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1952-05-29 第13回国会 参議院 経済安定委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    公聽会   ————————————— 昭和二十七年五月二十九日(木曜日)    午前十時五十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     佐々木良作君    理事            郡  祐一君            永井純一郎君    委員            古池 信三君            愛知 揆一君            山川 良一君            杉山 昌作君            須藤 五郎君    委員外議員            下條 恭兵君            西田 隆男君            栗山 良夫君   事務局側    常任委員会專門    員       渡辺 一郎君    常任委員会專門    員       桑野  仁君   公述人    日本電気産業労    働組合中央執行    委員長     藤田  進君    富士製鉄株式会    社社長     永野 重雄君    東京都民銀行頭    取       工藤昭四郎君    北海道綜合開発    審議委員北海道   石炭鉱業協会長  船橋  要君            金丸 香代君    日本農民組合中    央委員長    久保田 豊君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○電源開発促進法案衆議院提出)   —————————————
  2. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) それでは電源開発促進法案に関します経済安定委員会公聽会第二日目を開会いたします。  御連絡申上げておきましたように、本日は午前中に日本電気産業労働組合中央執行委員長藤田進君、それから富士製鉄株式会社社長永野重雄君、東京都民銀行頭取工藤昭四郎君の三君に午前中公述をお願いします。  公述人かたがたはお忙しいところ大変有難うございました。大体公聽会の形は昨日と同様でありまして、公述人かたがたに申上げますが、二、三十分程度公述をお願いいたしまして、そうしてずつと公述を三人続けてやつて頂きまして、後一括いたしまして質疑応答ということにいたしたと思います。それでは最初日本電気産業労働組合中央執行委員長藤田進君を御紹介いたします。
  3. 藤田進

    公述人藤田進君) 私が電産の中央執行委員長藤田でございます。電産はつとに国会の衆参両院各党代表皆さんにお集りを願いまして、今次電源開発促進法案中心に私ども意見を持込んでいるのでありまして、本日が本委員会における公式の場で、私どもの考えておりまする本法案に対する態度を表明して公述に代えたいと思います。  結論を申上げますると、本法案に対しては真向うから反対し、且つその法案阻止のために全力を挙げて鬪うという態度であります。昨日来の本法案に対する賛否それぞれの公述を聞いて見ましても、おのおのやはり煮詰めて見ると、個人的な或いは当該団体のみの利害を基としたところの議論が吐かれているように感じるのであります。つまり賛成する側としては、中には実に純真な、誠に電源が一キロワツトでも開発されることを望むが故に、とにもかくにも賛成するという極めて純真なものもなしとしないのであります。これらは兒童の声として聞くとしても、積極的に賛成されているものについても、甚だその論議のいわゆる根拠に欠けているものがあります。又反対を取上げて見ても、例えば、現行のままで遅々として開発も進まないが、それでもなおそのままでやつて行くために、現在出されている法案反対するという立場も、これは明確に出ていたと思います。私ども事電源電力に関する限り、すでに国民必需品生活物資としてあたかも主食に匹敵するものだ、従つて一部特定の利害のために、この問題を取上げ、なお曲がつた間違つた立案の下に結論を出すべきでないという態度を以ちましてすでに私どもは過去七カ年間電力行政と、その機構運営について鋭意検討を進めて参つております。そのためには、あらゆるエキスパート、学識経験者意見も聞いて、なお直接電気という一つの家の中に四六時中いまして、本当にこの家では不便である、これでは間取りが惡い、ここはこうしなきやならんという諸般の問題について取上げ、結論を出しているのであります。従いまして本法案を論じる場合に、一般需用家、大口、小口、一般電燈と言わず、これら需用家のために如何なるものが一番今後の電気事業あり方としてよろしいか。勿論日本産業復興、貿易を促進する意味においても、豊富低廉なという不可分のこの問題を解決するためにはどういう方式が一番よろしいか、こういうことが主眼点になると同時に、忘れてなりませんことは、すでに電気事業がずたずたに、ばらばらになつてその機能を失わんとするがごとき法案が、衆議院においては通過し、参議院の理性に基いてこれが修正された事実があるし、更に昨日法案のまだ極めて草案の過程だとは思いまするが、公営或いは私営の自家発電の還元、公営の復元、これらの法案がすでに衣から鎧をすでに露出しているのであります。この問題と全く初り離してここに提案はされているが、これらの、私どもは陰謀と称しておりまするが、こういつた実態を十分見究めないで、本法案だけ切り離して考えることはできない、こう言わざるを得ないのであります。  そこで若干の説明を加えて見たいと思いまするが、電気事業が今日にまで発展をいたしてなお不足をし、運営についても諸般電気事業一般大衆需用家から批判を受けている。これらの歴史をずつと検討いたしますときに、我が国の電気事業は明治三十年に東京電燈日本橋に火力を創設して以来のものだと我々は検討の結果その実態を見出だしたのであります。その後だんだん町村或いは自家発が極めて小規模の火力水力の形で発展をして参りましたが、遂に昭和十四年には、過程は省略いたしますが、御案内通り日発管理法、十七年には配電統合ということで電気企業あり方とその運営について、抜本的な改革が加えられて参りました。取りも直さずこれは当時の戰力増強意味目的はあつたけれども、かかる形態が最も電気事業なるものを、その機能を一〇〇%発揮させるのだということにはほかならない。使つた目的間違つていた。ところが昨年朝野の反対押切つてポ政令と称して電気事業の九分断、リオーガニゼイシヨンが強行されました。当参議院においても実に長期に亘る検討が加えられて参つたことはこれは記憶に新たなところであります。従いましてその前後の事情を若干申上げて、今日の電気事業をどういうふうにメスを加えて行くか。本法案に対しては如何なる態度をとつたほうが、国家百年のために、日本の産産発展のためによろしいかという点を御参考までに申上げたいと思うのであります。成るほど、再編成に当つてども意味変つた編成主張いたしたのであります。つまり一社化しなければ日本電気事業産業復興のためにならない。ところが司令部が当時メモランダム吉田首相に宛ててあらゆる努力をして、あらゆる手段によつて、再編成をせよ、勿論当時我々は司令部の内部の人々にしばしば会見をしてその実態はつかんでおります。司令部の中にもいろいろな意見が対立しておりました。当時クリーブランドの或る電気会社の役員をしていたミスター・ケネデイ、これが中心になつて編成を行わしめたことは事実でありまするが、その司令部と称するメモランダムの中に、果してポツダム政令まで引出して再編成をせよと言つてつたかどうかは今日明らかにされておりません。司令部聞げばさようなことは言つていない。政府に聞けばそうではなく、ポ政令は止むなし。当時自由党の中でも賛否両論があつた。戰争が終つて敗戰になれば皆敗戰論者であるが、今日聞けば自由党皆さんの中にも再編成はおれは反対であつた。いずれを聞いても反対であります。再編成賛成であつたという人は聞かないのであります。これはやはりこの法案をめぐつても、将来、あの法案には賛成でなかつた、党議に服するために止むを得ず棄権をしたとか、賛成をしたとかいうことのないようにして頂きたいのでありますが、要するに当時の再編成なるものは、外資導入を受けるために一番よかろう、よく儲かるだろうという会社をピツク・アツプして、そうでない会社をこれをオミツトしているのでありまして、日本の跛行的な電気事業発展ということが必然的に予約されていて、而も事業調整はうまく行かない。いわば電力の危機を目の前にすでに予約されていた。それが現実には昨年の九月乃至十一月に現われたのであります。そういう事情がわかつているがために、私どもは再編成に対してはこれに反対をし、できることならばその際一社化の再編成をすべきである。需給調整の面からも、電源開発の面からも、あらゆる企業の普遍的な発展のためにも、これ以外にはない。併しすでに雲行きは再編成に赴いていたので、当時現状維持に線を下げて、日発配電を解体し、九電力会社を作ることに反対をしたのでありましたが、この止むを得ざる一線下げた意見にすら遂に賛成は得られずに今日に至つたのであります。当時日発は御承知通り発電送電一貫経営であります。配電はこの卸売りを受けて、おおむね五千キロ以下の発電所は若干発電をしてやつておりましたが、殆んどの電力日発から卸売りを受けて各需用家配給をしていた。製造販売二元化でありました。ところが実際に運営して見ますると、やはり日本の東西、或いは殊に南北に連つているこの小さい島で、流域も非常に狭い、河川は急流である、而も水主火従である、六割は水力で四割は火力で補わなければならん、こういう事情の下にあつては、やはり電力融通の問題と、收入並び支出合理化を各社間に図らなければならない。これが要するに共同生産制プール計算の問題があつたのであります。更に需給調整の問題では一貫運営を、旧日発において需給調整をやつていたのであります。第一の問題はプール計算なるものがやはりうまく行かなかつた予算決算プールをやつて見てもやはり何といつてもこれを個人家庭個人のやはり收支に考えても匹敵するのであつて、それぞれの会社間では予算プールをやり、決算プールをやることがやはり決定している以上、それぞれごまかしが伴います。收入は少く見て支出は多く見るところの経理資料が山と積まれて来る。電気事業厖大なる内容において逐一どこにごまかしがあるかということは把握しがたい。よつて決算プールを廃止する、予算プールだけにするという問題に発展いたしました。遂にはプール計算なるものを廃止するという段階になつたのであります。ますますうまく行かなくなつた。更に需給調整の問題も、これは丁度必需品に例えれば米と同じような共通の問題があります。ただ共通の問題として考えられない特異性のある問題が一つだけあります。今日米の統制撤廃の問題が出て、これは世論の前に表面化するに至つてはおりませんが、併しこれを考えて見ても、生産県消費県がある。而もこの米価がそれぞれの各県によつて大きく差等がつくということは、国民生活に重大な影響を及ぼす。併し今の制度であれば、生産県から消費県生産期においてはどんどん輸送して蓄積して、いざという場合にはそれを出して行くこともできる。まあこういつたいわゆる必需品であり、而も全国一本の運営をしてアンバランスのないように、これを配給する値段も大きなアンバランスのないようにすることは電気も同じことだと思います。ただ電気の場合は、米のごとく蓄積することが容易でありません。雨が降つたときにたくさん電気造つて、どこかにちやんと積んでおいて、そうして電気の不自由な四国とか或いは九州、中国方面にこれを九月或いは十月の渇水期、一、二月の渇水期にどんどんこの罐詰めにしたものを出して行くというわけに参りません。ただできるのは石炭で貯蔵するか貯水池に水をためるかであります。併し石炭の問題は御案内通りそう容易に貯蔵するだけの余地はない。雨がたくさん降つて洪水して氾濫を起す不安がある。併し今日の既設の設備容量ではこれを堰止めるだけのダムの容量はありません。要するに電気の蓄積、これはできないのであります。これは米と違うところであります。違うからして日常すでに各倉庫に、消費県に積むことができないのであるから、必然機動的に間髪を入れず融通をして行く、これはできるのであります。トラツクや船や汽車に乗る必要はない。送電線スヰツチを押せばもうただ地球を一分間に何回廻るかわからない速さでありまするから、これはこの運搬は実に容易であります。でありますから生産県からさつと、消費県が非常に苦しければこれに間髪を入れず融通することができる。これが又一々公益委員会やら電力調整審議会やらでいろいろなことで議論をしておる間に刻々時期は過してしまうのであります。機動的にちやんと刻々スヰツチの切替えができるような仕組がないと、法律だけはできても実態がそれに伴わない。ここに電気特異性があると思うのであります。従いまして再編成前の状態は、要するに卸売配給、つまり製造販売、ああいう形については我々はもとより反対でありまして、プール計算という中には、先ほど申した非常な弊害がある。そこに官僚が楔を打込んで来て、やはり電気事業官僚化し、而もその間にはいまわしいいろいろな問題が招来いたします。曾つて電気事業は、昭和二十二年だつたと思いまするが、会社組合、電産共同いたしまして官僚には今後饗応を一切しないという声明書を出さざるを得ない状態にまでなつたのは事実であります。そういつた事情でありまするから、やはり発送、配電一貫経営をすることによつてのみ、日本電気事業を本当に需用家のための、国家産業発展するためのものになるという結論に達して、再編成には私ども立場からの要綱を掲げてあの九分断反対したのでありました。ところが遂に押切られて、今日では自由党の中でも相当多数あれには反対つたそうでありますが、併しあの分断をされたあと出て来ておるものは、我々が言つた通りそのまま出て来ておるではありませんか。結論はまさに一年後に漸く皆さんによつて認識されたのであります。昨年の九月、十月以来、私どもは各産業消費者並び労働組合皆さんにお集まり願つて、あの再編成後の実態を訴えております。成るほどよくわかつた。当時電産が電産だけの立場言つておると思つて誤解していた。実際に電気は非常な緊急制限に会い、而も全国的なアンバランスがあるというような状態開発はうまく行かない、外資は入らない、よくわかつたということで、漸く我々の主張がここに大衆化しつつあつた矢先、これに対して出て参りましたのが今次の自由党中心とする議員提出法案であります。私どもは今日なお再編成当時の主張は捨てがたいのであります。電気事業を思えば、国家公共事業としての電気事業を思うときに、あの主張が正しいという確信をますます強めているのであります。今日申上げれば、非常に極端なという、現実政治の下においてはさようなことは無理だという御議論もあると思います。これは余りにも現実を直視され過ぎて、而もその現実が実際に正しい理論と実態に即していない。いわば現実に立脚したと言いながらしていない。空論に過ぎないとしか我々は見ないのであります。つまり再編成をなされたことは、これはもう今日如何ともしがたいのでありまするから、あの弊害を速かにここで反省をして、これを是正することが最も大事なことだと思います。従いまして現在九電力に分れているが、昨日いろいろ公述もありましたので、時間もない関係上詳しくは申上げませんが、確かに現行電気事業あり方は、全然これでは将来の電気事業なるものは、更に日本産業としての原動力として役立つものにならない。これは私どもはつきりと認めております。然らば今後どのようにこれを改善して行くかということであります。それは先ず日本電気事業をその公共性に立脚して発展させることを阻害しているものを除去しなければなりません。これは第一に、電気事業を、惡い言葉で申上げますれば、私は余り婉曲な言葉が出ないので御了解を願いたいと思いますが、先ず電気事業を食い物にしようという考え方、これを国民と共に排除しなければならないと思います。これは電気事業経営者と言わず、或いはあらゆる政治勢力と言わず、或いは公益事業委員会と言わず、電気事業国民大衆のものである。国家公共のものであるという意識に徹してもらいたいと思います。これにはあらゆる利権が伴うと思います。確かに昨日の公述を聞いても、現在の電気会社は五十五歳の停年だから、あとの人を集めてやれば何とかなるといういわば今遊んでいる隠居仕事にやるのだという考え方も、これは確かに今遊んでいる人たちを一族郎党引連れてこれに入つて行けば、確かに思うようになつて、一攫千金の富は得られるでありましよう。併しそういう考え方も捨ててもらいたい。同時に資本家……確かに現実資本主義社会であります。併しながら電気事業は昨日の公述人も言われたように、特殊のやはり監督制約を受けている。資本主義の下において資本主義的な経営を本質としてはいるけれども、実際にはあらゆる制約監督を受けている。公共事業であるということは言つているが、何と言つて利潤のない所に投資はない。又利潤のない企業運営はない。この利潤中心としたところの運営、これはやはりはつきりと電気事業に関する限りもつと改めてもらいたい、こう思うのであります。極めて抽象的でありますが、質問等があれば詳しく申上げたいと思います。  更に本法案について直接これを申上げますならば、先ず経済安定本部が出されている趣意書らしいものによつて見ますると、日本産業はやはり砂上樓閣に立つたものではない。これは同感であります。更に曾つて我々は産業復興会議その他を通じて石炭ベースいわゆるカロリー源動力源、これを電力に切替えなければならん。石炭ベース等々から電力ベースに切替える、これも賛成であります。主張しているところであります。ところがこの法案を見ますると、まさに砂上樓閣どころか泥沼の上の樓閣であると言わざるを得ないのであります。この法案めぐつていろいろ賛否両論は出ておりまするが、本当に電気事業、殊に電源開発がこの法案によつて促進され、而もその電気が豊富なだけでなくて、実に低廉なものになつてあらゆる家庭も、あらゆる工場も殷賑を極め、文化生活ができるかどうか、これを先ず検討して頂きたいと思うのであります。この法案によりまするといろいろな書類が付いておりまするが、要するに当面十カ所を挙げて開発をする。全体では六千数百億になる模様でありまするが、この通りつて行つた場合に、どういう方面からこの智惠をおとりになつたか知りませんが、私の想像では、一部土建業者と一部官僚意見をそのまま具現されておるというように断ぜざるを得ないのであります。私どもも長年電気事業に従事して、殊に私は電源開発に携わつて、そうしていろいろな苦い経験を持つております。電気事業ほど土木工事によつて重要な且つ危險を伴うものはないし、やり方では幾らでも儲かるし、びしびし監督されれば全然儲けがないといつていいような極めて大きな幅を持つた性質の土木工事であります。皆さん東京あたりでよく道路を見られると思います。まだ大した亀裂も来ないし、陷没もしていないのに鋪装をめくつて、そうして新らしい分厚いコンクリートを打つ、アスフアルトにする。田舎のほうでは余りそういうような、泥沼鋪装どころか砂利も配給されない、こういう事情にあります。併しこの工事を見ても確かにいろいろな幅がある。運営について、施工について幅がある。けれども一応三十センチ、二十五センチというような設計であれば、全部ごまかして見たところで厚さが二十五センチか三十センチのものであります。併しこの電気事業に関する限り、大きな仕事を、何万立米という堰堤を作り、昔はよくあつたのでありますが、それらが決潰した事例もたくさんあります。近くは揖斐川でも西平発電所は遂に施工中決潰して下流にも被害を及ぼした。或いは中国黒坂発電所あたりは五或いは十メートルのプレツシヤー、圧力隊道がパンクいたしまして、一万八千キロの電気が供給できるというときに、通水試験の際にパンクをいたしまして、従つて鉄筋を入れて非常に断面を縮めて長期の改修の工事伴つたのであります。これは極く一部の例でありまするが、ここに書いてあるように、そういつたものはもう外部団体外部のいろいろな機関に任すのだ、理事が五名で従業員は当初福田さんに聞きました当時は百名以内にしたい、それでは日発の再現じやないかというように強く衝かれたものですから、それを回避するためか知れませんが、百名以内にしたいということを言われたけれども、よく考えて見ると、そうも行かないので二百名くらいに改められておるようであります。而も十カ所であります。こういうこと、これは理事五名が足らなければ十名にし、或いは従業員は三万にしというようなことは反対論として出るかも知れません。そこに至るならば我々の主張とずつと同じような方向に来るのでありますが、要するに電気事業なんかはアメリカOCI、その他TVAを引用されております。私はTVAについてもずつと今日まで研究を重ねて、現地でもいろいろ資料を入手して帰つて来ております。あのTVAが果して請負工事OCI、その他が中心になつておるかどうかは、実際に研究された人であるならばはつきりわかると思います。これは従業者は、あの小さいテネシー州を中心とする二百七、八十万キロの過去数カ年の開発でありますが、これはまさに直営が主であります。一万三、四千名を常時抱えて、更に若干の請負、これがTVA実態ではありませんか。更に日本の場合はこれはもう惡いことでありますが、土木工事にまつわるいろいろな問題があります。これは殊に現場から本社に至るまでそれぞれの立場、階級において忌わしいことがあります。それほどに土木工事なるものは実に危險を伴うものであるし、工事そのものが、以上申上げたように極めて人命に直接影響のある、下流厖大被害を受けるか受けないかという重要な仕事をするのであります。従つて設計或いは若干の監督がちらちらすることが却つてこれは弊害を併う。これは何といつて重要部分直営で以てやらなければならない。現在の電力会社がやつておる場合もそうであります。重要部分はすべて直営、その他土工等にはこれは請負、而も請負の場合には各所に監督員の優秀なものを配置しております。最小限度配置していても、今提案者側のほうの資料を見てもわかるように、一カ所の発電所に少くも百名以上の人は必要とするのであります。電力会社失業救済で人を入れるどころか、これは人が足りない。人を入れ、技術員を……、土木部長は人が足りないから仕事が進まないと言つておるが、そういうものにはなかなか人を入れようとしないくらいな所でさえも、こういうふうに相当な人を必要とするのであります。こういう土木工事電源開発特異性を考えて見まするならば、今ここで考えられておるような法案とその説明内容では、絶対に電源開発は促進されるどころか、一部の利権、一部の人たち厖大な金儲けをする法案に肩代りすることがより明白であります。そのことには我々賛成できないのであります。  更に我々には豊富なだけでは電気開発は駄目だということを申上げたいのであります。アメリカイギリス事例がとられていろいろな比較が出ております。例えばここでは小口程度需用家の引例を申上げたほうがピンと来ると思いますが、日本では昨年の統計を見ますると、小口電力料金が六円九十五銭、アメリカでは九円二十銭、イギリスでは九円十九銭、九円台と六円台でありまするから、キロワツト当り非常に安く考えられます。ところがアメリカ家庭に行つて見ても、御承知のようにもう電気冷蔵庫からパン燒器から、全く薪を割つたりするような家庭はもうない。惡い所でガスであります。これは單に電気料金をそのまま並べてキロワツト当りが高い安いというようなことを論じることは、これは全く間違いであります。つまり国民の所得、国民の、それぞれの国々の所得の割合と電気料金、その他の物価の割合を比較しなければならないと思うのであります。仮に一般勤労者の立場をとつて見まするならば、生活費の中に一体何%のものが電力費、電燈、電熱その他で含まれておるかというこの点であります。この点は大ざつばに申上げまして日本の金、円貨に直してアメリカの労働者は平均一カ月約十万円ということは誰も否定できないと思う、而も週給です。日本の場合はあらまし申上げて平均一万円には来ていない。いわば十分の一であります。つまりキロワツト当りの單価が僅かに一円、二円違つて見たところで、実際生活費の中に及ぼす影響というものは甚大なものがあるのであります。従つて豊富な電力は作られるのでありますが、丁度最近店にいろいろな物が並んでおるように、国内の消費がないならば、或いは貿易が振興するのに役立つ電気がでないならば、單に電気が足りない、緊急制限があるから、ずつと今幾ら金がかかつても作ろうというようなことを考えて作つて見たところで、これは何にもならない。アメリカTVAでは成るほど発電所ができていて、発電機が据わつていない所がたくさんあります。これは電気があり余つておるから発電機を据えていないのであります。日本の場合もそれとは違つた意味であり余つてというより使いようがない。恐らくこれができても電気冷蔵庫パン燒器まで家庭に入るような……、非常に生活費の中に占める割合が微々たる電気料金ではないと思います。なぜならば、先ほど申上げたように、このような仕事をやつて行くならば、恐らく通水試験には又一ヵカ年もかかるような補修を伴うようなパンクをして見たり、決潰して見たり、而もそのコストが、現在一キロワツト当り十万円乃至十三万円はかかります。で、キロワツト当り開発するには現在の電力会社でやつているのがそうであります。これが更に金任せの工事、金任せの施工というようなことになれば、これはもう驚くべき、我々想像もつかないような一キロワツト当りの單価になると思います。これをカバーするために、こまかすために、政府出資に対しては配当しないとか、或いはそのカバーとしてどこからか国家財源を持つて来るというようなことをやつて見ても、これは、心ある人はちやんとよく知つておるのであります。であつて国民生活に何ら役立つものにならない。  次に、この法案によりますると、運営の問題でありますが、でき上つたものを、讓渡、賃貸、又は直接電力の供給というふうに事業目的はなつております。成るほど讓渡、賃貸、或いは供給、文字では書けるのであります。現在九電力会社間において、どのような問題が軋轢となつているか御承知だと思います。そう簡單に、まあ法律で押付けてしまえば別です。多数を頼んで、とにもかくにも聞かなければぶち込んで行く形でやるならばこれは又別であります。いわゆる権力政治でやれば別ですが、民主主義社会における現在の憲法をそのまま具現したところの政治を行う以上、設備の讓渡、或いは賃貸、これらが果してこのような形でうまく行くか行かないか。行かないということがはつきりすると思います。これは昨日の公述人の中にもはつきり言われていたと思います。更に供給の問題であります。成るほどTVAの場合でも、アメリカのいろいろな自営、自家発電の場合でもそういつた、システムがあることはある。あるけれども日本の現状においてそういつた供給がうまく行くか行かないか。而も提案者の説明によりますると、これは供給という文字が書いてある。あるがそれを目的としてはいないということでありまするから、従つて讓渡、賃貸、これにできたもののあと始末をそこに考えられていると思います。いわば捨て子をするような形でこの問題が処理されて来ると思うのであります。従つて、以上のようなことをずつと考えて見ますると、現在の機構で以て現行電力会社でうまく行くかと言えば、これは行かない。果してこの法案がうまく行くかと言えば行かない。そうならば、一体どうするのだ、この問題が出て来ると思うのであります。これは日本のこの小さい島々を、而も当初申上げたような水主火従実態において、電力融通を、そうして全国的な電力融通だけではいけない。やはり料金の均衡、地域差の撤廃、これをどうしても実現しなければならないという事情下にあつては、簡單に申上げて、日本電気事業機構、経営の形態を一社にしなさい。一社にこの際すべきだと思います。これは容易にできるのであります。これは曾つて四月二十一日に、この提案中心になつてつておられる福田先生も、確かに電産の言うことには賛成だと、けれども、ここでそのようなことをやれば、若干のやはりここに空白、ポケツトを生ずる。あれは四月でありましたので、昨年再編成をしたばかりで、司令部のOKもとれないというような反対論がありました。もう司令部のOKなんてこれはもう恐らくないはずであります。空間ができるか、この問題であります。空間はできません。この法案を仮に強行されたとするならば、一体このままでやると言われたやつが、もうすぐこれではやれないというふうにつまずかれるのであります。あとで申上げたいと思います。そんなようなごたごたしていて、而もつまずく、その石をはねのけてやつて見てももうすぐに末路がはつきりしておる。でありますから、この際、昨年再編成であのようなことができたのだから、今度は九つの会社があるのだから、あらましに言つて、これらを全部支店にしてしまつて、統合して、どこかに本店を一つ作りさえすればいいのでありますから、これをやつて頂きたい。やはり製造販売一貫の経営をして、そうして全国普遍的に豊富而も低廉な電力を供給しなければ国民の期待に反すると思います。そうして今のような高度な利潤追求でなく、これには指導機関、監督機関を設けて頂く。いろいろな階層の代表をこれに参加せしめて、指導機関、監督機関を設ける、これも容易にできると思います。電力審議会がここで画策されておるのでありますから、このようなことができます。これがやはり現在最も早道であり、而も将来性のある日本産業貿易を伸展するためにはこれ以外にはない。深く検討いたしますると、電気事業経営形態は一応九つのことが考えられます。九つのことを一々検討いたしました場合、一社経営、一元化することが一番正しいし。繰返して申上げまするが、日本の実情に最も適合すると思うのであります。再編成は、当時司令部の一部のつまり再編成を強行しようとする人たちは、そういつた大きな図体にすれば云々といろいろなことを言つていて、私は直接アメリカの内部の実態を細かく数字的にも挙げて見ました。御承知通り日本に一番近いところのカリフォルニア州、あの日本人が一番たくさんおる加州、あれを見て御覽なさい。日本と全く地理的な條件も、ロツキー山脈を見ても同じなんであります。水主火従言つてもよろしい。あのように、日本よりも一万五千平方ヤイル大きいじやありませんか。大きい図体をしておる。送電行程も極めて蜿蜒たる長大なものであります。これが発送配電、更にガスを一貫経営して、うまくやつておる、我々はあのシステムそのままを取入れようとは思いません。もつと公共のためになる公益性の高い仕組にするために、指導機関、監督機関を設けて、そうしてこの運営をしたい。そのためならば国家財源も財政資金も大いにこれにぶち込むことができる。国民も安心してこれに出すことができると思うのであります。私どもは、そのような観点から、この際非常に極端なことを言うと言われるのは、現実を無視して又変なものを作つて、又再編成、再編成、そのたびごとにいろいろな問題が起きて、そのことが却つて味があるように思われておること自体が残念なんであります。この際抜本的に容易になし得る一社化、そうして公益性の高い運営に切替えるべきだ、これを強く主張いたしたいと思います。この意味合いで、目下日本の総評を中心とする組織労働者は全国的にこの主張を今広くアツピールいたしております。電産が中心になつて、広くこの考え方をアツピールいたしつつあるのであります。殊に衆議院においては、ここに共産党議員のかたもおられますが、共産党から自由党挙げてあの公納金、而も公営自家発電の例の復元、これに賛成をしておられる。これは実に由々しい問題だと思うのであります。これは参議院によつて幅広く修正がされまして、参議院に理性ありという再認識を私どもはいたしましたが、再びこの電源開発促進法、名前はよろしい、最近名前に非常にごまかされるのであります。破防法、破壞活動を防止するなんて、この名前だけには誰も反対する者はない。この名前にごまかされないで、電源開発促進法であるかないか検討されて、あの公納金、復元の法案に示された理性をここにもぶつけて頂きたいことを全組織労働者は期待いたしておりますその結果どういう賛成があり、どういう反対があつたか、これは又十分下部にも趣旨の徹底を図つて、将来本当に国会が国民のためにあらゆる法案検討し、可決するように我々は今後も努力を続けて行きたいと思うのであります。  なお若干申し落した点もあるのでありまするが、時間が非常に長くなりまするので、以上を申上げまして私の公述に代えます。
  4. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 引続きまして富士製鉄社長の永野重雄君にお願いいたします。なおお断りいたしますが、実は永野さんから私宛てに医師の診断書を添えられまして急性喉頭炎で声が非常に出にくいというわけでありまして、最初或いは公述が不可能かというわけで意見書を添えられておつたのでありますが、少し出そうだというので出る範囲内において公述をして頂くことになつております。御了承を頂きます。
  5. 永野重雄

    公述人永野重雄君) 只今委員長のお話のように風邪を引きまして咽喉を痛めましてお聞きにくいと思いますが、御了承を願います。  今日の日本の置かれておりまする立場が、過去の大きな失敗と申しますか、何と申しますか、戰争の結果極めて小さな領域に八千数百万人の人間が生活をしなければならないような状態になつたのであります。これが今日置かれている我々の最も考えなければならん実態であります。そこでこの苦難を打開するためには、足りないものを作る、又足りないものを海外から買つて来て不足物資、不足食糧を補う以外には方法がないのでありますけれども、これは一に産業を振興して国力の基を作り出す以外に方法はないのであります。その産業を振興しようといたしますれば、必要なものは技術、広義に申しますれば人間の能力と天然資源であります。人間の能力、技術につきましては、まだまだ勉強せんならん点はございます。今後も眼を拡げて世界的に技術、経営能力の伸展を図らなければならんことは勿論でございますけども、一面天然資源の点におきましては、極端に言えば、あると言つていいものは、既存しておると言つていいものは、極言すれば電力電源だけではないかとすら言えるのであります。それに次いで比較的あると言えるのが石炭だと思いますけれども、この二つのものを最大限に活用して、只今申上げたような産業の伸展に寄與する。足りない資源を持つて来てでも、この二つは比較的ある。或いは相当持つておる資源を開発してこれにもう一つある人力、これを附加してこの三つのもので以て生産を拡充し、日本の足りない食糧、物資等を持つて来るのがたつた一つ日本の生きる道かと考えます。これはすでに各方面で論ぜられた問題でありまして、そのためには、終戰後も幾たびか唱えられ、又検討されたのでありますけれども、今日に至るまでその成果を挙げ得なかつたことは、皆さんと共に我々も甚だ遺憾に存ずる次第であります。併し、幸いにして、今日この問題が国会で取上げられておることに対しては、我々非常な敬意を拂う次第であります。ただ問題は、その方法であるので、いろんな角度から検討がされる次第であろうかと存じますが、電源開発につきましては、私の仕事を御紹介することが、私の考え方を御披露するのに若干役立つかと思いますが、私は製鉄事業をやつております。従いまして、相当多量の電気を使いますので、十数万キロのものを発電いたしております。又最近ではいわゆる自家発電として水力開発も考え、なお且つ足らないので相当多量の電力を買つておるのであります。こんな角度から考えて見まして、電力開発はその特定産業をやつているものの必要から、自己の信用と、自己の技術を前提にして開発しているのでありますが、この点はその運営等から見まして、相当考えて然るべき問題だと思います。又電力会社が各地にあるわけでございまするので、その信用と技術を以て開発する、これも必要かと存じます。併し自家発電と申しましても、おのずから自己が本業を持つておるわけでございまするから、無制限にそちらに力、信用を注ぐわけにも参りません。電力会社についてもそういうことが言えると思います程度については。そこで目先のそろばんには合いにくい、又非常に厖大な資金を要するけれども、併し先ほど申しましたように、日本の既存しておる、或いは潜在しておる資源を拡充発展さすためには、どうしても必要だとなれば、これはどうしてもやり拔いて行かなければならない問題だと思います。その意味において、そういう電源開発するのにどういう方法がいいかということになつて来れば、おのずから帰結は一つに落着いて来るのではないかと考えます。結局これは個々の企業では届かない或いは技術なり或いは信用、資金を国の必要とする総合的な国家立場において出して、これを運営する以外には最善の方法はないかと考えるわけであります。従いまして、そういうものを、そういう電源開発する特殊の会社を作られることは必要であると私は同感をいたす次第であります。  ただ電気は、すべての産業共通資源であると同時に、先ほど来もお話がございましたが、国民生活にも直結をいたすものでございまするので、これが豊富であることは勿論、同時に安くなくてはならない。これが延いては他の物資を獲得する、生産、工業の原動力になるわけでございまするので、そういう点に思いをいたしますれば、このコストの低下の方法といたしましては、電気厖大な設備を必要とする、言い換えると、厖大な資金を必要といたしまするので、コストの大きな部分が資金に対する金利だと考えます。この金利に対する配慮が必要かと思うのでありまするが、今回の法案を拜見いたしますると、会社に対して政府は資金を確保するとございまするけれども、ただ確保だけでなく、資金の潤沢と同時に、低廉な資金を確保することが必要だと考えます。普通の場合には、一般金融機関からの資金ですと一割、或いは一割一分、見返資金でも七分五厘、開発銀行の資金でも九分という程度でございまして、これを国際的に考えて見ましても、アメリカあたりの例が三分五厘乃至四分見当の金利を使つておるのでありまして、これが国際競争の間に立ちます場合は、同じ立場で競争するわけでございまするから、それの共通の母体になる、共通の原価に織込まれる点を考慮いたしまするならば、そういう点から競争力に劣らないような考え方としまして、できるだけ豊富であると同時に、安くできるように、安く金の使えるような点を御配慮を頂きたいと思うのであります。  なお法案を拜見いたしますると、総裁、副総裁、理事、言い換えまするならば、幹部諸公が政府の選任、任命ということになつておりまするけれども、これはいろいろな政府の発言力を持つておられまする機関の或る場合には役員の全員が政府任命であり、或る場合は最高首脳部だけが、或いは監査役だけが政府任命であつて、一般理事は責任者の任命だという場合があるわけでありまするけれども、臨機の処置といたして、臨機応変な処置がとりいいように、又一つの意思が敏速果断に運営されるためには、私の考えといたしましては、政府が相当な責任を持つ限りにおきまして、又政府が相当な資金を出す限りにおいては、政府の意図する人が、政府と同じ考えの人がやることは必要でありますから、任命も結構だと思いますが、そのスタツフに立つ立場につきましては、或いはその最高責任者の意図する人を、その人の意思において任命するのも一方法ではないかと考える次第でございまして、この点は御参考までに申上げる次第でございます。  いずれにいたしましても、本法案が先ほど申しましたような建前から是非早く遂行されまして、我々の今日一番不足を痛感いたしております電力の問題が一刻も早く打開されることを念願いたす次第であります。世上新聞或いは雑誌等でいろいろの議論があるかのように漏れ伺うのでございますけれども、人間の頭と腕で将来是正し得る問題は、絶対値には関係ないわけでございますけれども、ここで方法論、組織論に余りに拘泥し過ぎて、そのために本当に必要な電源開発が少しでも遅れるということがありますれば、これは我々産業人といたしましても、又国民の一人といたしましても、重大な問題でございまするので、その辺に思いをいたされまして、一刻も早く現実に手の着け得るようなことに重点を置かれまして、この問題を処理あらんことをお願いいたす次第であります。
  6. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 引続きまして工藤昭四郎君にお願いいたします。
  7. 工藤昭四郎

    公述人工藤昭四郎君) 私は結論的に申しますとこの法案には原則的に賛成でございます。以下その理由を簡單に申述べます。  電源開発は非常に急を要しますことは、この法案の第一條にもはつきり出ておる通りでございまして、これは差当り電力が不足しておるというためばかりではなく、終戰後特に貧弱になりました資源のうちで、残された唯一のものとも言つていいわけでありますから、これを早く開発し、活用して日本経済の復興自立を図つて行かなければならんと考えております。ところがこの電力開発を大規模にやる場合に、既存の会社でできるかどうかということが問題になつて参ります。私はその点については、既存の会社では不可能だろうと考えております。戰争によつて日本は従来さまで豊富でなかつた資本の大半を失いまして、或る計算によりますと、七割三分が失われたことになつております。その後経済の復興は割合順調に進んでおりますが、併し資本の蓄積というものは微々たるものであります。又資本市場、証券市場等の発達もその後なかなか回復いたしておりませんので、国内で非常にたくさんの資金を集めるということは事実不可能でございます。又電力会社の現在の経理状態その他から申しまして、既存の電力会社がたくさんの資金を獲得するとか、或いは外資を手に入れるというようなことも望みが薄いと見なければなりません。電力会社の経理状態については電力料金が安いというお話がさつきございました。これは他の物価に比べてまさにその通りだろうと思います。終戰直後の非常に困難な時代に、日本経済を再建するために負担力のある所へ荷物を背負つてもらうという考え方が行われたのでありまして、その当時電力料金等はほかの水準に比べては、低目に抑えられたのであります。その後だんだん是正はせられておりますが、日本経済が完全に立直り、他の部門が強力になるまでは一挙に電力料金を引上げることができませんので、料金は低目に抑えられておると見ていいと思います。併しこれも日本経済全体から見れば、現状においては止むを得ないことだろうと私は考えております。なおそのほかに再編成当時の分割の仕方、或いは現在の電力会社経営合理化について非常な熱意があつたかどうかについて私は疑いを持つておるのであります。こういうわけで、既存の会社がその力において大規模に電力開発をするということはどうもむずかしいのではないかと考えておるのであります。従つてそうなつて参りますと、この法案のような一種の国家機関ができまして、その手によつてこれを解決する以外に途はないように存じております。又電力開発は、御承知のように国土の総合的な開発、利用、保全ということと密接な関係を持つておるのでありまして、この国土開発面には公共事業費として相当大きな金を使つております。従つてこの両者を調整する。そのコンビネートにおいて電力開発をやるということがあらゆる面で好ましいのであります。又経費その他の節約ができると存じております。従つて国土開発との調整意味からも、又資金獲得面で申しますと、この案によりますと、相当の財政資金が使われることになつております。又外資を獲得する面におきましても、現在の私企業が外国において社債等を発行することは、外国の資本の、市場の実情から申しましても、又現在の会社の内情から申しましても非常にむずかしいのであります。早く外資を持つて来ますためには、どうしても公的な資金ということになつて参ります。国際開発銀行その他から公的な資金を持つて参ります場合には、従来の南米その他に行われておる例から見ましても、どうしても国家が保証するとか、或いは国家機関に対して行われておるのでありまして、その点から申しましてもこういう国家機関がやるほうが資金の獲得に便宜がある、こういうふうに考えておるのであります。  又この法案によりますると、金利も安くなるようであります。現在一般の金利は高過ぎるようでありまして、低金利の方向に伺つて行かなければならんと思いますが、低金利な財政資金が使えます。又税のほうでも考慮が拂われておるのでありまして、その面から建設費が安くつくということは一応考えられるわけでございます。又こういう機関でありますと、特殊会社のやり方はいつも非能率であるということがよく言われるのでありますが、この法案では独立企業体としての考え方が相当強く出ておりまして、恐らく経営者の創意工夫、或いは努力が全面的に発揮せられまして、能率も上つてくることと考えております。ただ併し、従来国鉄の問題にいたしましても、復興金融金庫の問題にいたしましても、最初の出発は独立企業体という考えで出ておるのでありますが、いつの間にかこれが独立企業体の性格をなくしまして、すべてが国の予算で動くというようなことになりまして、そのために能率を阻害しておる面がございますから、この点は強く原案のまま押切つて頂きたいと考えるのであります。この法案が若し不幸にして不成立になりますと、どうしても電力開発が相当期間遅れることになつて参ります。これは日本経済の発展に大きな阻害になるばかりでなく、又国民生活の上にも不幸な面が生じて来るというふうに私は考えております。  先刻来会社運営とか或いは機構について大分いろいろの御心配の点のお話がございまして、私もその点について多少心配はしておるのでありますが、この問題につきましては、人選を誤らんようにやつて頂きますことと、従来こういう会社ができますと、あらゆる情実因縁によりまして、必要でない人まで入つて参るのでありまして、そのために経費が多くかかるという面もございます。こういう点を十分気を付けて頂きますと共に、工事その他の運営については、先刻お話のあつたような心配の起らないようにやつて頂きたいというふうに考えておるのであります。又企業は最高首脳者を中心として、非常によいチーム・ワークによつて最も能率が発揮できるわけでありますから、やはり総裁、副総裁は政府任命といたしましても、理事以下は日本開発銀行のように総裁任命の形にしてもらつたほうがうまく行くのではないかというふうに私は考えております。  以上簡單に理由を申上げましたが、冒頭に申上げましたように、この法案に対しましては、私は原則的に賛成でございます。
  8. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 午前中の公述が終りましたので、これから質疑に入つて頂きたいと思います。御報告申上げますが、先ほどの公述人の中で、永野重雄君は何か発言途中から発熱気味で、気持が惡くなつたというお話で退席願いましたから御了承をお願いいたします。昨日と同様に質疑のありますかたから順次お話を願います。
  9. 古池信三

    ○古池信三君 私は藤田公述人に少しお尋ねをしたいのであります。先ほど藤田さんの御陳述は、非常に広汎多岐に亘つておりまして、本案に直接関係の薄い点も多々あつたように思うのでありますが、一応本案について特に関係ありと私認めました点を二、三お尋ねしたいのであります。その前に藤田さんの御意見は、日本電気事業は一社にすべきであるという、こういう御意見のように伺つたのであります。かような事業の組織或いは機構というものは、やはりそのときどきのあらゆる情勢を考えて、その情勢に最もマツチした形がとられるべきでないかと私は考えております。従いまして現在の日本の段階におきまして、諸般の情勢を勘案した場合、今一社化をとるということは私は賛成できません。再編成は昨年漸くできてまだ一年になるか、ならんかという状態であります。この九分割の再編成そのものにつきましても、いろいろと批判はあると思いますが、又私はこの現在の九電力会社によつて行われております事業の機構というものを、更に変えるということは徒らに混乱を増すばかりでありますので、ともかく再編成の問題はこれを今根底から変えるというようなことは賛成できないのであります。そこで先ほど電気事業の一部の者の利益のために利用することはいけないというお説は、これは全く私も藤田さんと御同感であります。  そこで質問に入りますが、この会社を作つて開発を進めるということになりますと、一部の連中の利益を図る結果になるから反対である、こういうお話であります。甚だ抽象的なお話で、なぜ然らば一部の者の利益を図ることになるかということを具体的に一つ説明を願いたい、これが一つであります。それから第二にはこの法案によつて開発をすれば、成るほど電源は豊富になるであろう。併し必ずしも電気は低康にはならんと、こういうお説でありました。然るに先ほど他の公述人からの御意見もございましたが、又提案者の説明によりましても、国家がこの会社に対しましては相当な援助をすることになつておりますが故に、或いは金利の面においても又政府の出資金に対する配当の面におきましても、相当安くできる建前になつておると私は考えるのでありまするが、それにもかかわらずこの開発会社による電気は決して低廉にはならんとこうおつしやる、その具体的な理由を数字を以てお示しを願いたい。それから第三番目に、かような会社によつて電源開発をすれば事故が多くなるであろう、こういうお説のように伺つたのであります。事故が常に絶無であるということは、これはもう理想に違いないのでありまするが、併しながらどの面においても遺憾ながら不測の事故は起つておるのであります。現在の九電力会社のおやりになつておる工事につきましても、或いは又自家用の発電所の関係においても、更に国鉄のような直轄でおやりになつておる場合においても、止むを得ない不測の事故というものは起つておるのであります。特にこの会社がやる場合においては、そういう事故が多く起ると、こういうふうにお考えになつておる、その理由ももう少し具体的にお話を願いたい。一応その三つの点についてお尋ねいたします。
  10. 藤田進

    公述人藤田進君) お答えいたします。御質問の点は三つであつたと思うのでありまするが、私の公述いたしました点について、やはりその把握について若干私の意図したところと違つておると思うのでありまするが、第一に質問に際して申述べられた点は、本案と関係の薄いものであると考えた、この認識を一つ改めて頂きたいと思うのであります。本案と関係のあることと言えば、この條文のてにをはとか、そういうものではなくて、本当に電気事業の再編成前後から今日までの事情がどういうふうになつておるかということを、知らなければ法案はできないし、賛否はきめられないと思うのであります。その意味において私は申上げたのでありました。  第二の点は、今の情勢では一社化というものはこれは賛成できない、その理由として挙げられました点は、昨年再編成したばかりである、徒らに混乱をするというふうに言われたと思うのでありますが、この面子を捨ててもらいたいと思うのであります。昨年再編成をしたのはポ政令でやつたのだ、古池さん自身もこれには賛成でなかつたと思うのであります。であるが故に、この際やはりその面子にこだわらないで、本当に国家電気事業を論ずるならば、昨年再編成しようが、惡いものははつきりと改めるということを一つお願いしたいと思います。  第三の点は、一部の者に利用される点、これは同感であるそうでありますから申上げません。  更に質問の第一でありますが、この会社を作つて一部の者に利益があると言うが、具体的に……、申上げたいと思います。今日この法案をめぐつていろいろ動きがあると思います。果してこの法案で言うならば、大まかに言つて、これは土建業者は待ち受けていると思います。私もできることなら、これは土建業者になれば金儲けができるように思つているのです。実際に大きな土建業者が全部賛成しているかと言えば、極く最近になつて、ここ二、三日になつてこれは反対だというふうな態度を出されている所もあります。これは何を物語るか。この法案をめぐつて到底おれの所に仕事が来ないというふうにしか思われないのであります。そうなれば、やはりこの法案をそういつた形で捉えて一部特定の業者だけが仕事にありつくということでは、これはたまつたものではないので、これは賛成できないというふうにしかとれない事実があります。更に昨日の公述にもあつたのですが、その人の意図はそうではなかつたでしようが、大体この法案通過を目当にいろいろなことをやはり気構えとして持つていると思われるふしが多々あるのであります。例えばこの会社ができたならば、特定の人たちがやはり指名でこれに参加するでありましよう。本当に熱心に電源開発にいそしむというよりも、すでに老後もあと僅かだし、ついてはこれは御承知かと思いますが、殊にこの建設などというものは私たちも経験して参りましたが、ちやんと派閥ができていて、現行会社の場合でもそういうことはあり得るのです。一つの社員でちやんと辞令をもらつていながら、もう発電所が済めば大体我々の任務は終つたので次に移るというように、いわゆる渡り鳥のごとく次から次へと移つて行く。これは一つのグループができるのであります。そういう人たちが今仕事にありつけないで困つているというのが相当あります。こういう人たちは確かにこの電源開発促進法案が通ればこれに飛込んで行つて、つまりそういつた利益にあずかろうということは、もう端的に出て来ている。殊にこれは反対論の中にも先ほど申上げたようにあると思うのであります。それは現在やつているほうが一番いいのだ、それは諸般の情勢上いいのだ、殊に利益等から見てもこれはいいのだ、これは古池さんに申上げてみたい具体的な事例としましては、当初仮に一億で落札いたします、これはいずれの場合でもありますが、今度の法案が通ればそれはより顯著に出て来るのでありますが、落札の場合に先ず談合がなされるでありましよう。通信入札その他いろいろなことをやるけれども、これはやはり防げない事情がある。而もその監督指導の面が、この法案内容説明から聞くならば、誠に手放しに窓口がすつきり開いているというような事情からいたしますと、仮に一億で契約して仕事に入る、ところが電源開発というものは、一日遅れればその発電量を販売するだけのマイナスになる、一日早く完成竣工して電源が本当に電力化するならば、その電気に対するいわゆる料金が厖大に入つて来る。従つて或る程度の仕事が進捗して参りますると、物価の値上りだ、賃金が上つただの、いや岩磐が予想より非常に遅く出ただの、いろいろな理由をくつつけて、これでは到底進行できない。然らば突貫工事ということになれば、何割増物価が上つたということも、これはなかなか捕捉しがたいものでありまして、結局そこで一億といつたけれども、プラス・アルフア二千万円出そうというようなことはままあることであります。そういつたようなことが、今度この内容を見ますと、豊富な電力とは書いてあるが、低廉なということはどこを見てもないということは、要するに具体的なそういつた事実がだんだん累積いたしまして、自然一キロワツト当りの積生産單価、つまり開発原価というものは非常に厖大になつて来る。その厖大になつたものが、本当にその開発地点のいわゆる立地條件等から来る理論上止むを得ざるものでなくて、以上申上げたようなことから、どうしてもこの法案内容では、いわゆるこの伏魔殿というか、これを作り上げるに恰好な内容を持つているということを申上げたのであります。  第二の低廉にならないという点でありますが、政府資金を出すから低廉になるではないか。国家財源を充てて、これは極端に申上げますと、電力料金に関する限りはこれは国家が保障する、これは極端でありますが、今では一部だと思います。出資の約半額以上常に保持する。これが金利も全然見ない。つまり配当もこれは留保させないということで安くなる。これは確かに電気料金だけ考えてみれば安くなつておるけれども、造幣局が印刷してどんどん出すだけでは世の中は治まらないので、いわゆる財政上の資金の計画なり一般の財政政策からこれを論じるならば、恐らくその補填としてはやはり一般の税によつて賄うか、或いは事業その他の收益によつてこれを賄うか、いわゆる変つた形で、やはり一時的にはいろいろなことがあるでしよう。併し今後電気事業というものの長い間を考えるならば、そういつた面でいつの日か明確に一般の需用家、殊に勤労大衆に振りかかつて来る。電力料金を安くされたといつて安心していれば、税その他で大きくこれは振りかかつて来るということを申上げて、決して低廉なものにならないということを申上げたのであります。  第三の点、事故が多くなるがこれは従来でもあるのじやないか、不測の事故の起きる理由、これであります。成るほど事故は従来でも起きているのだから、事故なんてこれは起きるのが当然だということであれば何をか言わんやであります。併し事故が起きているのはこれは当然じやなくて事故の起きない電源開発もあります。大小の開きはこれはあるといたしましても電源開発というあの大きな事業をやつて、殆んど事故の起きない、こういう事業はあるのであります。アメリカTVAで自慢しているあのノーリス・ダム、これなどは御案内通り厖大な施設であります。而も一九四五年に日本がまさに湯沸から鍋から釜からアルミニユームをどんどん出したときに、向うではアルミニユームをどんどん出してそれで造つたところの発電所、いわば突貫工事であつたけれども、あの工事においては犠牲者が出ていない。これはよその国でありますが、日本つてないことはない。併し若干の事故はあるといたしましても、今度の案のような実に手薄な、金任せの、外部機関に委ねたところの、依存したところのこのものを実施したならば……これは現場に行かれればわかるのであります。例えばコンクリート一つ打つにいたしましても、これは細かく申上げたほうがわかりやすいと思います。これは大体今後造られるものは土堰堤は少い、これはグラヴイテー・システムの重力式のコンクリート・ダム、おおむねこれだと思います。そうなるとこの図体はかなり大きい。設計面では一、三、六のコンクリート、つまりセメントが一で砂が三、砂利六というものだと設計にはちやんと書いてあるが、本当に能率を挙げて工事実態はどうあろうとも、能率を挙げて利潤を貧るならば、ミキサーで以て、ミキシング・プラントを眺めたときによく現場で命がけの喧嘩をするところであります。現場監督員はどんどんミキサーの中に砂を入れ、セメントを入れ、砂利を入れても、ミキサーの前にトロツコがやつて来ればどんどん抛り込んでできて来れば何になるかわからない。セメントは官給品、社給でやるということになれば、殊に山の中ではどこを掘つても砂なんかはそうとれないのであります。どんどん掘つて、粘土であろうが、何であろうが、どんどんぶち込んで行く。そうなると、私も経験いたしましたが、電源をとめてこの工事は中止する、これではやれないというような度胸のある監督員がどうしても必要なのであります。ところがその場合に本当に信念に燃えて仕事をやつて行く人間でないと、いろんな魔の手が入る。又命は惜しい。相手は多数の赤褌の金筋であり、鉛と金と代えようというような喧嘩に発展する。私たちもいろんなところに実際傷を受けております。そういうことは身を以て体験しておる。そういうことは悲しいかな現在でもこれは拂拭されていないのであります。そういう状態になつてコンクリートを打つたといたします。昔はセメント袋でなくて樽でありました。どんどんダムの堰堤の中に投げ込んで行くというと、仕事が早く済むのであります。この堰堤に要するにあのストレス・ストレインの関係で以て高度な科学的な計算をして立派に図面はできておるが、実際の施行がより重大であるにもかかわらず、そのようなことがどんどん行われて来ると、トンネルを掘るにいたしましても、実際にこれは岩磐の場合と粘土の場合とがある、詳しくは申上げませんが、いろいろな地質があるのであります。ときには盆地からふとしたときに大量の水が噴出して来る。いろいろな事情があります。そういつた場合に一体この法案の中では、隧道一本には二つの坑口がある、これは堅坑ならば四つあります。そのそれぞれに監督員をつけることはこれは絶対できませんよ。而もそういう場合に、岩磐であろうが、何であろうが、これは單価が非常に違う、これはもう実際に計算してみれば、一メートル当りの單価が殖え、中はどういうものでもコンクリートを打つてしまえばあとは一部掘つてみてもわからないのであります。殊に根掘などに参りますと、基礎のコンクリートをいい加減にして、さつと二十センチのコンクリートを打つ、根掘りが一メートルもあるけれども非常に困難な仕事だと言えばどうにもしようがない。而もそういうようなことがだんだん補修になつて来ると、一朝水害があれば引つくり返る。土建業者が殖えていろいろな補修をする。あそこの仕事はあそこが開発したのだから、これはあそこにやらせよう、そういうことはこれは茶飯事のことなんであります。こういうようなことを考えますると結局不測の事故というものは、この監督指導機構、これはロスの問題だと言われますけれども、現に日本の社会情勢、殊に土建業界の情勢からいつて、土建も全部そうだとは申上げませんが、おおむねそう考えて差支えない。従つてそのような法案内容で実際百名以内と言われるのをこれは少な過ぎるといつた結果二百名前後にしたいということであります。でありますが、十カ所をやられる、そういつたことを始末をして今言つたような施行がなされるならば、單にそのできた品物のよしあしにかかわらず、下流にあるところの田地、田畑、或いは居住区というものは不測の事態が生ずるということは、これははつきり言えるのであります。これらを称して不測の事故が非常に増大する、こういうことを申上げたのであります。これはやつてみなければわからん。やつてみて確かに藤田さんが言つたことは正しいというときにはもう遅いのであります。従つてこういうことを強調せざるを得ないという意味でこの不測の事故の点を坂上げたのであります。
  11. 古池信三

    ○古池信三君 今藤田さんからいろいろ現場の事情に基いて詳細な御説明がありましたが、併し私は必ずしも藤田さんとは同意見ではないのであつて、この会社がやるから特に事故が多い、今の電力会社がやるならばそんなに事故は起きないというわけには私は独断はできないと思う。殊に電気料金が低廉にはならんじやないかという理由、或いは又この会社ができるがために、特に一部の土建業者とおつしやいましたが、そういう業者の利益を特に図るのじやないかという御心配は実は私はどうも納得できない。無論かような仕事が殖えて行けば、自然その事業を受持たれる土建業者も適当な利益を挙げられる。これは商売でありますから適正な利益を認めることは当然で、この会社がなくても、電力会社がやろうと、或いは国がやろうと、いずれにしましても請負にかける限りにおいては、適正な利益を認めるということは、どこへ行つても当然なことでありますから、そのために土建業者を特に利益するといつて非難することは私は当らないと思うのであります。これ以上は意見になりますから、差控えます。
  12. 下條恭兵

    委員外議員(下條恭兵君) 工藤さんに一、二お尋ねいたしたいと思います。今工藤さんは外資の問題に関連しまして、現在の電力会社は資産状態その他から見て外資が入る可能性が全然ないというふうに断定しておられたように思うのです。又この新らしい法律に基く特殊会社ならば必ずワールド・バンクの外資が期待せられるであろうと、こういうふうに言われたように思います。私は今お尋ね申上げたいのは、私どもが最近知り得た情報の中には、むしろワールド・バンクの場合でも、工藤さんの御指摘の反対の方向の外資の導入が期待できるというような情報も持つているのであります。で、工藤さんが現在の電力会社では外資が期待できないというその根拠をもう少し詳しく、それから特殊会社ならば必ず入るであろうという根拠を一つ説明願いたいと思います。いま一つ私はお尋ねしたいと思うのですが、現在の電力会社が新らしい大規模電力開発に対して能力がないというふうに断定しておられましたが、昨日の井上公述人は天龍川の厖大な計画に対してすでに具体的な計画を持つてつて、これをやる意欲があるということをここで公述しておられるのであります。この点についても詳しい根拠を伺いたいと思いますし、さつき永野さんの公述にも、電力開発が一刻もゆるがせにできないと言つておられますが、この点は我々も同感であります。でありますけれども、然らばといつて私は必ずしもこの特殊会社でなければ開発ができないとも考えないのであります。昨日天龍川の開発に対しては中部電力と東京電力との合同の形をとつてやろうという計画であるように聞いておつたのでありますが、恐らく工藤さんは金融の專門家としてそういう計画が方々にあることは御承知かと思いますから、私はあえてここで説明することは要らんと思いますけれども、今ここで特殊会社を作つて、これから発足をするほうが電力開発がより早いか、それとも今までそういう計画をすでにしておつたのにそのままやらすほうがより早くできるかということに対して、金融の專門家としての立場からどういうふうに判断しておられるかお尋ねしたい。この二点を最初にお尋ねしたいと思います。
  13. 工藤昭四郎

    公述人工藤昭四郎君) 今お尋ねのございました二点についてはお答えいたします。現在の状況で外資を導入いたします場合に、既存の電力会社では非常にむずかしいと私は判断しております。それは先刻申上げましたように会社の経理状況その他の状態から申しましてむずかしいということが一つと、現在外資を持つて参ります場合には、主としてアメリカの資本市場に仰がなければならないのでありますが、アメリカは御承知のように国内の軍需産業その他のために資金の需要が多くなつておりまして、外債が割込んで行く範囲が非常に狭くなつております。もう一つ電力会社は御承知のように関東震災直後相当たくさんの外債を募集したのでありますが、それが現状においてはまだはつきり後始末ができていない。こういうような点から申しまして、現在の電力会社が外国資本市場で資金を持つて来るということは非常に困難であるというふうに考えておるのであります。又従来国際開発銀行その他から供給しております資金の実情を見てみますと、先刻申上げましたように国策会社及び国家の保障のあるところへ出しておる。而もその出しておる金額は所要資金の四分の一或いは三分の一という金額に大体限定せられておるようでありまして、その点から申しますと特殊会社ができただけではなかなか外資は入つて来ないのでありまして詳細精密な計画ができましてその資金をこういうふうにして調達できるかという基礎の下に足りない分は外資に仰ぐ、こういうことでなければなかなか外資の獲得はむずかしいと思いますが、両者を比較しまして特殊会社のほうが容易であるということを先刻申上げたのであります。  第二の能力問題でございますが、戰争前の日本電力会社では例えば東京電力が一個の会社の力で只見川全部を開発するという計画を持つてつたのであります。当時は日本の国力も相当充実しておりましたし、又電力会社の経理状態、資産状態も非常によかつたものでありますから、当時の金で五億円程度かかる只見川も東京電力一つでやれる、こういう確信を持つてつたようであります。ところが終戰後日本の経済力はがた落ちに落ちて参りましたし、又先刻申上げましたような会社の経理状態でありますから、自分の力で資金を調達することは不可能であるといつてよいかと考えております。どうしても財政資金その他の援助を仰がなければならないということになりますと、現在のような私企業の形で果して行けるかどうか、その点に疑問を持つておるのであります。従つていろいろ計画はできておりますが、その計画を裏付けできるような資金その他の獲得が現在の状態では延びるということになりますと、新会社を作つてやるほうが早く開発ができる、こういうふうに判断しております。
  14. 下條恭兵

    委員外議員(下條恭兵君) 財政投資の場合に私は昨日も申しましたのですが、必ずしも特殊会社でなければならんということはないのだ、現在も民間の会社にもやつておりますからこの点私は異論がないわけではありませんが、議論に亘るところは差控えます。  それから藤田さんに一点お尋ねしたいと思います。私は藤田さんの先ほどの御意見殆んどことごとく同感でありますので非常に心強く感じたのでありますが、先ほどの公述の中で復元の問題にからんで二、三のお話があつたように思います。私どもはどの程度のものが公共団体に返されたか、或いは自家発電として還元されたか、そのことの事情は私は電気の專門外でありますので詳しいことは知つておりませんけれども、この法案の審議に当りまして我々が将来参考になる点が非常に多いだろうと思いましたのでお尋ねするわけですが、最近世間的に問題になつたか、或いはならないにしても、公益委員会とか、或いは政府関係などで還元が問題になつたり、或いは非常に無理な値段で返せというような事例があつたら参考に一つつておきたいと思います。
  15. 藤田進

    公述人藤田進君) お答えいたします。復元の問題は終戰直後以来声には出ておりましたが、殊に県営論が抬頭いたしまして、その後当該県知事のいわゆる会合を持ち、いろいろ動きがあつたのでありますが、その根拠が真に数字的な分析をして見ますると一県の財源にならない、厄介なものを背負う結果になるということで、県民も双手を挙げて賛成するに至る理由が見付からなかつたために、その後立ち消えになつた形になつて問題は潜在化していたのであります。これが最近今次電源開発促進法その他電力不足をめぐつて再び顯在化するに至りまして、国会で問題になりましたのは御案内のように公納金の復元のあの法案の中に復元を前提といたしましてかくかくにするのだ、すでにあの中ではつきりと衆議院を通過いたしましたあの法律には、まだ法律化されておりませんが、復元を前提として公納金云々、こういうことになつてはつきり出ていたのであります。その後賛成されたかたに個々に聞いて見るとそれぞれ理由があつた模様で、なかんずくついうつかりしたがあのほうがよかつたと思つたものがなきにしてもあらずであります。誠にどうも残念でありましたが、ところが最近の事例といたしましてはすでに閣議においても或る程度申合せができているという情報を受けております。更に議員提案の形で一つ法案がすでにできて、これはどなたが否定されるか賛成されるか……場合によつては出しても結構であります。私のところでは昨日入手いたしまして、今リプリントして全国にこれを撒く予定にいたしております。これはすでに具体的に出ておりまするものは先ず四国から申上げると住友共電の関係があります。それから中国では山口県電、九州では宮崎県電、更に関西に至りましては京都、大阪の復元の問題、それぞれ今申上げると切りがないのでありますが、各地方ごとに今九地方になつているがことごとくあると言つても差支えない。殊に自家発電につきましては曾つて自分のところの工場、事業場で使うつもりで作つたというにかかわらず、配電或いは日発管理法等の諸法令が昭和十四年乃至十七年にできたために無理に取られたのだからこの際返してもらいたい、最近になつて最も激烈な運動を展開しているものは何と言つても県営では富山だと思います。併しながら私も今度富山に参りまして二、三日前に帰つて来たばかりでありますが、県民並びに中小企業その他の皆さん意見を聞いて見ると、県知事さんが動いているほどピンとは来ておりません。成るほど元へ返えれば非常に県民が安い電気料金で豊富なものが使えるという触れ込みだが、実際にそのような結果がもたらされるかどうかという点を具体的に我々のほうで指示をして説明をいたしましたならば必ずしも県知事が言つているような事情ではないと思います。併しながら今富山県では挙げて復元の問題を掲げて積極的に国会にも働きかけがなされておる模様でありますが、従つて現実法案としてこの問題が出されることは、この促進法案が通つたあとにそつと出されるのではないか、或いはこの見通しが大体山が見えたときに出されるのじやないだろうかという心配をいたしております。時期の問題のようになつておるように考えられて仕方がないのであります。このもたらす影響は申上げるまでもなく、弱肉強食の時代がこの電気事業に関する限り出て来る。従つて需給調整、そうして料金の問題を統制すると言つても法律を通せばできなくなるでしようし、従いまして、復元を要求し、これを強力に進めるところは要するに、一般の電気事業、いわゆる公共事業としての電気事業一般の供給するものから一番いいところを取つて来て、まあ滓だけ残して一般供給に廻すということになれば、これはもう必然的に電気料金の値上げが予定されるのでありますし、同時に日本産業状態から見てもこういつた弱肉強食の個々ばらばらの電気事業運営電気行政というものは、これはやはり全く真向から否定すべき性質を持つておるというふうに考えておるのであります。この問題については更に敷衍して申上げると 今度の電源開発促進法においても同じことでありますが、私たちは一体をなしておると思います。その意図は……。従つて我々電気事業に従事する十四万の労働者は技術者と言わず、そういつたところにはもう絶対に一人といえども行かない、たとえ一時的に餌を投げかけられようとも、このような電気事業が、実に社会公共のために全く相反する企業に対しては行かないということを我々はすでに決意いたしまして、その運動を展開し、更に問題によつて経営者側に対しても具体的に問題を要求して、今申上げましたような具現を場合によつては実力行使を含めてでも図りたいということをすでに決定しております。
  16. 西田隆男

    委員外議員(西田隆男君) 私、工藤さんに一点だけお伺いしたい。さつきの公述の中に、今度の電源開発促進法案の中に掲げられておる特殊会社というものは、この法律を見ると非常に能率的に運営されることが考えられる、こういうふうな公述があつて、不幸にして私たちのほうでは今まで半官半民の特殊会社が能率的に運営されたという実例を聞いておりません。従つてどういうわけで工藤さんはそういうふうに公述されたのか、これをもう少し法律案に基いて御答弁願いたい。  もう一点は下條君が今聞いておりましたが、国際開発銀行の資金がこの会社であれば容易に入るというような御意見のようでありました。まあ総括的にはそういうことが考えられると思いますが、この法案の中では、この会社仕事電源開発が主である、而も提案者の説明によりますというと存続期限は三十五年ぐらいまでが精一ぱいだ、而も電源開発を終了したあとにおいては讓渡、賃貸をするのが主たる目的である。こういうまあ制限が加えられておる。こういう制限が加つておるにもかかわらず、開発銀行の外資がこの会社に工藤さんがお考えになつておるようにたやすく導入されるかどうか、従つてこの清算会社が清算の時期に入つた場合に、いわゆる九つの電力会社或いは地方公共団体かに開発された電源は当然讓渡されねばならん。これも開発銀行の外資導入に対しては相当な制約になると私は考えておりますが、そういうことはあつても、なお工藤さんのおつしやるようなふうにスムースに行くのかどうか、この二つの点を御答弁願いたい。
  17. 工藤昭四郎

    公述人工藤昭四郎君) 最初の御質問の、独立企業体として能率が上るかという問題でございますが、この点につきましては、今度の法案では、予算、決算共に議会の承認を必要としていないということになつておりまするし、又国家公務員法の適用がない、こういうことになつておりますので、これまでございます国鉄等と大分恰好が違つておると思います。従つて、独立企業体として大いに能率を発揮してもらうと、こういう意図の下に法案が作られておると思いますので、ただその中心になる人の選択さえ誤らなければ、相当活溌に、能率的に働ける、こういうふうに私は考えております。  第二の外資の問題でありますが、今お話のようなことになつておると思います。併し、それをカバーしますためには、国家保証ということが考えられております。国がその点を保証するということになれば、ああいう機構的には外資も獲得できるのではないか、こういうふうに考えております。
  18. 永井純一郎

    永井純一郎君 永野さんはおいでにならないのですか。
  19. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 永野公述人は、先ほど申上げましたように、発熱ということで、途中から退席されました。  ほかに特に御発言がなければ、午前中の公聽会は、これで打切りたいと思いますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) それでは、午前中の公聽会はこれで打切りまして、休憩いたします。午後一時半に再開いたします。    午後零時四十二分休憩    —————・—————    午後二時二十三分開会
  21. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) それでは休憩前に引続きまして公聽会午後の部を開会いたします。  午後の公述人は先ほど申上げましたように金丸香代君、船橋要君、久保田豊君であります。  公述人のかたに申上げますが、大体公述の時間は二、三十分程度にお願いいたしまして、今の順序でずつと公述をして頂きます。その後におきまして質疑応答の時間を持ちたいと思いますから御了解を願いたいと思います。それでは早速始めます。金丸香代君。
  22. 金丸香代

    公述人(金丸香代君) 私は電気こそ人類の幸福を作つているものであると信じております。そこでこの電源開発につきましては、政府及び国民が一致協力しまして一部の人たちだけに任せてはいけないと強く思うのでございます。即ち今更電気の重要性を申上げますのはわかり切つた話でございますが、電気家庭の電化生活を初め、職場に、ラジオに、電信に、電話に、医療に、交通に、美容に、映画に、農村に、日用品に、ありとあらゆる産業に原動力となり、交通となり……。
  23. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) もう少し大きい声でゆつくりやつて下さい。
  24. 金丸香代

    公述人(金丸香代君) はい。……光明となり、熱料となり娯楽となり、通信となり、人間の手と足となつて私たちの生活を助け、その上石油、石炭、薪、木炭等の消費を補つて、この世に存在し、今の社会に貢献しておりますので、今や電気は太陽と同じく私たちの生活になくてはならない大切な物質となつております。そこで人類の生活になくてはなりませんと同時に、需用範囲が広く、発展の一途を迫るこの電気を株式会社の独占事業に任せましては、国の進歩及び繁栄は絶対望めないと信じますので、国営又は公営及び府県営にして頂きまして、株主がいなくて合理的な電気料金が定められますことを強く望むのでございます。例えて申しますと、電車もパンも米麦もお豆腐もお菓子も水産加工品も美容も医療品も日用品も衣料品も、すべて電気の力で生産され又運営されております現在でございますれば、株式会社経営上、電気料金が値上りされますとこれではすべてが値上りとなつて現われて参りまして、私たちの生活は絶えず脅やかされるのでございます。又株式会社の独占事業でございますと、株主への配当金が全然ございませんと、投資下さる株主はいらつしやいませんし、又資金も集まりませんので、私たちは一生を株主の人たちの利益に供され、その上ストによります停電も甘んじて受け、その上値上りになります電気料金も黙つて拂わねばならないからでございます。(「何だかさつぱりわからん。」「もう少しゆつくり読んで下さい」と呼ぶ者あり)そこで私は電気事業を国営事業に切替えまして、発電所だけを請負経営になし、配電はすべて消費者即ち工場、会社及び市町村又は隣組及び個人に任せて頂きまして、配電には国民が責任を持ち、各家庭をメートル制になし、故障及び漏電盗電を防ぎ、電気を空中送電でなく地下送電に切替えまして、政府も国民も一致協力しまして電気の無駄使いを止めたいと思うのでございます。  又全国に電気の知識を深く認識させますためパンフレツトを配付しまして、電気の無駄使いと共に電気によります火災及びその他の危險から守ることに努めるべきだと思うのでございます。即ち電気国民全部の手で経営されますと、直接の利害国民の手に響いて参りますので、全部が協力すると信ずるのでございます。そこで私は今度の電源開発も国営でなされまして、国民生活が最低生産でも文化的生活に惠まれますようなしたいと思うのでございます。即ち日本は資源に乏しく、又電気が全然ない地方もございますので、せめて自然の恩惠で作れます水力又は風力発電によりまして豊富に電気を起し、日本を電化国家に作り上げましたら国民の幸福は達せられると思うのでございます。即ち電気さえ豊富にございましたら、石油、石炭、薪及び木炭は全然なくて生活できますので、命がけで石炭を掘出しますことも要りませず、又たくさんの資材と労働力を費して石炭を掘ることも要りませず、又石炭を掘出しましたあとの地盤が崩れることもなく、又今まで灰となつて消えていました薪及び木炭は他の方面に利用されますと同時に、全国の山林の濫伐は免かれまして、美しい山野に惠まれ、又薪及び木炭として木を伐り、薪になし、家庭まで運びます日数と経費と労働力は、食糧及び水産の増産に廻せることになると思うのでございます。今農家は労働力不足のため、貴重な田畑を荒地になしているところさえあるのでございます。又薪を買うことのできない人が、他人の山より薪を盗むこともなくなりまして、道徳上にとりましても、大いによいのでございます。特に農村にとりましては、五月雨の農繁期でも家事がやさしくできますし、そり上農業の機械化に、又労働力の不足に、大いに役立ちまして、国民すべてが平等に明るくて楽しい生活ができると信ずるのでございます。  又日本の全家庭が電化してしまいますと、全国の山林は農地及び牧場となすこともできますので、食糧の自給自足と動物性食品が安くて手近に求められるようになると信ずるのでございます。即ち食生活が向上いたしますと、日本人の体位が欧米人に劣らない立派な体格となり、国民の健康は保たれ、保健上大いに役立つと思うのでございます。  又女性にとりまして、家庭が電化いたしますと家事が合理的にやさしくなりまして、婦人の教養の時間も生じ、女性が今の地位よりもつと向上できまして、国民の文化水準はいやが上にも高まつて来ると信じるのでございます。又台所は清潔に保たれ、女性も今までの煤と灰と鍋炭と煙たい空気から逃れることができまして、明るくて健康的な生活が得られるのでございます。又衣服の汚れも少くて生活ができますので衣料品の破損も少く、国にとりましてこれくらい大きい利益は他にないと信じております。幸い日本は風力あり、雨量あり他の形にも惠まれていますので、必ず実現できると信じますので、そこで危險な作業で掘出しました石炭に頼りませず、自然の恩恵でできます水力又は風力発電で、豊富に電気を起したいと思うのでございます。日本は軍の無謀な戰で国土は狭くなりましたが、狭ければ狭いほど行政はやさしく、政府と国民が一致協力さえいたしますれば、どんな難局にも堪えて行けると信じますので、せめて電気だけでも豊富に作りまして、安くて自由に使用されますよう、なしたいと願つて止みません。そこで電源開発は国営及び公営開発せられまして、国民の真の幸福を図り、日本を静かな田園と観光と水産だけで自立できますようなし、民主的政治の下に平和な日本の再現を熱願しております。  最後に資金が問題になつて参りますが、これは必要以上の工場を整理しまして、例えば紡績など国民消費できる程度に定めまして、粗惡品を作りませんように法律などで一定の基準を定め消費者がその監視人になり合格しない製品を作つた人は罰するようにしたらよいと思うのでございます。又不必要な工場及び会社電源開発に必要な資材の工場に切替え国を挙げて日本にあるだけの経済を集中したいと思います。資金が問題になつて参りますが、これは必要以上の又インフレが起ると申しますけれども、食糧の自給自足を図つたら問題はないと思います。又特に山の多い日本は鉄道だけでも電機関車にして頂きたいのでございます。そうしまして、日本が貿易に頼らず、日本を静かな田園都市としまして、観光の設備に万全を期して外貨獲得をせられんことを願つております。そうしまして大都会に人口が集まることを避けますことにも電源開発は急いでなされたいと思うのでございます。
  25. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 有難うございました。  次に船橋要君にお願いいたします。
  26. 船橋要

    公述人(船橋要君) 電源開発に当りまして與党の提案に対しまして野党の議員さんがた連日、先ほど委員長のお話によりますると十数回の委員会を設けられて真剣に御討議なさつておられる、いずれも気持は国家の上に、国民のためにということを考えますとき私ども国民といたしまして非常にその熱意を有難く存ずるのであります。この席から甚だ失礼でありますが、国民を代表して議員さんがたに厚くお礼を申上げたいと思います。  今度の出ました電源開発促進法案を見せて頂きましたが、私は端的に申上げまするとこれに賛成であります。同時に成るべく速かに実施に移して頂きたい、こう思うのでございます。賛成の理由はこれから以下申上げたいと思うのでありますが、私が申上げるまでもなく数日来公述人によつて殆んど議論盡されておると思うのであります。ただ私は辺境の地北海道に住居しておりますと、特にローカル的と申しますか、地方的の感覚を強く持つておる一人といたしまして申上げることに多少野人的考えがあるかも知れませんが、その点は前以てお断りしておきます。電源開発の急ぎますことはこれはもはや国民全部の要望であると申上げて差支ないと思うのであります。そこでこの電力を豊富にする、開発を急がなければならないということはこれはもう與党も野党も国民全部の代表でありますから国の代表としてその通りの気持にはお変りないでありましようが、さてこれを実行するに当りまして一番大きな問題は現在の日本の経済状態から言いまして何と言いましても資金の問題、私どもも北海道電力、東京電力等の株主の一人でありますが、およそ大規模電源開発に用いる金はできがたい、できないと申しませんが、できにくいという観念を持つているのであります。何とか国の力で急速に資金を出して開発の方向に持つてつてもらいたい、こういう気持を持つておりました一人といたしまして今日提案されましたこの法案に私は全面的の賛成をいたすのでありますが、後刻この内容の一、二について希望條件がございまするが、法案の通過を一日も早くして速かに着手をして頂きたい、こう存ずるのであります。  次には現在九分割されておりまするところの会社は国の監督を受けまして普通の商事会社と異なつておるようでありまするが、事実は営利会社であります。従いましてこれらの会社開発いたしますところはむずかしいところ、金のかかるところ、儲からないというところにはすぐ手が着きません。どうしてもやはりやすい、儲かるとかというところよりほかすぐ手を着けるということは考えられません。そういたしますると天龍川であるとか、或いは只見川であるとかいう簡單な、而も我が国の中央部の一部のみしか急速に開発ができないと思うのであります。従いまして北海首とか、九州には急速な開発ができない。こういう考えを、先ほど私がローカル的の感じを持つておるということはそのことでありますが、そこで今後の日本電源開発にはただ電気量を殖やすというだけでなく、狭められました四つの島しかない国土の開発と睨み合せまして、総合的に国土開発の一環とした電源開発こそ我々国民がひとしく望んでおるのであります。従いまして今日の出されました法案内容を見まするとその目的の第一條にそれがはつきりと謳われております。私はこの点に対して賛成を惜しまないのであります。  次には先ほど申上げましたごとく資金を国が殆んど全面的に面倒を見る。これでなければ私は電源開発は急速に行われないという観念を持つてつた一人といたしまして、この法案の通過に賛成するものであります。ただここで私の感じますこと、或いは要望したいことは御承知のごとく電気事業は独占事業に等しいものであります。従いまして今日の日本全体の経済から眺めまして電気会社の料金のプールとか、電力量のプールと言いましてもなかなか実現が困難であります。あの九分割の際に申合事項と言いまするか、政府の意見の中にもそれぞれの電気会社はこれらについて融通し合うということがはつきりあることに私は聞いておりましたが、今日の実態、北海道におきましては内地とその比甚だしく違うのであります。従いまして我々の石炭生産や、或いは中小炭鉱のごときは電力料金が一トンに四百円以上もかかつておる、こういう実例が少くないのであります。そこで私はこの電気会社の現存する電気、若しくは自家発電、或いは府県で今計画されておるところの電力開発を圧迫せずして、国が更にその上に立つて電力開発をする特殊会社を作つて急速に電力の供給を豊富にする、この点が私の最も喜びとするところであります。私は統制を好むものではありません。国営を好むものでもありません。自由主義経済下の産業人といたしましてでき得る限り個人企業、私企業を圧迫せずしてそうして国が更にこれらを援助しながら更に国民の欲する電力量を殖やし、電気料金を少しでも下げてやる。北海道の果から九州の先まで殆んど同一の料金、同じ電力量を用いるように、にわかにはできますまいが、将来はそれを目途としてもらいたいと思うのであります。従いまして私はこの九会社の上に、上にと申しますと甚だ語弊がありますが、並んだ国策であるこの電力会社を急速に設置して、私の願うところはこれからでありますが、この電気会社が持つ使命、この法案の二十二條を見ますると、二項に賃貸若しくは讓渡という字句があるのでありすすが、私はこの問題には極めて不安を持つと同時に甚だ情けなく思うのであります。少くもこれらの字句は削除を願いたいと、こう思うのであります。そうしてこの電力量の少くも二割乃至三割を開発して頂きまして、そして地方の恵まれないところの電気会社の高い料金のところには安く卸してやる。そういたしましていわゆる電気料金及び電気量の供給をでき得る限りプールして頂けるように、そのためにはどうしても政府の出資による以上のこの法案のごとき会社の出現を急速に願うものであります。但し一昨日及び本日の公述人のお話の中に電気の施設は容易じやない、技術において或いは事業の推進において幾多の難関がある、こういうお言葉藤田公述人かと思いましたがありましたが、私もその面を非常に憂慮するものであります。過去の土木事業電気事業の全部とは申しませんが、そういうことを常に耳にしておるのでありますが、併しながら先ほどの藤田さんがおいでになりませんが、ああいう立派なかたが私は善良たる国民であるならば善良なる国民として少くとも国が最もよし、国民もいいという仕事ができましたときには九電力会社も挙つてこれに力を借し、国又は現在の既存の電力会社に資金の面倒を見、更にあらゆる技術者、自分の持つている機能を全部絞つて貸し與えてお互いに協力し合つて立派な電力会社を作つて行けると思うのであります。人のすることをうしろから批判せずに、みずからが一線に立つて協力する、今日の日本はこのように狭められました四つの島に八千万からの国民がうようよしておるのであります。互いに人の足の裏をかいたのではいけません。少くとも共存共栄の心を持つてお互いに手を取り合つて今日の日本を、講和後の日本を世界の列国に列しなければならんという気持を持つて頂きたい。私どももその行わんとすることの可否は別問題といたしまして、内容にはいろいろな議論がございましようが、皆さんの気持は、電力は要るのだ、電力は急速に開発しなければいけないのだという気持は同じであると思うのであります。そうしますれば今日の日本の現状から見て、経済の実態から見てどうしてもこの方法以外はないと私は断言するものであります。ただ私どもの杞憂するところでは、今日の政府は知りません。今日の内閣は知りません。吉田さんは立派なかただということは私どもは考えておりますが、総裁以下の役員の任命に当つて少くとも清廉剛直、潔白な人を据えて頂いて、そうしてこれの下の理事国家を思う国士を据えて頂きたい。そうしてその下にそれらのスタツフが相寄つて行くならば、翕然として善良な国民はこれに協力することを惜しまない、こう思うのであります。従いまして広く人材の御登用をなさることを特に提案者に向いまして望むものであります。  更に昨日からの公述者のかたがた言葉のうちに、何か政党のスキヤンダルの温床になりはしないかというような危険があるように聞き及んでおりまするが、これらも少くとも国が予算を財政から出す限りは、衆議院参議院の議員さんがたも殆んど目を通されるはずで予算に対しては審議されるのであります。従いまして私どもは善良である両院の議員さんを絶対に信じます。このかたがたがよく話合つてよく議を戰わして万全を期すならば、それらの問題は簡単に片付く問題と思うのであります。終戦前の日本の、国より政党が大事だ、国はどうなつてもおれの政党が大事だというような観念の政党若しくは議会人は今日私は一人もいないと思うのであります。少くとも国を中心に考え、国民生活の向上安定を中心に考え、如何にして日本の国が講和後世界の列国に伍して行けるかと、この一点に私はかかつておることを深く信ずるものであります。従いまして過去のことを中心にとつて今日を論ずるのはすでに遅し、そういう国民はこの前の感冒か惡疫で殆んど死んだろう、今残つておる国民は殆んど立派な国民で、如何にして我が国を立派にするかということ以外に私は考えていないと思うのであります。  そこで大体法案内容を、私どもは法律家でもありません、従つて計数にも乏しいのでありますが、ただ私の願うところのものは、どうかこのできました会社昭和三十五年といいますが、そんな時期に施設の譲渡をしたりなくなつてしまうことがないように、私は永久にこの会社を存続して頂きたい。そうして電力の二割乃至三割をこの会社が保持をしていつまでも現在の各党の議員さんが重ねて議員に当選されて、そうしてこの法案を完全に守つて頂いて間違いがないように、立派に、国民が喜んで安い料金で豊富な電気を受けられるように御努力を願いたいと思うのであります。  甚だ雑駁な申上げようをいたしまして不徹底でありまするが、私のお願いするところは以上でありますが、更に私は一番冒頭に申上げました地方的の感覚を持つておる者といたしまして、一口最後にお願いというか、申出というか、希望を申上げたいのは、急速に電源開発をしてもらう、これはもう議論抜きに一つつて頂きたい。そうしてこの会社中心となつてでき得るならば全国的の料金のプール、電力量のプールをどうしてもやつて頂きたい。特に北海道のような地形に恵まれないところにおる私といたしましては、そのことが一番大きな悩みであります。幸いにこの会社ができましたらそういう方向の調整をするという項目がございますので、目的の大綱を必ずや活かして使つて頂きたい、このことをお願いいたします。  更にもう一つ昨日の公聴会を傍聴させて頂いたのでありまするが、どなたか参議院のかたと公述人の井上さんとの間で言葉のやりとりをしておられました。今の民間の電力に金が行き過ぎておるのじやないか、ところが井上さんはそのかたに、お前のほうの炭鉱にこそ行き過ぎておるように思つておるということを言われたように私は記憶いたしまするが、私も炭鉱人の一人といたしましてこのことの釈明ではありませんが、そういう気持を持つておることをこの機会に甚だ失礼でありますが、こういう機会は再び得られません。私ども田舎の野人、而も議員さんの上に立つてものを言わしてもらうなんということは、再び得られないと思うので、この機会に申上げて見たいと思うのでありまするが、あの終戦直後、月産五十万トンまでに下りました石炭、今日は月産四百五十万トンであります。ここまで持つて来るのには、これは国の協力もありましたし、皆さんの、国民全体の協力もありましたことはもとよりでありまするが、我々も真剣になつて国の再建を石炭によつて図るのだ。あの傾斜生産の方策をとられまして我々に呼びかけた。我々は毅然として労資相協調いたしまして、今日の国の需要に満てるまでに努力いたしました。従いまして、私は石炭生産が思うように進んだ。そのことによつて四月二十八日講和條約が締結されて世界に列しました。この速かに講和に持つて行つた一つの責任、責任と言いますか、仕事を我々の手で一部成し途げたのだということを自負しておるものであります。従いまして、石炭にかけた金は死んでいなかつたのだ、生きているということを国民皆さんに御了解を得ると同時に、今後電力に使う金も殺しちやいかん。必ずやかけた金が生きるということでありますならば、これはもう各党とも文句はないと思うのであります。どうかそういうふうに進んで頂きたい。これは経営者の考えと、国の考えが相一致しておつたと思うのであります。従いまして、今後の問題も、今後のこの電力開発会社運営も人による、運営にそのよろしき人を得て頂きたい。そうして、国策会社で、いわゆる特殊会社であるがために、議員さんがたが直接監督ができるのだ、これを私どもは安心してお任せをいたしておきます。  以上申上げましたのが私の意見でございます。
  27. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 次に、久保田豊君お願いいたします。
  28. 久保田豊

    公述人(久保田豊君) 御紹介を頂きました久保田豊でございます。農民組合のほうをやつておりますと同時に村長をやつておりまして、みずからも小さな農業をやつておるものでございます。私は、勿論電気のこと等につきましては全くの素人であります。従いまして、これからお話申上げることのうち、技術的な、専門的な事項につきましては、多々間違いのあることと思いますので、御了承を頂きたい、こう思うのであります。私は、專ら農業、農民の立場から、今回の電源開発促進法案について考えておりますることを、又皆さんに十分御研究を願いたいことを率直に申上げたい、こう思うのであります。  第一は、この開発法案の第一條の、目的という項を見まするというと、これは專ら当面電源開発ということに重点を置いて、この法案全体が構成されておるようであります。又、頂きました各般の資料を一通り目を通さして頂きましても、問題はこの点に集中をしておるようでございます。で、私ども農民といたしまして、今日日本におきまして、電源開発そのものに決して不満があるわけでもありません。これは双手を挙げて賛成をいたすのでございます。併しながら、お示しを頂きましたこの法案並びにこれを裏付けまする、或いはこれの中に盛られまするいろいろの諸計画、それを廻りまする内外の経済情勢、こういつたものを見まするというと、ここに多々問題が農民といたしましてあるのであります。その点から見まするというと、この法案、或いはこの計画等につきましては、なお一段と大きな見地から御検討を頂きたい、こう思うのであります。その一つは、今さつき申しましたように、第一條の目的であります。電源開発そのものが、今日国家的な見地から、又国民的な見地から緊急の要務であることは明らかであります。併しながら、私が申上げるまでもなく、川というもの、水というものは、これは単に電源だけではございません。いろいろの、各般の農民の、或いは農民と言いますか、国民全般の利害が極めて輻湊しておるのであります。又、今後ますます輻湊すべき性格を持つておるものと私どもは考えております。従いまして、而もこの電源開発のごとき大事業は、一旦これをやりますというと、あと訂正はできないのであります。下手なことをいたしますれば、あとで永久に殆んど訂正はできないということになります。そこで私どもは、農民の立場からいたしまして、この電源開発は是非とも各水系若しくはその一帯の総合開発、国土の総合開発の重点、こういうふうなお考えをはつきりいたして頂きたい、こう思うのであります。然らざる限り、他の軍需産業に属する部面、或いはその他の文化的部面が当面の必要によつて無視され、間違つた設計或いは電力会社の利益を中心としました設計の行われました際には、これが訂正はできません。こういう点からいたしまして、私はこの第一條にはつきり水系別若しくはその水系を中心とする総合開発的見地で、これを土台といたしまして、その重点として電源開発を重点的に取上げる、こういう点をはつきり明文化いたして頂きたい、こう思うのであります。これが第一点であります。而も一番基本の点の一つであります。  その次に、私どもお願いいたしたいのは、この法案を拝見いたしまするというと、審議会のお仕事の中の一つに、水並びに土地に関しまする権利の調整という一項がございますが、それ以外には、この電源開発によつて起りまする農林若しくは漁業の直接間接に受けまするところの被害に対する補償の條項が一項もございません。又水利の調整、水利権調整というような問題につきましてもはつきりした規定がないのであります。私が申上げるまでもなく、過去の場合におきまして、又今日取上げられておりまする各種の電源開発の問題にいたしましても、非常にこの電源開発という問題と、農林漁業、こういつた問題とは非常に大きな密接な関係がございます。電源開発中心とする限り、重点とする限り、どうしても農林漁業というものは、直接間接の被害を受けざるを得ない立場にあることは御承知通りであります。例えば、ダムを作りまして、今回の開発案の大部分はダムによる方式でありまして、これは非常に進んだいい方式だと思いますが、その半面におきましては、必ず多数の農家或いは農地、農業施設、若しくは森林、牧草、こういつたものが水没を免かれないことは明らかであります。これらに対して、従来においては勿論補償はいたしておる。今回におきましても、恐らくこれらは土地収用法その他の法律を基準にいたしましたことが行われると思うのでありますが、私は単にそれだけでは不十分である、こう考えるのであります。直接の被害につきましては、十分に農家、農民が安心をして金で補償を頂くというだけでなく、なお農民として立つて行けるように積極的な補償をいたすような明文を頂きたいのであります。然らざる限り、今まで過去におきまして全国の農民が幾多苦い経験を重ねておりますという点は、こういう点が最後においてはうやむやに、若しくは泣き寝入りにされて、結局は電源開発のために犠牲になるという実例が非常に多いのであります。こういつた点につきましては、勿論土地収用法その他によりまして補償をいたしましても、一応の補償は成り立つのでありますが、特に電源開発ということが国家全体の緊急な事業である。その裏において、直接被害を受けます者に対する特別の補償をいたしまする規定を明文化いたしませんと、農民とそれから一般のこういう特に国家的権力の背景を持ちました大きな会社、こういつたものとの交渉におきましては、農民が極めて不利になるのは明らかでありますので、こういう点をはつきりとして頂きたい。なお単に電源開発によりまする被害はそれだけではとどまりません。御承知通り、ダム・アツプいたしますと、先ずダム以下の下流の個所が下つて参ります。従いまして現在の個所を基準といたしまして作りました各般の用水、或いはその他農業施設というものが、すべて役をなさなくなる、或いは改良を要する場合が非常に余計起つて参ります。こういつた場合の間接の問題をどうするかという点、更にもう一つの点は、どうせダム・アツプいたしますれば、農業用水をとりますならば、恐らく農業用水、これに連関するといたしますれば、低い所から、そこの所から水をとる、従いまして、水温が二度三度下るという結果になろうかと思います。水温が下つた結果は、御承知通り、非常に大きな、特に水田におきましては災害が参つて来ることは明らかであります。二度三度はちよつと考えますると平気なようでありますけれども、併しながら今日の状況におきまする日本の農業、特に水稻栽培におきましては、非常に大きな災害の主たる原因になるのであります。或る学者あたりの推定によりますると、一千億キロ程度の水力電気開発ができた場合におきまするこの冷水による災害というものは、単にそれだけではございませんでしようが、全体として見ますると五百万石を突破するのではないか。こういうふうな推定さえ行われております際、今日成るほど電源も必要でありますが、将来日本の経済危機という点からしますと、農産物の増産こそ、これこそ極めて重要な問題であります。それがために、政府は、御承知通り五カ年計画で二千数百億の金を投じ、僅かに一千万石程度の増収を図ろうというようなことが農林省の今日考えておる実情であります。電源開発のために仮に五百万石以上の減収が出現するということになりますれば、これはちやんぽんいたしまして、大した効果はないということになります。こういつた点の間接災害につきましても、これは単に金の補償ではなく、もつと根本的な、いわゆる総合開発的見地から補償の方策を実施いたすことが是非必要ではないか、こう考えるのであります。こういう点を私どもは十分に補償をして頂きません限り、この電源開発法案に必ずしも直ちに賛成をして参るというわけに参らんのであります。なおこの電源開発に附随して起ります下流、若しくは水没地帯のいろいろの農業施設、或いは損害その他の交渉に当りましても、ともすると農民の立場はばらばらでありまして、又片方の会社が経済的に非常に強い、特に特殊会社というような場合におきましては、殆んどこれが十分な実を結ばない、こういうような点が多々ございますので、これらの直接間接の農林漁業の災害に対しまする補償ということをはつきり明文化して頂くことが、絶対我々農民といたしまして、この電源開発賛成いたしまする條件でございます。又これが最低の條件であるということを一つ申上げたいと思うのであります。  その次は、もう一つの問題は、私どもは今度のように、大規模に電源開発をされる場合におきましては、水利権の管理ということについて、国家がもう一歩大きくお考えを頂きたい、こう思うのであります。この水利権につきましては、御承知通り電力会社相互間におきまする水利権のいろいろのごたごたがございます。併しながら、これをもつと大きく考えまするというと、農業関係の水利権電力会社水力に関する水利権との関係、或いは公共用の水利権、或いは水道用の水利権、或いは漁業に連関いたしました、いわゆる認められない水利権の問題、こういうふうにいろいろの水利権が実は一つの水利権につきましては必ず錯綜しておるのであります。こういつたこの水利権調整或いは管理ということのはつきりした規定を設けずに、こういつたことを設けずに、ただ単に電源開発に関する水利権調整だけを審議会でおやりになるというふうなことではこれは十分でないと思うのであります。調整ではなくして、基本的な、私どもから見まするというと、総合的な水利権というものは、国が当然持ち、これを管理し、この建前から産業なり、文化の進展に応じまして、各河川、水系につきましてのいわゆる水利の調整、水利権調整ということをすることが必要ではないか、こういう観点から見まするというと、単に電源開発の促進法だけでなく、この基本法として水に対しまするいわゆる各水系別、水系別と言いますか、水に関しまする私はやはり基本法の制定というものが是非必要ではないか、この基本法との連関においてこの電源開発に関しまする水利の調整、管理ということがあつて初めて私は将来の万全を期することができる、こう考えるわけでございます。この点は更に一つ皆さんにおかれまして十分にお考えを頂きまして、一歩深い御研究を願いたい、こう思うのであります。私どもこの法案を拝見をし、なお計画、新聞その他或いは政府或いは與党等のいろいろの御意見を聞きまするというと、電源開発は非常に急ぐ、急ぐからとにかく早くやれ、こういうようなお話でありまするが、当初に申上げました通り、こういう基本的な点を解決しませんというと、一旦間違つて、又いい加減なことをしまするというと、あとで解決がつかない、而もその解決つかない被害というものは、多くの場合において弱い農民が非常にこれを被るということになりますので、今申しましたような、各水に対しまする基本法を制定されまして、この前提と結び付けてこの電源開発法案を運用されんことを私どもは強くお願いを申上げる次第であります。この審議会の機構等につきましても、多少の意見がございますが、詳しいことは私どもわかりませんが、審議会の機構並びに特殊会社、それから更に現在の九分割をされました電力会社の関係は非常にむずかしいものがあろうと思います。意見も私ども多少ございますが、專門でありませんし、間違つた意見が多いと思います。時間の関係もありますから省きますが、ただ農民といたしまして一番心配になりますのは、議員の皆さんには非常に場合によりますと失礼な言い分になるかも知れませんけれども、過去のいろいろの経験、今回の審議会は大体において国務大臣、これは政党を土台にいたしましたところの大臣であります。この大臣が国家の審議権の中心をなしてすべての問題を決定する一つの実質上の権限をお持ちのようであります。そして会社は、これは内閣の任命する幹部によつて行われ、そしてこのでき上つた電源施設は現存の会社に或いは譲渡し、或いは貸し與える、こういうこと、而もこの電源開発に総額五年間に六千億余の大きな金を使う、こういうふうな諸点を考えますと、過去私どもが日常数回大きく見られたいろいろなスキヤンダル、並びに私ども公共事業その他の半公共事業、大小を問わず地方において行われておりまする事業によつてみましてもこれらが或る意味において国民利害というものを無視していわゆる一部の人たちの食い物になる、その心配が非常に多いのであります。今日道路とか、河川とか、或いは農地改良とかいろいろの仕事が大小にかかわらず地方において行われております。大小さまざまの形におきまして非常に不正行為が多いのであります。この大きな電源開発、この問題が今申しましたようなこの会社仕事に使う金、こういうものを考えました場合にこの点が非常に大きな心配になる。これらに関しましてはいろいろ機構をいじつて見てもうまく行かないと思いますので、要はこれを運用する政治家なり或いは資本家なり、或いはこれの技術者、こういつた人たちの真に高潔な国を想う精神があるかないか、口だけでなく本当にこれによつて徹底するか、この一点に帰すると思うのでありますが、強いて機構的にこれが救済策を考えるといたしますれば私はこの審議機構を一応これは衆議院に出た最初の原案より多少修正されております、委員の数が余計になつておりますが、これは結構でありますけれども、真に公正な各方面の技術家を中心とした強力なスタツフを以て、このスタツフによつていわゆる政治的なゆがみ、こういうことのないような一つ機構と、これに即応する権限を與えて頂いたならば多少いわゆるこの政治的ゆがみをとることができるのではないかと、こう素人考えに考えるわけでございます。併しこれらの点につきましては私は余り詳しいことを存じません。従来の経験、この問題の内容、或いは輪郭というようなことからそうしたらどうかという程度に考えるわけでございます。  最後に私ども一番大きく心配をいたしまするのは、この電源開発の問題と国民経済全体、若しくは日本産業全体との連関でございます。電源開発は必要である。成るほど必要には違いない、併しながら先ず第一に資金の問題でございますが、五年間に少くとも六千億余の大きな金を使う、二十七年度において見ましても全産業の設備資金のうちの二五%をこれに投ずる、こういうふうな非常に大きな構想でありまして、而もこれは政府がこの法案はつきり資金の調達については責任を負う。こういうふうなことになつておりますが、果して今日の現状からこれらの資金の調達がうまく行くでありましようか。この点で政府がお考えになつておりまする点はこういうふうな特殊会社を作ることによつて外資、殊にアメリカの資本が入りいいだろう、こういうことでありますが、成るほど入りよくなるかも知れませんが、入りよくなるということと入るということは別であります。今のアメリカのいろいろの事情、特にアメリカの対日政策の本質というものを考えて見ました場合に、私どもは軽々にこの外資が入るというふうなことは期待はできないと私は考えております。勿論政府は借款というようなことを考えておられるようでありますが、政府借款のごときは非常にむずかしい。政府借款じやなくて民間借款という場合におきましては恐らく厖大な超過利潤を要求するところの質の悪い資本しか入つて参らない。これを政府がいわゆる利子補給なり、償還補給をしてやるというときにその最後の尻ぬぐいは誰がするかということを考えますと、私どもは軽々に外資導入というようなことを本質的にも余り歓迎すべきことではない。今のところまだ海のものとも山のものともわからないような計画を土台にいたしまして、規模を土台にいたしまして、この大きな仕事を進められることは極めて危険である、こう考えます。私どもはにわかにこの点については賛成しかねるのであります。然らばその他の国内資金調達方法は国内でやるよりほかない、この国内でやる場合に私ども一番心配いたしますのは片方において政府は石炭開発、或いは造船の開発、製鉄の開発、それと電気、こういうふうないわゆる重点産業の資金を集中いたしまする結果は平和産業方面におきましては殆んど今日資金の枯渇によつてつておることは御承知通りであります。このほうがなお一層大きく私はあふりを食う。その結果は電源開発はできるが平和産業は大きく資金面から言つても犠牲になる。こういう結果が出て参るのではないか、こう考えるのであります。この点を特段の何か考え方をしなければならん、こう思うのであります。もう一つはこの電源開発の結果果して国民全体の文化生活、若しくは全般的な産業立場から電力は豊富になるかと言いますと、私どもは期待簿だ、こう考えるのであります。と申しますのは、今日電気が少いということは私が申上げるまでもなく皆さんも御承知通り全般としての電気が少いのか、或いは極く特殊な方面に特別に電気が余計行つているために、ほかの方面電気が少いということについてはこれは私が申上げるまでもなく皆さんよく御承知のことだと思います。つまり、或る特殊の方面、この方面に安い電力が余計流される、而もそのほうではかなり無駄使いをしている、その結果が平和産業なり一般民需は高い電力を当てがわれて、而も相当窮屈してそれによつて非常な痛手をこうむつているというのが実情であります。今日急速にこの電源開発が行われるということの裏には恐らくいわゆる軍需工業、こういう方面に更により以上の大きな電力を安く供給しようということが一つの大きな狙いである、こう考えるのであります。そういたしまする場合におきましてそういつた恩恵を受けるところのいわゆる軍需産業方面においてはよろしいかも知れません。併しこの犠牲になりまする一般需要、若しくは文化方面、若しくは平和産業というものはますます立場がみじめになる、こういうことになろうかと思うのであります。而もこういうふうにして軍需産業中心といたしまする電源開発が行われる場合に日本産業構造はますます戰争への道を一途辿らざるを得ない。その結果これが外国が攻めて来るのか、日本が攻めて行くのかわかりませんが、もう一遍あのみじめな敗戰を喫するという危険がないとは私は断言できないと思う、その際は折角国民の血と汗で作つた電力源をもう一度ぶつこわすことをこの際やる、そのために我々が大きな骨を折るということは真平でございます。この点をはつきりいたして頂きたい、こう思うのであります。なお私どもはこれと連関いたしまして今までのいろいろの経過を考えますというと、こういうふうに軍需産業中心といたしまするいろいろの政策が行われる場合にその最後のしわ寄せはどこに来るかということになりますと、いろいろな形におきまして要するに我々農民、或いは労働者、或いは中小の企業、こういつたものがこのしわ寄せの犠牲を背負わされるのであります。現に私どもはそのしわ寄せの犠牲をさせられて汲々やつているのでありますが、今度の場合においてもそうだと思うのであります。専門的なことははつきりわかりませんが、現在の既存の水力発電の単価のキロ当りにいたしますというと資産再評価をしても、二万七、八千円だと、こういうお話であります。ところが今回の電源開発によりまする新規の施設は原価は少くとも十万円以上かかる、キロ当り十万円以上かかる、こうしますると、現在よりも少くとも三倍乃至四倍の高値になるのではないか。こういう高値のものをなぜ一段といわゆる軍需産業のほうには安く豊富にやつてやるという場合におきましては電力は下がるどころかもつと上がる、而も日本産業コストというものが全般として上つて参る。私どもは肥料が欲しい、併しながらこれ以上高い肥料を押付けられましては百姓はできません。農具は欲しいけれどもこれ以上高い農機具を押付けられましては百姓はやつて参れません。又電力も欲しいのであります。併しながらこれ以上高い電力、現在の電力だけでやつてもやり切れないところへこれ以上高い電力では農業関係の電力というものは使うことはできません。どうかこういうふうな点を考えて私どもはこの電源開発という問題が私どもの重要産業開発と合されまして、而もこれが大きく戦争経済への遂に切替えられるとこの大きな脅威になる。この点につきましては私ども真平でございます。この電源開発の基本をなすものは飽くまで平和であり、平和経済の発展、この前提があつて初めて私どもは多少の不満があり不平がありましても、この電源開発賛成するものでありまして、この前提が今日の内閣の行き方のように遮二無二或る一方の言い分を取りまして、戦争へ戦争へという産業構造の基本から変えてしまうような電源開発につきましては私ども真平でございまして、飽くまで農民といたしまして反対をせざるを得ない。又同時に国民の一人といたしまして反対をせざるを得ない。どうか諸君におかれましては私は非常に言葉を飾らずに申しましたけれども一つ以上の諸点、特に最後の点におきましては私は真剣にお考えを願いたい。今日の東亜全般の動き、国内の動き、世界全体の動きから見て今のような無理な戦争経済へ産業の基本構造を全般から切替えするようなこういう電源開発につきましては根本から御反省を願いまして、真に敗戦の結果、破れてみじめにはなりましたけれども、而もこのみじめなうちがら国民が平和に立ち上つて行けるような一つ基本構造をとつて頂きたい。これは単に電源開発直接の問題ではございません。現在の政府全般の経済施策なり、或いは政治施策の基本についてもう一度御反省を頂きまして、これと結び付いた私は電源開発を是非進めて頂きたい。このことをお願いいたしまして、私の全述を終りたいと思います。
  29. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 以上で公述は終りまして、これから質疑に入つて頂くわけでありますが、誠に残念でありますけれども午後の公述人のうち船橋公述人は三時から何としても放せん用事があるからということで退席されましたことを御了承を願います。質疑のありますかたから順次御発言願います。
  30. 栗山良夫

    委員外議員(栗山良夫君) 船橋公述人は御退席になつたそうでありますけれども、その御発言については私は重要な点について是非お聞きをしなければならん問題があるわけであります。これは昨日の委員会における九州の貝島公述人の御意見も全く私は同様な点があるわけでありまして、恐らく北海道のほうにおいても同じような御発言があろうかということを予定いたしまして、今日御質問をいたす予定をしておつたわけでありますが、これはどういう工合にいたしますか、ここでおいでになりませんから船橋公述人の御意見に対して私の意見を申述べて速記にでもとどめて頂きますか。何か特別な方法がありますか。
  31. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 今すぐ考えられる方法はないと思いますからそういう意味で御発言になつたらどうでしようか。
  32. 栗山良夫

    委員外議員(栗山良夫君) 実は船橋公述人はこの開発促進法に賛成であるということを前提にしましていろいろと御議論になつたわけであります。併しその賛成であるというのは電源開発を是非進めなければならんということは私はこの開発促進法に賛成する前提にはちよつとならないと思うのであります。勿論なるわけでありますが、これはこの法案賛成をしておる人も反対をしておる人も異議のない一致した問題であります。電源開発を急いでやらなければならんということは私は全部が一致した意見であろうかと思いますので、これは共通点でありまして賛否の最も分れる中心点の議論にはならないと思うのであります。そこで一番重要な点は、船橋公述人はこのままで行きますると非常に地の利の悪い北海道とか、九州等の開発は行われない、従つてこの開発促進法により、特殊会社によつてそういう地点の開発、民間の会社においては採算のとれないような地点の開発を促進しなければならん、従つてこれに賛成であるということを言われたのが第一点、重要な点であります。  それから第二点は昨年の再編成以後九分割されましたので全国各地の電力需給が非常に不円滑になつておる、又従つてその各地の発生電力量にもそれぞれ種類も違い、量も違いまして当然に地域差料金が大幅についておる、こういうものを何とかして是正をしなければならん、そのためにこの特殊会社を大いに役立たさなければならない。特殊会社は三十五年くらいで清算に入るだけでなく、設備の譲渡、貸與等は以てのほかで設備そのものを特殊会社運営を握つて、そういう役割を果す、こういう議論であつたので、私どもが今この法律案に対して非常なる疑問を持ち、そうして熱心に提案者の意見を追究しておるのはこの点にあるわけであります。昨日も朝日新聞の土屋公述人と私とこの問題について質問を交じえて議論をしたのでありますが、実はこの点にあつたわけであります。こういう点が明らかにならんから我々はこの法案に対してどうも賛成の意を表しかねておる。然るにこういうことに考えられないで、船橋さんが賛意を表されておるということは、私が率直に批評いたしまするならば北海道とか、或いは九州とか、或い四国のかたがたも同じ心理的な考えであろうと思いまするが、今まで非常に電源開発においては冷遇されて来た、又電力需給の点におきましても料金の点においても非常に苛酷な待遇を受けて来た、従つてこういう特殊会社ができれば何となくそういうような過去の取残された地位というものが改善をせられまして、そうして本州中央部と同じような條件にあとから追付いて行けるのではないかと、こういう考え方の下に賛成をせられておるのではないかと思うのであります。併し事案は全くそれと反対でありまして、私どもが今日まで多数の日時を費やして議論をして来ました結果から申しまするならば、船橋公述人が條件として要求をされたこの二つの最も大きな目的は今日の電源開発促進法案においては相容れられないのであります。これは極めて明瞭になつておる。従つて私は船橋公述人、或いは貝島公述人、その他四国等の御意見は伺つておりませんけれども、そういう今のかたがたのお述べになつた意見というものは、この法律案の賛否を左右するように非常に大きな條件というものを出して賛成の意に代えておられますけれども、実は反対意見である。こういう工合に私は理解したということを申上げたいのであります。
  33. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 今栗山君の言つた意見は正しいと思います。僕もその点を船橋さんがおつたら質問しようと思つてつたのですが、恐らくこれを突き進めて行くと、論議を進めるならば船橋さんは反対立場に立たなくちやならん。而も観念的に賛成論をぶつ放しておいて帰つてしまつて質問ができないのは非常に残念なんだが、恐らく討論するならば、あの人は反対意見を最後に述べなくちやならん人じやないかと思うのです。それともう一つは、今回の公述人のかたの意見をずつと総合して考えますと、この法案に関する公述をしておるのではなしに、電気開発が必要であるかどうかという公述のように思うのです。ですから非常に賛成意見も多いようでありますが、この法案に対する研究をされていないし、それから法案の不備の点も問題にされいてないような点があると思うのです。今日お見えになつた何と言うお嬢さんですか、お嬢さんと言つたら失礼かも知れませんが、金丸さんなどはその尤たるものであつたと思うのであります。大変立派な御意見です。共産党の意見と非常に近いような意見を述べていらつしやると思つて、私は実は感心して、あれなら共産党に入れて、我々の見解と非常に近いのじやないかと考えておりましたが、一つぬかつておる点は、この開発法案によつて開発された電気が何のために使われるか、どういう目的を以てこの開発会社が設立を急いでおるかという点に対する研究なりお考えが少し欠けているのじやないかということが心配なんです。ただあなたの公述の中に、これが戦争準備の方面に使われるならばそれを処罰したらいいじやないかというような、余り聞きとれなかつたのですが、そういう発言があつたようにちよつと耳にしたのですか……。
  34. 金丸香代

    公述人(金丸香代君) 戦争のためのことは全然言つておりません。
  35. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 余り聞きとれなかつたので私は確かめたいのですが、若しもそういう御意見があなたの御意見にあれば、その点あなたの考えをもうちよつと聞いておきたいと思うのです。それがあなたに対する伺いたい点です。  それから久保田さんに私一点伺つておきたいと思う点は、あなたの御意見は大体私たちの考えと近いように思うのですが、なお伺いたい点は、今日の農村の状態で、開発された電気が実際にどういうふうに使い得るかということ、これは農村にその電気を使い得る能力があるかということ、どういう方面に使われるかということを参考のために伺つておきたいと思います。
  36. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) 公述人の御意見に対する御批判は又別の委員会一つ適当にお願いいたしまして、質疑だけにお願いいたしたいと思います。  それから只今の須藤さんの御質問の前半は金丸公述人に対してであります。後半の御質問は久保田さんへの御質問だと思います。  先ず金丸公述人にお願いいたします。
  37. 金丸香代

    公述人(金丸香代君) 私女性の立場から電源開発を是非行なつて頂きたいと申上げたので、家庭が電化生活いたしますと、婦人の教養の時間も生じて、もつと向上すると信じております。家庭の今の生活は、農村は薪の生活をしております。
  38. 須藤五郎

    ○須藤五郎君 私が質問いたしました点だけでいいのです。その点はわかつておりますから……。
  39. 久保田豊

    公述人(久保田豊君) 電気が農村へ廻るとして、どういう方面に使われるかということは状況次第でありまして、今の状況では特殊な、例えばお茶であるとかみかんであるとか、そういうふうな特殊な農作物、つまり値のいい農作物を作つておりまする方面へ相当いろいろの家庭電化なり、或いはいろいろの方面に使う余地があろうと思います。一般に米、麦作を中心としまする農家といたしましては、使いたい方面はたくさんあるのであります。併しながら今日では非常に電力が高いことと、それから電気を使う施設の金が非常に高いのであります。こういう関係で今日では例えば脱穀調製のごときも一時は皆電化いたしたのでありますが、最近ではどうもガソリンか重油のほうが安いというので以て、昔のガソリン或いは重油の発動機を持出してやらなければならん、こういうふうな状況になつておりますので、これ以上電気が高くなりますれば、恐らくこれは今まで電気を使つておりました方面も使えなくなる、こういうふうな結果が相当出て参るのではないかと、こう考えるのであります。ただ御承知通り日本の農業はまだ殆んど土地の状況の整備さえできておりません。つまり用排水というような関係が十分できておりません。この用排水関係につきましてはどうしても今後整備するとすれば、これはいずれにいたしましても国の補助なり何なり取つて電気を十分使わなければやつて行けない、こういう状況になろうかと思うのであります。
  40. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) ほかに御質問ございませんか。若し御質問がございませんようでしたらこれで公聴会を打切りましようか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  41. 佐々木良作

    委員長佐々木良作君) よろしうございますか。それではこれで公聴会を打切りたいと思いますが、公述人かたがたはお忙しいところを有難うございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申上げます。  そういたしますと、昨日、今日と続きました電源開発促進法案に対する公聴会はこれで全部終了いたしましたので散会いたします。    午後三時三十八分散会