○国務大臣(池田勇人君)
政府のほうで、外資導入について
意見が分かれておるということはないのでございます。事務当局間ではどういう議論をしたか存じませんが、私安本長官との
意見は完全にあの問題でも一致しているのであります。私は申上げますが、先ず外資を日本軽金属が導入する場合において、外資により経済提携をしたい、経営提携した場合に、日本のアルミ会社で一番困
つているのは原料の獲得でございます。原料の獲得は、今日本のCIFで大体二十ドルから二十一ドル、向うのマレーから参ります運賃が十ドル乃至十一ドルくらいにな
つております。これはアルミは相当高いが、これを普通のべースで獲得し得る見通しがついているか、これを聞きましたところその
説明がないというのです。この点が第一号でございます。株を半分持たせた場合、今までより高いものを売りつけられては立ち合うはずがございません。第二段の問題は、五十円拂込みのものを六十円で売ることが適当なりや否や、御承知の
通りあの会社は、六億二千万円の拂込みでございまして、再評価が三十億とな
つております。借入金、外部債はこれは大してございません。資本の三、四倍しかございません。而してあの規模を見ますと、自分のところで発電する水力発電が十一、二万キロございます。あの蒲原その他の工場の財産は相当のものでございます。私はここで大蔵大臣としていくらとは申しませんが、今十一、二万キロの水力発電だ
つたらどのくらいでありますか、あれは昭和十二、三年にドイツから入れてや
つているのでありますが、今は全部が動いておりませんが、相当の資産価額のものであります。而も日本のアルミ工場の七割
程度、今生産高は六割
程度でありますが、工場の設備その他としては七割
程度のものでございます。若しこれを倍額増資して六億二千万円を投じますと、約百八十万ドルで東洋一の工場ができます。この資産は非常なものであります。設備能力五万五千トンの設備と申しますと、全米のアルミの生産は、七十五、六万トンのようであります。まあ日本軽金属に比べて、向うの設備が十五、六倍でしよう。或るアメリカ人に申したのですが、若しアメリカの七十五万トンの設備を二千五百万ドルで貰えるなら、いつでも買おうという冗談話をしたのであります。とにかく大した設備でありますが、それを五十円を六十円で売るという
根拠如何、これは私にはわかりません。第三番目におきましては、新聞に出ている
通りに五〇%、五〇%がいいか悪いか今後の経営権の問題につきまして私に
説明がなか
つたのであります。私は今直ちに賛成するわけには行かない、こう事務当局に言
つたのであります。果せるかな事務当局も大臣と同じような
考えで反対しておりました。こういうことで以て、そこで十分
説明を聞いてこういう問題はきめなければならん、外資は欲しうございますが、あの設備を百八十万ドルで五〇%持つということの前に、もう少し会社の当局者で検討すべきじやないか、又あれはアルミの生産地でございますビンタン島ですか、そこは九ドル五十セントで来ますが、若し利潤を除きましたら四、五ドルくらいで原鉱が買えるものと私は想像しております。そこだ
つたら十ドルのフレートを入れましても十四、五ドル、そうすると今二十ドル、二十一ドルでアルミナを買
つておりますから、相当安い原料の獲得がそれだけ安くできるかというのが先決問題、そういうことをせずに外資が足らんというので、東洋一の、日本の六、七割の設備を持
つているものを安く不必要に売ることは私は必ずしも賛成できないから、もつと研究して見よう、こういうのでありまして、決して外資導入を阻害するのじやない、実態に副
つたようなことをしなければならない、これは早い例で申上げますが、私は疑問のあるたくさんの工場の中で六〇%、七〇%という向うの外資が入
つて来るのを何も排他的に排撃するわけじやございません。例えば製鋼
関係におきましても、
只今十万トン或いは十五万トン、或いは二十万トンの生産能力の製鋼会社が八〇%向うへ出すということについては、私はそのこと
自体について異論を唱えるのではない、ただ技術、原料がどういうふうに、日本経済にどういう好影響をもたらすかということを見極めないと返事ができないので待
つたと、こう
言つているのであります。でよく経済の見通し、経営権の問題、即ち原材料それから株価、或いは持株の割合等は十分検討しなければならない、今でも石油会社の中には相当いわゆる飛び込んで、飛び込むという言葉は悪うございますが、外資導入、外資導入というので、非常に不利な條件とは申しませんが、ちよつと行き過ぎた点がなきにしもあらず、私は割にいろいろな事情を
考えまして、とにかく日本経済に益するような、而も過去の大変な蓄積で、今から言えば非常にデイヴアリユエートされた資産を、インフレのときに百八十万ドルでとにかく日本の六、七割の工場をというのは、余ほど他にいい條件がなければ私はどうかという
考えであります。外資導入に反対するわけではない、拒否するのではない、実情がこういうのでありますので、早急にはできでない、こう
言つているのであります。