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1952-06-09 第13回国会 参議院 水産委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月九日(月曜日)    午後一時五十二分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     木下 辰雄君    理事            松浦 清一君            千田  正君    委員            秋山俊一郎君            藤野 繁雄君   衆議院議員            川村善八郎君   政府委員    特別調達庁管理    部長      長岡 伊八君    大蔵省主計局長 河野 一之君    水産庁長官   塩見友之助君   事務局側    常任委員会専門    員       岡  尊信君    常任委員会専門    員       林  達磨君   説明員    水産庁漁政部長 伊東 正義君    水産庁漁政課長 家治 清一君   —————————————   本日の会議に付した事件漁船乗組員給与保険法案衆議院提  出) ○日本国アメリカ合衆国との間の安  全保障条約に基き駐留する合衆国軍  隊に水面使用させるため漁船の  操業制限等に関する法律案内閣提  出、衆議院送付)   —————————————
  2. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今から委員会を開会いたします。  先ず漁船乗組員給与保険法案議題に供します。提案理由説明をお願いいたします。
  3. 川村善八郎

    衆議院議員川村善八郎君) 只今議題となりました漁船乗組員給与保険法案提案理由を御説明申上げます。  御承知の通り日本漁船拿捕抑留は、最初にその発生をみました昭和二十一年十月三日以来現在まで、支那東海、黄海及び北海道近海等の諸海域に亙つて四月末現在実に四百九隻の多きに及んでいるのでありまして、これに伴い、漁船乗組員拿捕抑留も又総数四千三百二十五名に達しているのであります。尤も、抑留船員は逐次送還せられて参りましたが、現在なお総数の一割強に当る四百三十一名が未だ帰還しない実情であります。  かかる漁船及び漁船乗組員に対する拿捕抑留事件が、漁業経営者及び漁船乗組員に対して与える影響が如何に深刻且つ重大なものであるかは、今更ここで論ずるまでもないことでございましよう。漁業経営上最も大切な財産であるところの漁船と、更に又その乗組員が、突如として拿捕抑留されるという事実は、漁業経営者、即ち事業主にとりましては、一瞬にしてその唯一の生産手段を奪い去られることでありまして、殆んど各事業主がひとしく経営困難の状態に当面しているという誠に憂うべき現状なのであります。  而も、かかる事業主経営窮迫は、抑留されている漁船乗組員に対する給与支払を遅延せしめ又は不能とし、ためにその留守家族の上に、深刻な生活不安を及ぼし、延いては乗組員の今後の活動意欲をも阻害する虞れが出て参つている次第であります。  こうした事態は、我が水産業の発展のためには由々しい問題でありまして、国家として傍観していることのできない問題であります。  翻つて思いますれば、そもそもかかる拿捕抑留事件なるものは、その性格が極めて国際政治的色彩の濃厚なものでありまして、そのことは、現在までの拿捕抑留事件状況国際政局の動向と見比べましたときに極めて明白に感知し得るところなのであります。  かくのごとき観点からいたしますれば、漁船並びに漁船乗組員拿捕抑留事件によつて招来される漁業経営の破綻と漁船乗組員の生活に対する破壊的打撃の問題は、単に漁業内部の問題として、事業主のみの責任において解決させるべき、又解決し得る性格のものではなく、国家も又その責任を引き受けて適切なる救済方途を講ずるべきものであると考えるものであります。  そこで、拿捕事件の防止のためには、外交手段による事態の改善、漁業者に対する適切な指導等、国として努力を尽すことは当然でありますが、遺憾ながら、現下の国際情勢は、まだまだ安定に達せず、関係国のすべてとの間に公正な漁業協定のでき上ることは差当り困難な状況下にあると考えられますので、漁船並びに漁船乗組員拿捕抑留事件も又早急に解決を期待することができないと考える次第であります。  ところで現在漁船に対しては、拿捕抑留事故とした特殊保険という制度があり、漁船の喪失に対しての補償の途が講ぜられておりますが、漁船乗組員及びその家族のこうむる被害については何らの救済方途も講ぜられておらないのであります。このことは、甚だ片手落ちと言わざるを得ないのでありまして、ここに漁船乗組員給与保険法案を提出する根本理由が存するのであります。  次にこの法案内容の詳細については提案者代表田口長治郎君及び政府当局より説明いたさせることにいたしますが、この際その内容を簡單に御説明申上げますと、その骨子は、漁船乗組員及びその家族に対する救済保険制度によつて行うという構成とつたことであります。そもそも、漁船乗組員及びその家族のこうむる被害の直接の原因は、事業主拿捕抑留事件によつて経営窮迫に陥り、ため給与支払が遅滞し、又は欠配となり、或は一部分しか支払われないということに由来するものでありまして、拿捕抑留がなかつたとすれば、当然受け得た給与支払が、拿捕抑留という不慮事故により事業主自体経営の不能又は困難を誘致し、それが乗組員への給与支払に直接響いて来るということであります。従つてかかる事業主経営窮迫を打開することが先決の問題でありますが、取あえずの問題としては、拿捕抑留事件による事業主経営窮迫が、直接に乗組員に対する給与支払不能を招かないようにするために、経営者保険という手段によつて抑留乗組員給与支払を保障するようにすることを企図しているのであります。即ち、あらかじめ事業主乗組員に対とて抑留期間支払うべき一カ月分の給与の額を基準として一漁船単位保険契約を結び、抑留があれば、毎月その額に相当する保険金乗組員が指定した保険金受取人支払うという構成になつておりまして、この保険事業は、現在の漁船保険組合が行うこととし、政府がこれを再保険するという仕組になつております。保険制度とつたということは、現在の漁船拿捕抑留事故とする特殊保険と同様の考え方に立つたものでありまして、このような性格の問題としては本来或いは直接国家補償措置がとられて然るべきものと考えるのでありますが、現在の国家財政状況を考えまして政府の再保険という線で進めることとした次第であります。  以上申述べましたところが、本法律案提出理由の大要でありますが、拿捕抑留という不慮事故に当面した場合の事業主の窮状と漁船乗組員の深刻な生活不安の実態について御了察を頂きまして、何とぞ慎重御審議の上、速かに御可決あらんことを御願いいたす次第であります。
  4. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 法案説明は後刻に譲りまして、河野主計局長見えておりますが、お急ぎになるようですからして、日本国アメリカ合衆国との間の安全保障条約に基き駐留する合衆国軍隊水面使用させるため漁船操業制限等に関する法律案議題に供します。この法案に対して御質問をお願いします。
  5. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 本法律案審議中に週日も問題となつております点は、この法律によりますと、漁船操業が禁止又は制限される場合に限つて補償制度規定したことになつておりますが、本来この精神は、漁業経営に著しい損害を与える、或いは経営を不能に陥らしめるということに対する救済が盛られておるはずでありまして、この漁船操業区域制限するということに限らず、漁業に不可欠の問題として、過日来質疑をいたしておりました水面使用による漁具の保存の方法、即ち網を干す、水面網干場を作つておる、その網十場が使用されなくなつたということになりますと、その漁業そのものが大きな制約を受けて来る。例えば、甲の港で施設をしておつたものが、そこが使えなくなるというと、漁船がそこを根拠として出入りができなくなる、止むを得ず他に移らなければならん、或いは他に適当な場所がないということになると、非常に大きな損失を受けることになる。漁船には直接関係がないけれども、漁船に積んでおる網の処理について仕事ができなくなる。こういうような場合も想定されるのであります。又現在までその実例がございましたが、或る種の、漁業が行われる魚族の出入口に、防潜網と申しまして潜航艇の出入を防ぐところの金網を張つてしまう。そういうことのためにそこから出入りする魚が交通遮断されてしまつて、その内部における漁業が非常に損害をこうむつたというような事例があるわけであります。かようなものに対しましてはこの法律では何ら救済もできないし、補償もできないことになつておりますので、過日来これらのものについて如何よう措置をすべきかということが問題になつておるのでありますが、本日更めてこれらの問題についての措置についての御見解を承わりたいと思います。水産庁及び大蔵省主計局長もお見えになつておるようでありますから、なおそういう水面についての、隣接した水面に対する問題も生じて来るわけでありますので、これらに対しての御見解も承わりたいと思います。
  6. 長岡伊八

    政府委員長岡伊八君) 只今秋山委員から御指摘になりました問題につきましては、先日来いろいろ研究を重ねて参つたのでありますが、実は法務府側の見解も質しましたところ、さような施設につきましては、各県において条例又は規則によつて規定されておりまするので、これはいわゆる権利と認め得べきものだという大体の解釈をとつております。従いまして権利ということに相成りますならば、先般本国会を通過いたしました土地使用等に関する法律によりまして救済でき得るものと、かように解釈いたしておる次第でございます。
  7. 河野一之

    政府委員河野一之君) 只今秋山委員からの御質問施設の点につきましては、只今調達庁当局において言われた通りであります。いま一つ施設区域以外の漁業操業制限或いはこれに伴う損失の問題、この問題でございますが、実は今回御提案申上げておりますこの法律は、行政協定で申しますならば、第二十五条の施設区域に関するものでございます。つまり演習等ためにその施設区域の立入を禁止したり、そういつた関係で起つて来る直接の損害を言つておるわけであります。この演習場全国各地にございますが、そこに、漁場に入れないといつたような場合における損失補償の問題でございます。ところが只今秋山さんから御指摘になりましたような大村湾の湾口に特殊な施設を置いたがために、中に魚族が入つて来ない、或いはそこで演習をするために隣接の水面に入つて来ない、従つて漁獲ができない、こういつたような場合には、これは施設区域の問題でございませんで、行政協定の十八条の問題なのでございます。つまりいわば演習その他に伴う適法行為と申しますか、その施設区域の中でありますれば、当然それは使用或いは制限によつて補償されるべきことになりますが、その区域内における行動のために他のものに損失が起る、こういうことはいわば適法行為によつて損害があつたという関係に実は相成るのでございます。似たような関係は例えば飛行機が落ちた場合に、人畜が被害をこうむつたという場合に、飛行機の場合でありますと、或いは過失を推定されるかも知れませんが、これは一種の演習その他であるならば、一つ適法行為とは申しませんが、少くとも過失が推定されない限り、無過失損害賠償の問題があるわけであります。或いは演習地において演習しておつたときに、流れ弾に当つたとか、或いはそこで火事が起つて施設外に延焼した、こういうような問題も一連の問題であるわけであります。併しこの問題につきましては、十八条の第五項の(a)に書いてあります通り、これは補償はいたすのでありますが、それには日本に同様な法規があつて、そういつた場合に補償するということを前提といたしまして、両方がその補償経費分担する建前になつておるのであります。そういつた間接的な損害につきましては、これは防衛支出金で申しますると、防衛支出金六百五十億のうち、九十二億が施設区域関係でありまして、残りの五百五十八億が一般的な維持費でありますが、実は日本政府分担いたしますにつきましても、その中から金が出る問題になるわけでございます。北大西洋条約におけるこういつたような経費につきましては、大体駐留国において二五%、アメリカ側において七五%という負担をしておるのが例のようであります。従いまして我々といたしましては、この損失補償につきましては日米両方分担してもらいたい、こういうような交渉をいたしておるわけであります。それには、その分担をいたすにつきましては、同様な法規日本においてでき得ることが必要なのであります。実はこの問題につきまして、そういうような研究を前からやつておりまして、特にそういつた法律を出したいと考えておつたのでありますが、いろいろな無過失責任の問題につきましては、新らしいと申しますか、比較的目立つた法理でもありまするし、そういつた点についてなお研究を要する点がありましたのと、又根本的には、その分担の問題で駐留軍当局交渉をいたしておりましたる関係上、この問題についての法律を提出し、御審議願う段階に至らなかつたのであります。従いまして今後早急の間に政府部内は勿論、駐留軍当局とも託をつけまして、早急な機会関係法律を提出申上げようと、そうして御審議を仰ぎたいと、こういうふうに考えておる次第であります。勿論その損失補償については、一定基準を以ていたさなければならんのでありますが、今回この法律に入れませんでしたのは、今申上げましたような事情であることを御了承願います。
  8. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 いま一度お聞きしたいのですが、水産庁のほうから先ほど御説明がありました網干場のいわゆる水面使用の許可の問題は、権利と認めて、土地使用等法律によつて救済されるというお言葉でありましたが、これは解釈になるのでありますが、何がそういつたようなことがはつきりと出ておるのかどうか。そういう問題が起つた場合に更にこれが論議されねばならないといつたようなことになつては何もならないのでありますから、この点は飽くまでもそういうふうな決定したものであつて疑念を挾む余地がないということになつておるのでありますか、いま一度この点についてお尋ねしたいと思います。過日来のお話によりましても、その点がいろいろ疑問もありますし、各方面研究した結果がそうなつておるのであるし、はつきりした、何かそういうことに対する法務方面文書による回答といつたようなものでもありまして、後日疑念の起らないようになつているならば大変仕合せだと思います。その点併せてお答え願いたいと思います。  それから只今主計局長お話になりました点は了承いたしました。ただ更に出されるところの法律案が、早急の間ということでありますが、それはいつ頃のことでありますか。もはや本国会期間も短いのであつて本国会には如何かと思うのでありますが、次期国会に出されるということでありましようか。その点をもう一度お伺いしておきたいと思います。
  9. 長岡伊八

    政府委員長岡伊八君) 只今秋山委員から文書によつてきまつてあるかという御質問でございましたが、実は水産庁並びに法務府といろいろ打合せました結果、別段文書によつてこうするという決定をいたしたわけではございませんけれども、関係の向きで意見一致をいたしましたところは、先ほど申上げました通り、これは権利として取扱わるべきものだという解釈をとつておりまするので、たとえ文書による決定を見ませんでも、同様に取扱えるものと考えておる次第でございます。
  10. 河野一之

    政府委員河野一之君) 次の国会には是非提出申上げたいと考えております。その際におきましては、現在のこの適用を受けない損失につきましては、それが救い得るように法律を早急適用いたしますとか、或いは別途見舞金措置をとりますとか、そういうことにいたしまして、これがために漁民に迷惑をかけることのないようにいたしたいと考えております。
  11. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 了承いたしました。成るべく早き機会に御提案を願いたいと思います。  それから次にお尋ねいたしたいのは、第二条の二項にございます、「通常生ずべき損失」というのがございますが、これは先般も一応御意見を承わつたのでございますが、一応これの「通常生ずべき損失」の算定についていま  一応詳しい御説明水産当局からお伺いいたしたい。
  12. 伊東正義

    説明員伊東正義君) お答えいたします。今の点につきましては、まだ国内的に全部関係者意見一致を見ておりません。今相談中でございます。我々が一応考えましたのは、演習をやりますことによつて、その年の漁獲量が減るであろう、或いは経費が嵩むのではないかということを前提といたしまして、或る一定算定基準を考えたのであります。それは算定基準でございますが、平年度におきまするところの所得というもりを算出いたしまして、これは平年度所得魚価に平年の漁獲量を掛けました諸収入の四二%が所得であるというような算定方式を出しております。その平年の所得、それから演習をやりますごとによつて減るであろうと想像されます漁獲量減少がありますが、従つて所得減少になるが、その漁獲量魚価を掛けましたその三八%、平年は四二%が所得であるが、演習をやつておるときは所得は三八%に減る、というのはこれは経費が嵩むであろうというような関係で三八という数字を出しまして、その差額を補償してもらうというようなことを考えております、これはまあ我々が考えております算定方式でありまして、これにつきましてはまだ国内的には全部関係者意見一致いたしておりません。
  13. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 只今の四二%というのと三八%という率が出ておりますが、この所得の計算についての四二%という基礎及び三八%という基礎について御説明を願いたいと思います。
  14. 家治清一

    説明員家治清一君) 四二%の基礎を申上げます。これは昭和二十三年における漁業の総収支表というものが経済安定本部で集められましたのでございまして、それを基礎にしてとつております。ここでは事業所得を一〇〇といたしました場合において、例えば漁船関係償却費或いは修理費、これが合せまして一九%である。それから資材関係が、これは例えば漁網、燃料油その他の資材、こういうのを合せまして三二%、それからその他の直接的な経費としまして七%、こういつたものを差引きます残りが四二%、その場合に大体事業所得と見込まれますものは二七%、それから勤労所得と申しますか、乗組員従事者所得支払わるべき、従業者支払わるべきものが二一%、こういう数字が出ておりまして、これを合せた四二%というのが、漁業経営の対数的に見た場合においてつかまえられまする所得、こういう工合に考えている次第でございます。それから三八%は、先ほど漁政部長が申上げましたのは、実は四二%の所得が、漁場制限があります場合においては約一割くらいがコスト高ため減少するであらうと、こういうことから、四二%の上からいいまして一割差引きました三八%、こういう推定を出した次第でございます。
  15. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 今の問題について大蔵当局意見も併せて伺いたいので、当局見えるまで質問を留保いたします。
  16. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) ほかに御質問はございませんか。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  17. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 速記を始めて。それでは漁船操業制限等に関する法律案はまだ質疑が残つておりますし、大蔵当局は今日お見えになりませんので、次の委員会に譲ります。  前に戻りまして、渡船乗組員給与保険法案議題に供します。この法案内容について御説明を願います。
  18. 家治清一

    説明員家治清一君) 御説明申上げます。  漁船乗組員給与保険法の第一章総則でありますが、第一条はこの法律目的規定しておりまして、保険という方法によつて漁船乗組員抑留された場合における給与支払保険することによりまして、そうして、以て漁船乗組員生産意欲を保持し、漁業経営の安定に資することを目的としております。その漁船乗組員給与保険の構想は次に二条に定義的に出ておりますように、先ず漁船損害補償法規定によりまして、漁船保険組合ができておりますが、その漁船保険組合に対して、この乗組員給与保険事業を行わせる。その保険政府が再保険するという行き方を考えているわけであります。それでその次に保険契約金額の問題でございますが、この保険金額漁船ごとに考えております。そうしてその漁船ごとにその乗組員給与月額合計額範囲内で、而もその合計額の六〇%を下らない、こういう範囲内で保険する、こういう場合において保険契約する、こういうことに相成つております。それからこれに対する保険料の問題でありますが、保険料はこれは契約者として事業主契約いたしますが、事業主負担をし、乗組員負担をさせない、こういう建前であります。次に保険期間でありますが、保険期間は四カ月といたしております。これは漁船損害補償法における特殊保険、いわゆる拿捕保険保険期間と同じことにいたしております。尤も運営は省令の定めるところにより約款で別段の規定をすることも可能でございます。それから事業主乗組員の二分の一以上の者がこの給与保険に加入してほしいという申出をしましたときは、これは正当な事由のない場合におきましては、必らず保険に加入しなければならない、こういう仕組をとつております。それから保険契約は、組合保険料受取つたときから成立いたしますが、その保険契約の成立したときは必ず組合員に通知しなければならない。なお事業主給与保険加入申込の際に乗組員から保険金受取人を指定させ、そうして組合に通知しておくということにいたしまして、後日保険事故発生しました場合において、その保険金支払は、保険金受取人に対して保険組合から直接する、こういうことでございます。  次に保険事故でございますが、漁船乗組員抑留されたことが確認された理由を以て保険事故発生といたします。保険料の問題でありますが、これは実はまだ確定的なものはこれは予算との関連がありましてはつきりきまつとは申上げられないのでありますが、今のところ予定しておりますのは純保険料といたしましては契約金百円につきまして一円三十銭内外ということになつております。  それから保険金支払の問題でありますが、これは組合保険金支払責任保険契約が成立した日の翌日から始ります。支払額保険事故のあつた、つまり抑留された乗組員に係る保険金額ということになります。  それから保険金支払期間は、組合員抑留された日から抑留のやんだ日までと相成つております。それから保険金支払は、先ほど申上げましたように、指定受取人に直接保険組合から支払をいたします。そこで保険組合としましては、支払つた場合においては事業主に通知をするわけでありますが、事業主はその保険金支払われた限りにおきまして、その相当する金額につきまして本来の給与支払の義務を免れるということになります。なおこの保険金は元来抑留期間中の給与に代るものでございますので、これにつきましては所得税関係給与に関する所得税を適用する。特別減免規定はございません。それから政府の再保険事業でございますが、政府組合保険契約を結びますと、当然それによつて政府組合に対して再保険をいたします。その再保険いたします額は、これは漁船保険の例と同じように契約金額の百分の九十ということになつております。再保険に要する事務費はこれは国庫が全額持ちます。同時にこの法律保険組合の行う事業に関する事務費につきまして予算範囲内で国が補助する、こういうことになつております。  以上大体漁船乗組員給与保険法の概要でございます。
  19. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 只今説明は、本法の内容の概略を説明されたのでありますが、要すれば一条から逐条に説明してもらいたい。
  20. 家治清一

    説明員家治清一君) 第一条、先ほど申上げましたこの法律目的でございまするが、ここに問題となりますのは「当分の間」という点と、それから「漁船乗組員抑留された場合における給与支払を保障」するという点にあると思いますが、当分の間、これは要するに恒久法ではない。国際関係の改善とか或いはこの制度に代るもつといい制度ができます場合においては、それに代るということを予定しております。それから「給与支払を保障」、保険するわけでありますが、ここで狙つておりますのは、抑留された乗組員留守家族に姓する給与支払を保障しようということでありますが、これはほかの、例えば船員保険法或いは失業保険法、労働者災害補償法等の関係法律関係でございますが、この関係をいろいろ当つたのでございますが、今申上げた各法律におきましては、こういつた抑留中の給与支払を保障するという措置はどうしてもとれないので、ここに新しいこうした保険という方法によりまして給与支払の保障措置をとろうというのであります。それから第二条の漁船乗組員給与保険仕組でございますが、これは漁船損害補償法規定による漁船保険組合が行う漁船乗組員給与保険事業及び政府が行う再保険事業によつてこの漁船乗組員保険というものを行うという規定でございます。第三条の定義の点でございますが、この法律において「漁船乗組員給与保険」と申しますのは、乗組員抑留された場合に、その抑留期間事業主が当該乗組員に対して支払うべき給与の全部又は一部に代えて保険金を支給するために行う保険を言うのであります。この法律において「乗組員」と申しますのは、事業主に雇傭されて、漁船に乗り組む者を申します。なお「給与」と申しますのは賃金、給料、手当その他名称の如何を問わず、雇傭関係に基き、事業主乗組員支払うすべてのものを言います。但し賞与その他これに準ずるもので省令で定めるものはこの限りではありません。つまり賞与的なものは除いて、本来の何といいますか、固有の給与というものを保障しようという趣旨でございます。この法律において「抑留」とは、乗組員が自己の意思に反して日本国の領土外に連行留置されることを言うと謳つておるように、自分の意思でなく、日本国の領土以外に連行されるというふうにきめたわけでございます。  それから第二章は漁船乗組員給与保険事業内容であります。「保険者」として、第四条は、「漁船保険組合は、総会又は総代会の議決を経て、この法律の定めるところにより、その区域内に住所又は事業所を有する事業主につき、漁船乗組員給与保険事業を行うことができる。」、現在漁船損害賠償法に基きまして設立せられ、運営せられております。漁船損害保険組合、それがこの保険保険者になるのであります。「組合は、前項の規定により給與保険事業を行おうとするときは、総会の議決を経て、省令の定めるところにより、定款にその旨を記載し、且つ、給与保険事業に関する約款を定め、農林大臣の認可を受けなければならない。」、「受けねばならない」というのは誤植でありまして「受けなければならない」であります。これは漁船保険組合としましては、組合員としてこの給与保険を行う必要で入れるんじやなくて、約款に基きまして、つまり員外と申しますか、すべて別の資格では同じ組合員であるのが通例であろうと思いますが、給与保険契約者としては、その資格においてはこの保険組合の員外者として組合契約を結ぶということになるわけであります。それから保険の加入の手続でありますが、「事業主は、給与保険に加入しようとするときは、左に掲げる事項その他省令で定める事項を記載した申込書を組合に提出しなければならない。」第一は「契約金額」、これはその保険契約に係る乗組員の全員が抑留された場合に組合支払うべき一カ月分の保険金の額を言います。二は漁船名並びにその乗組員の氏名及び職名。三が契約金額に基き組合支払うべき一カ月分の保険金の各乗組員についての内訳」、これは一船単位に保険を附する関係上、そこの乗組んでおります一人々々についての内訳金額を書くわけでございます。  それから四は、保険金受取人の氏名又は名称及び住所、これは個々の乗組員の指定した受取人の氏名、名称及び住所を書くわけであります。それから五としては各乗組員給与月額、それから「前項の規定による給与保険加入の申込は、漁船ごとに、当該乗組員の全員についてしなければならない。」、部分的な加入は困るということでございます。それから第六条は契約金額でございます。「契約金額は、各乗組員給与月額合計額をこえ、又はその百分の六十を下るものであつてはならない。」、これは先ほど申上げました超過保険は困るということと、又百分の六十以下の保険は困るということ、こういうわけであります。それから「契約金額は、保険契約が成立した後においては、変更することはできない。」それから第七条は、内訳保険金額であります。「内訳保険金額は、各乗組員給与月額合計額契約金額を除して得た数を、各乗組員給与月額に乗じて、算出する。」それから第八条、給与の月額であります。「給与月額は、事業主が当該乗組員に対し、雇傭契約に基き抑留期間中において支払うべき一箇月分の給与の額とする。」、「事業主は、給与月額を定める場合には、当該乗組員の同意を得なければならない。」、こう規定されております。当該乗組員に村して雇傭契約に基き支払うべき一カ月分の給与額、これはつまり保険関係で新らしい雇傭契約に必要な要素を入れるのでなくて、抑留期間中において支払うべきものと契約されておるその実体を保険しようという、こういう考え方でございます。それから第九条は保険金受取人で、「事業主は、第五条第一項第四号の保険金受取人を定める場合は、各乗組員の指定に従つてしなければならない。」、これは五条で御説明申上げた通りでございます。  それから第十条は保険引受拒否の制限で、組合は、保険組合でありますが、「事業主から給与契約の申込があつたときは、これはに対して、正当な事由がなければ給与保険の引受を拒むことができない。」第十一条「乗組員は、漁船ごとに、当該漁船乗組員総数の二分の一以上の者の連署をもつて、その代表者から、その事業主に対し、給与保険に加入すべき旨の申出をすることができる。」、「前項の申出があつたときは、事業主は、正当な事由がある場合の外、遅滞なく当該漁船乗組員に係る給与保険に加入しなければならない。」、これは一応保険契約そのものは自由ではありますけれども、乗組員二分の一以上の申出があつた場合は事業主は拘束せられる。それによつて保険加入の義務を負う、こういう規定でございます。第十二条、「給与保険契約は、組合保険料を受け取つたときに成立する。」、「組合給与保険契約に基く保険金支払責任は、約款で別段の定をした場合の外、保険契約が成立した日の翌日から始まる。」、二項は通例の規定であります。それから第十三条は乗組員への通知義務、「給与保険契約が成立したときは、事業主は、遅滞なく当該乗組員にその旨を通知しなければならない。当該保険契約内容につき変更があつたときも、同様とする。」これは先ほど御説明申上げましたように、この保険金支払というものは給与支払に代る性質を持つておるものでございますので、事業主保険契約が成立したときは遅滞なくその旨を通知しなければならない、こういうことになつております。それから第十四条、保険期間、「給与保険保険期間は、四箇月とする。但し、組合は、省令の定めるところにより、約款で別段の定をすることができる。」、勿論省令で或る程度の監督をいたすわけでありますが、特別に今定めを約款でしない場合は、これは原則として四カ月である、こういうふうなわけであります。第十五条、保険契約内容の変更、「事業主は、給与保険契約が成立した後において、乗組員の異動等により第五条第一項の申込書に記載した事項について変更があつたときは、遅滞なく、省令の定めるところにより、組合に変更の通知をしなければならない。この場合において、契約金額乗組員給与月額合計額をこえることとなるときは、第七条の規定にかかわらず、内訳保険金額は、当該乗組員給与月額に相当する額とし、契約金額乗組員給与月額合計額の百分の六十を下ることとなるときは、第六条第二項の規定にかかわらず、契約金額乗組員給与月額合計額の百分の六十をこえる額まで増額しなければならない。」、これは保険契約内容乗組員が四ヵ月の期間中に異動があるということで変る場合がありますが、その場合につきまして規定いたしました。いわゆる超過保険に該当しない、それから百分の六十を下らないという範囲内での変更でありますと、これは前の保険金額の変更の原則でそのままになるわけでありますが、超過保険の場合はこれは超過分がなくなつて、やはりまあ給与月額の一〇〇%の線にとどまる。それから百分の六十を下るという場合は、これは保険金額を百分の六十を超えるところの線にまで増額しなければならん、こう書いておるわけであります。二項は「前項後段の場合においては、事業主は、省令の定めるところにより、当該増額分に対する保険料支払わなければならない。」、三項としまして、「組合が第一項の通知を受領したとき(同項後段の場合にあつては前項の規定による保険料支払があつたとき)は、その時において給与保険契約は当該事項につき変更があつたものとみなす。」それから十六条であります。事業主の通知義務、「事業主は、乗組員抑留されたときは、約款の定めるところにより、遅滞なくその旨を組合に通知しなければならない。当該乗組員につき抑留が終つたときも、同様とする。」、これは保険事故発生並びに事故の終了、それをお互にそのいずれの場合においても事業主に、組合に通知するという責任を負わしてあるわけであります。それから第十七条、「組合は、乗組員抑留された場合には、当該乗組員抑留された日の属する月から当該乗組員につき抑留が終つた日の属する月まで、当該乗組員に係る保険金支払う。」「前項の規定の適用については、乗組員が、たい捕された時に、抑留が始つたものとし、抑留を解かれて日本国に上陸した時、又は抑留中に死亡したことが判明した時に、抑留が終つたものとする。」、これは組合支払責任規定であります。それから保険契約の失効、第十八条「給与保険契約は、当該契約に係る乗組員につき、前条の規定により組合保険金支払うべき最初の抑留があつたとき(同一航海において数回の抑留があつた場合は、その最後の抑留があつたとき)は、保険金支払に関する事項を除き、その効力を失う。」それから保険金支払第十九条、「第十七条第一項に規定する保険金支払は、事業主に対する支払に代えて、第五条第一項の規定により申込書に記載した当該乗組員の内訳保険金額に従い、その月分を省令の定めるところにより、保険金受取人に直接支払わなければならない」。あとは日割計算の規定でございます。これは保険組合が直接その保険金受取人支払うということを規定しております。「組合は、前項の規定により保険金支払つたときは、その旨を事業主に通知しなければならない。」  次は組合の免責理由、第二十条「組合は、乗組員についての抑留が、国際法規、法令又は法令に基く命令に違反して航行し又は操業したために生じたときは、保険金支払の責を免かれることができる。」、ここで国際法規というのが出ておりますが、例えば領海侵犯のような場合には、保険組合保険金支払の免責の事由になるわけであります。  それから第二十一条、「組合は、事業主が、第十六条の規定による通知をしなかつたため又は虚偽の通知をしたために誤つて保険金支払つた場合には、当該事業主に、当該誤払に係る保険金の額に相当する金額を納付させることができる。」、「前項の場合における誤払に係る保険金については、事業主がその金額に相当する額の給与を当該乗組員支払つたものとする。」、これは少しわかりにくいのでありますが、この二十一条に言つておりますのは、若し事業主が正当な通知をしなかつたために、或いは虚の通知をしたため組合が直接保険金受取人に対して保険金支払つたという場合においては、組合としてはそれの誤払に係る金額はその事業主から取戻すことができる。併しながらその個々人に支払いました保険金につきましては、これは正当に支払われたものとする。従つてその部分については事業主はその本来の給与支払を免責される、こういう趣旨でございます。それから第二十二条は重複保険の禁止でございまして、同じ乗組員につきまして重ねて給与保険に入つてはいけない、こういう規定でございます。それから第二十三条の組合の経理でございますが、「組合給与保険に関する会計は、他の会計と区分して経理しなければならない。」、これはほかの漁船関係損害補償の経理と区分しろ、但し附加保険料及び事務費についてはこれは組合の費用全体として扱つて差支えないという規定であります。この給与保険事業年度もほかの保険と大体同じ調子で、四月一日から翌年三月三十一日までといたしております。それから第二十四条、これは支払備金等の積立、これは準船保険組合自身についても謳つておるところでございまして、「毎事年度の終において存する給与保険につき、省令の定めるところにより、支払備金及び責任準備金を積み立てなければならない。」、これはつまり未経過保険料の積立というような意味を持つております。それから二十五条は準備金の積立であります。「組合は、給与保険の会計における不足金の補てんに備えるため、毎事業年度給与保険の会計において生じた剰余金の全部を準備金として積立てなければならない。」、利益があればこれを全部積立金にしろと、こういうわけであります。それから第二十六条は約款の変更であります。「組合は、総会の議決を経て、約款を変更することができる。」、「約款の変更は、農林大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。」、「農林大臣は、給与保険保険料率についての約款の変更を命ずることができる。」、「前項の規定による約款変更の命令があつた場合には、第一項及び第二項の規定にかかわらず、その命令により、約款変更の効力を生ずるものとする。」、約款の変更の農林大臣の命令は強制的効果を持つ、こういう規定であります。それから第二十七条は事業の廃止、「組合が、給与保険事業を廃止しようとするときは、総会においてその旨を議決し、且つ、定款の変更を行わなければならない。」、これは当然の規定と思います。それから二項は「組合給与保険事業を廃止したときは、当該事業の廃止に係る定款変更の認可があつたときに、給与保険契約は、その効力を失う。」、「前項の場合には、組合は、まだ経過しない期間に対する保険料を払いもどさなければならない。」、未経過保険料はそれぞれの事業主に返すと、こういうことであります。それから「組合給与保険事業を廃止したときは、理事は遅滞なく決算報告書を作り、これを総会に提出してその承認を求めなければならない。」、それから解散の規定でありますが、この二十八条「組合が解散したときは、合併の場合を除いては、給与保険契約は、その効力を失う。」、「前項の場合には、前条第三項の規定を準用する。」、未経過保険料の払戻しという規定を準用いたします。それから二十九条「組合は、前二条の場合に給与保険の会計において生じた剰余金を漁船保険特別会計に納付しなければならない。」、これは清算した場合に剰余金が出ました場合に、これについては、或いは現在の契約者に返すとか、或いは今までの無事故であつた事業主に返すとか、いろいろ問題はありますが、ここでは一応政府漁船保険特別会計に納付する、こういう建前とつたわけであります。それから第三十条、これは政府事務費の補助をするという規定でございます。予算範囲内におきまして政令の定めるところに従いまして補助をするというのでございます。それからあと大体同じような性質の規定は、漁船損害補償法規定を準用いたしております。第三十一条では「組合給与保険については、漁船損害補償法第十二条(非課税(、第三十七条(保険証券の交付及び記載事項)、第四十条(相殺できない場合)及び第四十一条(保険金額の削減)」その他一応省略いたしますが、関係漁船損害補償法、それから商法の一部、こういつた規定を準用いたしております。  それから第三章は政府の再保険事業関係でございますが、「政府は、組合給与保険事業によつて事業主に負う保険責任を再保険するものとする。」、再保険金の前渡の関係の想定が次にございます。「政府は、組合保険金支払いをしようとする場合において、必要があると認めるときは、政令の定めるところにより、当該保険責任に係る再保険金を当該組合に前渡することができる。」、「政府は、再保険金の支出を円滑にするために、政令の定めるところにより、漁船保険特別会計に基金を設けることができる。」という規定でございます。この関係では政府の再保険特別会計の関連が出て参ります。それから第三十四条「政府は、組合が第十七条第三項の規定により保険料の払いもどしをしたときは、政令の定めるところにより、再保険料の一部を払いもどさなければならない。」、再保険料の払いもどしの問題でございます。それから第三十五条「政府の再保険については、漁船損害補償法第百十五条から第百十七条まで、第百十九条から第百二十一条まで及び第百四十三条並びに商法第六百四十三条及び第六百六十三条の規定を準用する。」、これは先ほど漁船保険組合給与保険に関連して漁船損害補償法の準用をいたしましたのと同じ趣旨でございます。  次に第四章は給与との関係でございます。第三十六条「事業主は、第十七条の規定により組合保険金支払うべき抑留があつた場合において、当該乗組員に対する給与の全部又は一部を支払つて、その支払つた金額範囲内において当該保険金に係る保険金受取人となることができる。この場合においては、第十五条第一項前段の規定を準用する。」、これは事業主は自分のところで給与支払いができるという場合におきましては、あらかじめ自分が払つておいて、そうしてその事業主自体保険金受取人になることができると、こういう規定でございます。それから三十七条は「組合が第十九条第一項の規定により保険金支払つたときは、事業主は、その保険金の額に相当する金額につき、当該乗組員に対する給与支払の責を免かれる。」、これはこの保険制度の趣旨に従いまして保険金を直接保険金受取人に払つた場合において、事業主はその乗組員に対する給与支払の責を免れるという規定でございます。所得税等との関係、第三十八条「組合が第十九条第一項の規定により支払つた保険金は、所得税法の規定の適用については、当該乗組員の受ける給与とみなす。」、源泉控除の関係、それから税率の関係、すべて乗組員の受ける給与として扱うと、こういうことであります。それから二項で「船員保険に係る保険料その他法令に基いて給与から控除することができるものについては、省令の定めるところにより、第十九条第一項の規定により支払保険金から控除することができる。」、これは所得税以外の保険料その他の、何と申しますか、不断源泉控除をやつております事項についてやはり適用をしておるわけであります。それから保険料の転嫁禁止、三十九条「事業主は、給与保険に係る保険料乗組員負担させてはならない。」、これは飽くまでも事業主乗組員に対する給与支払を保障するという建前からいたしまして、給与を受けるべき乗組員がその保険料の一部を持つのはおかしいと、こういう規定であります。それから第四十条、この法律の実施のための手続その他その執行についての必要な事項は省令に委ねております。  それからあとは罰則でございます。例えば給与月額をきめる場合に乗組員の同意を得なかつたような場合、或いは通知義務に違反したような場合、そういつた場合に備えまして過料を課する、これが第四十一条であります。それから組合の役員の関係、これが法規に違反した場合におきましてはやはり過料を課すると、こういう規定でございます。  それから附則でございますが、「この法律施行の期日は、公布の日から起算して六箇月をこえない期間内において、政令で定める。」ということになつております。これはこの法律をすぐに運用いたしますためには、実は政府の再保険を行います漁船保険特別会計の収入支出の予算の調整も必要でございます。それから部分的には、再保険特別会計法の一部修正も必要でございます。尤もこれは一般会計で負担する分は実は大してないはずでございますけれども、そういつた手続的にまだこの法律をすぐ実施するということはできないというような関係でございますので、これは公布の日から起算して六カ月を超えない期間内で政令できめると、その間に予算の補正を組み、手続を整える、こういう趣旨でございます。
  21. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) それでは質問をお願いいたします。
  22. 千田正

    ○千田正君 長官或いは水産庁当局にお伺いしたいのですが、第二十条に関連する問題であります。現在政府は、マツカーサー・ラインが撤廃された独立後の日本漁船の航行並びに漁業操業地域に対しまして、特に政令或いはその他に定めて制限している所があるかないか、この点をお伺いしたいと思います。
  23. 伊東正義

    説明員伊東正義君) お答えいたします。マツカーサー・ラインの撤廃に従いまして政令その他で操業区域制限をしている所があるかというお話でございますが、これは以西底曳等につきましては一応なくなつて、ただ北緯二十五度というようなことが省令関係で出ております。それから「かつを」「まぐろ」、等につきましても、省令でこれはやつておりまして、私直接担当いたしておりませんので、具体的に東経幾ら、緯度経度幾らというお答えは後ほど担当官なり何なりからお答えいたしますが、やはり省令で制限している所はございます。
  24. 千田正

    ○千田正君 日本方面はどういうふうになつておりますか。いわゆる日本と未だ国際条約を結ばないところのソ連並びに中共、或いは朝鮮或いはフイリピンその他と領海を接しているところの海洋における制限等に対しましてはどういう見解をとつておられますか。
  25. 伊東正義

    説明員伊東正義君) 日本海等につきましては、例えば日本海の以東の底曳等がこれは直接問題になろうかと思うのでありますが、こういうものにつきましては、やはり従来の法律に基きまして操業区域制限いたしております。例えば沿海州のほうへは、今までの許可では行つちやいかんというような或いは省令なり、或いは許可の条件において制限いたしております。それからフイリピンとか南方等につきましては、これは私今ちよつと存じておりませんので、後刻長官なり何なりからお答えしたほうがいいかと思います。
  26. 千田正

    ○千田正君 現在拿捕されているところの船舶、いわゆる漁船は、然らば今まで政府が一応制限しているところの範囲を越えて漁撈を行つたために拿捕されているのか、その制限内で操業しておるにもかかわらず拿捕されているのかという、この事実を根拠としての判定が頗るむずかしいと思いますが、それに対してこの保険法を適用する際に如何なる判定の方法を以てこの法律を適用するお考えでありますか、その点を伺いたいと思います。
  27. 伊東正義

    説明員伊東正義君) この法律の適用につきましては、二十条に国際法規なり或いは法令というふうなことを書いているのでありますが、これにつきましては、先ほど漁政課長から説明いたしました領海等の問題等につきましては非常に問題がございます。国によりまして三マイル説、六マイル説、十二マイル説というようなものがありまして、これにつきましては非常にアンビギユアスな問題が残ろうかと思います。但しこの法律が施行になります際にといいますか、それ以後でありますか、この法律が施行になりました以後に拿捕なり何なりという事態が起りました場合には、その拿捕の起りました地点が、一体或いは省令なら省令で制限しておりますとか、或いは許可の条件なら許可の条件で制限いたしております地域以外ということになりますと、これはこの法律では適用外になる。但し法律その他において制限はいたしておりません区域であり、これは明らかに領海外だという所で拿捕されたというような場合につきましては、これは当然にこの法律の適用で行くというふうに考えております。
  28. 千田正

    ○千田正君 この法律を施行するに際しまして、或いは国際紛争を惹起する虞れのある所並びにこの法律の二十条の適用をはつきりするためには、むしろ只今もう一度政府としては、その操業区域を明確に指示する必要があると思いますが、その点においては、水産庁はどういうふうに考えておられますか。
  29. 伊東正義

    説明員伊東正義君) この法律を施行いたします必要上、特にどの海域については何マイルまでというようなことは、法令なり何なりでやるというようなことも、これは相当問題があろうかと思いますが、特にこれは国際情勢と関連いたしまして問題があるわけでございまして、この法律をやりますからして、例えばソヴイエトとのところは何マイルまで行つていいとか、或いは朝鮮の沿岸は何マイルというようなことを、法令なり何なりで定めますことは、これは非常に問題だと思うのであります。まだ水産庁内部でそういう問題につきましてこの法律の施行に関連してどういうふうにするということを相談したことは実はないのでありますが、私今の段階におきましては、なかなか国際情勢の困難なような地域につきましては、ぴつしやり例えば何マイルというようなことをきめることは相当困難ではないかというふうに考えます。ただそういう非常にわからん場合に、この法律の適用が問題になるのでございますが、その辺につきましてはあとで十分相談の上、又機会更めまして御答弁いたしたいと思います。
  30. 千田正

    ○千田正君 提案者の川村衆議院委員長がお見えになつておりますから伺いますが、この法律目的は、要するに特に国際問題を惹起するしないにかかわらず、拿捕された船舶並びにその乗組員に対しては、一応こうした方面によつてその生活を保障してやろうじやないかという法案の趣旨のように考えますが、さよう心得てよろしうございますか。
  31. 川村善八郎

    衆議院議員川村善八郎君) 実はこの法律を立案する際にいろいろ問題になつたのであります。只今千田君が言われるように、国際問題等の問題もありますし、それから保険内容についても、然らば実際確立して保険支払等の問題ができるかどうか、それから政府においてもこの予算措置でどの程度にできるかといつたようないろいろな心配もあつたのでありますが、とにかく講和が発効して、我々は自由の原則に基いていわゆる公海に出漁していいという建前はとつているけれども以西底曳のごとき、並びに北海道の沿岸のごとき、現実に抑留されているものが毎月ありますので現実を無視することができないから、取りあえずこの基本的の問題は余々に解決をつけて行こう、従つて今現実の問題を解決することは、これより方法がないというところから、若干の不利を忍んで、どうしても乗組員救済してやつて、そうして生産意欲を減退させないように、日本の国の水産業を発展さして行こう、こういう趣旨で立案したのであります。
  32. 秋山俊一郎

    秋山俊一郎君 この保険法は第二条にあつて漁船乗組員給与保険は、漁船損害補償法規定による漁船保険組合が行う漁船乗組員給与保険事業及び政府が行う再保険事業により行う。」こうなつておりますが、この漁船損害補償法によりましてみますというと、補償法の第四柔では「漁船保険組合は、組合員の所有する漁船につき、漁船保険事業を行うことを目的とする。」、この漁船保険事業目的とするということがあつて限定せられておるようでありますが、それに何ら変更を加えずしてこのままこの法律で以て差支えないとお考えでありますかどうか。
  33. 家治清一

    説明員家治清一君) これは私の承知しております限りではこういう理由であつたと思います。先ずこの漁船保険組合、現在の漁船保険組合に対してこういつた給与保険を行なわせるということは、第一条にもありますように「当分の間」、云々と……、だからこれは恒久的なものではないこと。それでその場合におきましても、漁船損害補償法の中における漁船保険組合目的を或いは修正すべきであるという意見もあつたかと思いますが、まあとにかく一応いわば臨時的なものでそういうことができるという規定を置けばいいのではないかということで、実は第四条に漁船保険組合というものは今申上げました「漁船乗組員給与保険事業を行うことができる。」という規定を設けて、これでまあ臨時的な措置、臨時的な立法として、これだけの仕事を漁船保険組合に附加して行なわせるのである、こういう解釈をとつてつたと思います。
  34. 千田正

    ○千田正君 議事進行について……、本日は大分逐条の説明を承わりましたので、次回において更に検討してこの問題を解決して行きたいと思いますが、お諮りを願いたいと思います。
  35. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 今日各条審議をされましたが、質問は相当あると思いますけれども、十分この法案審議されて、そうして次回の委員会で一般的質問から逐条まで質問を行いたいと思います。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 木下辰雄

    委員長木下辰雄君) 御異議ないと認めます。それでは本日の委員会はこれを以て散会いたします。    午後三時二十三分散会