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1952-02-20 第13回国会 参議院 決算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十日(水曜日)    午後一時三十五分開会   —————————————   委員の異動 二月十八日山本米治君辞任につき、そ の補欠として山田佐一君を議長におい て指名した。   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     岩男 仁藏君    理事            高橋進太郎君            長谷山行毅君            飯島連次郎君            小酒井義男君            棚橋 小虎君    委員            秋山俊一郎君            大矢半次郎君            郡  祐一君            瀧井治三郎君            團  伊能君            西山 龜七君            溝淵 春次君            山田 佐一君            伊藤 保平君            高木 正夫君            藤森 眞治君            溝口 三郎君            森 八三一君            栗山 良夫君            小林 孝平君            森崎  隆君            カニエ邦彦君            小林 亦治君            田中  一君            菊田 七平君            紅露 みつ君   事務局側    常任委員会専門    員       森 荘三郎君    常任委員会専門    員       波江野 繁君   証人            三浦 義男君            大橋 武夫君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○特別会計政府関係機関及び終戦処  理費の経理並びに国有財産の処理に  関する調査の件  (昭和二十三年度会計検査院決算検  査報告批難事項第三百九十七号足利  工業株式会社に対する二重煙突代金  支払及びこれに関連する事項)  (右件に関し証人証言あり) ○証人喚問に関する件   —————————————
  2. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 只今より会議を開きます。  本日は前回に引続き、昭和二十三年度一般会計歳入歳出決算昭和二十三年度特別会計歳入歳出決算、そのうち昭和二十三年度決算会計検査院検査報告批難事項第二百九十七号足利工業株式会社契約当時は足利板金工業組合)に対する二重煙突代金支払及び之に関連する事項について東京地方検察庁検事正からの報告に関する件を議題に供します。本日出頭証人大橋武夫君及び三浦義男君の両名であります。大橋君は前々回に御出頭になりまして宣誓をせられましたが、念のため本日も宣誓を求めます。  証言を求める前に各証人に一言申上げます。昭和二十二年十二月二十三日公布になりました議院における証人宣誓及び証言等に関する法律によりまして、証人証言を求める場合にはその前に宣誓をさせなければならんことになつております。宣誓又は証言を拒むことのできるのは、只今申上げました法律の第四条の規定に該当する場合に限られております。なお証人が正当の理由なくして宣誓若しくは証言を拒んだときは三年以下の禁錮又は三万円以下の罰金に処せられ、且つ宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは三月以上十年以下の懲役に処せられることになつておるのであります。一応このことを御承知になつて頂きたいと思います。これより法律の定めるところによりまして、証人宣誓を求めます。総員起立を願います。大橋証人から宣誓書を朗読して下さい。    〔総員起立証人は次のように宣誓を行なつた〕    宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 大橋武夫
  3. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 三浦証人。    宣誓書   良心従つて真実を述べ、何事もかくさず、又、何事もつけ加えないことを誓います。         証人 三浦義男
  4. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 御着席願います。宣誓書に御署名、御捺印を願います。  ちよつと申上げますが、最初に三浦証人から証言を求めます。大橋証人暫らく休憩室でお待ちを願います。
  5. 小林亦治

    小林亦治君 証人にお尋ねしたいのですが、山下某大橋自動車売却した、その売却代金特調に納めることなくして、これを山下が流用してよろしいと、そういうことの相談証人があずかつておるという事実があるのですか、その点を概略お聞きしたいと思います。
  6. 三浦義男

    証人三浦義男君) 山下某の話は私の関知しないことでありますが、自動車売却して、それを過払のうちに入れろという話は私どもも関知して、その計画書を作らせてそれを実行したのでありますが、それをやつております間に、実はこの自動車は、山下という話が出なかつたと思いますが、とにかく大橋さんのところでこれを運用して、それを幾らでも多く特調に入れるために運用しておるのだと、そういうことだから一つ了解をしてくれないかという話がございまして、それは私一存ではそういうこともきめられませんので、事務当局とも、又総裁、副総裁とも相談いたしまして、それではそういうふうにきめようじやないかということを申したと思います。
  7. 小林亦治

    小林亦治君 運用しておるんだということになると、すでに運用しておつた後に御相談があつたのか、売却金がこれだけできた、この金を運用するんだということであつたのか、その点をはつきりおつしやつて頂きたい。
  8. 三浦義男

    証人三浦義男君) それは売却をして、新らしい車を買つてから後の話だつたと私は記憶しております。
  9. 小林亦治

    小林亦治君 そうすると、証人はこれに承諾を与える前に総裁と副総裁に御相談になつた結果なんですか、それとも証人個人同意を与えたのか、その点をはつきり伺いたいのです。
  10. 三浦義男

    証人三浦義男君) それは私個人でそういうことをとりきるわけには参りませんので、川田君とも又総裁、副総裁とも相談をして、そういうことも止むを得ないだろうということになつたと存じております。
  11. 小林亦治

    小林亦治君 売却金というものはこれは直ちに特調に申受けなければならん性質のものと考えるのでありまするが、そうしまするというと、その金を運用して利益を上げ得るということについては、総裁も副総裁証人も、この大橋並びに高橋という連中をまあ人間的に信用ができた上でそういう同意を与えたのかどうか。
  12. 三浦義男

    証人三浦義男君) 売却代と申しますか、私どもがその話を聞きましたときには、前の自動車は売りまして、新らしい自動車が買入れられておつたと思います。それから又今お尋ねの、勿論大橋さんも信用いたしまして、又田中平吉も信用いたしまして、私どもはそういう計らいをしたわけであります。
  13. 小林亦治

    小林亦治君 そこでその金が特調に入りましたか。その結果その売却代金特調に入りましたか。
  14. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私が在任中には全部入らなかつたと思います。併しその後聞いてみますと、入つたという話でございますので、私はそう存じております。
  15. 小林亦治

    小林亦治君 証人特調をおやめになつたのはいつ頃ですか。
  16. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私監事の職をやめましたのが二十四年の六月でございます。それ以来十一月までは顧問として残つておりました。
  17. 小林亦治

    小林亦治君 当証人に関する私の質問は以上であります。
  18. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 少し遅れて参りましたので質問がダブるかと思いますが、この前の証言にもあつたかと思うのですが、高橋、それから田中その他の人人が、大橋さんも入れて、そうして自動車売却代金を運営すると、そうしてこれを殖やして、そうして特調に納めるというようなことを、三浦証人がそれを承諾をしたと、こういうことになつておるのですから、そこで承認をしたということは、いつ頃どういうような話合で御承認をなさつたのかということ、なぜ私はそういう疑問が起きて来るかというと、高橋並び本件関係者が国に大きな損害を与えておる、そうしてその過払の四千万円という金は、これはどうしても特調支払わなければならない金であるということ、それからこれを多く取込んでおるために、従つて田中にしても、高橋にしても、何らそこには損をしていないと、そのときは……、にもかかわらず高橋生活を見てやるというようなことを約束の中に入れておられる、その点がどうもおかしい、四千万円の過払はとつておるし、それまでに相当な金は支払を受けておる、そうしてなお且つその余分には、政府から当時もらつた資材であるとか、資材の中には薄鉄板或いは石綿、こういうような貴重品を当時横流しをして、そうしてまだそのほかにも金を儲けておるというような実情にあつたのであります。のみならず、高橋のごときは、どこかの湖水にモーター・ボートを浮べて女子を連れて絶えずそれで乗り歩いておつたとか、或いは二号、三号、四号というようなものを次から次からあさつてつておると、こういうような行いをして来たんですね。特調のこの金をもらつたやつで、ごまかしたやつでそういうことをやつていた、そういう人間に対してですね、生活を見てやるためにというようなことをですね、一体大橋君なり、あなたがたの間で話合をされてきめられたというようなことは、どうも理窟に合わないんじやないか、特調最高幹部としてのあなたがですね、そういうことを了承されるはずがないんじやないかという感じを受けるんです。仮に了承されたとしましてもですね、そういうような経過を辿つて、そうしてその過払い返済至つたのでありますから、なおその何はさて措き、全部取上げるということのほうが、これがあなたとしてはなされるべき仕事でなければならないのにかかわらず、そういう条件を認め、且つ又それを運営することを認めたというようなことはですね、どうもそこに大橋君なり、或いは高橋さん、あなたがたの間において、一つの馴れ合いのようなことをなされたような感じを受けるんです、我々としては……。そこで実際はどういう事情でそんなことになつて来たのか、それから認めたということはどの範囲に、どういう条件を認めたのか、仮に運営するということを認めたといつても、それが一年なのか、二年なのか、三年なのか、永久に認めたということになり得るのか、或いは金額にいたしましても、百万円は特調にこれは当然返してもらつて、そのほかに利益があつたなれば、これは徐々に返してもらうというような約束なのか、その点がはつきりいたしませんから、ここであなたからですね、その間の事情一つ、私たちが納得の行くようにお話を願いたい、こう思うんです。
  19. 三浦義男

    証人三浦義男君) 只今お話誠に御尤もだと思うのでございますが、何せ高橋と申しますか、足利工業の資産の状態を当時事務当局が行つて調べて見、又銀行関係なんかも調べて見ました結果は、もうその前の特調から受取つて行きました金は、殆んど旧債に使われて、ないというような報告を私どもが聞きました。又それがそうなりますというと、何としてでもこの多くの金をまあ取上げなければならないというような考えが相当強くなりましたので、殊にそのときには金はもう持つておらない、物に変つているというような状態でありましたので、それではもう止むを得ないから、それを少しでも多く納めさせるために多少の間の期間はかしても止むを得ないじやないかというような気持であつたのであります。それから又いつそれでは返済すべきかということでありますが、それは当時特調から足利工業に向つて支払うべき金も相当ございました。又金の何と申しますか、決算と申しますか、そのほうが余りはかばかしくございませんので、私が在任中にはどうも回復しそうもございませんでしたので、恐らく今のまあそういう了解を与えたという時期は六月の初旬頃ではなかつたかと思いますが、それでその特調から支払います金との時期とも睨合せまして、私どもは二月なり、三月なりというくらいの期間考えておつたのでございます。それは一年とか、二年とかいうような長い期間考えておつたのでは毛頭ございません。
  20. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 そうすると、それは長い期間考えておつたのではないと、川田氏の証言では大体その次の車ですね、モーリスを売つて、その次の車がもう一カ月ほどすれば売れるから、その売れる間、それが売れれば百万円は当然返してもらうんだというようなことを言われておつたのです。併しそれは百万円返せばいいのであるのか、或いはモーリス売上代金或いはそれによつて利殖をした、儲けたという金をも特調に返すという約束になつてつたのか、その点はどういうことになつてつたのですか。
  21. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私は最小限度百万円の金、で、若しそれが多少でも利潤を生めば、それは勿論私どもがそれを扱つているわけじやありませんから、正確にどれくらいのものが出るかわかりませんが、利潤が出れば、それを納めてもらいたいという気持でおりました。
  22. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 本件のこういつた話合のもとは誰からあなたに話込まれることになつたのですか、経路としては……。
  23. 三浦義男

    証人三浦義男君) それは初め高橋が参りまして、そういう話がございました。それから併し高橋だけの話では私ども実際車がどこにあるかもわかりませんものですから、それを大橋さんに確めたところ、自分のほうで預つておるというので、大橋氏にもその話を受けました。
  24. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 そうすると、その話を最終的におきめになつたのは、誰と誰とがおつて、どの席上でおきめになつたのですか、そういうことは……。
  25. 三浦義男

    証人三浦義男君) その席上と申しますか、これは私の監事の部屋であつたと思います。その席上には大橋さんもおられましたし、高橋もおつたと思いますし、それから勿論川田君もおりました。田中平吉はどうだつたかはつきりいたしません。
  26. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 自動車売却の当時の状況については今のお話で大体わかりましたのですが、その前のことで二、三お聞きしたいことがあります。この足利工業に対する過払いがあるということを発見したのはいつでございますか。そうして如何なる経過でそれを発見したか。
  27. 三浦義男

    証人三浦義男君) 過払いは二十三年のぎりぎり暮に迫つてから払われたと思います。それを発見いたしましたのが一月に入りまして十日前後じやなかつたかと思います。その発見された経路と申しますと、私はその十日前後までは一切その問題に関係しておりませんのでありましたが、副総裁から呼ばれまして、こういう事実があるのだか、君調べてくれないかという話がありました。ところが私もともとそういう事務的の才幹がありませんものですから、殊に私技術屋なものでそういうことには今まで関係がなかつたものですから、私はそれは困る、もう少し練達の士にやつてもらつたらいいじやありませんか、殊にあなた自身がやつたらいいじやありませんかと申上げたのでありますが、中村総裁は、私はデーリー・ビジネスで忙しいから、とにかく君調べてくれという話で調べたのであります。その発見された動機と申しますのは、中村総裁が、どうもこういう事実があるようだから調べてくれというので、私が発見したわけではございませんでした。
  28. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 この二千百万円の過払というのは足利工業という法人に対する過払であつて、この回収法人であるその会社から回収すべきだと考えらるるのでありますが、ところがこれは実際には社長である田中と、それから専務である高橋との私財を提供して回収金に充てるというふうなことになつたわけですが、その間の事情はどういうことでそういうことになつたのですか。
  29. 三浦義男

    証人三浦義男君) 勿論法人から取上ぐべきものであると私は思います。その当時自動車なり、或いはオフイスなり、或いは寮なりというものは、私ども高橋個人のものであるとか、田中個人のものであるとかということは毛頭考えませんで、これは会社のものであるというふうに考えておりました。それから会社の、先ほどもちよつと触れましたが、財政状態を見てみますというと、もう会社財産というものは、そうあるということが認められませんものでしたから、あとでわかつて来ましたのでありますが、その個人の名義のものであるという株なり、或いは自動車なんというものも個人補償という意味で以てそれを回収しようと思つたわけであります。
  30. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 会社財産がない、そしてその会社財政がはつきりしてないので、専務社長私財になつてつたというふうな考えらしいのでありまするが、その際にその私財をも提供して回収金に充てるということを快よくこれらの人がたが申出たのか、それともそれに関して何か奔走、努力してそういうふうなことになつたのか、その点を伺いたいと思います。
  31. 三浦義男

    証人三浦義男君) ちよつとお尋ねいたしますが、奔走しましたというのは、どちらが奔走したのか、要するに私どもが奔走したかということですか。
  32. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 あなたが奔走しても、或いは又他の第三者がやりましても、その間の事情をお伺いいたしたいと思います。
  33. 三浦義男

    証人三浦義男君) それは実は私がもう洗いざらい君たちの持つておるものを出してくれというようなことを申しましたところ、田中平吉高橋が、実はこういうものがございますということで持つて参りましたので、それが返済契約として組まれたわけであります。
  34. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 特調では、その当時足利工業顧問である大橋さんに、この回収についてよく行くように努力してくれという依頼をしてあるのですが、その際に大橋さんが、この両名についていろいろ納得させるために骨折つた事実がありませんですか。
  35. 三浦義男

    証人三浦義男君) それは大橋さんが非常に骨を折つたようでございます。
  36. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そこで高橋は当時あなたのほうへの交渉では、この二千万円の過払の分については田中社長のほうに送金してあるので、これは殆んど田中が全部使つてしまつて自分としては何らこの過払については納める義務がないのだというふうな話合いをあなたのほうに持つて行きませんでしたか。
  37. 三浦義男

    証人三浦義男君) 一応そういう話を持つて参りました。
  38. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 そういうことからいたしまして、高橋私財を提供する際には、先ほどの自動車の問題ですが、その売つた金のうちからそれが利殖されれば、それを高橋生活費に当てようというふうな気持でそのとき約束されたのではありませんか。
  39. 三浦義男

    証人三浦義男君) 高橋が私にそういうことを申したことがあつたと記憶いたします。併し私は高橋生活は保障する、そういうものから生み出したもので、保障するという考えはございませんでした。
  40. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 その後でありますか、会社特調との間に和解調書を作つておりますが、その経過はどうですか。
  41. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私はその和解調書のときにはもう全然関係を断わつておりましたので、その後は存じませんのでございます。その問題につきましては。
  42. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 これはあなたが特調をやめられてからの分もあるのではつきりいたさないかも知れませんが、我々の調査するところでは、これに対しまして八百数十万円特調に納めているというふうな調査になつておりまするが、それについてあなたは知つておりませんですか。
  43. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私その問題については存じておりません。
  44. 栗山良夫

    栗山良夫君 只今三浦証人は、高橋君の生活費自動車売却代金によつて見てやるようなことは毛頭考えていなかつた、こういう御証言でございました。実は一昨年、二十五年の十二月六日、大橋君がここで証言をせられましたが、その証言の中にこういうことがございます。それは、質問のほうは、自動車売却代金がすぐ特調へ納付すべきものではなかつたか、こういうような意味質問に対しまして、当時の大橋法務総裁が答えておられるわけであります。その中に、この自動車を売つた金はすぐ特調に返すということも、これだけは確かに確実に返りまするが、併し高橋というものの生活考えてやらなければならない、又将来高橋が或る程度事業を継続いたしまして、そしてその利益によつて一刻も早く全額返済ができるようにしてやらなければならんということも考えなければならん。そこで又高橋田中の、先ほど申上げましたように、おれのほうは先に払わなければならんというのは損じやないかといつたような気持もあります。そこでそこらを睨み合わせました結果、その際に一部は納入してあると思います。確かにその三十万円というのは、その百万円のうち、先ほどの現金で何回かに分けて納入されたと思いますが、これから先が重要なんですが、併し成るべく高橋のためにその金が有効に利用されて、そして高橋全額返済するについて役に立つようにしてやりたい、これは当時調達庁関係者一同考えました、相談の結果これが最善の方法であろうという結論になりまして、そこでそういう通知がとられるに至つたわけであります。こう述べておるのであります。このことは結局自動車代金大橋君が管理をせられて、高橋君と完全に絶縁をいたして、そうして利殖図つて特調に納めるというのではなくて、飽くまでも高橋君の生活費或いは高橋君の事業資金にも見てやろうという意思がはつきり述べられておるわけでありますが、当時の調達庁関係者一同考えました、完全に意見が一致しましたとありましたが、あなたは当時これに御関係されておるわけではございませんか。
  45. 三浦義男

    証人三浦義男君) どうもその点私はつきりいたしませんでございますが、そういうような協議はしなかつたと思うのですがね。
  46. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 その点ですが、これはまあ長谷山君の今の御質問にも、証人高橋生活を見てやるというようなことまで承認をしたことはないということを言うておられるのですが、併し片一方大橋君の言葉によると、そういうことも特調側としては承認をしておるというのです。それからもう一つお尋ねしたいのは、自己負担分くらいは、自己負担分というのは田中平吉ですが、田中平吉特別調達庁に対する自己負担分を納めるに応じて、右自動車売却代金中よりしまして、百万円を同庁に納入するのだというような約束承認されたかという点が一点、それから今の、そのときに高橋生活費等に充てる、利殖をして充てるというようなことを承認されたかということ。これで二点。この点はあなたはそういうような話に対して御承認を与えたという記憶なのですか、そんな承認は与えないということなのか、どちらなんですか。
  47. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私はそういうことに対して的確な承認を与えた覚えはございません。
  48. 溝淵春次

    溝淵春次君 一、二だけ。二千二百万という過払いになりました金ですね、それは誰が使つた、その金の行方、あなたが先ほど供述の中に、丁度過払いが二十三年の暮で、発見したのはその翌年一月の十日頃だということでありましたが、その二千二百万の過払いになつている金は、誰の、例えば預金になり、その金をどういうふうに使つたかということを、あなたは特調監事をなさつておられましたが、そういつたことをお調べになり、経路はおわかりになつたでしようか。
  49. 三浦義男

    証人三浦義男君) 二千二百万円の過払になつた金がどういうふうに使つたものかということは、私先ほど申上げたと思いますが、これは高橋正吉のと申しますか、会社借金と申しますか、そういう借金返済に充てられたということが足利銀行をお調べに行つたものの調査によつてわかつたものと記憶しています。
  50. 溝淵春次

    溝淵春次君 その借金田中社長借金ですか、高橋の……どちらですか。
  51. 三浦義男

    証人三浦義男君) 私はそれは田中平吉借金ではなかつたかと記憶しております。
  52. 溝淵春次

    溝淵春次君 なお二千二百万という金は相当な金なんですが、特調がこういう大切な金をお渡しになるときに、もう少し用意周到にせられておればそのような大金が過払いとして間違いを起すことはなかつたと思うのですが、特調として何かこれについての欠陥でもあつたのでしようか。
  53. 三浦義男

    証人三浦義男君) その今のお話欠陥云々につきましては、私支払われるまでの経過につきましては、後調べたところでは何も印鑑なり、何なりについての問題はなかつたと思いますが、その支払われるまでの経過につきましては、私関知しておりませんので、お答え申すことはできませんでございます。
  54. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 今の溝淵君の御発言ですが、過払いは二千万円でなくて、過払いは四千数万円、ところがそれがやかましく言つて取立てて結局二千万円になつた、こういう事実であろうと思うのですが、その点はどうかということ。それから今日もお話になりましたが、過払いをするとき、金を渡したときの状態をその後よく調べて見ますると、これは年末の十二月の二十八日の日に、この日に支払われている。ところがその日に手続が、いろいろな伺いから、決裁から、支払いから全部がその一日で行われてしまつている。ところが当時の特調事情はなかなか金を払わないので有名なんだ。金をもらうためには三月も半年もかかつて業者がもう往生したというのが偽わらざる現状であつた。にもかかわらず、この四千万円に限つて、而もそのとき御用終いの十二月二十八日にこの厖大な金が一挙に支払われたということについては何人も疑惑を持たざるを得ない。従つてこの支払の裏には何かあり得るのではないかというような大きな疑惑を持つに至つたというのが我々の考え方であつた。その後特調監事であり、監査役であるところのあなたがお調べになつて、さような疑わしい事実があつたのか、なかつたのか、その点一つもう一度お調べ願いたいと思う。
  55. 三浦義男

    証人三浦義男君) 四千百万円が支払われたのは、これは全額でございまして、その中にはもうできておつたものもございますし、結局四千四百万円になつたというのであります。それから一日の間にそれだけの金が支払われたのは非常におかしいじやないかというお話でございますが、これは実際私ども特調支払が非常に遅れている、遅れていると言われるのにそういうたくさんの金が一日の間に支払われたということはおかしいじやないかという気持も私が調べておる間に起しました。ただ併し支払の請求なり何なりが起つて来ておりますのは相当前からのことでございますので、まあ金が支払われますときにはもう一挙に支払われるのが当り前なのでありまして、要求なり、それから請求書と申しますか、そういうものは相当同じような種類が来ておりましたので、だんだん調べて参りますというとこれも年末の金なんだから止むを得なかつたのだろうなというようなことになつたのであります。
  56. 栗山良夫

    栗山良夫君 質問を伺つておりますと、一昨年以来努力して相当明らかになつたことが、重複しておるような点もあるように思いますからこの際三浦証人の退席を願いまして、大橋証人にお尋ねしたいと思いますが。
  57. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 帰つてもいいわけですか。
  58. 栗山良夫

    栗山良夫君 いや退席を願うのです。
  59. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 別に御発言もなければ三浦証人に暫く退席を願つて、引続き大橋氏に証言を求めることにいたしたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) さように決します。暫く三浦証人に御退席願います。  ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  61. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) それでは速記を始めて下さい。
  62. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は大橋証人に一昨年の十二月六日の御証言に関連をいたしまして、その後若干疑義を持つておりまする点がありまするので重ねて証言を求めるわけであります。  先ず第一点に大橋証人只今問題になつておりまする足利工業関係者である田中社長或いは高橋正吉君或いはその他の諸君から、前回御証言になりました三十万円の顧問料、選挙の当時高橋個人から受取られた二十万円の金額以外に金品の収受をせられておる事実はありませんかどうか、この点を重ねて伺うわけであります。
  63. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 前回の証言の際に、二十四年の一月高橋が二十万円を持参したことを申上げました。そのほかには昭和二十二年から二十四年の春までの間に三十数万円を受領いたしておるということを申上げたつもりであります。
  64. 栗山良夫

    栗山良夫君 私は前回あなたが証言せられたことは承知をいたしておるのでありまして、それに基いて重ねて当時の証言以外に収受をせられておる事実はございませんかということを重ねて伺つておるわけであります。
  65. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 只今の御質問はこの会社関係以外の問題をも含めてのことでございますか。
  66. 栗山良夫

    栗山良夫君 それは冒頭に申上げました通りに、足利工業に関連する田中高橋その他の人々から会社或いは個人を問わずそういうことをせられた事実がありますかどうか、これを伺つておるわけであります。何故さようなことを申しますかと申しますと、この足利工業は私ども調べましたところによりますると、会社個人との関係は極めて不明瞭なものでありまして、経理関係においてもその他においても極めて漠然といたしておりまして、これは取締当局においても調査の結果高橋田中会社のようである、個人会社のようであると指摘をせられておるほどであります。従いまして、私は今申上げました質問の要点に従つて証言を求めるわけであります。
  67. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) よくわかりました。前回申上げてありまする通り、顧問料といたしまして昭和二半二年の四、五月頃三万円を一回でしたか、二回でしたか受領をいたしたことはございます。それから六、七月頃に高橋から三十万円受領いたしたことがあります。それから二十四年になりまして、二十四年の春から私は自然会社顧問ということはやめておりましたのでございまするが、二十四年の暮頃でありまするか、高橋が一回数万円を持参いたしたことはございます。それだけでございます。
  68. 栗山良夫

    栗山良夫君 実は去る二月の十五日高橋証人をここへ御来席願いまして証言を求めたのでありますが、そのときに高橋証人はこういうことを述べておるのであります。顧問料の三十万円、この顧問料の三十万円は、只今大橋証人が言われましたことは、前の証言と若干違うようでありますが、それは又後ほど質すといたしまして、三十万円、それから選挙のときの二十万円と合わせまして、総額百万円に満たない額において、一回において一万円、二万円、或いは五万円というような額を相当何回も回数に亘つてあなたに贈つております。こういうこと並びに、前回の証言におきましては、いわゆる饗応と申しますか、饗応は取消をいたしますが、飲食を共にしたというようなことも、ただ弁当を食べた程度でないということをおつしやつておるのでありますが、高橋君は当時の社会通念に基いて、昼食程度でなくて相当共にいたしたということを述べております。それで而も具体的な事例としては、そのうちの一回の五万円のごときは、国会においてこれを手渡しをいたしました、更に具体的な細かいものについては目下自分考え直しをいたしておるので資料を提出いたしたい、こういうことを述べておるのであります。従いまして、あなたの只今の御証言はいささか高橋君の証言とは違うようでありますが、確実にあなたの只今の御証言は間違いないのかどうか、この点を念のためにもう一度追及をいたします。
  69. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 極めて高橋君の証言せられたことは漠といたしておりまして、百万円に満たざる金額と、こういうふうに言つておられまするので、それで果して高橋君が言つておりまするのは、一体金額が総額幾らになるのか、又その金がどういう機会に私に渡つたかということを的確に確めませんと、私としてもはつきりしたことを申上げかねるのでございますが、私の只今記憶いたしておりまするところは、或いは先ほど申上げましたるごとく二十三年の六月頃であつたと思いまするが、三十万円を高橋から受領いたしたことがございます。その以前に会社から一、二回三万円ずつもらつた記憶がございます。それから事件が起りまするまで私は金を受領いたしたことはございません。  それから仰せのこの饗応ということでございまするが、社会通念上飲食を共に、普通のお弁当を一緒に食べる以上の饗応をいたしたということでございまするが、どの程度を言つておられるのか私はわかりませんが、少くとも待合に行くとか或いは芸者を侍らせるとか、そういうふうな工合で饗応を受けたという事実は記憶いたしておりません。それからその後におきまして昭和二十四年の暮でございましたか或いは春でございましたかの間でございまするが、全然私が会社関係しなくなりました後に、又高橋自身も会社関係をしなくなりました後に一、二回数万円を受取つておるという記憶がございます。
  70. 栗山良夫

    栗山良夫君 百万円に満たない額というのは当時、当時と申しますか、二月十五日の我々の受けました印象では、もう五十万円というのははつきりいたしておるわけでありますから、従いまして百万円に近い額であると、こういうふうな、これは印象でありますが、印象を受けたわけであります。これは念のために私は申上げておきます。  そこで只今証人お話によりますと、はつきりとどこでいつ幾らをというようなことを提示しなければ自分は述べられないと、こういうようなことをおつしやつたわけでありますが、然らば只今の御証言においては、この程度の事実以外にはないということを前提として、さような意味でおつしやつておりますが、高橋君が具体的に只今あなたが要求されたような内容によつて提示をいたしましたときには、それを事実であつたならばお認めになりますか、それをお伺いいたします。
  71. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 只今私が記憶いたしておりまするには、それ以外に思い当るところはございません。
  72. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしますと、只今述べられただけでも、一昨年の十二月六日の日にこの席であなたが述べられた証言とは違うわけであります。先ず第一に私はその速記録を読み上げます。質問には、「確かに顧問料は三万円というものをもらつた。そのほかに田中平吉高橋個人、或いは又会社等から金品を受取つたことがあるかないか。或いは又金品ではないが、併しそうすると今度は飲食いたしたことがあるだろう、その点はどうですか。」という質問に答えられまして、「会社へ行つておりまする際は、たまたま長くおりまして、昼食のときなどになりますと、弁当を取寄せて食べるというようなことは数回あつたと思います。それ以外に会社から金品を受けたことはありません。なおそれでは個人としての」云々と、こういうことになつております。当時あなたが証言せられました、金品はこれ以上受けたことがないという、この金品に対しましては、二十五年の暮か春頃に一、二回に亘つて数万円受けたというのは入つておりません。これは質問には「田中平吉高橋個人、或いは又会社等から」と、非常に広い意味になつておるわけであります。この質問に対して、「ありません」と言われて、その「ありません」のほかに、二十五年の暮或いは春頃であつたか、一、二回数万円受けておると、これは証言にないわけであります。それから又顧問料の点におきましても三万円を一、二回もらつた、三十万円を一括してもらつた、二十四年に一回数万円をもらつたと、そういうようなことは前回の証言とは違います。この点は、あなたが最後に念押しをいたしまして、それ以外に会社から金品を受けたことはないかという質問に対しまして、当時の証言とは違うわけであります。いずれが正しいのか、これを明らかにして頂きたいと思います。
  73. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 只今私の申上げたことが正しいのでございます。成るほど一昨年の御質問に対しましては私は会社からはこれ以外に受取つたことはないと、こう申しておりますが、事実会社から受取つたと私が了解いたしておりましたものは前回申述べた通りでございます。只今附加えて申上げましたのは、会社をやめました後におきまして高橋が私のところに持参したものが数万円あると、これだけが前と違つて新らしく申上げた点であります。
  74. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういたしますと、前回の証言は間違いであつたということをお認めになるわけでありますか。
  75. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 会社から受けたものはそれ以外にないということを前に申上げてございまするが、その点は間違いではないと思います。
  76. 栗山良夫

    栗山良夫君 私が申上げておりますのは、これはカニエ邦彦君の最後のところの質問になるわけでありますが、もう一度申します。「その辺で大体わかつたんですが、そうしますると、確かに顧問料は三万円というものをもらつた。そのほかに田中平吉高橋個人、或いは又会社等から金品を受取つたことがあるかないか。或いは又金品ではないが、併しそうすると今度は飲食いたしたことがあるだろう、この点はどうですか。」こういう工合に非常に広い分野に亘つておる。会社高橋個人田中平吉等を含めて言つておるのであります。それに対してあなたが、「それ以外に会社から金品を受けたことはありません。」こうはつきりと証言をしているのであります。今あなたは、会社と限定をして当時証言をしたように言われておりますが、私どもが聞くときもさような気持質問したのでありませんが、このやりとりは相当長く亘つておりまして、最後にカニエ邦彦君がさような質問をいたして私どもは当時了承をしておつたわけであります。従つて今のあなたの御証言では承服をいたしかねるわけであります。
  77. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 当時の私の証言をいたしましたる際におきまして、おのずからこの時期の問題もあつたわけでございまして、大体私が足利工業顧問をいたしておりました際のいろいろなことが問題になつてつたわけでございまするから、何ということなく時期的に会社顧問をしている際のことの御質問であろう、又案件にいたしましても、足利工業の問題でございまするから、従いましてその間のことを申上げたわけでございます。それ以後におきましては只今申上げましたる通り数万円受取つているということであります。この只今申上げたのが正しいのでございます。
  78. 栗山良夫

    栗山良夫君 会社関係なくなつてから数万円を取られたというのでありますが、それは如何なる意味合の金であつたのでありますか。
  79. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 高橋が新らしく何か仕事を始めて、それで利益を得たので私のところに持参をする、こう申して持つてつております。
  80. 栗山良夫

    栗山良夫君 当時はすでに過払いの問題が、二十五年でありますから表面に出ておりまして、あなたは特別調達庁足利工業との中に入られまして、過払金の返納について国の側に立つてその調達の努力をしておられたのではございませんか。
  81. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私は国の側とはつきりいたしたわけでもございませんが、自分足利工業関係いたしておりました因縁を以ちまして、過払い回収について努力をいたしたわけでございます。
  82. 栗山良夫

    栗山良夫君 そういう足利工業顧問をいたし、会社関係がなくなつてから国の側という問題は、私はここでは論議をいたしません。速記録にその性格がはつきり出ておりますから論議をいたしませんが、少くとも特別調達庁の側に立つて取立に対して努力をしたというのは、あなたはこの前強調せられました。それはなぜ私が記憶しているかと申しますと、足利工業顧問をしておつた当時の重要な人物が、今度は反転をして特調側の取立の役に変るというようなことは、これは一人二役である、さようなことは論理上おかしいじやないか、そんなことは本気にできないことではないかということをあなたに申上げたときに、あなたは、私は誠心誠意特調の取立のために努力しているのだ、こういうことを言われたのでありますが、そういう努力をしている人が、国に穴をあけている会社から、利益金が出たというので数万円を二回に亘つてもらうこともちよつとおかしいと思いますが、何のためにもらわれたのか、その点はつきり私は了承いたしかねるので、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。
  83. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) それは別に意味はないのでありまして、ただ代議士としてやつているのにいろいろ費用も要るだろうから使つてもらいたいという趣旨であつたと思います。
  84. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあこれはいつまで話をしておりましてもきりはございませんから打切りますが、その次に伺いますのは、前回の証言では、その顧問料を一括して、あなたが依頼を受けて高橋君のほうへ顧問に就任してから一カ月余りたつてからという話でありますが、授受せられたことは高橋証言によつて明らかになつたのでありまして、私の質問に対しては終始、ここに速記録がありますから約一頁に亘つてありますが読み上げてもよろしいのでございますが、三万円は顧問料で毎月もらつたということを力説しております。ところが今あなたは一括して三十万円をもらつた、こういうことをおつしやるので、これこそまさに証言の食い違いではございませんか。
  85. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私は前回の証言におきましても、別に事実を曲げてお答えをいたしたと考えておつたわけではございません。御質問に対して事実の通りをお答えをいたしたい、こういう考えで又そういうふうにいたしたつもりでございます。成るほどこの速記録によつて私の一昨年の証言を御覧頂きますると、或いは毎月々々月々現実に三万円授受いたしたということを私が述べたように記載をいたしてございます。恐らくそう述べたわけでございましようと思いますが、そのときの意味は、その金額の計算の基礎が月三万円の割合と申しました、そうして約十カ月ばかりであつたから三十数万円に総計がなつた、こういうことを、申上げたかつた趣旨なのでございます。
  86. 栗山良夫

    栗山良夫君 どうもはつきりしないのでありますが、ただこの当時の証言を見ますと、月々三万円をとにかくもらつた、これは税の申告のところまで話が及んでおりますが、終始一貫してあなたは、顧問料の性格は別であります、これは車代であるとか、或いはいろいろあなたもおつしやつたのでありますが、少くとも毎月三万円を顧問料としてもらつた、そうしてそれの申告はどうかという私の質問に対しては、とにかく税務署の名前までも世田谷税務署と挙げられて申告をしておるものと思うというようなことを述べられておるわけであります。例えば「私は、領収書は私の名義で誰か代理人がきつと出しておる、今まで考えなかつた。御質問によつて初めて気がついたのですが、恐らくそこは適当にやつてあるだろうと思います。」こういう工合に述べられてあります。従つて終始一貫して顧問料である、そうして毎月三万円をもらつたという精神を述べられておりまして、今の計算の基礎、計算の  やりくりというようなことは、高橋君が述べたから初めてわかつたことでありまして、当時私どもは一筋にあなたの証言を信用しておつたわけであります。甚だ只今のような証言を伺うことは遺憾であります。  それで更に重ねて伺いますが、あなたは国会でこういう証言をなさつておいて後に、東京地方検察庁においてどういう陳述をせられたのかわかりませんけれども、馬場検事正の国会に対する回答書によりますと、こういうことになつております。「昭和二十三年六月頃高橋顧問料の前貸しを依頼したところ会社より顧問料の前貸しとして支出することは出来ないとのことであつたので後に会社より受取るべき顧問料を以て返済することとして高橋から一時三十万円を借り受けるに至つたものである然るにその後会社顧問料を支給して呉れないので昭和二十三年秋頃高橋顧問料を貰つていないから借入金の支払は免除されたい旨を申入れてその承認を得たので結局右の三十万円は高橋から贈与されたものと考えこれについて所得税の申告をしなかつたのみならず他に申告を必要とする所得がなかつたの昭和二十三年度の所得申告をしなかつた旨を主張している。」そういう工合にはつきり書かれております。これについて高橋証人に質しましたところさような承認を与えた事実なしとはつきり返事をいたしております。それであなたは馬場検事正の報告書が正しいといたしますならば国会の証言は間違いである、この国会の証言が正しいとすれば馬場検事正のこの記述は間違いである。どちらが本当であるか明らかにせられたいと思います。
  87. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは成るほどちよつと承わりますると如何にも矛盾をいたしておるような感じを受けるのでございまするが、国会において御質問になりました際の私の証言は、金額に重きをおいての御質問と心得ましてその金額を申上げた次第でございます。従いましてその金額といたしましては、顧問料に相当いたしまするものとして現実に私が受領いたしましたる総額が三十数万円であり、そしてそれは計算基礎は一カ月三万円である、こういうことを申上げたつもりなのでございます。そしてその後になりましてそれが法律的にこれを見て如何なる性格のものであるかということが検事局において問題になりましたので、そこで初めて右の金額につきましてこれを受領いたしましたる手続について詳細に記憶をたどりまして、そしてその手続が只今申上げたような手続きで表ります、そしてそれならばそれはいわば顧問料の前借りとしてもらい受けたのであるが、結局において高橋に対して会社が返していない、従つて私からも返していない、併し私は高橋に返す必要はない、こういうように心得ておつた次第であります。従つてこれは検事局のほうにおいては法律的にはそのようである、かような御認定を願つたものと心得る次第でございます。
  88. 栗山良夫

    栗山良夫君 検察庁じやないのですよ。あなたがそう主張されたと馬場検事正がこの委員会へ回答をよこしておる。あなたの意思を馬場検事正がこの調書に出しておるのです。ですからそこのところをはつきりされなければ困るわけです。それから金額を主にしたと申されますが金額の述べ方が違う、先ほど申上げました通り違います。  それからその性格についてはここでは私は税の対象になるということを中心にしてそれ一本槍で質問をいたしておりますが、あなたはそれに対していささかも言葉を濁しておられん。最後に誰かが手違いなくやつたであろうというところで結んでおられる。只今証言はこの委員会を、とにかくこれはあなたは証人なんです、今日は間違いないように願いますが、証人であるあなたがこの委員会において、それは一昨年のことでありますから、三年もたつておりまるからいろいろその間にお考え違いのあることもできるかも知れませんけれども、とにかくこの委員会に忠実に証言せられておられるとは実は認めがたい。若しそれを反駁されるならばもう少し丁寧に理窟を挙げて御証言を願いたいと思います。
  89. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 大体先ほど申上げましたる通り、実際金の授受の状況を最初から申上げますると、昭和二十二年の春頃から顧問料を月に三万円もらうということで入りまして、一回は確かに会社で現実に二万円受取つた記憶がございます。そうしてその後一回あつたかないかそれが私はよく記憶いたしておりません。それから六月頃になりまして少しまとまつた金が必要になりましたので顧問料の前借を三十万円ほどいたしたいということを高橋に申したわけでございます。それで高橋はそれじや引受けたと申しまして、いつ幾日に来てくれというので参りましたところ、その日に三十万円を私に渡しましたが、渡しまする際に実は会社では顧問料の前貸というのはどうも困るので、併しまあ私が、金が要るということについて、高橋事情を了承しておるので役立てたい、従つて自分個人財産から三十万円をお貸しをいたします、併しこれは会社顧問料で多分払つてもらう。こういうふうなことでございまして私は顧問料の前借をいたしたつもりで三十万円を受取つたわけでございます。それでその点につきまして前回の証人として喚問せられました際には、月三万円の割で約一年分ばかりもらつておる、そうしてその金額が三十数万円になると、こういうことを申上げた次第でございます。  その後この所得としてこれが法律的に如何なるものであるかということが検事局において問題になつたわけでございます。そこで只今申述べました事実を申述べて、これが所得としては給与であるか或いは贈与であるかという点が問題になる、それで、それに対しましては贈与の性質を持つておるということを申したわけなのであります。従いましてこれは贈与と申しましても私が何ら縁故がなくして高橋から三十万円の贈与を受けるということは、これはあり得ないわけで、この高橋から三十万円の贈与を受けたということは、これ即ち私が足利工業顧問をいたしておる、そうしてその顧問料の前貸という意味において私が受取つたのでございます。後にそれが贈与であるということになつたわけでございます。従いましてこの点につきましては何と申しましようか、社会的、経済的な性質から見まするというと、これは月々三万円ずつの顧問料の約一年分であります。併しこれを法律的に所得の性質を検討いたしますると結果的に贈与である。こういうことに相成るわけでございます。
  90. 栗山良夫

    栗山良夫君 前回の証言であなたは、もう一度申しますがこういうことを言われておるわけです。「私は車代として、車馬賃の実費として受取つておるわけであります。」私が「それはそれといたしますと、足利工業のほうの出金伝票は、車賃いわゆる旅費ということになつておりますか。」とお尋ねいたしまして、大橋証人は「さような詳細なことは承知いたしておりません。」そこで私が「これは明らかに私は、法務総裁でありますので、あなたには所得税法に関するいろいろなことは十分御存じだと思いますが、こういう月極めになりました三万円というような額が、車賃というような名称で、全然税の対象からはずされて、個人所得に収納されてよいと法務総裁考えられますか。」とこう質問をいたしたのに対しまして、あなたは「税法のことは私よく存じませんが、当時会社のほうにおきましては、税金は会社として払つてある、税引としてこれだけを渡す、こういうふうに聞いておりますから、税は何らかの形で会社から立替えて払つてつたものと考えております。」それからあとずつといわゆる所得としての源泉課税の問題等を私はお聞きをしておるわけでありますが、当時はあなたは一貫してとにかく今申されたようなことを言われたわけではないのでありまして、甚だ奇怪に感じますがまあどちらでもようございますが、要するにあなたは、この馬場検事正の検察庁から来た報告書のほうが正しいのであつてこの国会の一昨年の証言は間違いであつたと、こういう工合にお認めになるわけでございますね。
  91. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私は一昨年の証言はその内容が不十分であると考えます。即ち金額並びに私がその金を受領するに至りましたる政治的、経済的な関係から見まして顧問料という性質を持つておるものである、社会的、経済的に顧問料という性質を持つておるものである、こういう考えを以ちまして証言をいたしたわけでございます。併しながら当時も所得の申告についてはいたしてはないであろうということを最後に記憶を喚び起して申上げたと心得ております。それでその後それが所得税として申告すべきものかどうかということが検察庁において問題となりました。その際に実際の当時の金の受け渡しの実情を申しまして、これは社会的経済的には顧問料として高橋も私に渡すときはそういうつもりで渡したのでありますし、又私もそういうつもりで受取つたのであります。併しこれを法律的に見まするというと、これは贈与という説明になるわけであると、こういうふうに考えておるわけでございます。従いまして一昨年申上げましたることは、私は全然間違いであるとかいうふうには考えておりません。ただ質疑応答の間におのずから御質問に直接私が対応すると認める事柄を申上げてあるのでございまして、それ以上の詳細になる事柄につきましては、お答えする必要はないと考える部分はお答えをいたしてないと思いまするし、又重ねて御質問があれば無論その点もお答えをするつもりでございましたが、そのままに進行をいたしたわけでございまして、検事局におきましては、この委員会において御質問に対して私の答えませんでしたその答えなかつた部分がむしろ問題となつたというわけでございまして、それがために食違いのようにはなつておりまするが、私といたしましては前の証言が誤りであるというふうには考えません。全体から見て或いは不十分であるということは言い得るかと存じます。
  92. 栗山良夫

    栗山良夫君 私はこれ以上この問題については伺いません。とにかく天下の秀才であると言われ、法務総裁としてとにかく法律の権威者であられるようでありまして、それが法律を知らない私が幾らここで議論をしておりましても問題にならんかと思います。併し、高橋証人は決してあなたに贈与をいたしたとは申しておりません。否定をいたしました。飽くまでも顧問料として、弁護士として顧問になつて頂いたということのお礼である、こういうことをはつきり述べております。これは二月十五日にも述べたわけであります。そして我々もさように感じておりまして、あなたは前回の証言とこの検察庁の回答書とを両方共合理的に極めて巧みな御回答をなさつておりまして、私もこれ以上証言を求めませんが、良識ある国民はこれに適当に判断を下すであろうということだけ私も信じておるわけであります。  それからその次にお伺いをいたしますが、あなたはこの前の証言で、これは自動車売却のことに関する問題でありますが、モーリスを売つて、そうしてその金をすぐ特別調達庁へ入れることはやさしいけれども、さようなことをした場合には高橋君の生活を見てやらなければならん問題もあるし、又国に大変な損害をかけたので、その金を元手にいたしまして、やはり高橋が事業をやり、そうして少しでも金を殖やして国家へ納入をさせるようにすべきであると考える。従つてすぐ売却をして返納、国に納付をさせるようなことをしないようにして、特別調達庁とも打合せて、さように決定をしたということをおつしやつているのでございますが、これは間違いございませんか、これも重ねてもう一度お伺いをいたします。
  93. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 自動車を売りました際に、その金がすぐ調達庁に入らなかつたという理由でございまするが、これは当時高橋といたしましては全体として過払いに対して、社長でありました田中君と専務高橋君が連帯して弁済の責任を負つているわけでございます。丁度その自動車の処分が問題になりました当時に、高橋君のほうからは自分の名義になつておりました芝浦の寮一つ、それからビルデイングの事務所一カ所、こういうものを処分して特調に弁済をしてくれという意味田中君に渡したのでございますが、現実にはそれがまだ田中君から特調のほうに納入していなかつたという事実があるわけであります。そこで高橋君としてみますると、連帯で納めるべきものを、自分だけがいろいろな品物を処分して、そうして田中に渡してあるけれども、それが特別調達庁のほうに納まつておらない。それから今又新らしく自動車を処分して、それを又特別調達庁に納める、そうなるというと自分財産だけはてきぱきと処分してしまうけれども、併し田中君も又自分財産を処分するなり、或いは金策するなりして特別調達庁に納めるべき責任があるわけであつて、その両方について同時に見合いから取立てをしてもらいたいということを特別調達庁に要請をいたしたわけであります。ところが特別調達庁のほうといたしましても、まあ債務者が連帯して二人いるわけでありますから、取立てに際しては法律的にはどちらから取立ててもいいわけでございまするが、併しながら実際上はやはり両者間に対しまして公平に取立てを進めて行くということが、これはまあ成るほど君の言うことも尤もであると、一応納得せざるを得なかつたわけであります。併しそれでは高橋にその自動車売却しました代金を持たしておくと、果して田中のほうの納めるのが進行いたしましていよいよ高橋が納める時期が来た場合に、そのときに果してあるかないかわからない。これは結局高橋君の信用の問題であつたわけでありまするが、特調といたしましては、高橋君については初めあの過払いについては高橋君のほうがやつたことだろう、こういうようなことでまあ高橋君に対する信用は非常になかつたわけであります。それで特調のほうは成るほど田中君のほうの取立てが或る程度進む適当な時期まで待つてつてもいいが、併し誰か責任を持つてくれる者がなければ困る。そこで私はまあその責任を負わなければならない羽目に相成りまして、それじや私が高橋君のためにその売上代金を預かろう、こういうことになつたわけであります。その際に特調に対しまして、そうして僕が自分の責任で必ず特調に納めるべき金額は一体この中から幾らであるかということを確かめました際に、それは百万円である、そうするとこれは百二、三十万には売れるものであるが、その余分の金はどうすればいいのか、それは高橋に渡してよろしい、こういうことであつたわけでありまするが、それならばいつそのことそれをも含めましてこれ全体を私が預つておく、そして預つておる間に運用をいたしまして、運用の上利益があれば特調に返す金を殖やすこともできるし、或いは又高橋に返す金を殖やすこともできる。利益の分につきましては、運用いたしまして、利益があつた場合には特調高橋とで話合いまして、その自動車代金から出て参りました総額のうちで幾らを高橋が受取つて、幾らを特調が受取るかということを御相談しよう、こういう話になりまして、それではとにかく話をしよう。預つて殖えるように利殖を図ろうと、こういうことになつたのがその起りでございます。
  94. 栗山良夫

    栗山良夫君 まあ経過はそういうことであることを私も承知はいたしておりますが、私のお聞きしておるポイントはそこではないのでありまして、この前御証言になつたように、自動車を売つた金はすぐ調達庁に返すということも、それだけは確かに返るのでありますが、併し高橋という者の生活考えてやらなければなりません。又将来高橋が或る程度事業を継続いたしまして、その利益によつて一刻も早く全額返済ができるようにしてやらなければならんということも考えなければなりません。成るべく早く高橋のためにその金が有効に利用されて、そして高橋全額返済するについて役に立つようにしてやりたい。これは当時の調達庁関係者一同考えまして相談の結果、最善の方法であろうという結論になりましてこういう措置がとられました。こういう工合にあなたは述べられておりますが、先ほど来た三浦証人はさようなことに同意した覚えはないと、さつき十分くらい前にそういうことを言つておる、これをあなたに申上げておきますが、このことは高橋生活なり、高橋の事業を通じて気にかけて、煙突の損害を返させようという意思を表明されておることはわかります。そこでここが中心になつてお尋ねしておるわけでありますが、先ず第一に売上代金を三和銀行の日比谷支店に入れまして、実際の管理、いわゆる高橋の意思によつては出入れができないような管理をあなたが高橋名義の口座に対してしておられたということをこの前述べておられますが、それは今日もその通り変つていないかどうかということを一つお尋ねをいたします。
  95. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) その口座はその後一切の金をそれぞれ処分いたしましたので、取消しになつております。
  96. 栗山良夫

    栗山良夫君 取消しになる前までの話であります。
  97. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) そういうふうにいたしておつたわけであります。
  98. 栗山良夫

    栗山良夫君 それからその次に、あなたは大体日比谷支店の口座の内容はどうなつているのだという私の質問に対しまして、自動車売却代金はその後明確に数字が明らかになつております。そして現在もちやんとやつておりますと、こういう工合に述べられております。従いまして、売却代金が入つてからあれが赤字になつてしまつて零になつて口座を取消すまでのいわゆる収支の状態はずつと御承知になつてつたかどうか。この点伺いたいと思います。前回の証言はさようになつております。
  99. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 収支の状況につきましては、大体私はこれは運用いたしまする責任者といたしまして、山下茂君を選定いたしまして、そうして山下君に対しまして、入金の際は山下君が入金をする。併し出金をいたしまする際は私が了解をいたしたというものについてだけ銀行に電話をかけて出金をしてやつてくれと、こういうふうな連絡をいたしておるわけであります。併し大体そのときどきに銀行の収支が幾らになつておるということは、そのときどきに山下を通じて報告を受けておりました。
  100. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると漸次赤字になつてつたことは御承知になつておるわけですね。最初の売却代金が時を経るに従つてだんだんと減額をされて、終いに零に近くなつてつたことは御承知のことなんですね。
  101. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これはこういうわけでございます。漸次零に近くなるという御質問意味でございますが、預金でございまして、これはもともと運用いたすことになつておるのでございまして、それで山下君がこれを運用いたします際に、こういう自動車を買いたいとか或いはこういう方面に金を貸したいということを言つて参ります。それは確かなものならばいいということで私が了承します。そうすると私から銀行に連絡をしますれば、山下君に金が渡り、それで山下君がその金を約束に従つて運用する、こういうことになります。そうして例えば手形などにつきましては、金を貸した場合に手形が入つておりますから、その手形は山下君が入金をする。入金につきましては、私はこれは入る金でございますから別に干渉はいたしておりませんが、併し出す分だけは厳重に干渉する。こういうわけでございます。  それから只今申されました零に近くなつておるということの意味でございますが、そういうふうにいたしまして山下君の手で或いは自動車を儲かると思つて買う。それから利子が取れるからというので山下君のほうから金を第三者に貸す。そうなりますと、成るほど銀行の帳簿はそれだけ減りますから零に近いこともあつたと思います。併し一面におきましてその手形、債券なり、或いは自動車の現品があるわけでございますから、財産全体といたしましては零になつたわけではない。何と申しますか、バランス・シートと申しますか、それとしましては絶えずまあ変りない程度のものがあつたわけでございます。ただその中から特庁なり、或いは特庁にはその後暫らく支払いをいたしておりませんでしたが、高橋のほうに金を渡せばそれだけこれは全体として減るということがあるわけでございます。併し、恐らく零に近くなつたと申されますのは、運用しておりますうちに、これは山下君のやり方もまずかつたのでございましようし、又私の監督も不行届きであつたと存じますが、有利になると思つておりました仕事が損になり、確実に返ると思つてつた金が返らなくなるというようなことの結果、全体的に財産が或る程度減つたということもこれはあつたと存じます。
  102. 栗山良夫

    栗山良夫君 高橋君は自動車を売払つてから後、この口座が破棄されるまでの間、この金には実際上全然関係がありませんでしたか、又ありましたか。その点を伺いたい。
  103. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 高橋君はこの金につきまして、自分の仕事のほうに直接自分が廻したいから、そのほうから自分に渡してくれ、こういうことをしばしば申出て参つたことがあります。これはただ、高橋君の仕事が私としましてもちよつと不安のように思いましたので、それはもともと君の財産だから、君に返す分には差支えないが、併し少くとも特別調達庁にこの中から百万円だけ渡さなければならんという私は責任があるから、それでそれをなくすようなことになつてはいけないと、こういうので渡したことは非常に少なかつたのじやないかと思つております。
  104. 栗山良夫

    栗山良夫君 併しこれはまあ非常にも非常にも大非常に少いわけでありますが、その点はまあ承知しておりますから結構です。問題は、あなたは先ほど高橋の家庭の生活を見てやらなくちやならんと、それから高橋の事業を通じて云々ということを言われ、只今高橋のために預つたんだということをおつしやつたんですけれども、実際は高橋のためには何にもなつていない、国のためにも何にもなつていない、ただなつたことはあなたとあなたの下で働いた山下君と二人でこの百万円の自動車で方々を乗廻して到々幽霊にしてどつかへなくしてしまつたと、こういうことだけじやありませんか、残つたことは……。マグネシウムでフラツシユを焚いたようなものである、それだけが残つたわけであります。誰のために一体これを利用されたのか、高橋のために百万円を預ると言われたんですけれども高橋のためにならんことは事実である、国のためになつていないことも事実である、ただためになつたことはあなたと山下君が使われ、そうして而ももう少し極言するならば、山下君が一年有半の間とにかくこれで経営をして生計を立てた、山下君のためになるというだけじやないでしよう、あなたのためになつたかならないかは今は言いませんけれども、とにかく山下君のためになつたことだけは事実です、そういうことじやないですか。
  105. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) この金が先ず調達庁のためになつたかならないかという点でございますが、調達庁に対しましてはこの金の中から百万円だけ調達庁に返すとこういうことになつておりまして、これは恐らく全額調達庁に返つておるのではないかと思います。従つて調達庁がそれ以上に私たちは調達庁に百万円よりももつと余計高橋の分として返したいと思つておりましたその分は実現できなかつたのでありますから、百万円以上には調達庁のためにならなかつたということは事実でございます。  それから高橋のためになつたかならなかつたかという点でございますが、これも私は高橋のためになると思つて始めたことなのでございます。併し山下が不手際でございましたので、初期の通りの利益を得ることはできなかつた、そして今でも山下はたしか高橋君から借りておるように存じておるのであります。この点は高橋のためにはならなかつたと言われましても、これはちよつともおかしいことはないと存じます。  それから私のためになつたかどうかという点でございまするが、私はこの金によつて一銭も自分のためになつたとは思いません。むしろこのために私といたしましては、かようなお疑いを受けるような羽目にまでなつたのであります。私も非常にためにならなかつたと存じております。  それで最後に山下がためになつたろうとこういう点でございますが……。
  106. 栗山良夫

    栗山良夫君 自業自得というもんだ。
  107. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 山下もこのために確かにこの金を運用いたしまして、そうして多少の利益を得ておると思います。この利益につきましては高橋君と相談をいたしまして、配分計画を二人の間でやつておると存じます。併しブローカーといたしましての普通の口銭だけは取つてつたろうと思いますから、そういう点で利益になつたろうという点はあります。ただそれ以上にどういう利益があつたかということは私は存じません。
  108. 栗山良夫

    栗山良夫君 只今の話の中で、高橋山下間のことが言われましたが、これは少くとも債権債務関係のことでありますが、山下はまだ高橋から金を借りておるということでありますが、高橋君の証言によりますと、山下君は、僕は別に高橋君から借りているわけじやない。大橋さんとの間の関係があるだけである、僕は大橋のほうへ返せばいいので、高橋大橋からもらえばいいんだということをはつきりここで述べております。あなたは巧みに政界へ出ておられますが、そういう交渉の事実があつたかどうか、その点を明らかにして頂きたい。
  109. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) この合理的な計算に基きまして、そうして高橋山下で金を配分いたしまする際に問題があれば、無論これは私がきつかけを作つたのでございまするから私の責任であるわけであります。併し一応は金を現実に運用いたしておりましたのは山下でございまするから、私といたしましては一応山下高橋君の間で話を付けてもらいたい、話が付かなければ又その際に私がよく事情を聞こう、こういつたようなわけであります。
  110. 栗山良夫

    栗山良夫君 法律家として誠に奇怪なことを私は伺うのでありまして、法律ではそういう工合にはならないものでしよう。とにかくあなたが山下に命じて金を運転させ、而も出すほうはあなたの許可がなければ出なかつたわけです。入れるほうは、これは入つて来るほうであるから幾ら入つてもかまわんわけであるから、あなたが黙つてつてもいいでしようが、出すためには少くともあなたがOKをやらなければ出なかつた。そういうような観念の状態においていろいろとプラス・マイナスが出たろうというので高橋山下、お前適当にやれというのでは、幾ら日本の法律でもそう簡單に私は権利義務が移動されるものとは考えられないと私は思うわけであります。そこであなたは最近高橋君から内容証明を受けられたことはございますか。
  111. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) たしか二月になりました後に私の家に高橋君から内容証明が送られたのを最近発見いたしました。
  112. 栗山良夫

    栗山良夫君 それに対してあなたはどういう処置をせられんとしておられますか。
  113. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これはまだ私読んだばかりでございまして、詳しく内容の調査もいたしておりませんので、まだそのままにいたしております。
  114. 栗山良夫

    栗山良夫君 それから最後に一点伺いますが、あなたは先ほど特別調達庁には自動車代の百万円は返してしまつた。別に特別調達庁に迷惑をかけておらんと、こうおつしやつたのでありますが、これは利殖だけでも迷惑がかかつている。自動車を売つたというすぐ百万円返すのと、一カ年近くも経つてから百万円返すのとは利殖だけでも大分損ですよ。どうですか。
  115. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) この利殖は確かに仰せの通り特別調達庁としては不利益を蒙つておると思いますが、それは自動車を売つた後にその代金の管理がどうこうであるということによつてその利殖を損したのではなくて、特別調達庁といたしましては、では自動車を売る際に、高橋がそのうちから百万円をすぐに納めるのは田中君との釣合上いやだということを承認いたしまして、そうしてその後にそういう管理方法をきめたわけでございまするから、その承認をしたことによつて利殖だけはすでに損をすることは調達庁としては免れなかつたわけだと思います。そう思うわけでございまして、單にどうこうという問題とは一応別個のものではないかと存じます。
  116. 栗山良夫

    栗山良夫君 そうすると、ますますおかしいので、あなたはこの金を運用をしているときに損が出ることを最初から予定せられておつたわけですか。赤字が出ることを。
  117. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 初めはまあ高橋君、それから山下君、それから先ほどのお話もありましたが、損になるというようなことは全然予想はいたしておりません。ただ初めから特別調達庁に、対してその自動車の代金のうちから支払いますべき分は百万円である。こういうことは当時からもうきまつておるわけでございます。そうしてそれがきまつた後に自動車の運用ということが開始されたわけでございます。その点を申上げたわけでございます。
  118. 栗山良夫

    栗山良夫君 大体これは特別調達庁川田証人もここで言われたのですが、自動車の運用をするというのは大体一カ月ぐらいを予定しておつた。一時運転をして、ここの検察庁の何に「一時運用し」という言葉があります。一時というのは一体どれくらいだと聞いたところが、一カ月ぐらいだと言つている。なぜ一カ月経つてから取立てをしないか、こう言うと、それは大橋さんが自動車に乗られるときにちよつとわかつたので催促した、そういう工合に偶発的に催促をしたことはありますと、こう言つた。そんな催促の仕方はおかしいじやないか、少くとも特別調達庁の役人として債務の取立をやる以上はなぜしつかりした法的な根拠に基いてやらないのか、こう言つたところが、それは大橋さんというのはお偉い人であつて、そういうようなことは遠慮いたしましたというような意味のことを川田証人が述べている。あなたの勢威に特別調達庁がまさに震いをなして、債権の取立さえ自由に行えなかつたということを川田証人が述べておる。あなたには相当な責任を感じなければいかんと思うのでありますが、特に重ねて伺つておきますが、百万円返したと言われますが、百万円のうち三十万円は先ほどあなたが言われたようにずつと前に返つておるわけです。これは間違いないわけです。あとの三十万円と四十万円というのは、一昨年ここの委員会であなたの証言を求めて二重煙突事件が社会的に国会を通じて問題になつてから返されたのですよ、問題になつてから返されておる。甚だ以て、国民はこれをどう考える。若し問題にならなかつたならば猫ばばということになります。私はそこのところをはつきりと筋道の通るように一つ説明を願いたい。その金の返し方もその検察庁調書を見ますと、相当四苦八苦して返されてあります。なぜそれだけのことをしなければならんということならば、一時と言えば一カ月ということを特別調達庁は予定しているというならば、二カ月がすでに三カ月になつたならばあなたはそれだけぐらいの努力をして、とても自動車の売買というような山師的な仕事では利益を得るわけにはいかん。こういうはつきりした自信を以て返されなければならん。そういう努力をされなければならん。そういうことをしないで赤字が出たのは高橋山下の取引事だからよろしくやれ、話がうまく付かなかつたらいよいよおれが乗り出して行つて適当にやつちまおう、こういうことでは国民として何か納得しがたいことである、こういう工合に思います。若しそういう考えでおやりになるならば、一つこの問題だけでなしに税金の問題も、その他司法権の問題もあらゆる問題を、あなたは法務総裁をおやめになつたわけでありますが、警察予備隊の問題もすべてこういう工合に一つおとり廻しを願いたい。そうすれば国民は非常に楽をするであろうということを申上げておきます。
  119. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) この特別調達庁に返すべき百万円をいつ返すかという問題でございまするが、これは先ほども申述べましたる通り、高橋君のほうは、田中君のほうが返さないのに自分だけ先に返すというのは御免蒙りたい、こういうことを言い出したのです。それで調達庁のほうといたしましても、それじやまあ田中君の取立てが済めばそれと見合いながら高橋君のほうから取立てのできるような時期まで、確実にその金が高橋君のためにあるというようなことならば、それはまあ待つてもよかろうということになりましたのがこの自動車の代金管理の起りなんでございます。それで只今質問の中に、なぜ私が早く返さなかつたかという点を御指摘になつておりまするが、私といたしましては、ただこの高橋君のために特調へ返すべき金を含めて自動車の代金を私は預かり、そうしてその運用を監督するという役を引受けただけでございまして、一体この金は高橋田中両氏から調達庁へ弁済すべきものであります。その時期をどうするかという問題は調達庁高橋調達庁田中、この間でいつ幾ら払つてくれということはきめるべきものであるわけでございます。従いまして、高橋君のほうと調達庁のほうでいつまでに返しましようという話合いができますれば、それは私といたしましても高橋君が返すようにこれは預つておる金でございますから、話合いのできたときにはその高橋のためにすぐ返さなければならない、こう心得ておつたわけでございます。ところがこの間におきまして、調達庁のほうでは私のほうへ早く返してくれということを申して来たわけであります。そこで私はそれではこれは高橋君のものであるから高橋君が早く返すことを承知するように私が言いましようと言つて引受けたことはありますけれども、併しながらそれは返すことを私がいつというような事柄ではなくして、一応高橋君が納得して、それじや納める、もう納めてもいいということを言うように私から高橋君を説得しよう、こういう話をしたわけでございます。それでその後になりまして、成るほど前回の証人として参りました後に調達庁のほうへ返つております。これは私といたしましてもそうそう高橋君が自発的に或いは調達庁話合いで返すと言われるけれども、余りいつまでも放つておくということは、これは私としても立場上おもしろい事柄ではございません。そこでできるだけ山下に、高橋に金を調達庁へ返すことができるようにしろ、こう厳重に申したのでありまして、そうして山下を督励して高橋に弁済をさせようと、こういうことでございます。
  120. 栗山良夫

    栗山良夫君 もう私はこれ以上証言を求めません。とにかく全く奇怪なことで、特別調達庁へ伺えば大橋さんは偉い人なのでそう硬い請求もいたしかねておりましたと、こう言う。それから大橋証人に聞けば、取立ては高橋調達庁の間でやるべきものであつて、私はただ監督をしただけだ。監督ということはこれは返すことも入つていると私は思うんです。とにかく高橋が金を取りに行けば大橋さんがちやんと通帳を押えておつて出さん、どこがどうなのか一体わけがわからん、これこそまさに法の盲点というものだろうと思う。こういうようなことは世の中に相当行なわれている、その一つの見本を大橋さんが示されたので、国民は恐らくこういうことをまねてやるだろうと思いますが、とにかく私は承服しかねる。これはこれ以上証言を繰返して見たところでこれは意味のないことでありますからやめますが、承服しないということだけを申上げておきます。
  121. 小林亦治

    小林亦治君 証人法律家なんでありますが、私も実は法律家なんであります。余りに奇妙なことを詭弁をなされたので念のために伺つておきますが、私どもはこれは顧問料というものは贈与ではないと考えております。贈与というものは如何なるものかといいますと、無償で財産権を譲り受けることが贈与なんです。顧問料というものは関係をして上げたり、或いはその他の諮問に応えてやる、いわば広義の労務に対するところの報酬がこれは顧問料なんであります。丁度会社の社員が月給をもらうのが会社労務に対する報酬であると同じように、顧問料というものは労務に対する報酬であつて、贈与ではない、繰返して申上げまするが、贈与と言わんがためには、無償で金品の財産権を申し受くることにあるのであつて、この点は法律家である証人は御存じの上でさような詭弁を弄さるるのか。本当に顧問料は無償でもらうのだとお考えになつておるのか。先ず前提にこれをお確めした上で二、三私もお尋ねしたいと思うのです。
  122. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 顧問料と贈与とは異なると考えます。
  123. 小林亦治

    小林亦治君 先ほど証人はこの顧問料として申し受けたところの三十数万円というものは、これは経済的には顧問料であり、法律的には贈与であると解釈しておると、かようにはつきり申されたのであります。先ほどの御証言はあれは間違いであるのか。
  124. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 先ほど申上げましたのは、私は顧問料として受取つた顧問料の前借りとして受取つたつもりでありましたから、それで顧問料である、そういうものであるということを前回の証言の際に申上げたのでございます。その後これを法律的に如何なる性質のものなりやということが問題になりましたので、その際に、実際上の手続を検討いたしましたる結果、これは贈与というべきものである、こういうふうに考えております。
  125. 小林亦治

    小林亦治君 どうも証人はのらりくらりと上手に御答弁になるようなんですが、もう一遍これをはつきりとおつしやつて頂きたい。そうして何ですか、贈与とも考えるが、顧問料とも考えると、こう言うのですか、どつちが本当なんですか。先ほど私が申上げましたのは、贈与というものは無償で提供せられるのが贈与なんで、顧問料として申し受けたからには、顧問としての労務に対するところの反対給付であると、こういうふうに考えるので、贈与ではないと考えるが如何でしよう。
  126. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 抽象的にはその通りだと存じます。ただこの前申上げましたる証言の内容について私としては御説明を申上げたわけでございます。
  127. 小林亦治

    小林亦治君 どうも一問一答では勢い揚げ足取りになりそうで、まとめて御質問申上げますが、先ほど栗山君からも繰返されて質問されておつたようなんでありまするが、この証人が第九国会の二十五年の十二月六日に本委員会の小委員会において宣誓の上、而もみずから本当のこと以外は申上げませんということを念を押されて申された証言の中に、高橋並び会社からもらつた金というものは顧問料の三十万円、選挙の際の陣中見舞費として二十万円、それ以外には何もない。ところが先ほどなお数万円ずつ二回くらいにもらつた記憶があると、かように御訂正になつたようなんでありますが、高橋証言は、これは今月のたしか十四日であつたと思いまするが、顧問料の三十数万円、陣中見舞の二十万円のほかに、一万、二万或いは五万というものを請求せられて、その金額が約百万円に近い、こういうふうに申されておる。で、高橋さんのその証言の趣旨は、これは会社から大橋さんに上げた金、こういう趣旨のように聞いたのです。なぜかと言いますると、なおそのほかに二百七十万円というものを大橋さんに内容証明で以て請求しておる。而もこれは個人関係であるから云々ということを申されておる。明らかにこの百万円というものは、会社からあなたに提供した金だと、かようにはつきり言つておる。いずれが本当であるかということが第一点であります。  それからこれは最後に伺つていいことかも知れませんが、金の運用については然るべき人をおれが世話してやるのだというようなことで証人山下茂なるものを推薦せられたのです。ところが私ども調べによりますると、この然るべき人であつたところの山下というものは、実は博打打ちなんであります。現在も博打か何かで、どこか警察の豚箱に入つておると聞くのでありますが、この者があなたの監督の下に金を運用しておる間に、三十数万というものは、これは横領になつておるのであります。検察庁の調書でも立派に横領が成立しておるのであります。ただ検察庁としましては、弁償もしたことであるし、まあ情状を酌量して一応起訴は猶予したんだと、かようなことになつておるので、この点に関してはあなたも責任をお感じになるに相違ないと思うのでありますが、この点が二点であります。  三番目は、これは甚だ失礼なんですけれども、国務大臣としてあなたが而も在職中にも、本件の解決には相当奔走しなければ義理合いが済まないような立場に立ち至つて、又この委員会でも今日までかように問題が紛糾しておる。更にあなたから遺憾の意を表するような態度を申し受けることができないことは、私どもは残念極まることなんです。前回の証言の際にあなたからかような一言があつたならば、問題は今日かように展開しなかつたと思うのであります。而も本会議において委員長から二回もあなたの不都合、疑惑というものが中間報告によつてなされ、カニエ君、それから私からも綱紀粛正に関するところの弾劾的な質問が繰返されておるのであります。それに対するあなたの御態度というものは、どうか決算委員会は徹底的に本問題を調べてもらいたい。恬として恥じざる態度でありましたが、かようなことになると、これは実は派生的に私ども、あなたの内閣の態度と、あなた御自身の態度そのものが大きな一つの政治問題になるのであります。そこで繰返して本日の喚問となつたのでありまするが、これでもあなたは国務大臣として政治上、道義上責任をお感じにならんかどうか。法律家というものは、私の感ずる限りにおいては人一倍これは道義的に物事を批判する感覚が強いはずなんです。それであつてこそ、国民は法律家というものを信頼するのであります。法律家であり、而も一国の国務大臣としてのあなたが、かような物議が起きておる本件に対して、あなた自身の立場が遺憾でないと言い得るかどうか、これをお聞きする次第であります。若しあなたにおいて神妙にそういうふうに器考えになるということであるならば、私ども本件はこれは考えなければならん。依然としてあなたが何でもない。恬として閣僚の椅子に安住せられるならば、この問題というものは更に拡大して大きな政治問題になるだろうと考えますので、甚だ失礼でありまするが、念のためにあなたの率直な良心のあるところをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  128. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 失礼でございますが、第一点をちよつと簡單に……。何の項目でございましたか。
  129. 小林亦治

    小林亦治君 贈与というものは無償で財産権を譲り受けることが贈与なんだ。顧問であろうが、社員であろうが、相談役であろうが、いやしくも広い意味の労務の提供によつて申し受くるところの金品というものは断じて贈与ではない。一つの所得、営業所得或いは職業所得と言つていいのであります。ところがあなたはこの顧問料が単なる贈与であるのだ、こうおつしやるので、奇怪なので、余りにも詭弁に見えるので、この点を確めたのであります。顧問料は断じてこれは無償で提供せられるものではないのであります。会社があなたに相談し、あなたから鑑定して頂く、その広い意味のあなたの労務に対して申し受くるところの一つの対価であります。断じて贈与ではないと私は考えている。如何なる法律家もこの常識だけは曲げることができないと思うのでありますが、そのほうの大家として定評のあるあなたが、そういうふうな詭弁を申されるので念のため伺つたのです。
  130. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 第一点は顧問料でありますか、或いは贈与でありますかという点でございますが、これは前回も申上げました通り、たとえ贈与であるにいたしましても、これは私が受取りました当時の気持、又恐らく高橋君から私のほうへ渡した当時の気持は、これは顧問料の前渡しという意味であつたろうと思います。従いまして前回においては顧問料ということを申上げたのでございますが、併しその手続その他から調べて見ますると、これは顧問料として渡されたような金ではあるが、併しながら会社から出たものではなく、高橋自分の金で立て替えた、そうしてその後会社の弁済費ということになつている。これは法律にあてはめて見れば、むしろ贈与の性質に近いものではなかろうか、こういうふうになつているのであります。それから金額につきまして第一に御質問があつたと思いますが、高橋から私に渡しました金がむしろ百万円のほうに近い金額ではないか、こういう御質問でございますが、只今私の記憶いたしておりますところでは、先ほど申上げました通りでございまして、百万円には相当隔りのある金額であると存じます。  それから第二に、運用をする場合に管理者として山下を選んだ、この点は山下の人柄から見てけしからんではないか、こういうお言葉でございますが、この点は、私も只今になりまして山下を選んだということは明らかに私の失策であつた考えております。当時は私は山下を信頼いたしておつたのでありますが、その人物といたしましても信頼をいたしておりましたし、又事業上の手腕につきましても期待できる、こう考えておつたのでございますが、結果的に申しますと、只今御指摘のような実情でございまして、この点は私の不明のいたすところであつたと思います。財産の権利者でありますところの高橋君に対しましても、非常に迷惑をかけてお気の毒であつた、かように考えているのであります。その後私といたしましても、山下が少くとも高橋君から借り受けた、及び当初からの金について計算を明らかにしてそうしてその決済をつけるように督促をいたしてあるのでありますが、併しこれについては私も自己の不明によりまして、かような山下君を選定いたしたということは責任でございますから、私といたしましても責任を感じているわけでありまして、できるだけ高橋君に対しても善後の措置を講ずるようにいたしたい、こう考えているわけであります。  それから最後に御指摘の国務大臣としてどう思うかという点でございまするが、私は当初はこの問題につきましては、善意を以て解決するつもりであつたのでありまするが、併しこの間山下の失敗その他幾多予期しなかつた障害のために、結果的には当初のすべての人の希望の期待に反するような結果になつております。これは監督者という役を引受けました私の不敏、不徳のいたすところであると存じておりますので、恐縮に存じておるような次第でございます。
  131. 森崎隆

    ○森崎隆君 栗山委員のいろいろの御質問に関連して二、三お聞きしたいと思います。  この金の利殖の計画につきまして、高橋証人から先だつて聞きましたときには、大橋証人のほうからこの案が持出されまして、そうしてまあ利殖の途を考える。これを利殖の遂に使いますると、月一割から一割五分くらいには利廻るであろうというようなお話でさえあつたというようなことをこの間聞いておりまするが、この点は最初の発議者としてあなたが申されましたかどうか、先ず第一にお聞きいたしたいと思います。
  132. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 最初私が山下から聞いておりましたところでは、自動車の売買をいたしまするならば、うまくやれば月に一割くらいになるのではないかというようなことを山下から私は聞きました。それで私も深く自動車の売買業なるものの実情を存じませんでしたので、そういうふうに信じておつたのであります。併しそのことは、暫らくしてなかなか月一割なんということはとんでもないことであるというふうに気が付きまして、たしか私は昭和二十五年の春頃でございますか、自動車の売買は思つたほど利益がないから、そこでもうこれはやめるようにしたいと、そうして一応自分としても予定の通りの利益が上げられないからして、清算をしてもらいたいということを山下に申入れたこともあつたのであります。併し当初は相当の利廻りになるということを聞いておつたことは事実であります。又承知しております。
  133. 森崎隆

    ○森崎隆君 その話合いの折、特調のかたがたも一応了解されたと、あなたのほうでは申されておりますが、今日三浦証人のほうではとんとそういうような承諾を与えたということがないというふうに聞いておりますが、これは何かその折、例えば書面ではつきり承諾を取つたとか、法律家のあなたでございますから、こういう点はどうせ国に納める金のことでございまするので、相当はつきりいたしておることだと私は思いますが、何かそういうはつきりした証拠がありましようかどうでしようか、これをお聞きいたします。
  134. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは実は私弁護士として職業上引受けた事件でもございませんし、ただ特調の人たちも懇意の仲間でありまするし、又関係者田中君、高橋君にいたしましても懇意の仲間でありまするので、いろいろ考えまして、実際上皆さんの都合のいいようにと、こういうふうに考えまして、いたしたわけでございますが、そのときに、それでは当分そういうことにしようというふうに簡單にまとまつたような次第でございます。従いまして書面等その当時作成いたしまして契約書を作つたという事実はございません。ただ結果的に見ますと、皆にいいようにというのが、先ほど栗山さんからお叱りを受けたように、余り誰のためにもならなかつたという点は恐縮いたしております。
  135. 森崎隆

    ○森崎隆君 ただそのときのあなたの足利工業株式会社関係いたしましたその身分は、やはりその顧問弁護士としての資格であられたということはあなたが確認されますかどうか、それをはつきりさして頂きたい。
  136. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは実はいつからいつまではつきり顧問弁護士の資格を持ち、いつになつてはつきりその資格をやめたということの約束はいたしてないのでございまするが、強いて申しますれば、先ほど申しました通り、昭和二十三年の五月頃でございますか、三十万円、月に三万円の割を以て顧問料の前借をいたした事実はございます。それで少くともそれから十カ月の間は顧問であつたということが言い得るかも知れませんが、併し当時選挙が済んで、私も代議士で入つて来ましてから、そういう会社顧問ども整理しなければならんというふうにも考えておりましたし、丁度この問題が起りましたので、この問題が起りました以上は、私といたしましては双方に懇意でありますから、それで又その後いろいろ高橋君なり田中君なりを督促して、できるだけ調達庁に返すようにしなければならんと考えましたもので、その頃から自分ではもう顧問はやめておるというふうな気持になつてつたわけであります。併しこれもはつきりいつやめたというはつきりした取決めはなかつたと思います。
  137. 森崎隆

    ○森崎隆君 その辞令が出たかどうかということは、それは私は知りませんけれども、とにかく会社が左前になつてから、もうこのあたりで顧問をやめてもらいたいということを御本人に申上げたということは、この間田中さんからもお話がありましたから、そのことは別といたしまして、少くともこの利殖の途を計画いたしました当時、あなたもその当時顧問であつたかどうかはつきりしないと、実に私は弁護士とか法律家というものは、皆さんこういうものかと思つて呆れておるわけでありますが、少くともこのあなたの計画に賛同された人々のあなたに対する気持は、やはり会社顧問弁護士が全責任を持つてこういう計画をされるのだからという信頼感が先ずあつたろうと私は思うのですが、その点につきましては、まあそういうことは尤もだとか、或いは全然なかつたとか、どちらかあなたのお気持をはつきりお聞きしたいと思います。
  138. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 今田中証人会社が左前になつたときに顧問をやめてもらいたいということを私に言つたということを伺いまして、思い出しました。そういう言葉があつたことはあります。従いまして、先ほど申上げました点を改めさせて頂きます。恐らくこの問題が問題になりましたのは、その後のことではないかと思います。
  139. 森崎隆

    ○森崎隆君 それじや話を変えましてもう一つ今のに関連して申上げたいと思いますが、このお金をあなたのほうで管理いたしまして、山下がこれを運用することになつたのでございますが、この高橋の名義という形式上の名義という問題と、これを管理するその管理の権限というものは、相当これは強い権限のように考えておりますが、出し入れの入れるほうは自由だが、出すほうはあなたの許可がなければ一切出せないという非常に強い管理の権限でありますが、そのあなたが一応山下という者を使つて出して、これを運用したと、この高橋大橋山下という関連性におきまして、この金の運用は高橋は全然知らなかつたということを申しておりますが、少くともこの金の、毎日毎日でなくても、さつき栗山委員から申されました通り、月々とか或いは二カ月に一回とかいうように、金がどういうふうに使われ、現実にどういう利殖を生んでおる、又現実にどういう欠損の途を辿つておるということは、やはりあなたのほうで頭に持つておられたことだろうと思いますし、又法律家であるあなたが人様のお金を管理しておる責任上から考えましても、当然私はあなたといたしましては、常に寝ても心に持つておることだろうと思う。而も最後までの経過におきまして、だんだんこの欠損の途を辿つたことはこれは明らかでございますが、あなたのほうでは多少何か損をしたというような気配もあつたとかいう、ぼやつとしたお話でございますが、こういうような余り儲けてもおらないというような、高橋生活費も殆んど出していない現状で、この金の運用のいわゆる中間報告というような報告とか、話合いとか、そういうものが当然高橋その他の者に少くとも何回かあつて然るべきものだと、これは私考えるのでありますが、現実においては最後まで高橋には何も申さなかつたように私も今まででは聞いておりまするが、その点につきまして、あなたの管理者としての責任をこういう面で果されたかどうか、これをお聞きしたいと思う。
  140. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 山下君はときどきいろいろな、今度こういうふうにしたいとかいうことで私の所に報告に参りました。それで私としては、現在運用の状態を始終聞いておつたわけで、それでその点につきましては、勿論山下君から高橋君にも当然報告があるべきものでありまして私も、高橋君にもよく報告しておくようにということは常に山下君には申しておつたのでございまして、その間高橋君が一回も報告を受けておらなかつたということは、実は私は意外に存ずる次第でございます。それから漸次に金はなくなつたという点でございまするが、実は最後までこれは金があるように私としては聞いておつた。と申しますのは、一応貸金なり或いは自動車なり、この自動車は幾らくらいに売れるはずであるとか、元は幾らであるとか、それからこの貸金は幾ら貸していつ返してくれるものであるとか、そういう計算は、百数十万円でございますから、極く数項目のものでございまするから、いつも聞いちや心にとめまして、これだけあるからこうだということをいつも心に思つてつたわけでございます。これが最後になりまして殆んどゼロに近いということがわかりましたのは、貸金が回収不可能になつたということ、それから自動車がたしか何かの間違いで売買不能の状態になつたと、こういうようなことで、結局現実に金がなかつた。勘定合つて銭足らずと申しますか、一応債権としてありますけれども、或いは物権としてありますが、それが換価できないという状態にあるということか明らかになりまして、現在の状態ですぐ金にしろと言つても金にならないと、こういうことになつたわけでございます。従いまして、現在でも山下君の手許で、一応これは回収不能と見ておる債権でも、その後の実情によりまして非常に長期にぼつぼつと回収の計画を立てておるというようなものも或いはあるのではないかと、それから自動車のほうは、たしかこれは買つた品物が何か間違い品でありまして、そうしてそれを共同で買つてつたので、その部分が回収不能になつておるというようなことを聞いております。それでこれが大部分が回収不能になるというようなことは、私は殆んど承知いたしておらなかつたのであります。併しそれも、それを監督いたしておりました私が詳細に調査をしなかつた疎漏の結果でございますので、その点は私甚だ残念に思つております。
  141. 森崎隆

    ○森崎隆君 この管理をあなたが始めましたときに、さつきのお話では、高橋という人物は余り信用できないというお言葉がございまして、その当時、あなたの言葉からいたしますと、高橋よりも、こういう金銭の問題につきましては山下のほうを絶対信用されておつたと、而も当事者の高橋よりも、この金に直接関係のない山下のほうを非常に信用されておつたということは、これはまあ事実でございますね。それはどういうような意味高橋に対する不信と川下に対する信頼感が持てたのか。又このお二人とあなたとの交際の長い年月、その深さ等につきまして一応お聞きしたいと思います。
  142. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 高橋君を信用しなかつたと申しますが、これはまあかような場所で申上げることは如何かと存じますが、お尋ねがありましたので申上げますが、実は特別調達庁高橋君から一時株券が入つていたことがあります。で、株券を換価いたしましてそうしてそれを調達庁に納める、こういうことで高橋君が株券を調達庁から引出して処分をしたけれども、結局まあ金は使つて、結局調達庁は一応一旦株券を預つたは預つたけれども、あとまあ渡したままお金にならなかつたということもあつたわけでございます。高橋君に金を渡しますと、或いは調達庁へ返さないというようなことになりやしないか、そうすると私としても責任上困るからして、こう思つてつたわけでございます。
  143. 森崎隆

    ○森崎隆君 この金がまあなくなつてしまうまで、山下に対するあなたの信用といいまか、だんだん欠損いたして参りましたまあ状態の中において、やつぱり最後まで山下というものに対するあなたの信頼感は変らなかつたのでございましようか。如何でございましようか。
  144. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 管理をいたしておりまするうちは、私は山下は大体古くから承知いたしておりますし、これは昔内務省の社会局に自動車の運転手をしておりました。その頃から私知つておりましたので、そう私を裏切るような人物ではないと、こう考えておつたのであります。無論山下君が果して私を裏切つたのであるか、それは今でも私はどうか申しませんが、ただ運用の仕方がまずかつたためにやつたのかと思います。恐らくは計画的に高橋並びに私に損害をかける、そういうつもりでやつたことではなかつたのじやなかろうかと、ただまあ高橋……この山下君の商売のし振りがまずかつた、見込み違いが多かつた、そして監督しておる私も又その方面に十分な知識を持つておりませんために、かような損失を来たした、こういうことだと思つております。で、私としましても、それについては責任を感じておりまするので、その後山下を督励いたしまして金策をさせて、返すべきものを特調並びに高橋君のほうへ返させるように努力を続けたのでございます。
  145. 森崎隆

    ○森崎隆君 さつきのお話の中で、特調から大橋証人のほうに返してくれという催促があつたとかいうお話でございますね。これに対してあなたのほうから高橋のほうへ何か早く返すようにという話を、直接か、間接か、まあしたように承わつておりまするが、ところがどうも私それが腑に落ちないのは、言葉だけで早く返すようにと言つたのかどうか、それの返せと言つた……。返すべき金はあなたよりほかに管理していない。従いましてこの催促に応じて、高橋をあなたが間接的であれ、直接的であれ、催促するためには、あなたが管理しておるところの金を高橋のほうに渡しまして、早くこれを持つて、取りあえずこれならこれだけを返せというような具体的な催促が当然責任者としてのあなたには出るはずだと思います。従いまして、そういうことがありますと、あなたの誠意がありますれば、この金がこの状態においてどういうように運営されて、どの程度金があつて、どう今払えるかということは、当然あなたは知つていなければならないと私は思うのでありますが、そういうふうな誠意を持つて特調からの催促に対して努力をされたかどうか、その点をお伺いしたい。
  146. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 特調から催促がありまして、それはもうあと七十万円特調に入れなきやならん金が預かつてあるわけでございます。それでそれはもう当然特調へ入れる。ただこれは高橋から特調へ入れるべき金であるからして、高橋が入れるということを私のほうに指図してくれなきやならんわけですが、そこで高橋に、それじや返すような了承を得るように私がするわけでございます。そのことは、併し高橋としてはその頃に行き違いがありまして、私も高橋に会う機会もありませんでしたので、又高橋特調へ行きまして、そう急に返さなくてもいいのだというふうな話もあつたというようなことを私も聞いたことがあります。従いまして、その際には結局いつ返すというようなはつきりした約束まで行かずに話が終つております。
  147. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 私のお尋ねは極く簡単でありますから、証人もお疲れでいるでしようから、簡單に……。特調のほうに提供してあつた自動車売却代金を、それを運用して利殖するということは誰々が相談をしたのであるか。それからこの発案者といいますか、そういうことを一番先に考えたのは誰であるか。
  148. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) とにかく田中君、高橋君、それから私が関係しておりますし、それから特調でも、そのことはどなたかが相談にあずかつてつたと思います。私は多分三浦監事ではなかつたかと思うのであります。無論それは話は、特調に返すべき金が問題になつたのでございますから、特調のほうでそれを了承しなければ話にならないわけでございますので、誰かがそれに関与しておつた、こう思うのでございます。
  149. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 これについては田中高橋は、あなたとそれから川田らも、これも承諾しておつたように申しますが、川田や、三浦の言うところを聞きますと、この間の川田証言、今日の三浦証言によりますと、そういうことは承知しておらん……。今日三浦ははつきりそういうことは承知しておらん……。それから川田は、高橋がその自動車を売らしてくれといつて来て、それでは売れたらばその金はすぐ特調のほうへ入れるようにということを言つて許してやつた。ところがいつまでたつても金を持つて来ないので、高橋にどうしたと言つて聞いたところが、すでにその売つた金で新らしい自動車買つてしまつた、こういうことであつて、そこであなたと田中高橋とから、この金を運用するために利殖するように許してもらいたいという申出でがあつたが、お役所としてはそういうことは困るので、すでに自動車買つてしまつた以上は仕方がないので、できるだけ早くそれを売つて、そうして金を入れるようにということは申したけれども、承知しておらん。それを運用利殖するということは承知しておらん。こう申しておるのでありますが、それであなたの御記憶は、三浦川田の言うところと違つておるようでありますが、本当に三浦川田はそういうことを承知しておりましたか。
  150. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) その相談特別調達庁のどこかでできたと思つております。従いまして、特別調達庁の誰かが関与していないはずはない。私どもが三人だけで考えてやり出したのではございません。特別調達庁……その当時のいきさつを申上げますとおわかり頂けると思うのでございますが、その当時高橋君と田中君は非常に不仲でありました。そうして双方が非常に対立的な気持を持つてつてお互いに会うことも少い。併し特調といたしましては、この両方が協力して返してもらう気持にならないとまずいので、特調へ二人が呼出されたその時に、私も一緒に来てくれないかというので、私も行つてその会合に立会つたのであります。その席上でそういう相談ができたように私は記憶いたしております。従いまして、調達庁の方が全然知らなかつたと、あとになつてわかつたと言われるのは、それは恐らく御記憶違いじやないかと思います。
  151. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 先ほど聞き落しましたが、そういう売却代金を運用利殖するという案を最初考え付かれたのはどなたですか。
  152. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) それは、そのときの会合の目的が如何に全体の回収を促進するかということが目的で開かれたことと記憶しております。それでその際に、足利工業が引受けておりまする土木工事の代金からはどういうふうに回収する。それから財業についてどういうふうに、高橋財産田中財産についてどういうふうに処分して行くという話になりまして、それで高橋自動車の処分の話が出た。そうして、その自動車の処分したその金をすぐ払うのは高橋としては、田中のほうが払つていないのに自分ばかりが先に払うのはいやだと、こういう話になりまして、併し君に預けて置いたつてなくなつても困るじやないか、誰か確かな人が預かるというのならばということになりましたから、そこで私が立場上それじや私がお預りいたしましようと、こういうようないきさつになつておるように思うのであります。
  153. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そこで、その金を高橋名義で預けて、あなたがその保管の責に任じて山下をして運用させたと、これは間違いないのですね。
  154. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) その結果自動車売却しまして、その売却の事務を山下君にやらせまして、そうしてその後山下君に運用させるについて私が見る、全体として私が責任を負うという形でございます。
  155. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そこで特調に対しては、その自動車を売つてできるだけ早く百万円だけは入金する。百万円以上に売れた際にはその金は適当に運用利殖して、一つ高橋生活補助をする。できるだけ特調のほうに多く入れるようにしたいと、こういう話になつておるのですか。
  156. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) できるだけ早くということにはなつておらなかつたと思います。と申しますのはもともとできるだく早く百万円だけ入れるのならば、その売れたときに百万円を入れるべきものであります。ところが免れたときに百万円を入れることが問題になりまして、そこでこの百万円を特調に納める時期には、田中のほうで納めるべき分が或る程度入つたときに、それと睨み合せて特調田中のほうで話合つて時期をきめる。こういうことになつてつて、それまで預かつておる。こういうことになつております。
  157. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 川田の言うところによりますと、そういう高橋田中との個人関係はどうか知らんが、特調としては預かつた自動車を売つてすぐ代金を入れるというので返してやつたのだからして、その金はすぐ特調に入れてもらわなければならんのである。ところがその売却した金を以てすでにほかの自動車買つてしまつておるから、よんどころなくその二番目の自動車を売つて、そうして百万円だけは入れるようにと、こういうことで承知したのであると、こう言つておりますのですが、そこは証人の言われるところと少し違うように思うのですが。
  158. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私は、私の申上げた通りであると記憶いたしております。
  159. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 ところで、証人山下をしてこの金を運用させまして、初めてその自動車代金を預けましたのは昭和二十四年の七月七日に三万円、これが初めでありまして、だんだん入れたり出したりしておるうちに、昭和二十五年の九月四日、一年とちよつとの間に百三十三万円の自動車売却代金はなくなつてしまつて、ただ四千五百六十五円三十八銭、一年ちよつとたつたときに、九月四日にはこれだけになつてしまつておる、これは証人は御承知ですか。
  160. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) それはその資金を運用いたしておりまするので、自然現金がそれだけ減つたわけでございます。
  161. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この間、証人は、その金の出し入れについては証人の許しを得なければならん、或いは証人銀行へ電話をかけなければ出してはならんと、こういう約定の下にこの金は出し入れされておつたそうでありますが、それならば証人は金がだんだん減つて、こういうふうになつておるということについては御存じないはずはないと思いますが、どうですか。
  162. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 無論承知いたしておりまするので、それは金がなくなつた代りに、他に債権及び財産権に変形しておつたわけであります。
  163. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 そこで一方、特調に対して百万円の金を入れなければならんのでありますが、かようにだんだん金は減つて一年二カ月たつてもまだ特調には三十万円しか入つておらん。これはいつまでこういう状態証人は続けて行つて、いつ特調のほうへは約束の百万円を入れる御予定であつたのですか。
  164. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) それは田中君のほうから特調へ入つた金と見合いまして、高橋が適当な時期に特調へ納めるということにしたい。こう申しておりましたから、当然特調のほうで田中君のほうから入つた金と見合つて高橋のほうにいつ納めるということを申出でべきものであつたと心得ております。
  165. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 元来この自動車というものは、過払金の穴埋めのために会社から特調に提供された金であつて、その金は自動車を売つたらば一日も早く特調に入れなければならん金であることは、証人御承知であろうと思うのですが、ただ高橋田中との間のバランスがとれないで、或いは高橋生活がどうであるというような個人的の関係で、そつちに気をとられて、そうして大事な国の損害を補填するという、そういう初めからのこの自動車の性質、その金を管理する目的をすつかり証人は忘れておしまいになつたわけじやないのですか。
  166. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私としましては、このうちから少くとも残りの七十万円は特調へ払う、そうしてできればそれ以上に高橋からなおたくさん特調に入れなければならない金もございますから、それまでこれの運用によつて稼ぎ出して特調に返す、こういうふうに考えておつた次第であります。
  167. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 川田の申すことによりますと、お役所としましては何千万円の損害があつても、それに対する賠償として取つた自動車であるならば、たとえ百万円でも五十万円でもそれが売れたならば、それをすぐ入れてもらいたいのである、それを利殖して、仮に百万円が百三十万円或いは百五十万円になつたとしても、そのようなことを期待しておるものではないのだ、早くその弁償のために取つた金を少しずつでも入れてもらいたいのが特調としての願いであつた。こういうふうに申しておりますが、証人はそういう際には、やはり運用して成るべく金を多くして、幾らかでも国家の損失を少くするほうがいいとお考えなのか、それとも国家に損害を与えたならば、早くその弁償物を売却して、そうしてその損害を一部でも補填しなければならんというお考えであつたのか、その点をどういうお考えを持つて管理に当られたかということをお聞きしたい。
  168. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これはいろいろいきさつがありまして私が管理するようになつたのでありますが、そのいきさつというのは、先ほど申上げましたように、成るほど調達庁としては一刻も早くそのうちから七十万円だけ早く取りたいと、こう考えておつたのでありますが、高橋の側から言いますと、田中のほうからは一文も出しておらない、自分のほうから取りあえず三十万円を出す、だからあとは少しずつと、こういうことから始まつたわけでございまして、必ずしも川田君の言うように早く返しさえすればいいという理論は初めから貫かれていなかつたと思います。その理窟だけで貫くような事情になつておらなかつたところから、私が管理を引受けるというような羽目に至つたわけでございます。
  169. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 これは幾らか理窟に亘ることでありますが、証人足利工業顧問として、殊に高橋とは非常に密接な関係にあつた人だと聞いております。そうするならば、こういう際には、高橋田中とのバランスがどうこうということよりも、高橋が若しそういうことを主張したならば、高橋を説き伏せて、説得して、そうして一日も早くこの金を特調へ納めるようにしなければ、これは証人顧問としての務めが済まない。又、国に対してもそういう考えでは相成らんことだと思うのでありますが、その点は証人はどういうふうに考えておりますか。
  170. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) それも一つ考え方と存じますが、当時はいろいろな状況から、先ほど申したような扱いになつたわけでございます。
  171. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 証人は立派なかたでありますが、先ほどからいろいろ道理の上からの質問に対しましては、事情事情と申しておられますけれども、我々から見るならば、その事情というのはただ高橋のために、或いは考えようによれば、証人並びに山下のためにその金を保管して、そうして運用したというふうにもとれるのであります。先ほど証人自分のためには何にもなつておらん、山下のためにも何にもなつておらんということを申されるのでありますが、それは運用の方法が惡くて、監督の方法が惡くて、事、志と違つただけでありまして、私どもから見るならば、この金を運用したのは、ただ高橋個人或いは証人並びに山下のためにその金を運用した、国家の損害を補填するということは更に念頭になかつたというふうにとれるのでありますが、もう一遍その点についての証人のお考えを承わりたい。
  172. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは、この前の証言の際にも申上げたと思うのでありますが、田中高橋からは自動車だけでなく、たくさん政府にいろいろな返さなければならん金があるわけであります。そうして、それがためには、当時足利工業は一応田中社長が経営して、高橋はこれから手を引く、こういう話合いができたわけであります。それで田中社長足利工業を経営することによつて足利工業で得た利益金の中からできるだけ返して行こう、それが特調としてもたくさん早く返せるだけ返してもらうゆえんであると、こういうことになりまして、田中君の提供する部分は、これは特調に直接納めずに足利工業会社の資金に出せ、こういう話も当時特調のほうから意見として出たのであります。これは間接に聞いております。そういうような状況でございまして、当時は一銭でも二銭でも、少しでも余計取れればいいという方針でこの事柄が処理せられたのではなくして、如何にこの金を早く間違いなく特調に取り立てるか、こういうことが主眼で当時これらの事柄が処理されておつた。これは特調の当時のかたがた気持もそうであつた考えております。
  173. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 この点につきましては、これ以上申してもこれは水掛論に終りますから、この辺で切上げまして、もう一つお尋ねしたい。それは先ほどから栗山委員小林委員、その他のかたからお尋ねになつておりまする三十万円の顧問料の問題でありますが、これにつきましては証人決算委員会におきまして前に証言をされておるのであります。その時にはこういうふうな証言をしておられると思います。「顧問料として会社では一括して三万円になつておりますが、たしかそのうち何がしは顧問料であり、なにがしかは旅費である、車賃であるという区分はあつたと思います。その区分によりまして、届出をいたしたのであります。」と、こういうふうに証言しておられるのであります。ところが、これはその時大変に時間が長引きまして午前中にはこう言つて証言をしておられたのでありますが、休憩をいたして午後になつて更に証言を継続されました時にはこういうふうに又言い直しておられるのであります。「この点につきましては、私の記憶も非常にあいまいで、先ほどのようなお答えをしたわけでありまるが、その後休憩の間にいろいろ考えてみましたところ、これは終始車馬賃として受取り、いわば月額旅費のごとき性質を持つておる、こういうふうに私は了解いたしまして、さように処理をいたしたように只今では記憶をいたしております。」。昼の時間にお休みになりまして、相当その当時のことを考えて御覧になつて、二度目の証言は比較的確実なお考えの上のお答えであると、こう思うのであります。車馬賃が含まれており、月額旅費のようなものであると言われるけれども、これはとにかく私は顧問料と見るので、決して贈与ではないと思つておるのであります。ところが、検察庁におきまして証言を述べられた時は、先ほど栗山委員がお読みになりましたが、結局会社に対して顧問料の前借を申込んだところが、顧問料の前貸は困るというので三十万円を先借ということでお借りになつた。ところが、その後会社顧問料を支給してくれないから借金を払うことができない。そこでその債務の免除を申出て、高橋から免除してもらつたから、これは贈与であると、こういうふうに答えておられるのであります。    〔委員長退席、理事飯島連次郎委員長席に着く〕  三十万円の性格というものが、全然前とあとでは違つておるのでありますが、これは前の証言も必ずしも私はただ証人の言われるように金額の点だけを主にして答えたからこういうことになつたとは思われないのでありまして、十分に昼の時間にお考えになつて、これは顧問料であるということを言われておるのでありますが、その点はここの証言と検察庁で御答弁になつたこととは違つております。この点について鬼丸委員などは、これは新らしい偽証事件ではないかと、こういうことまで言われておるのでありますが、偽証事件であるかどうか、私はそこまでは申しませんが、この点は証人は前の証言はどういうふうにお考えになつておるか、もう一遍お尋ねしたい。
  174. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは事実関係は、先ほどからたびたび申しました通り、この三十万円が昭和二十三年の五、六月頃に、顧問料と申しますか、車馬賃と申しますか、月三万円でございまするが、その三万円の前借を、三十万円ほど高橋から借りた。それで会社では顧問料の前貸ということはできない、そこで自分の金を貸して上げましよう、こう言うので借りたわけであります。併しそれは借りたままでありまして、もうあれは借りたままで返さないでよかろう、こういうことを申して返して現にないわけであります。それはそれで借りたときは顧問料の前借ということで借りたわけでありまするが、それを結果的に見ますると、前貸をしてそうしてその前貸の支払が、私の側から言うと前借なんですからして、それで返す必要は初めからなかつたと思いますが、後になりまして高橋のほうでは会社から入金しておるということであります。若し高橋のほうで入金してなくとも私はそれを借入金として考えておるのではないのであつて返す必要はないのである。従つてそれが借入金であるならばそれに対する弁済ということは私としては免除になるものである、こういうことを申したわけであります。
  175. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 これを免除というふうにお考えになつておると言うのでありまするが、この高橋とそれから足利工業というものは全く同一物でありまして、そこの間に、財産の上にも区別は殆んどないことはこの自動車やいろいろな話によつてもわかることだと思います。証人は、その点はよく御存じであろうと思います。そこで三十万円の顧問料の前貸を申込んだが、それはできないというので貸してもらつた。ところが、あとから顧問料を受けておるために、一方債務の免除を受けたから贈与というふうに言われておるようでありますが、そういう際には会社に対する債権が一方であり、一方では会社に対して債務を負つておるという場合には、法律の常識から言つて証人は弁護士でありますから、債権、債務を相殺して、つまり差引くということがこれは法律の常識であります。社会の取引通念から申しましても、そういう際には相殺をするのでありまして、債務の免除を受けたということは私はどう考えてもおかしい。そうすれば自分会社に対する顧問料というものはどうなるか。それは放棄してしまつたのであるか。その点法律家である証人はどういうふうにお考えになつているか、お伺いしたいと思います。
  176. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) これは私は事実関係をただその通り申上げたわけでありまして、前借であるけれども併し返さないでいいのである、こういうことを申したわけです。それならば贈与である、こういうわけです。
  177. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 もう一つ最後に一点お伺いしたいのでありますが、この事件は大変長い間の事件であります。今日は決算委員会が長い間かかつて調べ上げましたところの大体の結論、それと検察庁の出しましたところの結論が食い違つておりますので、決算委員会としては一度中心人物であるところの大橋証人、それからその取調べに当つたところの検察庁の検事を喚問いたしまして、そうして決算委員会としての疑点を調査しなければならんというので、本日のこの証人喚問と相成つたわけであります。大体この事件の中心問題は私は二つであると考えるのであります。大橋証人に関する限りは問題は二つある。その一つは、大橋証人法律上の責任であります。それから他の一つは、大橋証人の政治上の責任であります。法律上の責任につきましては、先ほどから大勢の委員諸君の御質問もあり、検察庁ではそれに対しまして不起訴になつております。私どもこの大橋証人に対する横領の嫌疑等を見てみまするというと、これは非常にぼんやりしているようでありますけれども、横領として起訴すれば起訴できる事件であります。又横領として起訴しないでおこうと思えばそれは証拠の取りよう、或いはその陳述に対する解釈によつて起訴しないでもいい事件である。結局どうにでもなる極く紙一重の事件であると私は見ているのであります。ところで、先ほどから証人の陳述をお聞きしておりまするというと、これは事柄は大した金ではないかも知れませんが、相当性質としては惡質な事件であるということを考えなければならんのであります。つまり証人はいろいろなことを申しておられます。そこにはいろいろな事情がある。或いは高橋田中とのバランスの衡平がとれないというようないろいろなことを申しておられますが、ともかく四千数百万円の過払金ができて、そのうち約二千万円くらいは国庫に戻つたのでありますが、二千数百万円の金というものはまだ弁償ができておらん。そのお金を弁償するために証人もお骨折りになつたのでありますが、会社財産田中或いは高橋個人財産も提供いたしまして、できるだけ国家に対する穴埋めをしなければならんというところで、株券も自動車も全部提供されておつたのであります。でありますから、一日も早くこの国家に対する損害を補填するということが眼目でなければならんし、又証人としましても或いは足利工業といたしましても、特調の役人といたしましても、それが先ず解決しなければならん問題だつたと思うのであります。    〔理事飯島連次郎君退席、委員長着席〕  ところが、高橋特調に参りましてその自動車を売つてすぐその金を納金するからということで……一種の詐欺であります、これは詐欺で起訴されておりますが、その自動車特調から取戻して参りまして、そうしてそれを売つて、その金で以て納金する、こういう約束をしてそれを持つて来た。ところが、特調のほうが知らん間にその自動車を売つてしまつたのであります。そうして、その金で以て新らしい自動車を買つた。これは、ここで儲けようと思つてつたに違いないのであります。ところで特調のほうからどうして早く納金せんかという催促を受けた。ところが、すでに金はなくなつて新らしい自動車買つてある。そこで特調のほうでは一日も早くその自動車売却して、そうして百万円の金は少くも入れてもらわなければならん、それ以上のことは、これは証人を初め高橋田中らが特調のほうに頼み込んで、何とかしてその金を運用して、多少の儲けをすることを許してもらいたいというようなことが申出られましたので、特調としては非常に困つた申入れであつたでありましようが、併し有力な証人の仲介であり、申入れでありますので、証人の顔に免じて、特調はよんどころなく一カ月かそこらの間にできるだけ早く金を入れてもらいたいというところで承諾をしたらしいのであります。ところが証人は、その国家に補填すべきところの金を、田中高橋との個人のバランスがとれないとか、いろいろそういう個人的の事情考え、そうしてそれを高橋の名前で預金しておいて、そうしてそれが自分がそれを管理し、自分の子分であるところの山下にそれを出し入れさせて、山下自動車を営業しておりますその営業資金にしておつたのであります。かようにしている間に、先ほども申しまする通りに、僅か一年二カ月足らずの間に、自動車売却代金百三十三万円というものが僅かに四千五百六十五円三十八銭になつたわけであります。かようなことになりましたについては、山下が主としてその資金の運用に当りましたから、山下に責任があつたようにも証人は申しますけれども証人は少しでもその監督、管理の責任を持つておりながら、最後まで、それを知つてつたか知らないかわからないが、知つてつたとすれば怪しからん。知らずにやつたとすれば迂濶な話で無責任である。これは国家の金であります。そういうことをして国家に対して大きな損失を与えたのでありまして、証人は、その金は百万円国家に返つていると申しているのでありますが、それは事件が起りましたところの昭和二十五年の九月には僅か三十万円しか入つておりません。百三十三万円の自動車売却代金のうちの三十万円しか払つておらないので、あとの百万円というものは空に消えておつたのであります。この事件が起つてやかましくなりましたので、証人らはあわてて法務総裁という地位にあつて足利工業と和解をいたしまして、そうして裁判上の和解をして、分割返済をするような和解調書を作つたのであります。証人は法務総裁としてそれをやつている。そうして百三万円という現金はどこかに行つてしまつているのであります。事件がもう拡大いたしましてやかましくなつて参りましたので、四苦八苦苦面をいたしまして、あと三十万円、四十万円と返済して、百万円入金したということに相成つたのでありますが、かように事件を追つて考えて参りますというと、私は証人がこの事件に関係するところの重要なるところの地位であり、証人の立場から申しまして、むしろ証人がこの事件の首謀者であるというふうに私ども考えなければならんのでありまして、この首謀者は、然るに検察庁の非常にお情けあるお取計らいによりまして証人は起訴を免れております。ところが関係者である高橋田中、それからいま一人の高橋でありますか、こういう関係者は皆詐欺横領というような名前で起訴されておる。山下も起訴はされておりませんけれどもこれは弁償をしたり、又直接の責任は大橋にあるから山下にはないというところで、これは無罪、不起訴というふうに相成つているのであります。かように関係者はことごとく起訴されているにもかかわらず、証人一人は法律上の責任を免れたということに相成つております。これは私ども、検察庁のこのお取扱いに対しましては、もつと検察庁にも質して見なければならない点があると思うのでありますが、併し一応法律上の責任についてはこれで結論が出て参りまして、証人は不起訴ということに相成つております。併しながらこの事件が不起訴になつたからと申しまして、証人は清浄潔白、偽仰天地に恥じないものであるということは私は言えないと思う。何かの新聞にもありました通り、この二重煙突事件というものは、大橋証人に対してはこの二年間亡霊のごとく付きまとつており、そういうふうにして全国の国民は大橋大臣と言えば二重煙突というふうにすぐに考える。大橋総裁をめぐつて、非常に疑いの雲が大橋総裁の周囲に群がつているわけでありまして、この国民の疑惑というものは、検察庁のかような特別のお取計らいによつて不起訴になつたということによつて、決して払拭されるものではないと思う。かようにして若し総裁が、自分が不起訴になつたから、これで以て自分法律上の責任は全部済んだのであるというふうに若しお考えになりまするならば、これは私は何と申しますか、耳を抑えて鈴を盗むと言いますか、余りに私は国民の意向を無視したものであるのじやないかと、こう考える次第であります。決して不起訴によつてこの疑惑は一掃しておらんと考えます。更にもう一つそれ以上に、私は大橋国務大臣の責任を問いたいことは、この事件のために国民の間に非常な疑惑を惹起し、そうしてこの二カ年の間これだけ騒がして、そうしてこれが市井の一町民であるとか、或いは一農夫であるとかいうような人でありますれば、この事件が不起訴になつて法律上の責任がなくなつたといつて、知友親戚を集めて祝宴でもして喜んでいるかも知れません。けれどもいやしくも現内閣の閣僚であり、そうして今はおやめになりましたけれどもこの事件の起つた当時は法務総裁であつた。そういう地位にあるところの人が免れて恥じないというような態度でおられましたことは、これは国民精神の上にも、国民風教の上にも私は見逃すことのできない由々しい大事であると考えるのであります。仮に法律上の責任が大橋氏になかつたといたしましても、私はそのようなことでどうして現在日本の風教を維持し、そうしてこの汚職事件が頻々として起つております現在の腐敗堕落した官公吏を粛正して、そうして日本の政治を美しくするその責任を持つておられるところの閣僚の一人であるところの大橋氏が、自分は不起訴になつたからその責任はないのである、青天白日の身になつたのであるというような安易な考えを持つておいでになるということは、実に日本国民として私は禍いがあると考えるのであります。大橋氏に対する責任の追及の上におきましても、私どもは、成るべくならば、こういうことは余りに大きくしないようにしてということを初めから考えておつたのでありまして、初めは私どもはただ会計検査院の批難事項の第何面付十号という事件として私ども調査にかかつたのであります。然るにだんだん調べるに従つて、あとからからこういうふうに底深い腐敗事件が現われて参りました。然るにこれに対しまして、大橋氏は一言も今日まで謹慎の意を、或いは済まなかつたというような態度をお示しになつておらんのであります。若し大橋氏が国民に対して真に申訳ないというお考えがありますならば、今日まで幾らでもその機会はあつたのでありまして、私は大橋氏が本当に天地に恥じざる公明正大であつたという確信があるならば、自分の証拠を皆集めて決算委員会に御提出になつて、そうして自分のしたことを隅から隅まで調べてもらいたいというお申出があつて然るべきだと思う。然るにもかかわらず、むしろその反対に高橋証人山下証人を喚んだときに、内部に策動して、かなり高橋証人山下証人大橋氏に有利なように事実を曲げた証言をいたしております。又決算委員長は二回に亘つて会議にこの事件の中間報告をしておりますが、いやしくも国会で国務大臣がこれだけの嫌疑をこうむつて、そうして中間報告をされた以上、本当に大橋氏が責任を重んじられるかたでありましたならば、直ちに立つて自分の潔白に対して一身上の弁明をあの際されるべきであるにもかかわらず、少しもそういう気配はない。そうして只今申したように、証人調べにはいろいろ策動され、そうして更にに自由党の諸君はこの委員会におきましては、我々がこの事件を検察庁に調べを一任したいという協議をいたしましたときには全部反対をいたしまして、遂に多数の力によつて、この検察庁にこの事件を調べさせるということはもみ消しております。更にこの間高橋証人を呼びましたときには、その証人大橋氏に不利であることを見て取られまして、到頭その証人証言することを阻止しようとして全員退場されたという事実は、つい二、三日前のことであつた。さような不謹慎極まつた、国民を無視したような態度に出られましたので、我々は国会の権威の上にどこまでも決算委員会の任務を遂行して、国民の前にこの事件の真相を明らかにしなければならんというので今日まで非常な決心を払つてつてつて参りました。そうして今日ここに大橋氏に再度の証言をお願いしておる次第であります。こういうわけでありまして、私は今日までこの事件に対して、なぜ決算委員会はあのようにしつこく、あのような非常な熱心を以てこの事件に当つて行くかということに対して、いろいろ事情を知らないかたからは、かれこれ言われておつたようであります。併しながら只今申上げるような事情でありまして、私どもはいやしくもこの国会を無視し、決算委員会の調べを、決算委員会の調査を無視して、飽くまでこの事件の責任を考えずに頑張つておられるところの大橋氏に対しまして、どこまでもこの事件に対する糺明をいたして氏の責任を問いたい。こういう考えから今日までやつてつております。これは私どもの国民に対する義務であります。又国民はこういうことによつて黒白を明らかにし、そうして政治というものが本当に正しいところを歩んでおるのである。日本の政治というものは、情実によつて左右されておるのではないということを国民に知らせることが、風教の上にも、又国民精神を作興する上にも大事であると考えまして、我々決算委員会の小委員はそういう考えを以て今日までやつてつております。私は最後に、大橋氏はさように国民から疑惑をこうむり、そうして何か法律上でも釈然としない立場に今日でも立つておられるのであるが、今後なお閣僚の一員として国民の、一挙手一投足に国民の注視を浴びるところの閣僚の一員として立つて、日本の政治を指導することができるとお思いになつているかどうか。その政治的責任を私は大橋氏はどうお考えになつているかということについて、もう一遍大橋氏の最後の御答弁をお願いしたいと思うのであります。
  178. 溝淵春次

    溝淵春次君 議事進行について……只今他の意見は敬愛する棚橋先生の御意見として傾聴いたしましたが、自由党の議員団で何かこの問題をもみ消すような行動があつたかのごとき言葉がありましたが、決算委員会は両委員長より馬場検事正に宛てて照会をして、成規に昭和二十六年四月三日付で馬場検事正より決算委員長に宛ててのこの捜査の結果についての報告は来ているのでありますから、この自由党議員団は、もとより決算委員会がこの問題をもみ消すとかもみ消さんとかというようなことはなかつたと思うのでありまするが、念のために棚橋委員にお伺いし、先ほど私はそうお聞きしたのでありますが、私の聞き方が間違つておるかも知れませんけれども、自由党の議員団においても堂々とこの内容を開明にして是非を決算委員会において明らかにし、態度を公明にする点においては、他の所属議員のかたがたと何ら変るところはないのであります。その点について先ほどちよつと自由党議員団の名を指されて、もみ消すかのごとき言辞を弄されたのでありますが、若しそうであるならばお取消し願いたい。
  179. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 検察庁に対してこの事件を取調べるようだ申入れをいたしましたのは、前前之園委員長と私であります。だけれども決算委員会の決議によつてつたものではないのです。決算委員会はその前にこの事件を検察庁に告発しようといたしたのであります。ところがこれに対して自由党は全員挙つて反対をいたしまして、多数によつてその告発ができなかつたのであります。私はそのことを申し上げたのであります。
  180. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それは棚橋さんの記憶違いじやあないかと思います。(「そうじやない」と呼ぶ者あり)この前問題になりましたのは、要するに偽証の問題について、その偽証についての認定で偽証として告発するかしないかという問題を、これを取扱つたものでありまして、その点は御記憶の違いだろうと思います。(「その通り」と呼ぶ者あり)
  181. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 これは單に偽証の問題だけではないのでありまして、前決算委員長の本会議における報告を御覧になりましても、單に偽証の点だけを問題にしてはおりません。横領のこともやはり問題になつております。又税法違反の点も問題になつております。それは自由党諸君のお考え違いだと思います。
  182. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 それなら私は棚橋さんにお聞きしたいのですが、六月三日に検事正に照会してあるから、検事正から回答があつたので、而も我々が決算委員会で若し……、多数を以てそれはいかんと、こう言つたにかかわらず、それでは棚橋さんと前之園さんは個人の資格でやつた。それならば一体あれは会名を以て御照会なさつたのかどうかその点をお伺いしたいと思います。
  183. 棚橋小虎

    ○棚橋小虎君 その通り決算委員会の決議によつていたしたのではありません。
  184. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 そうしますとあれですか、決算委員会の委員長という名前を決算委員会に諮ることなくして勝手に用いてそれは差支えない、こういう御見解でしようか。
  185. 栗山良夫

    栗山良夫君 今の自由党の御発言と棚橋さんの御発言とこれをやりとりしておるのですね、これは結論はつかないと思うのです。というのは自由党のほうは例えば本件については積極的に問題を糾明するよう努力したかのごとくおつしやつてもですよ、これは事実と全く反する。それはいわゆるおやりになるたことをみずから考えればはつきりしておる。だからそういうことでなくて、今日は証人喚問でありますから、今の棚橋さんの質問に対して、証言要求に対して、大橋君から証言を求めるほうがよいと私は思います。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  186. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 議事進行……つまり速記録をよく棚橋さんお調べつてそうしてその上で一つ願いたいのであります。
  187. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) それでは証言がありますか大橋君。
  188. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 私といたしましては、この委員会にもたびたび申上げました通り、何とかこの過払の事件を円満に筋を通して処理いたしたい、かように存じまして、これに関与するに至つた次第であります。かように当初善意を以て関与はいたしたのでございますけれども、その後私が信頼をいたしておりました山下茂君が必ずしも私の信頼いたしたような結果を挙げ得なかつた。それがためにかように皆さんに御迷惑をかけるということにつきましては私といたしましては衷心から恐縮いたしておる次第であります。
  189. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 議事進行……大分時間が長くなりましたから、これは休憩したほうがいいと思います。
  190. 栗山良夫

    栗山良夫君 只今証言では、遺憾の意は……、山下君の行為に対して責任の持てないようなことがあつたので遺憾の意を表するというような意味でありまして、大橋証人自身がおやりになつた責任の下においては、何等御発言がなかつたものとこう認めてよろしうございますか。それから第二点、私先ほど証言をお聞きしたわけでありますが、その後一つだけ質しておきたいことが各委員の発言の中から出ましたので、それを伺つておきます。それは誠にくどいので大橋証人にもお気の毒でありますが、例の三十万円の顧問料の問題でありますけれども、これは贈与ではないということを私ども確信しておりますが、十五日の高橋証人の言の中にも三十万円の前払いをいたしまして、後においてあなたの奥さんが足利工業のほうへ顧問料の請求をされて、そうしてその顧問料というものは実は一括して三十万円をお支払いしてあるのでもうお払いはできない。こういう工合にお断りをした事実がある。こういうことを高橋証人が述べております。これが事実であるかどうかということをお伺いしたい。  それからもう一つ第三点でありますが、検察庁から参つておりまするこの報告書には、三十万円の金は「会社より支出されずして東京銀行銀座支店の高橋個人名義の当座預金口座から支払われておる事実を考慮すれば遽に高橋の前示主張のみを以て右三十万円を顧問料とは断定し難く他にこれを顧問料と認定するに足る適確な証拠はない。」とこう言つておりますが、高橋君にこの点を尋ねてみますと、成るほど個人名義の当座預金の口座から出した。出したけれども、それは検察庁でも自分は強く主張しておいたのであるが、直ちに会社側のほうへこれは振替をいたした。そうして会社の帳簿にも歴然としてこれは載せてあるのだ。こういうことを主張いたした。そういう工合に検察庁で述べたのに、これを検察庁は取り上げていない。こういうことは甚だ以て了解がたいということを述べおる。この点もあなたたびたび先ほどから申されておりますが、私どもの聞いたところでは事実と反しますので、もう一度重ねて証言をお願いいたしたいとこう思います。
  191. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 最初の御質問でございまするが、私の言葉が足りませんために、山下のやつたことについて私は遺憾である、こういうことだけ申したようにお聞き取り頂いたかも知れませんが、私の気持といたしましては、山下君がこの問題についてやつた結果については、もとより遺憾でありまするが、それを事前に山下君を管理人に選任し、それから又その後監督をいたしておりました私の立場といたしましては、その点において私自身についても遺憾の点があつた、かように存じて恐縮をいたしておるわけでございます。  それから第二の顧問料の前借りをいたしたことは先ほどから申した通りでございます。その後家族の者から請求の電話をいたしたかどうか、それは私存じておりません。  それからこれが顧問料であるか或いは贈与であるかという点でございまするが、これはたびたび申上げましたる通り、私が当初顧問料の前借りとして借りていたもので、従いまして前回におきましては顧問料であると、こういう趣旨の証言をいたしたわけでございますが、検察庁におきましては、その後いろいろ諸般の情勢を、この実際の手続、段取りと申しますか、事実関係を明確にしたいというので、改めて当時のいきさつを明確に申したわけでございます。これについては贈与と、こういうふうに認定をされた次第であります。
  192. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) さつき長谷山君から議事進行について暫くここで休憩したらどうかという意見がございましたが……。    〔「賛成」「異議なし」「休憩反対」と呼ぶ者あり〕
  193. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 休憩に先立つて今の質問の関連事項だけを一つお聞きしておいて、そうして休憩願つたらいいとこう思います。(「反対」「賛成」「カニエ君の動議は成立していないよ」、「休憩反対」と呼ぶ者あり)    〔カニエ邦彦君発言の許可を求む〕
  194. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 関連質問ですか。
  195. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 関連です。今の問題に関連しまして……(「簡単々々」「休憩」と呼ぶ者あり)それでは休憩前にお聞きしておくのですが、今の顧問料の問題です。これはあなた自身も昨年の証言で二十五年の十二月六日当時の心境では顧問料だと自分も思つていると、こういうことを言つておられる。それから高橋もこれは顧問料だと言つておるのです。高橋は今でもなお顧問料だと言つている。会社社長である田中顧問料であるとこう言つている。それから会社の会計であるその他の高橋政雄、羽鳥、それらの証言もやはりこれは会社の帳面にちやんとあるのだから、これは顧問料だとこう言う。そうするとその後顧問料が検察庁の報告では贈与に変つて来ておる、こういうことなんです。そこで問題は、あなたは顧問料だと思つているけれども、併しこれを顧問料だということになると、税法の違反の問題というものがその後起つて来た。だからいろいろ研究してみた、検察庁のほうでも研究してみた。又国税庁のほうでもいろいろ研究してみた。ところがやはりこれは顧問料では筋道が立たない。だからこれは何とか贈与にせなければならないという、法律上の解釈をまあそういう形においてすればそれでいいじやないか、こういうことでこれが変つて来たんじやないか。途中において……。そこで心境の変化というか何というか、あなたも成るほどそういうと初めは顧問料だつたのだが、あとでよく研究してみると贈与になるかいなということで贈与になつたんじやなかろうかと思う。これはどちらでもいいと思うのです。どちらでもそんなことを国会が議論する必要も何もないのじやないかとは思うのですが、(「その通り」と呼ぶ者あり)併しそういうことをあいまいにされると、而もそういうことを考えて、そうして上手に立廻ると罪にならなくなり、下手まごついて、下手にやるとそれが罪になる。こういうようなことになりますと、智慧のある者はたえず逃れて行くが、智慧のない者はいつも懲役に行くということになりますので、(笑声)この点はやはり率直に……。贈与になつたから、これが顧問料になつたからどうのこうのと……。だからこれは大橋はけしからん、刑法第何条に該当してぶち込むのだというわけじやないのですから……。(笑声)すなおにやはり御答弁を願いたいとこう実は私は思つておるのです。その点で私は恐らくこの事件については御承知のようによく調べておりますから大体わかるのですから、あなたからそれ、は今検察庁の言うことが本当であつて、前のことは違うというようなことはこの席上で言いにくいかもわかりませんが、何とかここはもう少しいい方法を一つ考え出して御答弁を願いたいとこう思うのです。この点は……。これは一点です。  それからもう一点は、この前の十二月の六日の話で証言のときには、この自動車を売つた金は、これは三和銀行日比谷支店に高橋名義の金でちやんとあるということをあなたが証言されておる。そこで私どもはそれはちやんとあるものだとこう又解釈した。ところがその後事実調べて見ると、その証言をされた二十五年の十二月どころでない、その以前の二十四年、前年度のすでに十月二十一日現在でその通いは僅か三千八百円になつておる。この自動車の金はこういうことになつておる。そこでそのときのあなたの気持は、恐らくこれはその金はちやんとあるということで、これで事が済めばいいと……、結果これを追及した関係上、それがないということがわかつたのですよ。わかつたから今度はあなたはいやそれはちやんと経理がしてあるので、金は三千円しかないが、その見返りになつておるところのもので今度はあると、こういうように今日は言われておるのです。これも大体我々の質問が要領が惡かつたというか、そのときにはこれは金が、ものが現在どうなつておるか、計算書を出せと言えばよかつたのでありますが、恐らく我々の考えとしては、まともに受けて三和銀行にちやんとありますよ。現在こうだと言われれば、これは成るほどあるものだと解釈される。これはこの点で、今の御答弁でそれでいいと仮にしたといたしましても一体この三千八百三十二円のこのほかにその当時現在、証言をされた当時見返りとなるものは、何と何とがどのくらいあつたものでしようか。百万円に該当するものは、見返りするものは何かあつたか、この二点を伺いたい。
  196. 大橋武夫

    証人大橋武夫君) 最初の顧問料の問題からお答えをいたします。非常に事を分けての御質問でございまするが、これは先ほど来申上げましたる通り、私といたしましては顧問料の前借りという形で受取つた金であります。従いましてこれは社会的経済的に見ますれば顧問料であるとこう私は考えております。現在でもそれは顧問料であろうと、こう思います。ただこれを検察庁において税法その他の関係から事実関係を詳細にお尋ねがありましたので、そこでこれは先ほど来申上げたようないきさつを申上げたのでございます。そうなつて来ると、これは法律上の所得といたしましては顧問料の分類に入るべきものか、贈与の分類に入るべきものであるか、その点がいろいろ問題となる点であろうと思うのであります。ただ、いきさつは只今申上げた通りでありまして、或いは見方によりましては、カニエさんから只今おつしやつたようなことも考え得るかも知れません。  それから次に前回の証言の際に自動車を売つた金は三和銀行にあると、こう申上げてあるといたしますれば、それは明らかに事実としては誤りであります。当時はすでにそれが現金として管理せられておられたばかりではないのでございまして、大部分債権或いは物権として運用中にあつたわけでございまするから、従いまして全額銀行に預けてあるような、そういうような答えをしておつたとすれば、それは答え方の誤りでありまして、私も当初から現金で預金してあるぞというような意味で申上げたつもりではないように思います。そこでその当時に一体それに対する見返りは幾らあつたかということなんでございますが、何分古いことでございまして、私も時々そのときどきには大体どこそこの貸しが幾ら、どこそこの自動車が幾らで買つておるが、これは幾らに売れる予定であるというようなことを聞いておりましたが、その後これは清算してしまいましたので、その時期にどういうような財産がどうあつたかということを今ちよつと記憶しておりません。
  197. 小酒井義男

    小酒井義男君 先ほど長谷山委員のほうから休憩の動議が出されております。栗山委員のほうから休憩反対の意見があつてまだ休憩するか、しないかということは私はきまつておらんと思うのであります。そこで実は私も少し質問をしたい問題があるのでありますが、質問するのではないのでありますが……、質問したいのでありますけれども、時間も非常に遅くなつておりますし、質問にはやはりまだそれぞれほかにおありになると思うのであります。ですから今日は私はこの程度で証人証言を終つて、そうして次に検察庁の証言を受けることになつておりますから、それらの問題を行なつた結果に又再び証人をここへ喚問して頂く機会を残して頂いて、そうして今日は打切るということにして頂きたいとこういうように考えて動議を出すわけであります。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  198. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 今日どういうふうに運営して行くかということも今休憩中にあつたのでありますけれども、暫時休憩して頂きたいと思います。(「反対」「休憩賛成」と呼ぶ者あり)
  199. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 小酒井君から動議が出まして賛成の声もありますが、今日はこの程度に打切るということに御賛成のかたの起立を求めます。
  200. 長谷山行毅

    長谷山行毅君 休憩が先……。
  201. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 取消します。長谷山氏から議事進行について発言がありまして、暫く休憩したいということでございますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」「反対」「採決」「反対」と呼ぶ者あり〕
  202. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) それでは採決いたします。休憩することに……、(「時間は」と呼ぶ者あり)時間は委員長にお委せを願つて十分間休憩することに御賛成のかたの起立をお願いいたします。    〔賛成者起立〕
  203. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 多数と認めます。よつて十分間休憩いたします。    午後五時三十七分休憩    —————・—————    午後五時四十五分開会
  204. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 休憩前に引続き開会いたします。  先刻委員長及び理事の打合会をやりました、打合せの結果を申上げます。来る二十六日頃、これははつきりきめるわけに行きませんが、検事正及び渡辺主任検事を召喚して証言を求める。そうして大橋証人に対してなおいろいろと証言を求むることがありますれば、その後に大橋証人を召喚する、こうしたらどうかという大体申合せでした。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  205. 小林亦治

    小林亦治君 賛成でありますが、大橋証人はまだ質問に答えられておらないのであります。殊に先ほど小林委員からの質問にも答えておりませんし、それから私の質問にもまだ答弁が残つておるはずなんです。先ほどほかの委員から質問がありましたので、譲歩して、一応私が打切つてつたのでありますが、質問にはまだ八分通りしか答えられていないので、必ず最後に尋問せられることを条件に、只今委員長の御提案に賛成します。(「反対」「賛成」と呼ぶ者あり)それなら……。
  206. 高橋進太郎

    高橋進太郎君 私は今委員長が言われた理事会の打合せ通りお願いしたいので、この際余分な条件なしで一応お願いします。
  207. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 更にもう一遍繰返して申上げます。  理事会の打合せの結果は、検事正及び渡辺検事を召喚して証言を求める。そうしてその結果大橋証人に対して証言を求める必要があれば更に召喚する。こういうことに申合せがきまりました。    〔「異議なし」「委員長々々々」と呼ぶ者あり〕
  208. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) ちよつとお待ち下さい。そうしてそれで本日は散会を宣告してはどうか、こういう打合せの結果でありますから改めて申上げておきます。(「異議なし」と呼ぶ者あり)
  209. カニエ邦彦

    カニエ邦彦君 今のそのお話はですね、検察庁を呼んで、そうして質疑を行なつた結果、必要あらば大橋氏の証言を求める。こういう委員長の発言のようであつたのでありますが、ところがですね、必要があるないということでなくて、本日の大橋氏の証人喚問の発議者は不肖私でありまして、私は大橋氏に対しては、相当質問があるわけなんです。(「まだあるのですか」と呼ぶ者あり)ところが今まで御発言に皆さんがなつておるのは、これは單なる今までの速記録に書いてあることのやりとりなんですよ、これは……。本件の検察庁の報告を主にしてですね、これがどうだというその件には少しも触れられていないのです。私黙つて拝聴しておりまして、各委員お話を拝聴いたしておりましたが、さように私は思つております。従つてですね、私は大橋氏に対する喚問を必要上、必要によりということでなくして、やはりこれはほかの人は知りません。併し私の大橋氏に対する喚問の事項を終えてやつて頂く、その案をここで諮つてもらうということにしてもらうか、それからもう一つの方法は、このまま今日は散会されるなれば、私の発言を留保をいたしまして、検察庁の質問をやつて見た結果、私の発言をその後にせよということであれば、私は今日の質問を留保してその後に譲つても……、譲歩いたしたい。皆様さように今お話になつたんですから私はさように思つているのです。ところがそうでないということになりますと、殆んど私が申入れをして、そうして私の質問というものは無視されてしまつて、そうして必要があればというのでは、これでは非常に困ると思うので、この点まあこのまま引続いて私の分をやつてしまつて、そうしてこういうことに御決定を願うか、これが一つ。それからもう一つは、今申しました委員長の言われるように、必ずこれが終つたら私の質問だけは必要があろうがなかろうが、これはやらして頂く、こういうことで一つ了解を願えたなれば、私は今日のところはこのまま散会をされても同意いたしたい、こう思つております。
  210. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) ちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止〕
  211. 岩男仁藏

    委員長岩男仁藏君) 速記を始めて。  本日はこれで散会いたします。    午後五時五十五分散会