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曾祢益君 その点はわかりました。
そこで、どうもやはり重要な点について十分なるお答えがないのですが……。それから総括論でありますが、多少
内容にも関連するので、その点はお許し願いたいと思います。
外務大臣がまあしきりにこのできたものを弁解されるのは、これは誠に御尤もであるのですが、中国の民衆との
関係を培養して、この中国本土との
関係は何とかや
つて行かなけりやならないと同時に、その政権とは条約を結ばない。一方この
議題にな
つております条約はそういう問題には触れない。そこで非常に大きなまあブランクが出て来るわけなんですが、併しこの条約全体が然らば中国本土或いは
中共政権に全然無
関係であるかと言えば、もとよりそういうものでないことは明らかであ
つて、先ほどお答えがはつきりなか
つたのですが、何と申しましても
吉田書簡と相待
つて、この条約が台湾にある
一つの政権に対して、その将来中国全体の主人となる……この条約に使
つている言葉にもつと忠実に言えば、その支配権が拡大された場合に、その拡大された支配権に
従つて日本はそれを認めて行く。即ち台湾政権が中国を支配した場合に、この条約によ
つて日本は台湾政権のみが中国全体の主人となることを予想して、そのときには中国全体の
政府として認めるということの予約にこれがな
つておることは疑いない。現状においては適用範囲は支配する範囲に限る。併しこれは自動的に伸縮自在であると
言つては、アンドとオアの問題はもつと詳細な
議論を必要とするが、縮のほうは別として、中国全体に仮に拡が
つた場合には、これはこの条約の効果によ
つて、
国民政府のみが中国の全体の主人であることの予約にな
つておるという点はないのか、これはあると思うのです。それでも中国全体の問題についてはこれは触れないのか。現に台湾政権の現状における
程度の必要なことだけを規定しておるということが言えるかどうか、この点とそれにやはり関連するのですが、
議定書だと思うのだが、とにかくこの条約の
議定書その他の附属文書の中で賠償問題を取扱
つておりますが、中華民国
国民政府が役務賠償を放棄したということは、これは中国の二つの
政府の間の争いの問題は別として、
日本が受益者としてこのことを受取ることはいいといたしましても、その殆んど代償的に、
日本としては
国民政府のほうにその
利益を与えてしま
つている点はないのか。つまり
日本の在外資産だけが、役務賠償を自発的に中華民国が放棄したので、サンフランシスコ条約十四条に基いて同国、即ち中華民国、言い換えるならば
国民政府に与えらるべき、「及ぼさるべき」というのは与えらるべきと読んでもいいと思うのですが、「唯一の残りの
利益は、同条約第十四条の(a)の2に規定された
日本国財産である」、このことは直接に中国全体の主人から見るならば、これは
日本政府がいわば譲るべからざるもの、辛く見れば譲るべからざるものをこの
国民政府なるもののために
譲つておる、こうい
つたような効果を現にこの条約においては起しておるのではないか、これでもなお且つ
政府としては全く現在の台湾
政府との間の修正
関係を樹立する必要の限度においてこの条約を作
つたと言えるかどうか、その点を明確にお答え願いたいと思います。