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1952-06-17 第13回国会 参議院 外務委員会 第41号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十七日(火曜日)    午後二時二十五分開会   —————————————  出席者は左の通り。    委員長     有馬 英二君    理事            徳川 頼貞君            野田 俊作君            曾祢  益君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            金子 洋文君            大隈 信幸君   国務大臣    外 務 大 臣 岡崎 勝男君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務参事官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    外務省アジア局    長       倭島 英二君    外務省欧米局長 土屋  隼君    外務省経済局長 湯川 盛夫君    外務省條局長 下田 武三君    海上保安庁海事    検査部長    松平 直一君   事務局側    常任委員会専門    員       坂西 志保君    常任委員会専門    員      久保田貫一郎君   説明員    水産庁次長心得 永野 正二君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○千九百四十八年の海上における人命  の安全のための国際条約受諾につ  いて承認を求めるの件(内閣提出、  衆議院送付) ○北太平洋公海漁業に関する国際条  約及び北太平洋公海漁業に関する  国際条約附属議定書締結について  承認を求めるの件(内閣送付) ○国際情勢等に関する調査の件  (英連邦軍日本人雇用に関する  件)(ソ連抑留者に関する件) ○中華民国との平和条約締結につい  て承認を求めるの件(内閣提出、衆  議院送付)   —————————————
  2. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではこれから外務委員会を開会いたします。  先ず一九四八年の海上における人命安全のための国際條約の受諾について承認を求めるの件を議題といたします質問のおありのかたは御質疑を順次御発表願います
  3. 團伊能

    團伊能君 この條約によりまして現在の海上保安に関して船舶に関して細かい規定がございますが、これと並行して只今航空機に関しまして同一のような條約がございますかどうか。お伺いしたいと思います
  4. 松平直一

    政府委員松平直一君) 御質問は船に限らないで航空機に関する何か規約があるかという御質問ですか。
  5. 團伊能

    團伊能君 さようでございます
  6. 松平直一

    政府委員松平直一君) 私はよく存じませんが、航空條約はあるということを。
  7. 團伊能

    團伊能君 航空條約はございますが、国際航空機設備その他この條約にございますようないろいろな安全設備に対する規約というものが国際的にこれと並行して存在しておるものでございますか。
  8. 松平直一

    政府委員松平直一君) 存在しております
  9. 團伊能

    團伊能君 そういたしますと、その條約はいずれ時機を以てこちらは審議することになるのでございましようか。
  10. 松平直一

    政府委員松平直一君) そうでございます
  11. 團伊能

    團伊能君 了承いたしました。
  12. 杉原荒太

    杉原荒太君 この條約の要求しているところを満たすために日本国内法との関係ですが、すでに既存の国内法で以て十分この條約に要求しているところは満たし得ることになつておるかどうか。若しそうでなければそれに伴つて国内法改正はすでに終えているかどうか、その点を一つ
  13. 松平直一

    政府委員松平直一君) この條約を実施するために現在船舶安全法という法律によりまして船舶の安全に関する問題をすべて強制してやらしております。その法律の中にこの安全條約に関する細かい規定がすでに織込んであります。それで現在の安全條約では一九二九年の條約を織込んであるわけであります。今度の四八年のを実施するためにこの法律改正する必要が出て来たわけでございますが、その改正法律は今国会に提出いたしまして衆参両院を通過しております。それから又予算の面でも又これを実施しますのにいろいろ船舶検査官が検査いたしますのですが、それの増員その他これも今年度の予算として成立しておりまして、国内的には全部準備が完了しております。條約を御承認願えればいつでも加入できる態勢ができておるわけでございます
  14. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかにどなたか……。私から簡單なことですけれどお伺いいたしますが、日本外国航路の船、これは貨物船も加えましてどれくらい船医、ドクターが入つておりますか。或いはどれくらい人命救助のための設備が中にしてありますか。そういうことについて。
  15. 松平直一

    政府委員松平直一君) ドクターのほうに関しましてはこれは船員法によつてまあきめられておるわけでございますし、又あの労働條約などできめられておりまして、必ず外航船に全部ドクターが乗つているとは限りません。最近乗せるようになつて来ているようでございますが、全部乗つているとは申せません。それからこの設備に関しましては、この條約による設備は大分前の條約から比べまして新しい要求と、それから前からの要求でも少し嚴重になりましたのがございますが、大体この條約ができましてから、各船主のほうでも大体予定をいたしまして今度の條約に入つてもそう困らないほど設備は大体してございます国会で御承認願つてこの十一月十九日から実施になりましても、それまでに設備をいたしますことは割合少いし実行可能でございます
  16. 有馬英二

    委員長有馬英二君) ほかに質問がございませんか。御発言がなければ質疑は終了したことと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  17. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは質疑は終了したものと認めます。  次に討論に入ります本件に対しまして、御意見のおありのかたは賛否を明らかにして御発言を願います。別に御発言がなければ討論は終局したものと認めて御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  18. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 御異議ないものと認めます。それでは採決に入ります本件承認を與えることに御賛成のかたの挙手を願います。    〔総員挙手
  19. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 全会一致と認めます。よつて本件承認すべきものと決定いたしました。  なお本会議における委員長口頭報告内容は本院規則第四條によつてあらかじめ多数意見者承認を経なければならないことになつておりますが、これは委員長において本件内容、本委員会における質疑応答の要旨及び表決の結果を報告することとして御承認願うことに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  20. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 異議ないものと認めます。それから本院規則第七十二條によりまして委員長議院に提出する報告書には多数意見者署名をすることになつておりますから、本件承認されたかたは順次御署名を願います。  多数意見者署名     徳川 頼貞  野田 俊作     曾祢  益  杉原 荒太     團  伊能  平林 太一     伊達源一郎  金子 洋文     大隈 信幸
  21. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 署名洩れはございませんか。署名洩れないと認めますちよつと速記をとめて下さい。    〔速記中止
  22. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 速記を始めて下さい。次に北太洋公海漁業に関する国際條約及び北太平洋公海漁業に関する国際條附属議定書締結について承認を求めるの件に移ります
  23. 金子洋文

    金子洋文君 この條約では四つの魚類規定されておるのでありますが、これはにしん、さけますそれ以外にこの北太平洋でとれる魚類それから今まで日本がとつてつた実績をお知らせ願いたいのです。
  24. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 今まで北太平洋でやつておりましたものには、かにたらまぐろ、そういうものが今まででは大きいものであります。その数字はちよつと今ここに持つておりませんが今後もやはりかにとか、たらまぐろ、こういうものが中心になるんじやないかと思います。それ以外のものとしては……。
  25. 金子洋文

    金子洋文君 それはこの條約内で幾らででもとれるわけですね。
  26. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) その通りでございます
  27. 金子洋文

    金子洋文君 北太平洋まで進出して利潤の点はどうでございます
  28. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは御承知のように、従来のかに工船として北洋に随分進出しておつたものでございます。それからたら等トロール漁業といいますか、そういう形で相当出ておるものでございます。まあ、かにとか或いはまぐろ、こういうものは十分採算のとれるものじやないかと私は思つております
  29. 團伊能

    團伊能君 金子君の質問に関連してお伺いしたいのですが、最近まで、戰前におきまして非常に重要な水産一つでありました、只今次官が御説明されたかに工船が元来千島、オホーツク海に出漁できない現状にございますが、それが日本の国籍の船がべーリング海なり或いは北太平洋相当奥地まで入つて工作してくるということが、まだ我々はそういうことは可能であるということを聞いておりませんけれども現状はどういうことになつておりますのでしようか。
  30. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いわゆる講和條発効後は、この公海といいますか、他国の領海以外はこれは勿論自由に出漁できるということになります。ただ本年度は御承知のように講和條約の発効期と、かに工船のいろいろの準備、こういうことを睨みあわせ、並びに御承知アメリカまぐろ関税その他の問題を中心にいろいろ議論がありましたので、今年の出漁は一応大きな立場から遠慮したと、こういう形になつておるのであります。すでにさけますその他については御承知のように一部出ております、それから明年からは勿論これは出られるということになつております
  31. 團伊能

    團伊能君 その問題に関しまして今年は遠慮したという日本政府立場でありましたけれども、事実それが実行されるとなりますと相当カナダ及び米国との了解もつけ新らしい一つの條約とまで行きませんでしようがアンダースタンヂイングをもつて行くというようなことになるのではないかと思いますが、そのへんは如何でありましよう。
  32. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 今回の漁業條約に規定されまする以外の関係のものは、これは公海漁撈の自由の原則はこれで確立されるわけでありますから、別にこれらの問題についてそれらの国々と取りきめとかそういう問題の必要はないと思います
  33. 團伊能

    團伊能君 只今次官は取りきめの必要ない、つまりこの問題のこの條約の規定以外のものであるから公海漁業は自由だというお話ではありますけれども、その点仄聞するところによるとやはり必ずしもこれを歓迎している意味ではない、或いはかに工船出漁中心にほかの疑惑も受けるというような虞れもあつて非常に日本政府は控えめであるということは聞いておりますが、只今次官の御答弁そのままであれば非常に結構と思いますが、その辺に何にもそれ以上カナダ米国方面かに工船出漁に対して疑惑を持つているというか、不安を持つているということは全然ありませんですか。
  34. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これは先ほど申上げましたように今年のかに工船出漁についてはいろいろな立場、いろいろの理由から大局的に遠慮をしたわけでありまするが、ただラインの今言われるようなことはかに工船、その他北洋に出るものがさけますについて一応の抑止区域というようなものがありますが、そこらの区域に入るわけであります。そういうことでまあ一応の問題と言いますか、いろいろ言葉はあるかも知れませんが、建前としては只今のところは何にも問題がない。ただ将来魚族資源保護意味でいろいろの委員会が設けられますから、そういうところで検討の結果、資源満限に来ているというようなことになれば改めて又協議される問題でありましよう。
  35. 杉原荒太

    杉原荒太君 附属議定書の中に例の魚獲の自発的抑止及び保存措置をとる区域境界線というか、西経百七十五度の子午線とそれからもう一つアトカ島の西端を通過する子午線というものは、この附属書規定の仕方によると、これがすでに前に採択されておるような書き方になつておるのだが、それはいつ、どこで、如何なる形式において採択されたものか。この條約それ自体によつてきめられたのじやなくして、それとは別個にその以前に採択されたようにこう規定してあるのだが点…。
  36. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) この附属書並び議定書に掲げました今の抑止区域の問題はこの條約自身がきめて行く問題なのであります。そこで本来から申しますと、この條約は委員会というものが最高の決定権を一応持つという形になりますので、委員会ができたあとできめるということは一番本体には近いという考え方もあつたのでありますが、会議の中に出ました各国の資料その他の情勢から考えまして、この條約が発効後早期にきめておくということが関係国のために好ましいことだという結論に達しましたので、委員会ができておらない現在の段階におきましては、この條約を締結する締約国委員の間で一応委員会に代つたものとしてこの評定をしてよかろうということで、暫定的線、百七十五度の子午線を結ぶ抑止区域についての線というものをこの條約できめて行こうということで、一応の各国間の同意をみたわけであります
  37. 杉原荒太

    杉原荒太君 この條約できめらるべきもんだと、筋合はまさしくそうだと思うから質問しているので、ところがこの規定の仕方によるとそういう規定になつていないから質問している。そんならこれは飜訳が悪いのか。
  38. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) ちよつと杉原委員の今おつしやた質問ですが、私どもはこの條約がきめて行くというふうに考えて実はこの條約文について協議したわけですが、特にこの條約がきめるのでなく、條約をきめる前にきまつていたという御印象だとしますと甚だなんですが、例えばどういうところでそういうことが言えるのですか。
  39. 杉原荒太

    杉原荒太君 ここのこれこれのために決定するために採択されたこれこれとなつている、採択の主体は誰であり、それが如何なる形式において採択されたか、この條約それ自体決定するのじやないですよ、それは。
  40. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) そうです。この條約自身決定をするという……。
  41. 杉原荒太

    杉原荒太君 そんならこれは書き方が悪いんです。
  42. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) ええ、そう、議定書のところでございますね。ああ採択されたほうですね。一応私ども考えといたしましてはこの附属書でこれは採択されるわけであります附属書で採択されたということを議定書で……。
  43. 杉原荒太

    杉原荒太君 それじや……、それからこの今のこの区域決定線はこれによると百七十五度の子午線などが、これは暫定的なものだということがあつて、そうして更にこの次に規定する決定従つてそれは確認する、又は再調整されるということを予想しているんだが、その今大体のなんですか、その再調整というようなことが一体実際上この條約文を離れて事実問題として予想されるような事態にあるのか、それで再調整されるとすれば、これがどつちのほうの線に片寄つて調整されるようなことに予想されておるか、そのへんのところはどうなんですか。
  44. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 私どもはこの三国の代表が当時持つておりました材料によつて日本側主張と特にアメリカ側との主張に非常な喰い違いがありましたので決定に達することかできませんで、百七十五度線というのを一応の暫定線として両者が一応これを受けたという形になるわけでありますが、今後の見通しといたしましての御質問でありますが、私どもは、恐らくこの委員会ができまして国際委員会各国の衆知を集めて実地の調査をいたしませば、一年乃至は二年の間にこちらが疑問にしておるアジア系さけアメリカ系さけとの交叉点というものが一応わかつて来る、わかつて来ないまでも少くともわからないということが断定的になつて来る。そうしますればそこにおのずから確定線をつける可能性ができて来ると思うのであります。ところがただ私どもがここにあとあとのことまで考えまして書きましたゆえんのものは、当時三国間の交渉委員の間で決定を見なかつたという現実から見まして、今後国際委員会でも三国の間で意見の違いというものが一応の予想もできるわけでありますから、その際本件が片着かないが故にこの條約に支障を来たしてはいけないということを考えましたので、そういう場合には第三国専門家に任してその決定を見ようとこういうことであります。ただ申上げるまでもなく條約のことでありますから国際委員会が仮に勧告いたしましたとしても、各締約国最後段階において受けないということも考え得るわけであります。その点からは最後まで残る問題にはなるわけであります。そこでこういう決定の仕方は甚だ不満足でもございましたから今回は一応こういう形にしまして、これを先例としないということを議定書のしまいに謳いまして、これだけは今言つたように今後の調整に待つて行こう、ほかの問題は委員会がきめて行く、こういうことに大体決めたようないきさつでありますので、見通しといたしましては国際委員会調査の結果決定ができるだろうという大体見込みで心掛けております。若しそうでなければ三国の専門家の間の決定或いは調査というものを委員会が参照して、委員会決定的な勧告ができる段階に達し得るだろうと考えております
  45. 杉原荒太

    杉原荒太君 この境界線の問題は最も主張違つてつた点、その交渉経過において。併しここでとにかくこういうふうにアグリーメントができているわけなんだから、その交渉経過において日本側主張内容はどういうふうなものだつたのですか。
  46. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) この主張は私ども日本側が持つておりました材料によりますと、西経百七十度が日本側の大体の主張つたのであります。これに対しましてアメリカ側は初めから日附変更線主張したわけであります従つてずつと地図で書きますと、北のほうに延びた、つまり食い込んで来た、百八十度まで食い込んで来た線になつたわけでありますが、この調整が百七十五度という形になつて出て来たわけであります
  47. 杉原荒太

    杉原荒太君 この議定書あとのほうにこの手続前例にしない、いわゆる手続というのはさつき言われたように、ここに手続というよりもこれは手続だけじやなくして、これを境界線にするということ自体も含まれているのですか。
  48. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 書きましたこのときの理由は、委員会がすべて決定権を持つというこの條約全体に対しましてこれだけを例外にしたいと考えましたので、こういう第三国に依頼して第三国調査に待つて委員会勧告を行うというような手続をとるのは百七十五度線のこの暫定線に限ると、こういう意味でこれを特別に先例としないという意味を謳つたわけであります従つて先例にしないという意味は、第三国に依頼したりして決定するということは委員会はしないことを原則とするということをここに確認したわけであります
  49. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうするとここのこの境界線の問題に関する限りでは、こたは前例にしないというのが適用されるのじやないのですね。それ以外の問題なんですね。
  50. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 根本としてはそれ以外の問題で原則的に委員会がきめないでほかの第三者に頼んできめるというような先例はほかには作らないということなんです。従つて委員会がきまらない問題はこの漁業会議ではきまらないという問題なんです。
  51. 杉原荒太

    杉原荒太君 併しこの今の西経百七十五度などを確認してしまうやつに関する限りは、やはりこの手続によるわけでしよう。更に再確認する場合も。
  52. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) そうであります。再確認する場合に委員会できまればそれが各国がそのまま受けていい点になります委員会できまらないときに第三国に頼むという形になります。それが第三国に頼むという形が例外であるからこれを先例にしない。こう書いてあるわけです。
  53. 團伊能

    團伊能君 只今さけ西経百七十五度の子午線アトカ島の問題ですが、これは日本からどういう主張をされたか知れませんが、どうも我々は一つの政治的な観点から引かれた線のように思いますが、実はヘリントン氏にも会つて話したのですが、いろいろ潮流、気温すべての関係からいろいろな魚類が移動いたしますので、生物学的にこういうことは正確に認められないということのような意見が非常にヘリントン氏も強かつたように思いますが、これは日本といたしましてこの線を乃至それ以上のものを主張するのに、実際上の生物学的な根拠というものはあつたんでしようか。その辺の御研究があつたらどうか伺いたいと思います
  54. 永野正二

    説明員永野正二君) 日本側の最初主張いたしました西経百七十度と申しますのは、べリング海の東のほうの大陸棚というものを大体含む線でございまして、これについてこの線がアジアさけアメリカさけとを分つ線であるという点につきましては、これは正確に申上げますならばさけに標をつけましてそれを放してみまして、その放したさけがどちらのほうへ余計上るかというだけの科学的なデーターがすつかり揃つておりませんと、そういう線は引げないわけでございます。そういう点から申しますと、正確な科学的な基礎があるという点には問題がございますが、一応陸続きの浅い大陸棚を入れて線を引いたという程度根拠があつたわけでございます
  55. 團伊能

    團伊能君 只今お話で私はよくわかりませんが、それが果してどのくらい程度の生物学的な学術的根拠を持つものでありますか、甚だよくわかりませんが、少し説明して頂きたいと思います
  56. 永野正二

    説明員永野正二君) このアジア系さけアメリカ系さけとを分つ線をきめますためには、これは相当数多く、而も或る程度長い間に亘りまして、只今申上げました標識放流というものをやりまして、それによつてどちらの方へ何パーセント上つたか、勿論行方不明になる魚も相当ございますが、それがアメリカの川で幾らとれたか、それからアジアの川、アジアの川と申しますと、カムチヤツカとかロ領を含んでおりますが、そのほうで何パーセント上つたかという統計を或る程度長年月に、而も数多い魚を放してみた上できめませんと、これは科学的にはつきりした根拠のある線ということは言いにくいわけでございます
  57. 團伊能

    團伊能君 ちよつとわかつたようなわからないような、それで科学的根拠があるということは、科学的根拠についてヘリングトン氏も相当疑惑を持つていられたようですから、ちよつと杉原君の御質題に附加えて質問したわけであります
  58. 杉原荒太

    杉原荒太君 ちよつと伺つておきたいのですがね。これは外務省なり水産当局などで言われたことかどうか知らぬが、何か今度のこの條約がほかの国と結ぶ場合のモデル・トリーテイになるようなものだということを世間でややもすれば言われているようだが、私はこれはそういうふうにすべきものじやないだろうと思う。少くとも日本側としてはそうだと思うのですが、その辺のところは一体どういうふうな考えかたをしておられるのですか。
  59. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはやはりこの條約を結びました根本的建前といいまするか精神は、やはり今後のいろいろこういう條約の基本観念になるのではないかと思うのであります。それはつまり一応公海自由の原則を確立する、それから漁業資源保存について互いに基本原則を立てて行く、そういう大局的基本線につきましては今後やはりいろいろの漁業條約の根本理念になつて行くのじやないかと思つております
  60. 杉原荒太

    杉原荒太君 これは多少意見になるから余り言わぬが、これはそういうことは実はこの條約を待たずしてきまつていることなんで、この條約の具体的内容からして、少くとも日本側としてはこういうのを余り前例々々というふうな取扱の仕方をせぬほうがいいんじやないかということです。
  61. 土屋隼

    政府委員土屋隼君) 議定書並び附属書に現われましたような抑止区域及び保存区域を設けること自体が決して日本の希望でございませんから、公海の自由を主張する日本として今杉原委員の仰せられましたように、これをモデル・ケースにしたくないということは仰せの通りであります。ただ今後各国漁業協定につきましては多かれ少かれ相手方が、日本水産業の発展に対して支障を来たさす、或いはそれを阻止するような措置を講じたいというのが遺憾ながら各国の意図なんであります従つて日本水産業の発展若しくは健全なる維持に対して支障を及ぼすような相手方の主張に対して、何らかの標準を以てこれを納得させなければいけないと思うのであります。その意味から私どもは今回の條約に盛られました精神、つまり満限資源に達したものについて科学的な調査に基いて保存措置が講じられておる場合には、日本もこれを尊重して濫獲をしないように現在の保存措置を認めて行くと、従つて日本保存措置内において実績がない場合には手を引いても差支えない、こういう考え自体は相手かたに対して恐らく受けられる考え方であり、これは公正なる日本水産業の発達に対しましても公正なる指針を與える問題じやないかと思うのであります従つてどもはこの條約を成るたけ今おつしやつたような禁止区域保存区域を設けるような條約にしたくないのでありますが、一方例えば最近の韓国の李承晩・ラインの主張だとか、或いは濠洲大陸に対する沿海地域に対して一切日本船を近付けたくないというような要求に対しましては、そういうものは公海自由の原則から認められない。併しながら若しそこに濫獲におちいる魚種があるとすれば日本は喜んで協力しましようと、こういう点を盛つたつもりでありますので、その意味でこの條約に盛られました精神なり意図なりは只今政務次官から御説明がございましたように、我々は今後の一つの参考になる、判定の材料になるものと思うのであります
  62. 曾禰益

    曾祢益君 第九條によりますと、「附属書に明記する水域において」云々とこう書いてあるのですが、この附属書のほうを見ると只今杉原委員が問題にされたような附属書の2、及び附属議定書関係のあるさけ関係区域のほうは、一応これは明記されておると言えるのですが、そのおひよう、にしん関係の及びさけのほうももう一口あるのですが、このアメリカ及びカナダの地先沖合の條約区域と、コンヴエンシヨン・エアリア・オヴ・ザ・コーセス・オヴ・カナダ——ユ—ナイテツト・ステイツ、これは一体区域がはつきりわかるのですか。この参考に出された地図を見てもどつちからどこまで行くんだかわからない。極めてあいまいで明記されてないんじやないかと思うのですが、若しこれがそこに非常な條約としての双方の締約国の位置が確定してない区域だとすれば、そこに非常な問題が起るのじやないか。事実上最大の向うからすれば先ず百海里くらい外まで考える。日本から言えば最小限度なんです。少くも領海は勿論除くでしよう。領海以外のどのくらいまで近接して問題にならないのか、これは何だかはつきりしているのですか。
  63. 永野正二

    説明員永野正二君) 只今御指摘の通り附属書に掲げてある魚種及び水域というものは、線ではつきりしたものとそうでないものとあるわけでございますが、この線ではつきりしてありませんおひよう及びにしんにつきましては、これは実はその分布及びその回游の範囲から申しまして、アジア側とアメリカ側とはつきり分れておるわけでございます。従いましてここの附属書に書いてあります魚種につきまして言いますならば、これはその同源及び分布の範囲で漁業専門家が眺めますならば、おのずから一定の水域ということが常識的に出て来るわけでございます。配布いたしました地図には非常に荒つぽく斜に線を入れてあるわけでございますけれども、これはこの魚の特殊な事情からいつて大体常識的に限度があるというふうに私ども考えております
  64. 曾禰益

    曾祢益君 それは一応の御説明としてはわかるのですが、そうなると実際は例えばこのおひようの場合には大体その専門家から見ての常識上のアメリカ産おひようの区域というのは大体何海里沖だとか、どんな線が引けるのですか。にしんについても、それからさけについても例の特別の西経百七十五度のほうの別のいわゆる地先沖合のほうというと、体どのくらいの広さになるのですか。それをはつきり説明願わないと素人がこれを見たときにはこれは百海里説と間違えるかもしれない。もう少し親切に説明して貰いたい。
  65. 永野正二

    説明員永野正二君) このおひようにつきましては、これは移動する魚ではございませんので漁場は非常に限定されておるわけでございます。距岸の距離で申上げまするとこれは或る程度三、四十海里だと思いますが、沖までその漁場はありますが、そう遠い所にはございません。それからにしんにつきましてはこれは回遊性の魚でございますので、これの区域は実は相当まあ年によりまして移動をするわけではつきりと数字で距岸何海里がその限度であるということを今直ちに申上げにくいのでございますが、少くとも日本の漁船についていいますならば、日本の漁船がアメリカ系のにしんを積んだり加工したりということは事実上これはございませんので、この條文がさほど支障を及ぼさないのじやないかとこう考えております。  それからさけにつきましてもアトカ島の西端から南の線につきましては御指摘の通りはつきりした根の限界がございませんが、このさけにつきましても大体漁業が行われこういうふうに漁船が魚を積んで問題になるというのはおよそ限度がございまして、大体大陸棚と申しますか深さ二百メートル位の限度の海域でございます。それより沖でこのさけ漁業が行われ或いはその沖で漁獲物が積まれておるということは実際問題としてはないかと存じております
  66. 曾禰益

    曾祢益君 このおひようと、まあこのアトカ島以南といいますかのさけについては、自然とまあ大体深さ二百メートルぐらいまでの沖合とか或いは三、四十マイルの沖合ということが大体言えるということはわかつたのですが、にしんの場合には実績がこんな所まで行つてなかつた、アラスカ、カナダアメリカ本土の近くまで日本の漁船が行つてなかつたというような歴史的なこともあるのでしようが、併しその何といいますか中間地帯といいますか、そういう所に全然にしんがいないこともないのじやないかと思うのですが、それは素人でよくわからないけれども、若し仮にそういう所でとつた場合には問題が起る可能性はあるわけですね。それとも中間地帯である公海というものは全然にしんがいないから大丈夫なんですか。問題は起らんのですか。
  67. 永野正二

    説明員永野正二君) にしんの漁獲は大体その産卵期に岸近くよつて来るところを漁獲されるのが漁業の実態でございまして、太平洋の中央部でにしんを目標として漁船が行動すみということは、常識上考えられないと思います
  68. 有馬英二

    委員長有馬英二君) 水産庁次長に伺いますが、私は素人でわからないのですけれども、聞くところによると、日本のにしんの漁獲の時期とか方法と或いはアメリカ若しくはカナダあたりの方法とは違うというようなことを聞いておりますが、どういう工合に違うのでしようか。
  69. 永野正二

    説明員永野正二君) これは私も実はそのほうの専門家ではございませんので間違つておりましたらあとで訂正をいたしたいと思いますが、大体日本のにしん漁業は定置網漁業が主体でございます。そのほかに若干巻網でとつております。つまり船を乗出しまして沖でにしんを網でまいてとる漁法が若干そのほかにあるが、大部分は陸近くに網を定着いたしましてそれでとるというのが主体であるように存じておりますアメリカ側の漁法はむしろ巻くほうが主体でございます。ほかに大部分が巻網でございまして、その船の大きさも日本の巻網の船よりも大型の船で、且つ動力も強いような型の大きな船で巻き網でとつておるというふうに、違うように存じております。  それから漁期の点でございますが、日本ではよく御承知通り春になりまして北海道方面の沿岸でとれると、こういうことに相成るわけでございますが、アメリカ側におきましては大体十月初から十二月の初旬まで、こういう季節になつておるようでございます
  70. 有馬英二

    委員長有馬英二君) そういたしますると、このにしんに関しましては日本漁業アメリカ若しくはカナダのにしんに対する漁業とは季節も或いは漁業の方法等も違うので、別にかち合うというようなことはないわけでありますか。
  71. 永野正二

    説明員永野正二君) にしん漁業につきましては、日本漁業アメリカ及びカナダ漁業が交錯をしたり衝突をしたりしたということはちよつと想像できないのでございます
  72. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それではこの問題につきましては質疑をこれにてやめまして(「委員長、打切りじやないですね」と呼ぶ者あり)明日更に質疑を行うことにいたしまして暫時休憩いたします。    午後三時二十七分休憩    —————・—————    午後四時十二分開会
  73. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは再開いたします。中華民国との平和條約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。外務大臣が御出席ですからこの点について外務大臣に御質疑を願います
  74. 曾禰益

    曾祢益君 ちよつと議題に入る前に一つだけ英連邦軍日本人雇用関係に関する点で簡單に質問さして頂きたいのですが、よろしうございますか。
  75. 有馬英二

    委員長有馬英二君) どうぞ、曾祢君……。
  76. 曾禰益

    曾祢益君 それでは外務大臣に伺いたいのですが、いわゆる英連邦軍日本における地位の問題については、しばしば私から又他の同僚委員からも早く協定を作るように政府を督励しておつたわけでありまするが、まあ今日に至るまでいろいろな事情からできておらないようでございまするが、この問題に関連しまして私もこの委員会で申上げたのでありまするが、いろいろな支障が起つておりまするが、なかんずくこの英連邦軍に雇用されておる日本の労働者が非常に困つておるのでございます。で、外務大臣も御承知でありましようが、過日同僚の松浦清一君から英連邦軍関係日本人船員の雇用に関する質問趣意書を提出いたしまして、それに対しまして内閣総理大臣からの答弁書が六月の十日付を以て出ておるのでありまするが、この答弁書は実は簡單に過ぎまして一つも問題の核心に対する返答になつておらないのであります。余り詳といことを申上げるのも恐縮でありまするが、要するに英連邦軍関係日本人船員の雇用状態につきまして雇用主がどちらであるのかわからない。現実にこの船員のその日の生活にも困るような、支拂関係も設定されておらないというような窮境でありまして、従いまして御承知のように、海員組合は、国際連合の朝鮮における行動に対しまして終始一貫侵略者に対して国連の集団保障を守るのが正しいのだという見地から、常に協力的態度をとつて来た、強力であるけれども非常に正しい労働組合であることは御承知通りでありまするが、この組合の中でも如何にしてもこの生活問題がかくまで切迫して参りましてはこのままではやつて行かれないと、従つて労務提供の拒否その他の挙に訴えて全組織を以てこの要求達成に推進することも又止むを得ないというような決意を持つて来た、こういうようなまあ切迫した状況にあるのであります。それにもかかわりませず政府からの回答というものは、要するに日本国は講和條約の発効後は日本国としては労務提供に関する一切の責任は解除されておる。従つて日本政府英連邦軍のために日本人の船員を提供する責任はない。更に又そういうわけであるから日本人船員と軍との直接雇用契約に基いて直接契約の自由によつて処理されるべきだというような抽象論的の返事であつて、この英連邦軍に関する、はつきり言うなら国連軍に関する協定ができるまでの間のこの緊急な問題をどういうふうに処理して行くんだということは、何ら解答されてないような状況にあるのであります。一方船員以外の非常に数の多いやはり英連邦軍に雇用されておる労働者、いわゆる全進駐軍労働組合の諸君でありまするが、これも今日得ました情報によりますと非常に態度が強硬になつておると、同様にろくな待遇をされておらないわけでありまするからこれ又非常に状態が悪化しておると、かくのごときはどうしても放置できないと思うのであります。従いまして政府としてはこの協定をいつまでにおやりになるのか、それら協定の中で先だつても私ははつきり外務大臣に要望しておいたのでありまするが、少くとも直用である以上はプリヴエーリング・ウエージの條項を加えるというような適宜な措置によつて、そうして協定の中ではつきりとこの国連軍に労務を提供する労働者諸君の正当なる権利が守られるように図つて頂けるものであるか、頂けないものであるか。  又第三にこの過渡期における措置をどこに訴えたらいいのかわからない。英連邦軍に訴えればそれは日本政府がきめる問題である、協定ができないからどうにもでできない、金はないから政府から立替えてくれればあとで必ず返すというような状態に放つて置かないで、現実に繋ぎの間でも何らか政府としてこれに打つ手はないものでしようか。又そういう御意向があるかどうか、この点を伺いたいと思うのであります
  77. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは行政協定のときにも御説明したのでありますが、元来これは直用といいますか直接雇用されるのが筋道であつて政府がこれに關與すべきではないのであります。併しながら行政協定の際には、労務者側のほうから言語その他の問題もあるので間接雇用にして貰いたいという希望がありまして、従つて我々は働く者の都合のいいようにするためには多少筋道は違つてもできるなら間接雇用にして面倒を見てやりたい、こういうことで本来は筋道は違うと思いましたけれども、米側に話したところ、米側でもその費用を出すということであります。その費用は従来一人の雇用に対して、労務費としてこれは退職手当とを交ぜてでありますが、四千数百円の金を出しておる。これを引続き出せば日本政府予算を必要とせずして労務管理の人も雇えるし、世話もできるというので間接雇用の手続をとつたわけであります。併しながら国連軍に対してはやはり同じ筋道からこれは直接雇用が当然であるということでありまして、又労務費等を出す意向がないようでありますから、従つて予算がない現状においてこれは間接雇用にすることはできなかろうと考えております従つて直接雇用という問題が当然出て来るわけであります。そこですでに英濠軍の当局は日本政府がこれはやるべきものだというように言われたと言われますが、それは何らかの誤解であつて、英濠軍側も直接雇用であるべきことは四月二十八日以後は了承しておりまして、先に英濠軍側から直接雇用のために契約書を作つて、そうして労務者に対してこれで承諾するかどうかというので承諾するものには調印を求めて承諾さしたわけであります。そして金の問題つまり円、英濠軍は無論外貨を持つていましようが、円を持つているか持つていないかという点で疑念がありましたが、結局この支拂日は六月の十日ということでありましたが、その前に円貨を用意しまして支拂は完了したのであります。  そこでただ問題になりますのはその契約書なるものが、これは英語が読めなかつたというような点もあつたかも知れませんが、これは飜訳書もついておつたようでありますが、従来の賃金よりも約二三千円くらい低い、それを承諾して判を捺してしまつた。これはまあ海上じやありません、一般の呉等におる労務者ですか、というのであとでこれは困るという点が今問題になつておるわけであります。そこでまあこれと性質が似たような問題はアメリカのほうに働いておる労務者の中でも神奈川県の一部には起つておるのでありまして、契約では四十時間乃至四十八時間働くという約束になつてつて従来は四十八時間働かしてその賃金を拂つてつたのが、予算関係と仕事の分量で四十時間にこれを減してしまつた。そこで八時間分の金が減つてしまつたので、非常に今問題になつており、これに対してはその後話をしまして四十四時間までは働かせようということになつて、まだそのあとの四時間の問題が解決しておりませんけれども、そういう問題もあるわけであります。で呉のほうもやはりそういうふうにしてこれは働く時間ではなくして、何かはかの加俸、というか手当の問題が残つておるわけでありますが、これは直接雇用ですから政府として直接にこれに干興するという建前はありませんけれども、こういうことでは労務者のほうも困るであろうし、又英濠軍のほうも十分な働きをしてくれなくては困るであろうと思いまして、まあ好意的に両方の斡旋をいたそう、すでに従来やつておりました特調の係官を呉に派遣しまして、それでその両者の間を今話合いをさしております。  で国連軍との協定はまあどういうふうになりますか今後の問題でありますが、今申したような直接雇用が建前でありますから、どの程度協定の中にそういう労務の関係規定が入り得るかどうか、これは協定をいたしてみないとわかりませんが、労務者のほうにはすでに従来の関係があるので、特調がこれは臨時に、筋道じやないかも知れんけれども、とにかく世話をするということで今努力をいたしております。多少時日がかかるかも知れませんが、できるだけ我々政府のほうから言いましてもこれは国連軍に対する協力という趣旨から言いましても、又労務者も従来ずつと協力して来たのでありますから、その間の感情のもつれがないようにいたすのは当然のことでありまするが、今この際法律的な筋道とかなんとかといことは暫くおきまして、できるだけこの間に斡旋をしようと考えております。時日はまだ多少かかると思いますけれども、そういう趣旨で努力をいたしておりますからさよう一つ御了承を願いたいと思います
  78. 曾禰益

    曾祢益君 御承知のように大体従来の給與中から今度抜けておるといいますか、向うが拂わないと言つておるのは、扶養家族の手当と退職手当だろうと思うのであります。それらの点についても一つ理窟を離れて、つまり直用であるという原則には反対でありませんが、現実に政府が間に入つて、そうして何とかこの問題の解決に努力して頂きたい。殊に政府の御回答を見ても、これは国連軍だけでなくて駐留軍に対しても法現上は当然同じだろうと思うのですが、日本国としての労務提供の義務というものは平和條約の効力発生後は私はないと思う。なければ、場合によつては、生活に追い詰められた労働組合としては当然の正当防衛の権利の行使として労務提供の拒否、ストというようなこともこれはあり得ないことではないのでありまして、さような事態になることは今大臣が言われたように国連の場合だけに限定いたしまして考えても決しておもしろいことではないのでありまするから、さような事態が起らないように取りあえず今言われたような斡旋をやつて、そうしてこの労組の窮境に対して適当な是正処置をとつて頂きたいと思いますし、更に又ここで確答を求めるのは困難であるとすれば、これは私の希望だけを申しておきまするが、協定に当つては公正なる労働條件が確保されるように、協定の中で十分なる抑えの條項を挿入して頂きたい。  更により根本問題であるこの無協定の状態を速かに是正して、速かに国会承認をこの協定を作つて求めて頂きたい。このことを申上げまして私のこの本件に関する質問を打切りたいと思います
  79. 金子洋文

    金子洋文君 私の聞いているところでは四月は二日間未拂い、五月は少しも貰つていない、それから夏期と年末手当が残つておる。これらのことは今大臣のお話のように解決されたのですか。
  80. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はその四月等の問題は聞いておりませんが、これは四月の二十八日までは終戰処理費で拂つたものだと思います従つて予算もありまするし、若し何か拂つてないというようなことがあればそれは何か手続の間違いでありまして、これは特調で当然拂うべきもんであります。つまり問題は四月二十八日以後の直用の問題だけであります
  81. 金子洋文

    金子洋文君 労務者諸君の要望は米軍なみにして貰いたいという要望を聞かされましたが、斡旋によつてはその程度までなりましようか。
  82. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは成るか成らないか今話している最中ですが、ただその形式が例えばイギリスなり濠州なり或いはニユージランドなりの国内ではこの扶養手当というようなものはないようであります、その代り賃金が高い。ところがそういうのを形式的に自分の国じや扶養手当がないのだから今までの中から扶養手当を取るというような形になつたように聞いております。そこで全額を成るべく従来の支給つまり米軍なみの支給にいたしたいというので、形式はまあ多少扶養手当がなければいろいろな点で無理があるかも知れませんけれども、この際は直用であるというようならばやはり雇用主の考えも入れなければなりませんから、実質的に成るべく従来の賃金と同じものを取るように話をして扶養手当のあるなしということはそう私は重きをおかなくてもいいんではないかとこういうふうに考えております。   —————————————
  83. 平林太一

    平林太一君 議題に入るに際しまして、委員長ソ連抑留者の問題についてお尋ねをいたしたいと思いますが、そのように願いたいと思います。ソ連の抑留問題に対しましては、高良とみ君の情報がたまたま入りましたので、私自身といたしましては実は多大の関心をもつておりますが、抑留者の問題につきましてはそうあるべきことを、高良情報がそういうことが事実であることを願つたのでありますが、又同時にこのことは今日大体三十六万人と伝えられておりますが、この未帰還者の家族大体百七八十万から二百万人の我が同胞が非常に関心を持つた問題であるのであります。それがそうでなかつたということが一両日前伝えられて参りましたが、併しこのことは要するに高良君のそういう情報が真偽のほどは本質におきましては少しもこのことは変つておらない問題でありまして、この際進んでむしろあのような事態のできましたことに対しましてこういう機会を通じまして、この抑留者の問題に対しましては早急にこれに対する政府考えを、この際この国民の多数が関心をもつておりますこの問題に対して見解を明らかにして、これに対しまする人々に対する安心を與えなければ相成らんことと思うのでありますが、それでこの十八万二千という高良情報でありますが、それが同君がそういうことでなかつたというのでありますが、これが我が国に伝えられて参りました、そういう事態は私から申しますればいわゆる火のない所に煙は立たないということが非常に考えられる。そうでない、いずれから入つてきた情報にいたしましても、これはそこに事実があつてそうして初めてそういうことができたとこう私は考えるのであります。  又私のほうから考えましても三十六万という当時まだ未帰還者がありますことは、終戰後当時の実態がこの満洲における実情は日ソ両国が交戰の状態に入つたのでは当時なかつたのであつて、我がほうがいわゆる無條件降伏をいたしましてそれでソ連が満洲に入つて来たのでありますから、何ら抵抗のないそのときの実状から推しましても、今日三十六万の人がいわゆる戰場に倒れたということは毫末もないのでありますから、実は常識から考えましてもその半数の十八万くらいは生存しておるものと私は深くこれを信ずるものであります。ソ連におきましては二千二、三百人のいわゆるソ連が一方的に戰争犯罪人として判決をいたしたその犯罪人しかないんだという、全部抑留者は帰したんだ、こう言つておりますが、これはソ連だけの一方のそういう考え方であり、又我がほうに示しておる態度でありますから、我がほうといたしましては当然これは今申上げましたような数字を私は深く確信し又確認いたしまして、この抑留者の問題をこの際むしろこういう機会を通じまして新しいこの方針を立てまして、ソ連に対しまする新たなる交渉なり折衝を開始いたしまして、これらの問題に対しまする応急の処置をこの政府においてはいたされたい、かように思うのでありますが、先般の委員会におきましても外務大臣は大体十方人内外は外務省調査によつてもこの行方不明或いは生存者というようなものにおいて考えられるというようなお話がありましたので、私は非常に力強く思うのでありまするが、この際この問題に対しまして、又高良情報が非常に疑電であつたというようなことに対しましての折から非常に失望を感じておりまするこれら三十六万人の我が同胞の家族、そういうものに対しましてこの際納得の行けるような一つ外務大臣の御所懐を承わりたいと思うのであります
  84. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は前にも申した通り約十万程度のものは生存しているんじやないかということをいろいろの資料から考えるのでありますが、まあそれはともかくとしましてソ連側のタス等の公式の発表とされておりますところで非常に私にふに落ちない点は、死亡者が一人もないという勘定になるのであります。仮にたとえその何万人、一万人でも二万人でも一年なり二年なりソ連領におつたとしますればそれの何パーセントか、千人に対する十人とか十五人とかいう数はこれは平穏無事でも亡くなる人でもあります。死亡者が一人もないという勘定はどういたしましてもふに落ちないのであります従つてタス情報なるものはこの点において非常に間違いがある、少くとも間違いがあるということは私ははつきり言えると思う。従つてタス情報が正確でないとすれば我々は我々の情報を確かと思うより仕方がない。而も我々の情報は一々帰つて来た人々に確かめたり手紙によつたりしてだんだん累積した数字でありまするから、私は今なほこの数字を信じておるのであります。  そこで今度はこれの早期送還ということになるのでありますが、これにつきましてはすでに高良女史の電報と称するものが新聞に出ましたので、日本のみならずほかの国にもいろいろの衝撃を與えております。それで関係のあるところにはそれぞれの情報が否定される前にとにかくこれについての確認か或いは真偽というようなものを調べて貰いたいということを申入れて頼んでおります。でこういうこと、これはまあ否定されたようでありまするが、こういう機会はおつしやつたよう一つの機会でありますから、これを又利用しまして引揚問題に対する各国の関心を呼び起して、更に国連若しくはその他の国際的の組織に働きかけて又この問題を一つ特に力強く盛上げて行きたい、こう考えてそれぞれ在外公館等にも連絡いたしましてできるだけのことをいたすつもりで今訓令等もいたしております。さよう御承知願いたいと思います
  85. 有馬英二

    委員長有馬英二君) この問題は大体これぐらいにして……。
  86. 平林太一

    平林太一君 ちよつと一つ只今外務大臣から非常に誠意のある、又今後の問題に対しまして具体的にこの処置に対します考えの披瀝がありましたので、私非常にこの大臣の御苦心に対しましてこの際は感謝いたします。どうか只今お話になりましたような何を通じまして、この未帰還者の問題に対しまして十分なる一つ御処置を願うと同時に、これが速かなる成果が実現せられることを深く希望を申上げまして、又一段の政府の御努力を要請しておきたいと思います。   —————————————
  87. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは本問題に返りまして中華民国との平和條約締結について承認を求めるの件につきまして質疑を行います
  88. 金子洋文

    金子洋文君 十三日の外務委員会で私は中共貿易について政府のお考えを尋ねたのでありますが、そのとき外務大臣は日本の行なつておる輸出貿易管理令、これは原則として正しいと、であるから諸外国もこの原則を守るほうが望ましいと、その訳は朝鮮動乱を一日も早く解決することにも役立つ、こういう意味の御答弁でありました。これに対して私は見解を異にするから意見を保留しておくと申述べておいたのでありますが、これは実際問題として現実的に考えるとバトル法があつてそれよりも幅の広いパイリストがある、まあ原則は正しいとして、西欧や英独が日本の貿易管理令に見向きもしないのじやないか、これは当然じやないかと思うのですね。むしろ今の貿易管理令は再軍備論者にはピースなんか売らないのだと、売つちやいけないと、こういうような少し偏狭な考えに陥つているのではないかというようにまあ思われる。私はむしろこの貿易の問題よりも朝鮮動乱の解決を一日も早く希望するとならば、むしろ中共を大いに刺激するところの日華條約などというものを朝鮮動乱が平和的に解決したあとに結ぶべきではないか、そのほうが重大でないかとむしろ考える。これはいろいろ意見の違うところと思いますけれども。  ところで十三日の記者会見で高橋通産大臣が中共貿易の問題で話した。それによると中共貿易については適当なる修正があると許可する。バトル法で禁止している以外のものは緩和する必要がある。それで亜鉛、鉄板、毛糸、毛、メリヤス、紡績機械、染料、この五つの品目の解決をアメリカ側に申入れておる、こういつておるのですが、この言明と外務大臣の言明とは非常に喰違つているように思いますが、その点如何でございましよう。
  89. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 通産大臣とはよくいろいろの点で話合をいたしましたので、私は喰違つている点はないと思います。ただ新聞等に出ますると、とかく私のほうの言うことは必要以上に強く列国を日本に引付けて、日本と同じように列国に禁止措置をさせるのだというようなところが非常に強調して出ます。通産大臣のほうの話は今度は緩和するんだというほうが非常に強調して出るのはこれは自然どうも報道としてはそうなんだろうと思いますが、私のほうのも何も何でもかでも列国の足並みを日本に揃えて来るのだという趣旨ではなくして、気持としてはそのくらいに思つておるのだ、併しながらでこぼこがあれば調整することもじや必要であろうという程度であります。通産大臣のほうも、原則としては緩和する意思はないけれどもこれこれのものについては調整するほうが適当だと思つて話をしておるんだという趣旨だと思いますが、これが両方の言分の強いほうが出て来るものですから、如何にも通産省と外務省との意見とが喰違うようになりまするが、話してみますると、決してそういう点はないのでありまして、我々の政府としての考え方は中共貿易の輸出制限等を緩和するという気持は、今のところ通産省にも外務省にも政府全体としてもない。併しながら緩和せざる範囲内においてでこぼこの調整ということならこれは考えるという意味なんです。
  90. 金子洋文

    金子洋文君 いやなかなかむずかしいですが、一応それを了解して次の質問に移りますが、やはりこの中共貿易問題ですが、この間、岡崎外務大臣が海南島の鉄鉱石とアメリカの鉄鉱石を比べてみて、或る業者の言によると、結局アメリカの原鉱のほうが優秀で、大きく全体的に見て利潤がそのほうが得である、こういうふうにおつしやいました。我々の見解としては、今まで見聞するところ大体アメリカの粘結炭や鉄鉱石、これを入れていると大体二三倍は高くつく。結局東南アジア方面で英米の機械は進み過ぎて職を奪うが、日本の機械は幾らか遅れているためにアジアに適合して逆に職を與える、であるから日本の機械を買いたい。こういうわけでビルマあたりが注文したようでありますが、最初契約の値段より一週間ごとに高くなつて来る、一週間ごとに高くなつて来るからやり切れなくてもう契約を解除した、こういう話を聞いた。  ところで大臣がああいうものですから我々も素人だから或いはそういうことかなあとつて半信半疑で聞いておつたのですが、そこで立法考査局へ頼んで調べてもらいました。立法考査局では通産省へ行つてデータを持つて来たようでありますが、どうもこれは大臣のおつしやることは間違いで私のほうが考えていることは正しいように思われる。それによるとアメリカの鉄分が五六から五七%、アルミナが一〇から一五、硫黄が〇・から〇・五、燐が〇・三から〇・五、海南島の鉄鉱は五七%から八六%、多いのですね。アルミナ、硫黄、燐のほうは省略しますが、更に田独というのですかここから取れる鉄鉱石の鉄分は六一%から九二%になつておる。このデータによるとアメリカの鉄鉱石より遥かに田独という所でとれるのは良質だ。それで値段のほうはどうかというと、これは日本の港着がアメリカの鉄鉱石が十九ドル及び二十ドル、それから海南島の鉱石については今のところ価格は不明であるが、昭和二十三年度の輸出鉄鉱石価格によると海南島は一次一六ドル二五、二次は一八ドル二八、アメリカのほうは一次二〇ドル七四、二次は二〇ドル七四、こうなつておる。石炭のほうも調べましたけれどもこれは省略します。大体我々が考えるように結局アメリカから買つておるのと、海南島、アジアから買うのと二倍から三倍につく、こういうふうになつておるのです。どうも大臣が或る業者からお聞きになつたということは間違いのように思いますが、どうなんですか。
  91. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 非常にお調べまでさして恐縮でありますが、私の言いましたのは粘結炭と塩なんであります。鉄鉱は言つてないのです。粘結炭のほうでありましたらどういうふうなお調べになつておりますか。
  92. 金子洋文

    金子洋文君 石炭のほうは、これはアメリカのカロリーは高いです。中国のカロリーが六千五百から七千、これに対してアメリカは八千です。それで値段のほうは一月入荷の満洲の適道炭、これは日本の港着が値段一九ドル五〇、アメリカの価格は二十六年十二月現在日本の港着の値段が二九ドル、一〇ドル大体違うわけなんです。塩のほうは調べてありません。こういう石炭と結局粘結炭を一緒にして考えると、やはり結論は二倍乃至三倍になるだろうと思うのです。これは大臣のほうもよくお調べ下さい。大体私のほうは間違いないと思つております
  93. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 念のため申上げておきますが、運賃は二十六年と今年とでは非常に安くなつておりまして、今運賃はむしろ安いので恐慌を起しておるようなわけであります。今の値段はアメリカのはCIFでありますが、二三ドルと四ドルの間だろうと思います。それから適道炭等の強粘結炭、中国のほうのやつは我々のほうでは一九ドル五〇セントとして計算しております。それでカロリーを比較してみますると割高になる。つまりアメリカ日本の間は運賃がかなりに大きな部分を占めておりまして、その運賃が非常に安くなりましたものですから運賃が安くなつても中国との間の値段にはそう響かないのであります従つて大体少し安くなつても一九ドル位、片方は二十三、四ドル、これでカロリーを計算しまするとアメリカの石災のほうは今では割安になる、こういう我々の見解です。
  94. 平林太一

    平林太一君 この條約の性格でありますが、これは中国全体に対する観点からして暫定的なこの限定講和である、こういうふうに考えて差支えないかどうか。限定條約である。中国というものを対象としまして。その点を伺いたいと思います
  95. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私は條約に限定というような條約はないはずだと思つております。でただその内容が或る地域を限るとか、適用の範囲をきめるとかいうことはありましても條約自体についてはまあよく新聞等で言われておりますような限定承認とか限定條約とかこういう種類のものはないはずであろうと考えております。従いましてこれも普通の條約であります。何にもそこに違いはないのであります。ただ御承知のような別の文書で適用範囲を定めておるというだけと御了承願いたいと思います
  96. 平林太一

    平林太一君 只今大臣の御答弁で私もよう了承してそういうふうに考えたいと思います。当時非常に国民政府側が何か全体的の全面的な意味においての講和ということを非常に主張したようでありますのでこの点も一応お伺いしたわけであります。併し大臣の御答弁によりまして私はそういうふうに了承いたします。  第二にはこの中共に対してでありますが、この政府の中共に対する態度は従来のこの封鎖的態度から進んでできる範囲において協調の意を示しながら相手の出方を待つという態度であります。こういうふうなこのことに対しましてどういうふうに外務大臣これをお取扱いになられるか。こういうふうに考えて差支えないかどうかこの点を伺いたいと思います
  97. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 我々はもう申すまでもなく中国の国民と申しますか、中国四億何千万の民衆に対しましては長い伝統もありまして非非に親愛の念を抱いており、文又化についても切つても切れない関係があるわけであります。でありまするから中国の民衆のことを考えますと、できるだけ早く中国全般と親善関係の條約を結ぶなりして平常な関係に入りたいという希望は強いのでありまするけれども、現在非常に多くの部分を占めて支配しております政府はいろいろの点で我々が通常関係に入るのを困難とさせるようなことがあるのでありまして、例えば中ソ同盟條約で日本を仮想敵国というふうに特に條約の中で日本の名前を謳つて規定がしてある。或いは北京からの日本語の放送を聞きますと、これは非常に日本として不満を抱かざるを得ないようなものが始終あるのであります。あたかも暴力をもつて、憲法に規定されておる日本政府、これは單に行政府のみでありません、立法府司法府をまぜましてこの憲法の規定に基ずく日本の三権分立の政府を暴力をもつて破壊することを扇動するがごとき放送を行なつたり、又五月一日の外国人に対する自動車を焼くとか破壊するとかいうことをあたかも当然であるがごとく奨励してみたり、到底これはこういう態度であつては仮に條約を結んだところで何の親善か、何の平常関係回復かわからないと思われるようなものが多々あるのであります。そういう点が改善せざる限り到底今の北京における政府とおつき合いをすることは困難である。こういうことはどうも私は云わざるを得ないと考えておるのであります
  98. 平林太一

    平林太一君 非常に明確な外務大臣の中共に対しまする態度を表明せられたので、私もその点同感の意を表するものであります。実質上におきましては、中国に対する先般来、又本日私から先刻質疑をいたしましたようなことであるのでありまするが、侵略主義による共産主義の中国は国家でありまする以上、その点は極めてきびしい態度をもつてこれに臨まなければならないことは我が国の今日の現状からいたしまして当然の事柄と思うのであります。が併しながらその点それでも私も了承いたしましたが、第三に伺いたいと思いますことは、この現在、先刻議題外の質疑としてこれは一応取扱われたものと関連があるのでありまするが、六、七万と推定されるところの中共地区にこの抑留同胞がある。これに対する送還、それからだ捕漁船の返還、こういうものが今日切実な又現実の問題として、これが横たわつておるのでありますが、このことに対しまして、なお又この貿易関係におきましては、いわゆるこの現実から申しますと、この香港経由の貿易というものが促進いたしますればともかくとして、そうでない場合には、この中共貿易というものが非常に重要性を増して来るので、いわゆる中共の性格に対してのきびしい態度はこれは申すまでもないのでありますが、併しその場合やはり政府の苦心と申しますか、政府は非常にその点について、外務大臣御苦心になつておられることも今しばしばの御発言によつて私も窺うのでありますが、併しここに苦心をいたして何らかのこれが、いわゆる途が開けるような発見に努力をすべきものではないか、かように思うのでありますが、以上について御見解を承りたいと思います
  99. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 中共地区といいますか、御承知通りかなりの数の同胞がまだ残つておるのはたしかと考えております。そこでこれはソ連政府と違いまして、もう一人もいないんだというようなことは決して云つておりません。又前にこれの一部を還したこともあるのでありまして、これは話しよう又方法を見付れば又帰ることはこれはソ連領に比較すればむしろ容易なほうじやないかと思つております。これに対しましては、政府としていろいろまだ今後各種の方法をもつてこの実現を促進しなければなりませんが、仮に話がついたとすれば、例えば船を出すとか旅費を出すとかいう程度のことは仮に政府の負担でやらなければならん場合には喜んでそのくらいのことはいたして、中国の抑留同胞を還す努力はいたしたいと考えます。でこれは比較的私は実現の望みがあると思つておるのです。又いろいろの手紙その他によりましてその消息もかなりわかつております。又現に前に送金などもして来た例もあるのであります。この方面については今後ともできるだけ努力をいたしたいと思つております。  それから中共の貿易につきましては、私の感じから言えば先ほども金子さんにお答えしましたように、これは国連の決議というものは、中共の戰力を増強しないために輸出の制限をやると、こういう趣旨であります。で現在は総力戰でありまするから、本当に戰力の増強に関係のない種類というものは理窟をおして行けば非常に少くなります従つてこれは輸出制限が厳重なら厳重なほどその目的は達せられるわけであります従つて私の感じとしては、これは感じでありますが、先ほども申したように、むしろできるだけこの輸出制限等を強化すべきではないかということになるのでありまするが、そうかといつてこれは民主国家全体の歩調の合うことが必要でありまするから、歩調を全都合して行くと、それでその歩調を合せるについて日本のほうにでこぼこがあれば歩調を合せる意味調整することもこれは差支えないであろう。併しながら一方においてそういう輸出制限をいたしながら、何らかこの陰の方法でただ日本の利益のためにほかの民主国家を出し抜いて中共貿易を間接に奨励するというようなことは、これは国際的の信義の上からもやるべきものでないと考えて、できるだけ我々は真正直にこの問題を取扱つて行きたい、こう思つておる次第であります
  100. 平林太一

    平林太一君 只今の御答弁よく了承いたした次第であります。それからだ捕漁船の返還でありますが、これに対しましては具体的に何らかの御処置をとられまする御意思がありますかどうか、ちよつと伺つておきたいと思います
  101. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これも間接ではありまするけれども多少の方法はあるのでありまして、又その結果かどうかわかりませんけれども、ときたまには漁船も返して来、漁夫も返して来る、これはまあ比較的簡単なのはその船に乗せて返してよこせばいいのでありますから、ときたままとめて返して来るということでありますので、今後ともこの方面はできるだけ早く促進したいと思つております
  102. 平林太一

    平林太一君 非常に御苦心になつておられますけれども、むしろ非常に私の諒といたすものであります。今後是非そのように実現せられることを望んでやまない次第であります。私の質問は以上であります
  103. 團伊能

    團伊能君 この條約の中の第四條についてちよつと私の疑問を明らかにして頂きたいと思いますが、これは真珠湾攻撃前に日本と中国即ち中華民国、或いは清国時代に取交されました條約、協定、協約は全部無効となるということになつております。従いまして義和[事件或いはその以前の日清戰争の結論というものもここで無効に当然なるのだと考えられます。その時期が日支間における各種條約のどの境まで遡るか知れませんが、近代といたしまして日清戰争の結果も無効になりますとすれば、日清戰争以前の両国間の状態へ帰ると考えられまますが、この際ちよつとお伺いいたしたいことは、この條約を結ばれるにつきまして、領土の範囲が台湾、澎湖島、西沙群島その他に限定がされておりますけれども、若しも日清戰争以前の日支間、日中間の状態に帰りますときに、只今琉球諸島につきまして信託統治というものが仮に無しとすれば、日支間における琉球所属の問題が再びここに帰つて来るわけだろうと思います。私の記憶は正確でないかも知れませんが、日清戰争以後は清国といたし、琉球に関する各種の要求は放棄した形でございますが、その以前の状態に帰りますと、多分明治十五年であつたかと思いますが、竹添公使が天清で交渉され、いわゆる分島問題が起りまして、両国間に琉球所属が解決点がないために宮古、八重山を清国に渡し、琉球本島以北を日本が領することで一応の話をつけたこともあつたようでありますが、これが批准にいたらなくてそのまま終り結局日清戰争に来ておりますが、そういたしますとこの日清戰争以前に立ち偏つたときの琉球所属というものは、一応この條約を締結するについてお考えがありましたかどうか、伺いたいと思います。琉球の問題につきましては、これはもう昔から係争と言えば係争でありまして、日本側から言えば平安朝時代からこれを領有しておつた従つてあの時分の大和言葉が今なお琉球には残つておるというような点からだんだんに話が古くからずつと来ております。その間にまま琉球に対する中国、まあその時分にはいろいろなほかの名前でありましようが、要するに宗主権と称するものを主張しておつたことはあるわけであります。併し我々の調べたところによりますれば、支那側はずつと過去においてもいろいろ主張はいたしておりましたけれども、結局宗主権の範囲を出ない主張であり、日本側のほうはこれを完全な領土として実際にも支配しておつたという事態で来ておりまして、明治になりますと初は鹿兒島の直接支配上にある、だんだん県になつて来たという恰好であります。そこで私どもは琉球諸島、沖縄諸島につきましては、日本の領土であつたということについての疑念はないと考えております。又私も非常にはつきりはいたしませんが、私の記憶にして間違いなければ琉球の所属について日本と支那側との間に條約等で規定したものがないと考えております。日清戰争以後の條約においてもそうでありますが、前においても別に規定はないと思いますので、この第四條等の規定はありましても、沖縄諸戸等に関する所属は、平和條約における別の規定はこれは別としまして、それまでのこの第四條等によつて従来の日本の領土であつたということは何ら影響を受けないと信じております
  104. 團伊能

    團伊能君 只今外務大臣の御説明でございますと、日本の所領それ自身が少しも動かない事実であるという御説明でございますが、事実日清戰争以前におきまして或いは日本の領土であつたかも知れませんが、両国間におきまして相当複雑な折衝があり、殊に明治十三年ですかグラント将軍の東洋を歴訪したときにも、これが非常に問題になり、いろいろ両国間の折衝をした歴史があり、勿論これは最後の條約にはなつておりませんでしたが、條約を結ぼうという意思が双方にありました関係もございますので、これが将来において米国の信託統治下にある琉球には問題ありませんが、これが信託統治が解けた場合直ちに日本領土であるということの承認日本はしても、或いはそこに将来一つの問題が起りはしないかという、これは或いは杞憂かも知れませんが、その点に関して今日質問いたした次第でございますが、この点に関しては只今大臣の御説明もありましたけれども、とにかく外交折衝があつたという事実は否定できないと思いますが、この点におきまして、なお外務省におきまして或いは政府においてそういう認識の上に御研究を願つておきたいと思うのが私の希望であります
  105. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 念のため申上げておきますが、これについてはずつと過去の歴史、それからその他文化の関係その供いろいろのことを念のため終戰後大学教授等を特に派遣しまして調査をいたしてその完全なる調書もあるのであります。いずれにしましても、この過去何十年間というものは日本領土として平穏無事に支配され、その間何ら抗議等もないのでありまするから、この前の事態は別として過去何十年間の実態から見ましても、私は、この平和條約の規定は別としまして、日本領土であつたという今までの事実については一点の疑いはないと固く信じております
  106. 杉原荒太

    杉原荒太君 総括的な質問を二、三したいと思います。  第一は、日本の今後の中国に対する政策の根本考え方、対華政策の基調といいますか、基本方針といいますか、それほど固いものではなくとも、今政府でとつておられる日本の中国問題に対して基本的な考え方について大臣のお考えをお尋ねしたいと思います。  あえて申上げるまでもなく、日本の過去を振りかえつてみましても、結局日本の中国に対する政策の過ちから全般の破局を来たした。終戰後世界の情勢、極東の国際政治構造がすつかり一変したのでありますけれども、将来でもやはり日本の中国に対する政策の根本が誤つた方向に行くかどうかにつて日本の国運は分れて来ると思う。又それがやがて日本の或る第三国に対する外交関係をどう規制して行くかということに直接に関連を持つて行くものだと思う。然るに一方現実の事態を見ますと、極めて困難なる事態にあります従つて、今ここで対華政策の問題を考えます場合にも非常にむずかしい問題で非常に困難褐雑な事態だと、併しそれならばこそ中国に対する基本的な考え方というものについては十分の練られた基礎の上に立つてすべてのことが進められなければならんものだと思う。そこで、大体どういうふうな基本的の考え方でおられるか、又それの如何によつてこの條約に対する批判、評価というものが私は変つて来るものだと思う。その点について大臣の大体のお考え一つ基本的な点だけでいいですからお伺いしたい。
  107. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは先ほども平林委員にお答えいたしましたが、日本政府としてはこの長い間の特殊の関係がある中国との間に全面的な平和関係なり、或いは通商関係なりを樹立したいという希望は当然持つておるわけであります。それについてはなお強いて言えばイデオロギーに特に拘泥する必要もないと考えておるわけであります。併しイデオロギーにほ拘泥しないとしましても、先ほど平林委員にお答えいたしましたように、積極的に日本に対して日本の現在の政府というふうな、お断わりしておきますが、行政府だけではございません、立法府もまぜてであります。こういう憲法の下に立つ者に対してこれを暴力で顛覆したほうがよろしいというような宣伝をいたしたり、まあいろいろの罵詈讒謗を浴せておる。又その背後は恐らく中ソ同盟條約の考えかたが入つておると思いますが、こういうような現実の事態を見ますると、中国共産党の現在の政府との間に交渉を持つことはこれは今のところできないと考えております。そこで差当りはいたし方がない、例えその一部であろうとも中華民国政府日本と條約関係に入ろうという意向でありまするので、これとの條約を結び将来は適用範囲などというもののない全面的な関係に早く入りたい、という点についてはこれはもういろんな機会においてはつきりしておりますが、そういうつもりでおります。ただ実現の方法が今のところはないので希望にとどまつておるという程度であります
  108. 杉原荒太

    杉原荒太君 私のお聞きしたいと思う点をもう少し具体的にするために別の角度からお尋ねいたしますが、恐らく政府では支那に対する政策の問題を考えて行く場合に、日本独自の立場からする一つの要請というものがある。それとともに日本の米英その他第三国に対する外交関係の考慮というものがある。そういうようなものからして全体総合して考えておるに違いないと思う。先ずアメリカとの関係対支政策に対する関係においてのアメリカとの関係という点についてのお考え
  109. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと御質問が漠然として……。
  110. 杉原荒太

    杉原荒太君 ではもう少し。つまり恐らく日本の今の外交関係全般からいたしまして、アメリカとの協力というものが非常に重要になるものと考えておるに違いないものだと思う。これを日本の対支政策、対中国政策に関する場合にあてはめてみた場合にそのへんのところをどういうふうに考えておられるか。
  111. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカは無論御説朗するまでもなく国民政府承認いたしましてこれに相当の援助をしておるわけであります従つてアメリカ政府なり国民の大部分の気持としては、日本アメリカと同様に国民政府に援助をしてこれを強化をすることにつとめてくれればいいと考えておると私は想像しております。併しアメリカ側は私の知る限りでは、これは他の国が中共政府承認しておるというような関係もあるかも知れませんが、この点について日本側に要望等をいたしでないのでありましてむしろ日本の自発的な考え方に任せるという気持でおるようであります。そこで我々のほうからいいますと、これは結果においてアメリカと或る程度同調したことになると思いまするが、中共政府承認したり中共政府と何かの形で交渉に入るという気持は少くとも現内閣においてはないのであります従つてこの條約のように中華民国政府のほうとの條約を締結したようなわけであるから、調印したようなわけでありますから、それは結果においては或る程度アメリカ側と同調したような結果にはなつておりましようけれども、これは結果であつて我々のほうで日米協力というようなこと、或いは日本アメリカの間を非常にできるだけ緊密にして行くという気持はお説の通りであります。その一つの方法としてこういう條約を結んだというのではなくて、日米間の緊密関係ということについては別に、できるだけのことをいたしてこの強化を図りたいと思つておるわけであります
  112. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう少し私の言わんとするところを具体的に申しますと、対中国政策に対するよその国のあれを見てみますと、イギリスを見てみますと、イギリスは勿論外交政策全般としてはむしろ英米一体とも言えるくらいの非常に緊密な強力な外交政策をとつて来ておる。然るに中国に対しては英国式の路線というものが一つ出ている。又インドを考えてみると、インドだつて必ずしも反米政策をとつていない。然るにもかかわらずインドの路線というものが一つ出ている。日本としては今後対中国問題を考えて行く場合、アメリカとの関係においてその辺のところを、つまりもう一つ言いますと、アメリカの対中国政策と結果においては全く同じ軌道の上を走ろうとするような考え方であるが、それは独自の見解から来ても結果的にはそうなるような考えを持つておられるのか。或いはそうじやなくてアメリカ関係、勿論これは考慮に加えて行くけれども、それをいわば勘酌する一つ材料であつて日本独自の路線というものを考えておるのか、その辺のところを一つ
  113. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) それは非常に形式的なものの言い方かも知れませんけれども、そういう御質問に対しては勿論アメリカ関係は十分考えるけれども日本と中国とは特殊の歴史的地理的関係があるのでありますから、そのことに関する限りは日本としては独自の考えを持つて進むべきあると、こう思つております。  ただおことわりしておかなければなりませんことは、今インドやイギリスの例をお引きになりましたけれども、インドやイギリスは中ソ同盟條約の対象にもなつておりませんし、私の聞いておるところでは、インドやイギリスに対して中共の北京放送が何らかの関係でそのビームも向けておりませんし、又そういう点について特に非常な破壊的な宣伝をいたしてもおらない。ところが現在日本に対してはそういうことが毎日行われておるのでありまして、その結果として今のところはアメリカと殆んど歩調を合すがごとき結果にはなつておりましようが、考え方としてはそれは当然接壌地というのではありませんけれども、非常に地理的にも近いし、歴史的にも深い関係がありますから、その点では日本として考えるべき点が多々あると思つております
  114. 杉原荒太

    杉原荒太君 この日本の中国政策を考えて行きます場合に、アメリカがどういうふうな中国政策をとつて行くかということが重要な考慮にならなければならんということは、むしろこれは外交常識だと思つておるのでありますが、その点についてこのいわゆる吉田ダレス書簡なるものが取交わされた際に、日本側の中国に対する政策というものはあれでアメリカ側に対してかなり明瞭に示されておるわけでありまするが、その際に今後アメリカが中国に対してどういうふうな政策をとつて行くかということについて何か念を押されたようなことでもあつたかどうかという点と、それからもう一つアメリカの対中国政策はどういうふうな政策がとられているというふうに認識せられておるかという点、その点をお尋ねしたいと思う。
  115. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) アメリカ側からはこういう文書によつての方針の説明はないのでありますけれども、これはもう例えばトルーマン大統領なりアチソン国務長官なりが言明しておりますることで殆んど明白だと思いますが、それを文書にしたものは少し古いのでありまするけれども中国白書が出ております。あの中国白書の趣旨は多少朝鮮事変等で変更になつた点があると思います。併しあの中国白書の精神といいますか主旨は一向変つていないと思つております。ただその後におけるあの中国白書ではずい分国民政府に対しても非難を加えております。加えておりながらもやはりこれに対する援助はいたしておるのです。又中共政府が力を以て現在の地点から外へ出て来るというようなときにはこれは一応考慮しなければならんという点も中国白書にははつきり出ておると思うのでありまして、そういう原則的な点については当時から余り変つておらないと思います。で要するにアメリカ政府考え方は、今のところは国民政府を中国の代表政府として取扱つてできるだけこれに援助を與えて行くということと了解しております
  116. 杉原荒太

    杉原荒太君 この外務省から出された文書の中に米国の政策と題して、中国本土を共産圏から引離して行くという政策を外交の政策の内容とするというような趣旨のことがあるのですが、そういうふうに認識する場合と今おつしやつたこの中国白書に盛られた、私も大体あれの趣旨の内容はこの支那本土といいますか中国の内部に関する限りは余り干渉しないけれども、これが一たび外部にあの力を中共が伸ばして行く場合には飽くまで反対して行くという政策があの中に盛られておつたと思う。その前のほうと後のほうではえらい日本関係からしても違つて来る。今後米国の政策に日本が協力して行く場合でも、そこの如何によつて非常なるこれは相違を来たすものだと思う。
  117. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) この点はまあアメリカでも事態によつてはいろいろ適応したような措置もとるかと思いますけれども原則的の考え方はこの前第七艦隊の問題について言明があつたように、アメリカ自体としては中共が台湾の方面に来ることはこれは反対である。併しながらアメリカ側が援助して大陸側に中華民国政府が進出することを奨励するようなこともしないような政策であろうと思います。併しながらアメリカ政府としては、中国内部の問題として中華民国政府なり中共政府なりの間に争いがあつて、これに対する中華民国政府が仮にその大陸に出て行つたとしても、中国内部の争いとしての問題ならば或いは干渉せずということであろうかも知れません。併しながらアメリカの兵力を以てこれを援助するというようなことはいたさないだろうと了解しております
  118. 杉原荒太

    杉原荒太君 その次に一つ念のためにお尋ねしておきたいのですが、今国民政府を相手にしてこの條約を結ぶ、而もその国民政府のとつておる基本方針というものは、私の了解するところではいわゆる反共抗ソの国策に基いて台湾を建設し大陸反攻の準備をするというところに集中されておるように思う。一方この條約において過去の戰争関係の清算整備という以外に、将来における協力関係を條約上の義務として規定してあるのですが、その関係はどういうふうに考えておるか。
  119. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは例えば第六條等の問題の御質問かと思うのでありますが、これは主として国際紛争を平和的に処理するという原則を謳つてあるのでありまして、特に特別の協力をすることを予想しておらないのであります。まだ無論何か特殊の防衛等のような協力であればこれは特別の條約がなければできないわけであります。これに謳つてありますのは紛争の平和的処理、及び特に経済の分野等においての友好的協力、こういうことを主眼にいたしております
  120. 杉原荒太

    杉原荒太君 次に今度の條約とサンフランシスコ條約との関係について一、二お尋ねしたい。  第一点はサンフランシスコ條約によると、例の一九四一年の連合国宣言に署名し、且つ日本と戰争関係にあつた国で、而もサンフランシスコ條約に署名しなかつた国との、新しく個別的な平和條約を結ぶ際の規定があるわけであります。今度のこの條約はあの規定との関係ではどういう関係に立つかということ。
  121. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは平和條約の第二十六條を指されるものと思いますが、この二十六條の趣旨とするところはむしろ前半よりも「但し」以下の点でありまして、要するに原則としては将来これらの国と條約を結ぶときには、同一又は実質的に同一の條件でやるが、若しそれらの国に余分の利益を與えた場合には平和條約締約国にも同様の利益を與えるという利益の與えかたの問題であります。ところがこの今度の日本と中華民国との條約は、この点では二十六條には私は関係がないと思つております。というのは中華民国政府に余分な利益を與えておらないが、この二十六條の規定は、個別的な條約を結ぶ場合に日本側が余分な利益を、サンフランシスコ條約以上の利益を相手国から得てもこれは差支えないのでありまして、従つて二十六條ではなくして一般にほかの国と平和関係に関することにおいて、二十六條の利益をどういうふうに與えるとか與えないとかいう点には関係がないと思つております
  122. 杉原荒太

    杉原荒太君 今のこの二十六條が適用ないとする、法理的な根拠というものが理解できないのですが、そして又それでいいんじやないか。今あとで言われた点はこれは関係のないことです。あと日本側から與える場合云々ということは今の問題とはこれは別個の問題です。それから又二十六條だけは中国との関係においては除外してもいいということが、一体サンフランシスコ條約違反にならないでどうしてできるか。その法的根拠はどこにあるのですか。なつつて又一向差支えないと思う。
  123. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 私はこの二十六條は要するに前半とも皆を一括してみなければならない。つまり始めだけ、但書よりも前のところだけを取つてみれば、條約を結ぶ場合は同一又は実質的に同一の條件で結ばなければならぬ。こうなると例えば実質的な同一の條件がどうかという問題が出て来るのでありますが、但書以下も一括して  一つの條文として見れば、要するにそういうような條約でない條約を結んだ場合、つまり余計な利益を相手国に與えた場合には他の国にもこれを均雪させるべきものである。こういう規定考えますのでこの二十六條には関係ない、こういつたのです。
  124. 杉原荒太

    杉原荒太君 今の点は私外務大臣の言われる説明はおかしいと思うのですが、まあそれじやこの程度にしておきますが、その次にお尋ねしたいのは先ほど團委員からも御指摘があつたが、今度の條約によると日本と中国間の條約で一九四一年十二月九日前に締結しておつた條約は、戰争の結果として無効となるという規定がございました。先ずこれについてはいろいろな疑問が起つて来るのですが、これは何ですか、先ずお尋ねしたい点は、このそれらの條約は無効という意味は将来に向つて効力を喪失するという意味でしようね勿論。その條約の締結行為それ自体国際的な法律行為だが、それが無効だという意味じやない。勿論そうでしよう。
  125. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) そう解釈いたします
  126. 杉原荒太

    杉原荒太君 それでは将来に向つてその効力を喪失する原因としてはこの戰争の回避ということを原因に求めた規定なんですか。或いはそうじやなくしてこの規定自体によつてそういうことがきめられるとこういう規定か、その点はどつちなんですか。どういう法理でこれは立つてるいのですか。
  127. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 戰争の結果として條約の効力がなくなるか、なくならないかという点については、私はあらゆる種類の條約が必ずしもなくなるともなつておらんし、そうかといつて非常に明確にもなつておらないと思います。従いまして日本の中華民国の間ではこのいろいろの條約についての取扱振りを、ここで新たにはつきり第四條でさしたということになるのです。
  128. 杉原荒太

    杉原荒太君 それではこの「戰争の結果」という言葉を特に入れてある理由は必ずしも明確でない。併しそれをここで確認的に明確にしたと、併し法的の効力を喪失する原因は戰争の結果なん、だとこういう法理に立つて規定なんですね、それじや。
  129. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) お互いに戰争の結果としてとにかく効力を失つたということに合意が成立いたしましたので、それをはつきりさしております
  130. 杉原荒太

    杉原荒太君 これは而も四條のそういう取扱を受ける條約というのは何らの例外はないわけですか。この規定からすれば例外はないのだが。
  131. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) 例外はないのです。
  132. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすれば日清講和條約も今度の戰争の結果としていわゆる無効になつたものの一つになるということになるのだが、これがその中でも日清講和條約の中には通商協定もあるから実質から見ればその点はいいけれども、台湾、澎湖島というのは領土です。ああいう永久的の状態をきめた條約が戰争の結果として効力を喪失するのは非常に重大な悪例じやないか。一般の法理にも相反するし政策的にも困ることじやないか。これを例えればその法理が認められるならば、ソ連との関係、対島、樺太の交換條約だとか、或いはポーツマス條約だとか非常にこれはその点から見て面白くない何があると思うのです。法理上から見ても政策上から見ても困ると思うのです。  そうして更に第三にはその今の日清講和條約の領土條項に関する限り、それは将来に向つて効力を喪失するというとその法的効果はどうなるのですか。
  133. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) ちよつと今聞き落しましたので、もう一遍最後の点を……。
  134. 杉原荒太

    杉原荒太君 つまり日清講和條約も将来に向つて効力を喪失する、そうすると領土條項も同じく効力を喪失する、そうするとその結果ここに現われている法的効果の内容はどういうものですか。
  135. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは私の考えではいろいろの條約がありまして、その中にはもうすでに各種の條約に基く措置をとりまして違つたステータスになつてもう決定しておる事項が沢山あると思います。そういう問題を言つておるのじやなくして現に実際に動いておる……
  136. 杉原荒太

    杉原荒太君 私の問題にしておるのは今の日清講和條約の領土條項のところです。両国の関係はこの効力を喪失した結果どういうことになるのですか。
  137. 岡崎勝男

    ○国務大臣(岡崎勝男君) これは効力を喪失する前にすでに日本の領土と確定しておりますから、もうそれは條約の中で実行済みの問題である。従つてその條約実行済みのものまで遡つて効力を失うという問題ではない、もうこれは常識上当然だと思います
  138. 杉原荒太

    杉原荒太君 それは私は常識上当然だとはちつともないと思います。そういう説もありますけれども。これがすぐ私台湾、澎湖島の領土権に関連を持つから聞いておるのです。
  139. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 杉原委員の御質問の直接問題となつておりますのは日清講和條約でございますが、講和條約には永久に適用のある部分と、一面実行すれば或る事態を設定してそれですむ條項とございます。領土條項はその後者に属するわけでございます。このこういう條項の効力に関しましては国際法の学者の間にも議論のあることで、一面やつてしまつて事態が設定すればそれでその部分はもうすでにきまつてしまつたんだ、そうでなくてこれは永久的にそれを続くものだ、という二つの解釈があるようでございます。併し今回の日華平和條約におきましては後者の解釈によりまして、従いまして本條約の第二條を御覧になりますとわかりまするが、直接第四條の問題としてでなくて別個に台湾、澎湖島の問題を取上げて規定しておるのであります。従いまして先ほどの二説のうち本條約は後者の解釈をとつたものとそう我々は了解しております
  140. 杉原荒太

    杉原荒太君 ここの條約の中にしばしば領域とか領土か、この漢文で見ろと領土とか、英語のほうではテリトリーズとかいう言葉が使つてありますが、これはその意味に使つてありますか。
  141. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 領或という意味は同じでございます
  142. 杉原荒太

    杉原荒太君 それはどういう意味か念のために聞いておきますが。
  143. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 領域という言葉を使いました場合は、必ずしもそこに領土権をインプライしない意味で使つております
  144. 杉原荒太

    杉原荒太君 ちよつと連続して一つお願いします。漢文では領土となつておるですな。
  145. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 漢文には領土となつております
  146. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうするとその領域というものをどういうふうにインプライしておりますか。
  147. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この條約では領域は領土より広い意味に解しております
  148. 杉原荒太

    杉原荒太君 ということは。
  149. 下田武三

    政府委員(下田武三君) ここで各條によつておのおの領土なり、領域なりの言葉を使つて規定しております規定法律的効果は各條によつて判断しなくちやならないと思いまするが、概括的に言いまして日本側考え方は領土権をインプライしないような意味で領域という言葉を使つておるのであります
  150. 杉原荒太

    杉原荒太君 インプライしないという消極的な意味でなくて、積極的に規定するとどうなるのですか、領域というのは。
  151. 下田武三

    政府委員(下田武三君) この領域という字を使いました場合は、領土権の帰属を現在の事態において明確にはしない、し得ないのですが、現実に支配力を及ぼしておる地域を領域と、そういうように使い分けておる次第であります
  152. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると台湾、澎湖島についてこの交換公文等に規定してある場合でもそういう意味で使つてお  るというわけですね。
  153. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 領域という、言葉を使いました意味は、統治区域といつた実質的にはそういう意味を持つておりまして、領土権の対象である地域のみならず、現実に統治支配を行なつている地域を含めて領域と、こう解しておるのであります。従いまして台湾、澎湖島のごときは領土ではないけれども領域には入ると、——こういう解釈でございます
  154. 杉原荒太

    杉原荒太君 そうすると今の内容はわかりまするが、その台湾が統治区域に属すると見る根拠はどこにあるのですか。そのタイトルが領土権になくしてほかのところに認めた場合どこにあるのですか。
  155. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) これは御承知のように終戦直後最高司令官から発せられました一般命令第一号で、台湾にある日本の軍隊は蒋介石軍に降伏すると、そうして蒋介石軍があそこを占領し管理するということになつておりまして、そこに法的根拠がございます。ですから決して不法に法的根拠なくして蒋介石軍はそこに占領し統治しておるのじやないのであります
  156. 杉原荒太

    杉原荒太君 領域とか領土、テリトリーというのは余りそう自分たちはこう解するというように、勝手に使われん言葉だと思うのでありますが、台湾、澎湖島に関する限り日本側はこれは中国に属しておるということをこの際認めて悪いわけは私は一つもないと思うがこの間から中華民国とか或いは中華人民共和国ということで、しきりに言葉に警戒して言つておられるけれども、あれは国内法上の関係であつて国際法上の権利の主体からすればこれは問題にする必要はないことなんで、同じく出際法上の権利主体からすれば中国という同一性がそこにあるのです。それが今後この台湾、澎湖島等は中国に属すると少くとも日本としては認める、そうしてこういうのが勿論そう認めてもその効果は両国関係だけだから何も第三国関係ないことである。それだから日本としては法理的に見たつて政策的に見ても、今後台湾が中国以外の所に行くようなことになるのは、これは何といつても東亜の安定というものを害するのだから日本としては少くともそう見たつて一向差支えないし、ここに書いてあることはこの結果としてこれらの地域が中国に属するということをインプライすると解して  一向差支えないと思うが、その点わざわざ避けられておるというのはどういう意味ですか。
  157. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 日本といたしましては、台湾、澎湖島の最終的帰属は連合国が決定すべきものであると、こういう原則に則りまして、そのことはサンフランシスコ條約にも現われておるのでございます。即ち日本は台湾、膨湖島の領土権は放棄すると書いてございまして、何国のためにも放棄するとはなつていないのでございます。そのサンフランシスコ條約の原則に則つて、今度の條約も書いてあるというふうに……。
  158. 杉原荒太

    杉原荒太君 よく連合国が決定するといわれますが、一体それはどこできまつておるのですか。私はそういうことのきまつておるものは一つも私は見たことがないので、どこにそういうことがきまつておるのか。
  159. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) それはこのサンフランシスコ條約、つまり連合国との條約におきまして日本は放棄しておるのでございます。領土権を放棄しておるのでございます。従いまして、この條約の趣旨から申しましても、今後その地域がどこにきまるかは連合国がきめるところであろうと思いまするし、連合国の側でもそういつておる次第です。
  160. 杉原荒太

    杉原荒太君 それはですね、アメリカなどが自分のところの政策として、今後国連においてきめられるならばきめられることがあつてもよろしいというようなことを一つの政策としては言つておるけれども、併し連合国の合意で以て今後台湾、澎湖島の将来は連合国できめるということはきめられていない、一つも。それだから日本日本に関する関係においては、今中国に属するということを認めても一向その点から見ても差支えないと……。
  161. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 杉原委員の仰せは御尤もでございまするが、日本といたしましてはサンフランシスコ條約のただ原則に従つた、それによつた、こういうことでございます
  162. 曾禰益

    曾祢益君 実はまあ領土、領域の問題も非常に複雑になつておる條約なんで、又国の問題、政府の問題がからみ合つて非常に複雑でわからなくなつているのですが、只今政府考えを伺つておると、領域というのは領土よりか広いのだと、広いという意味は、領域には領土権或いは主権の及んでおる区域、領土というのは必ずしもそうでなくても、事実上或る政府が支配権をもつておる地域、こういう意味に使われたのだというふうにいわれて、それを具体的に説明される場合に、まあ台湾、澎湖島については、これは中華中国の領土権なのか、中国の領土権なのか、又そこらへんが二段にわかれる議論のようでありまするが、そういつたような考慮から台湾、澎湖島には中国なり或いは中華民国ですらまだ確定的に領土権をもつておらないというような意味合いから、特に領域という言葉を使われたという御説明だつたと思うのです。それに対する是非の論はいるいろあるわけで、この間から私たちも中国に帰属するという見解に立つた白いいんじやないかということは申上げておいたのでありまするが、それは別として今一つ今の説明では非常におかしくなると思うのは、今後は中国本土にこの中華民国の領域なるものが擴大していつたらそれに応じてこの條約が適用されるということになる。その部面についてもやはり領域という言葉かお使いになつて、ところがそうなろと、その場合には、中華民国の領土権というものが中国本土にもないのだという解釈に立つているから、従つてこのそういう場合は領土と言わないで領域と、擴張して行つた場合の現に支配する領域に自動的にこの條約の効果が及ぶということになつているのですか。そうすると中華民国としても何ら領土権を持つておらないそういう中国本土についても、現に支配する地域がなければ中華民国なるものは領土権は持つておらない、こういう見解に立つておられるのかどうか。その点はどうなんですか。
  163. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) この台湾、澎湖島につきましては先ほど申しましたように、領土の最終的帰属というよのがきまつていないのでございますが、本土のほうは中国という国家の領土であることは何人もこれは否定しないと思うのでございます。従いまして中華民国政府の統治が本土に及びました際は現実の統治区域であることは勿論であり、又本土のほうは中国或いは中華民国の領土であることは何人も否定しないところでございまして従いまして領土でございます。單に領土を除いた領域即ち現実に、單に現実に統治を行なつている地域であるばかりでなく、国際法上領土権の対象である地域であるのであります
  164. 曾禰益

    曾祢益君 そうすると先ほど言われたことは少し訂正されて、領域と言つているときには、政府考えによると中華民国なる国の領土と認められない部分を示す場合もある。それは台湾、澎湖島である。それから又併しこの條約上使つている領域というのが今度は中国の本土に行つた場合には、今度は中華民国国民政府が事実上支配権を持つた所はその領域になるのだと、併しその領域というときには国民政府の中華民国の領土の場合でもあるのだと、こういう二つの使い分けをして、その上に立つた領域という言葉を特に領土から離して使われておるのか、そういうふうに解釈していいんですか。
  165. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) ちよつと誤解があるように思うのでございます。私が領域と申しましたのは、領土権の対象である両肩の領土であるものと、領土権の対象でなくても現実に統治している台湾、澎湖島のようなところも含むというのでございます。領域は單に現実に支配しておつて領土権の対象でない所だけを言うというのではございません。
  166. 杉原荒太

    杉原荒太君 念のためにお尋ねしておきたいと思いますが、この條約の非常に大きな法的の効果というのは、日本と中国との間に戰争関係が終了すると、もう戰争関係がなくなつてしまうというところにあるのだと思うが、その法的効果というものは中国国家ということに帰属することは私は当然のことだと思うが、いわゆる適用地域の問題と関係ないことだと思うがその点はどうか。
  167. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) その通りでございます
  168. 曾禰益

    曾祢益君 今の点は非常に重要な点なんですが、これは私は逐條審議の際に伺おうと思つてつたのですが、今のお答えは、すると第一條の「日本と中華民国との間の戰争状態は、この條約が効力を生ずる日に終了する。」と、この第一條の効果というものは、交換公文第一号のいわゆる本條約の「條項が、中華民国に関しては、中華民国政府の支配下に現にあり、又は今後入るすべての領域に適用がある」、これによつていわゆる政府の言われる適用範囲によつてこの條約の効果を絞つて行くということとは無関係であつて、我我の通念からいうならば、第一條の意味は、我々の通念でいうところの日本国と中国との間の戰争状態はなくなるのだ、こういうふうに政府は解しておられると思う、こういうわけですか。
  169. 三宅喜二郎

    政府委員三宅喜二郎君) 戰争状態は国家と国家との関係でございますから、この條約の第一條の規定も、日本国と中華民国、この二つの国家の戰争状態がこの條約が発効すれば終了すると、ただ実際問題といたしまして、中華民国政府の実権が大陸に及んでおりませんから、この條約の実施の効果と申しますか、というものは実効は本土については生じないということになるというわけであります
  170. 曾禰益

    曾祢益君 それがあいまいだから、私はむしろこれは杉原委員の御意思を忖度しちや悪いのですが、今御質問があつてそれに対して明確にそういうようなことでなくて、第一條については、交換公文の適用範囲の限定とは無関係な、基本的な日本国と中国との間の戰争状態というものをはつきり終了したと、この効果については全面的であるのだなという御質問に対してその通りであると言われたと思うので、私は念のために伺う。そうするとやはり結果においてはこの交換公文によつて絞られるということを認める。これはどつちか出なきやならないので、若しはつきりと日本と中国との間の戰争状態がこの條約によつてはつきり全面的に終了するというならば、果してその中華民国と中国とは同じであるのか、その中華民国を代表する政府が本当に現実に中国全体に対しての支配権を持つておるかどうかということから議論しなければならなくなつて来る。そうでなくて今言つたような適用範囲が限定されるということになるならば、少くともあなたも認められるだろうようにこの中華民国に関してはこの條約の適用というものが限定されるということは承認されるにしても、いやしくも一国と一国との間の戰争状態ということは、これは中華民国だけに関係する問題じやなくて、これは両国間の法的状態なんだから、それが交換公文によつて適用が狭くなるなんということは、全然これは法的になつてない議論じやないか。外務大臣は一体どつちの見解に立たれるのか、この点は一つはつきりして頂かなければ困ると思うのです。第一條の効果です。これが適用限定のほうで絞つて行くのか。それとも相手政府の資格にいろいろ問題はあるけれども、これは日本国と中国との間の戰争状態はこれによつて終了させる、そういう意図であり又そういう法律効果を政府考えておられるものであるかどうか、どつちなんですか。
  171. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 第一條の日本という国と中国という国との国家間の戰争状態を終了させるということは、現実に支配している地域がどうのこうのという事実問題とは無関係な全面的な法律関係を意旅するわけであります。従いまして或る地域に、いやそうでない、戰争状態は依然として継続しておると主張する政権があるかないかということは、つまり事実問題でありまして、この條約の解釈論として両締約国の意思は明確にそこにある、そう御解釈願いたいと思うのです。
  172. 曾禰益

    曾祢益君 そういうはつきりした御見解ならば、これは外務大臣或いは総理との間に政治上の問題としていろいろ議論は残ると思いますけれども、少くともそれならそれではつきりこれは外務大臣の意思として、第一條は飽くまで日本と中国との間の戰争状態がこの條約によつて終了したんだ、そういう解釈で間違いないわけですね……はい、わかりました。
  173. 杉原荒太

    杉原荒太君 もう一つの総括的な問題ですが、お尋ねしておきますが、この條約を結んだ法的の効果というもの  はですね、当然に中国の国家というものに帰属するんだからして、仮にこの政府というものが将来それを代表する正統な政府というものが変つた、という場合にも、その権利義務の関係は当然継承せられるものですね。これは当然のことだと思うのですが、念のため。
  174. 下田武三

    政府委員(下田武三君) 杉原委員のお考え通りだと思います
  175. 平林太一

    平林太一君 本日の審議はこの程度にして次回に継続せられることを提議いたします。(「賛成」「異議なし」と呼ぶ者あり)
  176. 有馬英二

    委員長有馬英二君) それでは本日はこれを以て散会といたします。    午後六時十二分散会    —————・—————