち、及びこれが立法化された後において本来の二年の就職期限が満期になりました後、その希望によつて引続き在隊いたす人たちについてのみ適用をいたしたいと思うのであります。ただその義務を然らば如何なる法律上の形式によつてきめるかということになるのでございまして、そのきめかた如何によりましては御指摘の憲法上の問題も生ずるわけでございまするが、これは憲法の範囲内においてさような義務を命ずるような措置をいたしたいというので、只今これが立法化の問題を研究いたしておるわけでございます。
  27. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 この平和條約の第五條の問題なんですが、私、先般陳情を受けたのですが、日本海員組合から分離いたしました外航船の関係ですね、あの関係の諸君はたくさん朝鮮に行つて、現に行つておるのです。私陳情を受けまして、そうして日本の海員組合全体としてその問題を取上げぬからというので離脱したので何とか、非常な危險にさらされているので、アメリカの従軍している人と同じような待遇をしてもらいたいという陳情をやつたところが一遍に首切られてしまつたということであります。そういう形で実際荷揚げその他で協力して朝鮮戰線に参加しておるのです。これは否定できない事実なんです。私この外航船の海員組合の諸君が直接陳情に来まして聞いたんですが、そういう形がやはりとられると思うのですが、そういう国民の不安をなくし、警察予備隊の不安もなくするためにも、念のために行政協定なんかにはつきりそういうことを入れるようにして、所管大臣とされて不安のないようにされて行くことが私必要ではないかと思うのです。その点についてそういう考えを持つているのです。それからなぜ日本にこうたくさんの、五百六十億ですか、今度の二十七年度予算に組まねばならんほど実際共産主義の間接直接の侵略危險性があるという判定の問題なんですが、この問題について我が社会党とは現内閣は基本的に対立しておるのですが、我々から見ますと、戰略的に非常に、その重要性から考えたら、例えばイラン、イランはアメリカに次ぐ石油の非常なタンクですし、ソヴイエトに対しましても、バクー油田その他を爆撃する意味から言つても、日本なんかより遥かに戰略的に重要である。それにもかかわらず、先般アメリカの軍事使節団が入つているのを……若干来ております。併しあぶないから早く逃げてくれ、一方の軍隊が入ると必ず一方の国の侵略を招くなにになるからというので、アメリカの軍事使節団の退去を要請しています。更にこのスカンジナヴイア半島、フインランド、スエーデン、ノルウエーというような、ヨーロツパを制する意味におきましても、若し第三次世界大戰があるとすればヨーロツパを制する意味から言つても、或いはアメリカは戰略爆撃するという意味から言つても、日本より遥かに近いムルマンスク、その他があつて非常に重要な陸続きなんです。それにもかかわらずスエーデンは北大西洋軍事同盟にも入らずに中立にしておる。そうしてアメリカ軍隊も入込んでおらぬわけです。そういうふうなことを考えますと、我々はこの共産主義の危險を誇大に宣伝することによつてアメリカの駐兵、永久占領というものを合理化する一つの手段に使つておると思うのですが、その辺のことをいろいろお伺いしたいと思うわけであります。例えばこれは我が党だけが言う主張ではなしに、責任のある例えばアメリカのシカゴ大学の政治学の教授で、米国の国立外交政策研究所の主任であるところのモーゲンソーという人は例えばこういうことを言つておる。アメリカにおいては共産主義革命の脅威などというものは全然存在しない、そういう共産主義という仮想敵国を作つてアメリカの行わねばならない社会革命を行わず、形の変つた保守主義であるということを言つておるのですが、そういうイラン、スカンジナヴイア諸国等のようなソヴイエトと陸続きであるにもかかわらず、アメリカ安全保障條約も結ばぬし、北大西洋軍事同盟にも入らぬし、そういうふうにしているのに、なぜ日本だけがそういうふうにせねばならんか。これは一体我が党としましては、共産主義の間接侵略というものは植民地であり、富の分配が不平等であるというような一切の社会惡から来ておるわけです。そういうふうに厖大な五百六十億ですか、そういうものを組まねばならんほど共産主義の間接侵略があるとすれば、一体これは六カ年の占領政策の欠点であるか、或いはその下請をやつて最も長く内閣を組織された吉田内閣の責任であるか、そういうような基本的な問題についてお伺いしたいと思うわけであります。  それからもう一つは、先般イギリスから出ておるエコノミストなんですが、これは非常に穏健な、むしろ保守的な経済誌ですが、それによると、若し第三次世界大戰が起きたらアメリカは戰略的に考え日本を防衛することはできない、現在警察予備隊その他再軍備されつつあるのは、アメリカが原子爆彈の戰略基地に日本を使つて、そうして撤退……硫黄島、硫黄島と書いてあるのですが、硫黄島その他に撤退する際の援護部隊であり、アメリカ軍隊の撤退するのを安全保障するところの援護部隊であるということを言つておるわけですが、こういう点について一つこれから大橋さんと論争をやりたいと思います。(「それはちよつと総理大臣にしたらどうですか。」と呼ぶ者あり)こういう問題こそ基本的なんです。こういう問題をやらずに技術的なことをやつて行くということは実に憲法趣旨にも反するし、これと真正面に組んで、こういう基本的な問題から一つ一つ解決して行かんと、前の帝国憲法つて運用よろしきを得たら何らああいうことにならなかつたのですよ。
  28. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ず警察予備隊を朝鮮に派遣しないように行政協定の際にその趣旨をはつきりしろ、こういう御注文でありましたが、行政協定は安全保障條約にあります通り米軍駐留の條件を設けるので、警察予備隊の運営は飽くまでもこれは日本が自主的にやるべき事柄でありまして、行政協定の内容において取扱うべき性質のものではないと思います。で、警察予備隊は、如何なる場合におきましても、吉田内閣といたしましては先ほど申上げました通り、海外に派遣されるというようなことは断じていたしませんし、又たとえ内閣が変りましても今日の予備隊令というものの嚴として存します限りは、さような目的に使用さるべきものでないと確信をいたしております。  それからこの防衛関係費が非常に多額である、こういう必要はないではないかという点についてのお話でございまするが、政府といたしましては、内外の情勢に鑑みまして、自衛力増強というものは刻下の急務である、財政の許す限りやらなければならない、むしろこれ以上やらなければならないかも知れません、併し財政上この程度にとどめざるを得ない、(中田吉雄君「そうなつ責任はどの内閣ですか」と述ぶ)こういう意味でありまして、これは内外の情勢でございますから、何も内閣の責任というわけではございませんので、国際情勢からなつた問題でございます。
  29. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 余り見解の相違になりますから……。併し、もう言つても仕方がないのですが、ウオルター・リツプマン、その他軍事評論家から見たら、戰略的に見て、日本人が思つているほどアメリカでは戰略価値を高く買つていないということはこれはなんですし、我が党がこれまで追放解除された旧軍人の諸君からいろいろ承わつた話においても、日本人が思つているほど戰略的には価値は高くないと言つているし、特にイランとか、先にくどく申しましたが、フインランド、スエーデン、ノルウエーというような国が、やはり安全保障條約を結ばずに、外国軍隊が入らずに安らかに国民が過ごせるということは今後十分お考え願いたいと思うわけで、それ以上は見解の相違になりますから言いません。それからもう一つ警察予備隊の、誰とは名を指定しませんが、最高幹部の人が、アメリカではすでにたくさんの原爆を日本に持つて来ているという重要な言明をしている人があるわけでありますが、その点について一つお伺いしておきたいわけであります。イギリスのような強国ですら、ロンドンから百マイル離れた北のほうですが、或る原爆基地でアメリカが了解なしに使つては非常にあぶないからということで、チヤーチル首相がイギリスからアメリカに行つたのは、その言質を取るのが重要な渡米の目的であつたわけです。その点で一つ原爆の問題についてちよつとお聞きしておきたいと思うのですが、あなたの所管されている警察予備隊の、最高とは言いませんが、指導的な地位におられる人から、原爆がすでに持ち込まれているということが言われているのですが、その真偽について一つ伺つておきたい。
  30. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 警察予備隊幹部が原爆の問題について知識を有しておるとは考えられません。そういう発言をした事実はなかろうと思います。あつたら取締ります。
  31. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 質問が多少戻るか知れませんが、防衛隊のことにつきまして二、三ちよつと具体的にお聞きしたいのであります、大橋国務大臣がおられますから……。先ほど大橋国務大臣は私の質問に対して、防衛隊は直接間接侵略に備える自衛力漸増一環のものであるという説明に対して、岡本委員から、それでは戰力を持つ意味ではないかと言つたら、戰力を持つ意味ではないという極めて苦しい答弁をされました。これはもう矛盾の甚だしいことなので、直接侵略に備える自衛力は即戰力意味しておるわけであります。戰力でなかつたら武力であります。だから戰力として言いがたければ武力を伴うということが即外敵に当る直接侵略自衛力増強一環のものと思われますが、武力という点についてはどうでありますか。大臣の御所見を承わりたいと思います。
  32. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 武力というのはどういう意味でありまするか、私にもよくわかりませんが、何らかの武器を持つのが武力であるとすれば、これはこの武器は確かに持つておる。併しすでに憲法において武力という言葉も使つてございますが、併しそれは恐らく戰力と同じような意味で、武力による威嚇又は云々の手段としては、戦争を放棄するという趣旨はあります。そういう意味におきまして私は憲法上の武力というようなものではなかろうと存じまするが、併しこれは憲法解釈の問題でございまするから、その点の武力という意味は私は確かめておりませんから、法務総裁からお伺い下さいますればよろしかろうと思います。
  33. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 戰力と言わず、武力と言わない、直接侵略に備える自衛力漸増ということなんであります。憲法に抵触するから戰力又は武力という言葉を使わないという今の気持はわかるのでありますが、事実は直接侵略に備える自衛力漸増とは、武力又は戰力意味しておることはこれはもう三歳の童子でも明白なことだと思うのであります。そこで大臣は憲法改正しなくて、武力、戰力という言葉は使わないけれども、直接侵略に備える自衛力漸増ということは肯定いたしております。そこで私はこの肯定されたことを基準としてお尋ねいたしたいのでありますが、直接侵略に備える自衛力増強という一環によつて防衛隊というものをこしらえるということでありますることは、今回政府が二十七年度予算に計上されておる安全保障に関する経費五百六十億の、その内容は未だつまびらかにいたしておりませず、ただ大蔵大臣は衆議院予算委員会施設とか、いろいろ言つておりまするが、その施設とかいろいろというものには、当然兵器、いわゆる交戰兵器というものがあることは否定できない。そこで自衛力漸増、直接侵略に備える自衛力漸増ということは、これは安全保障に伴う経費の五百六十億に包含した意味解釈されますかどうかお伺いいたします。
  34. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 予備隊国内治安確保ということのためのものでございまして、特に直接侵略の防衛を目標としてこれを組織しようという考えではございません。国内治安を妨げるすべての原因に対して、実力を以て措置するという考え方であります。その原因が如何なるものであるを問わず、自然直接侵略に対しては、それでは全然、仮にそういうものがあつた場合に何ら活動しないのかといえば、やはりその場合においてもできるだけの措置をとる、これはさような場合におきましては国民各個人といえども必要な国土の防衛に当るということは当然でございますから、いわんや或る程度武器を持つておりまする予備隊というものが、本来そういうためのものでなくしてもそういう場合に活動するということは、これは想像できます。併し特にそれを目的としてやつたものとは考えられません。それから五百六十億の中には兵器が入つておるかということでございまするが、兵器は米軍から当分借りて行きたいという考えでございまするので、この中には兵器を購入するための経費というものは見積つてございません。但し受取つた兵器を国内で運搬するとか、或いは修理するとか、そういう費用は本来の五百四十億の予備隊の費用のうちに見ております。それから五百六十億の中に警察予備隊増強という費用が入るか、入らないか……
  35. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 いや、防衛隊の新設に伴う費用を……。
  36. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保安隊の新設に伴う費用、これは当然現在の警察予備隊増強ということのために費用が必要になりますれば、その部分は五百六十億のうちから支弁をする、例えば演習場であるとか、或いは建物施設の新設等が必要になれば、それは五百六十億中から不足分を支弁する、こういう建前になつておりまするから、保安隊に改組いたしまするに当りまして、現在五百四十億で予想いたしておりません当然支出すべき費用があれば、五百六十億から支出されるということはあり得ると存じます。
  37. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 警察予備隊増強するために五百四十億を予算計上されておるということの是非は別ものにしておきます。そこで私のお尋ねしておるのに対して大橋国務大臣は、防衛隊に改組された場合のその防衛力の、いわゆる自衛力漸増の経費を安全保障に伴う経費五百六十億は含むか、含まないかという質問をいたしましたら、それは当然含む、こういうお答えであります。そういたしますと、安全保障に伴う五百六十億というものの金の使途はいろいろありましようけれども、それは警察予備隊が九月に期限が満了しまして、保安隊とか防衛隊とかいつて改組された、その新らしい部隊が使う経費というものがこの五百六十億、切替えるまでのものは予備隊の五百四十億である、こういうことになるわけであります…—。
  38. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) いやそうではありません。
  39. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そう聞いたんですが……。
  40. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) もう少し説明補足させて頂きます。只今岩木委員の御質問にお答えいたしますが、私或いは先ほどの岩木委員の御質問趣旨を取違えて申上げたかも知れませんが、五百四十億というのは、現在の警察予備隊の一年間の経費を大体見積つてあるわけであります。従いましてこれが十月に切替えになりますというと、切替え後の経費といえども、警察予備隊の延長といたしまして引続き必要となるものは一応五百四十億のうちに織込んであるわけであります。併しこれは安全保障のために警察予備隊の増加ということをいたして行く上から申しまして、現在の五百四十億を以ちまして警察予備隊、並びに十月の切替えがその間に行きますれば、その後来年三月までの保安隊の経費の全部がカバーできるかというと、一応その範囲でやつて参りたいとは存じますが、併しいろいろそれ以外にも経費が予想されるわけでございまして、その場合の費用が五百六十億のうちから支弁されるわけでございます。従いまして五百六十億というものは、十月に切替えられた保安隊の経費というものではなく、保安隊の経費も一応今日予想されるものは五百四十億の数字の中に入つておる、併し足りないものが出て来れば、止むを得ず五百六十億から支弁する、併し十月以前といえども、即ち警察予備隊現在のままといえども、これを増強する計画からいいまして、予備隊時代の間に本来の五百四十億ではカバーできない経費もあろうが、それはやはり五百六十億から支弁する、こういう形であります。
  41. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 そうしますと私のやはりお尋ねしておることと同じことであつて警察予備隊として五百四十億の経費の非は別物にして、五百四十億は警察予備隊の一年間の経費に充当される、それはわかりました。安全保障に伴う五百六十億の経費にも、保安隊切替えられる以前においても、それはその経費のうちに食い込む部面があるかもわからず、又は保安隊に改組された後はもとよりこの安全保障に伴う五百六十億に食い込むかもわからん。そこで私がお尋ねしたいのは、そうしますといわゆる日米安全保障協定に基く費用というものを、いわゆる保安隊に改組される前に、保安隊に先がけして使うということは、即これは戰力、武力、いわゆる自衛力漸増として、直接間接の敵に当るという安全保障の日本自衛力増強義務というものに全く合致するわけでありまするから、いわゆる保安隊なるものは安全保障に基く自衛力増強、即軍力、戰力、武力に、言葉はいずれにしても相当するものだと、こう解釈されるのではないか、予算面から見ましても当然そこはそう解釈されるのじやないか、かように思うのですが、大分くどいようですけれども、もう一度……。
  42. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 岩木先生のおつしやいますところは、安全保障というものは、これは戰力、武力でなければならん、だから警察予備隊保安隊戰力、武力を前提とする安全保障費が使われるのであるから、警察予備隊戰力、武力ではないか、こういうふうな御趣旨のように伺つたのでございまするが、安全保障は必ずしも戰力、武力のみとは私どもは考えておりません。戰力、武力以外の自衛措置もやはり日本の安全を保障いたしまするために、国内治安機構強化するということも、やはり安全保障費のうちで考えて行く、そういう意味において、果して安全保障費という名前が適当であるかどうか、このことは又別個の問題でございますが、予算の費目といたしましては、あのうちには本来の安全保障でありまする米軍の駐留に伴う分担金以外に政府の負担となるような費用があれば、それをも含めまして、警察予備隊、或いは海上保安隊増強に必要な経費を一応五百六十億と見積つてある、こういう趣旨であります。
  43. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 だんだん明らかになつて来ましたが、要するに安全保障に伴う経費とは、私は間接侵略ばかりとは申しておらない。直接及び間接侵略に備える経費も含むということはわかつておるのです。そこで今大臣の言われるように、日米防衛分担金、いわゆる駐留軍の分担金は分担金として計上されておる。それから警察予備隊の経費も、前年度より夥しく増大されてここに計上されておる。これが将来は更に武力と、現在でもいわゆる機関砲を備え、バズーカ砲は武力と思いますけれども、現在でも武力の施設をいたしておる。それが保安隊なつたならば、その武力装備が更に躍進すると、こういうものにこの安全保障費の五百六十億のうちが使われる、全部か一部か知りませんが、とにかく相当程度使われるということは保安隊に切換えられる前においても、五百四十億の警察予備隊の厖大な経費のほかにこれが使われるという意味が含まれておりますから、相当装備が飛躍するということは、これはもう明らかである。で、将来も装備が改善向上することは大臣が今言われたようなことから見まして、当然これは軍力、武力、兵力の増大である、新設である、新設という言葉は当らなくても、いわゆるヴエールを取つた、衣を脱いだいわゆるここに軍隊組織が現われる、こういうことにやはり解釈されるど思うのでありますが、この点はむしろ私は、この際は政府においてこうした点は明らかにされるということのほうがよいのではないか。当然今度の保安隊外敵侵入の場合には当るということはいわゆる交戰力、武力を行使する、こういうことになるわけでありますから、この際、もうそれであるならば、それまで大臣が言われるならば、明らかにしたらどうかということをお尋ねしたいのが一点と、そういつた場合における作戰指揮或いは統帥権というものは総理大臣衆議院予算委員会で言われておるようでありまするが、そういつた場合におけることは日米合同委員会においてやられるということも、新聞紙上では現われておりますが、これはどちらなのでしようか、お聞きしておきたいと思います。
  44. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 先ず現在の予備隊戰力ではないかと、いいかげんに衣を脱いではどうかというお話でございますが、これは政府といたしましては、戰力ではないと、こう考えておりまするし、衣を脱いでみても戰力が出て来るものではないと、こう思つておるわけでございます。  それから統帥権の問題でございまするが、警察予備隊の最高の統帥は内閣総理大臣にあります。日米合同委員会というものが、或いは行政協定でそういう問題を取扱われるかも知らんというようなことは、新聞等によつて私も聞いておりまするが、併し仮にさような委員会ができましたところで、それは警察予備隊に対する統帥の問題とは何ら関係のない、行政協定本来が米軍の駐留の條件を規律いたすものでございますから、これは警察予備隊関係については……。
  45. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 予備隊じやない、保安隊の場合……。
  46. 大橋武夫

    国務大臣大橋武夫君) 保安隊の場合にいたしましても、これは警察予備隊の延長と見ておりますから、性格的には同じものでございます。その保安隊についてどうこうということは予想いたしておりません。併し、これは私担当いたしておりませんので、果して行政協定の内容、日米合同委員会内容がどういうものになるか、これは全然存じませんから、これは必要があれば又他の国務大臣にお尋ねして頂きたいと思いまするが、併しその場合におきましても予想できますることは仮にさような合同委員会で何らか予備隊或いは保安隊についての作戰上の打合せがありましても、それはその委員会が統帥権を持ち、その委員会がこの保安隊に命令をするというようなものではなく、これは内閣総理大臣保安隊の作戰を指導いたしまするに当りまして、国内治安のために協力いたすところの米軍の動きと睨合せて自主的に作戰を指導する必要がありまするので、そういう意味において打合せるという以上には意味のないものではなかろうか、こう思うわけでございまして、警察予備隊或いは保安隊に対する統帥というものはこれは飽くまでも日本国の内閣総理大臣に全権があるのであります。このことは保安隊というものが日本の行政組織の一部分でありまする以上は、憲法上当然のことであると考えております。外国人が統帥に当るというようなことはあり得ないことだと思います。
  47. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 只今法務総裁見えましたから、先ほど来岡本委員質問を留保されておりますから……。
  48. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 法務総裁自衛力の問題、それから憲法第九條における戰力の問題、そういうことについて憲法上の問題をお尋ねしたいと思います。  憲法第九條によりますと、我が国は戦争を放棄いたしまして、そうして陸軍、海軍、空軍その他の戰力はこれを持たないということに明記をいたしております、そこで、一昨日でしたか、衆議院における予算委員会木村法務総裁は、警察予備隊戰力になりやせんかという質問に対して、これはならないと、そうして近代戰における決戰兵器である原子兵器、ジエツト機を具備しなければ戰力ではないと、従つて憲法改正の問題は起らないと、こういうふうに答弁をしておられるようでありまするが、何だかこれは非常な大ざつぱな話で、なかなかそんな簡單なことではいけないのではないかと思うのです。自衛力をだんだん増強して行く、これは日米安全保障條約によりまして、その前文でアメリカ側が期待しておるところであります。外敵を防ぐために当分の間はアメリカ軍がおつて防いで上げる、併しそれは少しの間であつて長くは困るのだとだから日本でもだんだん自衛力増強して行つてそれが防げるように早くすることを期待する、こう言つておる。そこでまあそれをはつきり承諾したのではないということを総理大臣も條約の特別委員会で御返事をなすつておりましたが、併しともかく日本が永久にアメリカにおつてもらうことは独立国の手前できない、自分で自衛力をだんだん漸増して行かなければならないのは当然のことであります。自衛力増強して行くということは、自衛力増強して国内治安を乱すものを抑え付けるだけでなくて、外から侵略して来るものに対しても一応ほかの国が助けに来てくれるまではそれを防げるようにしなければならない、それが即ち自衛力漸増であります。その計画は、この間大橋国務大臣並びに木村法務総裁は、まだ漸増計画はできていない、こういうお話でありますが、ともかくアメリカ軍の撤退と睨合せてだんだん自衛力をつけて行かなければならん、外から来るものを防ぐ程度にやつて行かなければならん、それはもうわかりきつたことであります。そうすると言葉の上でこれだけの装備をしても戰力じやないのだというようなことを言つておりましても、到底それは認められないので、或る程度戰力というものは漸増計画によつて、或る時から戰力なつて来るということに私どもは考えるのであります。そうしなければ外から来るものを防ぎ得ないのですから、外から来るものを一応防ぐのが即ち戰力だと私は考えております。そういう自衛力とか原子兵器とか、そういうものがなければ戰力じやないのだというようなことじやないと思うのですが、法務総裁にそれについてお尋ねしたいと思います。
  49. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。この新聞に記載された記事は相当間違いがあるということを御了承願いたい。原子爆彈、ジエツト機、ジエツト爆撃機を持たなければ九條第二項の戰力ではないと私は申したわけではないのであります。その意味は、現に外国において原子兵器若しくはジエツト爆撃機等を持つている国が相当あるのであります。それらの兵備に比べて現在の予備隊装備はどうであるか、こんなものは問題にならない、鎧袖一触であります。これで以てこの第九條の戰力を云々するというのは、むしろ我々は意味はない、こう申上げたのであります。そこで問題は御承知通り憲法第九條第一項には「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放する。」と言われて、いわゆる国際紛争を解決する手段としては放棄するのだ、武力は放棄する。「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戰力は、これを保持しない。」、ここで問題が二つあるだろうと思うのです。つまり外国と国際紛争を解決する手段としては、陸海空軍その他の戰力を持たない、つまり紛争解決の手段としては持たないのだ、併し自衛力としては持つていいのじやないか、それは持ち得るのだという議論もあるのであります。自衛のためには戰力を持つたつていいのじやないか、こう解釈できるのじやないか、こういう議論があるのであります。然らばここで問題になるのは、自衛力のために戰力を持つていいかということなのです。併しこの議論はいずれにいたしましても総理が言うごとく、現政府においては再軍備はしない、戰力を持たぬ、こういうわけであります。そこでこの戰力とは如何なるものを指すかということがこれが問題の基本点であろうと考えております。そこで日本がたとえ自衛のためであつても、この戰力を持つということになれば憲法改正して行く必要があるかどうか、又必要じやないのであるかどうか、これが問題であります。その問題は暫らく別として、要はこの現在の警察予備隊というものは、憲法第九條第二項の「戰力」と言えるかどうかということに帰着すると、私はこう考えるのであります。この「戰力」云々、この基準はどこに置くか、これが問題である。基準はどこに置くか。そこで私はこの戰力というのは、いわゆる戦争遂行に有効適切なる兵備と装備との編成を持つた兵力だ、こう私は解釈する。戦争遂行に有効且つ適切なる装備編成を持つた兵力である、こう考えます。これは結局のことを言つて国内法の問題でありまするが、この解釈は最高裁判所できめるでありましようが、一応私はそう考えておりまして、それと照し合せて見て、現在の警察予備隊のこの装備戰力と言えるかどうか。私は断じて言えない。かかるが故に、これで今の段階においては憲法をこのままに置いておいてよろしい、こう申上げておる、こう解釈します。
  50. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 憲法第九條の解釈の点で、第一点は第二項の「前項の目的を達するため、」というのは「国際紛争を解決する手段としては、」と、こう読めるのじやないかという説のあることは私はよく知つておる。併しその説は誤りであつて、これは芦田衆議院議員が憲法改正特別委員会委員としてこの第二項の修正をして、今のこういうわからないようなことになつたのでありますが、併し金森氏あたりにもよく聞いて見ても、そういう解釈をするのはそれは無理だ、こういうふうな通説になつておる。だからいやしくもそういう字句の解釈で、或いはそう解釈することもできるかも知れんというようなものを捉えて、それを根拠として憲法改正なくして戰力自衛のために持つていいのだという解釈はこれはいけないと思います。国民は納得しないのじやないかと思います。この問題はここで論議する必要はない。国民がもう裁断を与えると思うのです。戰力を持つためにはこの九條を改正しなければならん。この点はこれはそういう制度をおとりにならなければ国民が納得しないということを申上げておきます。  それから第二点として、それでは戰力というものは何だ。今おつしやるように戦争遂行に適切なる装備編成を持つた兵力、これは私もその定義でいいと思う。そうすると残るところは、警察予備隊保安隊となり、又は防衛隊なつてだんだんこの装備もよくなり、それから編成も充実して来る。殊に帰郷しておつた者が踵を返して非常のとき直ぐ集つて来るような組織をとつて来る、こういうことになつて来ると戰力に近付きつつあるということをお認めになるだろうと思います。現在のところ警察予備隊というものはそれはまだ戰力じやない、これは私もいいと思います。併しこれが十一万になり、それから今申したような防衛隊として組織を変えて行つてだんだん充実して来るとき、装備もよくなつて来るということになれば、この戦争遂行に有効適切なる装備編成を持つ兵力というものにだんだん近付きつつあるのだということは、これは法務総裁お認めになるだろうと思います。そこで、それではいつこの定義に当てはまるものになるか。言葉の上ではなかなかというようなことは言えるかも知れませんが、併しそれは国民がおのずからこれもうちわを上げるのでありまして、もう戰力なつて来た、こういう国民の認識というものができて来ると私は思うのであります。だからそういうときに、飽くまで政府が言葉の上から戰力にまだまだならぬというので憲法改正の手続をとらないで引延しておるということは、これは非常に惡いことだと私は思う。だから今はまだいいとして、この防衛隊が充実して来るその前にやはり憲法改正ということをお考えにならなければいかん。それはアメリカ軍が撤退をするときには勿論戰力なつております。併しその戰力になるのはアメリカ軍の撤退のときでなくして、その前に戰力なつておかなければならない。そうしなければアメリカ軍の撤退声要求することはできないのでありますから、戰力なつておかなければならないのであります。それは三十一万のときがそうであるかどうかそれはわかりませんが、ともかくだんだん戰力に近付きつつあるだから戰力に近付きつつあることを前提としますれば、成るべく早く憲法改正をやつぱりしておかなければならんと、こういうように私は考えるのでありまして、その点に対する法務総裁の御答弁をお願いいたしたい。
  51. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。私の考えといたしましては、いわゆる近代戰における戦争遂行に適切可能な能力を持つのには相当な費用がかかるだろう、これは五千億や六千億の金では私は到底そういうものはでき得ないと考えております。今の国力ではできない。この点からも総理が再軍備はしないのだと言つたのも私は理由があろうと考えております。併しながら今仰せのようにだんだん装備は完備し兵員が増して行つて、おのずから幾年か先になつて近代戰に有効適切なる、いわゆる兵力となるという場合においては、これは憲法改正の問題も起きるだろうと思います。そこで今憲法改正をしておけばいいじやないかという御議論も、それは私も一つの御議論として承わつておきますが、これは非常に考えなければならないと思います。果して今憲法改正ができるや否やという点、その点が一つあります。そこで政府としては現在の段階においては憲法改正を持出すべき時じやないと考えております。これはいよいよもう外国の侵入が目前に迫るというようなことであれば、これは国民は総蹶起するであろうし、而して国民が総蹶起しても武装がなければどうにもならないから、あらかじめ用意する必要も出て来ると思いますが、少くとも今の段階においてはそこまでの程度には行かない、こう考えております。
  52. 岡本愛祐

    岡本愛祐君 その点が非常に大事な点であります。国民の総意に聞いて、国民が反対すれば勿論憲法改正はできません。そこでその反対を恐れるために、戰力であるものを戰力でないとその間言つておくというようなことはこれは大変なことであります。それが一番問題なんです。戰力であると、こういうふうにもう新聞も又国民も、戰力となりつつあるのに戰力でないと政府がごまかして憲法改正をしないでいる、こういうふうに……。これは誤解ではありません。私はそう思うのが当然であると思うのであります。そういう段階なつて来ているのに、国民の総意を聞けばこれはどうもむずかしい。反対が多い。又フイリピンとか何とか外国の手前もまだ早いというようなことで、そういう考慮から戰力なつているのになつていない、こういうふうに言つているというように国民が思いつつあるのですね。この機微をお察しにならなければいけないと私は思うのであります。やはり私は憲法改正ということは今すぐやれという意味ではありませんが、併し成るべく早くやられることに政府が決心をなさることが必要だと思います。  それからもう一つ、これは戰力にならざるを得ないように考えております。法務総裁が来られる前にお話したのでありますが、この国際連合憲章の枠内における集団安全保障の問題、共同防衛の問題、これはすでに欧洲では北大西洋條約によつて同盟ができて、そしてお互いに自分の分に応じた戰力をおのおの各国で充実して、そうして一国が侵されれば他の国から助けてやる。これは一本の矢は折れやすいが、数本の矢であればなかなか折れない、折ることが困難だという一つの共同防衛であります。この方式が極東でもとられつつある。その一環として日米安全保障倹約というものができた。而もアメリカが今申したように早く日本自衛力考えてくれということを期待している。そうすれば日本戰力を持つようにしなければならん。そうして自分の国が侵されれば自分で防ぎ、ほかの国にも助けてもらうが、併しほかのフイリピンとか何とかが侵されれば、日本も分に応じて助けに行かなければならない。国外に助けに行くというのは戰力がなければできない。警察予備隊とか戰力というのは自分の国内だけのものではありません。そうすると日本だけがおれのところは戰力というものを持たないから永久に助けに行けないということは国際信義としてできない。そうすれば中立をとらない以上は、つまり民主国家群に入つてつた以上は、やはりその戰力を持たなければならない。これは当然なことであります。よくその実際をみんなに知らせれば国民も納得すると私は思うのであります。何も国民を怖がる必要はないのであります。私は速かに政府がそういう措置をなされることを要望しておきます。
  53. 岩木哲夫

    岩木哲夫君 法務総裁にお尋ねしますが、法務総裁戰力の定義と申しますか、基本精神というものは、戦争遂行に適切なる装備編成を持つているものでなければならないということであります。これは国際紛争に武力を行使する場合のことは、それは或いはわかるかも知れませんが、更にこれに附加えて法務総裁はジエツト機とか原子兵器等の装備がなければいけない、近代装備がなければ戰力の定義は確立しないということであります。ところがこれは相手方の場合において生ずることである。例えばアメリカであるとかソヴイエトであるとかといつたようなものについては原子兵力、或いはジエツト機の保有は認められますけれども、例えば北鮮とか南鮮であるとか、或いは台湾であるとか或いは仏印ベトナム、ああいつたような所の戰力というものは必ずしもそれが保有されているとは思えない。そこで外敵なるものは必ずしもアメリカやソヴイエトに限つたことではないのである。こうした近代兵器、装備を持たない国々とも或いは将来どういう場合が起り得るかも知れない。従つて戰力の定義というものは相手においてその意義が又おのずから成り立つのであつて国内日本の国土を防衛するという戰力というものは、そういう必ずしも近代戰に副うような装備編成がなくても、いわゆる一定日本の現在の国力に相当したいわゆる武器を持つならば、これは私は戰力と思うのであります。であるから、日本がこの困難な財政上到底、何兆億も要るような装備編成するということは事実上困難であつて、又日本がそういつた原子兵器であるとか或いはジエツト機を保有する国と戦うということは、これはもう夢だに……現在の科学兵器、現在の資材、資力の上から見ましてもこれは不可能なことであります。そこで日本の国を護るといういわゆる自衛力なるものの戦力、国際紛争に加入する戰闘行為の自衛力とはおのずから別であります。この際我々が問題といたしておるのは、日本の国を護るという自衛力漸増一環として今回予備隊防衛隊と改組され、その内容性格が著しく違う、今大橋国務大臣の言明によれば、安全保障に伴う経費五百六十億のうちこの保安隊又は防衛隊の経費にも使うということを言明されたということは、すでに安全保障の一環として日本自衛力増強するということは、自衛力増強の戦力というものがここにおいて完備しつつある段階にあると私は思う。であるから憲法第九條の問題については、今法務総裁が二様の観察があるということを仰せられましたが、或いはその通りである。そのうちの第二に御指摘された日本の国を護る、自衛戰力の部面に今回の場合には相当すると私は思うのでありますから、当然こういうことであるならば、憲法改正段階に私は入るべきであると思う。これを先にしたらよいか、今したらよいかということは議論があるということでありますが、いよいよ外敵の直接侵略が行われる場合に、いわゆるおつ取り刀では間に合わない。やはり戰力というものは、一つはいわゆる自衛力の精神力の培養、基礎観念というものが確立されなければいけない。自衛精神の確立ということはどうしても必要でありますから、この観点から見ましても、やはり憲法改正は早くより取りかかつて、八千五百万人が総、蹶起で日本の国を護らなければならんということを国民に周知徹底せしめるほうがよいのであつて、現在の政府考えられておるように頬かむりして、こつそり裏庭で、その囲いの中で人に見えないように戦力を増強しようという場合に、いざの場合には役に立たない。であるから本当の自衛精神を培養し、それを確立する上においては、前以て憲法改正の意図に出るということ、但しそれと並行していわゆる自衛力漸増、即ち日本の国を護るという自衛戰力確立というものと並行しないと、私は、意味をなさないし、如何に裏庭で警察予備隊保安隊或いは防衛隊と改組し、日米安全保障に伴う経費五百六十億が警察予備隊費五百四十億のほかに食い込もうという意図である、装備も相当飛躍増大されるということは、先ほど大臣が言われた通りでありますならば、当然憲法改正を今より取りかかり、又そういうことを国民に周知徹底せしめて、自衛戦力の精神的の確立ということを並行せねばならないと思いまするので、当然憲法改正を意図すべきである、私はこう思うのですが、大臣如何ですか。
  54. 木村篤太郎

    国務大臣木村篤太郎君) お答えいたします。先ず誤解をされておるので解きたいと思います。私は先ほども申上げたように、原子兵器やジェット機を持たなければ戰力とは言えないと言つたのではないのであります。これははつきり言つたのであります。そういう国さえあるんだ、そういう装備を持つた兵力に対しては、日本予備隊装備では、これは鎧袖一触で役に立たぬ。これを比べて見れば、九條第二項の戰力に該当するようなわけではない、こう申上げたのであります。誤解を解くために私は申上げます。  そこでこの憲法改正の問題でありまするが、少くとも私はいずれにもせよ、どこの国と仮想するわけではありませんが、万一外国から侵入されたような場合に、これに対抗して行く兵備を持つというには、これは相当な装備が必要であろうと思います。私の知る範囲におきましては、第二次大戰におきまして、機関銃は大体七ミリでありますが、今二十ミリから甚だしいのは三十ミリになつておる。この發射速度も一分間に八百発から今三千発が三千五百発になつておる。こういう装備をして来るということになると、日本の今の国力では到底できない。現に兵器より。ハンと叫ぶ人がたくさんあるのであります。この情勢を考えて見ますると、今直ちにさようなことを目的とする軍備を云々するのは早計であろう、私はこう考えております。そこで問題は、ただ日本内地の治安を維持するに私は主力を置いて行かなければならん。外敵の侵入ということよりも、むしろ外国と相通じて日本国内を撹乱させようというこの意図に対し、その行動に対して、差当り日本を防衛して行かなければならん。簡單に申せば、日本内地の治安確保、これが先決問題である。外敵の侵入ということは、私は第二、第三の問題であろうと思います。それより早く来るべきものは、外国と相通ずるところの内地の撹乱であります。これを我々心配しているのであります。それに対する処置をどうするか、これが先決問題であります。それには警察予備隊を十分に訓練し、この目的を達成して行くことが最大の急務であろうと考えている次第であります。一再軍備という問題については、我々はまだそういうことをやるべき時期じやない、こう考えております。
  55. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 アメリカで今、日本の両條約が国会に出されて問題になつています点は、平和憲法日本に作らせたということが非常に今問題になつています。日本において平和憲法国会が制定いたしましたわけでございますが、アメリカの切なるお勧めによつてできたということも否定できない事実であります。そこで今アメリカ国会上院で問題になつています点は、平和條約と安全保障條約を日本と結び、そしてアメリカが世界に展開しておる戰略態勢の一環として、日本を再軍備するという強い要請があるにもかかわらず、日本に平和憲法を押付けたために、日本人がそれを砦にしてアメリカの要請を聞かない、従つて両條約を結んでも、実際アメリカの要請に日本を使うことができない、結局独立のしつ放しになるではないか、こういうことが言われておるわけであります。例えば当時、現在国務長官をされていますアチソンが次官補であります。それからそこにオーエン・ラチモア、その他の進歩的なアジア通の学者の参加を求めて行く立場と、日本におられたグルー一派の立場とが対立したことは御存じの通りであります。即ちグルー氏は天皇制を当時のような立場に置き、そうして軍隊を解体しない、こういう立場をとつたわけであります。ところがオーエン・ラチモアの立場は、天皇を象徴の位置に持つて来る、それから軍隊をなくする、戦争を放棄するという規定を入れる立場にして、グルー氏を罷免いたしまして、そうしてマツカーサ上元帥にそういう三つの基本的な立場において平和憲法を作らせたということは明らかであります。そこでアメリカで一番問題になつておる点は、今大統領の選挙もからんで、平和憲法を押付けた責任如何、こういうことになつておるわけであります。そこでアメリカといたしましては、平和憲法を押付けた建前からして、それを改めることはできないから、その憲法を如何にしてごまかしてやつて行くかということ、この現在とられつつある立場は明らかであります。私は法務総裁が如何ように言われようとも、そういう平和憲法国民投票によつて改正すること一はできないから、三百代言とは言いませんが、優れた法律家としての頭脳でいろいろ解釈されて、如何にして憲法違反を国民に合法的な仕方のような形でやられようとするかということは、これは明らかであります。世界に、戦争遂行に有効適切なジエツト戰闘機や原子爆弾を持たなければ戦力でないというような規定は、クラウゼヴイツツの「戦争論」を見ても、どこにもないわけであります。そういうものを持つておる国は、アメリカとソヴィエト以外にはない。そういう点はこれは非常に問題で、アメリカが両條約を結ばせて、そうしてアメリカのトルーマン大統領の立てておるところのソヴィエトを封じ込まする政策の一環として日本を戰略的に配置する。ところが平和憲法アメリカの勧めによつてつて、それを改正することができない、ひよつとすると日本がそれを楯にとつて、独立だけしてアメリカの要請に応えない、独立の食い逃げになるかも知れない、そういうことがアメリカのいろいろな情報を見てもはつきり出ておるのです。それを法務総裁が卓越したところの法律技術によつていろいろこの解釈をされておるわけでありますが、今後、時間がありませんから、いろいろ御質問したいと思いますが、世界中に原爆やジエツト戰闘機だけ、そのような兵器を持たんところは戰力ではないという規定は近代兵学を以てしてもないことだけは一つ御了承して今後の委員会に臨んで頂きたい、そういうことを申上げておきます。
  56. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) 時間も大分経過いたしましたが、お諮りいたしまするが、月曜日に今日取上げました問題について本会議で緊急質問がございまするから、月曜開催の予定を火曜に繰下げましてやりたいと思いますが、次回この問題を引続いていたしますか、お諮りいたします。
  57. 中田吉雄

    ○中田吉雄君 もう少し先のほうがいいかも知れない。
  58. 西郷吉之助

    委員長西郷吉之助君) それでは火曜日に昨日の問題の平衡交付金や何かの問題を取上げます。それでは本日はこれにて散会いたします。    午後一時十二分散会