○
説明員(伊藤茂君)
法案につきまして大体のところを申上げます。
第一章総則、(この
法律の目的)というところと、次に
漁船保險事業、政府の再
保險事業、
漁船保險中央会、第五章の、
保險料の負担及び
補助金の交付、こういう点が概略この
法案のまあ山と申上げてよろしいかと思うのでありまして、この
範囲につきまして御
説明申上げます。
この
法律の目的は、第一條に挙げておりますが、「この
法律は
漁船につき、不慮の事故によ
つて生じた
損害を
補償して、その復旧を容易にし、も
つて、
漁業経営の安定に資することを目的とする。」、で、
損害を生じた場合に復旧を容易にすることは勿論でありますが、今まで小型
漁船においては
保險の利用が殆んどできませんので、金融
方面にも非常に不利な立場にありますので、
保險の普及を図りまして金融の打開ということも
一つの目的にな
つておるわけでございます。
第二條の「
漁船損害補償は、
漁船保險組合が行う
漁船保險事業及び政府が行う再
保險事業により行う。」、これは
漁船損害補償といういわゆる社会
保險を、
漁船保險組合が行う
保險事業と政府が行う再
保險事業というものを通じてこれを実施する、こういう意味であります。
第三條の定義におきまして、この
法律において
漁船保險とは、
保險の目的たる
漁船——
漁船法の第二條第一項に
規定してあります
漁船をいうのですが、これにつき滅失、沈没、損傷その他の事故によ
つて生じた
損害を填補する相互
保險であると定義しております。なお、
漁船保險は、第三條第二項で、特殊
保險及び普通
保險とし、特殊
保險というのは、戰争、変乱その他
政令で定める事故を
保險事故とする
保險であるとな
つておりますが、これは
只今の問題にな
つております捕獲、拿捕及び抑留による事故を主として扱
つておるわけであります。それから普通
保險というのは、それ以外の事故を
保險事故とする
保險を指しておるわけであります。
それから次に、第二章の第七條でございますが、今まで
漁船保險組合というものには、明確な地域、業態という区別はありましたけれ
ども、これは
法律的に
はつきりきま
つておりませんでしたが、これを今度はこの第七條で「組合は、地域組合及び業態組合とする。」、二項、「地域組合の区域は、都道府県の区域とする。但し、北海道及び兵庫県の区域において設立されるものについては、
省令で特別の定をすることができる。」、これは
省令におきまして北海道及び兵庫県の区域における地域組合の区域は、当分の間現に存する
漁船保險組合の区域とする。但し合併による組合の変更は妨げないものとする、こう
政令で定めることにな
つております。で、現状を先ず尊重しよう、こういうわけであります。それから三項で「業態組合とは、
政令で定める特定の
漁業に従事する特定の
漁船のみを
保險の目的とする組合をいう。」、これは
政令で業態組合の
保險の目的たるべき
漁船は左の各号に掲げるものとしまして、捕鯨
漁業、以西トロール、以西底曳網
漁業、かつお・まぐろ
漁獲物運搬業、北海道の以東底曳、これもやはり現状に照らし合せて、現状を尊重して、それをそのまま採用するようにな
つております。
次にずつと飛びまして、あとは組合の設立、組合員というような一応普通に
規定されるものでありますので、十八頁の、第四節、
漁船保險事業というところに参りたいと思いますが、第三十條「
保險の目的たるべき
漁船は、総トン数千トン未満の
漁船とし、業態組合にあ
つては
政令で定める
漁業に従事する
漁船であ
つて政令で定める総トン数以上のもの、」、この
政令で定める総トン数以上のものというのは二十トン以上を指すはずでございます。で、「地域組合にあ
つては業体組合の
保險の目的とな
つていない
漁船とする。但し、地域組合にあ
つては、業態組合の
保險の目的とな
つていない
漁船であ
つても、
水産業協同組合以外の法人で常時使用する従業員の数が三百人以上で、且つ、使用
漁船の合計総トン数が三百トン以上のものが所有する
政令で定める総トン数以上の
漁船については、定款で別段の定をした場合の外は、
保險の目的とすることができない。」、ここの趣旨は、一応業態組合で引受けていない船は地域組合はどれでも引受けることができる、但し大きい法人の持
つております船で、
政令で定める総トン数以上というのも、ここもやはり二十トンでございまして、登簿船で、大きい会社等が持
つておる船につきましては、特に定款で定をした場合のほかは引受けてはならない、こういう精神でございます。それから「漁具は、定款の定めるところにより特約がある場合に限り、その属する
漁船とともに
保險の目的とすることができる。」、併しこれは
省令でたしか縛
つておりますが、一応漁具は船に載せる網、或いは延繩等でありますけれ
ども、全損事故だけを対象とする
保險を差当り開始できるようにしておりまして、分損は扱わないようにな
つております。
それから三十一條は、これは正当な事由がなければ
保險の引受を拒むことができない、当然の
規定であります。
第三十二條がいわゆる義務加入の
規定でございまして、非常に大きい
條文にな
つております。「
漁業協同組合の地区内にその住所を有し且つ
政令で指定する
漁船を所有する者(以下本條において「指定
漁船の所有者」という。)の総員の三分の二以上の者が、
政令で定める手続により指定
漁船の所有者はすべてその所有する当該
漁船の全部につき普通
保險に付すべきことにつき同意をしたときは、指定
漁船の所有者のすべての者(同意があ
つた後指定
漁船の所有者と
なつた者を含む。)は、その所有する当該
漁船の全部につき、普通
保險に付さなければならない。」これがいわゆる義務加入の
法文でありますけれ
ども、ここで
政令で指定する
漁船を所有する者というのは、いわゆる
漁業協同組合の地域を單位としまして、そこに住所を有し……、この
政令で指定する
漁船というのは、ここでは
政令で第四條に二十トン未満一トン以上の動力
漁船ということを主として目標にしておりまして、無動力或いは一トン未満の小型動力船は一応後に出て参りますが、任意加入の建前で、而も
保險料の国庫負担が受けられるような工作をしております。で、手続等は代表者が市町村長に申出まして……。その次にございます二項「前項の
規定による同意があ
つたときは、その代表者は、当該地区を区域内に含む市町村(地方自治法第百五十五條第二項の市にあ
つては区)又は特別区(以下「市町村」という。)の長にその旨を通知するものとし、その通知を受けた市町村の長は、その旨及び前項の
規定の適用を受ける地区を公示しなければならない。」、これを公示する、三項、「第一項の
規定による同意があ
つたときは、その代表者は、当該地区の
漁業協同組合に対し、その同意を証する書面を添えて、当該
漁業協同組合の組合員たる指定
漁船の所有者が組合に支拂うべき
保險料を集牧してその者に代り組合に拂い込む
事業を行うべき旨の申出をしたときは、当該
漁業協同組合は、正当な事由がある場合の外は、その申出に係る
事業を行わなければならない。」、これは
保險料を集收して組合員に代
つて保險組合に拂込む
仕事をしてもらいたいと申出た場合には、その
漁業協同組合はその
事業をやるようにきめてあります。第四項「前項の
規定による
事業を行う
漁業協同組合は、当該
漁業協同組合の組合員からその所有する第一項の
政令で指定する
漁船以外の
漁船で
保險の目的たるべきものにつき普通
保險に付することに関し前項と同様の申出があ
つたときは、正当な事由がある場合の外は、当該
漁船についても、前項の
事業を行わなければならない。」、これは指定
漁船の以外の船、いわゆる任意加入のものにつきましても同じ
仕事をや
つてもらいたいと申出があ
つた場合にはその
事業を行うべきである。第五項「第三項の
規定による
事業を行う
漁業協同組合は、その組合員以外の者であ
つてその地区内に住所を有する者の所有する
漁船に係る普通
保險についても、第三項の
事業を行うことができる。」、これは組合員外の利用の場合を示しておるのであります。それをやはり斡旋してや
つてもよろしい。第六項「第一項の
規定により
漁船を普通
保險に付する場合における
保險金額並びに第四項及び前項の
規定の適用を受くべき
漁船の普通
保險の
保險金額は、
政令で定める金額を下るものであ
つてはならない。」、これは
政令で
保險価額の百分の五十に該当する金額ということをきめてございます。つまり船価の半額だけは入らなければならない、これがやはり組合加入の
一つの條件になるわけでございます。七項「組合は、第三項の
事業を行う
漁業協同組合に対し、その事務費として、
政令で定める金額を交付しなければならない。」、これは徴収
保險料の百分の十に該当する額を
政令で定めます。八項「第一項から第五項までの
規定の適用に関して必要な事項は、
政令で定める。」、これは重複加入とか、或いは指定
漁船の共有者の場合とか、
異議の申立とか、そういう関連した場合を措置することが
政令で定められております。
あとは組合の合併、解散というようなこと、
損害填補のこととか普通の登記、そうい
つたようなことでありますので、この点は略さして頂きます。
五十九頁の、政府の再
保險事業、これは大体現行と同じでございます。
第百十四條「政府は、組合が
漁船保險事業によ
つてその組合員に対して負う
保險責任を再
保險するものとする。」、第百十五條「組合と組合員との間に
保險関係が成立したときは、これによ
つて政府と当該組合との間に再
保險関係が成立するものとする。」、これは組合と組合員との間に
保險関係が成立しますと、自動的に政府との間に組合が再
保險関係を持つことになります。
その次の百十六條「再
保險金額は、
保險金額の百分の九十とする。」、これは現行と同じでありまして九割の再
保險率が
法律で確定したわけでありまして、今まではこれを
政令できめておりましたが、今度はこれが
法律事項になりました。
それから第百十八條に飛びまして、これは「政府は、組合が第三十八條の
規定により
保險料の拂戻をしたときは、
政令の定めるところにより、再
保險料の一部を拂い戻すことができる。」、この三十八條というのは飛ばしましたが、或る場合には組合が組合員に
保險料の拂戻ができるという
規定を三十八條に設けました。その大きな狙いは特殊
保險事故で以て全損した船がありましたときに、普通
保險の
保險料の未経過分を返せる、或いは又漁具の場合も返せるということを
規定した
條文でございます。この場合に政府の再
保險も、そのまま関連して返して差上げる、こういう
條文でございます。
そのほか大体現行
通りでございまして、六十四頁、第四章の
漁船保險中央会は新らしい
條文でございます。第百二十七條は「組合は、
漁船保險事業の健全な発達を図るため
漁船保險中央会を設立することができる。第百二十八條「
漁船保險中央会(以下「中央会」という。)は、
全国を通じて一箇とする。」、このようにいたしまして、組合を会員とする中央会ができます。
第百三十二條に「中央会は、定款の定めるところにより、左の
事業を行うものとする。
一
保險料率の算出、二
損害の発生の予防及び防止に関する事項の
調査及び指導、三 会員たる組合の委託によ
つてする
保險引受のための
漁船の
調査及び
保險の目的たる
漁船についての
損害の
調査、四
漁船保險の普及宣伝、五 会員たる組合の職員の指導及び福利厚生、六 その他
漁船保險事業の健全な発達を図るための
調査及び指導、七 前各号の
事業に附帶する
事業」、こういう工合にな
つておりまして第一号に掲げました
保險料率の算出というようなことが今までは全く天降りでありましたが、今度は中央会で一応試算いたしまして資料を作りまして、これに基きまして
農林大臣が決定するということになります。
その次に七十二頁に飛びまして、第五章、
保險料の負担及び
補助金の交付というところに参ります。第百三十九條「国庫は、第三十二條第一項の
規定により
保險に付した
漁船及び
政令で定める
漁船についての同條第六項の
政令で定める金額に相当する
保險金額に対する純
保險料の百分の五十を負担する。」、これは義務加入に
なつたものについては先ほど御
説明申上げました
通り第三十二條第六項で船価の
保險価額の百分の五十に該当する
保險金額を
一つの條件としております。半額までは入らなければならない、その半額に対する純
保險料の又半分を国で負担する、こうきめておるわけであります。
それから先は手続でありまして、第百四十一條「政府は、予算の
範囲内において
政令の定めるところにより、組合が第三十二條第七項の
規定により
漁業協同組合に対し交付する事務費交付金の一部を補助することができる。」、これは収集
保險料の百分の十を
漁業協同組合に対して
漁船保險組合は交付するということが三十二條の第七項にきめてありましたが、その中の一部……現在の予算措置では大体予想
通りに加入があると仮定いたしますると、その中の六だけ……つまり百分の十を交付しますが、百分の六だけを政府が負担するような予算措置にな
つております。
それから次は第百四十二條「政府は、予算の
範囲内において
政令の定めるところにより、毎会計年度組合の事務費の一部を補助することができる。」、これは先ほど
松田先生からの御
説明にもありました
通り、
漁船保險組合の事務費の補助でございまして、現行の約八倍にこれが持上るはずでございます。大体賦課
保險料の、いわゆる事務費の三分の一を国が持つという建前で予算を組んでおります。
第百四十三條「政府は、再
保險事業の業務の執行に要する経費に相当する金額を、毎会計年度の」、これは「予算」が抜けております。これはミス・プリントでありまして、「予算の定めるところにより一般会計から
漁船再
保險特別会計に繰り入れるものとする。」、これは現在まで賦課再
保險料と称しまして、組合の取られた賦課
保險料の中から政府が一部頂きまして、政府の事務費に充ててお
つたのでありますが、これを全面的に廃止する、こういう
規定でございます。
大体以上が、本法に対する各
條文の特に必要と思われる分だけを
説明申上げました次第であります。
なお
漁船損害補償法施行法案につきましては先ほど
松田先生から御
説明がありました
通り、大体現行
漁船保險組合は定款を変更することによりまして、八カ月以内に新法の組合に乗移るという
規定でございまして、
権利義務をそのまま承継する、こういうことにな
つております。以上であります。