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国務大臣(野田卯一君) それでは極く簡単に、私も大分前でありますから、或いは多く記憶はだんだん薄れて行くわけなんでありますが、
一、の
航空機の
型式証明(又は型式承認)は、
運輸大臣の所管とすること。但し、
生産関係の重要
事項については、
通産大臣の
意見を徴すること。
これは
航空機の
型式証明、どういうタイプの
航空機を作ることを認めるかということにつきましては、これは飛行機を実際運営している方面のかたがそのことに対する所管をされればよろしいじやないかというような観点からいたしまして、このようにいたしたのであります。併しながら飛行機の
生産につきましてどういうタイプの飛行機を作るといいましても、それが
日本の現在の工場の生殖設備なり或いは原材料、
生産能力といいますか、そういうものを無視して、或いはそれに余り注意を払わないでするのは、そのタイプが実際上
生産を不可能とするというようなことになりますので、そういうような
生産関係の重要
事項については
通産大臣の
意見を十分聞いてや
つてもろうことにいたしまして、これは
意見を徴するのでありまして、協議ではないのであります。協議になりますと共管みたいになりますから、
意見を徴するということにいたしまして、これらの最後の
責任はこの問題は
運輸大臣にあるのだということにいたしまして、共管を避け、必要な程度において
運輸大臣の
意見を十分聴取すると、こういうことにいたしたのであります。
第二点の
航空機生産工場の
生産施設に関する証明は、
通産大臣がこれを行う。
いわば
航空機生産工場の中の問題でありますので、この
生産施設に関する証明というものが現在行われているかいないか、近い将来に行われるか行われないかということは、又別にいたしまして、こういうような種類の事柄については、こういうものがある場合におきましては
通産大臣がこれを行うという範囲を明確にしたのであります。第三点の
生産過程における
検査については、(イ)
生産技術
検査は
通産大臣の所管とし、(ロ)
安全性検査は、
運輸大臣の所管とする。
この
生産過程における
検査の問題が先ず論点にな
つたのでありますが、これはいろいろと専門家の
意見を聞き、いろいろと研究いたしておりまと、この
検査を二色の種類に分け得るということにな
つて参
つたのであります。この(イ)に書いてあります
生産技術
検査は、或いは言葉を換えて申しますと、製造
検査と言
つてもいいのであります。製造の全
過程においての
検査でありまして、この問題につきましては
通産大臣の所管とする。併しながら飛行機はその
安全性を非常に重要視されるものでありますから、この
安全性の
検査については飽くまでも
運輸大臣が
責任を持
つて頂くという意味におきまして、飛行機の
生産過程における
安全性の
検査はこれを
運輸大臣の所管とすることに、こういうことに、はつきりいたしたのであります。
安全性という点については飽くまで
運輸大臣の
責任一本にするということを
考えておるのでありまして、それが製造
過程の
検査においてこういうふうに現われて来たというふうに御了承願いたいと思います。第四の前項(ロ)の
検査は、(A)当該工場の従業員(運輸、通産
両省共同にて行う
検査員
試験に合格したる者)及び(B)
通産省の職員(その任命については
運輸大臣に協議することを要する。)に委託して行わしめる。
検査は(A)が主としてこれに当り、(B)は極く少数とし極めて緊要なる
検査のみをなすこと。
検査規則、
検査標準等は運輸、通産共同の
省令等にて厳密詳細に
規定すること。
こういうふうにな
つております。これは
安全性の
検査についてどういうやり方をするかということを
規定したわけでありまして、これにつきましては、先ず任に当る人の問題でありますが、人は先ず原則といたしまして当該工場の従業員にやらせよう、部分の
検査は従業員にや
つてもらう。併しその従業員は重要な任務を行うのでありますから、運輸、通産共同で行う
検査員
試験に合格した者である。それから次に
通産省の職員の
検査は全然やらないのかと申しますと、全部を当該工場の従業員に任せきりにするのも如何かと思われる現状でありますので、極くキー・ポイントについては職員も
検査をすることができるという
結論に達しましたので、どこの役人にさせるかということにつきましては、これは
通産省の職員を使おう。併し
通産省の職員であ
つても、これが
安全性の
検査を担当するのでありますから、
安全性の
検査というものは先ほど申しましたように、
運輸大臣の所管とするというふうにな
つておりますから、身分的に申しましても、その人がこの職員になる場合には、
通産大臣が
運輸大臣に十分協議して、これなら大丈夫だと
運輸大臣が安心するような人を任命するということになりまして、この
安全性の
検査自身につきましては先ず
運輸大臣の指揮
監督に服するということにいたしたのであります。現在今申しましたように大体二項に従業員にやらせることが建前でありまして、職員がやるということは極く少い、極く緊要な部分にしようと、こういうことにいたしまして、職員がたくさん工場内に入
つて来まして、あれこれと口出しをすることを極力戒めて行きたいということであります。第三項は、この
検査の
規則並びに
検査基準というものは、これは非常に大切なのでありまして、最近のアメリカの
航空機生産工場の実情をいろいろ詳細に聞きましても、しつかりしたものを作りまして、それによ
つて検査員は殆んど機械的に
検査をして行く。でありますから、
検査員そのものはそんなに優秀じやなくても、この基準、
検査標準というものはしつかりできておりますから、機械的にや
つて十分成績が挙げられるということに、こういうふうにな
つておるということを聞いておるのであります。
日本でも是非将来そうしたい。
各国ともそういうふうになりつつあると思います。この
検査規則とか
検査基準というものは厳密詳細に
規定したい。これは
運輸省と
通産省において共同で以て
省令とかその他について共同でよく相談して作
つて頂きたい、こういうことであります。この
検査は
運輸大臣の所管である。併し製造工場の所管は
通産大臣が全面的な権限を持
つておりますので、その間の調節に大変苦心をいたしまして、こういう
検査方法をとることにいたしたのであります。
第五、の
耐空証明は、
運輸大臣の所管とすること。
これは殆んど問題ないように思うのでありまして、耐空の証明は
運輸大臣にやらせる。
それから第六、の
航空機の修理については、(イ)
航空運送
事業者又は
航空機使用
事業者の行う自家修理及びこれに準ずるものについては
運輸大臣の所管とし、(ロ)
航空機生産工場にて行うものは製造の場合に準ずる。
この(イ)は、例えば日航であるとかその他
航空機を使用する
事業者が自分の所で行う修理、これにつきましては
運輸大臣が所管をする。又そういう
事業者が集ま
つて作るような修理工場、例えば今具体的の計画といたしましては、日航とノース・ウエストが共同出資をいたしまして修理工場を羽田の飛行場に作るという計画があるのでありますが、若しそういうものができたときには、そういう工場における修理は
運輸大臣の所管とするということを
規定したのであります。それから(ロ)のほうは、
航空機生産工場で行うものは、当然大規模な修理になると思いますが、そういうものにつきましては、製造の場合と同じように
安全性の
検査を
運輸大臣の所管とすると、それから製造全体の
検査は
通産大臣の所管とするというような、この製造の場合のあれが準用される、こういうことに相成るのであります。
それから七は、予備品証明は、製造の場合に準ずる。但し、同一品に対する第二回以後の証明は
運輸大臣の所管とすること。
これは予備品については、御
承知のようにプロペラであるとか、エンジンであるとか、予備品の証明は製造の場合と同じである。但し、飛行機のプロぺラ或いはエンジンというものは、一年間は
型式証明はあるが、一年間経
つてしま
つてそれを使うという場合におきましては、もう一遍
検査証明を受けなければならん。こういうものにつきましては
運輸大臣の所管とするということにいたしたのであります。甚だ複雑なように見えますが、実際はそんなに複雑にしておらないのでありまして製造工場につきましては製造工場の所管
大臣である
通産大臣というものの地位を或る程度認めまして、併しながらこの飛行機の
安全性という点につきましては飽くまで
運輸大臣の
責任としてそれを一貫しておるというところに、この裁定案の狙いがあるということを付加えておきたいと思うのであります。