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参考人(武井
群嗣君) 大分時間も経ちまして、長く申上げるのはどうかと思いますが、
専門員制度は如何にあるべきかというお尋ねにつきましては、最初
相馬先生からも言われたことでありますが、最も
経験の浅い私が申上げるのも一つの御参考になるかと存じまして、率直に申上げてみたいと思います。
専門員制度がアメリカの議会から輸入されたことは申すまでもございません。聞くところによりますと、相当あちらの
委員会では
専門員を活用しておるということも間違いのないことのようであります。若干イギリスのことは存じておりますけれ
ども、アメリカは、これはその程度しか申上げられませんが、私が昨年一月、
専門員を排命いたしまして、いろいろと考えたり、いろいろな場面にぶつかつたのでありますが、常に
専門員制度がこのままでよろしいであろうかという考えは失わなかつたのであります。殊に
専門員というものは、
国会法にも特に
規定してある
通り、
議員にあらざる学識
経験者ということで、これを
専門員というように
法律にまで書いてあ
つて、待遇も次参宮、大臣級の待遇を受けておるというので、実際はそうではありませんが、さような触れ込みでありますが、さて入
つて見ると、果してその名目
通りであるが、実際にさような働きをさせられておるかということになりますと、幾多の疑問がございます。尤もこれは、
常任委員会制度そのものにも
関係することでありますので、これを無視して、
専門員だけをどうこうするわけには参りませんけれ
ども、
専門員だけについて考えて見ましても、
法律の示すごとく、学識
経験ある者を
任用し、その学識
経験を活かすような
運用でありたいということが、大まかに申せば申せるわけであります。
先ほど相馬先生からもお話が出ましたが、各
委員会に二人ずつ
専門員を置くことが果していいかどうか、これ又問題であります。それから
専門員という
規定を、もつと数を少くともまとめてお
つて、随時必要に応じて動くというようなことも、又部局を分けてやるということも一つかと思います。今お話の出ましたように、少くとも各省紐付にな
つてお
つて、各省から提出した資料を伝達するとか、或いは
法案促進係になるというようなことは、その任務でないことは申すまでもないことであります。さればと言
つて、絶えず政府側に対して、けちをつけて、反対の材料を見つけて、これを以て、言葉は悪いのでありますが、
議員を動かすというようなことがあるといたしますれば、これも
専門員の域を逸脱したものと私は考えます。かように考えますと、
専門員というものは、結局嚴正公平に、而して自分の持
つておる学識
経験を活かして
意見を述べるということになろうかと思います。その結果といたしまして、その
意見が政府の意に反する場合もあろうと思います。
與党の気に食わぬ場合もあると思います。それが野党に歓迎される場合もあろうと思います。直ちにこれを以て政治活動なりということで
国会職員法の違反だ。公務員法の違反だということで責められるのは、
専門員に対して無理だと思いますけれ
ども、現状ではまさにかような実例があるようでありますので、かように考えますと、
専門員としましては、その職務に忠実なるの余りに、どうしても或る程度の
意見を率直に述べる態勢に置かして頂かなければならない。
而して一方におきましては、補助員として
調査員調査主事がおります。それと一体にな
つて働かなければならんわけでありますけれ
ども、現在の
専門員制度におきましては、
調査員調査主事に対する何らの指揮命令権があるわけでもない。指導督励ができるわけでもないのであります。これはお互いの人と人、心と心の触れ合いによ
つて、一致して進むという以外にないのであります。若し言うことを聞かぬ人があるという場合におきましては、これをどうすることもできない現状でありますので、外観から見ると
専門員というものは、実に、誠に無力な場合もあると思いますし、独善官僚的だと言われる者もあろうと思います。かようなことがある。
一方
専門員制度というものが新らしい制度でありますために、率直に申しまして
国会の内外から、
専門員というものの認識が正確に與えられておりません。私は冗談に申すのでありますが、
常任委員会は裏長屋だと申しておるのであります。
国会の裏長屋だ。すべてがさような取扱を受けているのだということを冗談に申すのでありますが、現在におきましては、さような認識と申してあえて憚りません。
従つてそのことがどういうところに現われてくるかと申しますと、
先ほどから
勤務時間のことが出ておりますが、出勤時間がきま
つておりますから、
専門員も出勤簿に印を捺さなければならないのであります。そうしますと、直ちに
国会に出ない場合もありますから、遅れますと電話でどこへ行
つていると外庁
勤務というような
説明をしなければならない。そうしないと一応申開きが立たない。仕方がありませんから、若い事務員に、はんこを頂けて出た判を捺させるというような不合理と言いますか。僞りの生活をしなければならない。これは
専門員として考えた場合に、時には朝遅くなることもありますし、よそのほうへ出掛けることも多々あります。かようなことを一律に普通の
勤務時間と同様に慣行で縛るということは、これは
専門員としての誇りを傷けられることにもなろうと思いますし、事実それをすることは、それは私は無理だと思います。さようなことがここに
勤務時間の制限、これは大きく言えば、
勤務時間の制限ということになるのでありますけれ
ども、こういうようなものをもう少し自分の誇りにおいて、責任において、やらせるようにしたらいいのじやないかということになるわけでございます。そのことになりますものが、やはり辞令は誰が出すかというと、
事務総長の辞令だということになると、又それほどまでに、
総長程度の待遇を與えてくれるということであれば、
議長が判を捺した辞令をくれてもいいじやないか。なぜ出し澁るのか。そうして次官級ということを言
つても、有名無実じやないか。このことはすべての側において、外部からもそれを批判されておりまして、参
議院の
専門員だという名刺を出してみたところが、世間の人はさつぱりわけがわからんというような状況にあることになりますので、やはり働かせる以上は、安んじて、安心して、責任を持
つて、誇りを持
つて働かせるようにしてくれたほうがいいじやないかというのが、大体の今日まで私の感じましたことであります。これは他の
専門員諸君の責任ではございません。私一個の感想として、これは率直に申せということでありますので、私はそのお言葉に甘えて申上げたのでありまして、言葉が障りましたならば、又御迷惑をかける点がありましたならば、御容赦を頂きたいと思います。
それからもう一つ附け加えて申上げたいと思いますが、
先ほど熊埜御堂君から触れられましたが、私、実は今日の会合に呼び出されるということは予想していなかつたのであります。又
専門員として彼れこれ
要求するということを言う必要もなかつたのでありますが、今は伝えられるところによりますと、今回の
専門員等に対する扱いの
考え方というものが、主として衆
議院専門員側の
意見が基にな
つて出ておるやに承わ
つておるのであります。これは風評だろうと思いますけれ
ども、そこで
先ほど待遇のことが出ましたが、実は参
議院としては待遇のことでは、物質的待遇のことでは言わんということにな
つておつたのでありますが、たまたまお尋ねに対して触れられたのでありますが、この点は些々たる問題でありますので、待遇がどうこう、実質の收入が減るから、それでどうこうということはないのでありますが、事実において実績のことにつきましては、衆
議院と参
議院との間において相当の開きがある。その開きがあるのをそのままに、衆
議院のままに挙げられた。言い換えれば参
議院におかれては、今日まで参
議院の
専門員に対して、衆
議院より以上の過分の待遇を與えられたと見たほうがよろしいのだと思います。それが今回、衆
議院並みに落ちるということは、今まで誇りを持
つておつたにかかわらず、やはり衆
議院並みに落されるのかというような、一抹の寂しさもあるわけであります。
最後に、
調査員との
関係を一言申上げますが、私は
調査員が十二級、十三級、十四級に上ることは、結構だと思いけす。但し、若し現在の
調査員、
専門員というふうな職階の区別が存するというのならば、すべてが若し年限が来たならば
調査員が
専門員になり得るのだということになりますときに、
専門員というものは要らなくなるじやなかろうか。同時にこの際においては、
調査員に対しても、
専門員に対しても、停年制というものを考えなければ、本当の活躍はできなくなるのじやなかろうかと思います。而して
専門員というのは、かような職でありますから、みずから待遇は、形式上なり、実質的な待遇を……、今日でも、実質的に相当私はいい待遇だと思
つております。それにもかかわらず、なお身分上の保障をくれと、こうしたことは、これは言うべきことではないと思いますので、その
意味におきまして、身分の保障ということがとられるということは、これは
専門員として当然だと私は思います。
そんなようなことで、話が出ましたのは、身分保障の撤廃とか、それから
勤務時間の制限撤廃とかというようなことを言いましたのは、非常にその文字だけをとりますというと影響が大きい。なぜそういう大それた考えを起すかというようなかたもありますけれ
ども、要は、さような今日、心持から来ていることでありますので、その気持をお汲み取り頂きまして、まあ安んじて働く。ともすれば、いわゆる年寄りの集まりで、安きを貧るということにな
つてはいかんのでありますので、連続働けるような仕組みにお進め頂けることが、これは望ましいことではないかと思いますので、終りに大体時間をお與え願つたことを感謝しながら、これだけ率直に申上げさせて頂いて、その真意をお受取り頂きたいと思います。