運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-06-18 第13回国会 参議院 水産委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十八日(水曜日)    午後一時五十三分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木下 辰雄君    理事            松浦 清一君            千田  正君    委員            秋山俊一郎君            藤野 繁雄君   政府委員    大蔵省主計局次    長       石原 周夫君    水産庁長官   塩見友之助君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   参考人    日本捕鯨協会会    長       藤田  巖君    日本海洋漁業協    議会副会長   小濱 八彌君    日本水産株式会    社社長     鈴木 九平君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○水産物増産対策に関する調査の件  (日米加漁業條約に関する件) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障條約に基き駐留する合衆国軍  隊に水面を使用させるための漁船の  操業制限等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。  日米加漁業條約に関する件を議題に供します。本問題につきましては、外務水産連合委員会を二回開きまして、当局に対していろいろ詳細なる質問をいたしたのであります。先に外務委員会から水産委員会に向つて水産委員会態度を聞かしてくれというような申出がありましたので、水産委員会においては慎重審議いたす必要を感じまして、本日特に業界権威者お三方に来て頂きまして、更にこの件についての御意見を聞きまして、そうして委員会態度を決定いたすことになつたのであります。お三方にわざわざおいで願いまして恐縮に存じます。これからこの條約案についての御意見を順次拝聴いたしたいと存じます。  先ず藤田さんからこの條約に対してここが悪いとか、ここがいいとか、若しお感じがあつた点を一応お述べを願いたいと思います。
  3. 藤田巖

    参考人藤田巖君) 丁度日米加漁業協定会議がございましたときに、私直接折衝いたしておりましたのであります。大分時日が経過しておりますので記憶も薄れておるところがございますが、只今委員長お話になりましたことにつきまして、考えていることを述べたいと思います。  この日米加漁業協定につきまして、約四十日の間三国の委員会議でいろいろ議論をしたのであります。その基本的な考え方というものは、飽くまでも公海漁業は自由であるという原則を貫いて行く、併しながら自由と申しましても、野放図な自由ということではこれはないのでありまして、やはり資源の維持という点については国際的にも大いに協力をしなければならない。従つて或る特定資源について、特にその資源が満限であるようなものについては、これは濫獲に陥らないようにそれぞれの国がやはり自発的に制限をして行く、それもこれは必要なことであろうという骨子でこの漁業協定ができておるのであります。従つてこの漁業協定公海漁業の自由というものについて、或る特定資源については特定の国は、つまり一定の條件を備えておるところの資源については或る條項に該当するところの国が遠慮をし、又現在やつている国は保存措置を続けるということが一つの了解的なような事柄になつておりますわけであります。従つて只今どういう点が不満であり、どういう点がいろいろ足りない点があるかというようなお話でありましたが、勿論この協定はお互いの国のそれぞれの主張を話合うのでありますからして、議論をしております上にまとまりません点はそれはあるであろうと思います。従つて会議でいろいろ問題になつております点については、これはやはりそれぞれの国の主張違つてつたのであります。併し結論として申しまして、私どもはあの漁業協定は、我々といたしましてはどうしてもこの点が守らなければならない最後の一線については、これは確実に守りおおせたと考えております。従つてその意味で公布後、あれと同じような内容の條約が他国と結ばれる場合におきましても、日本立場というものは十分に取入れられて、支障のないものであろうというふうに私は考えておりますわけであります。大体抽象的でございますが、大体のことを申しまして又あとは御質問にお答えいたします。
  4. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 小濱さん願います。
  5. 小濱八彌

    参考人(小濱八彌君) 私も三国の漁業協議が行われまする際におきましては、代表の一人として業界の中から選ばれたものと思つておりますが、協議に参画いたしておりましたのでございます。で三国の漁業協約が始りまするに当りまして、この三国で結ばれる漁業協約は、今後日本がいろいろの国と漁業協約を結ぶに当つて一つモデルとなることもあるし、或いはそれがいろいろに引用されるが故に、日本加三国の漁業協約において結ばれるところの條項が、今後諸外国と日本が結ぶ場合に支障のあるような條項を結んでもらつては困るということを業界では考えておりました次第でございます。  で申すまでもなく世界のほうぼうで、講和條約が効力を発生して、自由に日本漁業者活動ができるようになれば、日本漁業者はどこにでも来て無茶をやるのじやないかというふうな感じが広く行われておつたように思います。米加漁業者の中にも、自由に活動ができるようになると、日本漁業者が来て沿岸を荒すのではないかというふうな声が、米加漁業者の間にあつたようでございます。戦前、日本漁業者米加沿岸を無茶に荒したとは思つておりません。併しながらそういうふうなことが言われておりまして、米加漁業者の間には、そういうふうな感じが広く行われておるようでございました。従つて今回の日米加漁業協約が始まりまする場合には、米国及びカナダでは、日本漁業者が近くに来ちや困るというふうな宏を持つて来るのじやないだろうかということを業者は心配いたしておつたのでございます。で、若しもそういうふうな案が出て来るとすれば、我々の主張を十分に通して、将来日本がほかの国と結ぶ場合に邪魔になるような條項は、一切入れちや困るのだ。で、米加漁業條約において、日本漁業者は如何なる主張をなすべきかということについて、あらかじめ研究をしておうというので、あの協約が、協議が始まりまするずつと前から、漁業者の闇で海洋漁業協議会というものを作つて業者意向をまとめておりましたような次第でございます。米加との漁業協議に入る場合については、業者意面は如何に主張するか、業者といたしましては、独立を回復すれば、日本漁業者公海においては自由に漁業ができるということであらねばならん。併しながら我々業者公海において自由に漁業をすると主張するのは、無茶をやつてもよろしいということを意味するのではないのだ、水産資源を濫獲いたしますることによつて資源が減少するような状態になりますることは、これは人類全体の不幸を招くゆえんであるから、だから公海において漁業が自由であらねばならんと主張するけれども、併しながらそれは資源保持の義務を伴う公海の自由でなくちやならんということでなければ、我々の主張は正しくないのじやないかというふうなことで、こう我々は論議いたしておつたのでございます。で、米国及びカナダのほうでどういう案を出されるか知りませんけれども、我々としては、公海における漁業は自由であります。併しながら魚族について、或る魚族をこれ以上取つては、魚族を永続する、資源保持することの邪魔になるというふうな状態になつておる場合については、これは制限をしなくちやならん場合ができるだろう。併しながらその制限は、締約国にひとしく平等にその制限は課せらるべきものであつて、或る一国のみが制限せられ、他国制限を受けないというふうなものであつてはいけないのだ。然らばそういうふうな状態にあるや否やということは、締約国の間で委員会でも作つて、そういう状態にあるかどうかということをきめればいいんじやないかというふうなことを我々は論議いたしておつたのでございます。その我々炉論議いたしておりましたことが、今度の日米加漁業協約に臨んでみますると、米加の間で、原案として出て参りましたものに大体その原則が盛られておつたのでございます。従つてこの協約を進めて参りますについては、如何なる原則の下に漁業協約を成文化するかということについて、原則に関する議論を十分にしようじやないかというふうなことを我々は主張いたしておつたのでございます。で我々業界で心配をして、あらかじめ備えておりましたものについては、水産庁及び外務省にその意見を十分に通じてあつたのでございまして、外務省及び水産庁においても、その意見を十分に御審査頂けるし、又協議に臨んで業界代表もそれに参画するようにということで、我々漁業者意見はあの漁業條約の中には十分に取入れられておるものと考えております。  従つてあの漁業條約については、交渉の経過において、いろいろの問題について非常に緊迫したような事態にも及んだこともございまするけれども、大体において、業者が今後海洋において活動をいたしまするのに不当に制限をされるということのないように、そういう悪い先例にならないようにという用心をいたしておりました点は、あの漁業協約の中に十分にそういう邪魔になるようなことのないように考慮されてでき上つておるものと、大体私たちは考えております。
  6. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 鈴木さん一つ
  7. 鈴木九平

    参考人鈴木九平君) 御指名によりまして、日本水産鈴木が御回答申上げます。  私も藤田、小濱両氏と行を共にして漁業協定折衝中四十日間外務省通つた一人でございます。  どこが不満かと、こういう委員長の御質問でありますが、只今両氏から申上げた通り、この條約締結の事前において、我々業界、特に私は経済行為を直接行う業者といたしまして出たわけでございまして、事前においてすでにいろいろの点を討議されて、早く言えば藤田さんから申上げた通り、野放図な、いわゆる何らの制限を受けずに仕事をするというとは非常に自由である、又経済行為をするに非常に楽である、この点には間違いないと思いまするが、縷々前二者も申上げた通り国際間における我が国立場、或いは人類共同水産食糧を永続させる、こういう面においては、我々直接経済行為を行う業者立場におきましても、その資源を永久に存続させるためには、或る程度資源存続の根本に立入つてこれをよく考えなければならない、こういう線で事前によく打合してやつたわけなのでありまして、いろいろ論議される漁区の制限問題が討議せられておるやに承わつておりまするが、これ又我々の将来への水産資源を永続させる一つの手段であると、私はこう信じておりまして、本日一つの線を置かれるというような問題について、無論先ほど申しました通り、何らの制限を受けんということは、確かに我々業界人としては望ましいのであるが、今も申上げた通り国際間の一つの行き方としては、これは永遠の我々の幸福を図るために止むを得ないものである、こう私も信じて、事前協議の席においてもそれを表明したのでありまして、委員長からの御質問通り、何が不満であるか、こう言われましても、いわゆる折衝の衝に当つて、私としてはこの程度ならば我が業界は大なる障害は受けない、大害はない、こう信じてこの案に殊更に不満を抱くという点を見出し得ないのであります。以上を以ちまして御回答申上げます。
  8. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御三人に対して御質問がありましたらお願いいたします。
  9. 千田正

    千田正君 私の聞きたい第一の点は、日本独立以前に、而も通商條約というような重大な條約を締結しない以前に、占領治下に何故にかくまで米加が急いで日本漁業條約を結ばなければならなかつたかという点についての御観察を承わりたいと思います。もう一つはこれは占領当時における水産関係代表者として来られておつたヘリングトン氏あたりが、特にアメリカ及びカナダの間に申合せられて、そうして急いでこの問題の解決に歿頭したやに聞いておりまするが、何故に日本独立しないうちにこうした問題を掲げてやらなくちやならなかつたか。そういうことが果して日本のために利益であつたかどうかという点についての御観察を承わりたいと思います。
  10. 藤田巖

    参考人藤田巖君) この漁業の問題は日米加いずれも非常な深い関心のある問題でありまして、できるだけ早くこれを解決するということが相互のためになると私どもは信じております。従つて又この会議を始めます場合も、占領治下ではございましたが全然独立国としての待遇の下に何ら総司令部の干渉は受けずに自由な立場折衝をすることを認められておつたのであります。従つて率直に私ども感じます点ま、占領治下であろうとなかろうと我我がやりましたことは、独立国同様思つたことを言い、決してさような気がねなしに十分にやつたものと考えております。従つてこの点については、何ら我々といたしましては特に占領治下であつたからどう、或いは占領後であつたからどうというふうな区別はなかつたものだと思います。
  11. 千田正

    千田正君 世の中にはややもするというと、私も或いはそういう観点にとらわれた点もありましたが、独立と同時に、かつて占領下においてはマッカーサーラインなるものを設定されて、その限界を越えて日本漁船の出動ができなかつた独立と同時にそれが撤廃された。撤廃された場合に日本漁船は、公海自由の原則に基いて世界公海操業できるという一つの権利の獲得と同時に出漁し得る、そうした場合にいわゆるマッカーサーラインに代るべきところの一つ制限ラインを施行する意図米加にあつたのではないかというふうにも考えられまするが、その点についてはどういうふうにお考えになつておられますか。
  12. 藤田巖

    参考人藤田巖君) これは日米加ともに共通に考えておつたのであります。日本は勿論沿岸漁業を持ち、同時に遠洋漁業を持つておる。アメリカ自身も同時に沿岸漁業を持ち遠洋漁業を持つておる。カナダはまだ遠洋漁業というものは今後の問題でありまして、沿岸漁業のみでありますが、将来遠洋漁業に進出しようというような考え多分に持つておる。従つて日米加の間においてはその考え方は大体似たところがあつたのであります。従つていずれもすべての魚族について、一切の漁業について排他的の線を設定するというふうなことは全然どこも考えてならない、これはその後他国でいろいろ主張されております点と非常に趣きの違う点であろうと思います。従つていわゆるマツカーサー・ラインというふうなものはこれは当然なくなつてしまう。決して一切の漁業について一つの線を公海に画して、そこからはすべての漁業を排除するというようなことは、これはどこも考えておらなかつたと思います。
  13. 千田正

    千田正君 更にこの三国條約が先ほど小濱さんからのお話には、いわゆる国際漁業條約のモデル・ケースであるという点でありまするが、成るほどアメリカカナダとの間にはこうした立派な條約がなされるというふうに考えられて、次に更に南太平洋若しくは支那海、日本海等においての、日本と水を同じくするところのその他の国々との間の條約の際に、この條約を結んだがために不利益になるというようなことは全然考えられないというお言葉を御三人から承わつておりまするが、現実においては御承知の通り李承晩ラインというような問題が起きて来る。而も李承晩主張するところの問題は、この日米加国條約の一部の條文をとらえて、そうして自国の利益主張しておる点がありますので、こうした問題が恐らく今後もフイリピンとの聞或い濠洲との間、若しくは将来中共との問題、或いはソ連との問題も当然起きて来るのであろう、こういうふうに考えられるのでありますが、その点についてはこの條約は邪魔にならないか。或いはこの條約を結んだがために、将来そうした国々との間の條約の際にいろいろな日本利益を守るための一つ支障にはならないかどうかという点について承わりたいと思います。
  14. 小濱八彌

    参考人(小濱八彌君) アメリカ及びカナダ、殊にアメリカが三国の漁業條約に臨みますに当つて、私想像いたしますのに、アメリカ日米加三国の間に漁業協約モデルを作るんだという意図多分に包含しておつたものと考えます。それは私はそう想像いたしております。公海において漁業をいたすことは自由であるけれども漁族保持ということを考えなければならん。従つて或る魚種についてこれ以上漁獲を増加いたしますることは、その魚族を永続せしめるゆえんではないんだというような事実が科学的に証明をせられ、而もそれを守るためにいろいろの規制が行われているような魚種については、三国の間でこれ以上漁獲を増大しないということをして行こうじやないか。かくのごとくにして魚族保持を守つて行くこと、如何なる国と漁業條約を結ぶに当つても、そういう原則の下に立つて漁業條約というものはやるべきだというふうなことを示すという意図アメリカ思想の中には入つてつたんじやないかと私は想像いたしております。で三国の間でいろいろその原則について論議をいたしておりましたのも又そういう意味においていろんな議論がなされたのでございます。最後にたしか決議の中に今後締約国がほかの国と同じようなことについて條約を結ぶ場合については、この漁業條約の中に現われておる思想に基いてやるようにしようというふうな決議が行われたのもその意味であると思います。そういう意味において私はモデル・ケースというふうに申したのでございまして、これが完全なるものとは考えておりませんが、漁業協約を結ぶ場合には魚族保持重点を置いていろいろの相談をするようにという理想をここに掲げたものと、かように考えております。それでこの協約がほかの国といろいろ協約を結びまする場合に邪魔にならんようにと用心をいたしましたのは、或る国が海の上に線を画して自分の海の上における領域を拡げるというふうな感じを持たれるような形はとりたくない。そういうことはあとでほかの国と協約を結びます場合に邪魔になるから、そういうふうなことは一切この中には盛つちやいかんということを用心いたしておりましたのでございまして、幸いにして米国及びカナダでもそういうふうな意図は持つておらなかつたので、そういうふうな邪魔になるようなものはあの協約の中に現われておらないと思います。ただ或る一つ魚種を穫りましてこの魚種のこれ以上漁獲を増大することは、その魚種を永続せしめるゆえんじやないからこれ以上獲らんようにしようということをきめました場合には、その当時において漁獲をいたしておりまするものはそれ以上現状のままでフイックスされる。その当時に漁獲をしておらなかつたものはそこに新らしく漁獲をいたしますことによつて漁獲は増大するということなんであります。これ以上獲らないことにしようということは現状を維持しよう、こういうことになるわけでございまして、従つて或る国は当時漁業現実にやつていなかつたものは新らしく漁業はやれないのだというふうなことが出て参る次第でございます。その魚種がどういう魚種なりやということについては、別の生物学委員会で別途に審議するという形をとつて審議が行われたのでございまして、結果として三つの魚種についてそういう状態にあるのだということが附属書に書かれたというふうな恰好になつております。で韓国とのいろいろの協議等につきまして、李承晩ラインなんかが主張されておりますが、あの李承晩ライン主張される根拠が日、米、加の漁業條約の中に求められておるわけでありますけれども、私はあれは筋違いの議論であるというふうに考えております。
  15. 千田正

    千田正君 この條約の中にいわゆる過去においての操業実績、こういう点から考えた場合に、韓国朝鮮、前にはいわゆる日本の領土であつた台湾又然り、朝鮮若しくは台湾において勿論大部分は日本の指導の下に漁業をやつたのでありますから、曾つて操業したこの漁業に対して、これは韓国が曾つて操業したものとみなされるか、日本国操業したものとみなされるかという点において、今後の日韓問題、或いは日台問題が起きて来ると思いますが、この点に関してはどういうふうに考えておられますか。
  16. 藤田巖

    参考人藤田巖君) 実績という問題についてさような点も論議されたのでありまするが、ことはアメリカカナダ日本との間の漁業関係であります。従つて韓国における従来の日本人の実績がどうとかこうとかいう問題は、これは又その精神からいたしまして今後当該国折衝する際に十分取入れて行こうというふうな態度で、その点についてはこれはアメリカに約束をさせましても何にもならんことであります。韓国が相手ならば韓国との間に話合いをつけなければこれは何にもならんことでありますから、そういう点については当該国との折衝を十分して行くという考え方で進めました。
  17. 千田正

    千田正君 最後にこれは重点と思いまするが、我々は只今批准をしなければならない建前のところに来ております。そこで仮にこれが国会において反対してどうしても批准ができなかつたというような場合が生じたとするならば、それによつて米加日本との間に直ちに起るべきところのいわゆる不利な点、こういう問題においてはどういう点が不利になるかということについて一つ忌憚のない御意見を承わりたいと思います。
  18. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 鈴木さんからお願いいたします。
  19. 鈴木九平

    参考人鈴木九平君) 千田さんからの今の御質問につきました、この條約がない場合にどういう支障を生ずるかという御質問のように伺つたのでありますが……。
  20. 千田正

    千田正君 ない場合というのではありません。これは只今日、米、加とも政府が仮調印いたしましたので、恐らく米、加とも当然日本がこれに調印するであろうというふうに考えておられると思います。それが若しも国会において日本側批准しなかつたというような事態が生じた場合は、日本の将来の問題にどういう不利な点が一体起きて来るか、こういう点であります。これが現在のいわゆる参議院といたしましては、この問題を十分検討して批准するかしないかといういわゆる重点にかかつておりますので、我々も皆さんにお出でを願つていろいろ御意見を伺うのは、一にかかつてこの最後の点、若し批准しなかつた場合には、一体日本漁業の将来はどうなるか、或いは日、米間、或いは日本カナダ間の国際情勢にどういう変化を及ぼすだろうか、日本の国にとつて如何なる重大な不利な点が来るかということを十分に我々は考慮しなければいけないと思いますので、その点についての皆さんのお考えを承わつておきたいと思います。
  21. 鈴木九平

    参考人鈴木九平君) よくわかりました。お答え申上げます。少くとも仮調印いたしましたこの條約は、先ほどから申しました通り我が国業界、官庁こぞつてその担当者協議協議を重ねた結論としてここへ出したわけなのでございます。これが若し不幸にして批准されなかつた、こういう場合があるならば、少くも折衝の衝に当つておりました代表委員業者或いは国民の意向を反映しておらなかつたという不信用を招く、こうも考えますし、それが延いては日本と今後いろいろの折衝をして行くのに信を措くに足らん、こういうような気分をアメリカ並びカナダに起させるだろうと私は考えるのでありまして、延いては我が国水産物輸出というような問題に影響を及ぼして、それが関税障壁を設けさせたり、或いは日本水産製品のボイコツトを招来しやしないか、こう私は考えておりまして、その点非常に心配するところでございます。
  22. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 藤田さんの御意見はどうですか。
  23. 藤田巖

    参考人藤田巖君) 仮にこの漁業條約が批准になりません場合、これは私は漁業のみならず、一般の経済関係、その他政治的関係にいろいろの影響を持つであろうと想像いたしますが、ほかの関係は先ずさておきまして、漁業のみについて考えましても、これは事実として申しますが、漁業協定を成立せしめるまでは、日本態度といたしましては、吉田、ダレスの書簡によつて行動をするということになつております。そういたしまして現実にこの漁業協定ができますれば、行けるものと、行けないものははつきりするわけであります。即ちブリストスルにおける蟹工船でありまするとか、或いはぺーリング海におきまするトロールでありますとか、自由になつておりまするものは、正々堂々と行けるわけであります。そのほか制限を受けておりませんところの、いわしにいたしましても、まぐろにいたしましても、それは大手を振つて何ら懸念なく行けるわけでありまするが、そういうふうな点が非常にあいまいになつて来る。紛争を惹起するところのもとがたくさん出て来るように考える。さような点が私はとにもかくにも協定を結ぶことによつてはつきりして、そこに漁業の安定ができるというふうなことが一つの利点ではないかというふうに思います。
  24. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 小濱さんの御意見は如何ですか。
  25. 小濱八彌

    参考人(小濱八彌君) 私も藤田君の意見と大体同じようなものでありますが、私初めに申しました通りに、曾つて戦前でございますね、日本漁業者米加沿岸でそう無茶をやつたとは思つておりませんが、米加沿岸漁業者は、日本漁業者が、極めて大事にしておる、そうして米国で大事にし、自国民に制限を加え、これ以上取つちや困るというので保存措置を講じておるさけ等を取りに来たんだと、こういうことを考えておるようでございます。日本漁業者は取りに行つたんじやなくて、取れるものならばというので調査をしたことがあると思つておりますが、その調査を、現実に取りに来たのだと、こう言つておりましたようなわけでありまして、自由に活動ができるようになれば、日本漁業者は又米加沿岸に来て勝手なことをするのじやないかというような感じ沿岸漁業者は持つておるのでございます。今回の漁業協約によりましてそういうふうな問題があるものについて、果してその魚種が、これ以上取つていかんような状態になつておるかどうかということを十分に審議しまして、さけについてはまさにそういう状態にあるが故にこれはこれ以上取らんようにしようというので、あの協約が、さけについて申しますればできたようなわけで、そのほかハリバツト及びにしんにつきましても、これ以上取ることは、魚族を永続させるゆえんじやないのだ、だからこの三つの種類についてはこれ以上取らんようにしよう。米加においては、現在操業制限の下に漁獲を続けて行く。日本は現在外で漁業をしておらないが故に、取りに来ることを控えるという話合いができたわけなのでありますが、それは、そういう協約を結ぶことはよろしくないというのでこれが破棄されたといたしますると、米加の人たちは、日本漁業者は、相変らず自由に活動ができるようになつたら、どこへでも来て勝手なことをやるのだということを主張するというふうな感じを、米加沿岸漁業者には持たせるであろうと考えます。この感じを持たせますることが、漁業の問題について、今後いろいろトラブルが起りましたときの解決に非常な支障を来しまするのみならず、日本人の信用を傷つけまして、漁業以外のそのほかのいろいろの経済上の通商條約等の締結につきましても、いろいろの疑点を深めるというふうなことになりはしないかということを、ひそかに私は心配いたしております一人でございます。
  26. 千田正

    千田正君 大体私のお尋ねする点は終りましたが、最後にもう一点だけ伺います。それは、外交関係のおかたがたでありませんから、こういうことを聞くのは、或いは筋違いかも知れませんけれども、先ほど鈴木さんのお話の中にありました通り、当時日本の罐詰に対する関税問題、或いは冷凍の製品に対するところのボイコツトというような問題がアメリカの国内においてすでに運動を開始されておつたのでありますので、今日我々も非常にその点を憂えておるのでありまするが、日本が折角独立して、公海の自由、或いは日本の権利の回復というのに、このたびはまあ国際的な関係からこうした漁業條約を以て一応の制約を受けると、これに対する一つ日本側としての積極的な外交といいまするか、利益の享受という点におきまして、日本漁獲物のアメリカに対する進出、いわゆるアメリカの国内が日本漁獲物製品に対するボイコツト、若しくは関税の障壁というような問題を掲げられておる最中でもあつたのでございまするから、これを一応契機といたしてこの問題を解決すべきではなかつたかというふうにも考えられまするが、その点についてのお考えは如何でございますか、一応伺つておきたいと思います。
  27. 藤田巖

    参考人藤田巖君) 漁業協定会議のときにでも、やはりさような関税の問題、冷凍まぐろ等に対する関税の問題もございましたが、まあ我々与えられておりますところの範囲は、この漁業の間の問題をきめようということであります。極く内々で、プライベートにお出でになつたかたの意向を、日本側の個人のかたがいろいろ打診されたことは聞いております。併し正式の議題としては取上げる範囲でございませんので、そこまで触れ得なかつたわけであります。
  28. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 千田委員から詳細に亘つて質問がございましたので、私は一点だけお伺いしたいと思うのでありますが、このさけの漁獲につきまして、議定書に定められました西経百七十五度の線、この百七十五度の線が非常に衆議院でも問題になつたようでありますが、この條約、或いは附属害を見ましても、この附近におけるさけがアジア系のものであるか、或いはアメリカ系のものであるかということがはつきりしなかつたのではないか。従つて今後関係各国が十分調査をして、その魚種がアジア系のものか、或いはアメリカ系のものか、或いはその両者がそこに混つて遊泳しておるものであるかということを見極めた後に、改めてその線を劃する。従つて、それまでは暫定的の線であるというような表現がしてあるのであります。その場合に、現在調印されておりますところの線は、日本カナダ漁業を抑止する、アメリカは抑止しておらん、保存措置を講ずる、こういうことになつております。従つてアメリカ側は獲つても、よろしい、日本カナダは獲つてはいけない、こういつたようなことは若しそこにはつきりしない点があるならば、三国とも個々に操業しない、いわゆる抑止をしてお互いにこれの保存措置を講ずるといつたようなことが私は妥当ではなかろうか。それを二国が抑止して、アメリカは抑止してないという点につきまして、どういうような論議が交されたか。又日本としては如何ような主張を出したのですか、その点をどなたでもよろしいですから……。
  29. 藤田巖

    参考人藤田巖君) 結局アメリカ系のさけ、ます、アメリカの河川に上るところのさけ、ますについてそれが満限であると認め、而も日本におきましては條約に規冠する実績はないわけでありまするからしてこれを遠慮する、そうしてアメリカは従来通り保存措置を引続いて講じて行く、こういうことが主たる狙いであります。事実問題としては、私はアメリカがあの近所の海域へ母船式のさけ、ます漁業を企てるとは考えておりません。結局はそのさけ、ますは先にアラスカの川へ上るわけであります。その川に上りますところを従来の建網でとるわけです。狙いはやはり先ほど言いましたように、どちらも制限するというのではないのでありまして、つまり満限に達しておるものについては、現在以上に濫獲にならないような措置を講じて行く、そういうような趣旨できめられております関係上、実績のない国は遠慮し、実績のある国は従来の保存措置を引続いて講じて行く、お互いに魚類の永続的な保持を図つて行く、こういうふうな建前になつておるのであります。
  30. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ちよつと私から一、二お尋ねしますが、あの際日本の側からは百七十度の線を主張したようであります。アメリカは百八十度の線を主張し、中間をとつてとにかく暫定線として百七十五度の線がきまつたということを聞いておりますが、その通りでございますか。
  31. 藤田巖

    参考人藤田巖君) いろいろ審議の過程はあるのでありますが、日本側としては、あちらに提案いたしましたのは西経百七十度、アメリカ側から当初参りましたのは、例の日附変更線の百八十度の線、殊にベーリング海の沖合も、アラスカ半島、アリューシャン列島を全部包含したところの線であつたのです。それがいろいろ折衝の結果、暫定線として取りあえず西経百七十五度がきまつた、こういうことであります。
  32. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それからこれは暫定線であつて、これが将来三国で調査をして、若し百七十五度の線がアメリカ側のさけの遊泳地であつて、これがアメリカに非常に支障を来たすということがあつたら、日本は後退しなければならんというように解していいですか。
  33. 藤田巖

    参考人藤田巖君) そのときの話では、アメリカ系のさけ、ますと、アジア系のさけ、ますと分つて行く、アジア系のさけ、ますについては日本は従来実績もあるわけです。これについては我々は従来通り出漁するという態度で、アメリカ系のさけ、ますについては、これを遠慮しようということです。従つて、これは勿論調査研究の結果はつきり丁度うまくその線が二つに割れて、その線から西へはアメリカ系のさけはちよつともいない、その線から東へはアジア系のさけはちつともいない、こういう線が見つかれば極めて理想だと思うのです。併し実際問題といたしましては、そういうようなことは非常にこれはさような結論に達する調査を完成するということはむずかしいだろう。従つてやはりこれはいろいろのデータを集めて、そのときに現在よりも正しく、アジア系のさけ、ますと、アメリカ系のさけ、ますとを合理的に正しく分ち得るところの線が、調査の結果発見されますれば、その結果日本に有利になろうが、不利になろうが、これは我々としてはその調査の結果が出て来れば、これは仕方がないというように考えておつたのであります。
  34. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) その際、日本側アメリカ側も調査をして、その調査の結果、委員会意見が一致しない場合におきましては、第三国に裁定を頼むということがありましたか。
  35. 藤田巖

    参考人藤田巖君) それは委員会でどうしても全会一致の結論が得られなければ、仲裁人と申しますか、中立の第三国の科学者によつてそれを決定する、こういうようなことが議定書に明記されております。
  36. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) そういう場合には、その第三国は日米加でおのおの指定していいんですか、或いはどうなりますか、その第三国の指定の権限は……。
  37. 藤田巖

    参考人藤田巖君) それは、確かに規定といたしましては、附属議定書の中に、「この三人の者は、いずれも締約国の国民であつてはならず、この問題の決定のためにすべての締約国の相互の合意により選定されるものとする。」と書いてある。従つつて、二国が相互に合意をした上でこの三人がきめられる。どこか反対があつたら駄目です。いずれもこの三人が適当であると一致点に達したとき、それが選定される、こういうわけです。
  38. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これは、この條約の範囲は、北太平洋の海域並びに接続海面とありますが、接続海面の範囲がわかつておりましたら、お知らせ願いたいと思います。
  39. 藤田巖

    参考人藤田巖君) これはその当時は接続海面と言いますのは、例えばベーリング海でありますとか、ブリストル湾でありますとか、或いはオホーツク海、そういうようなものを例として挙げておつたわけであります。併しながらこれは実際問題といたしましては、例えば、それ以外で、それに接続する海域というもの、而も三国の間に共通の利害関係を伴うような海域でございますならば、これはやはり含めてよろしかろうと思います。併しこれらはいずれも調査委員会で決定する問題だと思います。
  40. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかに御質問ありませんか、参考人に対する質問は……。
  41. 藤田巖

    参考人藤田巖君) これは御質問がないのでありますけれども、どうも新聞その他で伺つておりますと、非常に誤解をされて論議されているような気がいたしますので、私からちよつとこの機会に申上げておきたいと思うのでありますが、それは、第一條の二項に関係する問題、この第一條の二項は、「この條約のいかなる規定も、領水の範囲又は沿岸の国の漁業管轄権に関する締約国主張に不利な影響を与える(主張を害する)ものとみなしてはならない。」この規定があるわけです。これが何か非常に広い範囲の、領海の範囲又は漁業管、轄権の範囲を或る国が主張した場合に、それを尊重する、或いはそれを認めなければならんのだというふうな意味に解釈されておる議論があるように思いますが、それは全然誤りであります。私どもがこの規定を会議で入れましたのは、これはカナダから提案があつて、大西洋の漁業條約に同様の規定がある。従つてこの太平洋の漁業協定の中にその規定がないと、又いろいろ反対解釈が起るのだということで、カナダから主張されて入れたのでありますがこの問題は領海又はその漁業管轄権の問題は、これは国々によつていろいろ主張の相違があろう。併しその問題はこの條約においてはこれは触れない。全然これは別問題であつて、別個にこれを議論をするのだという趣旨であります。決してこれはどつかの国の広い領海の範囲を尊重するとか、肯定するとか、というふうな趣旨ではございません。この点はアメリカにおいても、カナダにおいても、我我において、も何ら誤解のない一致した点でございます。当事者であるところの三国のその会議のときには、そういうふうなことでございますからしてさような点誤解がございますれば、これは一つ明らかにして頂きたいと思います。
  42. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) これで参考人に対する質問は終了いたしました。どうも有難うございました。   —————————————
  43. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 次に日本国アメリカ合衆国との間の安全保障條約に基き駐留する合衆国軍隊に水面を使用させるための漁船操業制限等に関する法律案を議題に供します。前回に引続いて質問をお願いいたします。只今大蔵省の主計局長或いは次長が参りますから、その際御質問願います。それでは御質問をお願いします。
  44. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 前回から引続いて審査をし、質問を続けおる例の通常生ずべき損害の算定の問題でありますが、先般の質問に対しましてのお答えはまだはつきりした段階に至つていないということでございましたが、その後折衝をされておりますか。又折衝をされておるとすれば、どういう段階になつておるのですか。
  45. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 先般申上げましたように、漁獲が減少をいたしましたのと相表裏をいたしまして、他に転用し得る部面が出て参る。それをどういうふうに評価をいたすかという点が問題だということを私申上げたのであります。その点につきましては、現在の漁業所得の内容などを見まして自家労力をどの程度に転用できるかという数字につきまして、私どものほうで安本でありまするとか或いは税務署の資料でありまするとか、そういうものからいろいろ数字を出しまして、農林省と数字の検討を続けておるわけであります。まだその最終的結論に到達いたしておりません。一応両者が検討いたしました基礎の数字がございますので、それで水産庁のほうに意見を交換し数字を詰めております。
  46. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 前回のお答えの中にかような問題を処理するところの費用として予算に計上されておりますものが九十二億円であります。従つてこの算式如何によつては、九十二億円が不足を来たすようなことが起つて来るかも知れないが、一応九十二億というものを抑えて、その枠内において損失の算定の基準を作らなければ工合が悪いというようなお答えがございましたが、これは私は妥当でない。若し損害を補償するということならば、予算が足りなければ予算を増してでも補いをつけるべきものであつて、予算に制約をされて算式を決定するということは補償するという根本の趣旨に副わないものである、かように考えるわけであります。従いましてこの算定の方式というものは予算の額というものと別個に研究をされて決定せられ、その上で予想した額が若し九十二億円というものを上廻るものであるならば、補正予算なり何なりによつてそれを補つて補償するのが政府として国民に対する当然の処置ではないかと、かように考えております。従つて私は今後のこの処置についてはさような取扱いをしてもらうということを強く要望するものでありますが、更にこの算定の方式につきましても先般来からいろいろ論議を交わしておりますように、漁業が制約されるというために魚獲が著しく減つて来た。そうした場合には百分の四二%、即ち四割二分というものを所得と見て計算の基礎にしておるのであるが、更にそれに何がしかのものを乗じ、即ちその六割だとか、或いは八割だとかいつたようなことになりますと、全然仕事のできない非常な損失を見る上に、更にそれを削られて行くというようなことに相成りますので、我々はやはり四二%というものが従来の算式によつて決定されたものとするならば、それを更に削るというようなことにならんように算式を決定して頂きたい。それは先だつて私が申しましたように漁業者が制約を受けまして、そこで仕事ができないといたしましても、そのできない期間をぶらぶら遊んでおるわけには行きません。必ずその期間に他の方法を以て他の漁場に行くとか、或いは他の方法によつて生計を立てて行かなければなりませんが、それについては或いはやつて見て更にマイナスを加えるかも知れません。或いは幾分のプラスになるか知れません。というのは、漁船などをそのまま放置しておくといたしますと非常な損粍を来たしますので、それを管理するための費用は相当かかるのであります、その費用をかけて、そうして遊んでいるわけには行かないのでございまして、必ずそういう人は何らかのお仕事を見付けて他の方面に出漁するなりいたしますが、それには本来の仕事をする以上の経費がかかるというのが至当でありまして若しそれらが本来の仕事よりいいならば本来の仕事をやるはずはないのでありますから、そういつたものによつて得た所得と、そしてそれにかかつたところの経費というものの差引をしまして、そしてそこに相当の利益が、あるならば、それは加えて考えていいのでありますが、そういつたよう意味合いからいたしまして、ただそういうことを全然考えずに何%から、更にその何割といつたような計算は漁業の場合には当らない。これが失業者の場合と違いまして今申しましたような点から私は算式は飽くまでも最初の四二%という計算が出たならばそれで以て行く、それに他で働いた所得があるならばそれを引いてもいいが、それに更に何割掛けるというようなことのないようにして頂きたい。そうしていま一点は、先ほどから申しますような予算を抑えておいて算式を変えるということのないように、算式を基礎として、予算というものが足りなければそれを補つて、補償して行くというふうに考えて頂きたいと思いますが、その点如何でしよう
  47. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) お尋ねの第一点でございまする予算の九十二億円を抑えておきまして、あの中にはまるように基準を左右することは筋が通らんではないかという抑せであります。お話として誠に御尤もであります。私も金額がはまらんから庶二無二切り下げるというようなことは考えておりません。ただ先般も申上げましたごとく、第二條によりまして提供いたしまする地域というようなものと関連をいたしまして、どういうような金額がそのために生ずるかということを睨みまして九十二億との間の見通しを付けませんと、私どもとしては予算を預かる、と申すと語弊がございまするが九十二億円のような、相当包括的な予算を持つておりまするときには、当然事務当局といたしましてその数字的結果がどう落ちつくかということにつきましての検討をいたさなければならんというふうに考えておるわけであります。従いまして私ども九十二億円の全部の積算ができるまで、そういつた基準の検討或いは決定をやれということは考えておりません。ただ全体の数字の見通しはつけなければ、ちよつと私ども事務的に困る問題であります。第二の点でございまするが、四二%とおつしやいました所得率でございますが、総収入に対しまする所得を掛けました、いわば漁業所得と申しますか、課税対象になりまする所得でございまするが、その中には当然自家労力の分が含まれておりまするので、前回から申上げておりますることは只今お話のように、この遊んでおりまする期間にその自家労力というものが何らかの形において有利に使用せられるであろうということを前提といたすおけであります。従いまして四二%フルにやりますると、これは極端なことを申上げますれば全然じつとしておりまして、働いておるときと同じ程度の自家労力に対する報酬を得るわけであります。その自家労力の余裕のありまする時期に使いまする使い方につきましては、御指摘のように漁船の維持をするというような、直接貨幣収入の伴わない面もございましよう。或いはそうでなくて多少出稼ぎに行くとか人の手伝いをするというような貨幣收入に換えるものもございましよう。そういうものも睨み合せまして、それら自家労力というものが転用せられるものがある、有利な形において転用せられる、それが従来の業務から見てどうこうという点はございません。そこら辺の自家労力がどういうふうに転用せられるかということを睨み合せてパーセンテージの決定ということになるというふうに考えております。
  48. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 勿論先ほどから私が申しておりまするように、制約された期間においてはあらゆる方法を考えて自家労力なり或いは自家労力でない、その船全体を使つて活動によつて賄いをつけて行く、これはたつた一人が仕事をしておつて休むのでなくて大低の場合は船を動かす場合は一人では動きません。場合によつては家族の多いものは家族と或いは漁夫を雇つてやる場合もあるかも知れませんが、家族にいたしましてもそれらに対する給与をやらなければならん。それらの養なつておりますものを稼動する場合は相当の経費がかかつておるのでありまして、それがプラスになる場合もあるがマイナスになる場合もあると思います。従つてそれによつて所得があつた場合には、それは差引いていいと思いますが、そういう意味合におきまして、そういうことを考えないで、いきなり何割掛けられてしまうということは当を得ないもの、こう考えるわけであります。  それから最初の九十二億円の問題でありますが、これは先般からお話のありまするように、これは日本だけの負担でない場合があるそうであります。この点は我々も了承しておりますが、併しその金額の見積りにつきましての算定の基礎というものを出してから、そうして累積したものが幾らになるかということによつてきめて行かなければならん。お終いをきめておいて逆に戻つて来たのでは私どもの納得の行かない点に落ちついて来るのでありますから、先ず幾らかかるかということを見るためには、算式を先ず第一に決定して、然る後にその数字を生み出し、そうしてそれが予算或いは総予算とどういうふうな振合いになるか。そこで予算が足りなければこの措置をどういうふうに考えて行くかというふうに私は考えて、これはこういうことを申上げたわけであります。今のお話でありますと、やはり財政、総予算を見てそしてということになりますと、算式の問題は一番最後になる。それでは予算がどれだけ要るかということが出て来ないのであります。今、次長の言われるのは、四二%という所得に何割かを掛けたものを基礎として、そして全国の補償金額を見出したものが予算とどうなるかという見当をおつけになつて、若し余裕があれば増すし、足りなければ又考えるというふうに御説明になつているように私は解釈するのですが、そうでなくて、これだけのものを補償すべきもんだという算式を立てまして、そして一応補償すべきものに乗じまして得た金額が九十二億となる、そこで九十二億というものを考えて行かなければならん、こういう考えなのであります。その点を一つそういうふうにやつて頂くように算式を早く決定して、その上で先に進んで行くということにして頂きたいのであります。それが算式がきまらなければ総額が幾らになるということは出ないのじやないか。ただ大蔵省の一方的な考え方のみで、そういう算式だけを先にきめて総額を出しても、関係各省が納得が行かないで、どうしてもその予算を執行する上にトラブルが起るのじやないか、こういうふうに考えるのです。
  49. 石原周夫

    政府委員(石原周夫君) 私の申上げておりまする点とお話の点とは余り違わないかと思うのでありますが、ただ事務当局の立場を申上げておきますると、算式を一応頭からきめて行きまして、金額が九十二億、不足すれば補正予算で行こうじやないかという立場からする補正予算というものを前提とした組み方というものは、そういう追加財源というものを今日予想できない。補正予算を予想いたしまして数字の締めくくりをつけるということはちよつとむずかしい問題かと思います。従いまして数字の見通しとしましては、九十二億という点に一応目標を置いて締めくくつて行く。ただ先ほど申上げましたように、そこで初めて九十二億の内訳を締め上げて、これで算式がOKだということを申上げるつもりはないので、大体の見通しをつけまして、これで九十二億という、大きな枠の中に取りました数字との睨合せて、大きいところでつけて行きたいということを申上げたのであります。
  50. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 事務当局の扱いとしてはさようなことになるかも知れませんが、これをこの法律を作つて補償して行くという眼目から見ますというと、それではどうもぴんと来ない。若し事務的にどうしてもできないということならば、又大臣でも来てもらつて話を進めて行かなければならんのではないかと思います。私は飽くまでもこの妥当なる線で補償をするということを眼目に置いて考えて行かなければ、予算を先にきめておいて、そしてそれで、その範囲内で補償するということでは非常にみじめな補償になる場合を虞れるのであります。そういう意味でここでどうこう押問答しても同じでありますから……。
  51. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) この問題に対する質疑は次の委員会に継続いたしまして、本日はこれにて散会いたします。    午後三時十四分散会