○
政府委員(
西村直己君)
只今議題となりました
貴金属管理法の一部を改正する
法律案ほか十
法律案につきまして内容の
概略提案の理由とを御説明申上げます。
先ず第一に
貴金属管理法の一部を改正する
法律案、金、銀等の
貴金属地金の管理につきましては、現在
貴金属管理法によりまして、新産の金、銀及び
白金族地金はすべて政府が買入れ、必要止むを得ない用途に対しましては、その
需要者に政府から直接売却する制度をとり、その
売買価格はそれぞれ政府が公定いたしているのでございます。然るに最近に至りまして、
銀地金につきましては、その需給の
状況等に鑑みまして、流通及び消費に関する一切の統制を撤廃して差支えない段階に達しましたものと認められまして、又
白金族地金につきましては、
国内生産額は極めて少量であり、国内の需要を満しますためにはその殆んどを輸入に仰がなければならない状況でありまして、その流通に関する規制は、別途今国会に提出されました「
国際的供給不足物資等の
需給調整に関する
臨時措置に関する
法律案」に委ねることがむしろ適切であると認められるに至りましたので、この際銀及び
白金族地金に関する
貴金属管理法による規制を撤廃することといたしました。一方、
金地金につきましては、政府による
金地金の
売買価格は、
米国政府の買入価格を基礎として定めております結果、
一般物価の上昇に比べまして、低価格に据置かれており、これがため金の生産は伸びがたい実情にあります。今後
国際収支の決済その他
国民経済上欠くことのできない金につきまして、その生産を確保し、その増産を図ることは申上げるまでもなく肝要でありますので、この際
貨幣用以外の金について妥当な範囲で
プレミアム附価格による売買を認めることといたしたのであります。
以上のような趣旨によりまして、
貴金属管理法を改正することといたし、この
法律案を提案したのでございますが、その内容の主要点を二、三について申上げますと、
先ず法律の題名を「
金管理法」に改め、法文中「貴金属」とありますのを「金」に改めるなどの
字句改正によりまして、銀及び
白金族地金の政府買入及び売却の制度を廃止いたしたのでございます。
次に、
政府所有の
金地金を直接
需要者に売却する現在の制度を改めまして、
需要者に対しましては従来通り、割当を行いますと共に、その割当に見合う
金地金は、政府に金を納入した
金鉱業者等に対しまして、それぞれの納入量に応じて売り戻しました後、
金鉱業者等からこれを
プレミアム附価格で
需要者に売却することを認めたのでございます。
又
金鉱業者等が多数且つ全国的に散在する
需要者と直接取引することは容易でないものと考えられますので、その取引を円滑ならしめるために、新たに、
中間売買業者として、
加工用金売捌業者を設けました。これと共に、
金地金取引の特殊性を勘案いたしまして
加工用金売捌業を営みまするには、
主務大臣の認可を要することといたしました。更に、
金地金取引価格の
国際的性格並びに
割当制度をとることの趣旨に鑑みまして、
主務大臣は、
金鉱業者等及び
加工用金売捌業者が
金地金を売却する場合の
最高価格を定めることといたし、併せて
金地金の
需給調整上必要がありますときは、これらの者に対しまして、その所有する
金地金の売却に関して必要な指示をすることができるというふうにきめた点でございます。
以上が
貴金属管理法の一部改正の法案の内容でございます。
二番目に
貸付信託法案につきまして、提案の理由を御説明申上げます。
我が国現下の
経済事情に鑑みまして、資本の蓄積を図り、
電源開発資金その他緊要な
長期資金の円滑な供給を図りますためには、政府は御承知の
通り金融制度の整備を図りますと共に、
国民貯蓄債券の発行、無
記名定期預金の制度の
実施等各般の措置を講じて参つたのでありますが、今回新たに
貸付信託制度を設けまして、
貸付信託の
受益権を
受益証券に化体すると共に、
受益者の保護を図ることによりまして、
一般投資者による
産業投資を容易にし、以て
資本蓄積の目的を達成する一助にしたいというのが、この法案の
提出理由でございます。
内容の基本点を申しますと、
第一に、
貸付信託は、一個の
信託約款に基きまして、多数の
委託者が信託しました金銭を、
信託約款に定められました特定の目的に合同して運用する金銭信託でありまして、その
受益権は
受益証券により表示することにいたしておるのであります。第二の
基本的事項としましては、
受益者の一保護を図り、
信託財産の運用の適正を期しますると共に、
信託財産が予定せられました
緊要産業に運用されることを確保するために、
信託約款とその又
信託約款の変更につきましては、あらかじめ
大蔵大臣の承認を要することにいたしております。なお、
受益者の保護のために、
信託約款変更の場合において、
受益証券の
権利者が
買取請求をいたしました場合、受託者は
固有財産を以て買取らなければならないということにいたしておるのでございます。第三の
基本的事項といたしまして、一
受益証券は、
受益者の請求により
記名式とする場合のほかは、無
記名式とすると共に、
受益証券の譲受者は、
委託者の権利及び義務を承継することによつて、投資に便ならしめるようにいたしております。なお、利益の配当に対しましては百分の二十の
源泉課税ということにとどめております。
第四点は、
貸付信託の信託の期間は、二年以上といたしておりますが、
受益証券の消化を容易ならしむるため、又この制度の普及を図りますために、この
法律施行後一年を限り、その期間を一年以上とするということになつております。第五に、
受益証券の消化を容易にすると共に、
長期資金の融資先の資金の安定を図りますため、
信託契約の解除に代えまして、
信託会社が一年の
据置期間を置いて、その
固有財産を以て
受益証券を買取り得る途を開いております。第六に、
信託会社の経営の安定を確保し、同時に
信託財産の保全を図りますため、元本に損失を生じました場合にこれを補填する契約をいたしましたときは、その補填に充てるため、その収益のうちから、
特別留保金を積立てることを義務付けますると共に、元本に損失を生じました場合に限り、これを取崩すことができることといたしております。
なお最後は
受益権の
有価証券化に伴い必要とする
信託法の規定の特例など必要な規定の整備を図つておるのでございます。これが
貸付信託法の提案の理由と内容でございます。
第三番目の法案であります
長期信用銀行法案でございますが、たびたび申上げますように、
長期資金を確保するため、政府は、いろいろ努力をいたしておるのでありますが、一昨年来、
政府機関としましては、
日本開発銀行、
日本輸出銀行を作るなど
政府資金の活用を
図つて参つたのでありますが、
政府機関等によります
長期資金の供給は、
民間機関の行う
長期金融等に対して補完的な立場に立つべきものであると考えられ、
民間金融機関の
整備強化が
証券市場の育成と相並んで、
長期資金の確保のための根本的なものであると考えられ、その結果、
民間機関による
長期資金の供給に関しましては、従来
銀行等の
債券発行等に関する法律によ
つて銀行等に対し
債券発行の特例を認め、その充足を図つておるのでありますが、最近
欧米諸国の
事例等も徴し一又
我が国制度運用の
経験等などから考えまして、銀行の制度としては、その業務の分化によりおのおの特色とする機能を発揮させ、一面
長期資金等の円滑な供給を確保し、他面
預金者の保護に万全を期し、併せまして
普通銀行の融資面における負担の軽減に資する、こういう趣旨から今回この法案を提出いたしたのであります。
長期金融を専門に行う
長期信用銀行を制度として確立することにつきまして、先般来、各界の
学識経験のかたがたに諮り、一応政府といたしましては案を検討して参つたのでございますが、今般ここに成案を得ましたので、
長期信用銀行法案といたしまして皆様の御審議を願つた次第であります。
内容の基本となる部分を簡単に申上げますと、
第一に
長期信用銀行業務を営もうとする者は、
大蔵大臣の免許を受けなければならないことといたし、且つ資本の最低額を五億円と定めること等によりまして、その規模の適正と内容の堅実を図ることといたしました。第二に、
長期信用銀行の業務は、
設備資金又は
長期運転資金に関する貸出を主とし、なお
不動産担保の
長期金融のほか、
有価証券の応募、引受、その他の業務を認めました半面、預金の受入、
短期資金に関する貸出の制限を行うなど、その業務上の特色を明確にし、機能の発揮に遺憾がないようにいたした点であります。第三番目に、
資金源といたしましては、預金の受入に代るべきものといたしまして、
債券発行につきまして特例を認め、資本及び
準備金の二十倍までを限度として、
所要資金の確保を図ることといたしております。
第四点は、この法律の施行に伴いまして、
銀行等の
債券発行等に関する法律を廃止することといたしておりますが、
制度切替の円滑を図り、且つ新らしくできまする
長期信用銀行の育成を図る等のため、所要の規定を置いております。第五点といたしましては、新
制度実施のため、準備に多少の時日を必要といたしますので、この法律の施行は、公布後一年以内において適当な時期に政令で定めることにいたしております。
以上が
長期信用銀行法案の提案の理由並びに内容でございます。
第四番目の
法律案でございます
国民貯蓄債券法案でございますが、たびたび申上げましたように資本の蓄積が重要であります。これがため、政府におきましては、従来ともいろいろな施策をやつて参りましたが、その一環といたしまして、新たに無記名で簡便な、
国民大衆の趣向に適した債券として
国民貯蓄債券を政府が発行することにより、
浮動購買力を吸収すると共にこれによつて得ました資金を、
電源開発を中心とする資源の開発及び
経済再建に緊要な産業の
建設資金の一部に充当したいという目的を以て本法案を提出いたしました次第であります。
法律案の要点を申し述べますと、
第一に、この債券の発行の主体及び
発行限度につきましては、政府が直接発行するというふうにいたし、又その発行は毎年度、純増が百億円を超えない限度にとどめるということにいたしました。
差当り昭和二十七年度におきましては、初年度として純増六十億円を予定しております。第二に、この債券の発行による
収入金は、
資金運用部資金として管理することとし、発行及び償還に関する経費は、
資金運用部特別会計において負担することにしております。
第三に、この
債券発行条件は無
記名式で、割引の方法により売出すものとし、
額面金額は一万円以下となつておりますが、
差当り実行上は
売出価額が一千円ぐらいのものを中心にして行きたいと考えております。
償還期限は、五年といたしますが、発行後、一定の期間を経過したものについては、所持人の請求に応じ
買上償還ができることにしております。なお、この債券の
応募者平均利廻りは、
一般金利水準と権衡を失しないように定めることといたしております。第四に、この債券の売捌、償還及び買上に関する事務並びにこの債券の
割増金の支払に関する事務は、主として
郵便官署で取扱うことといたしますが、
相互銀行、信用金庫、その他政令で定める
金融機関及び
証券業者も、
大蔵大臣からの委託を受けて、この債券の売捌に関する事務を取扱うことができるようにいたしております。第五に、この債券の発行による
収入金相当額は、
資金運用部において、資源の開発その他経済の再建に緊要な産業の施設の建設のため必要な資金を供給するため、
資金運用部資金法の規定により運用することといたしております。
以上が
国民貯蓄債券法の
提案理由でございます。
第五番目の法案でございますが、
設備輸出為替損失補償法案でございます。
この
法律案は、設備を本邦から輸出する者が
外国為替相場の変更に伴つて受ける損失を補償する制度を確立することによつて、
重要物資の輸入の確保に貢献する
設備輸出の促進を図ることを目的としたものであります。
その内容の概略を申上げますと、
第一に、政府が
設備輸出者を相手方として
外国為替相場の変更による損失を補償する契約を締結することができる場合といたしましては、
設備輸出が
重要物資の
輸入市場を、
国際収支上有利な地域へ開拓し、又は
国際収支上より有利な地域へ転換することに役立つと認められる場合といたし、この場合に
大蔵大臣は、総額百億円の範囲内で期間五年以内の
為替損失補償契約を、締結できることといたしました。第二に、
補償契約を締結した
設備輸出者は国庫へ
補償料を納付しなければならないものといたしました。
設備輸出契約においてその対価が分割払されるときは、その各部分につき別個に
補償契約が締結されることになつており、
補償料は、それぞれの対価の額に対してその
契約締結の日からその対価の
受領予定日までの期間に応じ一定の
補償料率により算出したものを納付させることといたしました。
第三に、
補償契約に基く
補償金の交付及び
為替利益の納付についてでありますが、受領すべき
設備輸出対価の外貨額を、その
受領予定日の
為替相場で換算した
円貨額と
補償契約締結日の
為替相場で換算した
円貨額とを比較しまして、前者が後者より減じているときは損失が発生したものとしてその差額を
補償金として交付し、逆に、前者が後者を超えるときは、
為替利益が発生したものとしてこの超過額を
納付金として国庫へ納付させることといたしました。第四に、
補償契約の解除についてでありますが、
設備輸出者の責に帰することのできない事由により、
設備輸出契約が解除され、又は
設備輸出の対価を当初の
受領予定日までに受領することができないことが明白になつた場合に、
設備輸出者から解約の申込があつたときは、
大蔵大臣は、これに応ずることができるものとし、解約が行われましたときは、解約後の期間分の
補償料は免除することといたしておるのであります。第五に、
補償契約と
輸出信用保險等との関係でありますが、
補償契約の対象となりました
輸出対価について
輸出信用保險の事故が発生して
保險金が支払われました場合は、その
保險金に係る
輸出対価の部分につきましては、
補償契約に基く
補償金の交付及び
納付金の納付は行わないことといたし、なお
補償契約の対象となつた
輸出為替については、売予約を禁止することといたしたのであります。以上申しましたほか、
契約違反等の場合の措置、不服の申立、日本輸出入銀行に対する事務の
委任等について所要の規定を設けております。
以上が
設備輸出為替損失補償法案の提案の理由であります。
次に第六番目といたしまして
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約第三条に基く
行政協定の実施に伴う
所得税法等の
臨時特例に関する
法律案につきまして、その提案の理由を申上げます。
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約第三条に基く
行政協定の締結に伴いまして、同協定に従つて、米国の駐留軍の
構成員、軍属又はこれらの
家族等につきまして、
所得税等の課税に関する特例を設ける必要が生じましたので、ここに
関係法律案を提出いたした次第であります。
先ず
所得税法等の
臨時特例に関する
法律案におきましては、
第一に、
合衆国軍隊の
構成員、軍属又はこれらの者の家族が、
合衆国軍隊又はP・X等の
軍人用販売機関等における勤務又は雇用により受ける
給与所得等、その性質上我が国の
所得税を課さないことが適当と認められる所得について、
所得税を課さないこととしております。次に、
合衆国の個人又は法人で、
合衆国軍隊の使用する施設及び区域の建設、
運営等に関して
合衆国で締結した契約に基く事業のみを行うもののその事業から生ずる
所得等については、
所得税又は法人税を課さないこととしております。次に、
合衆国軍隊の
構成員、軍属又はこれらの者の家族が、相続、贈与又は遺贈により取得した
個人用動産の
価額等は、相続税の
課税価格に算入しないこととすると共に、これらの者が日本において有する
個人用動産の
価額等は、富裕税の
課税価格に算入しないこととしております。又、
合衆国軍隊が、
合衆国軍隊の用務を遂行するために
汽車等を利用する場合には、通行税を課さないこととしております。次に、
合衆国軍隊又は
軍人用販売機関等が発する証書及び帳簿については、印紙税を課さないこととすると共に、
合衆国軍隊又はその
公認調達機関等が、
合衆国軍隊の用に供するため、日本において調達する物品又は
揮発油については、
物品税又は
揮発油税を課さないこととし、この免税された物品又は
揮発油は、原則として、他の用途に供するために譲渡することを禁止し、他の用途に供するために譲渡したときは、譲受人から税金を徴収することといたしております。なお、今回の
行政協定による
物品税課税上の措置に関連いたしまして、
輸出免税の手続について簡易化を図るため、
物品税法に所要の改正を加えることといたしております。
次に、
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約第三条に基く
行政協定の実施に伴う
関税法等の
臨時特例に関する
法律案でございます。
先ず、
合衆国の
公用船で公の目的で運航されているものに対しては、とん税を免除し、
公用船が
一般貨物を積載しておりまするときは、全
積載貨物中
一般貨物が占める重量の割合に応じてとん税を徴収することとすると共に、
公用船及び公用機の入出港に際しては、
関税法で定める手続のうち、
必要最小限度のものをとらせることといたしております。次に、
合衆国軍隊、その
公認調達機関、
軍人用販売機関、
合衆国軍隊の
構成員、軍属又はこれらの者の
家族等が輸入する特定の物品については、関税及び
内国消費税を免除することとすると共に、右の免税を受けた物品が国内において免税を受ける資格のない者に処分されましたときは、
当該物品につき輸入又は
保税地域からの引取があつたものとみなして関税及び
内国消費税を徴収することとし、譲渡人及び譲受人に必要な手続を行わせることといたしております。なお、関税及び
内国消費税を免除された物品につきまして、その横流れを防止するために必要な措置を講じているのであります。
第八番目に、
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障条約第三条に基く
行政協定の実施に伴う国有の財産の管理に関する
法律案でありますが、今回の
行政協定の規定によりまして、
合衆国の軍隊の用に供することとなります国有の財産の管理及び処分に関しまして
国有財産法等の特例を設ける必要が生じましたので、この
法律案を提出した次第であります。
以下この
法律案の主な内容について申し上げますと、
第一に、国有の財産を無償で
合衆国に使用を許可することを規定いたしております。即ち、
行政協定第二条第一項及び第三条第一項の規定に基きまして、国有の財産を
合衆国軍隊の用に供する必要がありますときは、その用に供する間無償で
合衆国に対して
当該財産の使用を認めることができることとしたのであります。第二は、
行政協定第四条第一項の規定に基きまして、
合衆国の使用に供した国有の財産につきましては、
合衆国から
日本国政府に
当該財産の返還があつた場合においても、その
原状回復又はこれに代る補償の請求を
合衆国に対して行わないものとしたことであります。
第三は、
行政協定第二条第四項に基きまして、
合衆国の使用に供した国有の財産について、
合衆国軍隊の用に供している間といえども、その用途又は目的を妨げない限度において他の者にその使用又は収益を許すことができることとしたのであります。第四は、国が、国有の財産を国以外の者に貸し付けている場合において、
当該国有の財産を
合衆国の軍隊の用に供する必要があるときは、適正な補償を行なつた上で
貸付契約を解除することができることとしたのであります。第五には、
特別会計に属する国有の財産を
合衆国軍隊の用に供しようとする場合の取扱であります。この場合におきましては、
当該財産は
一般会計に所管換若しくは所属替をし、又は
当該財産は
一般会計に使用せしめたこととした上で、
一般会計から
合衆国の使用に供することとしたことであります。
以上三法案が
行政協定実施に伴う
特例法でございます。
第九番目の法案であります
日本開発銀行法の一部を改正する
法律案であります。
日本開発銀行は、
長期産業資金の供給により
我が国経済の再建及び産業の開発を促進することを目的として、昨年四月二十日米国対日援助見返
資金特別会計からの
出資金百億円を以て設立されましたが、その後における
融資状況等に鑑みまして、
一般会計からの
出資金七十億円を加えましたほか、去る一月十六日には
復興金融金庫の
権利義務を承継し、その
元利回収金を再投資し得る道を開いたのであります。併しながら、
我が国経済の現状を考えますときは、
日本開発銀行の業務は、今後なお一層その重要性を増すものと認められますので、このたびその資本金を増加すると共に、これに資金の借入の機能を附与するほか、業務活動全般につき、これを拡充する措置を講ずることとしたのであります。
以下その内容の要点を申述べますならば
第一に、資力の充実及び資本構成の適正化を図るため、その資本金を三百億円に増加すると共に、
復興金融金庫から承継した資産に見合う政府借入金八百五十二億二千万円を
出資金に振替えることとしたのであります。第二は、従来の融資肩替り業務に改善を加えたほか、新たに開発資金に関する債務保証業務を行い得ることとした点でありまして、将来これにより開発資金に関する外資の受入が促進されるものと期待しております。
第三に、業務の拡充に即応し、その資力の充実に資するため、政府からの資金の借入及び外国からの外貨資金の借入を認めることとした点であります。明年度におきましては、米国対日援助見返
資金特別会計から四十億円の借入をすることといたしております。第四に、
政府資金の統一的、効率的運用を期するため、将来適当な時期に、米国対日援助見返
資金特別会計から、その私企業に対する貸付債権及びこれに附随する
権利義務を承継することとした点であります。而して、その際右の承継債権に相当する金額が、同
特別会計から
日本開発銀行に対して貸付けられ、将来更に適当な時期にこれを
出資金に振り替えることができることとしたのであります。第五に、その利益金の一定割合を国庫に納付させることとし、これに伴い、法人税等の非課税の取扱をすることといたしました。
以上が
日本開発銀行法の一部を改正する
法律案でございます。
第十番目の法案であります
閉鎖機関令の一部を改正する
法律案であります。
閉鎖機関令に基く閉鎖機関の特殊清算は、従来
大蔵大臣の監督の下に、閉鎖機関整理委員会によつて、鋭意その処理を進めて参つたのでありますが、当初閉鎖機関として指定を受けた戦時統制機関、外地関係の会社、
金融機関など総数千八百十八機関のうち、その清算が、来年度に繰越される約二群六十機関を除いて、その清算はすべて結了し、閉鎖機関制度の当初の目的もほぼ達せられるに至つております。平和条約の効力発生に伴いまして、
閉鎖機関令にも若干の改正を加える必要を生じ、先きに
ポツダム宣言の受諾に伴い発する命令に関する件に基く大蔵省関係諸命令の措置に関する
法律案を提出いたし、御審議をお願いいたした次第でありますが、今回更に、閉鎖機関に関する制度を速かに終結させることが望ましいと考え、清算未結了の機関のうち民法、商法等いわゆる一般法に基いて清算を行うのが適当と認められるものについては、その指定を解除して一般の要望に応えることといたすと共に、今後における閉鎖機関の在外財産の処理に必要な措置を準備する目的を以つて、この
法律案を提出いたした次第であります。
次にこの
法律案の主な内容につきまして、その概要を御説明申上げます。
第一は、閉鎖機関の指定の解除に関する点でございます。即ち、閉鎖機関はその指定を解除された場合において、その清算事務を執行する機関を欠くことになりますので、それまで特殊清算人であつた者に、株主総会等を招集せしめて、指定解除機関の清算人を遅滞なく選任させると共に、指定解除に関連する政府への報告、利害関係人の異議の申立等の規定を整備しようとするものであります。なお、閉鎖機関のうち特殊法人であるものにつきましては一般の私法に基いてその清算を行うことが困難であるため、その指定解除後の清算につき別に政令で定めうることといたしております。
第二に、閉鎖機関の在外資産及び負債の処理に関する点でございます。平和条約の発効に伴いまして、閉鎖機関の在外財産については、その返還及び清算等処理を要するものが増加することが予想されますので、閉鎖機関の特殊清算の対象の範囲を拡大して、その本邦外にある本店、支店その他の営業所に係る債権及び債務をも含ませることとし、且つ、閉鎖機関の在外負債のために、その国内資産のうちから留保されている資金について、平和条約に基く在外負債の処理の問題が決定次第それに応じて処理することができるよう、所要の規定を設けることといたしております。
以上がこの
法律案の提案の理由並びにその主な内容でございます。
最後に
関税法の一部を改正する
法律案につきまして提案の理由を御説明申上げます。
今回平和条約の締結に伴いまして、関税関係の国際条約及び協定として、税関手続の簡易化に関する国際条約、貨物の原産地虚偽表示の防止に関する協定、及び国際民間航空条約に我が国が加入又は参加の承認を申請することが予想されますので、これに備えるため、
関税法に所要の改正を加える必要がありますので、この
法律案を提出いたした次第であります。
以下この
法律案の内容の概略を申しますと、
先ず、「税関手続の簡素化に関する国際条約」関係におきましては、第一点として、この条約に基き通関手続の簡易化に資するため、関税の担保として認められるものの範囲を拡張して現在認められている金銭、国債又は税関長が確実と確める社債の外保証人の保証をも認めることとして、輸入者の便宜を図り、これに伴つて必要な徴収規定を設けることといたしました。第二点としては、この条約では貨物
保税地域、庫敷料等に関する合理的な制度を立てることが要望されておりますが、我が国においては、戦前は税関が直接管理運営し貨物の通関を迅速にしていた税関構内が戦後は殆んど全部消滅していること、又私人の経営する特許上屋に関する規定がないこと等により
保税地域に関する制度が充分整備せられていない実情に鑑みまして、
保税地域の指定について明確に規定上、この指定を受けた土地、建設物等の処分、用途変更等並びにそれらの保管規則、保管料の決定については、税関長に協議を要する等、関税行政上必要最小限の規制を加えることとすると共に、輸出入貨物は、すべてこの地域を通過させ、税関検査その他税関手続に要する経費、時間の短縮を図り、関税取締の確実を期し、更に、この地域内において貨物を取扱うことができる範囲をできるだけ拡げることといたしました。又、特許上屋については、現在保税倉庫に準じて取扱つておりますので、保税倉庫法の規定に準じて、これに関する規定を設けて特許上屋の性格を明確にいたしました。
第三点としては、条約に基き、税関手続又は規則の軽微な違反に対しては、苛酷な罰を科することを避けるため、虚偽申告、虚偽証明又は虚偽添附書類の提出に関する罰則の規定を整理いたしました。次に、「貨物の原産地虚偽表示の防止に関する協定」関係におきましては、この協定に基き、虚偽表示をした貨物の輸入の防止を図るため、虚偽の原産地を表示した輸入貨物を税関によつて保管することとし、これに伴い保管後の貨物の処理について必要な規定を設けることといたしました。最後に「国際民間航空条約」関係におきましては、この条約に基き、国際的標準に従つて国際航空機に関する合理的な税関手続を定めるため、税関空港、航空機、機長及び空路運送並びにこれらに関する犯則事件について船舶の場合に準じ、必要な規定を設けることといたしました。
以上が
関税法の一部を改正する
法律案の提案の理由でございます。
以上十一件につきまして御審議の上御賛成賜わらんことをお願いいたします。