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政府委員(倭島
英二君) 今日まで現在の賠償問題の状況の極く概要を申上げます。
御承知の
通り賠償問題は、昨年のサンフランシスコにおける平和条約の十四条に基きまして規定せられておる賠償
関係の問題でございますが、特にこの賠償問題につきましてはインドネシアとフィリピンの二国から、できるだけ早く
日本と平和条約に基く賠償問題の協議をし、更に問題を
協定したいという意向の表明がありましたので、御承知の
通りインドネシアからは昨年十二月から本年の一月にかけまして賠償
使節団が
東京に参りました。その際に数回に亘り正式の会談並びに非公式の会談がしばしば行われたのでありますが、その結果一月の三十一日に双方の
政府から発表いたしましたような賠償に関する中間
協定案が
協定されたわけであります。この賠償中間
協定案は、平和条約の発効後速かに双方の
政府が調印をするということを双方の
政府に勧告をするという建前の了解でございまして、まだ中間
協定は案の程度でございまして、
協定そのものにはな
つておりません。併しながら成るべぐ早くインドネシアとしてもこの賠償問題についての
一つの見通しを立てたい、その見通しを立てることが、インドネシアにおけるところの平和条約の批准と密接なる
関係を持
つているから、成るべく早く見通しを立てたいという強い
要望がありまして、
日本政府といたしましても平和条約の批准の問題に強い関心を持
つております
関係上、インドネシアといろいろ話をしまして、先般発表のような了解に達したわけであります。インドネシアとの賠償に関する中間
協定案の内容は、戦争損害そのものについては現在まず双方において合意に達するわけに行きませんで、
従つてその問題は将来又討議をする。それから賠償総額ということにつきましても、ほかの賠償を請求する国の要求額がはつきりしない以前においては、
日本としてはこれに幾ら賠償をするかという総額は
協定し得ないということをインドネシアのほうも了承いたしまして、賠償総額と申しますか、賠償の総額の問題はこれ又将来の
会議で決定をすることになりまして、先般の
会議のときに了解に達しましたことは、賠償とは一体どういうことをやるのかという、そのことについて平和条約に書いてありますものを多少具体的にきめたというのが実際の成果であります。インドネシアのときにきまりましたその賠償の内容は、主だつたものが四つございまして、この
協定は勿論平和条約に基くものでありますが、第一は、製造加工に対して
日本側が役務を提供するというのが
一つ。それから第二は、沈船引揚に対して役務を提供するというのが
一つ。それから農業、工業、その他銀行業とか、いろいろな
関係に対して技術的な協力をするというのが
一つ。それからインドネシアの人を
日本で技術的に教育するというのが
一つ。大体この四つの大きな種類に亘りまして
日本側が将来
協定される賠償の総額のうちで、それから
日本の経済力の許す
範囲において役務を提供する、こういうのが先般の了解の実体でございます。勿論これだけの
協定了解ではインドネシア側も満足し得ないということで、
大分議論があつたのでありますが、結局現在の状況としては止むを得まいということで、この前の中間
協定案に
なつたわけであります。なおその際に、今年の一応五月頃更に次の
会議をインドネシアで開いて、できれば最終的な
協定をしたいということにな
つておりますけれども、それもほかの求償国との
交渉状況によ
つては、更にその時と所の問題は又話合いをしようということにな
つております。それがインドネシアの賠償
関係の大雑把な状況でございます。
それからなおフイリピン
関係でも、インドネシアに次いで速かに
日本と
交渉を開始したいという希望があり、更にフィリピン
政府から、
日本側から
代表団を派遣しろという要求がございましたので、御存じの
通り日本から津島全権が現在マニラに参りまして、フイリピン
政府と
交渉中であります。フイリピンとの
交渉の模様は、これも新聞等で御存じと思いますが、これまで二週間余りも
交渉しました結果、まだ妥結に
至つておりません。フイリピン側としましては三つの大きな要求を持
つておりまして、
一つは戦争損害額、即賠償額ということで、八十億ドルを
日本側が支払え、第二の点は十年か十五年の間に支払え、それから第三の点は平和条約が発効する以前においても何らか
日本側が誠意を示す意味において、中間賠償をやれという、三つの大きな要求を出して参りまして、これに対して勿論我が
代表団のほうでは諸般の状況を
説明し、インドネシアのときの例等の話を折り衝をしておるわけでありますが、結局又最近、フイリピン側と極く最近問題にな
つております傾向は、賠償の総額というもの、或いは賠償の支払期間というものは現在きまらないかも知らないが、賠償の全体の八十億のうちのせめて一割、八億ドルに相当する賠償支払について、何らか
日本政府はフイリピン側と約束をしろというのが現在のフイリピン側の要求であります。目下その件につきましては
日本政府において研究中でございます。
なおほかの国も、将来条約
関係が結ばれますならば、ビルマなどもサンフランシスコ条約の条項に倣いますれば、同様の賠償問題が起るかと思いますが、まだ条約
関係が生じておりませんので、まだ問題にな
つておりません。
それから仏印三国等においても賠償の問題が起り得るかと思いますが、これもまだ賠償問題は直接に取上げられておりません。その他の国もまだ何ら賠償問題の
交渉は問題とな
つておりません。極く概要を申上げますと、賠償問題は今日はそういうような状況でございます。