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政府委員(石田正君) 本
法案につきましては提案理由といたしましてすでに御
説明してありまする次第でございますが、なおこの機会におきまして若干これを補足させて頂きたいと存じます。
国際通貨基金協定及び
国際復興開発銀行協定への加盟の経緯について先ず申上げます。
昨年八月九日、
日本政府はこの両者に対しまして加盟の申請をいたしたのであります。その後本年の一月二十三日になりまして、基金の当局から
日本の割当額を二億五千万ドル、金の拂込額を六千二百五十万ドルにする旨の内示がございました。このことは
国際復興開発銀行について見まするならば、割当額はやはり二億五千万ドルであり、ドルの押込額は五百万ドルということに相成る次第でございます。
政府といたしましては国際通貨基金に対しましてこの條件を検討いたしました結果、四月の十八日に加盟することを閣議決定いたしたのでございます。そうしてその旨四月の二十三日にワシントンの在外事務所を通じまして、基金当局に伝達いたした次第でございます。この五月の二十九日になりまして、基金及び
銀行総務会におきまして正式に右の條件による
日本の加盟の承認をすることに相成つた次第でございます。つきましては本
法案の條文につきまして御
説明を申上げたいと存じます。第一條でございますが、これは
法律制定の目的を規定いたしておるのであります。我が国が基金協定及び
銀行協定へ加盟するに伴いまして
出資の拂込その他各種の事務を履行することとなるのでございますが、そのうち国内的に、法的措置を講ずるところの必要があるものにつきまして所要の規定を設け、協定の円滑な履行を確保するということがこの
法律制定の目的でございます。
次に第二條でございますが、
出資額につきましては我が国は基金に総額二億五千万ドル、邦貨に換算いたしまして九百億円、
銀行にも同じく二億五千万ドルをそれぞれ
出資する旨を規定いたしておるのでございます。この
出資をいたしまする場合の二億五千万ドルと申しまするのは、現在国際通貨基金に加盟いたしておるところの国におきましてこれより多い割当額を有するものは七カ国でございます。
それから次に第三條でございますが、これは
出資の方法を規定いたしておるのでございます。第一に国際通貨基金に対しましての支柳方法というものは次の二つの
部分に分れるのであります。割当額二億五千万ドルの二五%に当りまする六千二百五十万ドルに
相当する分、これは邦貨にいたしますると二百二十五億円に相成るのでございますが、これは金で加入前に支拂うということに相成ります。残りの七五%に当る一億八千七百五十万ドル、邦貨にいたしまして六百七十五億円
相当額というものは、円で加入後に支拂うということに相成ります。そこでこの円で支拂います
部分のうちで、円貨で支拂を要しまするところのものは割当額二億五千万ドルのほぼ一%に当るところの十億八千万円でございまして、残りは
政府の発行する無利子且つ譲渡禁止の一覧拂の証券で
出資するということに相成るわけでございます。第二に
国際復興開発銀行に対しましては、その拂込方法は基金の場合と違いまして三つの
部分に分れます。第一は総額二億五千万ドルの二%に当る五百万ドル、これは邦貨に換算いたしまして十八億円、これは金又は米ドルで加入前に支拂うことに相成ります。次に総額の一八%に当りまするところの四千五百万ドル、即ち邦貨に換算いたしまして六十二億円に
相当するものは円で同じく加入前に支拂います。この場合円で拂込を要しまするのは、この四千五百万ドルの一%に当ります一億六千二百万円でありまして、残額は基金の場合と同様に一覧拂の証券で
出資することができるわけでございます。それから最後に総額の八〇%に当りまするところの額は、加入後
銀行から催告のあつたときに金又は米ドルその他の通貨で支拂うということに相成
つておるのでございます。
そこで第三條及び第四條につきしまして予算措置との
関係が起
つて来るわけでございます。本加入に伴うところの予算措置につきましては、
昭和二十六
年度の補正予算におきまして二百億円を計上済でございます。そこでこの二百億円を今申しましたような加入のための
出資に割当てるための使用区分といたしまして次のように
考えておる次第でございます。第一に百八十億円で外国為替特別会計の保有いたしておりますところのドルの五千万ドルを買いまして、次に五百万ドルはドルのままで以て
国際復興開発銀行のほうの
出資に充てます。残りの四千五百万ドルで金地金をアメリカで買いまして基金の
出資に充てようと思うのであります。金又は米ドルで
出資を要するところの先ほど
出資を要するところの、先ほど申上げました六千七百五十万ドルのうちから、右の五千万ドルを差引きました一千七百五十万ドルに
相当する金につきましては、これは量で申しますとほぼ十五トン六百キログラムに相成りますが、これは
日本銀行の保有金から買入れたいと思
つておるのであります。この額は円にいたしまして、帳簿価格で約五千四百万円と相成ります。基金に対しまして十億八千万円、それから
銀行に対して一億六千二百万円を円貨で支拂うことにいたします。最後に残額の約七億四百万円につきましては、金地金を輸送いたしましたり或いは改鋳いたしましたりするような経費に充当しよう、こういうように
考えておるわけでございます。そこで今申しましたうちで以て、
日本銀行の所有金地金を同行の帳簿価格でありますところの二百九十ミリグラムにつきまして一円、即ち一グラム三円四十五銭で買入れまして、これを基金に対する金による
出資の一部に充てることができることにいたしましたのは、これは二百億円の予算の簿囲内で
出資を完了するということの上におきまして、こういう方法が適当であろうかと
考えたからでございます。なおこの買入価格と現在
政府が貴金属特別会計で金地金を買入れておりますところの価格、即ち1グラムにつきまして四百一円との間には
相当大きな差があるわけでございますが、この差額につきましては別に
法律によりましてその処理を定めるということをここに規定してあるわけでございます。
第五條は国債の発行の規定でございます。基金及び
銀行に対しまして本邦通貨で
出資を要するところの
金額のうちで直ちに現金を以て拂込をする必要があるところの
金額、即ち基金に対しましては六百六十四億二千万円、
銀行に対しましては百六十億三千八百円、合計八百二十四億五千八百万円というものは基金協定の第三條五項、それから
銀行協定第五條第十二項によりまして国債を交付して
出資に代えることといたしました。これに必要な国債を発行することができるというふうに規しておるのでございます。この国債は無利子でございまして、後に述べまする
通りに、
日本銀行が
政府の命令によりまして買取る場合以外は譲渡を禁止されているものでございます。
それから第六條乃至第十條は国債の償還等につきまして規定いたしておるのでございます。基金及び
銀行に
出資に代えまして交付いたしました国債は、これは協定書から申しましても要求拂であることが必要なのでありまして、基金又は
銀行からこれを現金にしてもらいたいという請求を受けました場合には、二十四時間以内に本邦通貨で支拂わなければならないものでございます。従いまして、仮に償還財源が不足いたしまする場合も考慮いたされまするので、そういう場合には
銀行にこの国債を買取らせまして、そうして基金又は
銀行の要請に応ずることといたします。そうしてこの
日本銀行が買取つた国債につきましては、これは利子その他償還期限等を一般の国債の発行條件に準じまして定めることといたした次第であります。この国債の償還及び利子の支拂につきましては、一般の国債と同様に国債整理基金特別会計を通じて行うという原則はと
つておるのでございまするが、併しながらその償還財源をどれだけ入れるか、こういうような問題につきましては、国債整理基金特別会計法の第二條の規定によりまして万分の十六以上を年々繰入れるというようなことをしないで、別途予算の定むるところによりまして一般会計から国債整理基金特別会計へ繰入れることにいたした次第でございます。その理由は、先ほど来申上げましたような工合に、要求がありません場合におきましては、償還という問題は起らないのでありまして、どういう
金額が要求されるかは不測でありまするので、こういうような工合にいたした次第でございます。
それから十一條と十二條におきましては基金との取引
関係及び寄託所について規定いたしております。基金と我が国との間におきましては、必要な他の基金加盟国通貨の本邦通貨又は金による買入れであるとか、或いは基金の保有いたしておりまするところの本邦通貨の買戻しであるとかいうような工合に、いろいろと通貨の売買取引が行われることと将来予想せられるのでございますが、それらのことが現実に起りました場合に、これらは外国為替
資金特別会計を通じて行うということにいたしましたのが第十一條でございます。それから基金協定の十三條の二項とか、或いは
銀行協定の第五條十一項とかという規定がございます。これによりますると、加盟国は自国通貨をどこへ寄託しておくかというその寄託所を指定しておかなければならないということに相成
つておるのでございまして、その
関係におきまして、我が国につきましてはその寄託所は
日本銀行であるということを指定できまするようにいたしたのが第十二條でございます。
大体
法案の内容の主なる点につきまして一応御
説明いたしました次第でございます。