○
公述人(
土屋清君) 私はこの
電源開発促進法案に
賛成であります。以下それにつきまして私の考えておるところを申上げたいと思います。
敗戰
日本にとりまして残された唯一の
資源が
電力、即ち
水力であることは、もはや申上げるまでもないと思います。これを
開発利用するということが
日本経済の前途にと
つて殆んど唯一とも言うべき可能性をもたらすものと私は考えます。特に十年先を考えますと、この際放置されておる大
規模電源を急速に
開発するということが極めて大切ではないかと思うのであります。大
規模電源と申しますと、一カ所で五十万キロ或いは百万キロとれるというような大
規模の
地点、まあ国内三、四カ所あるかと思いますが、こういうところはなかなか今まで手が着けられない、放置されて及んでおる。現在でも五万キロ、十万キロ
程度の
開発は行われておりますけれ
ども、大
規模電源に至
つては殆んど手が着けられていない。併し先を考える場合には、今日において速かにその
開発のスタートをすることが、私は
日本経済のために非常に大切だと思うのであります。その
手段方法といたしまして、本
法案に示されましたような
全国一つの特殊公社で以て
開発に当るということは大変結構だと思うのであります。これに対しまして、
全国数社の
民間会社、
電力会社を中心とすると承わ
つておりますが、
民間会社で以て
開発するというような
意見もございますし、又それほど
はつきりした形ではないと思いますが、公社若しくは国営とい
つたような、そういう
公共的な色彩の非常に強い形で以て
開発しようというような
意見もあるかのように聞いております。私はそれに比較いたしまして、今回の御
提案になりました
全国一つの
特殊会社という形が最も妥当と信ずるのであります。その
理由は、第一に、この大
規模電源の
開発には非常に巨額の金を必要といたします。恐らく一千億円内外の金に結局なるのじやないかと思うのでありますが、その
資金の調達ということになりますと、今の
金融情勢或いは将来を考えましても、こういう大
事業を賄う
資金、而も相当長期に亘
つて回収しなければならないような
資金は、財政
資金に主たる
部分を依存するほかないと思うのであります。財政
資金を如何なる形で出すか、一般会計から出すか、或いは
開発銀行、その他
資金運用部
資金を出すか、いろいろ又問題がございましようが、結局財政
資金を出すほかはない。そうしますと、財政
資金を巨額に大量に使用する場合におきましては、
国民感情といたしましても、それが特定の純然たる
民間会社の使用に委ねられるということについては非常に割切れない感じが残ると思います。国家
資金を大幅に使用するものであれば、それについては相当国家として監督をして行く必要もあろうと思いますし、又財政技術といたしまして、支出の場合に、
民間会社よりは公的色彩を持
つた特殊会社のほうが支出しやすいということもあろうと思います。このように問題は
資金の性質から申しまして純然たる
民間会社よりは、私は
特殊会社のほうがよいと考えます。然らばそれほど大きな国家
資金を使うならば、いつそのこと公社若しくは国営でや
つたらどうだ、成るほどそうすれば、これは全く国家
資金の性質とは合致するわけでありますが、併しあとから申上げますように、公社等の形態については他の点において又考慮を要する問題がございます。そこまで
資金のために形態を国家的にすることは必要でない、やはり
特殊会社という
程度のことが一番妥当だと思うのであります。
第二に、大
規模電源の
開発を行いますには、相当広い地域に亘る総合的な国土
開発という形をとらざるを得ないと思います。一カ所でも何十万キロ或いは百万キロというような
電力を取るのでありますから、相当その流域は長く、その
開発地帯というものが広汎にな
つて来る、この地帶には、いろいろな
水利権の問題も生ずるし、鉱物
資源とい
つたような問題もあるでありましようし、場合によ
つては観光、風景美との
関係もございましよう、又
開発に当りまして補償をするというような問題も当然出て参るに違いない、従来も
電源開発に当りましては、そのためにいろいろトラブルが起
つたのでありますが、こういう今まで考えられなか
つたような大
規模な
開発を行うということになりますと、その困難というものは非常に加重して来るに違いないと思います。特に数県に亘る場合もございまして、行政官庁との折衝ということもなかなか厄介になるに違いないと思う。私も一、二こういう大
規模電源地帯に参りましたが、東京で考えてるより広い地帯でありまして、今度実際に
開発に着手した場合に厄介たなということをしみじみ感じました。そういう場合に、純然たる
民間会社が当るよりは、
政府の監督を受ける
特殊会社というものが、国家的
計画に基いて
開発をするという建前をと
つたはうが、起り得る今申しましたようなトラブルを解決する上に非常に便利じやないかというふうに私には考えられる。又
民間会社でこのトラブルの解決ができないわけはございませんと思いますけれ
ども、やはりそれには相当の時間がかかります。又いろいろ雑音も入
つて来るでありましようし、その点においては
開発を遅らすというような懸念がないとは言えないと思う。勿論
程度の問題でありますけれ
ども、国土の総合
開発、それに伴ういろいろの困難を未然に防いでできるだけトラブルを少くして行くという意味におきましては
特殊会社の形態のほうがよいのじやないかと考えます。
第三に、
民間会社が、
民間の
電力会社が
出資をして
開発会社を作
つて大
規模電源の
開発をやる、そういう構想があると聞いております。具体的にはよく承知いたしておりませんが、そういう構想があるそうでありますが、現在
民間の各
電力会社が相当の
電源開発を担当なさ
つておると思うのであります。その
電源開発をや
つて行くだけでも私は今の
電力会社にと
つては相当の負担だろうと思います。且つ又
開発以外にも現在の
電力会社はいろいろの面において問題を孕んでおる、もつともつと能率的な運営もしてもらいたいし、サービスもよくや
つてもらいたい。又小
規模の五万キロ、十万キロという、源
開発は
民間電力会社が独自の御工夫でやられるほうがいい、そういういろいろの仕事を
民間の
電力会社は背負
つておる。私は再編成には反対でありますが、再編成そのものの形において
民間電力会社が一度存在しておる以上は、これが自己に課せられた公的な任務を適正に遂行することには非常に期待するものであります。その使命を遂行するだけで恐らく現在の
民間電力会社の能力の一ぱいじやないか、それ以上に更に五十万キロ、百万キロというような大
電源開発をする能力が十分現在の
民間電力会社にあるとは思いません。そういうことに甚だこの余裕があるならば、現在の
電力会社のなさ
つておるお仕事において多々ますますなさるべきことが多いのじやないか、
電源開発の面においても五万キロ、十万キロの中小
規模のものを大いにやるべきでありまして、それには独自の御工夫でおやりになり、又
資金を調達されておやりになればよろしいのでありまして、そうい
つた意味におきまして、
民間電力会社がこの大
規模な
電源を着手するということは、現在の
民間電力会社に課せられておる使命をよく遂行するということにはならない。おのおのその職分が違う。
民間電力会社は與えられた再編成によ
つてきめられたその
地点に立ちまして、自己の業務を適正に遂行するそのことに全力を挙げて頂いたほうが、全体としては
電源開発を大きく遂行することになるのじやないかというように考えるのでありまして、勿論これは
民間電力会社が
電源開発をや
つていけないというのじやない。中小
規模の
開発を大いにや
つてもらいたい。それで以て一ぱいじやないか。大
規模電源の
開発をやる余力は余りないのじやないかというように考えます。
第四に、
全国一つの
特殊会社ということでありますと、
開発資金並びに資材、技術、労働力とい
つたものを一元的に運用し得るわけであります。これはなかなか理想
通りには行かないと思いますが、仮に数社ができて、大
規模電源を各
地点で別個の
会社で以てやるということになりますと、どうしてもその間において
資金、資材等のぶん取り、争奪が始まる。それがお互いに自由競争で
意欲を刺戟していい場合もありますけれ
ども、もともと国家
資金という枠がきま
つてお
つて、その枠の中でやるということが大
部分の
資金源になると思われるのでありますから、それならばむしろ
資金を一本に抑えまして、それを適正に各
地点に配分する、資材についても、技術、労働力についてもそのほうが全体として効果を挙げる
ゆえんだと思うのでありまして、そういう
資金、資材の効率的な使用ということも、まあこれは理論
通りには行かないと思いますけれ
ども、分立した場合に起る困難に比べれば、今からでもそのプラスということは考え得ると思うのであります。
最後に外資導入と
特殊会社との
関係でありますが、実は私は、この外資導入ということが
電源開発に本当に必要かどうかは、それほど重大視いたしておりません。
電源開発に外資が入れば、勿論結構である、且つ又
日本経済としては将来におけるドルの
不足を考えれば、外資の導入ができればいいと思うのでありますけれ
ども、併し
電源開発に外資がなければできないとは必ずしも考えない。国内においてあらゆる
生産要素がある場合には、国内
資金で以て
電源開発はできるに違いないと思うのであります。ただ併しそこにプラスXという外資が入
つて来た場合には、一層
開発が促進されるという効果は考えられる。その意味において、将来
電源開発に外資を導入すると、その可能性ということも一応考慮に入れておいて悪くはないと思うのであります。その外資の導入が入る場合を考えて、
特殊会社の形がいいか、或いは
民間会社の形がいいかという問題がその意味において出て来るのでありますが、これは結局今
日本が外資導入をやろうと思えばアメリカの国際
復興開発銀行、例のワールド・バンクと称するものが一番有力だろうと思うのであります。ワールド・バンクの今までに行
なつた貸付を見ますと、
政府若しくは
政府保証の
事業に対して貸付を行うという形が一番普遍的であるように思います。例外はありますけれ
ども、少くとも
政府の保証する或いは行う
事業に対して外資を入れ貸付ける、こういう形が普遍的であるように思います。そうしますと、
日本の
電源開発に外資を入れるという場合も、結局
政府保証ということがやはり必要な要件にな
つて来るのじやないかと考えられる。今日
政府保証を與えることは、たしか
民間会社に対して
政府保証を與えるということを禁止されているように思うのでありますが、私の間違いだ
つたらば訂正いたしますけれ
ども、大体において余り
民間会社に
政府保証をや
つていない。その場合
特殊会社であれば、将来
政府保証を與える場合に、一般の
民間会社に與えるよりは與えやすいのじやないか。若しも純然たる
民間会社に
電源開発に限
つて政府保証を與えるということになりますと、同じ建前でほかの
企業についても
政府保証をしなければならぬ、或いは
政府保証をしてくれという要求が起るという問題がある。その場合に
電源開発が
特殊会社であ
つて、
特殊会社だから
政府保証を與えたということであれば、そういう場合に処置し得ると思います。そうしますと、私は外資導入が
電源開発に不可欠とは思いませんし、又
電源開発になければならぬとも考えませんけれ
ども、併し外交導入が入り得る、そういう結構な情勢が生れた場合に、
特殊会社であるほうが外資の導入にはやはり便利じやないか、こういうふうに考えるのであります。
私の論点は以上に盡きるわけでありますが、これに対しましていろいろの反対論が当然起り得るのであります。よく言われる議論はそういう
特殊会社を作
つては
日発の再現ではないか、この間
日発をバラバラにして
民間電力会社が発足した際に、そういう
日発会社式の
特殊会社を作るというのはおかしいじやないか、こういう議論が出て来ると思います。もともと再編成に私は反対でありますから、これは取るに足らないと思うのでありますけれ
ども、併し今の
立場から申しまして、この
法案に示されました
特殊会社というものは、私は自発とは非常に違うと思う。これは
特殊会社である。国策
会社的な国家的意思を相当強く
代表している
会社という意味においては同じでありますけれ
ども、曾
つての自発が一番非難された点というのは、これは発送電の
全国独占の一社であ
つたという点であります。ところが今度の
特殊会社は大
規模な
電源開発という特定の
目的であ
つて、大
規模電源開発は独占するけれ
ども、中小
規模の
電源開発は何ら独占しない。自発の場合は発送電は勿論、
開発についても一切を独占してしま
つた。そこに自発が非難を受けるとすれば受くべき点があ
つたと思うのであります。今度の
特殊会社はそうではない。大
規模電源だけは独占して
開発する。国家の認めた根拠によ
つて開発する。併し中小
規模のほうは、これは
民間電力会社或いは
産業会社或いは府県自治団体等に開放されるわけでありますから、決して独占体じやあない。仮にこの
特殊会社が
電力を作るようになりましても、それは全体の発送
電力量の数分の一にしか達しない。
日発が発送電の全部を握
つたのとは全く性質を異にするのであります。
従つて日発の再現だという議論は非常に粗雑な議論でありまして、私は全く問題にならない。
電源開発を独占するのではない。大
規模電源開発だけであり、中小
規模については大いに
民間の創意によ
つて開発する余地が残されているのであります。この点においても自発の再現という非難は当らないと思うのであります。
第二に考えられる反対論というのは、
特殊会社が非能率だという議論であります。これは私は或る
程度認めます。併し全面的には肯定いたしません。成るほど
民間会社が能率的で
特殊会社が非能率的だということは、一般的に常識化いたしておりますけれ
ども、それはやつぱり個々の場合について見なければいけないのでありまして、現在の
民間電力会社が果して能率的かどうかということを先ず検討してかかる必要があると思うのであります。今までにおいては、現在の
民間電力会社が能率的だ、
従つて民間電力会社が
開発をや
つた場合は、
特殊会社のそれよりは能率的に行くという的確なる証明というものはなかなか出し得ないのではないかと思うのであります。勿論
特殊会社というものは、どうしても
政府の或る
程度の監督は受ける。その結果いろいろ事務的にビユーロークラシイが生れる、そういうような
欠陷はないとは言えません。問題はそういう
欠陷をどう是正して行くかということでありまして、その点についてむしろ我々がいろいろと工夫を凝らす必要があるのだと思います。私は
特殊会社が非能率的だということは、一般論としては認めますけれ
ども、問題はその非能率的だということがそれほど致命的なのかどうか、これを是正する途があるのかないのかということを考えて見ることが必要であると思います。且つ又或いはこの
会社がや
つた場合に、それほど能率的かどうかということは必ずしも肯定いたさないのであります。特にこの
開発を公社或いは国営でやるということになりますと、これは
特殊会社の場合以上に能率に対する懸念が強ま
つて参ります。今日まあ国有鉄道或いは電信電話
事業を公社にするという方向に進んでおりまして、国鉄はすでに公社になり、電信電話も近くなるのでありますが、公社ということになりますと、どうしても
事業計画、
資金計画についてすべてが
政府並びに
国会に
審議を受けるという建前をとらざるを得ない。この段階に至りますと、これはやはり
事業運営にはかなりの問題が起ると思うのであります。その意味において、私が今の段階においては公社、国営というのは多少問題があると言
つた理由でありまして、そうしますと公社、国営でない
特殊会社というような
程度のところが能率の点から申しまして比較的弊害が少いのじやないか、全然ないとは申しません。それをどうしたらば
能率化できるかということについて研究をして行く必要があろうかと思うのであります。
それから第三に、この
特殊会社案に対して加えられる反対というのは、
特殊会社は
政府の息がかか
つておる。今議会政治、政党政治であるからその結果政党の腐敗の原因となる、そういう危険性を孕んでおるという議論であります。曾
つての満鉄などが一時政党色で塗られまして、非常な弊害を起したというようなこともなきにしもあらずである。そういう点から見ますと、
特殊会社がそういう政党政治の腐敗の源泉になるという懸念が生ずるのは或いは止むを得ないところかも知れません。特に人事等におきまして
政府が総裁その他を任命する場合に、自己の一方的な見解で好ましからざる人物を任命するとい
つたようなことがないとは決して言えないと思いますが、それこそ
国会の監督すべきところだと思います。そのために
国会というものがある。そういう議会政治或いは政党政治の腐敗というものが起るべきそういう状態に対して、
国会が
責任を持
つて監視し、その弊害の出現を防止するということをすべきだと思うのであります。
特殊会社が曾
つてそういう事例があ
つた。
従つて今後においてもそういう危険性があるということは、これはまあ常識的には考えられるのですが、今後そういうことを起さないようにするためにどうしたらばいいか、これもやはり大きな研究問題である。私は
国会というものがそういうことについての大きな広い意味の監視を行な
つて、こういう腐敗を防止するということをすべきだと思うのであります。又
民間会社が
電力開発をや
つた場合に、そういう腐敗が起らないかということになりますと、これは私はどつちもどつちだと思うので、別に
民間会社だから腐敗が起らんという保証もない、場合によ
つては
政府の監督を
民間会社はそれほど受けませんから、もつともつと腐敗が起らないとは言えない。結局人の問題であります。結局どういう機構を作りましてもその腐敗が起るか起らんかということは、その当事者の質の問題なんです。
特殊会社ができましてそれに清廉剛直な人物が据えられまして、そうして一切そういう起り得る弊害に対して毅然たる態度をとるということであれば、或る
程度その弊害というものは防げるわけであります。そういう意味におきまして私はこの危険なきにしもあらずでありますが、それだからとい
つてこの実に反対する積極的な
理由にはなり得ないというふうに考えるのであります。こういうように考えますと、私は現在唱えられる反対論というものはそれほど強力とは思いません。確かに一部の
理由はございます。感情的には我々も
了解し得る点があるのでありますが、それを以てこの
法案全部を葬り去るというほどの大きな
理由にはなり得ないというふうに思うのであります。仮に一歩を譲
つてこの反対論というものが全面的に正しい、この
法案は非常にそういう欠陥を蔵しておるといたしましても、なお且つ私はこの
法案が速かに
成立するということが今の
日本にと
つては大事だということを感ずるのであります。それはなぜかと申しますと、若しここで以てこの
法案が
成立しないということになりますと、どういうことが起るか、私は
電源開発の空白時代が相当続くのじやないかと思うのであります。若しもこの
法案が
成立しない場合には、特に
民間会社の
出資に成る新
会社を各
地点別に作
つてやるということになるでありましよう。その場合一体これから
会社を作
つて資本を集めて、そうして一体スタートせしめることができるでありましようか。
民間の
電力会社はこの秋には大増資をやらなければならん。それだけでも大変な仕事なんです。そのほかに新らしい
会社を作
つてその資本を集めて、そうして
電源開発を軌道に乗せるというようなことを短期間に手際よくなし遂げられるとは私は思わない。結局この
法案が
成立しなければ
電源開発が又一年遅れるということになると思います。私は終戰以来今日まで
日本の
電源が僅かに三十万キロしか
開発されない、そういう情ない状態、これは我々全部の
責任だと思うのであります。この歎きを再び繰返してはならない。一刻も早く
電源開発に着手しなければならないときだと思うのであります。それだけに、それは勿論人によ
つていろいろ
立場がありますから反対論は出るでありましようが、その反対論のためにこの
法案を潰してしま
つて、又ここで
電源開発の空白期間を生ぜしめるということが国家的に見て有利かどうか。全面的に
賛成はできないにしても、併し
電源開発の
急務ということから見まして、この
法案を
成立せしめて、そうして悪いところは直して行くことは勿論必要ですが、この
法案によれば
政府出資で以てとも
かくスタートは切れる。どう遅く考えましても秋までには
会社が
成立して、
事業に着手されると思います。この
法案をぶつこわした場合にここに一年間の空白を生ずる、そういう重大な失敗を我々は繰返してはならない。もう
一つ是非この
法案が潰れないで何とか
成立いたしてもらいたいと思いますのは、私はこの
法案に全面的に勿論
賛成じやない、いろいろ言いたい点もありますけれ
ども、大体において各
政党政派の先ず譲歩し得る、妥協し得る線に来ておると思うからであります。一方の、つまり
民間の純然たる民営
会社でやろうという案でありますと、これは恐らく社会主義政党は挙
つて反対するだろうと思うのです。然らば社会主義政党の主張するように、公社若しくは国営でやろうとい
つたらば、これは保守政党が全部反対するに違いない。そうなりますと、いつに
なつた
つてこれは
電源開発が軌道に乗るわけはないのです。特種
会社というものはその意味では、或る意味では不徹底かも知れない。不徹底かも知れないが、純然たる民営
会社に片一方が非常に反対する、純然たる公社若しくは国営になりますと又片一方が大いに反対する。そういう状態で議論はかり繰返していつにな
つても軌道に乗らない、その弊を避けるためには、比較的
特殊会社というものは中間的な案であ
つて、
従つて保守党にしても社会主義政党にしても、私はまあ全面的に満足とは行かないけれ
ども、この
程度ならば我慢ができるという線じやないかと思うのであります。私は
電源開発というような問題は、
政党政派の利害によ
つて遅らされてはならないと思うのであります。八千万
国民の
最大公約数とい
つたような一線を見付けまして、その線で以て多少のところは譲り、お互いに譲るべきところは譲
つて、その線で以て速かにとも
かく電源開発を軌道に乗せるということが今非常に大事じやないかと思うのであります。その意味におきましては、
特殊会社という案は純然たる自由
経済の
立場をとる自由党から見ればこれは或る
程度のやはり譲歩だと思います。社会主義政党は公社或いは国営という形をとろう、或いは社会化でやろうとする。社会化を待
つてお
つたのでは今の政治情勢からい
つていつのことかわからん。その間の
電源開発はできないわけですから、やはりまあ純然たる民営でなくて
特殊会社であればここのところはやはり社会主義政党としても譲歩し得るのじやないかと思うのであります。そういう政治的聰明を私は大いに期待するものであります。この案が絶対的にいいとは申しません。いろいろ欠点もあります。先ほど申しましたような反対論にも聞くべき点があると思いますが、併し大局的に見まして八千万
国民の
最大公約数を求めろとい
つたならば、先ずこの辺のところで妥協するというのが一番
日本人として聰明な態度じやないかというように考えるのでありまして、何と言いましても
電源開発は国家的な問題、而も急速に着手しなければいけない問題、そういう意味におきまして、私は細かい反対論はお互いに譲りまして、大局的に見てこの
法案が
成立するということを心から期待するものであります。これを以て私の
公述を終ります。