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1952-05-22 第13回国会 参議院 大蔵委員会 第55号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十二日(木曜日)    午前十時四十九分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     平沼彌太郎君    理事            大矢半次郎君            伊藤 保平君            菊川 孝夫君            木内 四郎君    委員            岡崎 真一君            黒田 英雄君            西川甚五郎君            溝淵 春次君            小林 政夫君            小宮山常吉君            田村 文吉君            森 八三一君            野溝  勝君            下條 恭兵君            菊田 七平君            油井賢太郎君            木村禧八郎君   国務大臣    大 蔵 大 臣 池田 勇人君   政府委員    大蔵省主計局長 河野 一之君    大蔵省主税局長 平田敬一郎君    大蔵省理財局次    長       酒井 俊彦君    大蔵省銀行局長 河野 通一君   事務局側    常任委員会専門    員       木村常次郎君    常任委員会専門    員       小田 正義君   説明員    大蔵省銀行局資    金運用課長   高橋 俊英君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○国民貯蓄債券法案内閣提出、衆議  院送付) ○設備輸出為替損失補償法案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) では五十四回の大蔵委員会を開会いたします。  国民貯蓄債券法案について質疑を行います。
  3. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 「国民貯蓄債券は、抽せんにより割増金を附することができる。」ということになつておりますが、先般の御説明では初めは成るべく割増金は附けないでやろうというお考えなるやに伺つたのでありますが、実際はどういうふうにやつて行くおつもりですか、少し詳しく御説明願います。
  4. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) まあ只今その銀行のほうにおきましても割増金附定期なんかをやつておられる。昔のことを考えますと割増金の附いたものという、これは勧業債券、それをまあ見倣つて国民貯蓄債券割増金を附けたのでございますが、最近では割増金を附けるどころか宝くじも一方にある。非常にそういう射倖的な一般的に風潮があると言いますか、慣習がついてしまつた。これは漸次一般的に是正するというか、そういつたものは余り好ましいものではないと考えるのでございますが、この貯蓄債券をやります場合に、今そういう方法で同じことを見倣つてつても、果してそれが非常に魅力のあるものであるかないか、むずかしいと思うのであります。ほかに割増金の附いたものがないというようなときでございますると、大変魅力もございますが、今多少の割増金を附けましても或いはそれほど魅力がないと思う。ですからその逆を行つて確実な利廻になるようなものを出したほうが却つていいのじやないか。利廻は先ほど申上げました大体七分を下廻るような程度になりますが、それは五年持つということになります。その程度でありましても、くじに当る、当らないでそんなに利廻の差が生じない。利廻りの差が生ずるということでは却つて大多数の人は低い利廻りを受けることになる、ですから今のような時代には、却つて七分を下廻る程度でありましても、確実な利廻になるような債券のほうがいいのではなかろうかという考えもある。併しまあ実際の実情から申しますると、一般的には割増金を附けたほうが余計売れるのじやないかという考えもございます。そこはやつて見なければわからないのでありますが、臨時金融制度懇談会等におきましても割増金を附けてまでやる必要はないように思われる。成るべくなら附けないほうがいいのではなかろうかという御意見もございましたので、私たちとしては当分割増金を附けない方法でやつて行きたい。併し情勢によりまして、一方に電源開発等資金を供給するという必要もございますので、それでは余りにも魅力がなくて売れないということになりますれば、年間差当り今年は六十億円、来年度は百億円くらいでございますからして、その程度のものは売り捌くに必要な程度までは割増金を附けることも考えられるのでございます。まあこれは見通しの問題でございますから何とも申上げかねるのでございますが、私たちとしては少くとも今年度は割増金を附けないで売り捌いて見たい、こういうふうに考えております。
  5. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 大体割増金を附けないで出したい。そうしてこの利廻平均は、七分平均にしたい、こういうお話でございまするが、果してそのようにしてこれが売れるかどうか、非常に私疑問じやないかと思います。割引興業債券でも一年ですでに七分に下廻つている際に、五年の長いものを利廻七分というので果してこれが売れるかどうか非常に疑問で、魅力は全然ないばかりでなく、利廻の点から言つても非常に不利になると思います。一方郵便局では定額郵便貯金制度もありますが、あれを一体五年持つておれば、利廻はどの程度になるのですか。それらとの比較も伺いたい。
  6. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 定額のほうは五年というが、只今制度を見ますと二年を越えた場合には遡つて六分の複利利廻になる、こういうことになつていますので、二年以上、十年まではあれはその期限がありまして十年間ずつと複利でございます。この債券は五年で期限が来てしまうわけですが、定額の場合は十年までは複利計算をやる。その代り二年を越えた利廻は皆同じでございまして、ずつと六分でございます。こういうのでございますが、定額との相違は、主として記名であるか無記名であるかという違いでございます。
  7. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 これは割引発行によるものでありまするが、税制の関係からいえば無税になるんですか、それとも課税になりますか。
  8. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 割引発行いたしますものは源泉で課税はいたしません。でありますから厳密に申し上げますると、申告は普通の所得に合算して申告をして課税を受けることになります。この制度は皆様も御承知のようにこれは無記名でございますので、申告しない場合には捕捉することは非常に困難である、こういうわけでございます。
  9. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 これは一万円以下となつておりますが、始めは額面千円くらいのものを出そうというお話であります。そうするとコストが相当高くつく。殊に或る一定の期間経過後は買上げるという制度がありますというと、五年までの間に相当買上げなければならんことになつて来まして、従つてそういう点を考慮いたしますというと、発行者としては非常に高い利廻のものになるのじやないかと思います。大体発行者利廻はどの程度に見ておりますか。
  10. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) これは只今大矢委員の仰せられますように、途中で買上げますために、全部五年間でコスト、つまり発行経費や諸掛費を償却するというわけに参りません。私たちの予想でございますが、これはいろいろなやり方がございますが、大体三年強くらいの平均歩留り歩留り期間としては三年強くらいのところ、そういう前提においてこのコストを計算して見ますると、発行者たる資金運用部コストといたしましては、利廻は六分九厘六毛といたしまして、経費を加えたコストは八分六厘四毛というふうな数字が出て来るわけでございますために、電源開発公社にこの金を以つて貸付ける場合の利率といたしましてはおおむね九分見当考えておりますが、八分六厘四毛というのは市中におけるところの、即ち幾らか長期資金コストといたしましては、さほど高いとも申せない。九分で貸し得る程度であればどうやらこうやらやつて行けるのではないかというふうに思つております。と申しますのは、成るほど額面千円でございますが、それらの印刷等コストにつきましても印刷庁で目下準備しておりまするが、普通の市中よりは大分安くできるようにいたしておりますが、その券面の小さい割合にはコストは比較的上らないということでございます。
  11. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私はこれは利廻の点から言つて応募者に決して有利ではありません。ほかの銀行預金のほうには、先ほどお話がありました通り、非常に多額割増金附のある定期預金が盛んに行われている、こういう際に、このようなものを出しても果してどの程度消化があるであろうか、そうして英国、米国における例によりましても小額債券を出しても、途中からの買上償還をしなければならん数量が多くなつてペイしない。結局こういう制度は戰時以後どうしてもインフレ防止のためにやらなければならん場合に、事の如何を問わず資金を吸収しなければならんときにやつて初めて効果を現わすのであつて、こういうふうに経済界の安定したときにこの制度を新らしく拵えて、而も割増金附でなしにやつたならばとても消化はむずかしい。而も資金コストが非常に高くつきまして、資金運用部から申しましても、ほかのものが預託金五年ものは五分五厘、今度金利が上つて六分五厘ですが、その程度のものならこれは八分五厘にも当るというのでは、資金運用部独立採算の点から言つても非常に疑問がある、新らしく起す価値のあるものかどうかということに非常に疑いがあるのではなかろうかと思います。又その使途の方面から言つても、こういうのはむしろ郵便貯金よりも零細な資金を集めるわけですし、或いは中小商工業者金融のほうに向けるべきものを、電源開発のようなものに向けるのはどうかというふうな感じがいたしますが、如何でしよう。
  12. 河野通一

    政府委員河野通一君) 御意見御尤もな点もあると思うのでありますが、これは見方の問題でありまして、実は先ほどもちよつと課長から御説明申上げましたように、この法案につきましては大蔵省内に設けました臨時金融制度懇談会にかかつたのでありますが、そのときの御意見を伺いますと、むしろこれは非常に消化が、実は国が発行主体になる関係もあるから、むしろ一般銀行とかその他の金融機関を圧迫する虞れがあるのではないかというような御意見さえ相当出ておつたわけです。それらの点も参酌いたしまして発行の総額をこの法案に書いてございますように抑えてあるわけでございますが、そういつたふうな点もありましたぐらいでありまして、消化につきましてはやはり国の発行いたしますものでもございまするし、私どもはそう実は心配いたしておりません。  それからもう一つ、これによつて集りました資金電源開発へ廻すことは、どうも資金性質から言つて適当でないのではないかという御意見、これは電源開発とは実はこの法律にも限つてはおらんのでありますが、長期資金を集めまして国全体の立場から最も必要な資金にこれを振り向けるということは、必ずしも電源開発に限らなくても、そういうことは一つの行き方として適当なことではないかというように私ども考えております。中小金融中小金融として別途できるだけ多額資金を考慮するように努力いたしますが、この制度としては、源は零細な資金でもありますけれども、やはり講和後の国の資源開発というような、非常に大きな要請に合うような資金運用をやつて行くことも、一つ考え方ではないかというふうに私は考えておる次第であります。
  13. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この貯蓄債券発行主体ですが、これは資金運用部特別会計発行するのか、一般会計分として発行するのですか。
  14. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 只今の御質問にお答えいたしますが、資金運用部特別会計から発行しても差支えないと思いますが、但し資金運用部特別会計歳入になるのではなくて、資金運用部特別会計というのは実は多少他の特別会計と趣を異にしておりまして、およそ資金運用部資金というものが先に存在いたしまして、その資金に伴うところの利子、それを取扱うところの経費というものを経理するのが資金運用部特別会計であります。つまり資金に附随するところの特別会計ですから、これは手取金及びその償還の元本は資金のほうのあれになりまして、歳入歳出とは関係ありません。
  15. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと資金運用部特別会計としては、こういう債券発行できないのですね。それで一応一般会計分として発行して、そうして資金運用部特別会計のほうへこれを廻す、こういうことですか。
  16. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) そうではございませんで、一般会計発行いたしますれば一般会計歳入になるわけでございますが、歳入といたさないで初めから資金運用部資金となるのです。昔預金部預金法というのが資金運用部資金法の前にございましたが、それによりますと、郵便貯金として受け入れてある現金は、これを預金部預金とする、こういうふうになる、初めからそういうふうに国民から吸い上げて来た金が直ちにその場合は預金部預金となる、こういうことでありますが、それと同じように、この金はどこも通さない、直ちに資金である、こういう意味でございますから一般会計との関係は全然ないわけでございます。
  17. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関係ないようにしたのであつて、それじやどういう根拠に基いて、財政法の何條に基いてこの債券発行するのですか、こういうことは財政法によつてできるのですか。
  18. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) その点はこれは多少議論に亘りますが、資金運用部資金法なるものは、財政法に盛られていない部分ですね。それを規定したいわば財政法の特例的な存在である、私たちはこういうふうに考えております。財政法にはこういつた郵便貯金のような金を、どういうふうにするとかいうようなことは何ら規定してございません。それを規定したのが資金運用部資金法でございまして、その意味におきましては、資金運用部資金法財政法の補完的な基本法規である、こういうふうに考えております。この債券收入金資金運用部資金として歳入歳出外資金として扱われることは、いわば資金運用部資金法関連條文がございますが、資金運用部資金法第一條及び第六條第一項の規定にかかわらず、資金運用部資金とし、ということが第三條に害いてございます。それによつて言わば財政法第何條というふうなものに基かないでこの法律によつて資金運用部資金として扱う、かように了解しております。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかるのですが、併し普通の預金と違うのでしよう。一種公債発行するわけでしよう。それで歳入歳出に計上されない特別の資金として保有されるわけですね。そういうわけでしよう。ですからそれは財政法第四十四條には、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」となつておりますから、財政法を適用すれば、四十四條の規定によると思うんです。法律によつて歳入歳出に計上しない資金を保有できる、こういうふうに私は解釈しなければ、普通の郵便貯金と違うのですから、債券発行したり公債発行するのですから、そういう解釈によらなければならないのではないかと思うんですが、如何ですか。
  20. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 只今木村委員のお説の通りだと思います。私は財政法に何もないとうつかり申上げましたが、第四十四條にそういう規定がございますれば、その規定に基いた特別の法律によりまして、歳入歳出外資金としてこれを把握する、こういうふうに考えております。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうなるとやはり問題が出て来ると思うんです。一応四十四條の規定によつて、「国は、法律を以て定める場合に限り、特別の資金を保有することができる。」、ところがこれは四十四條の規定では大体いわゆる総計予算主義ですか、第十四條の例外規定になるわけですが、併しそれは大体これまできまつておるのじやないですか、国債整理基金とか貿易資金とか、金資金造幣局資金特別会計等、こういうところに適用されていて、まあ本来ならば一般会計に所属すべきものをそういうふうに法律を以て特別の資金を保有する形にすることはできないのじやないかと思うのです。先ほど伺いますと、資金運用部特別会計は、これは本来そういう債券発行する所じやない。従つて資金運用部特別会計によつてこれを発行するというのじやないですから、一応一般会計分としてこれは発行すべきものであつて、それを便宜的にこの法律によつて取扱をしようというのであつて、実はこの発行形式自体が私は四十四條の精神には合つていない、違反しておると思うのですが、どうですか。
  22. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) 別に併しそういう資金というものの範囲が厳重に規定されておりまして、それ以外の資金はあつてはならんということにはならないと思うのでございます。ですから、これは取扱の問題でございまして、アメリカの制度ではたしか歳入に上げておると思いますが、歳入歳出を通してこういう債券経理をするということは、これは考えられることであります。ただ私たち考えといたしましては、昔の貯蓄債券便宜勧業銀行発行されまして、その手取金を全部預金部に預入させ、その利子を拂つて行く、こういうやり方をしたわけであります。今度の場合にはまあ誰が発行するかということが問題になつたのでありますが、今更勧業銀行特殊銀行でも何でもございませんし、それに発行させ預入させるという方法をとらなくてもいいのじやないか。但しこの資金一般会計を通してやるということは、まあ予算その他の関係から言つては、非常に厳密にはなりますけれども、前に行なつた勧業銀行発行させてそれを預入させるという方法が許されておつたということであるならば、この資金資金運用部資金として、歳入歳出を通さなくてもいいのじやないか。いわばこれは主として郵便局から売出すものでありますから、郵便局でやつておる定額を無記名にしたようなものでございまして、そういう点でそれほど厳密に歳入歳出を通さなければならんという制約を加える必要もない。これを運用するということが主たる目的でございまして、いわば運用資金でございますから、資金運用部で扱つたほうがいいのじやないか。こういうふうに考えてやつたわけでございます。法律上は別に一般会計を通さなければならんという制約はないように考えておるのでございます。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しそれはこういう貯蓄債券発行する側からすれば法律に抵触するということもありつこないので、今の財政法、それから資金運用部特別会計法を見て、こういう形式発行するということは、その法の規定から見て私は根拠がないと思うのです。やはりどうしても今のような状態になれば、こういう財政法というものがある以上、資金運用部特別会計法で、あそこでは債券発行できないというならば、どうしてもこれは財政法第十四條に基いて歳出予算として通さなければ筋が通らないと思います。さつき運用資金であるからこれは一般会計歳入歳出に拘束されないという答弁がありましたが、そんな理窟はない。ほかに運用資金でも一般会計から繰入れておるのはたくさんあるわけですよ。出資金としてですよ。たくさんあるわけですよ。僕は理由は立たないと思う。こういう歳入歳出に拘束されないで、これはいわゆる公債です、それを発行する前例というものを認めることは私はよくないと思います。それは従来はそうだと言つても、こういう財政法ができておる以上は、第十四條と四十四條の規定によつて、これは昔と違つて、こういう形で公債発行すべきものじない。私はそう思うのですが、どうですか。
  24. 河野一之

    政府委員河野一之君) 貯蓄債券発行者政府でありますが、まあ従来とは違うかもしれませんが、従来こういつたものは国の各般の支拂の財産となるべき收入というふうに実は解しておりませんで、従つて会計法でも現在の財政法でも同じでありますが、そういつた性質のものは、これはまあ法律の立て方なり或いはいろいろな慣例なりで決まることでありますが、歳入ではないというふうに実は解して、従つて一般会計歳入には入れない。つまりそれで出ました金は、丁度郵便貯金で入つて来てその郵便貯金をほかのほうに運用して貸すというような現金の受入及び現金支拂であつて、そういつた金が回転しておる。国の一般歳出に当てるところの、つまりいろいろな経費に、いわゆる経費に当てる收入ではないという観念で、歳出と扱つておらない取扱でございます。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは財政法第四十四條の規定だと思うのです。「特別の資金を保有することができる。」。特別の資金というのは特に歳出財源と違う。歳出財源とならない現金又はその他の資産、こういうふうに解釈するのであつて、今の河野主計局長お話では、第四十四條の解釈だと思うのです。そうじやないのですか。
  26. 河野一之

    政府委員河野一之君) 四十四條は、法律によるのでなければ特別の資金を持つことができない。従つて貯蓄債券として持つ資金は、この法律によつて持つ資金ということに相成ろうと思います。併し私が申し上げた歳入歳出に入れるか入れないかという問題は、財政法二條收入支出ということの定義から来るものであります。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 併しこの貯蓄債券発行については資金でしよう、これは。資金です。特別の資金です。ですから四十四條の規定によつて発行するというようにしなければならないと思うのです。発行根拠としては。
  28. 河野一之

    政府委員河野一之君) これは貯蓄債券発行根拠法でありますから、この根拠法発行することはできる。それで持つ資金というのは、この資金にはいろいろありまして、消費的資金或いは運用的資金、或いは整理的資金、いろいろありますが、一種運用資金だと思います。この一応資金なつたものを資金運用部に入れて運用するという意味において、四十四條の問題だと思います。併しこの資金を取得し或いはこれを使うということは、必ずしも歳入歳出にそれが関係する問題ではないのでありまして、そういう資金を取得し、又使用することが歳入であり歳出であるかという問題は、財政法二條として解決さるべき問題だと思います。例えば外為特別会計のときに、外為が従来の貿易勘定から資金をもらつて外為資金というものをこしらえた場合に、これは歳入歳出でも何でもありません。そしてそれがいろいろなものに運用されておるものは、決して歳出歳入とは考えておらないわけです。そういうことと同じ仕組だと私は考えております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その歳出歳入を外すということはよくわかるのですよ、締しそれは国債整理基金とか、それからまあ貿易関係資金特別会計、それから只今お話特別会計資金もそうだと思うのです。併しそれは特別会計法にそういう規定があるわけでしよう。資金運用部特別会計法には債券発行して、それを運用していいというあれはないと思うのですよ。運用については郵便貯金その他についての運用についてはあると思いますけれども債券発行していいという規定はない、資金運用部特別会計には。ですからその法律によつて特別資金を保有することができるという場合は、何か資金のうちで、そういう資金特別会計、そういうものがなければならないのではないのですか。
  30. 河野一之

    政府委員河野一之君) それは資金を持つこと自体法律が要るというのでありますが、外為でもその他の特別会計でも、その資金経理するための特別会計資金を持てるか、持てないかということは、別個にまあ特別会計法規定されてあることもありますが、別の根拠によつてできておるのであつて、その運用なり或いは整理についてどういうような経理でやつて行くかというのが特別会計、その場合に何を收入と見、何を支出と見るかというのは特別会計法にみな書いてあるわけです。殊に貯蓄債券の分は、この根拠法によつて発行したものの收入金資金運用部運用資金になる、つまりそこへ預けるという恰好になつて、それでその運用のほうは、資金運用部のほうの運用法でそれがやられて行く。特別会計法の適用を受けて何を收入と見、何を支出と見るかということは、資金運用部特別会計法できまる、こういう問題だと私は思うのです。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 運用のほうはわかるのですが、私はやつぱりこれは国債だから、本来なら私は歳出歳入予算に計上して然るべきだと思いますけれども、この便宜法を設けて無理にそういうふうにしておりますので、どうもその根拠をいろいろ調べて見たところが、よくわからないのです。結局四十四條に基いてやるかと、資金運用特別会計発行するかというと、資金運用部特別会計ではそういうことはではできないわけなので、やはり一般会計分として発行するということになると思うのです、実質は。運用のほうは資金運用部特別会計のほうでやる。で私は大蔵大臣が見えましたらこの点お伺いしたいのですが、これは国債だと思うのですが、法律によつて国債という取扱いをしないように、いろいろ法律で定めてありますけれども法律の條文の規定では国債ではないというふうにしてあるのですけれども、実体は国債ではないですか。
  32. 河野一之

    政府委員河野一之君) 実体はそれは国債だと思います。併し国債による收入金歳入にするかしないか、これは別問題だと思うのです。で、つまりおつしやる意味は、これを一応一般会計歳入に取つて歳出として資金運用部に預け入れる、或いは資金部の資金にするという形を取つても実際悪いとは私は言えないと思うのです。併し財政法にあるように收入とは、国の各般の需要を充たすための支拂財源となるべき現金の收納である。つまり各般の需要を充たすための財源であるかどうかということに帰着すると思うのです。つまりこの資金債券発行しておるけれども一般財源に使つてしまう金でなしに、これが運用されて、そうしてつまり預り金のようなもので運用される、又必要があればこれを返さなければならないような意味合であつて、使いつぱなしの金でないという意味で、一般収入とは見ないというふうに私は見ておるのです。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういたしますと、普通の政府出資金なにかとどう違うのですか。例えば日本開発銀行、そういうところの一つ運用資金になるのですね、向うへ行けば……。
  34. 河野一之

    政府委員河野一之君) それは出資金というものは向うに出した出資金でありまして、それが仮に公債で拂おうと何であろうと財源が何から出ておろうと、とにかくそれは国の出資という、需要を充たすための財源である、財源と申しますか、それの経費であるというふうに財政法としては見ております。今の場合は、おつしやるようなことをだんだんとやつて行きますと、例えば資金部で預かつている金は一応歳入に取つて、これを向うに出さなければならないというふうに、こういうことになるのでありますが、そういうようなところに、つまり国民の租税負担に関係しないようなものは、原則として收入支出に入れないのだという考え方が財政法二條にあるわけです。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 特別会計においてはそういうことはないでしよう。特別会計においてはやつぱり歳出歳入予算を組まなければならない。
  36. 河野一之

    政府委員河野一之君) これは資金運用部特別会計を御覧になりますとわかるのでありますが、財政法二條には運用收入としては利子収入とか、或いはいろいろな不用財産というものの売拂收入、そういうものが収入であつて郵便貯金に入つて来ること自体は収入ではないのであります。支出のほうも貸付は支出でありませんで、人件費とか物件費というものが支出でなければならない。そういつた直接特別会計としての何と申しますか、特別会計損益ということになりますが、損益に関係のないものは収入、支出とは見ないというのが特別会計においての考え方であります。これもやはり財政法二條から出ておる建前と少し違いますけれども、精神的には同じことです。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その預金という形をとればいいのですけれども、こういう公債という形をとるから問題があると思うのですが、それで私は、そんならこういう形を今後とつて行けば非常に濫用の弊害が出て来ると思うのです。歳入歳出に計上しないで、それは今非常に急ぐから、電源開発資金が非常に必要で、切羽詰つて、さつき大矢さんの言われたように戰時緊急事態というような時でなければコストを無視してこういう小額債券発行をするものではないとは、こういう御説明があつたので、私も従来の小額債券発行については、大矢さんの言われたことについて私も思い当るのですが、そういたしますと非常に電源開発資金が急に必要なので、急いでこういうことをやるというので便宜的に、本来ならば歳入歳出予算にこれを計上して通さなければならないものを、便宜的にこうやつたのですから、私は本来だとこういうやり方はいけないのだと思うのですが、それを何だか非常に差支えないのだと、こういうように非常に合理化するように御答弁するから、いろいろ調べて見るとどうも納得行かないのです。実際公債であるということは主計局長も認められたわけですね。そうするとこれが今後私は公債発行一つの形として一歩踏み出して行く、こういうことになつて行くのかどうか。
  38. 高橋俊英

    説明員高橋俊英君) まあ只今の御説で申しますとですね、先ほど私がこれと非常に似ているものを例として上げましたが、郵便貯金の種類の中に定額郵便貯金というのがございます。これはその額が一定しておりまして一つ債券に近いものでございます。これはただ記名式でございます。郵便貯金でございますから無記名ではございません。記名式ではありますが、記名式である無記名式であるということは、それが債券であるかないかということの区別にはなりません。これは当然でございますが、それを一つの無記名債券に置き換えたようなものでございまして、若しこれが国債であるということになりますならば、郵便貯金、実際売り捌いておりますところの定額郵便貯金というものも、やはり国債として扱わなければいかん、こういうところまで来るのではなかろうか、ですからそれはまあ現に一方に例があるから、これも同じように扱つているんだという一つの議論でございますが、これも主計局長もおつしやいましたように、いわゆる歳出経費に充てるための歳出財源とするのではなくて、得たる金を始めから全く財源としてこれを使用してしまうのではなくて、運用するのである、こういう意味におきまして、これは通常の国債とは性格を異にしております。むしろ郵便貯金に非常に近いものである、こういう観念から資金運用部資金として……。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そういう御答弁はおやめになつていいですよ。国債という意味の何たるかは法律上はとにかく、経済的に見てこの小額債券が国債であることは明らかで、今言つた定額貯金とか何とかいうのと全く違うので、これは一つの擬制資本の一種なんですよ。擬制資本の一種で、擬制資本の場合、会社が発行する場合は社債となり、国が発行する場合は国債となる資本蓄積の一つ方法なんです。併し今の貯金なんかとは全然違うのです。それはもう少し公債の勉強をされたほうがいい、経済的に言つてそういうものと一緒にして我々にそんな答弁をされたのでは……、私はそれはおやめになつたほうがいいと思う。そういう御答弁では……。ですから、公債なんですから主計局長もはつきり公債とおつしやつたのですから、なぜ公債であるのにその公債としての取扱いを排除したか、例えば財政法第十四條の規定、それから減債基金に関する規定、こういうものを一応特例を設けて適用しないということになり、それから国債に関する法律も適用しないと、そういうことにしてあるのです。ところが法律上はそういうふうにしても実体としては経済的な観点から見ればこれは国債ですよ、どうしても。なぜそういう変態的なこういう法律を出されたか、そこのところを……。
  40. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 木村委員にちよつとお願いしますが、大臣が来ておられますからその質疑は……。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大臣に御答弁願いたい。
  42. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 貯蓄債券も国債に違いはございません。併し国債には一般歳出財源に充てます国債と、特定の目的のために発行いたしまする国債とあるのであります。で、あなたの財政法十四條とか言われるのは、一般歳出財源に充てるための国債につきましては減債基金等をやつているのでございます。それから例えば食糧証券、これも国債でございます。併しこれには減債基金等ではございません。それから今度の貯蓄債券も国債でございまするが、これは他の用途に貸付けするために発行するものであります。そこに階段がございます。で、食管特別会計のほうにおきましては、これは歳入歳出予算として出してその尻だけでなしに全部の歳入歳出予算で御審議願う、そういうことになつている。だから資金運用部資金特別会計郵便貯金はどのくらい入るか、或いは簡易保険がどれだけ申込みがあるか、いろんな強いて予算を以てきめる必要のないような特別会計であるのであります。従つてそれは損益の部分だけ予算で審議願う、こういうことにいたしている。そこに段階がございますから、木村さんは非常に御勉強になつて誠に御尤もな御議論が多いようでありますけれども、国債ということのカテゴリーを一つのものとお考えなつちやいけないと思います。国の機関がそういうものを発行したのでございますから法律的には国債でございます。国債の取扱いにいろんな段階がございます。一般会計特別会計、又ほかの特別会計といろんな種類がございますから、一つの国債でこれを皆当てはめろと言つてもそうは行かないので、特別会計にもいろんな種類の特別会計があり、又経理のいろいろな仕方もありますると同時に、この電源開発を主として発行します貯蓄債券というものは一般財源に充てる国債ではございません。そういう恰好で、強いて発行額を予算に計上して御審議願うという形を取つておらんわけであります。その式でいいのではないか、そういうようなことにいたしております。これで御了承願いたいと思います。
  43. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、これはくどく御質問するのは、実は継続費の問題について、特別法律を以て予算歳出歳入以外にそういうまあ公債財源というものを求めて、そうしてやればいいじやないか、そうしたときやはりそれは予算総計主義、この十四條から言つてまずい、こういうお話つたのですが、継続費の場合、例えばイギリス、フランスのように單独立法を以て一つの事業会計に財源を與える。電源開発なら電源発開、そういうときに国のほうでは継続費予算という形でやる場合、これはどうしても歳出入のほうに入るけれども、私は継続費を認める場合には、それを歳出歳入から外して外してというより特別にそれを法律を以てそういう財源を作つてやる、こういうことについてやはり大蔵当局ではそれは十四條の規定にどうもそぐわない。そういうものはやはり歳出歳入総計予算主義に反するという御答弁があつたのです。ですからこれもやはり私は一つの十四條の例外になるのじやないかと思うのです。一種の例外になるのじやないかと思うのですが、一種の例外ですね。それで本来ならやはり総計予算主義の精神から言えば、これは本当は入れたほうが望ましいのじやないですか。
  44. 河野一之

    政府委員河野一之君) これはどういうものを歳入とみるか、どういうものを歳出とみるか、これはいろいろ法律もあり、或いは慣例的なものもあるわけであります。おつしやるような趣旨は、そうしますと百億の国民貯蓄債券資金運用部收入金にして、それを歳入とする、これは一つ考え方だと思います。それでは先ほど大臣が言われましたように、食糧証券を全部歳入とみて、そうして米を買う金を歳出とみる、こういう行き方と同じようであります。併しながら現在の資金運用部特別会計法においては、そういうものを歳入歳出とみておらない。従つていわゆる資産の出入りというものを歳入歳出とみないで、損益、つまり利子支拂いであるとか利子收入であるとか、そういうものを歳入歳出とみているわけであります。そういう特別会計にいきなりぽこんとこの貯蓄債券の収入及び支出のみが出て来るという恰好は現在の特別会計法の建前としちやおかしい、又そういうものは食糧証券と違つた……同じ特別会計であつても違つた取扱をすべきじやないかという意味において、又そういうことが何ら弊害もない、こういう意味においてその貯蓄債券歳入歳出及び貸付というものを外しておるのだ、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  45. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは余り議論になりますからこの程度にしますが、弊害がなければ問題ないのです。私も議論的な質問をする必要はないのですけれども資金運用部特別会計、これの郵便貯金というような形であるなら問題ないと思いますが、公債という形をとる場合、これを歳入歳出予算から外して公債というものを発行する。こういう形が一つの先例になつて来るということは私は問題じやないかと思う。こういうことはやはりどうしても避けるべきじやないか、一応成るほど法律案としてこれは国会で審議されるのですから差支えないようですけれども、それは予算総計主義という立場から、公債というものに対してはそれが濫用されないように非常に厳重な規定があるのですから、そういうものを作つた精神から見れば、私はやはりどうしてもこれは例外的なことになるのではないか、その第一歩を踏み出すのではないか。まあ大きく言えば、講和独立後又公債々々と言つてだんだん公債発行主義に移つて行く一つの例がここに出て来たのじやないか。電源開発資金に弱つたものだから、非常に苦しんで窮余の策としてこういう形が出で来たのじやないか。そこで将来の濫用ということをやはり私は問題にするわけです。
  46. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは大体国会で説明いたしておりますので、これは濫用じやありません。たくさん集まつて、そうして電源開発のほうの資金が潤沢になれば、これも一つ経済行為であるので、若し木村さんのおつしやるように、郵便貯金なり、これも歳入歳出予算に入れましてやつた場合に、郵便貯金が六百億あるとか、或いは簡易保険が四百億あるのだというので歳入に挙げ、これと今度又見合つて歳出に充てる、こういうふうに審議を願つた場合に、郵便貯金は八百億集まつた、二百億円は遊ばしておく、私はそういうふうなものはそのときの状況によつて二百億円超過したならばこれは貸付けていい。丁度今国会の当初頃金融債の引受はバランス・ハジエツトの建前から資金運用部としてはしないと、こう言つておりましたが、非常に簡易保険や郵便貯金というものが伸びて来た。政府預金資金運用部の中で出しておる、こういうときに金融債の引受も何にもできない、こういうことになると、資金運用部特別会計自体一つの経済行為をする。そこで私は今のように歳入歳出を全部を出す予算形式よりも、特別会計のうちでもこういうものにつきましてはそのようにしなくてもいいのではないか、こう考えておるのであります。あなたのおつしやるように郵便貯金も国の債務、いろいろありましようが、ただ証券の形をとつているかいないかの問題だけが、こう考えてみますと、私は資金運用部特別会計でこういう債券発行いたしまして、そうして特別の目的のためにやるというふうなことは濫用ではない。若しそれでも郵便貯金がうんと集まつたらこれは濫用になるのだ、郵便貯金の預け入れ限度を超える、こういう議論と同じようになるのじやないかと思いますので、あなたの議論は採らないのでございます。
  47. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣は余り抽象的に考え過ぎていると思うのですが、それは資本の蓄積の方法は、強制的な蓄積の方法は税金によつて取上げて蓄積する方法もあります。それから預金という形で蓄積する方法もあるのです。株式、社債、公債、こういう形で資金を集めて行く方法もいろいろあるわけなんです。ですから同じ国の債務ならどれでも同じだというようなことでは余りに問題が抽象的で、そういう資金蓄積をやる場合にどういう形を取るべきかということが具体的な問題であつて、税金で取るか、或いは公債発行で取るか、或いは預金という形で取るか、どれが一番いいか。そこで問題になるのは、公債というものはむやみにこれを出すものではないということはもう財政法の精神である、これには非常に厳重な規定があるわけなんです。ですから私はそれを言つておるのであつて郵便貯金という形で集めるその運用についてどうこう言つておるのではない。公債という形を取ることを問題にしているわけなんです。それから資金運用部資金銀行債の引受についても、或いは三百億引受けないと言つたのがこれはもう引受けることになる。これはもう独立したのだからはつきり言つてもいいと思うのですが、実は最初からもうそういうつもりでいたのを、ああいうバランスを合せるために無理にしたのであつて、それをもつとはつきり説明されたほうがむしろいいのじやないかと思うのですが、当初から一応引受けるつもりでおつて計画しておきながら、引受けないかのごとく我々に説明された。そこのところはもう事情が変つたからはつきり説明されても差支えないのじやないかと思うのです。
  48. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 木村さんのお話に誤解がありますから申上げておきますが、資金運用部のほうで金融債を発行するかしないかということが、この予算のOKをもらいます時のキイ・ポイントであります。そこで或る向うのものが、そういうことを言つても大蔵大臣は金融債を発行するのだろうと、こう言いましたから、とんでもない話だ、金がないのだから発行しないのだ、こういうのでOKをもらつて来た。その当時は金がないから発行しない。従つて若し金ができたら発行いたします、金がないから発行しないと、こういうふうに言つておる。然るにその後時間の経過がありまして、この間国会で説明いたしましたように、簡易保険も郵便貯金も余裕ができたから発行する。私は昔総司令部にいた人と話をしましたが、あの時には金がないから発行しない、今度は余裕ができたから発行すると言つたら、それは当然その通りだと、こう言つておるのでありますが、占領治下だから、或いは占領治下でないからと、こういう問題じやありません。誤解のないように申上げておきます。
  49. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは私はおかしいと思う。金融債券を引受けないというのは、見返資金のほうで貸越になるので、それによるインフレを防ぐ意味資金運用部でバランスを合せる。金がないというのではなくて、金はあつてもそれは金融債を引受けない。ですから引揚超過になるはずでございます。引揚超過にしなければ見返資金の貸出超過のバランスをとつて、このインフレ予算を中性化することができなかつたのであつて、どうも私は前の政府説明と違うと思うのです。資金がないからというのではなくて、資金運用部にはあつても、それを三百億引揚超過にしておかないと見返資金のほうで貸出超過になるからそのバランスが合わない、こういうお話だと思う。これはもう一応過ぎ去つたことなので、こういうことの議論に時間を費やすことは本意ではないのですけれども、どうも大蔵大臣の御説明は前の御説明とちよつと違つていると思うのです。
  50. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは私の財政経済政策の根本でございますから申上げておきますが、金は六百十億前年度繰越しがございます。ございますが、その予算の編成当時にはこれだけの金しか入つて来ないから、そうして二十七年度でこれだけ地方債或いはその他に支出したならば、金融債を引受ける余裕がない。二十八年度に同じように繰越す場合に、それだから金融債を引受ける余裕がありませんから、金融債を発行いたしませんと、こう言つたのです。然るところ二十六年頃から二十七年の三月頃までに予定以上に金が入つて来た。そこで金融債を引受ける金ができたから金融債を引受けたのであります。ですからあなたのお話と違います。
  51. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 この法律の第一條に「資源の開発その他経済の再建のために緊要な資金の調達に資することを目的とする。」とありますし、又電源開発に貸付ける、こういう銀行局長の御答弁もありましたので、従つてこの百億の国民貯蓄債券による資金電源開発であるとか、或いは増産とかいうような大企業の建設資金に貸出しするものだというふうに了解しておいてよろしいかどうか、先ず承わつておきます。
  52. 河野通一

    政府委員河野通一君) 差当り現在のところでは、先般も御説明申上げましたように、大体電源開発公社と申しますか、新らしくできる電源開発機関のほうへこの資金を廻す予定でございます。併し必ずしも電源開発限つておりませんので、金融のような経済再建のために必要な資金につきましては、必要に応じて今後も廻して行くことも考えております。差当りといたしましては大体六十億程度を本年度としては予定いたしております。これが今申上げましたような新らしい電源開発機関のほうへ廻つて行くわけであります。
  53. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 それではいま一つお尋ねしますが、この債券発行によつて浮動購買力を吸收して云々ということが第一條に書いてありますが、私はこれは要するに零細な浮動購買力がそんなにあるとは考えられないのでありますけれども、若しありとすれば、どういう数字的根拠に基いて百億の債券発行することが可能だというふうに判定されたのか、その浮動購買力算定の根拠一つ説明願いたいと思います。
  54. 河野通一

    政府委員河野通一君) 浮動購買力というものも金額的にはなかなかはつきり申上げるわけには参りません。私どもはこの浮動購買力を吸収する方法としてこれが唯一の方法だとは考えてはおりません。たびたび申上げおるように、非常に一般金融機関における預貯金の吸收、又先般御決議を頂きました新らしい方法による貸付信託、その他いろいろな方法でこれらの購買力を吸收して参りたい。而もそれを成るべく長い資金として吸收することが適当であろうと思う。現在仮に何億かの浮動購買力があつて、これを全部これで吸收しようということは考えておらぬわけであります。そこにございますように、他の一般金融機関の吸收いたします資金と競合いたすようなことにならないような点も考えまして、大体年額百億程度で抑えてあるわけでございます。百億しか浮動購買力がないというわけではございませんので、他の機関が吸收いたします方法と並行してこの機関でやはり吸收して行く、いろいろな方法一つとお考えを願いたいと思います。
  55. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そうしますと、私はもう少し統計的に見て、これくらいなものを貯蓄債券発行しても大丈夫だという数字の根拠に基いてやつたものと思いましたけれども、そうでなくて、ただほんの勘でこれくらいならば先ず差支えない、こういうふうに考えておられるというふうに了解してよろしうございますか。
  56. 河野通一

    政府委員河野通一君) 資金の吸收計画につきましては、先般大体貯蓄目標というものをきめまして、本年度といたしましては大体六千八百億という資金の吸收の目標を立てております。勿論これはすべてがいわゆる浮動購買力ではございませんが、資金の吸收として大体目標を立てておりますのは六千八百億。その意味におきましては大体私ども資金を吸收して行くという目標となつておる。ただ行き当りばつたりで資金を集めて行こうということではございません。そういう目標に従つていろいろな方法資金を集めて参りたいと、こういうふうに考えておる次第であります。
  57. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 そこで私大蔵大臣に一つお尋ねいたしたいと思いますが、国民金融公庫のごときは本年度資金運用部資金が僅かに二十億で、非常に我々は公庫の資金が不足だということを指摘しておつたのでありますが、こうして零細な貯蓄を吸收して、それを全部電源開発のほうに振向けるというようなことは、ますます地方の中小企業の資金を窮屈にしてしまうと思いますけれども、大臣はこれに対してどういう御見解をお持ちですか、お伺いいたしたいと思います。
  58. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) これは各方面に資金の需要があることは勿論でございます。併し我々といたしましては地方の中小企業の問題を先ず考えましても、電力の不足によりまする中小企業のこうむる御迷惑も甚しいものがあるのでございます。電力危機のときに先ずお困りになるのは中小企業のかたが大企業と同様にお困りになる。これらを何をおいても先ずやらなければならんと考えておるのでこういう特別な措置をとつておるのでございます。併しこれ以外のお金につきましては、これはお話通りに、従来は一般会計の出資ばかりであつたのでありますが、今回からは国民金融公庫の借入金ができるように制度を改めまして、そうして今後はこれを活用いたしまして中小企業のほうにこれ以外の一般資金ができるだけ行くようにいたしたいと考えておるのであります。従いまして商工中金につきましても相当出しております。又新たに設けられました国民金融公庫への貸付も、この資金運用部資金が先ほど来申上げましたように予定以上に多くありますので、そういう方面から貸付けようと思つております。
  59. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 もう一点大蔵大臣に伺いたいと思いますが、大臣は前回電源開発促進法の連合委員会で、電源開発のための資金は千億や千五百億はわけがないから心配するなというような御答弁があつたのであります。そうかと思うと、こうしてこういう零細な国民貯蓄債券のようなものまで掻き集めて電源開発資金に充てようという今の御計画と、どうも辻棲が合わんように思いますが、今大矢委員の質問に対する答弁を聞いておりますと、非常にこの資金コストが高くて八分六厘四毛になる見込みだということでありますし、そして会社に貸付ける場合には九分になると、こういう御答弁があつたわけであります。私は木村委員からも今意見が出たようでありますが、こういう資金はむしろそれを中小企業なり、或いは地方の公共事業なりのほうへ廻すことにして、もつと利子の安い外資のほうを廻されるほうが妥当ではないかと思うのですが、この点に対して大臣はどういうふうにお考えですか。
  60. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 私は予算委員会で、お話のように電源開発資金はもうやすやすできるということを言つたんではございません。第一に考えなければいけないことで、是が非でもこの分は資金は確保しなければならんと、こう言つたので、楽に金が集まるというようなことにお取りになつては間違いであると思います。私は今申上げましたように、六千八百億円の貯蓄目標を立てて、今までの貯蓄目標は常に上廻つておる、今度この六千八百億はどう使うかという問題のときには電源開発を一に考える、こういうことを申上げたのであります。楽に集まるとは思つておりません。而してこの金利は高いから、安い外資のほうを廻したらどうか、こういうお話でございますが、そう外資は楽々入るものではないので、できるだけ努力はいたして百方努めておりますが、外資が来るまで待つわけに行きませんので、この分は電力に持つて行く。九分になると言いましても、ほかに政府の分が無利子で参りまするから、これは電源開発コストといたしましては大体開発銀行から五十億、これが六十億ございますから、四分六厘くらいの金利になるのでございます。とにかく今の金利情勢から申しますと、資金を集めるのに債券発行にかかりますのでこの程度は止むを得ない、そうしてそうやりながら事業を始める、そうして事業を始めれば向うも貸付ける気持になりますし、この事業を始めると同時に、向うからの貸付の前提條件として国際通貨基金への加入とか、今のような借金の拂い方を早くきめて、そうして日本の信用を回復する。それから外資の導入も忘れてはおりませんが、私といたしましては金を拂うこと、そうして早く入れよう、こういうふうに努力いたしたいと思つております。
  61. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 先般の連合委員会では小林委員の質問に、大臣は自信満々とやつておりましたが、そのときのお互いの議論はここでは議論いたしませんが、併し私は地方財政も非常に窮乏しておりますし、又地方債の起債は非常に大事な地方の財源となると考えますが、一方こうして地方から吸い上げた金はどんどん電源開発のような事業に廻してしまうというと、地方はだんだん困つて来ると思うのでありますが、地方の今後の起債なんかに対して、大臣はよほど考慮されてもつと緩和するという気持がありますか、その点一点だけ伺つておきます。
  62. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 地方債の資金運用部の引受は六百五十億見ておりまして、昨年より相当殖えております。二割以上殖えております。而して又地方債六百五十億では足りないという御要望もありますが、地方が独自に民間資金をお集めになるならばお集め頂くというので、六百五十億とは別に八十億予定をいたしております。従来は公共団体が御自由に一般財源を集めるということは少かつたのでありましたが、今度は八十億程度見ているのであります。而して従来の例から申しましても、資金運用部の短期融資も相当あつたのでありますが、情勢を見てから考慮いたしますが、只今のところ昨年の五百億に対しまして六百五十億プラス八十億になつております。それで大体足りるのじやないかと考えております。
  63. 下條恭兵

    ○下條恭兵君 もう一点だけ最後に伺つておきますが、今私その点で心配いたしておりますのは、先ほど銀行局長からは、この百億を発行することによりまして、一般金融機関資金の吸收に影響がありはしないかという意見も出たというお話があつたのであります。そういう際に、政府はこうしてどんどん地方の資金を吸收してしまうと、その地方で地方自治体が今大臣の言われるように一般からの借入をしようというようなことを計画しても、先に政府のほうで吸收してしまうとなかなか実現できないような、そういう支障の起きるようなことはありませんか。この点を伺つておきます。
  64. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) この財源預金の元というものは各方面に相当あり得るのでございます。ただこの眠つている資金をいろいろな方法で集めること、これが第一であります。そうして又眠つてはいないが、国民の所得からできるだけ資本蓄積に協力を願つて、節約して貯金してもらうのがその次に大きい財源であります。これをやりますから、他の分に支障を来すという議論もありましようが、やはり他の分に支障を来たさないようにして地方団体でたくさん資金を集めるのが、この際としては必要だと思います。
  65. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私はこの際大蔵大臣に貯蓄増強と税制との関係についてお伺いいたしたいと思います。  貯蓄増強のために税制上種々考慮をめぐらし、或いは法人税において積立の課税を免ずるとか、或いは重要産業の減価償却の特例を認めるとか、或いは最近には無記名預金制度も作るとかいろいろ考慮され、又その実績も着々挙つているようでありまするが、併しこの間日銀総裁がここに来られていろいろ金融についての所見を述べたそのうちに、やはり今後どうしても貯蓄の増強には税制上大いに考慮しなければならん点がたくさんあると思う、自分は素人でよくわからないがこう思う、というお話しでありましたが、又大蔵大臣は各種の機会において、例えば無記名預金利子に対する源泉の百分の五十は高すぎるからこれを安くしようというようなお考えも漏らしておられるようでありますが、舟山大蔵次官は有価証券の取得税も高すぎるから撤廃するように努力するということも、証券業者の会議等においても言つておられるようでありますが、今大蔵大臣はそういうふうに税利面において貯蓄増強に処するために、どういうことを差当りお考えになつておるか、お伺い頂ければ結構であります。
  66. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 今お話のような点を考慮いたしておりまするし、又生命保険だとか郵便貯金とか、或いはその他の預貯金利子の免税の限度等におきましていろいろな手があると思うのであります。これは私は総合的に今少し……今回いろいろの手を打ちました結果を見まして、相当思い切つた資本蓄積の措置を取りたい。こういう気持を持つているのであります。併し今の郵便貯金その他の限度引上等の結果を見まして考えたいと思つております。
  67. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 私は政府の努力を大いに認めますが、一方において或る程度税制の面から言つて行き過ぎの点があるのではなかろうかということを懸念しておる者でありますので、その点について大臣のお考えを伺いたい。それは先ず第一に、今普通銀行割増金附定期預金を非常に熱心にやつておられる。先般も大蔵大臣が言われた通り、現在の割増金附定期預金は預貯金の七割を占め、その額は四千億にも上つている。こういうお話でありまして、恐らく定期預金をやつておるもののうちで、割増金附でないものを出しておるものは、極く少数のものではなかろうかと思つております。而して割増金附につきましては御承知の通り税金が掛つていない、この点を利用いたしまして、普通銀行が空くじなしの総当りの割増金附をやつている。で最低のものでも、一千円について半年で二十円の利息をつける。つまり税が掛らないで四分に廻るような割増金附の形で出している。それから無記名定期についても同じようにやつているので、大臣がお考えになるような無記名定期の税金を安くするどころでない、無税で以て非常に行われておるのでありますが、これはどうも私行き過ぎではなかろうか、大体定期預金割増金附を認めたのは昭和二十二年か三年頃と思います。この当時はインフレ進行中で、どうしても定期預金のごとく長期預金は集まらないからして、できるだけ長期銀行預金を集める趣旨で行われたのでありますが、その後経済界もどんどん安定して参りまして、定期預金の額も殖えて来た今日、割増金附を利用いたしましてかくのごとく無税の定期預金の横行するというのは全く行き過ぎでありまして、普通の、例えばたびたび問題になる給與所得の課税等と比較して均衡を失するのではなかろうか、こういうことはしばしば言われる。それらの点からいたしましても、私はどうしても今の銀行定期預金割増金附がかくのごとく盛んに行われているのは必要の限度を越している、負担の均衡を乱している。殊に無記名定期預金は税制の盲点を利用して無税にするというのは、どうしても看過できないのではなかろうかと思いますが、如何でしようか。
  68. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) お話通り割増金附定期預金をやり、それから金銭信託による無記名定期預金を認める、いろいろな点がありますので、私はお話のように総当り式のものもあるそうでございますが、これにつきましては、無記名定期預金利子の五〇%を変更する場合におきまして、今の割増金附きの定期預金その他につきましても、権衡のとれるように改めて、行き過ぎのないようなことをいたしたいと思つております。
  69. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 御趣旨のほどはわかりますが、今すべての割増金附定期預金は総当り式になつておりまして一部ではありません。割増金附定期預金で税を納めておるものは全国一つもないと思われます。従つて非常に度を過しておるので、これは研究しておるというような生ぬるいことではいかんのではなかろうかと思います。そこでそもそも銀行局では、割増金附制度を初めて認めた折に、銀行局通牒を出されて、いやしくも租税逋脱の嫌いのあるようなことをやつてはいかんと言つておるのでありますが、あの通牒の趣旨から言つても、今は非常に行き過ぎになつていると思います。併し私は、それかといつて、直ちに割増定期預金を全廃すべきだということを申上げておるのではありません。今日の税制のもとに銀行預金に対する課税を減免したのが、その運用の面において行き過ぎとなつたのである。而して今日の事態は非常に乱れている。実際から言いますと、殆んど銀行預金利子課税を免れている。これは無記名有価証券利子課税との関係から言つても、著しく不均衡となつております。その他事業所得、勤労所得の方面から考えても非常に不均衡になつている、これをどうするか。私の考えでは今日の段階において貯蓄増強が大事なら、この際思い切つて昔の第二種所得税のように源泉で百分の二十の税率で課税するという方法が、国家の歳入の確保の上から言つても又他の方面との負担の均衡から言つても、税制の運用が明朗化するという点においても非常に必要だと思う。それをただ税法の文字の上で形を整えて、実際はこのように乱れておるのをそのままにしておくというのは、非常に弊害があるのではなかろうかと思いますが、如何ですか。
  70. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) さすがに立派な御議論でございまして、そういう見方がある。第二種所得税的に別個の税率でやつたらいいじやないかという考えも私は研究題目の中に入れております。その場合に二十の源泉課税にいたしますか、丁度第二種所得税のこれは最低税率が〇・八から始まつて、最高が三十六ぐらいから四十二ぐらい、その頃第二種所得税は百分の五でございました。今最高税率が五十五となつた時に二十で行くか或いはもつと下に行くか、私は税の簡素化として検討すべき重要な議論だと思つております。
  71. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 これはひとり銀行預金ばかりでなく、無記名の有価証券についても不均衡があると思います。今の税制の建前は実際の運用で非常に乱されておる。無記名有価証券も総合課税される建前になつておりながら、実際はそれが行われていない。いろいろとなんと申しましようか、育点と申しますか、そういうものがあり、これを利用していろいろな事柄が横行するのでございます。これは困つた問題だと思うのでありまして、どうしてもこの点に大きなメスを入れまして、銀行預金、有価証券を通じて、経済界の安定するように案出されなければいけないと思うのであります。私は銀行局のやり方を見ていると、税制の穴を狙つて脱税の共犯をやつているのではなかろうか、智能犯の協力をやつているのではないかという気がいたします。主税局もそれに押されて法文の上で満足して、実際の面は見て見ないふりをしている。それが金融界、証券業界の混乱の因をなしている。それですから私はこの際百尺竿頭一歩を進め税制を極く簡素化して、誰が見ても法文の通り運用せられておるということにして而して取るべきものは取る、財政収入を確保するというのがこの際取るべき賢明な道だと考えますが、如何ですか、
  72. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 税制の穴じやないのです、税制には穴はないのでございますが、穴を作つてそれから逃げて行こうという傾向になつておりますから、結果はお話通りであります。私が大矢委員の御質問に対して、先ほどのお答えした一つの有力な税制改正の意見を申上げたことは、今回御審議御決定を願いました配当所得に対しまする源泉の二割の課税でございます。これも配当所得は総合すべきものでございますが、今の実態から申しますと、なかなか総合しにくい、住所その他不定であつたり、とにかくそこまで行つていないから一応二〇%取つておいて、それから後調整しようこういう思想も今の現状からいつて出た思想でございます。これを推し進めて行けば預金については二〇%なり、或いはどれだけかの源泉で取つてしまつて、そうして総合の問題は今の税収入その他実態を見て、税率とも関係がありますが、当分送りこんでしまうという考え方も一つ考え方だと思います。配当はどうかと申しますと、配当は配当所得の金額が多いのでございますから、これは源泉でやつて行くことは勿論行きませんが、預金につきましてはそういう点が考えられるのじやないかという気持を持つております。
  73. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 それからもう一つ。有価証券の譲渡所得に対する課税の件であります。これは先般当委員会において政府から最近三カ年間の課税実績に関する資料等を出して頂いたのですが、総体の金額が少い。多くのものは税を免れている。たまたまつかまつておるものは相当産額のものを納めておるという工合になつて、非常に不均衡になつておる。殊に近頃のように会社の増資に当つて無償増資が盛んに行われるような場合に、これはとても実行はできない。この譲渡所得に対する課税はイギリスでは全然やつておりません。アメリカではその一部のものに対して源泉で比例税で課税しておるというような状況でありますから、これはやはり証券業者の要望の通り無税にすると同時に、不動産の譲渡所得もこの際当分の間無税にするというようにいたしまして、銀行預金及び有価証券の譲渡所得に対する課税を租税特別措置法によつて当分の間きれいさつぱり停止いたしまして、産業界の発展の上に税制の上でも寄與できるように努めるべきではないかと思いますが、如何ですか。
  74. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 議論を離れて実際問題からいたしますと、御説の点誠に傾聴すべき点が多いのであります。十分検討してみたいと思つております。
  75. 大矢半次郎

    大矢半次郎君 それで最後に、国民貯蓄債券についてでありますが、これを銀行局長、高橋課長等から伺つておりますと、少し力を入れてやれば銀行預金等に影響するからと、びくびくしておつて割増金ば成るべく附けないでやろう、併し売行が悪かつたら附けようというような態度でおりますが、私はこれじや国民貯蓄債券発行する意味はないと思います。一体これは明治以来すでに日本においても三回の経験があるというけれども、こういうようなだらしのない発行の仕方をしていない。割増金を附けるが、その代り利廻は低くしておつて、そうして割増金附の興味で以つて浮動購買を吸收するというのが、日本の過去の三回の経験なんであります。従つてこういう制度考える場合には、それらの点も十分お考えになつて銀行預金全般に対する方針、或いは有価証券に対する方針等も統一的に考えておやりになる必要があるのじやないか、如何にもこれは銀行業者の割増金附預金に対してびくびくして御機嫌を損じないようなやり方をしているように思いますが、如何でしようか。
  76. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 誠に御尤もな御意見であります。併しこの問題は臨時金融制度懇談会意見を聞きまして、それに調子を合したのでございまするが、お話のような点は私十分知つております。併しやり得えないというのじやないのでございます。この点は大蔵大臣にお任せ下されば今の預金課税の問題、それから割増金附の問題、定期預金割増金附の問題、それから税率の問題、そうしてこれの発行状況によりましてお話のような点がいいということになれば、いつでもできるように相成つている。この点は一つ御了承願いたいと思います。
  77. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 この国民貯蓄債券法案が出ましていろいろ説明を伺つておりますと、大体今回のこの発行によつて得られるところの資金というものは、浮動購買力の吸収ではなくて、大体が横流れの資金であるというふうに我々は考えられるのですが、先ほど大矢委員からも抽せん附割増金を出すというようなことで、抽せんというようなこともまあ考えて見たらどうかといつたようなことでありましたが、そういうことをやれば或いは浮動購買力の吸収ということに役立つかも知れませんが、そういうことを差当つてはしないという以上は横流れ資金の吸収と思います。そういう点から見てこの際大臣に一点伺つておきたいのですが、外資導入ということは現在の政府で以つて吉田内閣成立以来もう何カ年かに亘つて大きく言つているのです。ところが実際においてこの国民貯蓄債券の大体一年間の吸収が六十億見当、その六十億と同じくらいの外資導入が現在までにはやつていないといつたような経過になつているわけです。いわゆる声ばかり大きくて実効が上つていないということになつているのです。今回又外資に関する法律の改正が出て、この外資の導入ということについても現政府が積極的に乗り出すということの意図も窺われるわけであります。併し外資導入について先般日本軽金属問題等については、大蔵大臣は何か根本精神と相反するもののような御意見を持たれているようにも新聞には出ていたのですが、一体どの程度今後外資というものを導入するのが我が国の経済界に最も適当であるか、この根本方針をこの際伺つておきたいと思います。
  78. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 外資導入につきましては、これはやはりドル自体が来るということになりますと、かなりそこに金融的に問題が起ると思います。やはり国内経済の運行の状況と睨み合つてやらなければならんと思います。只今は外貨に相当持つております。そこでこの外貨を持つていることにつきまして外資導入に差支えのある場合があります。例えば日本はたくさん持つているじやないかという議論がある。又他面には外貨が相当日本にあるから日本経済は強いのだという信用の面から益することもあるのでありますが、大体私は日本ではほかの状況を見まして六、七億ドルくらいのところを考えております。七億ドル或いは八億ドルあれば通常の……、今の状態では貿易決済準備は六億ドルくらいでいいのではないか、そこで外貨の使用を今民間に慫慂いたしているのであります。今の日本の設備の近代化、或いは電力開発等には相当金が要りますので、私はできるだけ早い機会に沢山のものを入れて、その外資にマツチするように産業復興をやつて行きたい、こう考えて各方面の努力をいたしている次第であります。
  79. 油井賢太郎

    油井賢太郎君 いずれこれは外資に関する法案の審議等において又大臣に詳しくお伺いいたしたいと思うのですが、先ほど申上げました日軽金問題等についても、何か政府の取られた行き方に二つの流れがある。片方ではどんどん導入したいという希望、片方はそれを阻止するというふうに一致しないような感じを與えたのですが、この問題について、国民に明快なる政府の方針をこの際披瀝しておいて頂いたほうが都合がよいと思いますが、如何ですか。
  80. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 政府のほうで、外資導入について意見が分かれておるということはないのでございます。事務当局間ではどういう議論をしたか存じませんが、私安本長官との意見は完全にあの問題でも一致しているのであります。私は申上げますが、先ず外資を日本軽金属が導入する場合において、外資により経済提携をしたい、経営提携した場合に、日本のアルミ会社で一番困つているのは原料の獲得でございます。原料の獲得は、今日本のCIFで大体二十ドルから二十一ドル、向うのマレーから参ります運賃が十ドル乃至十一ドルくらいになつております。これはアルミは相当高いが、これを普通のべースで獲得し得る見通しがついているか、これを聞きましたところその説明がないというのです。この点が第一号でございます。株を半分持たせた場合、今までより高いものを売りつけられては立ち合うはずがございません。第二段の問題は、五十円拂込みのものを六十円で売ることが適当なりや否や、御承知の通りあの会社は、六億二千万円の拂込みでございまして、再評価が三十億となつております。借入金、外部債はこれは大してございません。資本の三、四倍しかございません。而してあの規模を見ますと、自分のところで発電する水力発電が十一、二万キロございます。あの蒲原その他の工場の財産は相当のものでございます。私はここで大蔵大臣としていくらとは申しませんが、今十一、二万キロの水力発電だつたらどのくらいでありますか、あれは昭和十二、三年にドイツから入れてやつているのでありますが、今は全部が動いておりませんが、相当の資産価額のものであります。而も日本のアルミ工場の七割程度、今生産高は六割程度でありますが、工場の設備その他としては七割程度のものでございます。若しこれを倍額増資して六億二千万円を投じますと、約百八十万ドルで東洋一の工場ができます。この資産は非常なものであります。設備能力五万五千トンの設備と申しますと、全米のアルミの生産は、七十五、六万トンのようであります。まあ日本軽金属に比べて、向うの設備が十五、六倍でしよう。或るアメリカ人に申したのですが、若しアメリカの七十五万トンの設備を二千五百万ドルで貰えるなら、いつでも買おうという冗談話をしたのであります。とにかく大した設備でありますが、それを五十円を六十円で売るという根拠如何、これは私にはわかりません。第三番目におきましては、新聞に出ている通りに五〇%、五〇%がいいか悪いか今後の経営権の問題につきまして私に説明がなかつたのであります。私は今直ちに賛成するわけには行かない、こう事務当局に言つたのであります。果せるかな事務当局も大臣と同じような考えで反対しておりました。こういうことで以て、そこで十分説明を聞いてこういう問題はきめなければならん、外資は欲しうございますが、あの設備を百八十万ドルで五〇%持つということの前に、もう少し会社の当局者で検討すべきじやないか、又あれはアルミの生産地でございますビンタン島ですか、そこは九ドル五十セントで来ますが、若し利潤を除きましたら四、五ドルくらいで原鉱が買えるものと私は想像しております。そこだつたら十ドルのフレートを入れましても十四、五ドル、そうすると今二十ドル、二十一ドルでアルミナを買つておりますから、相当安い原料の獲得がそれだけ安くできるかというのが先決問題、そういうことをせずに外資が足らんというので、東洋一の、日本の六、七割の設備を持つているものを安く不必要に売ることは私は必ずしも賛成できないから、もつと研究して見よう、こういうのでありまして、決して外資導入を阻害するのじやない、実態に副つたようなことをしなければならない、これは早い例で申上げますが、私は疑問のあるたくさんの工場の中で六〇%、七〇%という向うの外資が入つて来るのを何も排他的に排撃するわけじやございません。例えば製鋼関係におきましても、只今十万トン或いは十五万トン、或いは二十万トンの生産能力の製鋼会社が八〇%向うへ出すということについては、私はそのこと自体について異論を唱えるのではない、ただ技術、原料がどういうふうに、日本経済にどういう好影響をもたらすかということを見極めないと返事ができないので待つたと、こう言つているのであります。でよく経済の見通し、経営権の問題、即ち原材料それから株価、或いは持株の割合等は十分検討しなければならない、今でも石油会社の中には相当いわゆる飛び込んで、飛び込むという言葉は悪うございますが、外資導入、外資導入というので、非常に不利な條件とは申しませんが、ちよつと行き過ぎた点がなきにしもあらず、私は割にいろいろな事情を考えまして、とにかく日本経済に益するような、而も過去の大変な蓄積で、今から言えば非常にデイヴアリユエートされた資産を、インフレのときに百八十万ドルでとにかく日本の六、七割の工場をというのは、余ほど他にいい條件がなければ私はどうかという考えであります。外資導入に反対するわけではない、拒否するのではない、実情がこういうのでありますので、早急にはできでない、こう言つているのであります。
  81. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 国民貯蓄債券法に関連して、一つ今の大蔵大臣の先ほどからの説明では、国債であつてもこれは一般歳出財源に充てないものである、そして今後はこういう形において貯蓄債券なり或いはいろいろのものを発行される見込みであるかどうかということ、なぜ特にそういうことを申上げるかというと、鉄道の建設審議会におきまして建設資金をどこかで賄わなければならん、従つて鉄道債券というのはどうであろうかということが相当論議されましたのですが、今のところはなかなかまだ引受手がないだろうというところから、まあ具体的な話にまで進まなかつたのですが、大蔵大臣として将来こういう国民貯蓄債券で以て電源の開発その他の緊要な資金を調達するということになりますと、鉄道建設なんかにも鉄道債券をそろそろもう研究されてもいい時期じやないかと思うのですが、この点について御検討になつているかどうか、今のところじやお見込みがないかどうか、この点を一つお伺いしたいと思います。
  82. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 只今のところでは鉄道債券を出すことよりも、やはり資金運用部資金を国鉄公社のほうに出したほうが便利がいいと思います。放送債券というのは出しておりますが、今出し得るものは今度の電気通信公社も出し得ることになつております。で、資金運用部貯蓄債券を出す、鉄道は鉄道債券を出す、電通公社は電通債券を出す、こういうわけでどんどん出ますと、私は債券発行條件その他につきまして余り思わしくない、こういうので鉄道公債或いは電通公債をお出しになるのはお待ちになつて、その方面の公債の代りには資金運用部から国鉄には今年も百十億出しております。それから電通にも百三十五億、昨年よりは少し金額も減りましたが、そういうふうに出しているわけであります。やはり資金運用部が統一的にやる、電力のほうには一般会計から五十億出しております。資金運用部から出すのをこれで出そう、国鉄のほうは百十億、電通のほうには百三十五億、こう出しております。それで賄つて行く、各種の債券というものを出すということは、私は只今のところよくないのではないかと思つております。
  83. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そういたしますと、この第一條の目的で説明を見ますと、主として電源開発というのが目標になつているようでありますが、今の大臣の話では百億は鉄道のほうへも資金運用部資金から出しているということですが、私の申上げるのは、やはり長期の建設資金が必要じやないか、というのはこの間の建設審議会やほうぼうから長い間建設ということはとめておつたためにやかましく要望もされ、特に増田さんあたりは、この次の補正予算で以て一つ十分努力するからというので二十線に限つたわけであります。そうすると補正予算ということになつて来ると、どうしても資金運用部資金から相当借入金をやるか、さもなければ鉄道債券発行というものはそろそろ考えなければならない時が来ているのじやないか、併しなかなか鉄道債券発行しても、これは百億でさえもよく大矢さんが言われたように、余り魅力がなくてむずかしいじやないかというような懸念も持つている次第でありますから、従つてこいつを一つ余り型にはめずにやるとするならば、大矢さんの言われた割増金一つ考えて、そうしてそこへ吸収して、この資金運用部資金から電通や鉄道へも出す、而も又建設資金なんかも相当つけてもらわなければと思うのですが、こういうことも当然この百億やられるなかには考えのうちに入つておりますか。電源開発電源開発で、電源開発のことばかりでございますか、この点一つ……、
  84. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 差当りこの六十億と見込んでいるものは電源開発のほうへ持つて行く考えでございます。併しこれは将来は郵便貯金、簡易保険、厚生年金その他の預貯金の増加によつてきまるべき問題であります。又電通、国鉄のほうの要求も将来起つて参りましよう。又差し向き今の住宅公庫のほうなどももつと建てたいと言つておりますし、これはこれより別に我々は労務者の住宅資金として、今までは設けておりませんでしたが、取りあえず十億ぐらいの労務者の住宅を特別に建てたい、こういうふうな計画もいたしておりますが、とにかくこれが殖えますことは、他の方面にやはり好影響があるのであります。預金部から電源開発には出せないということにはなつていないのであります。若しこれがなければ国鉄や電通のほうへ行くのか、電源開発に取られる危険もありましたので、これを集めて行こう、そういう意味で、この分は永久に将来国鉄のほうに行かないのだということは私は申上げられません。差し向きは今事務当局が説明した通りであります。
  85. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 最後に一つ大臣に尋ねたいが、この百億というふうに一応限定されたのは、どういう考えで百億にされたのか、年百億発行というのは。
  86. 河野一之

    政府委員河野一之君) 先ほどもちよつと申上げましたように私どもとしては資金の吸收はいろいろな方法で実は考えて参りました。而も一般金融機関による吸収がやはり本筋であろうと思います。それらの点も考え併せて、この資金をどういう方面に使つて参りたいかというような、資金の需要面も睨み合せなければならない。百億程度のものであれば一般金融機関資金吸収に大して支障も起らない。又当面必要があれば政府で以てどうしても投資をいたさなければならん方面への資金として、百億程度ならば賄えるであろうというような、両面から実は考えておる次であります。
  87. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 今の銀行局長の話では、その貯蓄債券発行する場合には、貯蓄債券に主力を注いでこれらの徹底を図つて、極力これを活用し失いという、僕ら覚えているのは関東震災と日支事変のときでありますが、随分これを次から次と発行してやつたわけであります。ところが今度は控え目にして百億、今日びの金で百億というのは微々たるものだと思うのですが、四大証券の投資信託にいたしましても、これと比べまして全く子供翻しのように思うのでありますが、ここから考えると百億に限定しなくても、私はどうせそういうふうに資金運用部に集めて、必要なほうへ廻すというなら結構だと思うのでありますが、従つて額を百億に限定しなくてもいい。これはやはり銀行やその他の金融機関からの牽制も相当あるように考えるのでありますが、事実そういうことを、牽制と言つては語弊があるかも知れないが、よその支障を来さないようにということで、そこもここも八方美人に一つつて行こう、こういうあなたのお考えで百億に限定したのですか。
  88. 河野通一

    政府委員河野通一君) 金融機関からの牽制という意味じやないのでありまして、いろいろな方法資金を集める。而もこの仕組によつて調達されました金は、大体先ほど御説明申上げましたような電源開発とかそういつたものに充てて参りたい。この需要面から見ましても差当り百億程度のもので大体資金は足りるであろうという点が一つ。それから今申上げましたような点から、各一般金融機関資金吸收とも、これはいろいろな意味で競合するわけでありますから、そこらはやはり全体の立場から見まして、政府発行するという特殊なものでもございますので、金額的に今の需要面とも睨み合せながら、或る程度の限度は置いて行くのが適当であろうという考え方から限度を置いたわけであります。
  89. 菊川孝夫

    ○菊川孝夫君 そうするとこれでは余り魅力がないから集まらんというわけで百億、このくらいで精一ぱいだろうというのか、それともよその邪魔をしてはいかんから百億にしたのか、どちらですか。
  90. 河野通一

    政府委員河野通一君) 大体今申上げましたように、資産の需要面とも睨み合せまして考えたのでありまして、この政府発行いたしますもので非常に金を集めようと思いますれば、條件次第によつては相当集まるわけであります。それはやはりおのずから一般金融機関資金吸収のルートと著しく競合しないようにして行かなければならん、そういう配慮を加えてこういうふうになつておるわけであります。この程度しか集まらんだろうということでは必らずしもないのであります。
  91. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それでは設備輸出為替損失補償法案についてお願いいたします。
  92. 小林政夫

    ○小林政夫君 問題を変えまして、設備輸出為替損失補償の問題で大臣に一点だけお聞きしたい。為替損失を補償する制度を創設されることは、これは非常に結構なことでありますが、補償料の点が大体二パーセント、二分になるわけであります。そこで輸出入銀行の貸付金利は年七分五厘、補償料を合せると九分五厘となつておる。他面プラント輸出の競争相手である西ドイツ等の金利が五分というような点と比較すると、なかなか日本のプラント輸出ということはできにくいのじやないか。すでに現状でも輸出入銀行は開店休業状態のようなことで、非常に資金が遊んでおるということはプラント輸出がないということであります。従つてこの法案を作つても、この法律ができるのを待つていて適用を受けようというようなケースもないような状態であります。そうなれば、なお更補償料の負担というものは、勿論この補償してもらうかもらわないかということは業者の任意であつて、希望者だけがやればいいのだという事務当局の説明でありますが、併し日本の現状から言つて為替損失の考えられるようなところへ是非プラント輸出をして、必要な原材料の輸入をやるということが必要なわけであります。特に東南アジアの開発等については、そういうことが必要なので、この業者の実質上の負担というものを軽くする意味において、輸出入銀行の金利等についても別途考慮する必要があるのじやないか。その点について大臣の御見解はどういうふうに思つておられますか、お聞きしたい。補償料のことについては、あなたからお答えになつてもよろしいですが……。輸出入銀行の金利の引下げということですが、これは一般の金利水準と関係するかもしれませんが、併しこれは特別なケースであつて、そう一般の金利水準ということを念頭に置かれる必要もないと思いますが。
  93. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) それでは先ず補償料の件でございますが、これは法律の四條にもございますように、為替相場の変動の見込み、その他事務の取扱いといつたようなことを織込みまして、まあ約二%程度は補償料を納めて頂きませんと、国といたしましても五年先というような長い期間補償するわけでありまして、その間若干変動による損失も見込まれますので、その程度は止むを得ないのじやないかと考えて、二%程度考えておる次第であります。尤もこの二%を拂いますに当りましては、輸入銀行から貸出します場合に、この補償料まで含めまして一応貸出すことにいたしますので、業者としての金融的な負担は、この面からはないように考えておる次第であります。
  94. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 輸出入銀行の金利七分五厘は高過ぎるではないかというお話でございますが、私は安いのに越したことはないと思いまするが、今の金利水準を著しく変更するようなことがありましても困りますので、今少しく様子をみたいと考えております。お話通りに行き詰つたではないかというようなお話でございまするが、私はこの輸出入銀行のプラント輸出が行き詰つたとは考えていない。今でも七、八十億出しておると思います。これは何と申しまするか、東南アジアのほうの実は民度がかなり低いのでございます。プラント輸出というものは、特定の地域の特定の会社のようになりまして、一般的にはないのでありますが、すぐ経済力その他がマツチして来ないのであります。なかなか東南アジアの貿易は今のところ急激に殖えるということはないようであります。私はこういう意味におきまして、先ず東南アジアを主にせずに、南米その他に一つ開拓をしたらどうか、南米のほうは、御承知の通り民度が高うございまして、例えば自動車の輸出とか、いろいろなものがあるようであります。最近私は輸出入銀行の調査の者に向つて、南米のほうの市場開拓に行つたらどうか、行つてみようということになつておりますが、これは金利の点も低いに越したことはありません。併し今急激に下げるというわけには行きません。まあ東南アジア開発の旗印の下に、南米と成るべく協力するようにする。そうして東南アジアの民度の上昇等をみながらやつて行けばいいのじやないか。御承知の通りこの輸出入銀行をこしらえました当時と、今の貿易その他の状況とはちよつと変つて来ておりまして、今スランプの状態だ。で、南米のほうの開拓に行つたらどうか、こういう気持を持つております。金利ばかりの問題じやないと思います。
  95. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 簡単なことですが、さつきの電源開発法案に基く政府の出資について開発銀行から五十億出資される。それから貯蓄債券の収入によつて六十億、合計百十億。開発銀行から出資するものは無利子ですか。
  96. 河野通一

    政府委員河野通一君) 代つてお答えいたします。これは出資でございまして、貸付けではございません。一般の出資と同じように無利子であります。
  97. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あれは政府で出資するはずであつたのが間に合わないで、開発銀行からまあ融通する形になつた。将来、今度は政府出資に振り替えるということになるのですか。
  98. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 大体そういう方向で研究したいと思つております。
  99. 田村文吉

    ○田村文吉君 それでは大臣に一つだけお尋ねをいたしますが、設備輸出為替損失補償法の問題ですが、第一條の損失補償が重要物資の輸入の確保に貢献する設備輸出に限られておるという点に、私どもちよつと不満を感ずるのですが、一般のプラント輸出全部までなぜしてはいけなかつたのか、この点をちよつと大臣から……。
  100. 池田勇人

    ○国務大臣(池田勇人君) 実は余りよく読んでおりませんので……。
  101. 田村文吉

    ○田村文吉君 大事な問題だから……、この法案を提出された根本理念ですね。
  102. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) それじや私から代つてお答え申上げますが、差当り現在のところ我が国といたしましては、貿易の形は御存じのように重要な原材料を大都分ドル地域から……大部分というのは言い過ぎでありますが、相当の部分をドル地域から仰いでおるわけであります。而もそれによつて作られました生産品は多くドル地域以外のところへ行くというような形になつておりまして、これは将来の国際収支を考えて行きます場合に、やはりそういう不均衡というものを是正して行きませんと、国際収支が保つて行かない。そういう見地におきまして、できるだけ重要原料をポンド地域なり、オープン、アカウント地域なりという米ドルでない地域から多く入れるようにいたしたい、ところがこの地域におきましては、まだそれほど経済力が進んでおりませんので、日本に対してそういう重要材原料を多く供給する力が現在ない、そこでそういう地域に対して設備を輸出いたします。これがその結果逆に、例えば鉱山の開発でありますとか、その他そういう事業に長期投資をすることによつて、日本が米ドル地域以外から、そういう地域以外から重要原料を獲得できる。その結果国際収支が均衡して行く。こういう政策をとつて行かなければ日本の将来の国際収支は行き詰るのじやないか。そういう意味におきまして重点を主として輸入市場の転換、つまり米ドル地域などからそういうポンド地域などに輸入市場が転換できるという場合に、こういう物資は輸入をする必要があるということで損失補償の対象になるわけであります。
  103. 田村文吉

    ○田村文吉君 今のことは初めの政府委員説明にあつたので了承いたしておるのでありますが、そういうことに関係があるとかないとかということの解釈が非常にあいまいになりがちなのだから、なぜ一歩進めてプラント輸出全体に対してこの法律を適用するというふうに進めなかつたのか。こういうふうに考えます。東南アジアを主になすつたのでありましようが、南米も出て来るでありましようし、又その他の場合も同じようなことが起らぬとも限らない。そういうようなことを考えて行きますと、そういうどつちにも向くように、窮屈な解釈を残すものでなしに、一般的にプラント輸出は全部こうするということができなかつたのか。序でにもう一つ伺いますが、この法律をお出しにならぬでも、過去にありました輸出保険法、ああいうものにちよつと附加えることによつてできなかつたかどうか、この二つをちよつとお伺いします。
  104. 酒井俊彦

    政府委員(酒井俊彦君) 一般的にプラント輸出全部に対して補償したらどうかというお話でございますが、これは国といたしましてもこういう特別の損失補償という負担をしてまで促進をするというのですからこれは全部が全部補償するということになると相当将来において財政負担が大きくなることも予想されます。  それから又目先だけの問題かも知れませんが、プラント輸出であればどういう地域に対してもそれは大いに奨励すべきものであると考えるべきかどうか、この辺にも若干の問題がございます。ただ只今南米方面を考えたらどうかというお話でございますが、これはこの法律で当然考えております。先ほど申上げましたように、主としてポンド地域或いはオープン・アカウント地域と申しましても、南米は大体におきましてオープン・アカウント地域に属する国が多うございます。従つてそういう方面に対しても勿論考えるわけでございます。それから輸出信用保険のほうで行けなかつたかどうかという問題でありますが、これは信用保険のほうは相手国における戦乱でありますとか、或いは経済上の事情で金が取れなかつたというような場合の問題でございます。ところがこの設備輸出為替損失補償となりますと、これは国が為替相場を変更するという行為によつて生ずる補償でございまして一種の何と申しますか、先ほどの保険とは若干観念が違います。強いてあの法律に取入れれば取入れられないこともないと思いますが、観念的にはこれは補償でありまして保険の観念と若干違いますので、別の法律を設けたほうがはつきりするのではないかというので設けた次第であります。
  105. 田村文吉

    ○田村文吉君 もう大臣から御答弁を伺う必要もないようですから、あとで政府委員から別に伺います。
  106. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) それではこの両案に対して大臣に対する御質問は大体終了したものとして差支えございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  107. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつと待つて下さい。大蔵大臣に対して、実は設備輸出のこの為替損失補償は貿易政策に関係があるのです。これは通産省のほうからも聞きたいのです。私は大蔵大臣に対する質問はもうないのですけれども、通産省のほうを聞きたいのです。そういう含みを持たして……。
  108. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 大臣に対する質疑は終了したものと認めて……、    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  109. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 ちよつとその前に……、四月二十五日の参議院の建設委員会で深水委員からの御質問に対して調達庁の意見があつたのですが、大蔵当局の意見を聞いておきたいと思います。講和前の進駐軍用の営業用の店舗等の被接收財産に対して、今後の駐留軍のものも同様に営業補償をすべきものがございましようか、という深水委員の質問に対して調達庁の政府委員から御趣旨に副うように、営業補償をするように努力するという答弁があつたのでございますが、やはり所管は大蔵省主計局の関係にもなると思いますので、主計局長さんか、或いは主計官殿からこれに対する御意見を承わりたい。
  110. 河野一之

    政府委員河野一之君) 占領中の接收を受けました店舗或いは百貨店いろいろあるわけでありますが、それはまあPDで接收をされておりますが、お互いに一応契約ということになつておるので、従つて賃貸料を拂つておるのでありますが、接收に伴う事実上の損失についてどうという規定にはなつておりませんで、ただ接收が解除になりました場合に、これを原状において回復するという規定にはなつております。従つて法律上は補償の問題は起らないのでありますが、併し諸般の事情に鑑みまして、例えば農地が成る程度の離作料を出しておるといつたような事情ともかみ合せまして或る程度のことはなさねばらんかと思います。ただまあいろいろな権衡の問題もございまして、又財政の面もございまして、今後新らしく土地その他の収用、土地收用法等の特例によつて行われるものと同様にというわけには必ずしも参らんのでありますが、できるだけのことはいたしたいというふうに考えております。
  111. 溝淵春次

    ○溝淵春次君 今の御答弁で大体わかりましたが、こういうことだけ申上げて希望條件を申上げておきたい。この終戦後において進駐軍が使つておりました店舗は、結局その接收された会社なり個人なりのその犠牲において全体の国民なり国が利益を受けておるのでありますから、独立後において今後駐留軍の運用のものに対して営業補償をするという建前をとるならば、やはり講和條約批准前の被接收店舗についての補償も十分勘案して頂いてそれらの人々の希望に成るべく副うように努力をして頂きたいことの希望を申上げておきます。
  112. 平沼彌太郎

    委員長平沼彌太郎君) 本日の委員会はこれでもつて散会いたします。    午後一時五分散会