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説明員(小峰
保榮君)
只今三百二十七号につきまして
専門員のかたから細かい
調査の結果の御
報告がありました。私
どもいろいろ教えられるところが多い
内容を持
つたものでありますが、
結論としては御同意しかねる面が多いようであります。甚だ失礼でありますが、要点だけにつきまして
会計検査院の見るところを申上げたいと思います。大体この案件は先ほどの御
説明にもございました
通り、
一体この二隻で百八十六万円、随意契約で売りましたこの価格が適当かどうか、これが先ず第一点だろうと思います。それから入札が当初これの数倍の七百四十五万円、こういう入札をいたしまして、今の百八十六万円を七百四十五万円で買いましよう、こういう入札をいたしまして、それが一応有効に成立したのであります。その後にいろいろな
理由をつけまして、その高い入札を破棄いたしまして、そうしてそれを大蔵省独特の計算をいたしまして百八十六万円という四分一ぐらいの値段で売
つたのであります。結局この当初の七百四十五万円という入札が高く入れ過ぎたということを現在になりますとこの九州商船でも言
つているのであります。それを先ほど
専門員は全面的にお取上げのように伺
つたのであります。この点は後ほど申上げます。それから
会計検査院が契約違反だから解除すべきじやないか、これに対しまして、法務府の
見解が解除はできない、こういう御紹介がありました。
会計検査院といたしましては解除すべきじやないかという点で一応打切
つたのであります。実は検査院もこれを解除しまして取上げたところで国がどうというものでもありませんし、それから五島の方面のかた
がたがお困りのことも重々わかります。併し一応解除の手続をと
つたらどうか、こういう意味であります。そして値段を公正にやり直したらどうか、こういう趣旨でありまして、それを解除と書きましたが
あとのことは書かなか
つただけの話であります。私
どもとしてはこの船を国が取
つたところで国が使えるものでもございませんし、結局貨客船として改造したものでありまして、あそこの定期航路に都合のいいように改造して就航いたしておるものであります、決して住民の足までとめるということまでやるつもりはございません。解除から先のことにつきましては、これは何らの法律上の根拠もないのでありますから、そこまでは書かなか
つただけであります。それは後ほど御
説明いたしますが、あらかじめ申上げておきます。それから予定価格より一二割高く落ちておる。こういうことを
専門員がお挙げにな
つておるが、実例というのは多分これは国の売払いだろうと思います。大蔵省
関係の船の売払の予定価格が安いということは後ほど申上げますが、これが安い予定価格より一、二割落ちたということは、何らこの価格が正当だということの根拠に私はならんと思います。これだけ申上げまして、大体まず第一にこの価格の
一体百八十万円が
相当かどうか、これを御
説明したいと思います。これの根拠になりました船舶は新造価格が実は根拠にな
つております。大蔵省のほうの新造船価というのは、当時若しこの船を造りましたら幾らでできるかということが根拠にな
つておるのであります。当時の船価というものは、先ほど
専門員からも御紹介がありましたように、客船というものは一切新造中止であります。売買実例というようなものもないのでありますが、
一体船価が幾らぐらいだろうかという基本になる
資料があるのであります。それは
昭和十六年の船価というものを一にいたしまして、
昭和二十二、三年というものが
一体何倍ぐらいになるか、これの見方は大蔵省の見方と世の中の実際とは根本的に実は違
つていたのであります。ここに非常に大きな差が出た原因があるのであります。これは二十三年度の検査
報告でも非常に詳細な
批難報告を出しましたが、大蔵省の船の売り方の値段が非常に安い、現状を無視した値段で売
つておるということを、二十三年度に全貌を掲げて
批難しております。垂水丸を一隻売りました当時は
昭和十六年に比べまして九倍というのが大蔵のと
つた標準であります。ところが船舶
関係の専門であります運輸省のほうで船価指数
調査というものをや
つておりまして、これによりますと実に七十一倍なのであります。運輸省のほうでは
昭和十六年に比べまして
昭和二十三年というものは七十一倍ということを御
調査にな
つておる。ところが
国有財産を取扱う大蔵省ではこれを九倍ということにしておる。ここに非常に大きな差が出て来る根本があります。その頃は一切新造は許されておりませんが、仮に新造いたすといたしますと、二隻ともそれぞれ三千万円以上かかる船であります。当時これは先ほど申しましたように、新造ということは許されませんでしたが、貨物船の新造はや
つております。その貨物船の新造に比較になるのでありますが、トン当り十万円以上はかかる船であります。小さい船でありますから、何千トンというような大型の船の建造単位とは比較にならんのでありますが、大体私
ども実は十五万円という
資料を持
つております。十五万円というのも、少し強いかも知れませんが、少くともトン当り十万円以上は仮に新造いたしますとかかるのでありますから、それを裏書する
資料といたしまして、これはこの契約をいたします当時、すでに三菱の長崎造船所に入れまして、貨客船として改造実施中であります。これの改造費に千六百万円かか
つているのであります。これは九州商船が三菱に支払
つた金でありまして、全然仮定の計算の数字ではございません。
ちよつとお
考え願いましてもわかりますが、修繕いたしまして客船にすると千六百万円かかる船の本体、それは一部未完成の分もありましたし、半分沈没してお
つたというような哀れな状態ではありましたが、ともかくも船の母体を直したものであります。それが
一体、改造するために千六百万円もかかる時代に、船が百八十万円、これが正しいということは、どうも私
どもも実は納得しかねるのであります。まあそういうことは余談になりますが、御参考に供しておきます。それから当初の七百数十万円、七百四十五万円という入札が、これは二隻で差がございますが、ともかく合計いたしますと七百四十五万円という札を入れたのであります。そして落ちたのでありますが、これが是非欲しいとか、いろいろな
関係があ
つたので不当に高い値段を入れたのであります。こういうことを当事者は言
つておるようでありまして、陳情書にもそれが出ているようであります。私は実はそうは思わないのであります。これは先ほど申上げましたように、新造いたしますと六千万円もどうもかかりそうな船であります。貨物船を造りましてもそれに近い金が当時かか
つたのであります。客船は御承知のように、貨物船よりは
内部の設備なんかで大分高くかかります。
従つて客船でも十万円近くトン当りかか
つた時代であります。それでどうも六千万円以上にはなりそうな計算が出るのでありますが、それを七百万円、少し沈んでお
つたりなんかしてお
つたのでありますが、七百数十万円という入札は、これはどうも入れ過ぎたんだ、高く入れ過ぎたんだということには私はならんと思う。現在でもいろいろ
調査の結果なり、或いは陳情も十分伺いまして
書類を拝見いたしましたが、どうも私は、未だに七百何十万円という入札は高過ぎたのだ、こういうふうな印象は実は得ておらないのであります。それからほかの実例、
当局者の作りました予定価格の数倍にな
つているという入札が、七百数十万円という入札が高過ぎたのだ、例えば二番との間に非常に差があるのであります。ですが、これは恐らくは、そう申すのは甚だ失礼でありますが、大蔵省の予定価格というものは、民間の専門家はみんな知
つていたろうと思います。当時の情勢といたしまして。それでそういう高い値段を入れなくても落ちるのであります。ほかでたくさん安い入札なり随意契約で買
つているのであります。そういう民間で、いわば商売でお買いになるかたが、そのくらいの
事情を御存じないことは私ないと思います。そうしますと、役人の作る予定価格というものは少し外に漏れてしまうというのは、これがそうだとは決して申しませんが、
一般にそういうことが言われておるようでありますが、これだけが漏れなか
つたということは私はないのじやないか。そういたしますと、当時官で作りました百何万円とか、二隻合せまして百何万円というような予定価格が正常だ
つたという前提の下に議論を進めて行くことは実はどうかと思うのでありまして、私
どもはこれは非常に当時の船の値段、社会情勢というものを無視した不当に安い予定価格だというふうに実は了解しております。それは二十五年度の検査院の船舶売払に対する全般に対する
批難に対しまして、先ほど申上げましたように九倍とか、七十倍というような数字を実は
批難したのでありますが、大蔵省はその後本院のあれに従いまして値上げしておられます。現在ではたしか百倍、これで売れなくな
つた、弱
つた弱
つたということを仰せになるのであります。いいものは先にどんどん安く売
つてしま
つて、
あとへ残
つたのは悪い船だ、悪い船が残
つた頃にな
つて上げた、これはまあ悪意があ
つてしたわけではないのでありますが、結果から見るとそういうことになるのでありまして、売りにくいのは当り前の話でありまして、百倍は高過ぎるから売れないというふうには私
どもは見ておりません。このくらいを申上げますと、大体この案件についての
会計検査院の
考えが或いはおわかりになると思います。
それからもう一点、解除の点について法務府の
見解も出たようであります。御参考に申上げておきますが、この解除は、検査院がここにも実は、
売渡条件違反として解除すべきものと認め注意した、云々とありますが、これは先ほど冒頭に申上げましたように、決してまあここでお終いにしちやう、船を取
つてしまえというふうには
考えておりません。今のようないきさつがありまして、七百数十万円という入札をしたものを、如何なる
事情があ
つても百何十万円で売るということはないじやないか、これが前提とな
つておりまして、実はもう少し高い金を取
つて欲しいのであります。そういう前提として、解除ということを持ち出したのでありますが、これは法務府がどういう御
見解で解除できないと仰せになるのでありますか、私
ども実はわからないのであります。これは契約書の正本を持
つておりますが、契約書の条項といたしまして、はつきり、貨客運搬船としての使用は認めない、こう書いてある。これは特に一項を加えた契約書がここにございます。ところが
国有財産法の第二十九条で、用途指定の売払というのがございます。
本件は用途指定売払に当るわけでありますが、これは
国有財産法を読みますと、三十条で指定の用途に供さない場合は、契約を解除することができる、こういうことが
国有財産法できま
つております。それで私
どもといたしましては、正常な価格を追徴して頂く前提として、先ずこの契約条項、これは文書にはつきり現われている、向うが出しておる
書類であります。これは今申上げましたように、旅客運搬船としての使用は認めない、こう書いてあるわけです。この条項によりまして、一応
国有財産法の二十九条によ
つて売
つたものであります。ですから三十条によりまして解除の
段階に話を進めるべきじやないか、勿論これは先ほ
ども申上げました
通り取
つてしまえ、国が使えということではありませんが、一応その
段階に進んでともかくも七百数十万円という入札をするときと同じ状態にな
つたわけであります。GHQの指令によりまして、七百数十万円の入札をしたときに、貨客船として使うのはいかんということにな
つたのであります。それで、今申しましたように旅客運搬船としての使用を認めないという条件をつけたのでありまして、これがなくな
つたわけであります。そういたしますと、七百数十万円という入札をした当時の状態に戻
つたわけでありまして、そうしたら
一体その七百数十万円の入札というものをもう一遍思い出して見たらどうか、正常な値段、当事者が入れた値段というものをもう一遍思い出して、もう少しいい値に直したらどうか、こういう趣旨で実は
批難したような次第であります。