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説明員(
桜井良雄君) それでは
只今の
法案につきまして
説明員から御
説明を申上げます。
提案理由につきましては前回におきまして、
調達庁長官より御
説明を申上げた
通りでございます。本日は逐條的に大体の
意味と問題の
所在を申上げて御
説明をしたいと存じます。
第
一條はこの
法律の
目的でございまして、これはもう申上げるまでもございません。ここに書いてありまする
通りでございますが、問題は例えば
B国についてはどうするかというような点がございますが、これはこの
法案は目下
駐留軍、つまり
アメリカ合衆国の軍隊だけしかございませんが、これを相手にしました
法案でございまして、
B国等におきましては
個々に條約ができますれば格別でございますが、この
法案は直接
関係ございません。
それから第三條は
定義でございますが、「
土地等」と書いてございます
文字の
定義でございまして、これはそこにございますように「
土地若しくは
建物若しくはこれらに定着する
物件又は
土地收用法第
五條に
規定する
権利」を言つておるのでございまして、更に「
建物にある
設備又は
備品で
当該建物の
運営上これと一体的に
使用されるべきものを含む」というふうに
定義してございます。そこで「
土地若しくは
建物若しくはこれらに定着する
物件」というのは読んで字のごとくでございますが、「
土地收用法第
五條に
規定する
権利」と申しますと、いろいろそれらのものに設定されておりますところの
地上権でありますとか、
賃借権、或いは
地役権、
鉱業権その他もろもろの
権利がございますが、そういつた
権利もこの
法律の
目的になる。従いまして、「
土地等」の
概念の中に含めましたわけでございます。更に「
建物にある
設備又は
備品」と書きましたのは、
行政協定の第二條に、やはり
施設、
区域の中にあるもので、その「
施設及び
区域の運営に必要な現存の
設備、
備品及び
定着物を含む。」という
文字がございますので、やはりこれらのものは
駐留軍の必要に応じまして、
行政協定に基きましてこれを
提供しなければならんというふうに
日本政府は義務付けられておりますので、やはりこれを「
土地等」の
概念に含めましたわけでございます。併しながら飽くまでもそれはその
建物の
運営上これと一体的に
使用されるものに限りましたわけでございまして、何でもかんでも
建物の中にある品物をこの
法律で
使用するということではございませんので、それがなくしては
建物の
運営上支障を来すというような場合に限りたいというふうに考えているわけでございます。
第三條は
土地等を
使用したり
收用することがこの
法律でできるということを書いたわけでございまして、この際いろいろ問題になりますのは、大体
土地等を必要とするということは、
行政協定によりまして、
日米合同委員会を通じまして
両国政府がこれを決定するということに
なつておりますが、その
関係と二行目に「適正且つ合理的」と書いてありますが、それは一体誰がどうしてきめるのか。そういつたものはもう
合同委員会でき
まつているのじやないかというようなことが考えられるわけでございますが、これは大体どういつた
土地等を必要とするかということは、
日米合同委員会を通じまして
両国政府が決定をいたしますと、大体こういつた
土地等が必要であるということが一応きまるわけでございます。その場合に以下第四條、
五條、六
條等によりましての
手続を経まして、これが適正且つ合理的であるというふうに認められましたときには、この
法律を運用いたしまして、これを
使用し又は
收用するということに決定したわけでございます。
そこでこの四條以下はその
手続でございます。即ち
土地等が必要であるということがきまりますと、
調達局長は先ず
原則といたしまして、自由な
契約の
交渉を開始するわけでございます。一定の
基準によりまして、
契約の
條項によりましてこの
土地等を
政府を通じまして
駐留軍に
提供するように
所有者その他の
関係人と自由な
契約の
交渉を始めるわけでございますが、それが不調に終りましたときに、初めてそれではこの
法律によつて
使用し又は
收用しなければならんということになるわけでございまして、そこで第四條によります
手続が始められるわけでございます。その際
所有者又は
関係人の
意見書その他の書類を添附いたしまして、
使用認定申請書、或いは
收用認定申請書を
調達庁長官を通じまして
内閣総理大臣に出しまして、その
認定を受けるということに相成つているわけでございます。これは
土地收用法におきまして、
事業の
認定ということがございますが、その
手続に該当するものでございまして、
土地收用法におきます場合の
事業の
認定は
手続が大変混み入つておりまして又暇も非常にかかる、併しながら
駐留軍に対しましてそういつた
手続をとりましては、必ずしも
駐留軍の緊急な用に応ずるために適当であるとは認められませんので、その点を簡素化いたしましたためにこうい
つた規定に
なつたわけでございます。
そこで第
五條に参りますと、
内閣総理大臣は
調達局長からそういつた
申請を受けますと、それを調査いたしまして、
土地等の
收用、
使用等の
認定をするわけでございます。その際に第六條にございますように、必要な場合には
関係行政機関の長及び
学識経験を有する者の
意見を求めるわけでございまして、元来が
合同委員会を通じまして、
両国政府の決定したものは一応その
通り決定したわけでございますが、更にこういつた
愼重な
手続を経まして、
関係行政機関の
意見でありますとか、
関係人の
意見とかいうものを参酌いたしまして、
総理大臣が
愼重に
手続をやつて
認定をするというふうにしたわけでございますが、この
認定の結果が
合同委員会等の
意見と合致いたしません場合には、更に
合同委員会を通じまして訂正を申込むということも事実あるかと思われますが、大体はそういつた
矛盾は起らないものというふうに考えているわけでございます。第七條はそのような
認定をいたします場合の処分の
通知、
告示、或いは
公告といつたようなことを書いたわけでございますが、これは
所定のそこにございますような官報による
告示或いは
調達局長の
公告、そういつた
手続を書いたものでございます。第八條はそのような
告示がありました後、
土地の
使用、
收容の必要がなくなりましたときは
調達局長から
大臣に報告する。又その他必要のなくなりましたことがもう
関係人等に
通知をしてし
まつた
あとでありましたときは、又
関係人等にもその旨を
通知しなければならないという当然の
規定でございます。第九條は「
建物の
使用に代る
收用の
請求」という
條文でございますが、これは大体
土地收用法の八十
一條に
土地を
使用した場合において、その
使用が三年以上に亘りますとき、又はその
使用によりまして形質が変更いたしました場合等には、
所有者からその
土地を
收用してくれという
請求権を認めることに
なつておるのでございますが、
土地收用法ではいろいろ
土地に関する
規定を
建物に準用することに
なつておりますが、この八十
一條におきましては、
建物に対する
收用がございません。従いまして
建物を
收用いたします場合には、
土地收用法八十
一條では間に合いませんので、特にこの九條に
建物の
收用の場合を
規定いたしたわけでございます。ここでいろいろ問題になりますのは、従来
占領期間中
使用されておりましたもの、それは或るものは三年以上経つておりますものもございますが、そういつたものは一体直ちに
收用できるのかということでございますが、
原則といたしまして、
占領期間中の
使用はこの
期間の計算には含まない、飽くまでもこの
法律によりまして
使用したもの、その
使用が三年以上にわたるとき云々というふうに解釈するわけでございます。それから第二項にございますのは、
土地收用法八十
一條で
土地を
收用いたします場合に、その上に乘つている
権利の
存続というような
存続の
請求の
條文でございますが、それをただ
建物の場合にも適用するというのでございます。第十條は
土地等の
使用に対します
損失補償の
支拂に関してでございますが、
通常土地收用法によりまして、
土地等を
使用いたします場合には、
最初に
使用の
期間に対しまして、全
期間に対しまして、その
使用によります
損失補償の
金額を決定いたしまして、事前に全部拂つてしまうということの
建前に
なつております。ところが
駐留軍の場合におきましては、
起業者が国でございますが、実際上使うのは軍であるといつたような
建前もございますし、又
財政的見地等を勘案いたしましてその
金額を
使用の全
期間或いは数年分とか十数年分とか、一括して前拂いするということは必ずしも適正妥当ではない場合もございますので、こういつたように一年分ずつに分割して
支拂うことができるということにしたわけでございます。第十
一條は、
土地等の
返還及び
原状回復に対します制限でございまして、これは
土地等を
返還いたします場合には、その
所有者から何も
請求が来ません場合にはそのままに返すのでございますが、若し
原状回復してもらいたいという
請求がありました場合には、
原則としては
原状に
回復しなければならないということに
なつておりますのが
土地收用法の
建前でもございますが、併しそれも必ずしもいろいろ社会上、経済上適正妥当であるとは常に限つたことはないのでありまして、そういつた場合に
土地等を
原状、元の姿に
回復するということは非常に困難な場合もございますし、又むしろ
原状に
回復しないで、そのままに返したほうが有効且つ合理的に使えるという場合もございます。そこでそういう場合には
原状に
回復しないで、そのまま返すことができるというふうに
規定するほうがむしろいろいろな観点から適正ではないかということで、こういつた
條文を特に設けたわけでございます。そこで第二項におきましては、併しながらそういつた場合に、若し
土地所有者、
関係人等が
損失を受けますれば、これを
補償しなければならないというふうにしまして、
損失の面でこれを救うわけでございますし、三項はこういつた
土地等を
原状に
回復しませんで
返還するという場合におきまして、実際問題といたしまして、いろいろ
使用中に軍が費用を投じまして、中のいろいろな
施設等を附加えましたり、或いは改良いたしました結果、価値が生じておるという場合が多々あるわけでございますが、その場合にその
利得の存する限度でこれを国にその
利得金を納めさせるというふうにいたしましたのは、これも民法の
建前から申しましても、百九十六條でいう
有益費の償還をさせることができるというふうな
原則がございますのに対応いたすものでございまして、併しながら、第四項におきまして、その
金額を一遍に納めることができない場合もございましよう。そのために七年以内の
範囲でこれの延納を認めようではないかというのが第四項でございます。これは現在、この
通りにやつて来て処理して来たものでございますが、今後もやはりこういつたことが必要ではないかと存ずるのでございます。第十二條におきましては、こういつた
返還をいたします際に、
原状に
回復しないということに対して不服もありましようし、又それに対する
損失の
補償或いは
利得の納付ということについての不服もありましようが、これにつきましては
総理大臣に対して不服の
申立をすることができるということにいたしまして、
所有者或いは
関係人の
保護をしたわけでございます。この
使用に関しまするいろいろな
補償につきましては、若し
協議が整いません場合には、
收用委員会にかけるというのが
土地收用法の
原則でございますが、この
使用の済んだ
建物、
土地等を
返還いたします場合に、この二十
一條にありますような
補償なり、
利得ということにつきまして
協議の整わない場合には
收用委員会にかけるように
なつておりません。そこでこれは
総理大臣に対しまして不服の
申立をすることができるというふうにしまして、ここで救おうということでございます。そこで
総理大臣は、この不服に対しまして
裁決をしようとするときには、
中央調達不動産審議会の
意見を聞かなければならないというのが第二項でございまして、現在
調達庁設置法によりまして、
中央調達不動産審議会というものが設けられておりまして、いろいろ借
上料の
基準等につきまして、ここで
意見を聞いて
長官が決定するということに
なつておりまするが、その
機関を利用いたしまして、民主的にそういつた不服に対する
裁決をしようということでございます。第 十三條は
引渡調書と
なつておりますが、これは
土地收容法にはこういつた細かい
規定はございません。と申しますのは、大体
收用を主としたような
土地收用法の
建前でございますので、それを
返還いたしまする場合に細かいことは
規定してないのでございますが、
駐留軍に対しまする
土地等の
提供につきましては、軍としましては必要な
期間だけ使うというのが
建前でございまして、やがてそれを返すのであるということが
原則に
なつておりますので、この
返還をいたしますときの
規定をやや詳細に設けなければならんというのがこの
趣旨でございます。従いましで、
土地收用法におきまして、
土地を
使用するときに
土地の
調書でありますとか、
物件の
調書というようなものを作るのでございまするが、それをこの
駐留軍によりまする
土地等の
使用につきましても、そのまま採用しておりますが、
返還をいたしますときにそれに対応する
調書がございませんので、それがこの
引渡調書ということになるわけでございます。そこで
土地等を
返還いたしまする場合には
引渡調書を作ること、それにはどういう
事項を記載しなければならないかというようなことにつきまして
規定したのがこの
條文でございます。
それから第十四條は、これはこの
法律が
土地收用法に対する
特例法に
なつております
建前上、この
條文によりまして、この
法律に特別の定のある場合はすべて
土地收用法の
條文をそのまま使うのだ、ただその場合にいろいろ
事業の名称でありますとか、「
起業者」と言う代りに「
調達局長」と読むとか、いろいろそういつた読み替えがございますが、そういつた点、それから
收用法の中で要らなくな
つた規定もございます。例えば
事業認定に関する
規定でございますとか、いろいろ一般のの
土地收用の場合にだけは必要があるけれども、そういつた
駐留軍に対しまする
土地の
提供には必要がないというような
條文がございますが、そういつたものを除くというようなことを書きまして、それ以外は全部適用するのだということを細く書きまして、
混乱を防いだわけでございます。この細かいことに関しましては、いずれ技術的な
事項といたしまして、政令で読み替えの
規定を作るというのが第二項でございます。
以上が
本文でございますが、附則といたしまして、相当重要な事柄を経過的に定めてあるわけでございます。第
一項「この
法律は、
日本国と
アメリカ合衆国との間の
安全保障條約の
効力発生の日から施行する。」、これは当然のことでございます。
第二項はいささか問題でございまして、現在
連合国軍最高司令官の要求に基いて
使用中の
土地等についてはどうするかと申しますと、これは大体條約
発効後九十日間はなお
占領軍として残ることができるということが
平和條約第六條にございますので、一応この九十日間は
在来の
契約をそのまま延長いたす
手続をとりました。従いまして條約
発効後九十日間は
在来と同じような
契約で引続き
使用いたしておるわけでございますが、その間にいろいろこの新らしい
法律によりまして、或いは自由な
契約等の
交渉を始めるわけでございますが、何分にも
契約件数等非常に多量でございまして、今度自由な
契約の
交渉をいたしますにつきましても、或いはこの
法律によりまして
所定の
手続を踏むにつきましても、非常に慎重な考慮並びに
手続は踏まなければならん。そのためには相当な日数が要りますので、これを又あわててやりますと、
最初に
占領後初めて接收いたしました時のような非常に
混乱状況に陷りまして、
所有者、
関係人等の
権利等が非常に
混乱状態のうちに必ずしも適正に
保護されないというような
状況に鑑みまして、やはりどうしても九十日以後六カ月間だけはそういつた日にちを、
猶予期間を頂戴いたしませんと、実際に技術的、物理的にその処置が困難であるという
意味におきまして、九十日以後六カ月間だけはなお一時的に使うことができるのだということを
規定したのが第二項でございますが、勿論
政府といたしましては、九十日以内、或いはこの六カ月の間にあらゆる
努力を拂いまして、
個々の
契約の点につきまして新らしい
任意契約をし、或いはいけなければその場合にはどうしても六カ月間だけは一時
使用するということにして頂きませんと……この六カ月の間におきましてそういつた
契約の成立しないものにつきましては更に
契約の成立、或いは今度はこの
法律の
本文によりまするところの細かい詳細な
手続を始めて、六カ月を越えましたならば
本当の自由な
契約か、或いはこの
法律の
本文の
手続を経た
使用によるか、いずれかになるわけでございます。なお、
行政協定の
交換公文によりますると、
協議の整わないものにつきましては、引続きそのまま使うことができるということに
なつておりまして、それにつきましては別に
期間の定めがございませんので、
協議が整いませんと、ずるずると相当長い
期間使用されるということも懸念されるのでございますが、それを無制限に一時
使用ということではなりませんので、
政府といたしましては、六カ月の間にあらゆる
努力を拂いまして、自由な
契約、或いは新らしい
法律によります正当なる
使用ということに
努力をいたしたいと存じまして、その
猶予期間がまあ六カ月間、その間止むを得ず一時的に使うことができるというふうに
規定いたしたわけでございます。併しながらその
使用に関しましては第三項にございますように、自己の
見積つた損失補償額を前以て拂い渡すということもございますし、又第四項によりまして、そういつた
損失は
土地收用法によりまして、
通常の
使用の場合と同じように
補償をしなければならん。つまり後の清算といたしまして、一応
損失補償額は前渡しはいたしますけれども、
見積つた損失補償額でいたしますけれども、
通常の
方法によりまして計算いたしました
補償をしなければならんというのが第四項でございます。
第五項は、従いましてあらかじめ
見積つた損失補償額というのはその場合は内拂として差引くのだということが書いてございます。
而もなお第六項におきまして、そういつた一時
使用の
損失補償につきまして
協議が成立しない場合には、
收用委員会に対し
裁決の
申請ができるということで、
愼重に
保護の
方法をいろいろ考えているわけでございます。
第七項は、そういつた一時
使用の場合においてその
使用期間が満了したときは返さなければならんというのは当然のことでございます。
第八項は、その場合に
所有者はやはり
土地等を
原状に
回復の
請求ができるのでございますけれども、この場合にはやはり先ほど申上げましたように、
原状に帰らないで返すこともできるし、又その場合には
補償し、或いは
利得を納付させることができるというのが第八項、第九項の
規定でございます。
第十項は、この
法律によりまして、
調達庁設置法に影響がございますので、
設置法に
中央不動産審議会に関しまして、更に先ほど申上げましたような「
内閣総理大臣の諮問に応じ、
意見を述べることができる。」という権限を一つ與えましたわけでございます。
以上
大変簡單でございますが、一応問題の
所在を申上げまして御
説明に代えたわけでございます。