○鬼丸
義齊君
決算委員会は従来の成績から見ますると、とかくに甚だ振わなか
つた。私
ども遺憾に思
つておりましたが、昨年来この
足利工業の二重
煙突事件を
中心といたしまして、当
委員会が非常な熱意を持たれて熱心なる
調査をして参りまして、ついには
検察庁を動かしまして、やはり不正
事件に対しまする事実が白日の下に曝されることになりまして、我が
委員会の申出によりまして新たに四名の被疑者を出し、ついに
事件は公判に四名運ばれておるようなことでありまして、この
委員会の活動に対しましては、恐らく全
国民ひとしく感激していることだと私は思います。成るほどこの
事件に関連をいたしまして、
大橋時の法務総裁の身辺に対しましては幾多の暗い影のありましたことも、私
ども非常に眉をひそめてお
つたのでありますが、併しながら
委員会が非常な熱意を持たれて、熱心なる
調査をされましたけれ
ども、ついに
大橋氏の
事件関係においては不正の事実を発見するに至らなか
つた。続いて
検察庁もこの
委員会の指摘に基きまして、
大橋氏の刑事
事件の
責任について相当にお
調べにな
つたようであります。併しその間日子を相当経ました結果として、嫌疑事実の
一つでありまする政令違反のごときはすでに昨年の一月において時効にかか
つておる。又一番眼目でありまするところの詐欺
事件については、いろいろな各方面から
調べたけれ
ども、結局
大橋氏の
犯罪事実ということについての嫌疑
はつかみ得ないというようなことに
報告されております。更に又、税法違反の問題につきましては、法的にも或いは
経過的にも、どうも今刑事
事件として
起訴する段階までには
行つていないということが、この
報告書において明白になりました。この上の結局
大橋氏の第一、第二、第三の事実に対しまする刑事
事件としての
責任を、私は更にこの
委員会が突込んで
調べましても、恐らくはこれ以上のことをつかむことは困難ではなかろうかと思います。昨年の当
委員会において
大橋氏に対する偽証の告発の問題が当時起りました。私はその当時その告発に対しましては真向から反対を申上げました。と申しますることは、偽証の
中心問題でありますところの
横領の事実があるにかかわらず否定しておるのだから、それは
大橋氏が偽証したのである。こういうような告発の
趣旨でありましたが、私は
大橋氏の
横領事実に対する点について非常な疑問を持ちました。
横領罪が成立するや否やということの前提が確立しないにもかかわらず、その反対の陳述をしたからと言
つて、それが直ちに偽証罪になるというふうなあいまいなことによ
つて、いやしくもこの
決算委員会は告発などというふうな非常手段に出でることは少しく行き過ぎじやないか、自重する必要があろうということで反対いたしました。幸いに皆様の御同意を得まして、当時それは取りやめることに相成
つたのでありますが、今回
馬場検事正の
報告書を私は拝見をしておりますると、これは又別な
意味において新らしい大きな私はこの
委員会として関心を持たなければならん点があるのではなかろうかと思います。この点について先ほど
栗山委員からも御
意見がございましたが、極めてこれは該博な
調査でありますから、更にまだ
愼重なる御
調査を願わなければならんとは思いますが、私の記憶する範囲におきましては、第九
国会においてこの
決算委員会の公団等の経理に関する小
委員会の
会議録第一号の三頁にございます。丁度この
大橋氏の証言の一節であります。これによりますると、この
足利工業に関しまする
大橋氏の
立場としては、顧問に就任をして約一年間、この間毎月三万円ずつの顧問料をもら
つてお
つた、この総額は約三十万円に及んでお
つて、これは確かに顧問料としてもら
つてお
つたのだということの証言が明白にございます。これはすでに
速記録に留められまして公文にな
つております。動かすべからざる
一つの証言であります。然るに今回の
検事正の
報告によりますると、これとは全く異な
つた意味の陳述があ
つたのでありまするが、新らしい何かそういうようなことの事実が
検察庁のほうに明らかにな
つて来たのであろうと思いまするが、これは顧問料でなくして貸金だというようなふうにな
つております。それがために、この税法違反の問題についてはすでに明白でないということの
結論にな
つておりますが、これは私は税法違反の問題とかというふうな問題については、すでにこれは今に至りましては何ともいたし方がないと思
つております。けれ
ども、いやしくも
決算委員会において国の国務大臣が宣誓の上においてされました証言にして誤まりがあるといたしましたならば、
決算委員会の権威におきましても、確立したる事実の下に偽証の事実があります限りにおいては、やはりこの議院に於ける証人の宣誓及び証言等に関する法律の第八條によりまして、我が
決算委員会はこの偽証事実に対しては告発の義務を命ぜられております。告発すべしということなんです。即ち第八條にあります「各議院若しくは
委員会又は両議院の合同審査会は、証人が前二條の罪を犯したものと認めたときは、告発しなければならない。」そこでその偽証の事実を認めることの根拠ありや否やという問題であります。これは先ほど私が指摘いたしました、とくに、第九
国会の
参議院決算委員会における小
委員会の記録に明白に載
つております。この事実と
検察庁における
大橋氏の証言、或いはその他の関係者の言うことでありますが、
大橋氏は少くとも今度は、先に証言した事実と相反するところの贈與に基くものなりというふうなことに陳述を変更しております。これはもう明白に両方の陳述というものに違いがございまするから、この顯著なる、動かすべからざる
一つの事実に対しましては、
大橋氏の言うことが、果してこちらの証言のほうが事実か、或いは
検察庁におけるものは
大橋氏の書面
回答の証言と私は聞いておりますが、それが事実であるか。この点は少くともこの場合は明白にして、即ちこの偽証の事実ありや否やという点だけは、この
委員会はここにどうしても明白にしなければならんのじやなかろうかと思います。幸いに両方とも何ら法的に咎むべき何物もなくして、忌わしきことなくして済むならこれに越したことはありませんが、一国の国務大臣が
国会において虚偽の証言をなしたということは、勿論憂うべきことでありますけれ
ども、併しながら我々の目の前に明らかにこの二つの対立した事実というものを見せられました限りにおいては、これは私はどうしても明白にしておいて、いずれそれの結末をつけなければ当
委員会の権威の上におきましてもいけないのじやないか。況んや我々に対しまして法は告発すべしということを命じております。動かすことのできない、取捨できない規定でございまするから、私はこの段階におきましては
大橋氏の刑事
事件の追及ということよりも、むしろこういう新らしい事実に対しましては、一応最後的に明白にするために
馬場検事正なり、或いは時々
調べられました関係記録、これを携えて来てもら
つて当
委員会に出てもらいまして、この事実を明白にして、私は本
委員会の
最終結末をつけるべきではなかろうかと思います。どうかそういうことにお運びを願います。