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松浦清一君
漁船が抑留される場合には、その船が
操業して何カ月日に抑留され、拿捕されるか、何年目に拿捕されるかそれはわかりませんが、その
事業主が納める
保険料の総額というものは、抑留中の
船員に支払うべき
給料というものよりも低いものと見なければならない。そういう
考え方から行きますと、現在経営内容のよい
事業主は、現に
給与を抑留中の
船員に対して支払
つている。この
保険ができても、
保険でカバーされる以外のもの、今まで払
つてお
つた給料に相当するものはやはり保証しなければならない。
保険ができたからとい
つて今まで支払
つてお
つた給与の総額よりも低いという状態に置くということはこれはできないわけですから、今問題にな
つてお
つた三十九条かを受けておる
保険でカバーされる以外のものは、やはり船長が負担しなければならないということになると、結局経営内容のいい
事業主は、経営内容の悪い
事業主に対して
給料の支払いの援助をしてやるという建前になるということが
考えられるのですね。援助をしてやる建前になる。そういうことになると、そんなことは
考える人はないかも知れないが、
法律を作る場合にはそれを
考えておかなければならんのは、経営内容のよい船主は、人の御厄介にならないでも、おれのほうは抑留中の
船員には今まで
通り払
つてやる。何も人様の御厄介にならないでも払
つてやるから心配するなということで
保険に加入することを快しとしないという面がある。その半面に田口さんから御説明がありましたように、
船員が得心すればというけれ
ども、その船主たるや経営内容が極めて悪い。もう
保険料を掛けたりしてお
つたのでは
操業できない。儲けにならない。
保険料を掛けないで、そういうことがあ
つたら災難と諦らめてくれということで、
事業主が
船員に言含めて
船員も加入の意思を捨てる、こういう両方の面で
保険に入ることを快しとしないというものが出て来る虞れがやはりあるのです。
法律はそういう点も
考えておかなければならない。正当の事由というものをやはり、いろいろの
保険には審査会というのがあ
つて、
保険事故の審査をや
つたり、いろいろ被
保険者、
保険者の間に問題が起
つたらそれを調整する機関がある。この
保険にはその機関がない。むしろ私は正当な事由というものを取
つてしまうほうがよいのではないかというような気がするのですがね、どんなものでしようか。