○
政府委員(
松本烝治君)
公益委員会として正式にこの案を討議したことはありません。
従つて公益委員会として賛成であるか反対であるかということは何らわかりません。ただ
委員が寄りましたときにはすでに
相当この話合いはいたしました。まあ大多数の
委員は大体私及び松永
委員長代理と同じ意見で
結論は少くともあるのではないかと
思つておりますが、私だけの私見を述べますれば、勿論これは反対なんです。この反対論等を今ここで述べまするのは必ずしも必要はない。すでにいろいろな御議論があつたと思いますし、又新聞紙上等にも出ております。これが日発の再来であるとかその他のことを何も申しません。ただ私個人として一番心配しておりますことを
一つだけ述べておきたいと思います。それはこの案のような
会社がこれが永続するものである、終いまでちやんと
電力事業をやるんだ、期限の定めは全くないんだというなら別でありますが、私の新聞紙上その他人から聞いたところではそういうものではない、先ずこしらえるのが目的で、こしらえるまでの間に卸売りもやるけれども、併しそれはまあただ余つたものを出すだけの話で、できてしまえばお終いになる
会社であるというように何か
説明されておるかのように聞いております。その点が私が最も困つたことだと思う。ただ一点困る点……いろいろあろうと思いますが、私は外債の関係においてそういうようないつなくなるかわからんという
会社では、外債は絶対にこの
会社には入らないのではなかろうかという疑念であります。で、これについて私の
考えておることを少し長いかも知れませんが申上げたいと思います。御
承知のように
電力事業について例えば外債をよこすとすればアメリカ以外では
考えられません。アメリカからこの
電力事業を大いにやる、或いは
電源開発をやることについて大きな輸入が要るということは、これはまあない殆んどない。多少いろいろな材料その他についてありましようが、これは極めて全体の建設費から申せば小部分であろう、そう
思つております。
従つてそういう意味においてはこの
電源開発の事業に外債を
要求する必要は余りないというように
考えます。併しながら
只今のような戦後の日本で資本の蓄積が殆んどなくな
つておる、非常な高い金利で辛うじて少しの金が動いておるという際に、この
電源開発の大きな金の要る計算によ
つては数年間に一兆円以上も使いたいというようなまあ我々のほうでは
計画も立てています。そういうようなことになりますと、到底これは内地の
資金では、
政府が
財政資金を殆んどこれに傾倒してくれるというようなことなら別ですが、そういうこともできないと思う。そうなると
資金を得るのに、やはり外債を頼むことが必要ではないか、殊に
資金の利差が外債と内債と非常に大きい。外債を仮に、あとで申上げますが、いわゆる世界銀行から外債を得るとしましたならば、ほかの例を見ますとみんな四分五厘、この頃はみんな水力工事等に外国に出ております金等が四分五厘で二十五年満期ということにな
つております。然るに日本で今各
会社が
社債を募
つてや
つておりますこの金の原価を申しますと、一割を超えておる。一割一分にも近い。
社債の応募者の計算はたしか八分九厘幾らで九分以下でありますが、
会社のほうの
出します、要ります金はそのうちから手数料その他を払いますので、どうしても利廻りが一割以上にな
つております。これを仮に外債についても多少の費用等も要するとして外伝を五分、内債を一割と切詰めて勘定しましても倍利息を内債だと払わなければならん。そういう状態でありますから、仮に二億何千万ドルというくらいの外債ができたとしましても、即ち千億円ぐらいの外債ができたとしますと、その外債に対して払う利息は一年に五分でありますから、千億といたしまして五十億でありますか、然るにこれを内債にしましたならば千億に対して百億ということになる。そうしますと、五十億の大きな利差がある。これはこの
電源を成るべく安くこしらえなければ
電力料金が非常に上ることはこれは言うまでもないことである。この安い
資金を入れるということはこれから先の
電源開発に非常な大きな影響があることと思います。そういうような意味におきましてどうしても成る時期においては外債によ
つて何分の一かの
資金を得たい。これを得ることが
電源開発を有利にやることのため殆んど絶対に必要なことのように私は
考えております。御
承知のように
只今は日本の持
つておる米貨とか、或いは殊にポンド貨のごとき
相当のものがありますが、これは一種の特殊の
事情でそういう手持ができておる。私はやつぱり国際金融の関係から申せば或る時期にはやはり外資が国際の関係、金融の関係からも必要だろうと思うのです。そういう意味で
考えましてもやはり
電力が最も外資を入れるのに都合のいい事業ではないかと
思つております。そこでどういうように一体外資が入り得るかということについて多少いろいろ考究いたしましたが、外資を先ず分けましたならば純然たる政治
資金と申しますか、政治外資、アメリカがヨーロツパに対して莫大な金をすでに
出しました。今でもいわゆるミユーチユアル・セキユリテイ・アドミニストレーシヨンというようなもので
相当大きな何十億というものを出すということにな
つております。そういうような純然たる政治
資金が日本にどうな
つて来るだろうかということを申しますと、私は来ると思うのです。又吉田総理大臣のごときも恐らくは外資ということを言われますが、それはそういう政治借款を指しておられると思う。併しながらその政治借款はこれはこの
電力開発のごとき仕事に使う金まではくれないと思うのです。これはまあ問題がありましようが、私はこれは再軍備のために必要である、或いは日本の
経済が疲弊して救済をするために必要であるというときには、そういう政治借欸もその目的のための金額は来るかも知れませんが、こういう仕事をすることにまではその政治借欸は来ることはむずかしいと私は
思つております。それは最近の
事情から申しても御
承知のようにヨーロツパに対する大きな借欸も
予算の金額を十億ドルも今度は減らされるというようなことがある。どうしてもそういう止むを得ない、一国が成り立ちがたいようなことについては、
経済上の救済とか、或いは軍備のために必要だとかいうような金は政治借欸としてアメリカの国会の議決を経て或いはもらえるのじやないか、又これはもらわなければならん時期が来るのじやないかと私は
思つておりますが、これを
電源開発に使うというような余裕のあるものは私はむずかしいと
思つております。そこで先ずそういう純然たる政治借欸はむずかしいとしましたらば、純然たる民間のいわゆる外債、即ち
昭和の初め頃に五大
電力会社等が大分アメリカからも又イギリスからも借欸を得ました。こういうような純然たるビジネスベースに基いたものが来るかというとこれもむずかしい。これも来るような時期が早く来れば結構です。無理すれば来ないこともないと思いますが、この
資金コストを安くするためのような安い利で、利率でそういう純然たる民間借欸が来るということは先ず暫くの間私はむずかしいと思う。幾ら物的の担保を供しましてもむずかしいというように
考えております。そうすると残るところは何であるかというと世界、いわゆるワールドバンク、それからして輸出入銀行という二つしかない。輸出入銀行のほうからどうであろうかということについて多少いろいろ調べてみますと、輸出入銀行は
相当最初のうちは活躍しておりましたが、これはこの頃は少し手を控えておるようであるし、それから水力
電源開発というようなことには、アメリカから直ちに輸入する物資はそうないのでありますから、輸出入銀行から大きな金は来まい。先ず火力電気
機械の更新をするとか、或いは新設をするというくらいのときしか輸出入銀行のほうは頼り得まい。ところがこの頃最近いろいろ大きなウニステイング・ハウストとか、或いはゼネラルエレクトリツクというようないろいろな向うの
会社に聞いてみますと、火力発電の
相当大きな、
相当こつちで欲しいような新式の大きな
機械はどうしても最小限度三十カ月もこちらに来るためにかかるというのでありまして、今
電力の一番要りようなこの二、三年の用には殆んど供しがたい。
従つて輸出入銀行のほうからの借金をするということは先ずむずかしそうに思います。ワールド・バンクのほうはどうであるかということを
相当向うから帰つた人等によりまして私は研究いたしましたが、ワールドバンクのほうの貸金ならばたくさん水力電気にも
出しております。メキシコとか、或いはブラジルとか、イタリアとか、フランスとかそういういろいろな国へ
出しておる。こういう国へ
出しておる以上は、日本のほうが
経済状態、政治状態から申してこれらの、そう言
つて悪いか知れませんが、これらの国よりも非常に危険だということは私はないと思う。而してこれらの国に対するワールド・バンクの貸金は
條件はどうかというと、先ほど申した
通り、即ち四分五厘、二十五年ということがもうこの頃ずつと続いておるように思います。もつと違う事業についてはもつと短い期間のものもあります。水力電気のような仕事に対しては、四分五厘、二十五年ということにな
つておる。どういう
工合にしてそれを貸すかということについて研究してみますと、決して或る
会社に貸すとか、或る事業者に空漠と貸すということでは決してない。或る仕事について貸すので、この
電力をこういうような
計画でこしらえる、そうすれば二十五年間にはこれだけのものは必ず返せるという、細かい計算をして初めて貸しておる。但しこの貸す場合におきましては、この頃は物的の担保を
要求しません。ただその当該国の保証だけを
要求しております。この当該国の保証は、どういう趣意で
要求しておるのか。若しも政治的にその国が危いとなるならば、その国自体の保証というものは余り当てになりません。これはすでに第一次戦後にアメリカが多くの外債をほうぼうへ
出しました。そのうちで国債であ
つて、国が借りたもので返さんものがたくさんあつた。そういうことでありますので、然らば何のために国の保証を取るかということを成る
程度探究しますと、その国の保証はむしろその為替管理のようなことをして元利金の支払いを妨げられては困る。そういうことのできないようなことにするために、主としてそういうことを目的として国の保証を取るというように聞いております。そういう金しかつまりワールド・バンクでは出さない。
従つて、そういう金を借りようというときには、こういう自分の所はえらい
会社、国がこういう
出資をしていると言
つていば
つても、決して貸さないようです。その書類まで私はいろいろ見ました。昔の、
昭和の初め頃に私は外債に二つほど、
相当長い間関係いたしました。その時分と同じような書類ができておる。どういうものをどういうようにこしらえて、どういう所ヘダムをやるという地図までちやんとあ
つて、そうしてこういうものでこういうようにして金が取れるから、
従つて二十五年間に元利滞りなく返せるということがわからなければ貸さない。貸す前には大体向うから調べる人が来て調べるというところまで行
つておるように思います。こういう状態から見ますと、この
電源開発事業に外債が来る、少くともアメリカ方面から来るとすれば、
只今縷々申述べましたように、こういう意味のつまり金しか来ないと私は思う。そういうことになりますと、成るほど
特殊会社国が保証するといつたところが、
会社には貸すんじやない。
一つこのプロジエクトに向うは貸すのです。この
会社ができたからとい
つても、その
会社はいつなくなるかわからん二十五年は保証できないというような
会社には、私はワールド・バンクは貸さないと思う。殆んど確かに貸さない。そういうものができれば非常な特例になる、私は借りられないと思います。そうなりますと、この
電源開発事業に安い金利のアメリカ資本を入れる、これによ
つて金利の半分くらいを内地
調達よりも安くしてもら
つて助かるというようなことの
計画をいたしますには、どうしても
一つずつのプロジェクトに対して借りる。例えば天龍川なら天龍川のこういうところにこういうダムをこしらえてこれだけの
電力を
出してやるために金が幾ら要る。その三分の一なら三分の一……、天龍川はまあ今いろいろ聞くところによると三百六十億円くらいの金が要るぞと言
つております。それに対して百二十億円、即ち三分の一は貸してやるというようなことで初めてまあソールド・バンクに話合いがつくので、そういうことでなしに、こういうえらい
会社ができて、これは
政府が総裁、副総裁その他を任命するのだとか何とか言
つていば
つてみても、これは先ずワールド・バンクじやまあ相手にしないのではなかろうかと(笑声)私は思う。そういうような意味におきまして、この安い金利の外債を得るためには、どうもこのいつなくなるかわからんということが……そう聞いております、それが間違いなら又違いますが、そういう
会社をこしらえて工事をお始めにな
つても、先ず外債はむずかしい。何にも物的の担保を請求していない、或るプロジェクトに対して金を出す、どうも私はむずかしい。二十五年は生きない
会社であるということが
説明されておるような
特殊会社、先ず私はそういう外債は来ない。そうなりますると、先ずこういう
会社で外債を導入されようと思えば、政治借歎で
政府がアメリカの国会の議決を経た
予算によ
つて政府が借りたものを出すというよりほかない。それは私が先ほど申したようにむずかしいのじやないか。この点は非常に私は心配しております。この意味においていわゆる
特殊会社でございますか、何とかいう
会社(笑声)案に対しては、私はこの意味でどうも賛成しかねる。残念ながらそう
思つております。間違
つておるなら
一つ蒙を啓いて頂きたいと
思つておるのであります。