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参考人(北條秀一君) それではお許しを得まして公館借入金返済に関する件につきまして
意見を述べさせて頂きます。
大蔵委員会の非常に貴重な時間を割いて頂きまして、特に
参考人としてこの問題についての私の見解を述べろということでありますので、簡潔に要点を申上げまして、言葉の足りない点はどうか御賢察願いたいと存ずるのであります。
私は全国の引揚者団体の
理事長をしておりまして又この公館借入金の問題につきましては、全国からすでに私宛に四万人に近い
人たちが本件の解決についての一切の交渉を任せるというふうな委任状を頂いておるのでありまして、
従つてこの公館借入金の問題は、私どもが引揚げまして後満六年間になんなんとする今日まだ未解決であるということにつきまして、私どもはどうしても早急に本件が解決されますように、而も私どものお願い申上げたいのは、急いで解決する、勿論急いで解決して頂きたいのでありますが、ただ急ぐだけでなしに、正しく而も実際に引揚げて参りまして以来惨但たる苦労をしておりますこれら引揚者の諸君の利益になりますように本件を解決さしたいと、こう
考えておるのであります。そこで私は本日
意見を申上げますに際しまして二つに区分して申上げたいのであります。第一は借入金の性質というものと、第二はこの公館借入金を私どもが種々解決するために運動いたしたのでありますが、その運動のうちの特に皆さんに本日聞いて頂きたいという特殊な部分と、及び衆議院から参議院に回付されました、今回修正されました公館借入金返済に関する
法律案についての
利害関係者の気持、これを第二に申上げて、第三に、さてそれでは具体的にどういう私どもが要求を持
つておるか、
従つて参議院にどういう点を陳情申上げるか、この三つの点について申上げようと
考えるのであります。
第一の借入金の性質でありますが、これは戰後処理問題の中の人命に関する問題でありまして、国家の道義的責任上から言いまして最も重要な大きな問題であるということであります。御承知のように昭和二十年の八月十四日に
日本政府はポツダム宣言受諾に際しまして、天皇の地位の保障と海外にありました軍人軍属の安全保障、この二つの件につきまして連合国に申入れをいたしたのでありますが、四百余万に亘ります
在外一般邦人の安全保障については何らの申入れをいたしていないのであります。終戰後外地にありました四百余万の同胞は、戰争が終りますと直ちに恐るべき混乱と恐怖の中に陥れられたのであります。この混乱の中にありまして四百余万の同胞が命を全うするために最も重要な、強いて言えば命を守るために唯一の
方法はお金でありました。命あ
つての物種ということをよく言うのでありますが、当時の
在外同胞の
状態は命と物種とこれ二つが全く不可分のものでありました。従らてこの公館借入金と申しますのは、その命と不可分の物種を借りよう、即ち金を借りて
在外同胞の救済をし、そうして更に又後に起ります
在外同胞の本国引揚の費用に充てようという金でありまして、その事情を申上げただけでも、この金の性質がおわかり願えると存ずるのであります。
従つて命と不可分のお金を借入れるということは並大抵ならん困難なことであります。各人にとりましても全く混乱の中で、先に生きて行く自信がありません。そこでどうしても金を持
つていなくちやならん。その金をより困つた人を救うために出してくれというわけでありますから、並大抵のことではこの金は出て来ないのでありますが、当時私は満州奉天におりまして、
一般邦人の救済をいたします救済所長をいたしておつたのでありますが、私は先頭に立
つてこの金の借入れに努力をいたしました。戒嚴令下におきまして、而も夜分になりますと非常にたくさんの強盗が出る。全く人命の保障がない。そういう中におきまして私は夜を徹し人を尋ねて、これに懇請をし或いは強制をし、ときによりますと脅迫をしてまでも金を渡して頂くというふうな、非常手段をとらなければなかなか金を出して頂くことができなかつたというふうな事情でありました。そうして集めたこの金でありますが、さてその金によりまして私どもは何をしたかということは、すでに申上げたのでありますが、外地にありますところの公館の館員各位及び
一般避難同胞諸君の生活を守るためにこの金を費やしたのでありますが、その後に私どもは連合国によ
つて強制的に本国に引揚げろという命令に接したのであります。
従つて引揚げて参りましたのは三百四十万でありますが、この三百四十万を無事に
日本に引揚げさせるために、この借入れましたところの金を引揚費用に使つたのであります。で、即ち現地におります間の同胞、或いは今日申します国家公務員諸君の生活を守るために、或いは又後にはその引揚のために使いました金であります。ところがこの借入金は引揚に際して一千円以上は持ち帰れなかつたと、その持ち帰れない金の大部分を借入れたのじやないかというふうなことを私は
日本に帰
つてからちよいくいくと聞くのであります。でこういう非難を聞くごとに、聞くたびに私は実に内心慨歎すると共に、その当らぬゆえんを説いて来たのであります。でこういう非難を聞きますと、如何にも私どもが余計なことをや
つて、そうして無理をして金を集めて、外地におつたところの同胞を
日本に引揚げさした。当時
日本は物凄い食糧難でありましてその食糧難の最中に余計な人口を
日本に持ち込んだのじやないかというようなふうに、私はひがみかも知れませんが、というふうに受取れて、誠に心中慨歎に堪えないのであります。御承知のように昭和三十年の八月の十四日に、いや、十五日にポツダム宣言を受諾いたしまして後、時の
政府は九月の二日の日に降服文書に調印いたしました月の五日に連合軍最高司令官から外地及び
外国との一切の通信を禁ずるというふうに、通信が禁止されておるのであります。そういうふうに私は聞いておりますが、その通信禁止命令を受けた後、九月の七日に、時の
政府の外務大臣でありますところの吉田茂氏の名において外地の公館に訓令が発せられまして、公館員及び
一般日本人の救済のために金が要るだろう、
従つてその金は公館において借りろ、借りた金は
政府において後に責任を以てこれを善処するという訓令が参つたのでありますが、
従つて私どもが現地で借りました金は、この訓令はずつと後に参つたのでありますけれども、その訓令が出ました後、私どもはいろいろと出る前後から金を借りたのでありますが、いよいよ引揚の命令が出まして、そうして一千円の金しか持ち帰れなかつたという点はずつと後にな
つての問題であります。ここでよく皆さんの御了解を得ておきたいのは、
日本政府から訓令が来て、そうして金を借りろという事実はすでに九月の七日に起きておりまして、一千円しか持ち帰れなかつたという事実は今申しましたように後に起きた問題であります。こういう点から
考えましても、
先ほど申しましたような一千円しか持ち帰れなかつたというふうなことによつ如何にも余計なことをしたというふうなことを言われるということは全く心外に堪えないのであります。
もう
一つ又別な点から申しますと、若しこの金がなかつたらどう
なつたかということでありますが、恐らくこの金がありませんでしたならば、現地におりましたところの多数の同胞は本国の土を踏むことができなかつたと私は
考えます。或いはその際に連合国から私ども
日本人を救うために金を貸して頂くというふうなことが起きたかと思うのでありますけれども、そうなれば当然連合国としてはこの金を終戰処理費として
日本政府に要求することは当然のことでありましよう。
従つてこの借入金の問題につきましては、当初から
日本政府におきましては、これは
政府の行政費であるというふうにして行政費として確認されております事情は、先刻皆さんが御承知にな
つておるところと思うのであります。
第二の点でありますが、本件の経過について特殊な部分だけをこれから申上げたいと存じます。昭和二十三年の六月でありますが、GHQの経済科学局長のマーケット氏から我々の代表の一人であります高碕達之助氏に正式な回答が参りまして、この件は十分に
考える、そうして
日本の
政府においても最高司令部においても十分に検討する。検討して十分に
考慮して善処する。併し一件々々について十分慎重に検討をすべきであろうというふうなマーカツト局長からの書面が参つたのであますが、それより前に私どもは、二十一年以来GHQとの間に折衝を重ねておりました。ところが二十三年の八月に元関東州、大連の市長をしておりました別宮秀夫氏は、本件がなかなか解決いたしませんので、遂に世をはかなんで彼は責任を負うて自殺をいたしたのであります。私は早速別宮氏の自殺した電報を受取りまして、これに基いてGHQとの折衝に入りました。口頭の折衝ではいけないと思いまして、文書を以てGHQに対し本件の解決促進について申入れたのであります。その申入れました文書は参議院の渉外課に残
つておりますが、当時私が申入れました点はこういうふうに元大連市長の別宮君が引責して自殺するというふうな
状態に
なつたのだが、こういうことは若しも本件が解決が遅延されれば今後何件か起るかも知れない。私自身も多くの同胞から責められておるので責任上自殺しなければならないかも知れない。若しそういうふうな事態に
なつた場合には、結局この問題が解決しないのはGHQの責任だというところまで私は極論した文書を出しましそうしてその年の十二月になりましてGHQから了承したという通告が参議院に参つたのであります。勿論この間に
日本政府におきましてもGHQとの間に折衝を続けておられたと思うのであります。幸いにして二十四年の五月に今回の
法律案に先行いたしました、例の審査会法が成立いたしたようなわけであります。特は私はこの点を申上げますのは、こういうふうにしてそれぞれの責任者が死を賭してまでも
日本に引揚後本件の速かなる解決に努力をいたし、又日夜苦慮いたしておるのであります。
従つて若しこの問題が二十三年の春に、夏に、秋に解決しておりましたならば、恐らく別宮秀夫君を殺さずに済んだでありましよう。そういうわけでありますので、今日出て参りましたこの
法律案が早急に成立するということは何人におきましても望むところであります。但し
法律案が、今回の修正案が成立するということでなしに、本件が速かに解決するということを私どもは望んでおるのであります。引揚後六年間を経過いたしまして今日まで本件が解決しないために多数の
人たちが、多数の同僚が怨みを呑んで死んで参りました。而も又現在でも死線をさまようておるところの多くの老人或いは友
人たちがおるのであります。併しながら私は今回の提出されました
法律案、殊に衆議院において修正されたんでありますが、この修正されて提出されました
法律案というものに対し私どもはどういう心境にあるかといいますと、この
法律案を見まして私どもは、まあ言葉は汚いかも知れませんが、お情の投げ銭や放り銭では困ると、そういうものはむしろ頂かないほうがいいんだというふうに私どもの心境はな
つておるのであります。昔からよく民間に、借金の催促に参りますと、まるい金がほしいのか長い金がほしいのかとい
つて、やくざに借金の催促を追払われたということを聞くのでありますが、私どもの心境からいいますと、現在はそういうふうなこの
法律案によ
つて印象を持
つておるのであります。でありますから我々は何といつた
つて外地において永年働いておつた人間でありますが、そういうことならば、渇しても盜泉の水を呑まない、むしろ頂かないほうがいいと、でありますから若しこの
法律案が拙速を尊んで、明日の百円よりも今日の一円だということで解決しようというふうなことになりました場合には、我々の同僚の中の多くは、
政府が返済金をやろうといたしましても受取らないというふうな事態が発生するのではないかと私は
考えております。殊にこの公館借入金は、訓令を発したのが当時の外務大臣吉田茂氏であり、又確認書を発給いたしたのが現在の外務大臣の吉田茂氏の名前であり、而して今回の
法律案によ
つてこれを解決しようとするのが吉田茂さんの内閣であります。こういうことになりますと、我々のような心境にある者は、むしろこの金を払うとい
つても受取らないで、この吉田茂さんの出した
在外公館借入書を末代までもこれを保存いたしまして、国家がこういうふうな不信義なことをしたんだと、無理押しにこういうふうな不信義なことを我々に押付けたのだと、どうしてもこれではいかんと、これを是正しなくちやならないというふうな心境にな
つて来るのであります。
どうか私はお願いいたしたいのは、そういうふうな引揚者の心境を明察して頂きましこの際みんなが喜んで返済を受けるというふうな解決をして頂きたいのであります。而もみんなが喜んで返済を受けるというふうな解決
方法は、決して非常な無理をしろと、無理をしなくちやならんということでばありませんし、又決して不可能なことではないというふうに私どもは強く申上げたいのであります。
第三でありますが、返済
法案についてであります。返済
法案につきましていろいろと申上げたいのでありますが、特にそのうちに一人五万円で打切るというふうな問題がありますが、この問題はいろいろと皆さんに
考えて頂きたいと思うのでありますが、私どもはこの五万円を直ちに右から左に現金で払
つて頂きたいというふうなことも申しておるわけではないのであります。
従つている いろいろな解決
方法があろうかと
考えるのでありますが、特に本日申上げたいのは、
先ほど私どもの心境として申上げました、今回の
法律案によ
つて私どもの受ける印象は、どうもこれがお情の投げ銭、放り銭の類いであるというふうに私どもは受取るのでありますが、どうかその点を直して頂きたい。どういう点かといいますと、それは第一は
法律案の別表にありますところの換算率の問題であります。第二が
法律によりますところの百三十の点であ
つて、第三が修正案によりますところの一口五百円未満のものは五百円を支払う、この三点であります。第一の問題でありますが、この換算レートにつきましては同じ
日本の銀行券、即ち朝鮮では向うの一円五十銭が今の
日本銀行券の一円で返すというふうなことはどういうところからこういうことが出て来るか、更に朝鮮におきまするところの朝鮮銀行券及び満洲の中央銀行券、これは当時の事情いずれから推して見ましても、これは飽くまでも日清、日鮮一対一でなければならないというふうに私は
考えております。又北支、中支の問題でありますが、当時
政府が定めておりました送金レートというものがあります。
従つて北支に関しましても或いつは中支に関しましても、又南支に潤しましてもこの
政府の定めておりました送金レートによ
つて、これらの換算率を決定すべきものであるというふうに私どもはお願いいたしたいのであります。要するところこれは金の貸借りでありますから、借りた当時の要するに
條件によ
つてこれを解決すべきものでありまして、借りた貸したが、その後の事情が違つた、
従つてその違つた事情によ
つて借りた金を換算して行くということにな
つて来ますと、恐らく
国内におきますところのこういつた国と民間、或いは民間同士におけるところの貸借関係というものは全く根抵からぶちこわれてしまう。更に
法律案によりますところの百三十でありますが、百は百三十にして返すということであります。これは一体何のために三十、即ち三割というものをくつ附けたのか、
政府は利息のようなものだということを言われておるようでありますが、私どもといたしましてはこれはどうも理解できないのであります。成るほど三割余計に金を附けて頂くことは有難いのでありますけれども、
先ほど申上げましたように、これはどうもお情の投げ銭或いは放り銭の類いである。こういうことは筋の通らないことであります。私どもといたしましては百は百三十にして返すということは全く意味のないことであります。これは百は百として返す、三割をくつ附けるということはやめるべきだというふうに主張いたしたいのであります。更に第三点の修正案によります五百円を支払う、五百円以下は五百円に繰上げて支払うということでありますが、これは
先ほど申上げました貸借りでありますから、五十円借りたものを五百円返すということは筋の通らんことであります。結局これらのことを
考えて見ますと、どうも言葉を重ねてくどいようでありますが、依然としてお情けの投げ銭、放り銭の類いであるというふうに私には感じられるのであります。以上の三点を特に私は申上げたいのでありますが、この三点が
中心でありますが、この三点によ
つて今回の
政府が
考えておられます返済に要するところの
予算というものを
考えた場合にどういうふうになるか。これはそれぞれ関係当局にお聞き願い、或いは関係当局に資料の提出を求めて頂いて、本
委員会において御検討頂ければ直ちにわかることでありますが、私はここで申上げたいのは、私の申上げます修正点を修正して頂きまして、結果として差がないということを
はつきり申上げることができると存ずるのであります。
以上三つの点を申上げたのでありますが、最後に私は私の
考えを申上げまして皆様の御賢察を仰ぎたいのであります。この
法律案が昨年の八月の十三日に第十一国会に提出されました。その後第十二回国会で衆議院の審議未了になり、更に又今回の第十三国会に継続して上程されたのでありますが、遂に今日まで八カ月近い日子を費やしておるのであります。なぜ八カ月も費やしたかということは、要するところ私どもの主張が相当に真剣に
考慮されておつたということを裏書きするものであろうと私は
考えておるのでありますが、最後にそれだけの長い間かか
つて愼重に検討されました問題が、三月の末にな
つて衆議院を通過いたしました修正案は、昨年の暮の修正案と何ら異らないのでありますということになりますと、結局これはこのまま通
つて行きますと、今頃どうせ通すならば去年の暮に、或いは去年の十一月の末に通したらよかつたんじやないかというふうなことになるのでありますが、私どもといたしましては、殊に
利害関係者であります側から申しますと、本件は三月三十一日が、……前の
法律によりましてどうしても三月三十一日に解決しなければならんということでありますけれども、私どもの心境から言いますと、とにかくこの
法律案を正しいものに解決して頂きたい。私どもの十分に納得の行き、喜んで
政府の返済金を受取れるというふうなところにして頂くためには、何も三月三十一日に限つたことはありません。会期もまだあることでありますので、どうか本
大蔵委員会においてこれを正しく修正をして頂きたいということをお願い申上げるのであります。余計なことを言うようでありますが、昨日も本
委員会で聞いておりますと、
菊川委員から最近の国家の道義の廃頽について憂えておられたのでありますが、国は言うまでもなく道義の
中心であります。道義の
中心でありますところの国家がみずから借りた金を無法なこれを
法律によ
つて処理するというふうなことは、何としても私ども受取り得ないところであります。私はここに
在外公館がとりました
一つの例を皆さんに申上げて、特に御理解に資して頂きたいと存ずるのであります。
それは漢口の総領事の中野勝次郎氏が本件に関して出しました借用証であります。その借用証を申上げますと、これはこういうふうに書かれております。
借 入 証
一、金儲備券 元也
但右は終戰に因る新事態発生に際し国庫より支出さるべき在漢口
日本総領事館経費未達の為め、之に充当するものなり
右金額左記
條件により借用候也
昭和二十年十一月 日
中野勝次郎
殿
記
一、無利息
二、返済期返済
方法及儲備券対
日本円との換算率は当館並に貴殿引揚後
政府の決定に一任す
以上
こういう中野勝次郎総領事から借用証文が漢口の
在外同胞諸君に出されて借入金がなされたのであります。これは
一つの例を申上げたのでありますが、これによりましても、これほどまでに明瞭に借入れられたところの借入金を、今日においてそれはどうだこうだというふうなことで今回の
法律案のような処置をされるということでは果して我々は今後
政府の行いますことに対して信頼を持
つて行けるかどうか、断じて私どもは信頼を持
つて行けない。殊に今新らしく独立すると同時に多くの
在外公館が設置されて、公館員が出て行くわけでありますが、恐らく将来我々は再び
日本人が海外に出て行くようになると思うのでありますが、この
在外公館借入金の問題をかかる不始末をしたままでおきますと、将来において我々は
在外公館員に対して全く信頼を持つことができない。
政府に対して信頼をおくことができないという感を深くし、遺憾の意を表せざるを得ないのであります。而も当時の
在外公館員諸君が
日本に帰
つて来て何をしたか。これらの諸君は
日本に帰つたら必ずこれらの問題を早急に解決すると言いながら、これらの
人たちはそれぞれ官途について悠々と国家の仕事をしておる。こういう姿を引揚者の諸君が見るたびに、彼らの胸中に、何だ、俺
たちにさんざんなひどい目に遭わしておいて、あとは何もないじやないか、けしからんじやないかという感情がおきて来るのは当然なんであります。
どうかこの公館借入金の問題は、以上申上げました点で十分に私の言いたいことは盡し得ないのでありますが、御賢察を願いまして、重ねて申上げますが、道義の
中心としての国家、道義の
中心としての
政府が、借りましたこの金を正しく公正に引揚者のために解決して頂けますことを重ねてお願い申上げまして、私の
意見の開陳を終らして頂きます。