○平林太一君 関連して、
只今曾祢君より
日韓の疑惑に対する
質問がありました。
従つてこれは日華條約を、
只今政府は日華條約に対しては
承認するものである、それから
日韓の條約に対しては経過の
報告を今お話なされたのでありますが、私は特にこの二つの條約に対する性格というものに対して
政府のこの考え方を伺
つておきたいと思います。昨年
サン・フランシスコ会議におきまして、條約第二條によりまして、(a)項におきまして
朝鮮に対しましては、
日本は
朝鮮の
独立を
承認して、済州島、巨文島、及び鬱陵島を含む
朝鮮に対するすべての
権利、権原及び
請求権を放棄する、これは
朝鮮であります。それから第二條におきましては、(b)項におきまして、
日本国は台湾及び澎湖諸島に対するすべての
権利、権原及び
請求権を放棄する、これはまあ今度の日華條約の対象の台湾でありますが、まあ
政府のいわゆる、殊に私は今度の
岡崎外交の進むべき方向といたしまして、これは明らかに質しておきたい、というのは、私のほうはいわゆる
国民外交である、
国民の意思を象徴する
立場におきまして、こういうことを申さざるを得ないのでありますが、特に
サン・フランシスコにおきましての條約に対する
関係各国の性格とはこれは違う、
朝鮮におきましては我が領土といたしまして、明治四十年乃至四十一年頃と記憶いたしますが、当時の初代の曾祢
朝鮮総督以来今日まで、終戦以来昨年まで、如何に
朝鮮のために、
我が国がいわゆる孜々営々としてこの
朝鮮民族のために図ること如何に大であ
つたかということは、第一にこれは考えられます。又台湾におきましてもそういう
意味が考えられるので、又事実もその
通りであります。それでありますからそれにこのたびこの日華條約の場合は、いわゆる
中華民国とこの條約を
締結するというのでありますが、而もこの台湾の場合は、実質上の戦争が終
つた後に、この台湾に対して、我が領土であ
つたその台湾に対して、新たなる
中華民国政権がこれにできたのである、そういう特殊の
事情であります。そうして
平和條約におきましては、これを放棄したということ、
朝鮮に対しては
只今申上げたような次第であります。それでありますから、この日華條約或いは
日韓條約共に、いやしくも
我が国が拘束を受けるような、いわゆる戦争によ
つて一つの処罰を受けるような、そういう性格のものではこれは私はないと思う。
国民の私の意思から申しますれば、
只今外務大臣としての
岡崎君の御
説明によりますと、中華條約に対しては
サン・フランシスコより以上、信頼と友好の講和であ
つたと、こうおつしや
つておられます。併し相手方のあることでありますからなかなかこういうことはむずかしいことでありまして、取結びをいたしました当局といたしましては、誠にさようなことをお考えになられることも、一応私は了承いたすのでありまするが、併しこれらの條約というものは、一応
締結いたしますれば、今後数年間どの
程度これか続くか、続けば、その間依然としてその拘束を受ける部分だけは、長くそれが続かなければならないということを考えるにつきましても、極めて私はこれを慎重に考えなければならないのでありますが、例えば、日華條約の第四條におきましても、一九四一年十二月九日前に、
日本国と
中国の間で
締結されたすべての條約、協約及び
協定は戦争の結果として無効と
なつたことが
承認される、我が
日本の実情で申しますれに、これはこの両條約のみでない、
平和條約におきましても、この無効となるというときにな
つて、初めて我が
日本というものが支障なく
我が国力の限度内においてこの
発展ができるのである。この條約の続く限りは、何としても條約から受けておるところの拘束なり制限なりというものから、
我が国民は働いても、働いてもいつにな
つても楽ができないという面が、非常に憂慮されるのであります。併しそういうことを思うにつきましても、この
両国の條約については、極めて私から申しますれば、いわゆる平和の見地に立
つて、戦争によ
つてそうして戦争の結果から受ける処罰を、何かそこに意図して、そうして條約を
締結されるということに、私は
両国の場合はないと思うのであります。なぜならばその領土、台湾の場合は台湾、
朝鮮の場合は
朝鮮を、すでにそれらの
先方国の
領有に帰せしめたのでありますから、私から申しますれば、これはおつりを取
つてもなお余りあるものである、かようにすら
両国民の人々は考えてもらわなければこれは困るのであります。それを他の
平和條約と同様に、
日本が戰争の結果から受けるところの一つの処罰なり、或いはそういう拘束を受けるというようなことからして、これが取扱われるということは非常に残念である。そこでこの
中華民国に対する、いわゆる日華條約に対しましては、私はこれを、
内容を見るにつけ、或いは議定書を見るにつけましても、或いは同意された
議事録、こういうものを見ましても、実は甚だ腑に落ちない点がある。そうして甚だ私は不満である。表面に現われましたものといたしましては、或いはこの
程度であると、
政府はまあそういうことで成功だとおつしやるのでありましようが、実質上におきましては、この性格を持
つておる條約の
内容に対しましては、私は非常に不満穴、あ
つたということを、この際申上げるのでありまするが、その性格に対する
岡崎君の
外務大臣としての御
見解を、先ず第一に承わ
つておきます。
それから第二には、日華條約におきまして、そういう私は性格から以ていたしますれば、我がほうからすでに
先方に参りまして、この條約に当
つたのでありまするから、一度
サン・フランシスコにおいて、
吉田総理大臣が欣然受諾すると称して、あの條約を受諾されたと同様に、これはいわゆる
中華民国当事者は、我がほうが
先方に渡れば、欣然御受諾申すと、こういうことでこれはできるはずである。私はそういう性格にこれを見るのであります。然るにもかかわらず、非常にその会議が停頓いたしまして、そうして漸くにして講和條約が発効の日であるいわゆるワシントンにおいて寄託式の行われた目に、辛じてこれが取極められた、その間にはしばしば停頓したということであ
つたのでありまするが、その停頓いたしたところの
理由及び
先方の
主張してお
つたことと、我がほうと食い違いがあ
つた点は、主なるものはどういうものが挙げられておるか、これを第二に伺いたいと思います。