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公述人(久保田豊君) 御紹介を頂きました久保田豊でございます。農民組合のほうをや
つておりますと同時に村長をや
つておりまして、みずからも小さな農業をや
つておるものでございます。私は、勿論
電気のこと等につきましては全くの素人であります。従いまして、これからお話申上げることのうち、技術的な、専門的な事項につきましては、多々
間違いのあることと思いますので、御了承を頂きたい、こう思うのであります。私は、專ら農業、農民の
立場から、今回の
電源開発促進法案について考えておりますることを、又
皆さんに十分御研究を願いたいことを率直に申上げたい、こう思うのであります。
第一は、この
開発法案の第一條の、
目的という項を見まするというと、これは專ら当面
電源開発ということに重点を置いて、この
法案全体が構成されておるようであります。又、頂きました各般の
資料を一
通り目を通さして頂きましても、問題はこの点に集中をしておるようでございます。で、私
ども農民といたしまして、今日
日本におきまして、
電源開発そのものに決して不満があるわけでもありません。これは双手を挙げて
賛成をいたすのでございます。併しながら、お示しを頂きましたこの
法案、
並びにこれを裏付けまする、或いはこれの中に盛られまするいろいろの諸計画、それを廻りまする内外の経済情勢、こうい
つたものを見まするというと、ここに多々問題が農民といたしましてあるのであります。その点から見まするというと、この
法案、或いはこの計画等につきましては、なお一段と大きな見地から御
検討を頂きたい、こう思うのであります。その
一つは、今さつき申しましたように、第一條の
目的であります。
電源開発そのものが、今日
国家的な見地から、又
国民的な見地から緊急の要務であることは明らかであります。併しながら、私が申上げるまでもなく、川というもの、水というものは、これは単に
電源だけではございません。いろいろの、各般の農民の、或いは農民と言いますか、
国民全般の
利害が極めて輻湊しておるのであります。又、今後ますます輻湊すべき性格を持
つておるものと私
どもは考えております。従いまして、而もこの
電源開発のごとき大
事業は、一旦これをやりますというと、あと訂正はできないのであります。下手なことをいたしますれば、あとで永久に殆んど訂正はできないということになります。そこで私
どもは、農民の
立場からいたしまして、この
電源開発は是非とも各水系若しくはその一帯の総合
開発、国土の総合
開発の重点、こういうふうなお考えを
はつきりいたして頂きたい、こう思うのであります。然らざる限り、他の軍需
産業に属する部面、或いはその他の文化的部面が当面の必要によ
つて無視され、
間違つた設計或いは
電力会社の利益を
中心としました
設計の行われました際には、これが訂正はできません。こういう点からいたしまして、私はこの第一條に
はつきり水系別若しくはその水系を
中心とする総合
開発的見地で、これを土台といたしまして、その重点として
電源開発を重点的に取上げる、こういう点を
はつきり明文化いたして頂きたい、こう思うのであります。これが第一点であります。而も一番基本の点の
一つであります。
その次に、私
どもお願いいたしたいのは、この
法案を拝見いたしまするというと、審議会のお
仕事の中の
一つに、水
並びに土地に関しまする権利の
調整という一項がございますが、それ以外には、この
電源開発によ
つて起りまする農林若しくは漁業の直接間接に受けまするところの
被害に対する補償の條項が一項もございません。又水利の
調整、水
利権の
調整というような問題につきましても
はつきりした規定がないのであります。私が申上げるまでもなく、過去の場合におきまして、又今日取上げられておりまする各種の
電源開発の問題にいたしましても、非常にこの
電源開発という問題と、農林漁業、こうい
つた問題とは非常に大きな密接な関係がございます。
電源開発を
中心とする限り、重点とする限り、どうしても農林漁業というものは、直接間接の
被害を受けざるを得ない
立場にあることは御
承知の
通りであります。例えば、ダムを作りまして、今回の
開発案の大部分はダムによる方式でありまして、これは非常に進んだいい方式だと思いますが、その半面におきましては、必ず多数の農家或いは農地、農業施設、若しくは森林、牧草、こうい
つたものが水没を免かれないことは明らかであります。これらに対して、従来においては勿論補償はいたしておる。今回におきましても、恐らくこれらは土地収用法その他の法律を基準にいたしましたことが行われると思うのでありますが、私は単にそれだけでは不十分である、こう考えるのであります。直接の
被害につきましては、十分に農家、農民が安心をして金で補償を頂くというだけでなく、なお農民として立
つて行けるように積極的な補償をいたすような明文を頂きたいのであります。然らざる限り、今まで過去におきまして全国の農民が幾多苦い
経験を重ねておりますという点は、こういう点が最後においてはうやむやに、若しくは泣き寝入りにされて、結局は
電源開発のために犠牲になるという実例が非常に多いのであります。こうい
つた点につきましては、勿論土地収用法その他によりまして補償をいたしましても、一応の補償は成り立つのでありますが、特に
電源の
開発ということが
国家全体の緊急な
事業である。その裏において、直接
被害を受けます者に対する特別の補償をいたしまする規定を明文化いたしませんと、農民とそれから一般のこういう特に
国家的権力の背景を持ちました大きな
会社、こうい
つたものとの交渉におきましては、農民が極めて不利になるのは明らかでありますので、こういう点を
はつきりとして頂きたい。なお単に
電源開発によりまする
被害はそれだけではとどまりません。御
承知の
通り、ダム・アツプいたしますと、先ずダム以下の
下流の個所が下
つて参ります。従いまして現在の個所を基準といたしまして作りました各般の用水、或いはその他農業施設というものが、すべて役をなさなくなる、或いは改良を要する場合が非常に余計起
つて参ります。こうい
つた場合の間接の問題をどうするかという点、更にもう
一つの点は、どうせダム・アツプいたしますれば、農業用水をとりますならば、恐らく農業用水、これに連関するといたしますれば、低い所から、そこの所から水をとる、従いまして、水温が二度三度下るという結果になろうかと思います。水温が下
つた結果は、御
承知の
通り、非常に大きな、特に水田におきましては災害が参
つて来ることは明らかであります。二度三度はちよつと考えますると平気なようでありますけれ
ども、併しながら今日の状況におきまする
日本の農業、特に水稻栽培におきましては、非常に大きな災害の主たる原因になるのであります。或る学者あたりの推定によりますると、一千億キロ程度の
水力電気の
開発ができた場合におきまするこの冷水による災害というものは、単にそれだけではございませんでしようが、全体として見ますると五百万石を突破するのではないか。こういうふうな推定さえ行われております際、今日成るほど
電源も必要でありますが、将来
日本の経済危機という点からしますと、農産物の増産こそ、これこそ極めて重要な問題であります。それがために、政府は、御
承知の
通り五カ年計画で二千数百億の金を投じ、僅かに一千万石程度の増収を図ろうというようなことが農林省の今日考えておる実情であります。
電源開発のために仮に五百万石以上の減収が出現するということになりますれば、これは
ちやんぽんいたしまして、大した効果はないということになります。こうい
つた点の間接災害につきましても、これは単に金の補償ではなく、もつと根本的な、いわゆる総合
開発的見地から補償の方策を実施いたすことが是非必要ではないか、こう考えるのであります。こういう点を私
どもは十分に補償をして頂きません限り、この
電源開発法案に必ずしも直ちに
賛成をして参るというわけに参らんのであります。なおこの
電源開発に附随して起ります
下流、若しくは水没地帯のいろいろの農業施設、或いは損害その他の交渉に当りましても、ともすると農民の
立場はばらばらでありまして、又片方の
会社が経済的に非常に強い、特に特殊
会社というような場合におきましては、殆んどこれが十分な実を結ばない、こういうような点が多々ございますので、これらの直接間接の農林漁業の災害に対しまする補償ということを
はつきり明文化して頂くことが、絶対我々農民といたしまして、この
電源開発に
賛成いたしまする條件でございます。又これが最低の條件であるということを
一つ申上げたいと思うのであります。
その次は、もう
一つの問題は、私
どもは今度のように、大規模に
電源開発をされる場合におきましては、水
利権の管理ということについて、
国家がもう一歩大きくお考えを頂きたい、こう思うのであります。この水
利権につきましては、御
承知の
通り、
電力会社相互間におきまする水
利権のいろいろのごたごたがございます。併しながら、これをもつと大きく考えまするというと、農業関係の水
利権と
電力会社の
水力に関する水
利権との関係、或いは
公共用の水
利権、或いは水道用の水
利権、或いは漁業に連関いたしました、いわゆる認められない水
利権の問題、こういうふうにいろいろの水
利権が実は
一つの水
利権につきましては必ず錯綜しておるのであります。こうい
つたこの水
利権の
調整或いは管理ということの
はつきりした規定を設けずに、こうい
つたことを設けずに、ただ単に
電源開発に関する水
利権の
調整だけを審議会でおやりになるというふうなことではこれは十分でないと思うのであります。
調整ではなくして、基本的な、私
どもから見まするというと、総合的な水
利権というものは、国が当然持ち、これを管理し、この建前から
産業なり、文化の進展に応じまして、各河川、水系につきましてのいわゆる水利の
調整、水
利権の
調整ということをすることが必要ではないか、こういう観点から見まするというと、単に
電源開発の促進法だけでなく、この基本法として水に対しまするいわゆる各水系別、水系別と言いますか、水に関しまする私はやはり基本法の制定というものが是非必要ではないか、この基本法との連関においてこの
電源開発に関しまする水利の
調整、管理ということがあ
つて初めて私は将来の万全を期することができる、こう考えるわけでございます。この点は更に
一つ皆さんにおかれまして十分にお考えを頂きまして、一歩深い御研究を願いたい、こう思うのであります。私
どもこの
法案を拝見をし、なお計画、新聞その他或いは政府或いは與党等のいろいろの御
意見を聞きまするというと、
電源開発は非常に急ぐ、急ぐからとにかく早くやれ、こういうようなお話でありまするが、当初に申上げました
通り、こういう基本的な点を解決しませんというと、一旦
間違つて、又いい加減なことをしまするというと、あとで解決がつかない、而もその解決つかない
被害というものは、多くの場合において弱い農民が非常にこれを被るということになりますので、今申しましたような、各水に対しまする基本法を制定されまして、この前提と結び付けてこの
電源開発法案を運用されんことを私
どもは強くお願いを申上げる次第であります。この審議会の機構等につきましても、多少の
意見がございますが、詳しいことは私
どもわかりませんが、審議会の機構
並びに特殊
会社、それから更に現在の九分割をされました
電力会社の関係は非常にむずかしいものがあろうと思います。
意見も私
ども多少ございますが、專門でありませんし、
間違つた意見が多いと思います。時間の関係もありますから省きますが、ただ農民といたしまして一番心配になりますのは、議員の
皆さんには非常に場合によりますと失礼な言い分になるかも知れませんけれ
ども、過去のいろいろの
経験、今回の審議会は大体において国務大臣、これは政党を土台にいたしましたところの大臣であります。この大臣が
国家の審議権の
中心をなしてすべての問題を決定する
一つの実質上の権限をお持ちのようであります。そして
会社は、これは内閣の任命する幹部によ
つて行われ、そしてこのでき上
つた電源施設は現存の
会社に或いは譲渡し、或いは貸し與える、こういうこと、而もこの
電源開発に総額五年間に六千億余の大きな金を使う、こういうふうな諸点を考えますと、過去私
どもが日常数回大きく見られたいろいろなスキヤンダル、
並びに私
どもが
公共事業その他の半
公共的
事業、大小を問わず地方において行われておりまする
事業によ
つてみましてもこれらが或る
意味において
国民の
利害というものを無視していわゆる一部の
人たちの食い物になる、その心配が非常に多いのであります。今日道路とか、河川とか、或いは農地改良とかいろいろの
仕事が大小にかかわらず地方において行われております。大小さまざまの形におきまして非常に不正行為が多いのであります。この大きな
電源開発、この問題が今申しましたようなこの
会社の
仕事に使う金、こういうものを考えました場合にこの点が非常に大きな心配になる。これらに関しましてはいろいろ機構をいじ
つて見てもうまく行かないと思いますので、要はこれを運用する政治家なり或いは
資本家なり、或いはこれの技術者、こうい
つた人たちの真に高潔な国を想う精神があるかないか、口だけでなく本当にこれによ
つて徹底するか、この一点に帰すると思うのでありますが、強いて機構的にこれが救済策を考えるといたしますれば私はこの審議機構を一応これは
衆議院に出た最初の原案より多少修正されております、
委員の数が余計にな
つておりますが、これは結構でありますけれ
ども、真に公正な各
方面の技術家を
中心とした強力なスタツフを以て、このスタツフによ
つていわゆる政治的なゆがみ、こういうことのないような
一つ機構と、これに即応する権限を與えて頂いたならば多少いわゆるこの政治的ゆがみをとることができるのではないかと、こう素人考えに考えるわけでございます。併しこれらの点につきましては私は余り詳しいことを存じません。従来の
経験、この問題の
内容、或いは輪郭というようなことからそうしたらどうかという程度に考えるわけでございます。
最後に私
ども一番大きく心配をいたしまするのは、この
電源開発の問題と
国民経済全体、若しくは
日本の
産業全体との連関でございます。
電源開発は必要である。成るほど必要には違いない、併しながら先ず第一に資金の問題でございますが、五年間に少くとも六千億余の大きな金を使う、二十七年度において見ましても全
産業の設備資金のうちの二五%をこれに投ずる、こういうふうな非常に大きな構想でありまして、而もこれは政府がこの
法案で
はつきり資金の調達については責任を負う。こういうふうなことにな
つておりますが、果して今日の現状からこれらの資金の調達がうまく行くでありましようか。この点で政府がお考えにな
つておりまする点はこういうふうな特殊
会社を作ることによ
つて外資、殊に
アメリカの資本が入りいいだろう、こういうことでありますが、成るほど入りよくなるかも知れませんが、入りよくなるということと入るということは別であります。今の
アメリカのいろいろの
事情、特に
アメリカの対日政策の本質というものを考えて見ました場合に、私
どもは軽々にこの
外資が入るというふうなことは期待はできないと私は考えております。勿論政府は借款というようなことを考えておられるようでありますが、政府借款のごときは非常にむずかしい。政府借款じやなくて民間借款という場合におきましては恐らく
厖大な超過
利潤を要求するところの質の悪い資本しか入
つて参らない。これを政府がいわゆる利子補給なり、償還補給をしてやるというときにその最後の尻ぬぐいは誰がするかということを考えますと、私
どもは軽々に
外資導入というようなことを本質的にも余り歓迎すべきことではない。今のところまだ海のものとも山のものともわからないような計画を土台にいたしまして、規模を土台にいたしまして、この大きな
仕事を進められることは極めて危険である、こう考えます。私
どもはにわかにこの点については
賛成しかねるのであります。然らばその他の国内資金調達方法は国内でやるよりほかない、この国内でやる場合に私
ども一番心配いたしますのは片方において政府は
石炭の
開発、或いは造船の
開発、製鉄の
開発、それと
電気、こういうふうないわゆる重点
産業の資金を集中いたしまする結果は平和
産業方面におきましては殆んど今日資金の枯渇によ
つて参
つておることは御
承知の
通りであります。このほうがなお一層大きく私はあふりを食う。その結果は
電源開発はできるが平和
産業は大きく資金面から
言つても犠牲になる。こういう結果が出て参るのではないか、こう考えるのであります。この点を特段の何か
考え方をしなければならん、こう思うのであります。もう
一つはこの
電源開発の結果果して
国民全体の
文化生活、若しくは全般的な
産業の
立場から
電力は豊富になるかと言いますと、私
どもは期待簿だ、こう考えるのであります。と申しますのは、今日
電気が少いということは私が申上げるまでもなく
皆さんも御
承知の
通り全般としての
電気が少いのか、或いは極く特殊な
方面に特別に
電気が余計行
つているために、ほかの
方面に
電気が少いということについてはこれは私が申上げるまでもなく
皆さんよく御
承知のことだと思います。つまり、或る特殊の
方面、この
方面に安い
電力が余計流される、而もそのほうではかなり無駄使いをしている、その結果が平和
産業なり一般民需は高い
電力を当てがわれて、而も相当窮屈してそれによ
つて非常な痛手をこうむ
つているというのが実情であります。今日急速にこの
電源開発が行われるということの裏には恐らくいわゆる軍需工業、こういう
方面に更により以上の大きな
電力を安く供給しようということが
一つの大きな狙いである、こう考えるのであります。そういたしまする場合におきましてそうい
つた恩恵を受けるところのいわゆる軍需
産業方面においてはよろしいかも知れません。併しこの犠牲になりまする一般需要、若しくは文化
方面、若しくは平和
産業というものはますます
立場がみじめになる、こういうことになろうかと思うのであります。而もこういうふうにして軍需
産業を
中心といたしまする
電源開発が行われる場合に
日本の
産業構造はますます戰争への道を一途辿らざるを得ない。その結果これが外国が攻めて来るのか、
日本が攻めて行くのかわかりませんが、もう一遍あのみじめな敗戰を喫するという危険がないとは私は断言できないと思う、その際は折角
国民の血と汗で作
つた電力源をもう一度ぶつこわすことをこの際やる、そのために我々が大きな骨を折るということは真平でございます。この点を
はつきりいたして頂きたい、こう思うのであります。なお私
どもはこれと連関いたしまして今までのいろいろの経過を考えますというと、こういうふうに軍需
産業を
中心といたしまするいろいろの政策が行われる場合にその最後のしわ寄せはどこに来るかということになりますと、いろいろな形におきまして要するに我々農民、或いは労働者、或いは中小の
企業、こうい
つたものがこのしわ寄せの犠牲を背負わされるのであります。現に私
どもはそのしわ寄せの犠牲をさせられて汲々や
つているのでありますが、今度の場合においてもそうだと思うのであります。専門的なことは
はつきりわかりませんが、現在の既存の
水力発電の単価のキロ当りにいたしますというと資産再評価をしても、二万七、八千円だと、こういうお話であります。ところが今回の
電源開発によりまする新規の施設は原価は少くとも十万円以上かかる、キロ当り十万円以上かかる、こうしますると、現在よりも少くとも三倍乃至四倍の高値になるのではないか。こういう高値のものをなぜ一段といわゆる軍需
産業のほうには安く豊富にや
つてやるという場合におきましては
電力は下がるどころかもつと上がる、而も
日本の
産業コストというものが全般として上
つて参る。私
どもは肥料が欲しい、併しながらこれ以上高い肥料を押付けられましては百姓はできません。農具は欲しいけれ
どもこれ以上高い農機具を押付けられましては百姓はや
つて参れません。又
電力も欲しいのであります。併しながらこれ以上高い
電力、現在の
電力だけでや
つてもやり切れないところへこれ以上高い
電力では農業関係の
電力というものは使うことはできません。どうかこういうふうな点を考えて私
どもはこの
電源開発という問題が私
どもの重要
産業の
開発と合されまして、而もこれが大きく戦争経済への遂に切替えられるとこの大きな脅威になる。この点につきましては私
ども真平でございます。この
電源開発の基本をなすものは飽くまで平和であり、平和経済の
発展、この前提があ
つて初めて私
どもは多少の不満があり不平がありましても、この
電源開発に
賛成するものでありまして、この前提が今日の内閣の行き方のように遮二無二或る一方の言い分を取りまして、戦争へ戦争へという
産業構造の基本から変えてしまうような
電源開発につきましては私
ども真平でございまして、飽くまで農民といたしまして
反対をせざるを得ない。又同時に
国民の一人といたしまして
反対をせざるを得ない。どうか諸君におかれましては私は非常に
言葉を飾らずに申しましたけれ
ども、
一つ以上の諸点、特に最後の点におきましては私は真剣にお考えを願いたい。今日の東亜全般の動き、国内の動き、世界全体の動きから見て今のような無理な戦争経済へ
産業の基本構造を全般から切替えするようなこういう
電源開発につきましては根本から御反省を願いまして、真に敗戦の結果、破れてみじめにはなりましたけれ
ども、而もこのみじめなうちがら
国民が平和に立ち上
つて行けるような
一つ基本構造をと
つて頂きたい。これは単に
電源開発直接の問題ではございません。現在の政府全般の経済施策なり、或いは政治施策の基本についてもう一度御反省を頂きまして、これと結び付いた私は
電源開発を是非進めて頂きたい。このことをお願いいたしまして、私の全述を終りたいと思います。