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政府委員(土屋隼君)
只今の御
質問に対しまして私ども当時会議に参加いたしました者の、西経百七十五度という線を引かずに済めば、何か済ませる方法はないかということを苦慮いたしまして、何分これにつきましては時間と労力をかけて
考えて見たわけでありますが、
お話のようにこの
条約の中に実績を認め、
保存措置を認め、科学的な
調査の結果を認めて或る
魚種については
保存措置を必要と認めるが故に実績のない国が
抑止をして行くと、こう絞
つて参りますと、遺憾ながらこの附属書に掲げられました
さけにつきましては
日本は実績がないという点から絞られて、どうしても
一つの線を引かざるを得たいという結果になりそうにな
つたものですから、
日本側といたしましては、
お話のように元に帰る
さけはどつか途中で掴まえればいいので、真中に線を引く必要はなかろうということになるのでありますが、さて帰る線をどこで一体切るか。
日本の領土ばかりでもございませんのでその点に実は非常に難点ができたわけであります。そうこういたしまして両者の意向を合しました結果、これは両者が大陸糸の
さけとアジヤ系の
さけと
アメリカ糸のさげとが恐らくは実際上べーリング海の真中で仲良く遊んでおるかも知れない。仲良く遊んでいる際にどつちの
さけだと分けることはできないからここで、大体まざ
つている
地域から分かれの
地域はどこだろうかという点から
考えて、
日本は更に百七十五度よりも西を
主張いたしたわけでありますし、
アメリカ側は東を
主張いたしたわけであります。今回の会議におきましては断定線を下すだけの材料が、両者の
意見が違い、材料が違いますので決定を見ませんでした。そこで遺憾ながら暫定線として百七十五度線という線を引かざるを得なか
つたのですが、ただこれについては、我々の苦衷を買
つて頂きたいと思いますのは、百七十五度の線は一応その島の近所に引きましたが、下の方には線が引かれていないわけであります。
従つて下の方には線がないわけであります。尻切れとんぼであります。ここにおいても
関係者の苦心を買
つて頂きたいと思うのであります。ただこれは
お話のように今後東南アジアその他の国との
条約に当りまして
一つの例にとられるということは確
かに日本側にと
つて不
利益のように
考えられますが、同時に私どもはこの東南アジア、特に韓国につきましては、李承晩ラインを初めとしてかこいをしてしま
つて日本を一切入れないという違
つた意味の線を引こうとする傾向が多分にあるわけでありますから、それに対しましては
日本は第三条並びに第四条に掲げたような厳たる科学的な現実に基いて
最高生産性を上げるためには協力しましよう、それがためには線を引くこともあえていといませんという
はつきりした
態度を示しまして、そういう点が具備された場合においては
日本もこの
保存措置に
従つて或る
程度その
魚種に限
つて或る
一定の
地域を
保存措置の
地域としてきめることについても差支えなかろうと、こういうふうに
考えますので、この線を引いたことは、必ずしも
日本に万全の策であ
つたとは
考えませんが、同時に
他国との
交渉において非常な悪例を残し、これがために
日本が非常な実際上の不利をこうむるというふうには実は
考えなか
つたわけであります。いずれこれにつきましては
水産庁長官の
意見もあると思いますが、
外務省の
関係者としてはそういう
考えで暫定的な線を引かざるを得ないわけであります。