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1952-04-03 第13回国会 参議院 外務・法務連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年四月三日(木曜日)    午前十時五十九分開会   —————————————  委員氏名   外務委員    委員長     有馬 英二君    理事      徳川 頼貞君    理事      野田 俊作君    理事      吉川末次郎君            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            中山 福藏君            岡田 宗司君            金子 洋文君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            西園寺公一君            兼岩 傳一君   法務委員    委員長     小野 義夫君    理事      宮城タマヨ君    理事      伊藤  修君    理事      鬼丸 義齊君            加藤 武徳君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            長谷山行毅君            岡部  常君            川上 嘉市君            江田 三郎君            吉田 法晴君            齋  武雄君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   —————————————  出席者は左の通り。   外務委員    理事            徳川 頼貞君            吉川末次郎君    委員            杉原 荒太君            團  伊能君            平林 太一君            伊達源一郎君            中山 福藏君            加藤シヅエ君            大隈 信幸君            兼岩 傳一君   法務委員    委員長     小野 義夫君    委員            加藤 武徳君            左藤 義詮君            白波瀬米吉君            長谷山行毅君            岡部  常君            齋  武雄君            一松 定吉君            羽仁 五郎君   政府委員    外務政務次官  石原幹市郎君    外務事務官    (外務大臣官房    審議室勤務)  三宅喜二郎君    入国管理庁長官 鈴木  一君    入国管理庁審判    調査部長    鈴木 政勝君   事務局側    常任委員会專門    員       坂西 志保君    常任委員会專門    員      久保田貫一郎君    常任委員会專門    員       長谷川 宏君    常任委員会專門    員       西村 高兄君   —————————————   本日の会議に付した事件 ○ポツダム宣言受諾に伴い発する命  令に関する件に基く外務省関係諸命  令の措置に関する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○外国人登録法案内閣提出衆議院  送付)   —————————————    〔外務委員会理事徳川頼貞委員長席に着く〕   —————————————
  2. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) それでは只今から外務法務連合委員会を開会いたします。  外国人登録法案及びポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案を議題といたします。先ず両案につきまして提案理由説明を求めます。
  3. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案提案理由を御説明いたします。  この法律案平和條約の発効に伴ういわゆるポツダム命令措置の一環として外務省関係の諸命令の改廃をしようとするものであります。外務省関係ポツダム命令出入国管理令外国人登録令北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令朝鮮人中華民国人本島人及び本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿兒島県又は沖繩県に有する者登録令及び入国管理庁設置令の五件でありますが、このうち出入国管理令及び入国管理庁設置令につきましては、一部改正の上存続し、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令及び朝鮮人中華民国人本島人及び本籍を北緯三十度以南(口之島を含む)の鹿兒島県又は沖繩県に有する者登録令は廃止することとし、又外国人登録令に関しましては、この際これを廃止した上、新たにこれに代るべき外国人登録法を制定することとし、別途法律案を提出いたしております。  この法律案の主な内容といたしましては、第一は出入国管理令及び入国管理庁設置令の一部を改正することであります。即ち占領終結に伴い、現行の連合国最高司令官による入国許可の制度その他占領に附随する内容の諸規定を削除すると共に、平和條約の発効に伴い新たに日本国籍を離脱する朝鮮人及び台湾人に対する取扱い等経過規定を設けることであります。第二は北緯二十九度以南の南西諸島人内地渡航制限の撤廃であります。現在占領下特殊事情として行われております内地渡航の制限は、平知條発効後においては、南西諸島本邦との関係を考慮し、将来特別の事情がない限り、この地域より内地渡航の自由を確保いたしたい考えでございます。第三は出入国管理令及び入国管理庁設置令を、平和條発効後も法律として効力を與え存続せしめることであります。この二つの政令は昨年十一月、我が国入国管理に関する既存の法令及び機構を再検討し、一般に認められた国際慣行に一致せしめ、司法保護組織又は警察組織と全く関係のない機構の下に外国人管理業務が運営されるべきであるとの連合国最高司令官の覚書に基いて制定されたものであります。この趣旨精神は、平和條発効後も飽くまで尊重し維持すべきものと考えまして、取りあえずこれを法律に切り替える措置を講じた次第であります。  以上が本法律案提案理由でございます。何卒愼重御審議の上、速かに御可決あらんことを切望いたします。  次に外国人登録法案提案理由を御説明いたします。  現行の外国人登録令は、昭和二十二年五月ポツダム勅令として終戰後における最初の外国人管理法規として制定実施せられたものであります。その後昭和二十六年十一月出入国管理令の施行に伴い、一般外国人出入国については管理令の適用を受けることとなり、従つて外国人登録令一般外国人登録関係朝鮮人及び台湾人出入国の規則とがその内容をなすに至りました。  平和條発効後においては、朝鮮人及び台湾人は、日本国籍を離脱し、外国人として出入国管理令の適用を受けることと相成ります。従つて現行外国人登録令連合国最高司令官入国許可及びこれに附随する不法入国者退去強制等規定外国人登録令としては不必要となり、ここに根本的な改正を必要とするに至りましたと同時に、登録関係規定内容においても不備な点が多々ございますので、この際政府としましては、外国人登録令を廃止し、新たに外国人登録法を制定いたしまして、平和回復後の在留外国人管理の適正を期して参りたい所存であります。  以上がこの法律案提案理由であります。何卒慎重審議の上、速かに可決せられるよう希望いたします。  提案理由説明に続きまして順序といたしまして法案の逐條約な御説明をいたすわけでありますが、その前に現在の出入国管理制度がどういう経違の下に創設されたのか、又これが現在如何ように運営され且つ平和條発効後において如何なる問題をどのような方針で処理されるのか、その大要を御説明いたしまして、法案審議の御参考に供したいと存じます。  第一に出入国管理制度の今日に至りました経緯を申上げます。御承知のごとく終戰前における我が国外国人出入国及び滞在に関する管理行政は、内務省の管轄の下にいわゆる外事警察機構の下に内務省令でその取扱規定を定めていたのであります。終戰に伴いこれらの機構は一切停止せられ、占領軍の直接管理の下に置かれました。即ち朝鮮人台湾人を含めた外国人出入国連合国最高司令官許可を必要とし、これに対する事務は総司令部の中央及び地方の機構の下で処理されることに相成りました。昭和二十二年五月に至り初めてポツダム勅令として外国人登録令が施行され、占領軍管轄下において国内的な措置がとられるに至りました。更に昭和二十四年八月、出入国管理に関する政令が制定せられ、総司令部の行う出入国管理の下に不法入国の取締その他国内行政機関の行う事務及び実施に必要な機構が定められ、外務省に現在の入国管理庁の前身である入国管理部設置されるに至つたのであります。昭和二十五年二月二十日、連合国最高司令官から入国管理に関する既存の法令及び機構を再検討し、これを一般に認められた国際慣行に一致させるために必要な措置をできるだけ早くとるべきことを指令した覚書を受けまして、更に同年九月十五日附の覚書で出入国管理に関する件の覚書によりまして、不法入国者又は不法在留者司法保護組織又は警察組織と全然関係のない別個の機構に收容して所要の手続をとるべきことを要請されたのであります。これらの覚書に基きまして政府昭和二十五年九月三十日、ポツダム政令を以て出入国管理庁設置令を制定され、同年十月一日から外務省の外局として出入国管理庁が発足したのでありますが、これに対し総司令部側から、司法保護組織又は警察組織と別個の独立した新機構設置を見たことはいいが、不法入国者に対する退去強制等手続が依然として司法手続を基礎にしておる点は、一般国際慣行にマツチしていないとの理由を以て、改めて新手続令を制定すべき旨の要望があつたのでございます。その結果政府におきましては、昭和二十六年二月二十八日ポツダム政令を以て、不法入国者等退去強制手続令を制定いたしましたのであります。然るに右の手続令主要部分の実施に先立ちまして、たまたま本問題のため総司令部アメリカ本国から招聘しました米人顧問から、右手続令は実行上難点が多いこと及び講和を控えて單に退去強制手続のみならず、出入国全般亘つて手続を含んだ包括的な管理令を制定すべき旨勧告がありまして、総司令部側においてもこの勧告を採用いたしました結果、出入国全般に亘る諸管理規定いたす出入国管理令の制定を見るに至つたのであります。同時にこの政令を運営するに必要な入国管理庁設置令を政定いたし、ここに連合国司令官の覚書にございました国際慣行に一致した法令と機構との整備を見るに至つたのであります。ただこの二政令は、連合国司令官出入国管理の権限との関連におきまして、即ち直ちに法律化できない実情に置かれておるので、取りあえずポツダム政令として昭和二十六年十月四日公布いたし、同年十一月一日から施行いたしまして今日に至つた次第でございます。  第二にこれらの政令内容についてその概略を申上げます。出入国管理令につきましては、出入国管理の方式といたしまして、一般的に承認されました国際慣行に基いて外国人入国は原則的に自由であるとし、ただ上陸のための條件に適合していない場合には入国できないものといたしております。この考え方は、従来の外国人登録令第五條の規定が、外国人は原則として本邦入国することができないものとし、例外的に連合国最高司令官許可によつてこの禁止が解除されるという特殊な管理方式と正反対の立場に立ち、更に寄港地上陸観光上陸転船上陸緊急上陸及び水難上陸のような特例上陸についても、一般国際慣行に合致するよう十分な配慮が払われております。又入国制限事由及び退去強制事由は、本来その国の国内事項ではありますが、いずれも先進諸国の例に倣つて合理性のある規定を設けております。更にこれらの処分はすべて行政処分によつて解決されますが、この手続人権保障を旨とし民主的な運営を期しております。本邦に在留する外国人管理につきましては、個々の在留資格及び在留期間を定めまして、著しい逸脱のないよう規制いたしております。最後に日本人の出国、帰国につきましても、その方法を規定しまして、密出国のないよう注意を払つております。  入国管理庁設置令につきましては、出入国管理令施行に伴つて生ずる権限、事務等を能率的に運営せんとするものでありまして、出入国管理に関する任務を一体的に遂行する責任を負う唯一の行政機関としての立場を明らかにし、本庁には長官官房実施部及び審判調査部を置きまして、それぞれの任務を定め、附属機関としましては、入国管理庁研修所及び入国者收容所を設け、特に研修所におきましては出入国管理という新らしい重大職責、即ち外国人を相手に直接いろいろな行政手続をすることは極めて困難な上に、日本対外的評価にも関連いたします国の機関として重大な責任を伴うところの仕事でありますので、経験者のいないこの分町に、有能な職員を養成することを期しております。  更に地方支分部局といたしまして、現在全国に十一カ所の出張所を設けまして、これに入国審査官及び入国警備官を配置いたして、それぞれ必要な任務を遂行させまして、最後に関係行政機関の協力に関する規定を設けて、この仕事が円滑に運用できるようにいたしてあるのであります。今般昭和二十年勅令第五百四十二号ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件の廃止に伴いまして、外務省関係ポツダム命令のうち、特にこの二政令のみを一部改正の上法律化いたそうとする政府の意図は、以上申上げました通り、飽くまでもこの二政令国際慣行と一致するように立案されたものであり、我が国平和條発効後に国際社会の一員となつた場合におきましても、そのまま法律として効力を得せしめて決して不都合はないものと信じ、ここに本法律案として提案をいたした次第でございます。  第三に最近問題となつております朝鮮人及び台湾人出入国管理令との関係を申上げます。昨年十一月、管理令が施行されました当時、朝鮮人台湾人はこの特殊な国内法上の地位に鑑みまして、管理令の適用から除外をいたし、従来通り外国人登録令を適用することといたしました。併しながら平和條発効後、これらの者は日本国籍を離脱し、外国人となるわけであります故、出入国管理令の適用については、一般外国人と同等の取扱をし、差別待遇はしないことを原則といたしますが、その特殊性に鑑み国籍の転換に際し、適切妥当な経過的措置が必要であると考えております。その内容につきましては、目下進行中の日韓会談で話合いが行われておりますので、その結果が決定次第別に法律を以て規定することといたしまして、それまでは取りあえず平和條発効後も引続き本邦に居住できるように、今回提案した法律規定を設けている次第でございます。朝鮮人台湾人に対し、国籍転換に際し管理令上如何なる取扱をするかは、日韓会談の結果を待たねばならない次第でありまして、政府としましては、現在日本に居住する朝鮮人台湾人に対し人道に反するような不当なる取扱をする意図は毛頭ございません。従つてこれらの人たちが善良なる外国人である限りは、日本における居住は確保されるのでありますが、従来ややもすれば政府の真意を曲解する向があることを誠に遺憾に存じております。  最後に、平和條発効に伴いまして、現在連合国最高司令官の有する外国人日本への入国許可の権限もなくなり、名実共国際社会の一員として日本政府が自主的に外国人管理事務を遂行することとなりますが、その責任官庁たる入国管理庁としては、只今申しました沿革に示された人権尊重根本精神を堅持いたしまして、愼重な態度を以て今後の事態に処して遺憾なきを期して参りたいと思つております。  以上簡單でございますが、説明を終ります。  なお、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案内容について御説明を申上げます。  法律案の第一條は、出入国管理令の一部改正でございますが、第二点は、外国人の定義の改正でございます。従来占領軍関係規定がありましたのを削除いたしたのであります。第二点は、在留資格の取得の規定を第二十二條の二として新たに加えたのでありますが、これは日本人外国人となつた場合、又は出生その他の事由によつてまだ在留資格を持たないで事実上本邦に在留することとなつた場合においては、現行の出入国管理令では取扱ができないので、かかる場合に速かに在留資格を取得せしめんとする規定を設けたのであります。第三点の第二十三條の改正及び第四点の第二十四條第一項第四号の改正は、別に本国会に提出いたしました外国人登録法案に関連する字句の修正の改正でございます。第五点の第二十四條第一項に新たに第七項を加えましたこと、及び第六点は第七十條に新たに第八項を加えましたことは、只今述べました第二十二條の二の規定に違反した場合の措置規定したものでございます。第七点の附則第一項但書の削除は、従来日本国領事館等の査証が行われなかつたので、経過規定として設けられていた規定平和條発効後は必要ないものと認めて削除したものでございます。第八は附則第三項から附則第十八項までの削除でありますが、実は連合国最高司今官の入国許可権が、出入国管理令施行と同時に日本側に戻る見込で、その場合の経過規定を書いていたのでありますが、総司令都側の都合によりましてそれが延びてしまいましたので、実際は無意味になつてしまつたのであります。そこでこの際これを削除いたし次に御説明申上げますこの法律案の第二條におきまして新たに規定いたしたいと存じております。  次に第二條は、出入国管理令の一部改正に伴う経過規定でございますが、前に申上げました通り連合国最高司令官入国許可権の停止に伴いまして、その許可を得てすでに本邦に在留している外国人如何ようにして出入国管理令を適用して行くかについて詳細に規実いたしております。ここで特に申上げたいことは、日本国との平和條約の規定に基き同條約の最初の効力発生の日において日本国籍を離脱するいわゆる朝鮮人台湾人取扱でございますが、これらの新たに外国人となる者に対し、出入国管理令の適用については一般外国人と同等にし、差別的待遇はしないことを原則といたしますが、その特殊性に鑑みまして国籍の転換に際し適切妥当な経過措置をとることは必要であると考えまして、これらの人たちを二つに分けまして、昭和二十年九月二日以前から引き続き本邦に在留していた者については、別に法律で定めるまではそのまま在留資格を有することなく在留せしめ、例えば日韓会談等によりましてこれらの措置がきまりました後に法律を以て規定いたすこととし、これを第二條第六項に規定いたしております。同年九月三日以後に入国したものについてのみこの際一般外国人と同様に規制することといたしております。  第三條は、入国管理庁設置令の一部改正でございますが、この内容は、その一は、外国人登録令の廃止に伴う改正、その二は、北緯二十九度以南の南西諸島に本籍を有する者の渡航制限に関する臨時措置令の廃止に伴う改正、その三は、札幌出張所の増設であります。最後の札幌出張所の増設につきましては、予算措置もできておりますので、北海道の重要性に鑑みて、早急に実現いたしたいと考えております。  第四條は、将来存続すべき命令について規定いたしたのでありますが、出入国管理令及び入国管理庁設置令は、第一條及び第三條におきまして改正いたしましたものを将来存続せしめたいと考えております。  第五條は、命令の廃止でございますが、提案理由で申上げました通りでございますので、改めて御説明するまでもないと思います。  附則については第一項は、この法律の施行の日を、日本国との平和條約の最初の効力発生の日といたしましたことは、今国会に各省ごとに提案いたしておりますポツダム政令措置に関する法律案と同様でありますが、ただ先ほど申上げました入国管理庁設置令改正札幌出張所の増設に関しましては会計年度との関係上、昭和二十七年四月一日から施行いたしたいと思います。第二項は字句の整備の規定でございます。  以上で簡單ではありますが、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置に関する法律案内容についての御説明を終らせて頂きます。  次に外国人登録法案内容について御説明申上げます。  この法案は、現在施行されておりますポツダム政令、即ち外国人登録令昭和二十二年勅令第二百七号)を廃止し、新たにこれに代わるものとしての内容を有するものであります。  この法案の主な点を挙げますと、(イ)在留外国人は、一定期間内に市町村長に対し登録申請しなければならないこと、(ロ)市町村長は、外国人の呈示する旅券に基いて正規入国者たることを確認して登録証明書を交付すること、(ハ)外国人は、その登録証明書がき損又は汚損したり、或いは紛失したりした場合には改めて市町村長に対して交付を申請しなければならないこと、(ニ)外国人は、住所を変更したりその他最初の登録事項変更を生じた場合には登録証明書の書換を申請しなければならないこと、(ホ)外国人が病気その他の理由によつて申請ができないときは代理人がそれをしなければならないこと等でありますが、以下この法案を逐條的に説明いたしますと次の通りであります。  第一條におきましては、外国人登録法を制定する目的を規定し、第二條におきましては、この法律の適用を受けます外国人の定義を規定すると供に、外国国籍を二つ以上持つている外国人国籍取扱規定しております。  第三條におきましては登録証明書の交付の申請手続規定いたし、在留外国人登録申請する機関と、申請に必要な書類を明らかにいたしますと供に、申請市町村長に対してなさるべきことを規定いたしております。第四條におきましては、登録申請があつたときは、市町村長は先ずその外国人に関して一定の事項を記載した登録原票を作成することを規定し、更にこの登録原票保管運営等に関して規定をいたしております。第五條におきましては市町村長登録証明書交付義務規定いたしていります。第六條におきましては登録証明書のき損又は汚損した場合の引替交付手続規定いたしております。第七條におきましては外国人登録証明書のそのものを失つたり盗まれたりした場合の再交付の手続規定いたしております。第八條におきましては外国人居住地変更する場合の手続規定しております。第九條におきましては、本人の意思とかかわらなく行われる居住地変更、即ち都道府県又は市町村廃置分合境界変更のあつたことによる当該外国人居住地変更の場合の手続規定いたしております。第十條におきましては、居住地変更の場合以外に登録事項変更が生じた場合の手続規定いたしております。第十一條におきましては、交付いたしました登録証明書は二年間有効であること及び二年の有効期間が満了する一カ月前にその登録証明書市町村長に返納し、第三條におきまして規定いたしました最初の登録申請を同じ手続をとつて新らしい登録証明書の交付を受けることを規定いたしております。第十二條におきましては、登録証明書の返納の手続規定いたしております。  第十三條におきましては、外国人登録証明書を常時携帶していなければならないことを規定しております。この常時と帶義務は我々が外国を旅行し滞在いたします場合に旅券を常に肌身離さず持つていなければならないのと同じでありまして、出入国管理令第二十三條と関連いたす規定であります。出入国管理令第二十三條におきましては個人は旅券又は各種の特別上陸許可書を携帶しなければならない義務を課すと共に、外国人が若しも登録証明書を持つておる場合は、旅券又は上陸許可書を携帶しなくとも遠反を問われないことを規定いたしておるのであります。第十四條は指紋の押捺の規定でございまして、外国人登録証明書の交付を申請するとき、引替え交付を申請するとき、再交付を申請をするとき又は有効期間が満了してあらためて新らしい登録証明書の交付を申請するときには、指紋を押なつしなければならないことを規定しております。この規定登録に関しては初めての試みでありまして、後に御説明いたしますように、実施の日や実施手続はすべて政令に譲りまして慎重を期しているわけであります。  第十五條におきましては、これまで御説明いたしました申請、届出、返納等の行為に関しまして、もし、外国人が十四歳に満ない場合とか病気その他の事故のため自分自身でこれを行うことができない場合には、一定の代理人か一定の順序で当該外国人に代つてこれを行うことを規定しております。第十六條におきましては、市町村長登録原票の書換を行つた場合のことを規定しております。第十七條におきましては、申請、交付、返納及び届出の手続とこれに必要な各種書類の様式を規定しております。第十八條及び第十九條におきましては、この法律規定に違反した外国人に関する罰則を規定しております。第二十條におきましては、過料を科す裁判所の管轄を規定しております。  附則の第一項におきましては、この法律の施行の日を平和條発効の日にいたしておりますが、先に御説明いたしましたように、指紋押なつの規定とそれの違反に対する罰則の規定は別に政令で定めることにいたしております。従いましてこの法律が施行されましても、指紋に関する二つの條文は必ずしも施行されることはないわけであります。附則第二項におきましては、ポツダム政令である現行の外国人登録令を廃止することを規定しておりましす。以下はこの法律の実施に伴いまして外国人登録令の廃止との間に生ずる経過措置規定いたしておるわけでございます。  以上極めて簡單に各條につきまして御説明申上げましたが、要は本法は單なる手続を定めたものでございまして、市町村において登録事務を扱つております人たちを対象として考えて規定をいたしております関係で、法律としてはやや詳細に過ぎると思われる規規定もある次第でございます。以上で終ります。
  4. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 只今説明されました二案一括して御質問がございましたら、どうかお願いいたします。
  5. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 政府に向つて先ず第一に伺つておきたいのですが、この出入国管理に関する新らしい立法、それから外国人登録に対する新らしい立法、こういう今提案されておりますような措置日本出入国し、又は永住するところの外国人に対する取扱規定しようとしておられますが、日本人外国においてこれと同じような取扱を受けることを望んでおられますか、それを伺つておきたいと思います。
  6. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 今回のこの法令を制定するにつきましても、外国の諸事例等を十分参考にいたしまして、こういう法制を整備したものでございます。
  7. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の何つておるのは、もう少し詳細に且つ具体的にでありますが、御承知のように、これは関係政府のかたがたもよく御承知のように、不幸にして従来日本国民は諸外国において必ずしも平等の原則によつてのみ取扱われていたのでないことは只今申上げるまでもありません。そうして又そういうことが現在も或いは残つている面もあり、又将来も場合によつては存続するのじやないか、これは非常にいろいろな点で長い間の、明治以来の問題であります。そういう意味で、今御提案になつております新らしい立法の中に規定されておる條項、それらの條項について、これは政府当局において十分御承知だろうと思いますが、対等の原則に基いていないものが多々あるようでございます。これを日本日本出入国する、或いは日本居住しようとする外国人適用しようとすることは、延いては後に或いは同時に日本国民がいずれかの外国出入国し、又は居住しようとする場合に同じような詳細の規定を持つた取扱を受けるということを防ぐ上に、果して有利であるというふうにお考えになるか、その平等の原則に反した取扱を受けることを防止する上に有利であるとお考えになるか、不利であるとお考えになるか。これは今政務次官のお答えのような一般的、抽象的な問題でなく、それぞれの條項においてもそういうふうの今のようなお答えで、今後各條の審議に入つて、質疑に対して応答をなされるかどうか、その点について先ず明確なお答えを伺つておきたいと思う。日本国民もこういうふうに扱われることを期待しておるのだというふうにお考えなのか、日本国民はこういうふうに扱われることこは期待していないのだというふうにお考えになるのか、その点、これは通り一片じやない。あとから各條項について、最初のお答えが真実なりや虚僞なりやは直ちに、明らかになることですから、その意味でもう少しはつきりした、そうして念のため申上げておきますが、取消しの将来にない形においてお答えを願つておきたい。
  8. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) どうも余り嚴格な枠をはめられるようでありまするが、先ほども申上げましたように、今回のこれらの立法につきましては、国際慣行等に十分則りまして、諸外国の、殊に民主主義的な諸国の立法例等も十分参酌いたしましてこの諸法例を制定したものでありまして、人権尊重の思想にも則つてつておる、まあここらを主眼点としておるのであります。それで先ほどもちよつと言われました外国のいろいろの扱い等についてでありまするが、移民法その他の関係においては、先方において相当の日本に対して制限をしたり不利なものもございまするが、出入国管理等に関しまする法制につきましては、大体相互主義で、向うがやつておることをこつちがやる、こういうような建前で行つておりまするので、別段こういう法制を制定することによつて日本が非常に不利を受ける、こういうことは私は余りないのではないかと思います。各條の御審議によりましていろいろ又御意見があるであろうと思いまするが、そのときに大体我々はこの線に則つて立案検討したものであるということを一応申上げておきたいと思います。
  9. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今極く概括的な御説明を伺つた中にも甚だびつくりするような規定があります。私もしばらく外国に旅行したことがあり、当時このような取扱を受けた覚えがないのです。又このような取扱を受けるようなことであれば、これはとても外国に行く気にはならないだろうというように思いますが、そういう点について政府は相互主義に基いてこつちがこういう取扱をすれば向うでもこういう取扱をするということを期待するとおつしやるですが、それに間違いないのですか。
  10. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) どの條項をお指しになつたのかよくわかりませんが、私が今申上げましたのは、いわゆる国際慣行に則るとか、人権尊重の建前をとるとか、大体相互主義の考え方で行くとか、こういうことは、大原則でございまして、又国には国によりましてそれぞれの事情のあるところもあるのでありますから、国々によつて若干のそれは例外はその国の内外の国情によつてあると思います。私は先ほど申上げたのは、こういう出入国管理であるとか、或いは外国人登録であるとか、こういうことについての原則的な考え方はこういうところから出ておるのであるということを私は申上げたわけなんであります。
  11. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それは各條項についてということを言及されましたが、今度は原則というふうに戻られたのですが、言うまでもなくこの講和なり或いは国際関係なりというものは、これは国際的にも言われているように最惡の場合について守らなければ守られるものではない。で、我々も日本が置れておる状態、又日本出入国或いは居住される外国人関係して、日本として特にさまざまに政府が苦慮される問題があるということを了解しないではありません。その点はよく了解しております。併しながら、そういうその最惡の場合であるからしてこういう措置をとるということをなされますと、それがこの最惡でない場合についてもそうした措置が影響を及ぼすことが多いのです。これはその法について常に最も恐れなければならない点であり、我我法務委員として特にこの問題について重大な関心を持つ一つの最大の点はその点です。これはこういう困る事情があるのだ、だからこういう立法をするのだというお考えでしよう、恐らく政府は……。併し不朽の格言としてあるように、法は最惡の場合に守らなければ守られるものではない。これは日本の場合にはこれこれこういう事情があるのだからこういうことをしたのだが、どうかそれで了承してくれと言つても、相手国では、そういうことを言うのならこつちもこれこれこうい事情がある、従つてそういうふうな点はこつちとしてはこういうふうにするというようになる。これは政府においても十分愼重にお考え頂かなければならない点だと思う。で、御承知のように、政務次官もよく御承知でありますが、過去において日本が不平等な取扱を受けて実に苦んだ。これは移民に関してばかりじやない。移民に関して、又出入国その他居住の場合にもさまざまの困難な問題があり、そうしてそれらのときにこれを論破するに、日本の側でも不公平な取扱をいたしておりますとそれを破るのに如何に困難であるかということは、これは政務次官も、政府もよく御了解だろうと思う。そういう意味で私は今御提案になつておりますその全体を通じまして、眼前の問題、眼前日本が、政府が困つておられる問題というものにいささか目が眩み過ぎて、それでこれが相手方の口実となつて、今度は日本国民が外国において非常に煩瑣な、そうして場合によつては侮辱的な、或いは事実その出入国なり、居住なりが不可能になるような、そういう取扱を受ける慮れがあるのじやないかという点について十分お考えになつたのかどうか。お考えになつていなかつたならば率直にそういう点は余り考えていなかつたというふうにおつしやつて頂くほうがいいのじやないかと思います。重ねて、これは重大な点でありますから、特に政府責任のあるお答えを頂いておかにやならん。
  12. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) どの点を指してまあ具体的に言われますのかわからないのでございますが、先ほどからたびたび申しましたように、この両法令は大体国際慣行に則つておる人権尊重の建前をとつておる。それからまあ原則としては相互主義的な考え方も取入れておる、こういうことを申上げたのでございまして、各般の、今後これから内容を御検討を願うわけでありまするが、そのときに具体的にこの点はどうかというようなことで御研究を願いたいと思うのでありまするが、我々といたしましては十分民主主義的諸国の立法例等も参酌いたしまして、別段この法令の中に不当苛酷な、不都合な條項を含んでおるとは我々は考えていないのであります。
  13. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それはどうもあとでお取消しになるのじやないかという虞れが多分にあるので、もう少し御相談下さいまして、この通り取扱日本人外国において受けるということを期待しているのだという御趣旨の御答弁でいいでしようか。それは重大問題だと思うのです。現に出入国管理長官はどういうふうにお考えになつておられるか。この通り取扱日本人外国において受けることを期待しておられますか。又外務大臣はどういうふうにお考えになつておられるか。総理大臣はどういうふうにお考えになつておられるか。その点をはつきり伺つておかないと逐條にはまだ入つていないのですから、どの條項がそういうふうに非常に心配になるかということは後に伺いますが、先ず根本的態度として、政府外国人をかように取扱う以上は、日本国民も外国においてかように取扱われることを期待しているのだと言われても差支えないのかどうか。先ずそれを責任のある御答弁を頂いておかなきやならん。
  14. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 私は、政府委員としてここに出ておるのでありまして、一応私の立場としての責任あるお答えを申上げておるわけであります。重ねて何回も申すようでありまするが、原則は大体そういう建前からとりまして、それから又その国の内外の情勢その他のいろいろな事情によりまして特殊の規定を設けにやならん場合もあるかもわからないと思うのでありまして、世界各国がこれと同じ、全然共通な管理規定、或いは相互規定というわけでは勿論ないと思うのでありまして、それで日本の現在の立場においては大原則の下に、まあこういう條項を整備する、法令整備するということが最も必要であるという考え方の下に、この法案を提出いたしまして、先般衆議院のほうの御審議を願つたこういうことであります。我々がこの法案を出しおりまする以上、これは現在において最も適当なる案であると思つてここに提案しておる次第であります。
  15. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 政府は私の今の念を押している質問に対して、原則的には平等の原則の上に立つておるつもりであるということを第に言われる。併しこれは若し外国日本国民に対して原則的には平等の見地に立つておるつもりである、各條項については又それぞれの理由があるというふうに言われた場合に、どうなさるおつもりか。それから第二に、日本は特殊の事情があるということをおつしやる。併しながらこれは又諸外国日本国民に対してそれぞれその国民として特殊の事情があるというように言われた場合にはどうなさるおつもりか。これらの点は私の質疑を氷解せしめることはできません。原則において中等の原則をとつたんだ、それから日本は特殊の事情があるのだということはさつき私が質問した。実は政府はこのような取扱日本国民が相手国から受けることを期待しているというふうに言うこともできないんだ。即ち日本の態度として正々堂堂と相互主義、或いは平等主義の上に立つことができないんだという結論をするよりほかはないように思います。これは今衆議院のことを言及されましたが、衆議院でどういう御審議をなさつたか、それは私の感知するところじやありません。    〔委員長代理徳川頼貞君退席、外務委員理事吉川末次郎委員長席に着く〕  そうして政府としても十分お考えにならなきやならないことは、我々が、日本国民が過去の長い間において国際的にさまざまな意味の不平等な取扱を受けて苦しんで来た、その当時のことを私は今提案理由の御説明を伺いながらまざまざと今思い出して、実に戰慄に堪えないのです。そういう点からお考えを願つているめでありますが、これ以上伺つても恐らくお答えはおできになれないだろうというふうに思いますから、私は次の機会に更に立入つて質疑をすることを保留しまして、これで打切ります。本日はこれで打切ります。
  16. 小野義夫

    小野義夫君 一つちよつと伺つておきます。今相互主義とおつしやると、これは法律は別に條約を締結しない外国人に対する一般的の規定であると思いますが、若し相互主義によつて入国を相互に、より寛大と申しますか、優遇的な相互の條約若しくはこれに類似する協約ができた場合においては、その国に対しての外国にはこの法律は行われないことになるのでありますかどうでしよう。その点を明らかにして頂きたいと思います。
  17. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この今回の法令は、つまり日本出入国する場合の一つの規制と、それから日本におりまする外国人はどういうふうにして登録するかという登録制度内容規定しておるのでございまして、先ほどまあめ私が申上げましたのは、こういう制度を作るについて、国際慣行に十分合致するように、則るように、諸国の立法例等も調べまして、出入国の公正なる管理を目的といたしまして、この規定を制定したものであると、それから又人権尊重の思想に従いまして、外国人の処遇の公正も期すると、こういう建前の下に、今回の諸法令整備しておる次第であります。それから相互主義ということをちよつと申上げましたのはこれは嚴格な意味ではないのでございまして、つまり大体各国とも大原則としては、勿論この国際慣行でありまするから、国際慣行とか人権尊重とかいうことでありまするから、大体各国もこういう趣旨の制度をとつておると、こういう意味のことを申上げたのでございまして、出入国を規制したしまする国内法としての全般的の規定でございまするので、或る国と特殊の條約ができたから、特殊のこの出入国、その国は別であるとかどうとか、そういう問題は別段ないのじやないかと思います。
  18. 小野義夫

    小野義夫君 今の御答弁でははつきりしないので、私のはこれは何らの打合せがない場合に、この法律として行われるのであつて、若し條約その他の方法によつてこの法律の除外と申しますか、除外例にするような協約があつた場合には、それが優先するのではないかということを質問しておるのであります。
  19. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) それはですね、例えば一例を挙げますれば、今回の行政協定のように、特殊の協定等ができました、そういう場合には旅券も要らない、自由に出入のできる、こういう特別の目的で、特殊な條約なり協定等ができました際には、これは勿論その條約なり協定によつて律せられる、これは勿論であるわけであります。そういう意味の質問でありましたならば、そういうふうでございます。
  20. 小野義夫

    小野義夫君 それならば、この法律は、まあ最低限、或いは最大限、これは法律は先ほど羽仁委員から申しましたごとく、最低限を規定するというのが立法の本旨であると思うのでありますが、まあものによりましては、見方によつては最大限とも思われるような規定があり得る場合におきましては、やはり日本国の特殊の事情によるものであるから、一般の現実において日本人がさような取扱を受けてないような他の頗る寛大な諸国家に対してもなお且つこれを強要して行くということの私は必要性を認めないのであつて、これらの諸国に対しては、現状若しくは現状よりももう一層寛大なる打合せその他をなす必要があると思われるのでありますが、その点のお考えはどうでありますか。
  21. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) これはですね、まあ大体事実上、殆んどすべての外国がこういう程度の大体の建前として取扱をいたしておるのでございまして、只今小野委員長からお話になりました特に今後、通商航海條約であるとか何とかによりまして、特別な目的のために、或いは特別な場合に、例外的な取扱規定が、條約、協定等がありまする際には、それによつて律せられるということは、これは又あると思うのでありますが、大体の出入国管理とか或いは外国人を如何にして登録するかということは、どこの国においても一応規定はしておるのでありまして、その規定は大体今回御審議を願つておる、こういう立法の形になつておるのであります。こういうことを申上げでおきます。
  22. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私さつき時間の関係で今日は私の質疑を打切ろうと思つたのですが、重大な問題がありますから、お許しを願つて続いて質疑させて頂きたいと思います。この法律、今提案されておる法律は、我々が見て非常に重大な問題だと思う問題が三つほどございますが、原則的に……。で、その原則的な三つの問題を質疑する前に、最近における国際関係の上での外国人出入国についてのさまざまな事件が起つておる。これは政府もよく御承知だろうと思う。これは言うまでもなく大きな戰争があつたり或いは又大きな戰争が起ろうとしているような時期には、国際慣行というものがその本来の正しい、公正な原則からしばしば逸脱することがあります。これは例えば、第一次欧洲大戰前は外国に旅行する場合には、外国の旅行が実に愉快であつた、自由であつた。ところが第一次欧洲大戰後外国に旅行した旋行者は、いずれも非常に不愉快な、非常に侮辱的な取扱を受けて苦しんだ。そうして第一次欧洲大戰が去つて暫らくして再びこの国際慣行がそういう点において極めて自由に且つ平等になつて、そうして第一次欧洲大戰前の愉快な、明朗な空気というものが回復しかかつておるときに、第二次世界大戰が起つた。そうして第二次世界大戰後には、その国際慣行上確立されたところの自由にして平等なそうして明朗なこの取扱というものを回復することが我々の今日の任務だと思うのです。ところが不幸にして国際間にいろいろな問題が起つておるために、今日これは日本ばかりではないのです。事たアメリカにおいても、或いはイギリスにおいても、フランスにおいても、どこでもこの出入国について最近頻々として事件が起つておる。中には実に国際慣行上確立された自由と公正との原則を覆えすのじやないかと思うような事件まで起つておる。最近特にこの問題を英国において識者が非常に重大視をしておる。そうしてこれは要するに最近の特殊の事情というものに基いて、国際間に成立しておるところの自由、そうして平等、そうして公正な諸原則というものを覆えすものじやないか、これは残念ながら日本においても、そういう問題がある。ですから根本として日本は、一体その国際慣行というものを自由に、平等に、公正な方法に持つて行くことに努力をするのか、それともそれをそうした公正、自由な原則というものを覆えし、そうしてそれこそ数性紀に亘つて確立せられて来た国際慣行というものを、この際めちやめちやにするほうに力をかすのかということは、私は或る意味において政党政派を超えて、又二年とか、三年とか、五年とかいうそういう短い期間を超えて、これは重大な問題になる。ですから我々は国会議員としていやしくも国際慣行を自由と公正と平等のほうに向けて行く努力こそしなきやならないので、そうして確立されて来た原則をぶち壊すほうに責任を負うということは到底できない。この点は政府においても十分いま一段とお考えを願つて、次の機会にお答えを願いたいと思うのであります。さて、そういう前提の下にここに非常に大きな問題になると思うのは、第一に、国際慣行並びに国内法或いは国際法、あらゆる国において確立されて来ている一つの原則を今提案されておるもので覆えしておる第一点は、疑いがあるということは、法律の上で疑うに足る十分の証拠がなければならないということは、実際これは新世紀に亘つて人類の努力の結果確立して来た証拠主義というものであります。ところがここに提案されている立法は、第一にこれを覆えしておる。疑う、思料するときはという言葉が使つてある、これは最近アメリカの立法にはそういうような法律があります。併しこれは国際的に非難を受けているものである。なぜ非難をするかと言えば、疑わしいと思うときにはどういうことをやつてもいいというのなら、これは民主主義以前に帰つちやうことです。專制主義に帰つてしまうことである。アメリカは最近非常に民主主義を放棄して、民主主義以前に帰ろうとしておられるのかも知れないが、日本においてそういうことをすることは許されない、それが第一点です。これは例えば第五章にそういうことが現われている。それからその次に、国際的に確立せられた又国内法としても確立せられた民主主義的な法の根本観念を覆えしておる第二点は、何人に対しても不当な取扱がなされる慮れがある場合には、それを救済する十分な法的措置というものがなければならないということは、民主主義の法の根本的な観念です。ところが第二十四條等においてはそれらが全く覆えされている。    〔委員長代理吉川末次郎君退席、外務委員会理事徳川頼貞委員長席に着く〕  それから第三に、近代の民主主義的な法の根本観念を覆えしているのは、近代の法においては人種とは或いは思想とか或いは性別とか、そういつた差別の上に立つてなすべきものではない。法は如何なる思想に対しても、又如何なる政治上の主張に対しても妥当するものでなければならない。さつき小野法務委員長が言われたように、法は必要にして十分の最小限度のところにとどむべきである。いわんや思想の自由というものに抵触することは許されないということは、現に先日法務総裁も公式の会合において、法は飽くまで、我々は法律家の立場を守つて、思想の取締のために自由に押入つたりすることは相成らんということを言つておる。ところが事実においてこれは現在提案されておる法律は、そういうことを覆えそうとしておる。最後に第四の問題、これは問題になると思いますのは、近代の法においてはいわゆるインフオーマー、密告者というものを排斥しておる。何人もインフオーマーとなるというようなことは望まない。ところが今提案されておる法律はそういう密告者を奬励するという立場をとつておる。これらの四点は特に個々の問題について質疑しなければならない点がありますが、政府は今近代法において確立された証拠主我を覆えそうとしているのか。政府は第二に、近代法に確立されておるいわゆる法の取扱において、若し不当な取扱を受ける慮れがある場合には、十分の法的の救済の手段というものを設けておかなければならんという原則を踏みにじろうとしておるのか。第三に政府は思想の自由というものをこれらの立法において覆えそうとしておるのか。第四に政府はいわゆる密告者、インフオーマーというものを奬励しようとしておるのか。そして同時に特にこの出入国及び登録に関して、日本国民が外国においてそういう取扱を受けることを希望しておられるのか。以上の点についてどういうふうにお考えになつておられるか伺います。
  23. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 私から一応原則的なことを答えまして、なお足らざるところは他の政府委員からお答え願うことにいたしまするが、例えば密入国を拒否する、不法の入国を抑えるということは、別に犯罪に対する処罰ということではないのでありまして、いわゆる一種の行政措置といたしまして、不当な者の入国を抑えましたり、或いは日本におることによつて害毒を及ぼす、公共の利害に非常に相反するという人の退去をしてもらう、こういうことはこれは大体どこの国でもあることでございまして、これは裁判とか処罰ということではないのでございます。この場合に一応と言いますか、そういうことであるという認定の下に疑いがあればやらなければならんことは、行政措置としてこれは止むを得ない当然のことではないかと思うのであります。それからそれらの処遇に対して極めて不法であり、不当であるという場合には、それに対するいろいろの苦情申立と言いますか、不法措置に対する救済的措置は十分講ぜられておると思います。それから人種、思想、性別の差別というようなことは、これは出入国管理令、或いは登録法等によりましては、別段そういう措置をとつておるとは思われないのでございますが、どういう点がそういう点に当りますか、具体的にお示し願いましてお互いに研究いたしたいと思います。それから密告者の規定でございますが、これは今回この法律だけが初めて作つた独特の規定ではないのでございまして、たしか米国の移民法、そういうものにもあると思うのでありますが、いわゆるこの日本にも潜在不法入国者が或る程度おるのではないか。捕捉困難な潜在不法入国者があるのではないか、こういう者を発見いたしますことは尋常普通の手段ではなかなか困難な場合もありますので、殊に面こういう規定をおいておるのでありまして、スパイ行動を奬励するというような考えではございません。止むにやまれぬ必要からいたしましてこの規定を挿入しておるような次第でございます。
  24. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今の御答弁はいずれも不幸にして私を納得させることができないことを甚だ残念に思います。第一に、これはいわゆる刑罰でないと言われるけれども、併しその際に人の自由を束縛するということを明瞭にこの法は規定してあります。人の自由を東縛する以上、それに対する証拠というものがなければならん、單に思料するというだけで、政務次官だつてそういうことにお会いになればさぞかし御不満だろうと思います。あなたをお疑いするという人があつて、あなたの自由を束縛するということはあなたの到底耐え忍ぶことのできないことであろうと思う。これは近代人の耐え忍ぶことのできるものではない。それから第二にたとえ刑罰でなかろうとも、その人の自由、人身の自由を束縛する以上、それを救済する十分なる法的手続というものがなければならない。これは近代の民主主義の原則の上において覆すべからざる原則です。それから第三に、思想の自由に立入るということは許されない。それから第四に、密告を奬励するということは許されない。アメリカでそういうことをやつているとおつしやるが、アメリカでやつていれば、何でも日本でやつていいというお考えではないだろうと思う。アメリカは最近随分突拍子もないことをやつています。現に米国の世論では、アメリカは英国におけるいわゆるインフオーマーを作ろうとしているという。併し英国においては誰でもいわゆるインフオーマーを憎んでいる。英国人というものはインフオーマーを大きらいだ、憎惡している。アメリカでは憎惡しないのかも知れません、というふうに識者が指摘しています。我々としてはどこでやつていようとやつていなかろうと、日本としても、さつき申上げたように、公正な方向に一歩を踏み出して行くという努力を盡すべきであつて、そうして小野委員長も先ほど言われたように、いやしくも最小限度の必要にして十分なる限度にとどむべきである。それ以上に踏み込むべきではない。ところが今のお答えでは、今私がお伺いしたような点についていずれも残念ながら我々をして安心せしめることはできない。これは更に政府の猛省を促さざるを得ません。
  25. 平林太一

    平林太一君 委員長に議事の進行をこの際求めたいと思います。今日は條文に対する審議でありますので、逐條審議に移ることを妥当と認めます。その前に私は只今羽仁君から全文に対しまして極めて批判的な御意見がありましたので、これは私は国際的にも甚だ我がほうといたしましては影響することを又考えざるを得ない。儀礼的にも考えなければならない事柄でありますから、これは申上げておかなければならんと思いますが、只今羽仁君のお話を聞いておりますと、この審議の前提におきまして、すでにこの内容が、甚だ対外的にこの法案内容が信義を失しておる、それから極端に申せば野蛮的である、幼稚であるというように批評しておりますが、私の見ました考え方はそうでありません。極めて対外事情というものを深く考慮いたしまして、我がほうにおきましては非常なる謙虚と、それから高い国際的な視野というものを深く取入れましてこれを作り上げたものである、かように考えるのであります。まさしくこの内容に至りましては、いわゆる相互主義と申しますか、それよりも遙に、漸く独立を迎えんといたしておるこの際において、先輩諸外国に対しまして非常な相互主義ということの中にも非常な謙虚を以ちまして、この法案内容を示しておる。ただ内容におきまして、そういう考え方が内容そのものに現われていないものに対しましては、これは審議の過程におきましてこれを修正、或いは反省させることは当然でありますが、全体を概括いたしましたものといたしましては、そういうことを多分にこれらにおいて示しておるということを私はこの際申上げたいと思います。我が国が独立国家といたしまして進評に当りまして、こういう出入国外国人の不自由を、又その権利を拘束するというようなことは予想だにも考えていないということを考えざるを得ません。ただいやしくも独立国家となります以上、我々は徒らに卑屈であつてはならない。いわゆる正義、自由、博愛、平等というものに対しましては、それを行なつて恐れざる独立国家としての出入国管理令をおのずから作つて行かなければならぬということを考えざるを得ません。現に終戰直後、私個人としてこれは申上げるのでありますが、昨日までは我が方から多大の恩義を受け、恩顧を受けておりました当時の俗語で申します朝鮮人或いは支那人というものが、か弱い女、子供に対して、終戰後いわゆる我が方の無抵抗になつたということに乘じまして非常なる迫害を加え、或いは非人道的な行為をいたしまして、そうして当時の我が国民がそのために容易ならぬ不遇にけいたという事実は今も私は忘れることができません。従いましてこの全文といたしましての私の考え方を今申上げて、そうしてこれに臨むということか明らかにいたしたい。羽仁君から極めて批判的なお話がありましたので、この際私といたしましては、そういうことを申すことが必要と認めましたので、これを申上げておく次第であります。
  26. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 平林君に申上げますが、質疑中でございますので、今伺いましたのは御議論だと存じますので、いずれ又討論の際にして頂きたい。
  27. 平林太一

    平林太一君 只今の私の発言に対しまして委員長が質疑中だ、それから議論である、こう言われたのですが、それに対しましては、私はそういうことを政府に示しまして政府の考え方はどうか、そういうことを伺うのでありますから、(笑声)私の申上げたことに対しまして次官からそれに対する見解を承わりたい。
  28. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 先ほど申上げましたように、いわゆる国際慣例を尊重し、人権尊重の建前からこの法制を整備しておるのでございまして、何ら国際正義、慣行に悖るような法案でないということを重ねて申上げておきます。
  29. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 私はこの重要な二つ法律案について傍聽者を制限されて秘密会の形をおとりになるような御意向のように考えておりますが、それは私は絶対に反対いたしたいと存じます。理由は、この二つ法律案日本人自身の問題でなく、朝鮮人それから中国、台湾系華僑両者共に、つい最近まで日本の植民地であつた国であり、現在もまだ講和発効までは日本人であります。それに大陸系の華僑、このかたがたは、約両者を合せまして、百万人に近い数であり、長い同、場合によれば数代日本に住んでおり、日本国民と一緒に生活をして来た人たちであり、その人たちを強制的に退去させるというような條項も含む、死刑の宣告を與えるような條項を含むこの重要法律案を審議するのに対して、これらの人々を私は決して無制限に入れろと申しません。それらの人たち一定数、国会法第五十二條で申しますと、秩序保持に十分な範囲内において正式且つ愼重に傍聽を行われるような條項があるにもかかわらず、而も衆議院においてはそういうことが事実六回の委員会において行われたにもかかわらず、どうも委員長がこれを禁止する、制限するような御意向があるように考えるのは非常に遺憾なのであります。私はどうしてもここで、私は何百人入れろ、何十人入れろと申しませんが、数も十分制限して結構ですし、人選その他については十分委員長とも協議されるのは結構ですが、一定数だけはどうしても傍聽をお許し願わないと、将来のアジアにおける日本の地位その他から考えて私は憂慮に堪えんものがあると考えますので、劈頭、委員長に私は是非秩序保持の十分でき得ますように我々も協力いたしますし、且つは若し秩序保持においていささかでも欠くるところがあれば、委員長は退場を命ずるところの権限を持つておられるのでありますから、この点について、委員長がどういうふうな議事進行についてお考えであるか、ちよつと承わりたいと存じます。
  30. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 懇談会でいろいろ御意見もございました。兼岩君の今のお話を委員長として承わつて置きます。
  31. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 ただ承わるのでは困ります。それに対して善処して下さるというのなら、晝の休にでもなお懇談する機会をお與え下さり、理事会その他の諸君とも懇談の機会を與えられるというのなら結構でございますが、若し與えられないで制限したまま、絶対的な制限朝鮮人や中国人、台湾系の中国人その他に対してはもう全然一人たりといえども傍聽を許さんのだ、そういう態度で推し進められるというのならば、私はやつぱり成規の手続を経て、私は成規の許可を得て十分これに対して発言申上げ、異議を申上げたいと存じますが、如何でございましようか。つまりただ聞き置かれては困るので、これに対して委員長がどういうふうに善処して頂けるか承わりたいと存じます。
  32. 左藤義詮

    左藤義詮君 兼岩君が非常にアジア全体の問題、大きな立場から御心配な点もございますが、傍聽を許すか許さないかは委員長権限でございますので、委員長のお考え……而も理事会にも御相談があつたようでありますし、いろいろ御懇談がありました。先ほどの内容については十分御考慮になつて委員長において善処せられるようにということを私はこの際おきめ願いたいと思います。(「賛成」と呼ぶ者あり)
  33. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) そのように私も委員長として取扱いいたします。
  34. 兼岩傳一

    ○兼岩傳一君 委員長善処して頂けるんですか。
  35. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 御意見として伺つて置きます。
  36. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今本委員会の議題となつております法律案に対して、政府の詳細な御説明を伺い、そしてそれに対して私の質疑を行うことを許されたいと思うのでありますが、成るべく重複を避けまとて、数点について総括的な意味から政府の本法案、立案の本法案についての根本的なお考えを伺つておきたいと思います。  その第一は、これらの法案が先ほど政務次官からの御説明にもありました通りポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令措置によつてなされておる法律案でありますが、これはこの法律案の親法律をなしますポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件についての法律案が先日法務委員会にかかりまして、そうして法務委員会では質疑応答と討論と採決とを終つて、恐らく明日本会議によつて国会の意思か表現せられることだと思うのでありますが、その親法律についての政府の御意見を伺つております間にも、疑点がなおございましたので、その点について特に今日上程されております法律案との関連において、政府の所見を伺つておきたいと思います。で、ポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く外務省関係命令というものは、当然占領終結と共に自動的に無効になるということが事典であろうと思うのであります。そうすると無効になるものを廃止するということは論理上できないことだ。で、私は法務総裁に向いまして、この政府の態度を拜見すると、有効であるとお考えになるのだから廃止するといことになるのだろう、まさか如何に強力なる現政府といえども、無効なるものを廃止するということは、これはできないだろう。で、後日国会が物笑いになるということは、我我国会議員の責任において防がなければならないのですから、百夢を譲りまして、政府はこれを有効とお考えになつておるのだろう、然らずんばこれを廃止することはできない。(「全くだ」と呼ぶ者あり)ついては有効とお考えになつておる論拠をお示し願いたい。これに承服することができれば喜んで賛成したいと思つたのでありますが、政府はこれは有効とお考えになる論拠をお示しになりませんでした。そうしてそれについては、これは政府側の公式の御答弁ですが、それについては学説上両説がある、両説があるからこの際疑いを一掃するために廃止するのだという御答弁がございました。(「相手は学説か」と呼ぶ者あり)これは非常に困るのでありまして、学説上両説ある、その疑いがあるから、疑いを一掃するために廃止するということは、有効なりや無効なりやを国会で論議することを陳謝されることになる、これは論理上の論点変更の誤謬というものでありまして、論理を重んずる者の努めて避けなければならない論法であります。従つてこうしたお答えで以て、その討論が完結したものとは国民は了解することはできないと思うのであります。で、これが一点でありますが、特に外務省関係命令措置につきまして、政府は只今の点についてどうお考えになるか、それを伺いたい思います。これが最初の問題についての第一点であります。  続いてこの最初の問題につきましての第二点と三点とを伺つておきたいと思います。というのは、関連がありますから……。なぜ私がそういうことを申上げるかと言いますと、有効であるという立場をおとりになると、直ちにここに我々として説明に苦しむ問題が生じて来ます。即ち占領の継続ということであります。これは我々としては絶対に避けなければならん。又政府も同じ考えであろうと思われます。占領は終結するのだと如何に口でおつしやいましても、事実上占領下に成立した命令というものが今後有効であり、従いましてその或るものはこれを改めて、つまり改正してこれを法律にする。或るものはこれをそのまま存置して命令たるの効力を百八十日間存置せしめるということは、この親法律に書いてございます。そうしますと、講和発効後少くとも百八十日間は、占領は継続しておるということになります。或いはこれを改めて、そうして法律にしたものにつきましては、今後永久に、或いはその法律が存続する限り占領の事実が継続するということになります。これは御承知のごとくに、日本が歴史上未だ曾つて見なかつた占領という状態に置かれ、その悲しみから解放されて、そうして又日本が歴史上曾つて見なかつた再び独立するという大きい喜びを国民が迎えようとしている、その喜びの期待が大きければ大きいほど、この占領の継続の事実というものは、国民に與える印象にはさまざまな憂うべきものがある。先日私どもの会派の高齢なる松原議員が本会議において、日本国民はそれでなくても短気であり、或いま短慮でさえあるかも知れん、又そこへ持つて来て未だ曾つて歴史上経験したことのない占領下、或いはその占領の継続ではないかと言われるような外国軍の駐留の下に生活しなければならない。その際にどうかさまざまの紛擾が生じて、そうして政府意図されるところも水泡に帰するということがないようにという議論をされましたが、私も全く同感でありまして、従つて只今申上げたような、一方には独立する喜び、他方には外国軍隊の駐留という頗る悲しむべき事実があるのでありますから、外務省関係の諸命令につきましても、私はその点について政府はどういうふうにお考えになつておるのか、これを伺つておかなければならないと思うのであります。これと関連しまして最後に第一の問題で伺つておかなければならないのは、今申上げましたように、占領中に成立をいたしました命令でありますから、従つて国会が未だ曾つてこれらの命令を一回も討議したことはございません。又政府から我々が審議を目的として御説明を伺つたことはないのであります。そして日本国憲法の命じておるように、国会が、国会議員が自由な質疑と、そうして討議とを盡して法律を作つたのではないのであります。占領軍最高司令官が批判を許さない、或いは質疑さえも許さないという異常な権力を以て、その権力が法源となつてそうして出て来た命令であります。ですからこの出入国管理令にいたしましても、或いはこれは他の場合におきましてもそうでありますが、警察予備隊令のごときもそうです。最初から、第一歩において国会は一つも質疑もできないし、討議もしていないのです。従つてこの外務省関係におきましても、特にこの出入国管理令というものについては、不幸にして国会は未だ曾つて一回もこれについて審議を目的とした質疑を行なつたこともないし、又審議を行なつたことはないのであります。この点について政府は七分にお考えになつておられるのかどうか。若し十分にお考えになつておられるならば、私はまあ明日その新法律国会で成立するかしないかということによりまして、或いは幸いにして国会議員の良識によつて成立しないかも知れない、そうした場合には勿論政府外務省関係のこれらの諸命令が無効になつたということを率直にお認めになりまして、新らしい立法案を以て国会に臨まれ、そうして最初の第一歩から質疑と、そうして討論とを期待されるということは言うまでもないと思います。併し或いは明日この親法律案は可決されるかも知れない、その場合にこの外務省関係命令について国会の審議が最初の第一歩から行われることが必要だろうと思う、又必要でなければならない。それで政府の御説明を伺つております場合にも、或いは昨日私がいろいろ伺いました場合にも、得ました印象として、私は意外の感に打たれたのです。国会が改めて審議するとなれば相当に愼重に審議をしなければならない問題について、政府は殆んどその重大性をお感じになつていない面があります。ですから、これらの点については改めて、たとえこの親法律が通過して、そうして従つて、この諸命令が或いは廃止され、或いは改正され、或いは百八十日間そのまま法律としての効力を有するという場合にも、政府としてはこれが国会で初めて審議されるものである、従つてこれについての十分の審議が必要であるというふうにお考えになつているごとと信ずるのでありますが、以上三点について先ず第一に政府の所見を伺つておきたいと思います。
  37. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 只今いろいろお話があつたのでありまするが、私はこのポ宣言に基いて出ておりまする諸命令は、何らの措置がなければ、これは講和発効と同時に一切なくなつてしまうものであろうと思うのであります。そこで講和発効を目標といたしまして、従来の法律と同じ効力と言いまするか、扱いを持つておりまするこのいわゆるポ勅の措置につきまして、各省々々等でもいろいろの措置が講ぜられておるのでありまして、外務省関係におきましては先ほど提案理由のところで御説明申上げましたように、今回五つばかりの諸命令があるのでございまするが、その中で必要のなくなりましたものは廃止しよう。それから今後法律としてこれを新たに存続して行こう、こういうものにつきましては、ここに御審議を願つておりまするように、出入国管理令と、それから外国人登録法というものを提案しておるのでありまして、管理令のほうの部分につきましては昨年できたばかりのものでございまして、一部の改正で大体今後も十分であると考えまして、ここに一部改正を以ちまして御審議を願つておるわけでございまして、ここに新たに法律としての効力を持たしむるべく皆様方に御審議を願つておるわけであります。外国人登録令のごときは先ほど御説明申上げましたように内容が相当古くなつておりますし、これは全面的な改正をしたい。こういう考え方を以ちまして外国人登録法という新らしき名前を付けまして御審議願つておるのであります。親法律との関係についていろいろお話があつたのでございますが、これは私どもの考えでは、親法律はいわゆる経過的のことを一応律したものであつて、何らの措置がなければ平和発効と同時に一切が消滅するのであります。そういう際に不利、不都合があつてはいけないという意味で、一定の期間何らのほかに措置が講ぜられなかつたものについては効力を存続しておく、こういう法律を制定しようというのが羽仁委員が先ほど言われた親法律との関係ではないかと思うのであります。従いまして今回御審議願います出入国管理令であるとか、或いは外国人登録法に関することにつきましては、十分御審議を願うことを我々も期待しているのでありまして、決して今までのものはそのままで頬被りで行こう、こう考えておるのではございません。
  38. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 第一の問題につきましてはもう一回だけ伺つておくことにとどめます。今の政府側の御答弁は多少法務総裁の御答弁と違つておる点もありますけれども、併しそれは今ここで追及することは避けまして、今の御答弁を伺つて、又法務総裁の御答弁とも合せて、私として政府は本質的にはポツダム宣言受諾に伴い発する命令に関する件に基く各省関係の諸命令というものは、講和発効と同時に自動的に無効になるという解釈をとつておいでになるというように了承してよろしうございますね。
  39. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 特別の措置がなければ平和発効と同時に効力がなくなるのでありますから、法律とするなり、新らしき措置をとりましていろいろ御審議願つておるわけであります。
  40. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 私の伺うのはこまごまな問題でなく、もう少し本質的の問題であります。そうしますと第二の点でありますが、占領の継続ということを、單に口の上だけでなく、事実の上で、どうかそういう観念を先ず政府が頭のうちから払拭して頂きたい。これは余談に亘つて恐入りますけれども、世論が例えば団体等規正令に対して何故あんなに非難を鋭くしておるかというと……。最初に、当時の大橋法務総裁は日本独立後の占領軍最高司令官になるつもりかという新聞を読んで、実際ぎぐつとしたことがあります。これは前大橋法務総裁ばかりでなく、出入国管理庁長官にしろ、或いは又、これらの今議題になつております法律に表れて来るところの入国に関する、それぞれのレベルにおける公務員のかたがたが、いやしくも占領下において同様の業務を行なつていたのとは全く態度を異にしなければ、これは到底法の円滑なる運用はできるものじやないと思います。忽ちそこに一方においては全く独立した日本というものに対する期待があるのですから、だから今申上げているような、そういう継続の実質を持つている法律を行なつて行く場合に、完全にその頭を切替えて行くという態度をおとりにならんと、これはとても私は改まるものじやないだろうと思う。收まらないからと言つて警察力や武力を増強されるということは実に憂うべきことです。その点について政府は、おのおののレベルにおける政府の公務員が、只今申上げた点において、いやしくも占領下においてこれに類似した命令を執行した場合とは根本的に異なつた態度をとられるということを勿論期待しておると思いますが、それについては伺いませんが、そういうことを実行する上において如何なる措置をおとりになるつもりであるか、それを伺つておきたいのであります。  それから第三の点の、国会の審議の愼重を求めるという点はお答えになりませんでしたが、これは勿論そのお考えだろうと思う。これも單にただ口の上でおつしやるだけでなく、現にこの我々が今行なつておる審議につきましても、いやしくもこの審議の慎重を妨けるようなお考えは全くないだろうと思います。私は決して單に審議を長引かせようというような、けちな了簡を持つているのじやありません。先ほども申上げたように、この出入国管理令というものは国会で一回も審議されていないのです。従つてその用語や何かを見ますと、これはどうも或る種の考え方でできているのじやないか、それを当時の日本としては占領軍のほうから大体示されたところに従つて命令が出て来ておる、これを国会が審議する機会がなかつた。ですから、今これを審議するということは、第一歩から出発して、この用語について、又その考え方についても、もう占領軍の意向ということは全くないのですから、日本国憲法の命ずるところに従つてこれを解決して行かなければならん、このような点はそう多くあるわけではありませんが、昨日申上げたような点においては重大な問題を含んでおる、或いは日本国憲法下に成長しつつある新らしい民主主義の日本の法体系というものを、ここから崩してしまうという慮れがあるものもある。ですから、そういう点において政府は十分の用意をなさつて、これは今まで命令でやつていたのだから、その命令を大体ちよつと変えて今度法律にするんだから、そんな準備はしなくてもいいというお考えではまさかおいでになりますまい、必ずやこの根本から我々の質疑に対するお答えをなさる用意をして下さることだろうと思います。以上二点につきまして、最初の点は了承いたしましたから、それに関連した二点について伺つて、そうして第二の問題に移つて行きたいと思います。
  41. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 我々は、平和発効後もなお占領があるようだというような観念では断じておりません。占領の継続という考えは毛頭持つていないのであります。今回提案しております出入国管理令に関する改正案も、勿論占領を前提とせず、占領終了後の新らしい事態に処すべく不必要なところを削除いたしまして、ここに改正した形で御審議をお願いしておるのであります。先刻お答え申上げましたが、出入国管理制度の全般について、或いは外国人登録制度の全般について十分御審議をお願いしたいということを私は先ほどお答え申上げたつもりであります。それから用語等のお話もあつたのでありますが、これは法律的の用語等も時代と共に相当変るのでありまして、いろいろ新らしい言葉使い等や熟語が出ておるかも知れませんが、これは憲法初め、その他にも新らしい字句が相当出ておるのでありまして、用語は変遷しておるということは、これは御理解願えると思います。
  42. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 その点、もう第一点については伺わないつもりだつたのですが、どうも御説明の点でどうかと思うのですが、これらの点について紛擾が起つたような場合に、今までにも恐らくは、かなり、ややもすれば占領軍なり、占領軍関係の権力というものをお借りになつたことが多いのではないかと思いますが、今後はこういうことを一切なさらないということは原則だろうと思う。勿論非常に大きな紛擾ということになつた場合は別ですが、私はそういうことは一切予想しませんから、常識的に起つて来るような紛擾に今まで或いはそういうことをなさつていたかも知れないが、今後はそういうことは一切ないということは、これは伺うまでもないことですけれども、念のため伺つておきます。これはないというふうに了解してよろしうございますね。
  43. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 勿論その通りでございます。
  44. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それじや第二点に移りますが、第一点に関連をして参るのでありますが、この出入国管理に関する法律、又登録法として提案されているものを説明を伺つたり又読んだりしながら、つまりさつきの第一の問題に関係して来るのですが、不幸にして我々日本国民が周囲の朝鮮のかたがたや中国のかたがた、又は中国の中でも台湾のかたがたに対する過去の考え方というものが、日本においては残念ながら私自身においても勿論払拭されておらない、そこへ持つて来てアメリカのかたがたは今度は日本人をも含めて、アジアの有色人種に対して持つておられた古い間違つた考え方というものが、なかなか払拭されていない、残念ながらその事実を認めざるを得ない。従つて、さつき伺いましたこの第一点につきましては、原則的には政府の態度はよくわかりましたから、この法律案の各條項について、そういうものがあつた場合には、潔よく政府はそれを修正なさるおつもりだろうと思うのですが、第二点、特に具体的に我々としては或る意味で現在二重のこの問題を解決して行かなければならん。一方において我々自身が周囲の朝鮮や中国或いは中国の中の台湾のかたがたに対して今まで持つていたような考え方を払拭しなければいかん。これは、昨日平林委員から、その恩愛というものを忘れて、敗戰の際に日本人或いはその子女に対して筆舌に盡し難い残虐を行われたということも、我々忘れることはできないというふうにおつしやいましたが、この点について、これは平林委員に御質問するのじやない、政府に伺うのですが、成るほど個人的には日本人、我我同胞が、朝鮮や中国や、又中国の中の台湾のかたがたに対して随分親切をなさつたかたがあり、その親切は誠に貴重なものだと思つて深く尊敬をするのでありますが、問題はそこにあるのじやないので、国として朝鮮を植民地として久しい間支配し、その間には随分言うに忍びない残虐が、個人的にではない、社会的に行われている。それから又、台湾につきましても、随分長い間植民地としてこれを支配していた。私は時間の関係もありますから詳しく申上げませんが、矢内原教授の著された帝国主義下の台湾という名著があります。我々は勿論国会議員として最高の権威を持つておるものであればこそ、学者の意見を聞くということは何もびくびくすることはない、学者の意見をも聞いて我々が最高の判断を下すのですが、そういう学者の研究を我々が読んで、そうして我々としても台湾において如何に久しく日本が国家として、台湾の民衆に対して、個人的にじやない、社会的に許すべからざる圧迫を加えていたかということがわかります。最後に、中国において日本が国家として行なつた残虐というものについては、私は今日これを口にすることも堪え難いと思うのであります。これらの点について無反省、いやしくも十分に反省をしていないような條項は、今提案されております法律案の中にはないことを信じます。併しながら、若しもそれがありました場合には、政府は潔よくそれを修正なさるつもりであるかどうか、この点を伺つて置きたいと思うのです。念のために申上げますが、私の專門に関する限りでも、例えば朝鮮で発行されておりました小学校、中学校などの児童に対する歴史の教科書というのは、或いは御存じないかたもあるかと思いますが、開巻第一行に、私どもの祖先は天照大御神様であるということが書いてあるのです。これは朝鮮の児童に、朝鮮のかたの子弟に問題第一に、こういう文句を以て臨まれたということは、これこそ決して忘れてならないことで、又これこそどうして今日我々はそういう考え方から脱けて行くかということを、政府が考慮なさるかということです。或いは申上げるまでもなく、生命を奪うにひとしいような、そのかたの氏名を変えたということもあります。ですから、これは決して軽々に政府はお考えになつているのではない。従つて、今申上げたような点について私が今申上げたような態度をおとりになると思うのです。
  45. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 羽仁君に申上げますが、どうか簡單に……。
  46. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 そうしてその際に、日本国民としていやしくも過去のそうした罪惡はこれを払拭し、それが存続しているかに見えるような條項は潔よく修正をする、同時に、さつき申上げました第二の問題ですが、現在ありますこの命令、これは今法案になろうとしている、改廃されて法案になろうとしている命令は、今度はアメリカのほうがアジア人或いは有色人種に対して持つておられた偏見というものが入つている点があるのじやないだろうかというふうに恐れる、條文を見まして……。従つて、今度新たに立法されたものについては、そうしたものが絶対ないということを私は信じますが、併しこれも万一その疑いのあるものは、潔よく修正せられるという態度をおとりになることと信じますが、その二つの点について伺つて置きたいと思います。
  47. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) この出入国管理令或いは外国人登録法等は、人種によつていろいろな差別をしているというような條項は何らございません。外国人は一律にこの法律によつて律して行こう、場合によりましては、日本人出国等についてもこの法律で律する場合があるくらいでありまして、いろいろな特別規定、例外規定は、むしろ従来から日本に在留した善良な朝鮮人台湾人等に対しまして不都合なことがないように、不利不便の少いようにしよう、こううい規定をむしろ例外的に特別的に設けておるような次第でございまして、何ら差別的な法律でございません。それから各條項について十分御審議を願いますことは、これはもう国会議員として当然の職責であろうと思います。十分御審議を願いたいと思います。
  48. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 今の点について、意外のお説を伺つてびつくりするばかりなんですが、それは後に伺うことにいたしまして、今の点につきましてもちよつと伺つて置きたい。この法律案の提出者はどなたですか。
  49. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 政府提案であります。
  50. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 国会の審議について伺つているんじやないのです。提案者として今申上げたような点について、疑いがあるならば潔よく修正せられるおつもりかどうか、それともそういう疑いがあつてもやるんだ、いわゆる今までの日本の朝鮮、台湾、中国に対する態度、或いはアメリカのかたがたのアジア人に対する態度というものがあつてもいいんだというお考えですか。
  51. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 政府といたしましては、これは大体万全の研究の結果出しておるものでありまするが、私の先ほど申上げましたのは、皆様方で十分御審議なさいまして、修正すべき点があるとお考えになりましたならば、それは御修正になるということは、これは政府提案であろうが何であろうが、修正ということは勿論あるのであります。十分御審議願い、御研究を願いたい。こういうことを私は申上げたのでありまして、別に羽仁委員のびつくりするようなことを私は申上げたつもりではないのです。誤解されておるのでありましたならば御氷解願いたいと思います。
  52. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 委員長によく御了承頂きたいのですが、本当にこれは国会が審議したことがないのです、今まで。従つて、私も決して無用な点について伺うつもりはないのです。ですから、無用な点について伺うというふうな気持は一つも持つておりません。私も決して、政府と同じ見解に到達することは残念ながら期待していないのです。併し国会の審議を通じて、少くとも日本国会には必ずしも政府と所見を同じくしないということを明らかにして置くことは、この法の運用のためにも必要だと思うのであります。  それでは今の点から続いて、第二の点に関連しまして、これは決して委員長権限を侵そうとするものではないのですけれども、私は実際インフエリオリテイ・コンプレツクスというか、小民族ですね、日本も実際は小民族です。それに伴ういろいろな心理上、それから社会上の問題というものは、これはできるだけ避けて行つたほうがいい。これは委員長も御同感だろうし、各委員も御同感、政府もそうだろうと思う。併しこれはなかなかうまくないというふうに官僚主義的に威張らないで、殊に政務次官は官僚主義者ではない。政治家なんだから、官僚の言うことなんぞ一々お聞きにならんで、あなたの良識に基いて、そういうふうにお答え下さい。そうしてその所信に従つて、あなたのお助けになる人々にも、そういうふうにして頂きたい。これはよくおわかりだろうと思うから重ねて言いませんけれども、これは異に重大な問題です。日本人は、いわゆるマイノリテイ・プロブレムというものを本当に解決したことがない、少数民族問題というものを。それは実際政治上重大な問題です。これは重ねて申上げて置きますが、いやしくもそういうことのないようにやられる。若しやつた場合には政府責任を負うというふうに了解するのですが、その問題と関連して、やはりこの委員会がそれらの重要な関係のあるかたがたの傍聽を許されるということを私は衷心から希望しますが、それについてはここに詳しく述べませんで、昨日申上げました点に移ります。これらについては、成るべく重複を避けて簡單にして行きたいと思うのでありますが、昨日政府に回つて伺いましたのは、第一に日本に出入し或いは日本に永住される外国人に対して、或る一走の態度をとる以上は、日本国民が外国に出入し、又は居住する場合にも、同じ取扱を受けることを覚悟しなければならん。この点について、政府は、今提案されておりますような法律案と同じ取扱を、我々日本国民が外国において受けるということを認識しておられるか。これは詳しくはもう申上げませんけれども、日本国民は、まで外国において決して日本国民が常に愉快と感ずるような取扱を受けていたわけではないのです。それから又、今後にもそういう問題がないとは言えないのです。この場合に日本自身は、日本に出入する外国人、或いは日本居住しようとする外国人に対して、こういう取扱をやつているじやないかということが言われた場合には、折角我々の同胞が外国に出入し、又は居住しようとする場合、そうしてそれについて不愉快なことが生じた場合、その救済を求めることが誠に困難である。ですから單に日本の問題だけ、或いは原則的には対等にして、自由にして、平等にして、公正であるというような官僚の言うようなことをおつしやらないで、事実問題がこれはなかなか紛糾するのですから、そういうことがこの中にない、あれは喜んで現在国会で削つてもらうという努力を政府もなさる。多数の力で採決できるという問題ではないのです。これは超党派的な問題ですよ。私自身も外国に或いは出入し居住して感じたことは、皆様もお感じになつていることだと思う。この点が第一。然るに政府の御答弁は、これは本当は政府から繰返して頂くはずですが、私が要約しますと、政府の御答弁も、原則においては自由にして平等な、公正にして友愛の精神に満ちたものだとおつしやるのですが、この頃そういうことが非常にはやります……。
  53. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 羽仁さん簡單にどうぞ。(「いいよ、いいよ」と呼ぶ者あり)
  54. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それで私はしばしば繰返すのですが、名実相かなわないということは憂うべきことである。それから第二の、政府の御答弁は日本には特殊な事情があるということをおつしやる。これは同時に、この二つの根拠は私の疑念を氷解することができないというのは、日本の国民が外国において同じような取扱を受ける、その手をとられて指紋をとるというようなことをやられる場合にでも、これはアメリカでもそういうことをやつている、併しアメリカでやられていることが愉快であるかどうか。これはアメリカで有名な学者の出入国について制限をしたり、或いは何とかアイランドとかいう所にシゲツテイなんていう、これは委員長もよく御承知の音楽家を三カ月も入れておいたり、こういうことはいいことではない。これはいいことではないと言う場合に、お前の国でもやつている、同じことをやつていると言われてしまえばそれつきりである。それつきりではないけれども非常に困る、だからそういう点については原則がそうである、それから特殊な事情があるということでは理由にならない。それぞれの国にはそれぞれの特殊な理由を持つている。これが第一点。第二点は……、一、二、三、四、五、六と本日追加しまして六点ございますが、これは特に今提案されておりまする出入国管理及び登録簿に関する法律案というものが、民主主義的な法の根本的観念を覆そうとしている疑いがある。従つて政府に向つて質さなければならない第一点は、民主主義的な証拠主義の上に立たなければならん。従つて刑罰或いは刑罰というほどでなくても、人の自由を拘束するというようなことがある場合には、疑うに足るところの十分な理由というものがなければならん。そしてこれらの場合の挙証の責任は国家の側にあり、個人のほうにあるのではない。勿論最近はアメリカはそれをひつくり返しにされていることをちよいちよいやつておるが、アメリカのやつておることでも私は感服しませんよ、そういうことは近代の民主主義の法の確立された原則を覆すものである。ところが、これを例えば出入国管理令の第五章には、思料するときは……、思料は自由ですから、誰でも……従つて官吏が自由に思料する、それは自由です。併しそれに基いて人の自由を拘束するということは民主主義の法の根本原則の最も重要なものの一つを覆えすことになりはしないか、政府はその意思があるか、あつてそういうことをやつておるのかという点です。で、これについての政府の御答弁はそういう意思がないと。というと、この五章などは、それでは削除をお求めになるものであると思う。第二点は、この民主主義の法の根本原則を覆すのではないかという点……、続けて質問してよろしいですか。
  55. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 遅くなりましたので午後にして下さい。
  56. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 それでは午後続けてやるということにお願いします。
  57. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) それでは午前はこの辺でとめて、午後二時から開会します。    午後零時五十三分休憩    —————・—————    午後二時五十三分開会
  58. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) 只今から午前に引続きまして連合委員会を開会いたします。
  59. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 午前中に質疑を行なつておりましたのに引続いて、政府に向つて質疑いたします。今議題になつております法案関係で、民主主義の法の原則を覆すのではないかという重大な疑いがある点が六点あるのであります。  その六点の第一点、即ち、民主主義の、法は証拠主義をとつている。然るに今提案されております例えば出入国管理令というものは、確実な証拠というものにようないで、單に係官が、官吏が思料するということによつて、その人の自由を拘束することができるようになつております。これは法務総裁の御意見も承わらなければならないと思つたのですが、今日は御都合で御出席おできにならないというので、明日は御出席下さるそうですから、重ねて法務総裁の御意見も伺わなければならないと思うのですが、法の一角を崩すということは、法の体系に非常な危険を及ぼすことでありますが、これについて政府は、決して、民主主義の法の原則の最も重要なものの一つである証拠主義を覆すものではないということをおつしやつただけであつて、事案において條文の上にはこの慮れがある。  それから次は、いやしくも人の自由を拘束する、或いは人について取調べを行うというような場合に、そうした自由の拘束というものが万一不当な自由の拘束が行われる場合には、これを救済すべき十分な法的手続というものの保証がなければならないということが、民主主義の法のやはりこれも最も貴重な原則の一つであります。然るに今提案されております出入国管理令などを再見いたしますと、その第五章などにおいては、民主主義の法が期待しておるような、そういう要件を果しておられない。それでこれは非常に重大な問題である。この点についても、昨日政府側からの御答弁は何ら私の疑いを払拭することができなかつたのであります。  続いて第三点でありますが、第三点は、やはり民主主義の法の根本原則として思想の自由ということを飽くまでも尊重する。これは先日法務総裁が検事の会同において述べられました言葉の中にも、我々が飽くまで法律立場を守り、いやしくもこれを超えない、超えることを許すべきでない、いわんや思想の自由に押入つたりするようなことがあつてはならないというふうに言われております。然るに、敗戰後、占領下において日本の憲法がこの点において明らかに大原則規定しておるにかかわらず、いわゆる事実上の法の中には、或いはこの憲法の掲げておる大原則を徐々に崩してしまうのではないかというような慮れが多分にあるものがあり、そして又、ここに又一つそれが加わろうとしておる。これはこの出入国管理令の第二十四條に関係しているのでありますが、その一番最初には、これは政府はよく御承知のことだと思うのですけれども、国家公務員の任命の欠格の條項としてこういうような條項が出て来た。当時私、委員として、こういうものが入つて来るということが、非常に後日だんだんこういうようなものが入つて来ると問題じやないか。酒を飲むのはやめたと言つて、何か特殊な場合があつて一遍くらい飲むのだと、これは禁酒というようなことも言えるのですが、併しあつちへ行つても飲む、こつちへ行つても飲むというようなのでは、これは禁酒しているとはみなされないのです。だから思想の自由には立入らない、尊重すると言いながら、一つくらいの法律でそういうことがあるということはいいのですが、これは例外の場合だ、特殊な場合だということができるのですが、どうも拜見していると、その後続々として、原則において禁じていることを並列する法律においてやる、こういうことは結局憲法の大原則を覆し、そして憲法において命じておる……、憲法に違反する法律は無効だというような問題になつて来るのではないか。この点についても、政府のお答えは只今のような疑念を一掃することができませんでした。  それから第四には、やはりこれも今まで申上げたのと同じような意義を持つ近代民主主義の法の原則の一つとして、密告者というものを排斥するという原則が確立されておる。然るに出入国管理令の第六十二條以不においては、密告者というものを奬励し、これに報奨金を與えるというような趣旨のように読み取れますこれについての政府の御答弁は、アメリカでそういうことをやつておるということでしたが、アメリカでそういうことをやつている。アメリカでやつておることは、今まで申上げたことの趣旨に反するようなことをアメリカでやつております。併しアメリカでこういうことをやつておるからよろしいということはない。アメリカはそういうことをやつておるために国際的の問題が起つておる。私はこの間もイギリスの新聞で見ましたが、英国では依然としてこういうことを言つております。エヴリマン・ヘイツ・ザ・インフオーマー、何人も密告者を憎惡するということを言つております。日本でも戰争前は密告者を奬励するというふうな低いレベルの考え方が平気で適用しておりましたけれども、今日そういうことは許されないと思う。これに対して政府は、まあ奬励しているのじやないという程度のお答えでありましたが、併し報奨金を以てやる以上、金までくれて、それでも奬励していないということなら、一体どういうことをしたら奬励するということになるのか。これではとても納得することはできないし、いわんや、そういうことを予想した法律というものは、この法律は実に醜惡なる法律と言わなければなりません。  それから第五点ですが、これは昨日は申述べなかつたのですが、本日これとの関連においてできるだけ簡單に申述べておきたいと思うのでありますが、これはいわゆる外国人登録法における指紋の問題であります。この指紋の問題も、恐らく政府に向つて質問すると、アメリカでもやつておるというふうにお答えになるかも知れません。併しながら、これはアメリカでやつておることは最近は法の逆行であるという意見も成り立つので、日本でその法の逆行はしないほうがよい。この点については、私は簡潔を期するために、極く最近新聞で報道された一つの例を引いて政府の所見を承わつておきたいと思う。警視庁は最近いわゆる自由の意思に基いて東京都民の指紋を集めることに全力を挙げておられる。なかなか都民はこれに応じない。そこで名士の指紋を取つたら都民がこれに応ずるだろうということで、鷹司平通君のところへ行つて指紋を取らしてくれということを依頼したそうです。そうすると平通君は、自分は万事妻に一任しておるからということで、それは万事好都合だと、お宅に伺いますからお宅であなたと夫人とお二人の指紋を頂戴したいと言つて訪問した。ところが、平通君が夫人にその旨を話されたところが、夫人は、自分は父と母とがなすことならば私もいたしましようというようにお答えになつたという記事を私は新聞で読んだ。実に痛切なる感銘を受けたのであります。指紋についての観念というものは、不幸にして日本では残念ながら近代的なレベルの高さに到達していない。アメリカも残念ながらそうであります。併しイギリスの場合のごときは、私の知つております一つの事実においても、或る自治体においてどうしても犯罪捜査の必要上から指紋を取る必要が起つたことがある。この際には、市の当局から市民に訴えて、その理由を明らかにしてそうして指紋を取ると同時に、そのときの條件として、その問題が解決したら直ちにその指紋はすべて焼却するという條件を付けて、そうして初めて指紋を取りに行つた。その用途にだけ供して直ちにその指紋を焼却したという事実を知つております。このように、近代の法の観念から言えば、指紋という問題は決して軽々な問題ではない。アメリカでもやつておるから日本でもやつてもよいという程度の考えで、昨日の御趣旨から言えばそうお答えになるのかも知れませんけれども、これも本日冒頭に申上げましたように、こうした法が実際に施行される場合に、できるだけ衝突なくして行われるようにというふうに念願する私の気持から、アメリカで行われる場合にもこれはいろいろの問題があることなんですし、日本のように殊に低いレベルにおいてこれが行われる場合には、実際人権蹂躙的に行われる。その結果、法が決して期待していないような反感や紛擾というものを導く慮れがある。そういう意味で、こうしたものは、いわゆる昨日小野委員長からもお話がありましたように、法は必要にして最低限度にとどめるべきものだと、それが原則だという趣旨に違反しているのではないか、この点について本日改めて政府の所見を承わつておきたいと思います。  それからなお続けて、最後の点でありますが、この最後の点については、只今の点についての政府のお答えを伺つてから、最後の点に進みたいと思います。
  60. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 第四点までは大体昨日お答えしておりまするので、重複を避けて極く簡單にお答えいたしまして、なお足らざるところは入国管理庁長官のほうから補足してもらいたいと思うのであります。  第一点の証拠主義云々というお話でございまするが、これは昨日も申上げましたように、これでとられておりまする入国拒否とか、或いは退去とか、これは別に処罰の意味ではないのでありまして、一つのやはり行政措置であろうと思うのであります。それでいろいろ用いてありまする字句についての使い方についてお話があつたのでありまするが、大体刑事訴訟法等で使われておりまする言葉と同じような、その必要な箇所々々におきまして、同じような言葉でやつているわけでございます。それから不当処分に対して苦情の申立或いは救済の方法がないようなお話でございまするが、これは入国管理庁長官のほうからお答えをしたいと思います。思想の自由を云々というお話がございましたが、これも昨日申上げましたように、決して思想の自由を阻害しているようなことはどの條項にもないと思います。密告者の問題は、昨日申上げましたように、潜在不法入国者等がございまして、こういう人の発見はなかなかこれは普通尋常一様のことではできないのでございまして、そういう捕捉困難な場合に止むなくこういう制度を採用したと、而もこれも日本で初めてやるというようなことではないのでありまして、まあアメリカと言うと羽仁さんからお叱りがあるかも知れませんが、アメリカ等でもやつている例があるのであるということを申上げたいと思います。最後の指紋の点でございますが、これも答弁をむしろ先にされたような形になりましたが、民主主義の諸国においてもこういう制度をやつておりまするので、今回の登録令におきましても、登録令は二カ月以上滞在する人、長くいる人の登録でございまするので、單なる観光客であるとか一時の旅行者等にはこういうことはないのでございまするが、そういう人に対してこの制度を設けたような次第でございます。
  61. 鈴木一

    政府委員鈴木一君) 政務次官からお話がございまして、大体私から申上げることも大してないのでございますが、第一点の証拠主義に関しまするお尋ねに対しては、今政務次官から、大体刑事訴訟法の字句を使つておると……、そういう点についてもこの立法につきましては愼重に審議をして法案を練つたということを特に申上げたいと思いますが、御疑念の点は、恐らく第五章の第二十七條にこういう字句があるのであります。「入国警備官は、第二十四條第一項各号の一に該当すると思料する外国人があるときは、当該外国人につき違反調査をすることができる。」、これは二十四條に該当すると思料しただけで調査をするのは不思議ではないかというお尋ねと思います。これに対する字句が三十九條のほうに「入国警備官は、容疑者が第二十四條第一項各号の一に該当すると疑うに足りる相当の理由があるときは、收容令書により、その者を收容することができる」、こういうように書き分けてあるのでありまして、これが同じでないのはどういうわけかという御趣旨とも伺えるので、その点は身柄を拘束しますのが三十九條のほうでございますので、この際には念を入れまして、疑うに足りる相当の理由があるということを特に明示しておるのでございます。で、違反調査のほうは別に司法処分をいたすわけでもなし、行政処分でその人が果して外国人であるかどうかというようなことで、例えばパス・ポートを持つておるか、或いはそういうような点を適宜に調査をいたすわけでございますので、刑事訴訟法におきましてもこういう段階におきましては、こういう字句で差支えないということで一応鄭重に扱つておるということが申上げられると思うのでございます。  それから第二点の自由の拘束に関しまして、それの救済方法が甚だ民主的ではないというような御疑念があつたように思いますが、この点は元来終戰以前におきましては、外国人の扱いというものは外事警察というような方面で、いわゆる司法関係におきまして取調べをし、相当諸外国にも惡い材料が提供されまして、日本外国人の扱いは民主主義に反するというような批判も受けたのでございます。そこで今回は、そういうことはいけない、国際社会に復帰する日本としては最も国際慣例に則つた民主主義に沿う手続を取らなければならないというので、特に外国人の扱いに対しましては警察とは別の機関を設けまして、いわゆる入国管理庁ができまして、ここで扱う人たちも特別に研修を受けまして、入国審査官というような特殊な人たちにこれを扱わせるということになつておるわけでありまして、その人たちが例えば二十四條に違反するような人を扱いますにいたしましても、すぐにそれで一ぺんにお前は強制退去を命ずるというような、そういうような調べ方をするのではないのでありまして、やはり裁判手続と同じような鄭重な三段階の手続によりまして、本人が納得するまでは強制退去しない、最後に三段階の審査の結果、どうしても退去するということにきまりましたものにつきましては強制退去をするということになつておりまして、その間に本人が承認を求めて証人或いは弁護士、代理人というようなものを付けることもできますし、そういう意味におきまして人権を飽くまで尊重した手続でありたいという趣旨でやつておりますので、お話のような点は我々のほうとしましては十分に考慮した措置と考えておるわけでございます。  第一点の思想の自由が、この二十四條の退去強制の施行の中に何か非常な制限を及ぼしておるようなお話でございますが、我々はその点につきまして次官が申上げました通り、そういう思想を毛頭持つておらない、この法の精神は国際慣例によつて外国人は民主的な扱いを受けるのであるという立場で考えておりますので、そういう思想の自由を束縛するようなことは毛頭考えておらないと申上げることができます。  なお第四点の密告の制度につきまして、これはお話のように六十六條でございます。六十六條にその規定がございますが、これはただアメリカに例があるというだけではなしに、我が国におきましても財産税法とか税関係法律にはこの制度が数々取り行われておるのでございまして、非常にいい制度と我々は自信を持つてはおりませんけれども、非常に少い人数で効果を挙げます一つの方法としては、現在許された止むを得ざる方法であるということを御承知を願いたいと思うのでございます。  第五点の指紋の点につきましては、これは登録法の第十四條にございますが、これの施行その他につきましては、特に政令を以ちまして更に予算的措置も必要でございますので、改めて我々のほうといたしましては十分の準備を以てこれにかかりたいと思つております。ただ御懸念のように、我々が外国を旅行するときに指紋をとられるということは余りない、又自由に旅行ができるということについては、むしろそういうふうに日本などは観光その他のお客に対して惡い感情を持たせないようにすべきではないかというような御趣旨とも伺えますのですが、その点につきましては先ほどもお話がございましたように、観光の人たちに対しましては、この指紋の適用は殆んど行わない、行う必要はない、行わないでいいような規定になつております。観光でなしに日本に長く滞在するという場合に、初めて指紋ということが現われて参るのでありますが、指紋にいたしましても、御承知のように現在なぜこの指紋が必要であるか、長く日本におる人たちが現在外国人登録証明書というものを各人持つて日本に滞在しておるわけでありますが、その外国人登録証明書が非常に偽造をされ、それが転売され、誰が誰かわからなくなつておる。日本人でございますればいろいろ親類もございますし、第一に戸籍というものがあるわけでございます。ところが外国人になりまして、特に今外国人扱いをいたしております朝鮮、台湾の人たち、これは日本に戸籍があるわけではない、戸籍に代るものとしてこの登録をしたいと、こういうのでありまして、その登録と御本人との結び付きがどこにあるかと申しますと、外国人登録証明書一つでございます。それを携帶しておるかどうかということになるわけでありますから、この外国人登録証明書には勿論写真が貼つてございます。いろいろ所要の記載がございます。ところが現実の問題といたしましては、その写真ははがされまして別の写真が貼られる、その写真をはがせないように浮出しプレスと申しまして、はがせばすぐわかるようになつておる。そういう措置も講じてございますけれども、それは現在においては巧みに写真をはがしまして、その浮出しプレスを又適当に作りましてやつておる。それでそれが相当の金で売買されておる。それを持ちまして、密入国をして参るということで、我々のほうといたしましては何によつてその人の同一性を見るかということになりますと、写真でもいけない。もうただ一つ残りますことは、指紋であるのでございます。指紋が是非必要であるということは、これは別にその人を犯罪者としてどうする、こうするという意味ではなくして、その人が正当に入つた外国人であるという御自身の証明にもその指紋が絶対必要である。その人の人権を尊重する上にも自分はかくかくのものであるということで、みずから守られる上においてもそれが必要なのでありまして、別にそれを犯罪者としてどうする、こうするということは、我々としては考えていないのでございます。そういう意味におきまして指紋はそのとり方にもいろいろ問題があると思いますけれども、一例を申しますれば、昔から日本におきましては自分の責任を現わしますときに判を捺します。捺印をいたします。判を打つていないものには拇印を捺させる。これは日本の習慣にも昔からあつたわけでありまして、指紋をとるということが非常に大きな人道的な問題であるように若しお考えであるならば、そうではない、日本にもすでにそういう習慣はあつたということでございまして、そういう例につきまして、私たちとしましては愼重な準備を以てこの制度を行うという意味で、特に政令を以てこの事項をやるというふうに書いておるのでございます。
  62. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 只今政府側からの御答弁を伺つて、残念ながらますますその衝に当られるかたの認識がそういうところにあるとすれば、法はいよいよ嚴格でなければならないということを全体として痛感ずるのであります。第一に、証拠主義……、証拠主義を覆しているのではないかということの質問に対して、例えば取調べをするということは自由を拘束することでもなく、いわんや刑でもない、従つて該当すると思料する人に対して取調べをしてもよろしいというお考えですが、その際に立法者としては、行政官としては、或いはそういうことをお考えにならないかも知れませんが、立法者として考えなければならないことは二つあると思います。一つはそれが日本の現在の行政関係の有史のレベルにおいて濫用される慮れがないか、こういう場合には、これを法で許すということは躊躇すべきではないだろうか。御承知のように、これは残念ながら今までの日本の行政官吏のレベルというものにおいては、これがしばしば濫用される。これが第一の点。それから第二の点は、特にこれは対象の主なるものは外国人であるということです。我々日本国民としても、こういう面における行政権の行き過ぎというものがしばしば問題を起しておる。それでこれは政務次官も又管理庁長官も御自身が尾行をされる、調査をされるということは決して愉快なことではないと信じます。そしてそれが人権を尊重するゆえんだなんていうふうにさつきはおつしやつておつた、同じ観念においておつしやつておりましたが、とんでもないお考えであります。いわんや外国人です。そこで現実において、今までこれは入国管理庁長官も報告を受けておいでになると思いますけれども、今までこういう問題についてさまざまな事件が発生しているだろうと思います。私も、聞き及んでおります。そこで新聞などを通じて我々が心を痛めておつたのも、例えばパスポートを常時携帶していなければならない。これが日本の官吏のレベルが高い場合にはそう問題も起らない。現にイギリスなり何なりじやそう問題は起らない。たまたま散歩に出て持つておらなくても自宅に持つているということで解決するのです。日本の場合には散歩に出て直ちに持つていないという理由でこれを疑うに足る十分な理由があるということに持つて来る。そして直ちにこの人の自由を拘束するということが起つて来る。そういう事件が一つでも二つでもあるということになると、一般に與える不安というものが大きくなる。こういう点を政府としては、そういうような間違いは今まで一つもなかつたというふうに立証されるならば、我々も満足することができると思うのですが、残念ながらそうでないのです。ですから、さつきおつしやつたように、單に形式的にこれは刑罰にもあらず又自由を拘束することにもならないというお考えだけでなく、もう一歩どうか深くお考え下すつて、そうして今申上げたような点で、殊に外国人との間に日本はやつぱりまだ野蠻国だという感じが起らないように努力して頂くことが望ましいと思うのであります。  それから第二の点でありますが、これは簡單政府のおつしやることに承服するわけに行かないのであります。と申しますのは、成るほどこれは日本の警察が余りレベルが高くないということをお認めになつたといたしましても、入国警備官入国審査官というのはこれは具体的に端的に申上げると、いずれも入国管理庁長官の補佐だろうと思います。それで入国管理庁長官が右の手で警備官を持ち、左の手で審査官を持つております。ですからこれは、いわゆる三権分立の原則というものを今改めてお説教申上げることは失礼ですから略しますけれども、やはりこれはその意味において問題がある。いわんや、外国人に向つて発動するのですから、さつきの御説明は誠に有難く拜聽いたしましたが、過去のようなことを繰返したくない。最近も関西方面でインドネシアの婦人のかたが、万引をしたのではないかという疑いで、男の人の見ている前でスカートをまくり上げ、靴下をまくつて問題になつた。このかたは、疑えば或いはそういう常習のかたであるかも知れないということもある。併し常習のかたであるから、そういうことをやつてもいいというお考えはまさかないと思う。これは「日本タイムス」なり何なりを通じて国際的にも知られることだし、我々も読んで心を痛めたことも御了解下さるたろうと思う。ですからさつきの御説明の程度でなく、もう少しお答え願いたいと思うのです。それから思想の自由についても、よく引かれる例で恐縮ですが、治安維持法というものは元来思想の自由を取締るものではない、それだけの面から見ればそうではなかつた。ところが御承知のように、美濃部先生なり河合榮次郎先生に対する圧迫というものが加わつて来る。これは何か偶然だつたということなら、私もちつとも心配しませんけれども、併しそういう必然性があるのではないか。又必然性がないということは断言できることではないと思うが、いわんやこれが外国人に向つてなされるということである。日本政府で雇う人である場合でもいささか問題に法的にはなります。それが、いわんや日本に出入し、或いは日本に多少長い間住もうとしている人に関係して来る。要するに、外国人ですから……外国人に対してこういうことをするということは、お答えの先に言うと恐縮正ですけれども、アメリカでやつてますけれども、アメリカでやつているが、国際的になかなか非難があるということである。そういう点でもう一点、單に形式的の御答弁では安心することはできないと思うのです。それから入国者につきましてもこれは同様であります、困ることはあるのです。併し困ることがあるからといつて、その法律のほうで何も困らないようにやろうという結果、民主主義の原則の法を崩して行くということはお考えになるべきだと思うのです。  最後に指紋の点でありますが、観光客にはしない、そして多少長く日本居住されるかたに対してする。そうすると、これは論理を裏返せば、日本を愛し、日本に暫らく居住しようとする人に対しては、却て失礼なことをしなきやならんようになつて来る。さつき管理庁長官は、指紋をとるということは人権を尊重するゆえんだ、日本では昔からやつておるということでありましたが、どういう理論上の根拠に基いてそういうことをおつしやるのか、無学にして私は了解に苦しみますが、そういう理論上の根拠があるならば教えて頂きたいと思います。それで、さつきの例を又繰返すようなことはいたしませんが、或る意味において日本を愛し、日本居住しようとする人が、日本人よりもひどい待遇を受けるということを、私はどうも納得することができない。我々日本国民自身は、さつきのお話では、戸籍があるからいいというのですけれども、併し戸籍がない、例えは日本に随分長くおられ、日本を愛し或いは日本で骨を埋めようとされておる文化上、或いは音楽上、或いは学問上、立派なかたがおられる。そういうかたの指紋をとるというようなことは、私はどうも政府においても忍びないことじやないかと思うのです。先頃、東京都では、古本を売りに来る人の指紋をとろうというふうに警視庁でやつて、古本屋さんのほうでは、こんなことはできることではない、それによつて得るところの実益と、それによつて失うところのものと均衡を失しているということで、沙汰止みになつたこともあります。そういう点でもう少し深くお考えを願いたいと思います。それで犯罪者扱いするのではないというお言葉の下から、パスポートの灘用或いは僞造ですか、パスポートの僞造という惡意を予想しておられることは事実です。惡意のある人はどんなふうに法律を作つたつて、惡意は法律を潜るのです。それで惡意のある人を潜らせないように法律を嚴格にやると、ひつかかる人は皆善意の人なんです。これは理論上もしよつちゆう言うように、惡意のあるマイノリテイというものに対して人権を侵すような法律を作ると、必ずそれは善意のあるマジヨリテイの人権を侵すということになることは、民主主義の上で忘れてはならない原則です。ですから、この点についても私は、只今の御説明で納得することのできないことを非常に遺憾に思うのです。それから日本人外国でこういう取扱を受ける虞れはないとおつしやいますけれども、あります。現にあります。又やられておる。それを我々としては今後打破する努力をして行かなければならない。  以上、いずれの点についても、政府の御答弁は納得することができないのですが、最後の点は、本日政務次官が私或いはその他の場合でしたかのお答えの中におつしやつておられた言葉の中に、朝鮮のかたや中国のかた、或いは中国の中の台湾のかたというようなものの善良なかたがたに対しては、というお言葉がありました。これもやはり実は重大な問題でして、これは單に言葉ならいいのですけれども、併し近代の民主主義の法の根本の原則の一つとして天使のための法というものもないし、惡魔のための法というものもないのだという有名な格言があります。それで、これはこの点においても、日本入国し又は日本居住されようとする人に、善意の人と惡意の人と分ける考えがあつて立法をするということは、やはり近代の民主主義の法の根本原則を覆すということになります。ですから、さつきも申上げましたように、そういう法律を作りますと、少数の惡意のある人は平気でそれを潜つてしまうのです。そうして、多数の善意のあるかたが非常な不愉快な感じを抱かれるということになるのでして、その点について、これは最後の点でありますが、一つ十分のお答えを頂戴しなければならないと思うのであります。
  63. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) いろいろ御意見承わつたのでありまするが、十分に承わりまして、将来の法の運用に万全の適正を期するように努力いたしたいと思います。それから指紋のことでございますが、これは長官から先ほども詳しく説明があつたのでありまするが、まあ科学の進歩によりまして科学的ないろいろなやり方をやるということも一つの方法であろうと思います。又考えようによりましては、指紋がありまするために、先ほども話がありましたように、自分であるということを極めて簡單に明確に立証できまして、我々が最も忌み嫌うところでありまする不当な取調とか、そういうことがなくて済むようなこともあるのでございまして科学の進歩によりまして、こういう制度を取入れて行くということもお考えを願いたいと思うのであります。それから私が善良なというようなことを申しましたのは、従来長く日本におられまして、よく法も守り、いわゆる善良なでありまするが、そういう人々に対しては十分の保護、と言えば又語弊があるかも知れませんが、保護を與える、不利、不便、不都合のないような措置を講じたいということが、今回のやはり出入国管理令のポ政令改正案の中にいろいろ考えられておることでございまして、このいわゆる二十四條に違反するような者であるとか、そういう不都合な人にはかかるという意味で申上げたのでございまして、その他の何ら意味合いで申上げておる言葉ではございません。
  64. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 総括質問について、私の質問として最後の問題ですが、今申上げましたのも或いは御了解を令すぐ頂戴するのは御無理かというふうにも思うのですけれども、天使のための法もなければ惡魔のための法もないという格言は、十分お考え頂きたいと思うのです。今詳しく述べることが時間の関係もあつて許されませんから、これ以上申上げませんですが、惡い人は幾らひどくしてもいいのだということはない。幾ら惡い人でも、人間は人間なんですから、やはり鄭重な手続というものを必要とする。なぜそうせなければいかんかというと、惡い人は何だつてかんだつて潜ります。パスポートも何も、なくても平気で、例を引いては失礼になるから言わないけれども、やります。それでパスポートの偽造くらいで入国管理庁長官がびくびくしておるようなことでは長官の高邁なる任務は達成できない。日本外国との関係においてよくして行くことですね。そつちのほうを努力しなければならん。誤まりがないように戰々兢々たる官吏というものは自分の職務上のちよつとした小さな誤まりを冒さないということのために、大目的を覆してしまうということがあることは、よく御承知の通りであります。猟吏は虎よりこわい。権利をふるうような法律を以ては、とても国際関係或いは国際慣行というものを明朗にして行くということはできない。従つて、これは政務次官なり或いは立派な近代政党としての政府與党なりにおかれまして、そういう点においてはどうか一つ、私繰返して申上げませんから、無用な紛擾が起つてつて現状を惡く激化して行くということの慮れのある点は、この際少しでも直して下すつて、円満に私の期待するように明朗に法が運用されるようにお願いしたいと思いますが、如何でしようか。
  65. 石原幹市郎

    政府委員石原幹市郎君) 御意見として十分承わりまして、先ほど申上げましたように、今後この法が運用されて行きます上において十分適正なる運用が行われまするように努力して参りたいと思います。
  66. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) ほかに御質疑ございませんならば、今日の……。
  67. 羽仁五郎

    羽仁五郎君 各條項についてはもう少し伺つておきたいと思うのです。併し一応私は総括的な質問は終りましたので、他の委員もいろいろ御意見があることだろうと思いますから……。
  68. 徳川頼貞

    委員長代理(徳川頼貞君) ほかに御質疑がございましようか。若し御質疑がなければ、法務、外務の連合委員会は、今日はこの辺で閉じたいと存じます。明日は午前十一時から開会いたします。  これで連合委員会を閉じます。    午後三時四十一分散会