○
木村禧八郎君 私は
行政協定に基いてここに提案されましたこの六つの
法案に対して反対するものであります。
言うまでもなく、この
法律案は
安保條約第三條に基く
行政協定に伴
つて提案された
法律案でありますが、
安保條約第三條に基く
行政協定に伴
つて出て来た
法律案は非常にたくさんあります。その中の一環でありますが、例えば刑事特別法、民事特別法、電信電話料金の特別法、郵便法の
特例法、電波法の
特例法、地方税等の
臨時特例法、
土地等の
使用等に関する特別措置法、こういうものと並んで
所得税法等の
特例法、
関税法等の
臨時特例法、たばこ専売法等の
臨時特例に関する
法律案、
国税犯則取締法等の
臨時特例に関する
法律案、
国有の
財産の
管理に関する
法律案、こういう非常に広汎な国民の権利義務に重大な影響を及ぼすところの
特例が出て参つたわけであります。今問題にな
つておる
法律案は、こういう
駐留軍に対して治外法権的な特権を與える規定でありますが、その特にこの治外法権的な特権のうち、経済的な側面に関する特権を規定した諸
法律案だと思うのです。大体ここに提案された諸
法律案を具体的にいろいろ検討して参りますと、今後の
日本経済に対して、又
日本国民の生活に対して影響するところが非常に重大であることが具体的にこれによ
つて初めてわかつたわけです。このような極めて重大な影響をもたらす内容がわからないで、こういうものがわからないでそうして
行政協定を調印してしまい、而もその
行政協定については、国会の審議の対象としなか
つたのであります。今更我々この具体的な内容を検討してみまして初めて具体的にこの
安保條約或いは
行政協定というものが、
日本の経済にどういう影響を及ぼすかということがわかつたわけです。而もこの影響たるや極めて重大でありまして、このような、このような経済的治外法権を與えることによ
つて、
日本の経済は本当に独立したと言えるかどうか、経済面以外においてもいろいろな特権を、いわゆる治外法権的な特権を與えるのでありますが、経済的側面からだけ見ても、これで
日本経済が、
日本が独立したと言えるかどうか、こんなに広汎な特権を與えて独立すると言えるかどうか、私はそういう観点から見まして特にこの三つの点を指摘してこの
法案に反対せざるを得ないのであります。
その第一は、これらの諸
法律案が一応国際慣例になら
つて制定した、こういう
政府側の答弁でありますが、併しその国際慣例を眺めてみまして、こんなに今提出されておるような
法律案のように不利な
條件で基地協定というものは結ばれておらない。いわゆる北大西洋條約に関連する協定にしましても、米英協定にしましても、米比協定におきましても、国際慣例と言えば、それらの協定を参考にするよりほかにないわけでありますが、そういうものを見まして、ここに出されております
法律案は極めて不利に制定されております。特にこの審議の過程で明らかに
なつたことは、
行政協定第十
二條によ
つて日本国内の
物資或いは労務を
駐留軍が
調達する場合、その
調達方式が直接
調達に
なつたという点であります。この点は今後の
日本の経済にと
つて非常に重要な影響を持つ。北大西洋條約に基くあの現地協定ですか、あの九條のたしか三項だと思いましたが、そこにおいては駐留されている国の官憲の手を通じて
物資、労務を
調達するということにな
つている。
日本の場合、
行政協定十
二條によ
つては一応
日本の経済に不利な影響をもたらす場合は
日本政府の機関を通じて
調達し得る途も開かれているにかかわらず、その途がとられないで、直接
調達に特に
物資についてはな
つているという点は、今後
日本経済に及ぼす影響が極めて重大であり、而も
アメリカの業者が請負いするような場合に中間に入るわけでありますから、そうした場合、直接
調達方式は特に
日本の中小企業者に対する影響は甚大であるということが財界においても指摘されております。こういうような
調達方式によ
つて日本国において財政金融政策或いは経済政策を立てる場合、その自主性というものは著しくこれで制約される。このような不利な
條件の下におかれております。
更に免税規定におきましてもそうであります。免税規定においてもやはり北大西洋條約においては、駐留されている国の
物資を
調達する場合の免税規定は
日本の場合のようにこんな不利ではありません。一応駐留されている国の
物資を
調達する場合には免税されないことにな
つております。
それから関税の規定につきましても、これは
委員会において
質疑をいたしたのでありますが、一番重要な点、即ち輸入された
物資が果して免税規定に該当しているか否かというものを判定する場合です。その場合に
日本側においてそれが不利な取扱を受けないような規定にな
つておらないのです。すでに米英協定においてそういう弊害が生じて、それを是正する、濫用を防止する協定が作られているにもかかわらず、この
日本の場合においてはそういうものが明確に規定されておらない。更に又
国有財産を
無償に
使用せしめる
法律案についても非常に不利であります。その他はまあ国税犯則取締規定の
特例、たばこ専売法等の
特例等につきましても著しく
日本の経済的な利益の点から見て不利であるということが指摘できると思うのです。全体から見まして、以上指摘しましたように国際慣例より不利であるということは、これは争うことができないと思います。又具体的に我々その事実を指摘することができるのであります。その点は明らかに
日本が対等な立場において、平等な立場においてこの協定を結んだということは言えないと思うのです。これが我々これら諸
法案に賛成できない第一の理由であります。
第二の理由は、いわゆる経済的治外法権の
範囲が非常に広過ぎる点であります。一応治外法権というものは国際法上、これはあるのでありまして、一概にこれを我々排撃するものではないのであります。問題は治外法権の
範囲がどの
程度であるかということであります。その
範囲が広汎に過ぎて、これでは
日本経済のいわゆる独立、自主性というものが確保できない点であります。これが我々これらの
法案に賛成できない第二の点であります。
最後に第三としまして、これら諸
法案を眺めて、今後こういう諸
法案を
実施された場合の
日本経済の運用の仕方がどうなるかということを考えて見ますと、
駐留軍の経済の運用が中心にな
つて来ます。
駐留軍経済というものがそれを円滑に運用するために、
日本経済が
駐留軍経済の目的のために調節される。そういう結果に私はなるのじやないかと思う。
駐留軍経済を現地調弁経済と呼んでいる人もあります。或いは基地経済と呼んでいる人もあります。講和後においてこれら諸
法案に基いて
日本経済が運用される場合、特に先ほど指摘しました直接
調達方式を中心として運営される場合、
日本経済はいわゆる
駐留軍経済の従属的立場に置かれ、自主性がなくなる。そうして
駐留軍経済に都合のよいように
日本経済が逆に調節されて行く。
日本経済を円滑に運用し、
日本国民の生活を安定させるために
駐留軍経済が調節されるのではなくて、逆に
駐留軍経済の運営を円滑ならしめるために
日本経済のほうが調整されて行く、どうしてもそうならざるを得ない。このような広汎な経済的治外法権を與えてしま
つたのでありまして、我々審議の過程においてそうならないという確証を
政府側から、遺憾ながらそういう答弁をわれわれは得られなかつた。かくのごとき
法案はこれは結局
行政協定から出て来た。
行政協定は何から出て来たかと言えば、
安全保障條約から出て来た。
安保條約第三條から出て来た。
安保條約は何から出たかと言えば、結局これは平和條約と密接不可分の
関係で出て来たわけであります。最後においてはこういう條約を結んだその具体的結果がここに現われて来たのです。こういう結果を又具体的に国民に示さずして、又それが国会の審議の対象にならないで
行政協定が通
つてしまつた。これは重大な問題だと思うのです。こういう
意味からも私はこういう
法案に賛成するということは、
日本経済の自主性が失われるということに対して賛成することと同じことでありまして、我々
日本経済又
日本民族の自主と独立、
日本経済の本当の
意味における自立というものを念願する者に取
つては全くそれを阻害する、それと正反対の
法律案でありますので、断固としてこれら諸
法案に反対する次第であります。