○平林太一君
日本外交が今日我々としましては非常に感慨をこめてスタートしたわけであります。この際新任
外務大臣たる
岡崎君に真意を質してそこに私の質疑をいたしたいと思います。
第一に伺いたいと思いますことは平和條約に対しまする今後の取扱方これであります。取扱ということは果して妥当であるかどうかは別といたしまして、これは私の真意を申上げるに当
つてそう大した違いはない。と申しますことは、この平和條約が起案されました時期というものは昨年一九五一年の一月にダレス氏が
我が国に来られてそれから更にフイリピンに行かれてそれから帰国されて英仏等にこの問題を折衝した、そうしてその原案ができたものが今日、四月二十八日に発効いたしましてこれが実施に移されたということであります。併し遡
つてみますると遥かに一九五〇年の六月にブラツトレー、ダレス等が参りまして、朝鮮事変の直前であります。そうしてマツカーサーと打合せたのでありますが、それが朝鮮事変のために、停頓して、同年十月にこれが米国におきまして再発議に
なつたというようなことを回顧するのでありますが、当時の事情と今日とは更に世界の情勢というものが全く変
つて参りまして、従
つて国際間に取りきめられましたところの條約の内容というものも我がほうで今日実施されるに当りましていろいろとちぐはぐな
関係ができた、それよりも遥かに
先方でありまする米国が非常に御心配になりました。私はその米国の御意思及び平和條約の調印をいたした国々の諸国においても、今日におきましては起案当時とは非常に事情が異な
つて来たことによりまして非常に思
つているごとと実際に行わんとすることが違
つて来たのではないかということを、私は
我が国の
外交の方針、或いはこれに処理する態度、或いは将来の見通しという上に非常に
考えなければならないことと思います。予算におきましても、予算を編成いたしまするその当時の単価によるその予算編成、それがいよいよ実施面に移りまして半年なり一年後になりますると実施上におきましてそれが不可能になる、ために補正ということをいたさざるを得ない事態になるのであります。それでありますから、平和條約の実施に当りましてやはり私はこういう観点を持つものでありますが、現在のそういうことに対しましてどういうふうな
大臣はお
考えを持
つてこれに当られるかということを第一点にお尋ねをいたしたいと思います。
そういうことの例として取上げられますことは賠償問題であります。これらのことは昨年の一月頃の事情とは全く異な
つて参りました。むしろ今日におきましては、
我が国と平和條約を締結したそれぞれの国々の実情というものが、当時におきましてもすでに国連憲章に違反いたした行為であります、領土を我がほうから奪う、賠償をとるということは国連憲章のその條項の中に示していることと、言うことと行うこととが全く違つた行為であります。併し当時の事情といたしましてはそういうことが行われたのであります。併し今日においてはまさに反省せざるを得ない事態に私はあると思います。そうしなければ国連の大精神というものが世界に敷衍、実行して行くことができないのでありますから、そういうことは今日我がほうより
先方がさだめし心の中で気恥かしく思
つておられるのではないか、併し向うから言い出すわけに行かないので、我がほうからこの賠償の問題に対しましては、これが私は新たに課せられた
岡崎外交の国民の深く期待してやまざるところであるということを申すのであります。
領土の問題に対しましては、私は今後の
日本の
外交というものはやはり米国というものを基調として、そして米国と
日本との間に途中におきまして行き違いがあり間違いがありましてああいう事態にな
つたのでありますが、日米の伝統、日米の
外交上の因縁というものをつらつら回顧いたしますれば、これは何らの意見を混えずして、私は小さい問題にこだわることなくして日米の
外交というものは唇歯輔車の
関係を以て
我が国の
外交の方針としては進めなければならないことと思
つております。こういう
意味におきましてひたすらこの点に対しまして日米
外交の基調というものを米国におくということは、私は実質上におきましては種々これは議論される点もありますが、やはりものことは小異を捨てて大同につく、少しぐらい支障があ
つても小さなことはときには我慢して大きなものに向
つて、大きな国の行くべき方向に関して即ち小を捨てて大につくということでありますから私はそういうことを深く信じて疑わざるものであります。でありますからそういう方向を切に
岡崎外交の方針としてこの際お尋ねしたい。そういう方向でおやりになるのかどうか。
それから相即応して
考えられることは日英の
外交であります。日米との
関係に伴うところ必ず私は日英の
関係というのは、そこにいわゆる日英親善の深いつながりというものを決してこれは等閑に付してはならない。日米のこの基調
外交が行くところに必ず日英というものの併行した行き方があるのでありますから、そういうことに対しまして私は深い関心を日英
外交、いわゆる日英親善の上に深い理解というものを
外務大臣はお持ちを願いたい。併しこれに対しましてどういうお
考えを持
つておられるかということは大変長くなりますから一応この程度にいたしまして、今申上げましたいわゆる平和條約に対しまする非常に私はこれは大切なことだと思います。まあ今申上げた
通り、私は領土の問題を申上げたのでありましたが、南西諸島のごとき問題も私は米国自体が今日はさだめて何か過ぎたる心配をしてあのような処置をいたしたのじやないかということを臆測するものであります。臆測でありますからときに違
つていることがあると思いますが、当然ああいういわゆる信託統治領として一日も早く米国は
我が国に返したい、併しまだ日浅いのでありますからそういうこともできないということに対しましては、やはり我がほうからそういうことは申入れる、そうして
先方の立場を作
つてやる、取りなしをしてやる、こういうような方向に行くことが深くこの経験、蘊蓄を持
つておられる
岡崎外相に深く期待するところでありますから、これらの諸点につきまして一応御
説明をお願いしたいと思います。