○国務大臣(岡崎勝男君) これは行政協定のときにも御説明したのであり
ますが、元来これは直用といい
ますか直接雇用されるのが筋道であ
つて政府がこれに關與すべきではないのであり
ます。併しながら行政協定の際には、労務者側のほうから言語その他の問題もあるので間接雇用にして貰いたいという希望がありまして、
従つて我々は働く者の都合のいいようにするためには多少筋道は
違つてもできるなら間接雇用にして面倒を見てやりたい、こういうことで本来は筋道は違うと思いましたけれ
ども、米側に話したところ、米側でもその費用を出すということであり
ます。その費用は従来一人の雇用に対して、労務費としてこれは退職手当とを交ぜてであり
ますが、四千数百円の金を出しておる。これを引続き出せば
日本政府の
予算を必要とせずして労務管理の人も雇えるし、世話もできるというので間接雇用の
手続をと
つたわけであり
ます。併しながら国連軍に対してはやはり同じ筋道からこれは直接雇用が当然であるということでありまして、又労務費等を出す意向がないようであり
ますから、
従つて予算がない
現状においてこれは間接雇用にすることはできなかろうと
考えており
ます。
従つて直接雇用という問題が当然出て来るわけであり
ます。そこですでに英濠軍の当局は
日本政府がこれはやるべきものだというように言われたと言われ
ますが、それは何らかの誤解であ
つて、英濠軍側も直接雇用であるべきことは四月二十八日以後は了承しておりまして、先に英濠軍側から直接雇用のために契約書を作
つて、そうして労務者に対してこれで承諾するかどうかというので承諾するものには調印を求めて承諾さしたわけであり
ます。そして金の問題つまり円、英濠軍は無論外貨を持
つていましようが、円を持
つているか持
つていないかという点で疑念がありましたが、結局この支拂日は六月の十日ということでありましたが、その前に円貨を用意しまして支拂は完了したのであり
ます。
そこでただ問題になり
ますのはその契約書なるものが、これは英語が読めなか
つたというような点もあ
つたかも知れませんが、これは飜訳書もついてお
つたようであり
ますが、従来の賃金よりも約二三千円くらい低い、それを承諾して判を捺してしま
つた。これはまあ
海上じやありません、一般の呉等におる労務者ですか、というので
あとでこれは困るという点が今問題にな
つておるわけであり
ます。そこでまあこれと性質が似たような問題は
アメリカのほうに働いておる労務者の中でも神奈川県の一部には起
つておるのでありまして、契約では四十時間乃至四十八時間働くという約束にな
つてお
つて従来は四十八時間働かしてその賃金を拂
つてお
つたのが、
予算の
関係と仕事の分量で四十時間にこれを減してしま
つた。そこで八時間分の金が減
つてしま
つたので、非常に今問題にな
つており、これに対してはその後話をしまして四十四時間までは働かせようということにな
つて、まだその
あとの四時間の問題が解決しておりませんけれ
ども、そういう問題もあるわけであり
ます。で呉のほうもやはりそういうふうにしてこれは働く時間ではなくして、何かはかの加俸、というか手当の問題が残
つておるわけであり
ますが、これは直接雇用ですから
政府として直接にこれに干興するという
建前はありませんけれ
ども、こういうことでは労務者のほうも困るであろうし、又英濠軍のほうも十分な働きをしてくれなくては困るであろうと思いまして、まあ好意的に両方の斡旋をいたそう、すでに従来や
つておりました特調の係官を呉に派遣しまして、それでその両者の間を今話合いをさしており
ます。
で国連軍との協定はまあどういうふうになり
ますか今後の問題であり
ますが、今申したような直接雇用が
建前であり
ますから、どの
程度協定の中にそういう労務の
関係の
規定が入り得るかどうか、これは協定をいたしてみないとわかりませんが、労務者のほうにはすでに従来の
関係があるので、特調がこれは臨時に、筋道じやないかも知れんけれ
ども、とにかく世話をするということで今努力をいたしており
ます。多少時日がかかるかも知れませんが、できるだけ我々
政府のほうから言いましてもこれは国連軍に対する協力という趣旨から言いましても、又労務者も従来ずつと協力して来たのであり
ますから、その間の感情のもつれがないようにいたすのは当然のことであり
まするが、今この際
法律的な筋道とかなんとかといことは暫くおきまして、できるだけこの間に斡旋をしようと
考えており
ます。時日はまだ多少かかると思い
ますけれ
ども、そういう趣旨で努力をいたしており
ますからさよう
一つ御了承を願いたいと思い
ます。