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国立国会図書館長(
金森徳次郎君) 過去半年分、即ち
昭和二十六年の十月から本年の二月までに至りまする間六カ月間の
図書館の
経過を御
報告申上げたいと思います。
格別新らしいこともその間に起りませんので、この
報告要綱に書いてありますることと、それに附属しておりまする
数字の
報告資料、この二つの中に大体の事柄が書かれておるのであります。中におきまして目ぼしいと思われますところを少しく摘まんで申上げますると、
報告要綱の印刷してありまする初めの第一枚の紙、これは
格別のこともない、少しずつの
変化を示しておるだけであります。第二枚目の「
国会への
奉仕」という面におきましては、不十分ながらも
調査立法考査局の
考査件数がだんだん殖えて来て、而もその殖えて来ました中には相当むずかしい問題、手数のかかる問題が殖えて来たということを申上げておきたいと思います。
あとは
数字の問題であります。それから
憲政資料、これは明治の初めの
憲政に関する
資料の多くの家に残
つておりますのを散逸させない
ように努めたのでありますが、この期におきまして五千二百八十五点だけ
購入することができましてその他
伊藤公の家にあつたものという、もつと大きな影響を持
つておりまするものはすでに買
つてしまいまして、この期のものは
井土家、
陸奥家、
宍戸家、こういうものでございます。なお受寄として七百四十八点残
つておりまするが、これはまだ
所有権を獲得しておりませんで、お預かりをしておるという形であります。それからその次の第二枚目の裏の「
行政・司法各
部門への
奉仕」というところもだんだん
件数が殖えて来たという形にな
つておることを御
承知おき願いたいと思います。それから第三枚目のつまり五と書いてありまする「
一般の
図書館及び
一般公衆への
奉仕」というところは、このうちの目ぼしいもの、
外国から寄贈されました
図書をどうしておるかという点であります。ロツクフエラーの
寄贈図書は大体今までに五千冊以上も入
つておりますけれ
ども、従来
書物を大切にするために
図書館へ来て読んで下さいという
態度をと
つておりましたが、何しろ多くの人が望む
ような
書物でありますので、
日本中の
団体に
貸出すほうがいいのではないかと、こういう計画を立てまして、この時期から
団体貸出をしたのであります。
個人の
貸出は散逸いたしますためと、後始末が面倒でありますのでや
つておりませんでした。これだけでも相当の効果を挙げたものと思
つております。
図書館学資料、それから
アメリカ工業使節団の
寄贈図書についても同じであります。なお附け加えまするが、どうも
団体に貸して行くというよりも
個人にも貸したほうがいいのじやなかろうか、こんな議論も起
つておりまして、人の好意であるから
失つては困るという懸念もございますが、成るべくなら多少の危険を冒しても
個人の
希望者に
貸出し得る
ようにしたらよかろうというので、
寄贈者の
意思等も尋ねまして、はつきりした答えは得られませんでしたが、大体任して置く、こういう返事が参
つております。
あといろいろございまして、すべてが順調に
一つの
方向に進んでおるということを示しております。なおこれに関連いたしまして、ここには書いてございませんけれ
ども、
一つだけ御
報告をし、且つは場合によ
つては御
意見を伺い、或いは又御援助をも得たいと思
つておるものがございますが、私
どもの
図書館が活動しておりまする上に大体普通の
図書館の
ような仕事に今までは重点を置いておりました。併しいずれにしてももつと
実用向きの
図書館にな
つて行くという
方向に本筋を進めて行かなければならないというときに、最近問題が起りました
アメリカのP・B・
リポートの問題であります。これは合衆国の商務省の
出版委員会でこしらえておる
リポートでありまして、今次大戦の末期に旧
枢軸国を占領した
連合国は、いち早く
技術調査団を作りましてドイツ、
日本、イタリーの
技術を手に入れたわけであります。か
ようにして手に入れましたところの
技術は数におきまして十五万件に亘
つておりまして、中には各種の
学問技術についても相当深入りしたものがあるのであります。今まで私
どもの知
つておりまする項目は十二万件だけしか印刷が出ておりません。なお三方件残
つておると思
つておりますが、その十二万件だけを仮に計算いたしましても、五百万余ページに亘るものであります。今この十五万件というものを
日本が入手いたしまして、必要な
かたに全部公平に
利用して頂く。若し
希望があるならばそれを
写真にとるとか、或いは
マイクロフイルムに写して
利用して頂くということになりますと、私
ども技術のことになりますと素人でありますのでわかりませんけれ
ども、大体
日本の
学術は三十年の進歩を一気に果すことができるであろうというふうなことも言われております。これは何とかしてそういうものを手に入れたいと思いますけれ
ども、相当多額の
経費を要しまするので、
写真のほうをとりますると、大体二億五千万円、
マイクロフイルムでとりますれば五千万円、それにいろいろな附属の運賃という
ようなものがかかる。
事務費もかかりますので相当大きな問題になると思
つております。ところでその中に非常に貴重なものがありまして、現に
日本で
関係の会社がひそかにこれを
利用しておるということも聞いておりますが、
外国の大きな
図書館ではこれをやはり一まとめに手に入れて、
一般人に
利用せしめておるということも、正確ではございませんけれ
ども、聞き及んでおります。そこでなんとかして
図書館でこれを手に入れたいという
気持を持
つておりまして、一番心配いたしまするのは、
折角手に入れて中身が学問的に
価値が乏しい、こういうことでは工合が悪いというので、あちらこちらの
意見を伺
つておりますが、通産省の
工業技術庁という
ようなところも非常に熱心であります。東大の
工業に関する
部門の
かたも非常に熱心であり、
特許局も熱心であります。殊に
学術会議が正式に
議決をせられまして、これを
図書館におきまして
取り揃えることを
希望する旨の
議決をせられまして、
図書館に通告もされましたし、
大蔵省にもその
希望を伝えられております。か
ようなわけでありまするから、できるならば十五万件を全部一括して入手いたしまして、総合的に
日本中の
利益に供したい、
ひとり官庁ばかりではない、
民間一般にいたしたい、こういう
ような
気持を持ちまして、
大蔵省のほうといろいろ
交渉を進めております。進めておりまするけれ
ども、今日の
段階までには確たる
意見は出ておりませんので、この上とも私
どもはその
方向に進みたいという
腹案を持
つておるのでありまするが、
皆様の御
意見をも伺いまして、若し又何らかの形におきまして
皆様がたの御支援が得られるならば、事が進行する上に非常になめらかに、これによ
つて国会図書館の使命が大きく実現せられて行くのではないかと思
つております。