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政府委員(倭島
英二君) これについては、いろいろ御
質問なり御意見なり御
説明があつたようでございますが、当時これの
交渉に関連を持ちました
関係もありますし、私もこの点について
ちよつと見解を申述べようかと思いますが、
適用範囲といたしましては、この交換公文に書いてありますように、中国
政府については、この中で例えば第四条、第五条というような実際事実がすでに発生しな問題を、そういう事実を認めるということには
適用範囲ということは直接
意味がないと思います。併しながら今問題の第一条その他の条文については
適用範囲というものが効いて来るというのが、少くとも私自身が
交渉に関連しておつたときの考え方であつたのでありますが、例えばこの戦争状態の問題を法律的な見解からは、「
日本国と中華民国との間の戦争状態は、この
条約が
効力を生ずる日に終了する。」ということでありますけれ
ども、実際問題として、而も中華民国の領土は私自身が
了解するところでは、中国大陸も、中国大陸並びにその附属島嶼というものを中華民国
政府は
自分の領土であるということを
主張しておりますし、一応それは我々のほうでも向うがそういう
主張を持
つておるということを承知しておるし、了承してこの
条約の話を進めて行つた。その了承の仕方は向うが
日本の領土に対して
日本の領土はどこかという問題について、我々が持
つておる観念を了承したと同じような
意味になると思いますが、要するにそういうふうな気持でこの話をやつた。
従つて戦争状態は法律的には終了ということは私らのほうに及ぶというような
関係になると思いますけれ
ども、ただ実際そういうことを言い放しでは、甚だ現実の状態と離れてしまう。殊にこの第一条は
適用条項というものがないというと、中華民国
政府は例えばこの戦争状態を終了して平和な恰好にな
つて来た。ところが
日本と中華民国
政府の支配下にない地方との
関係において行われたこと、或いは起つた事件ということについて中華民国
政府が責任をとらなきやならんというようなことが生ずるかも知れない。それは実際支配下にないところについては酷だという気持がするわけであります。
従つてその支配下にない
地域で起つたこと、それは戦争状態を終了してしまつたということであ
つてもそれについては責任がとれない。やはりそういう問題について中華民国の
関係においては現実の事態に引戻しておかなければいけないということでありまして、で
適用範囲のところに、交換公文にありますように中華民国に関する限りそれは現実の事態というものに即応する
意味において現にその支配下にあり、又将来その支配下にあるべき地方ということに限定されたというようなふうに解釈をしております。