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1952-05-20 第13回国会 衆議院 労働委員会公聴会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月二十日(火曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 船越  弘君    理事 森山 欽司君 理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    篠田 弘作君       三浦寅之助君    山村新治郎君       熊本 虎三君    柄澤登志子君       青野 武一君    中原 健次君  出席公述人         中央労働委員会         委員会会長代理         慶応大学教授  藤林 敬三君         日本私鉄労働組         合総連合会中央         執行委員長   藤田藤太郎君         日新化学工業株         式会社常務取締         役       大谷 一雄君         東京水道局長 徳善 義光君         東京労働組合         連合会中央執行         委員長     河野 平治君         日本国有鉄道運         輸総局職員局長 吾孫子 豊君         日本労働組合総         同盟中央執行委         員       重枝 琢己君  委員外出席者         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 濱口金一郎君     ————————————— 本日の公聽会意見を聞いた事件  参考人招致に関する件  労働関係調整法等の一部を改正する法律案  労働基準法の一部を改正する法律案及び地方公  営企業労働関係法案について     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 ただいまより労働委員会公聴会を開会いたします。  労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案は去る十日本委員会に付託せられまして以来、審査を重ねて参りましたが、委員会が特に昨日に引続きまして本日公聴会を開き、三案について真に利害関係を有する方及び学識経験者等より広く意見を聞くことになりましたのは、申すまでもなく三案は一般労働問題として国民諸君にとつて重大なる関心を有し、かつ深い利害関係を持つ重要法案でありますので、本委員会としましては、右三案の審査にあたり、国民諸君の声を聞き、広く国民の輿論を反映せしめ、三案の審査を一層権威あらしめるとともに、遺憾なからしめんとするものであります。各位の御熱心かつ公平な御意見を承ることができますならば、本委員会の今後の審査にあたりまして多大の参考になるものと期待するものであります。私は本労働委員会を代表いたしまして、御多忙中のところ貴重なる時間を割かれまして御出席くださいました公述人各位に対し、厚く御礼を申し述べますとともに、各位の忌憚なき御意見の御開陳を希望する次第であります。  次に本日の議事順序について簡単に申し上げますが、公述人の人員を勘案いたしまして、公述人の御発言は二十分内外としていただきたいと思います。なお発言なさる前に職業、名前を一言お述べになつていただきたいと思います。なお公述人の御発言は午前、午後にわけまして、午前、午後にそれぞれ発言終了委員の質疑を行うようにいたしたいと存じます。これより公述人の御意見を聴取することといたします。中央労働委員会委員会長代理慶応大学教授藤林敬三君。
  3. 藤林敬三

    藤林公述人 私が藤林でございます。今の委員長のお言葉通り、私の考えておりますことを、この法案従つて申し上げたいと思います。但しこの法案改正条項が非常に多数でございますので、私は重要な点だけを拾い上げて申し上げてみたいと存じます。  最初に労働関係調整法等の一部改正に関する法律案の第四章に新たに規定された緊急調整の問題でありますが、法案趣旨に従いますと、公益上の理由をもつと労働大臣緊急調整の必要のあることを御決定になるということでございますが、この点に関しまして、若干この法案に対して修正を要するのじやないかと考えるのでございます。第一の点は、單に公益上の理由をもつてということになつておりますが、私は従来の公益事業における労資関係、なかんずく争議行為発生状況、かつまたこれに対する労働委員会調整状況と、これらに対して、従来の経験に徴してこの際ぜひ皆さんにお考えいただきたいと思いますことは、公益上の理由もとよりでございますけれども、緊急調整によつて五十日間争議行為を停止するという事実は、単純に公益上の理由だけではたして妥当であるかどうか、私は若干の疑問なきを得ないと思つておるのでございます。そこでこのように争議行為を停止するのでございますから、これにもう一つこの際ぜひ考えなければならん条件がある。それは労資の自主的な団体交渉によつて事態収拾をする自信を持ち、かつまた十分の社会的責任をもつて問題に対処しておる限りにおきましては、たとい公益上の理由からいうと若干国民大衆に不便が起きても、一応われわれ国民としては忍ばなければならないのではないか。従つて私の申し上げようと思いますことは、緊急調整事態労働委員会が取上げる。労働大臣がそういう決定をなさるという場合は、どうも自主的には問題が解決しそうにもない。また労使双方が自主的に解決しようという熱心さも持つていないし、十分にその責任を感じていないという事態があるならば、われわれは公益上の理由をもつてかくのごとき争議行為状態をいつまでも継続すべき理由はないと考えるのでございます。もし万一かくのごとき事態があるならば、これこそは緊急調整によつて事態の円満な収拾を早急にはかるべきものである。このような自主交渉による問題の妥結の道があるかないか、また労使双方にその熱意責任の自覚がどれだけあるかというような条件をここに入れる必要がぜひあると思うのです。そうでないと、ただ公益上の理由をもつてということだけならば、——たとえばついこの間行われた、私の隣りにすわつておられる藤田さんの御関係私鉄争議のごときは、皆さんすでに御承知通り東京、大阪その他で争議行為が行われまして、国民の足が奪われることによつてたいへん公益上不便を感じたのでございます。しかしこの場合は、労使双方皆さんも御承知通り、最後には自主的に問題を解決する熱意をもつてつて、遂に問題の妥結を見たのでございます。このようになつて行くことこそが、むしろ労働問題の解決としてははなはだ好ましいのでございまして、われわれといたしましては、事態がこのように行くならば、何も緊急調整によつて問題を吸い上げる必要は決してない。但しこのようでなく行くような争議も、われわれとしては今までに経験しないことはありませんので、私どもとしては、緊急調整規定を設けられること自体については反対ではありませんが、ただ今申しましたような事実のあることを知つて、われわれとしてはただ公益上の理由だけでなく、自主解決の道がないかどうかという点を、重要な条件としてつけ加えられることを希望せざるを得ないのでございます。  第二の点は、労働大臣が御決定になるということでございますが、私はむしろこれは策の得たるものではないと考えます。中には、これは労働大臣ではなくて、総理大臣が御決定になるという方がよろしいのではないかという御意見もあり、また。われわれ同士が議論いたしましても、その方がよいのではないかという考え方もなきにしもあらずでございますが、私はこの際これを労働大臣なりあるいは総理大臣なりということではなくて、労働委員会におまかせになる方がむしろ事態収拾上きわめて賢明なる策であるということをぜひ申し上げたいと存じます。労働委員会は、御承知通り三者構成でございますが、三者で議論いたしますと、なかなか問題のまとまりが悪いので——これはあと藤田さんにしかられるかもしれませんが、私は公益委員の多数でもつて緊急調整をやる必要があるかどうかを決定する。総理大臣並びに労働大臣はこの労働委員会公益委員決定にまつということにされた方が、はるかによろしいと考えておるのであります。と申します理由は、皆さんはこれまたよく御承知通り、労働問題の発生、これの解決に対して、いたずらに行政府が職権的な形で臨まれることは、問題の解決上場合によつては確かによろしくない。従来この労働委員会が旧労働組合法制定実施と同時に、すなわち昭和二十一年三月一日に発足をいたしまして今日に至るまで、ともかくあのインフレ時代の困難な争議状態の中で、何とか問題の処理をになつて今日に至りましたゆえんのものは、この労働委員会行政府からはやや独立して、そうして問題の処理に当つている。しかも委員民間から選ばれた者がやつているのです。なるほど事務局は、これは公務員でございますが、しかしこの事務局といえども、皆さん承知通り労働委員会事務局は、労働省のお役人とは違つて、多くは民間から抜擢された方が多いようでございまして、従つて労働委員会にいらつしやればわかりますが、やはり官僚的空気が比較的少いのでございます。このような労働委員会構成と事実の上で、労働委員会がともかくこの困難な争議を多少の信頼を得つつ解決の任に当り得たこの事実を簡単に抹殺されるような規定を設けられることは、労働委員会経験を持つております。私のごときは、とうてい了解しがたい点でございます。従来の争議解決状況から見ましても、何もことさらここに労働大臣がみずから御決定にならなければならぬというような経験は、過去において私はなかつたと思つております。もしも従来事態が非常に紛糾をして、そのようにでもしなければ問題は解決困難であるというような経験が何回かあつたならば、このような規定にも意味があろうかと思いますが、われわれの経験では、このような規定をことさらここで設けることは、労働委員会意味を半減するどころか、非常に多く減殺するゆえんである。労使双方からわれわれが多少とも信頼されておる点が、この点によつて抹殺されるおそれが多分にあるということを、皆さんにぜひ申し上げたいと思うのであります。  それから次に飛びまして、これは公労法改正点でございますが、公労法第十六条及び第十七条中、公共企業体という言葉公共企業体等に改めるということで、簡単にこれは過ぎておられますが、公労法中、従来の経験に徴しまして最も問題なのはこの第十六条の規定でございます。今回のこの改正で行きますと、十六条は大体内容はそのままだということになる。ひいてこの問題は、あと地方公営企業労働関係法の中にもこの公労法十六条の規定に該当するものが設けられております。それは地方公営企業労働関係法第十条でございますが、これに附帯して、資金上予算上の関係でもつて規則、条例等抵触事項は八条、九条というように掲げられておりますが、この十条の規定だけでは、われわれは非常に不安と申しますか、不公正な感じを持たざるを得ないと思う。新たにつくられます地方公営企業の場合におきましても、それから公共企業体の、従来からの専売公社国鉄公社職員諸君、今回は電通郵政、それから他の官庁の現業諸君、これらの方々がやはりこの法の適用を受けられるということで、団体交渉、あつせん、調停中裁というような経過をたどられるということに一応なるわけでございます。但し私の経験では、この四月の初めまで私が国鉄中央調停委員会委員長で、公共企業体労働関係法の施行以来約二年近くその職にいて、国鉄の場合の調停事案をいろいろと取上げて参りましたその経験から申しましても、公社職員の場合には、皆さん承知通り争議権は認められていない。争議権が認められていないならば、それにかわるだけの道が開かれなければならない。その趣旨公労法が設けられたということでございますが、一番かんじんのところに来ると、十六条の規定によつて仲裁裁定が出ましても、ただちにもつてこれが実現されて行かないということになる。かつて第一次第二次の国鉄職員賃金の場合の仲裁裁定の行方につきましては、皆さんすでに御承知通りであります。かくのごとくであるならば、このような公共企業体労働関係法が設けられて、団体交渉をやるとしまして、その第八条に、また今度の公営企業の場合におきましても同様でありますが、第七条に団体交渉範囲規定されております。いの一番に賃金給與というものが団体交渉対象であると書いてありますが、実はわれわれの経験から見ますと、はたしてこういうことを書いてありましても、団体交渉対象になり得るのかなり得ないのか、いわば労使双方、ことに雇主である公社側団体交渉能力がはたしてあるのかどうかということが、確かにこれは問題であります。やはりこの問題は企業といい、団体交渉といい、その対象賃金があげられるとするならば、ほんとうの趣旨からは団体交渉でもつて賃金問題が自主的に解決できる可能性があり、道があるということでなければ、こういう規定意味をなさない。ところがはたしてその可能性ありやいなやについては、われわれの経験からいつてきわめて疑問である。いわんやその上で今度は調停をいたしますが、調停をいたしましても、なかなか簡単に調停でこの問題が納まるような状態ではない。従つてどちらかというと、これは拘束力のある仲裁へ持つて行くということになる。仲裁裁定を仰ぐような道をわれわれとしても急がざるを得なかつたというのが、過去の経験でありますが、さて仲裁裁定が出ても、公労法十六条の規定に従いまして、ただちにはこれが実現できないということになりますと、初めにさかのぼりまして、賃金給與について団体交渉対象になると規定してありますけれども、これ自体がきわめて疑問であるということにならざるを得ない。言いかえますと、ここにははなはだ筋の通らないものがあるやにわれわれは考えざるを得ないのであります。このような規定が現存いたしますこと自体に、私たちとしては、やはりもう一度何とか考え直す余地があるのではなかろうか。しかも今回の改正法制度を見ましても、その点に何の考慮も加えていないのは、私としてはなはだ遺憾である。こういわざるを得ないと思います。  それからあとは若干技術的なことを申し上げたいと思いますが、公共企業体労働関係法改正案第二十一条で、従来は国鉄専売別々の調停委員会でございましたが、今度は全部一本にいたしまして、調停委員会一つ、但し委員は三、三、三の九名ということにきめられておりますが、はたしてこのように九名で十分に、ことに中央調停委員会というものの事務処理して行けるかどうかということにつきましては、私は二年近くの経験から申しますと、これはたいへん疑問だと思います。従来二年ばかりの経験で申しますと、私は国鉄の方を処理いたしておりましたが、国鉄の場合でも、調停事案か一時に四つも出て来たことがあります。しかも同じ時期に専売公社の方の調停委員会にも、三つも四つ調停事案が出ておる。委員は三人ですからだれもかわつてやる者がない。三者構成り三人委員でありますから、これでやりて行かなければならない。しかも調停は二箇月以内にやらなければならないということで、これは非常に困るのでございます。そこで今度は他の郵政電通その他の現業諸君も、もしも調停委員会で取上げるということになりますと、はたして九人の委員で、ことに公益委員は三人で、あつせんなどやる場合には公益委員一人でもやれますが、しかしそうなりますと、公益委員の三人で用を足すかということも、これはたいへん疑問であるといわなければなりません。従つてここで一つの便法は、労働委員会の場合に、特別調整委員というものを今度新たに設けられるようでありますが、公労法の方の調整機関の場合におきましても、調停委員会についてそういう特別調停委員制度考えておく方が、実情処理して行く上において必要なことではなかろうかというふうに考えます。それから同じことで、仲裁委員が三名でございますが、これは皆さん承知通り、従来とても国鉄調停専売調停ということで別々に調停委員会がございます。その下に国鉄には地方に九つの地方調停委員会があり、専売には八つの地方調停委員会があります。これらの調停委員会を合せますと二十を越える調停委員会ということになります。この地方並びに中央で扱われた調停事案が不成立に終りますと。今度はこれが仲裁に行くことになります。ところが仲裁委員会一つでしかも三人委員だというので、発足いたしました当時から、事案が殺到するとどういうことになるのかという疑念を私自身はひそかに持つておりました。今日までどうにか仲裁委員の三人の方でやつて来ておられますが、やつて来ておられるのにつきましては、調停の方の事案を担当いたしました私といたしましては、仲裁委員会のこのような状態はやはり考慮に入れなければならなかつたわけです。調停事案がどんどん上つて参りますれば、われわれの考えでは先ほど申し上げましたように、公社にはたして団体交渉能力がありやいなやというような状態ですし、調停委員会拘束力を持ちませんから、なかなか問題が片づかない。片づかないので仲裁に持つて行く。仲裁に持つて行くと、仲裁委員会は三人でやつておられますから、どんどん仲裁委員会に問題を持ち込むのも考えなければならないということで、調停委員会としてはいろいろ苦心さんたんいたしまして、何とか仲裁まで行かないで問題が解決をしはしないだろうか、またそうすべきではなかろうか、全体の調整機関を運営して行く立場から、その一端の責任を持つておるものといたしましては、こういうこともやはり考えざるを得なかつた。私は調停をやつておりますから調停のことだけ考えればいいでは問題は納まりません。やはり全体のことを考えなければなりませんので、私としてはこのような苦心を相当しました。このような経験から申しますと、仲裁委員会一つで、しかも三人委員だということ、しかもこれは非常勤の三人委員でございますから、事案殺到状況等によりましてはそう円満に問題を着々と解決して行かれるかどうか非常に疑問でございますので、この場合にもやはり、私の考えとしては、少くとも仲裁委員会委員は、三名でなくて五名ぐらいを必要としはしないか、もしもそれが実現できないならば、この場合にもやはり臨時調整委員と同じように、副委員制度というようなものを設けられ、何人か置かれるというお考えをぜひおとりになることの方が、事案処理上非常に好ましいのではないかということを申し上げたいと存じます。  それから地方公営企業労働関係法案の方でございますが、それの第三条に、公営企業としてそこに一から六まで列挙されておりますが、私はこの列挙に漏れておるものが若干あるではなかろうかと思う。一つ県立病院などというような場合がそうではなかろうかと実は思うのでございます。病院は労調法では公益事業に指定されております。とにかく病院が確かにここから落ちているのではなかろうかというふうに思います。もう一つは、これは非常に大事なことでございますが、ここに列挙されたものは、大体交通、電気、ガス、水道など普通公益事業に限られておりますが、しかし地方公共団体職員の中で、現業的仕事をしておられる方がいろいろな局におられるわけであります。たとえば民生局でいろいろな仕事をしておられる、民生局職員全部ではありませんが、民生局に所属しておる一部で種々の現場的仕事をしておられる方がおられるような場合があり得る。もしそうだとするならば、その局のいかんを問わず、その局の職員の中で現場仕事をしておられるような人は、今度の公労法改正で、従来の国鉄専売の二つのものに対して郵政電通そのほか林野庁であるとか、印刷局であるとかいうようなものが附加されました。こういうような現業が附加されたと同じ趣旨におきまして、その局のいかんを問わず地方公共団体職員のうち現業言葉をかえて言えば、肉体労働に従事しておられる方が各部署におられるはずだと思います。そうしてそれは公益事業というような観念ではちよつとつかみにくいものが中にあると思います。そういうものは現業労働であるという意味で、やはりここに列挙する必要はあると私は考えます。  それから第五条の非組合員範囲は、政令で定める基準に従い条例できめると書いてあります。これは公労法の場合にも大体政令できめるということで、その例にならわれたわけでありまして、今回は公労法改正にそれがないわけでありますが、しかしこれを一方的におきめになるということは、何か組合側に割り切れないものを残すことになりはしないか、いずれかと申しますと、労働問題といたしましては、団体交渉でこういうものをきめましても、それほどの問題でございませんので、こういうことまで政府が一方的にきめ、雇い主側が一方的にきめるということはやはりやめて、労使双方が協議してきめるとでもなさる方がよろしいのではないか。そうしてもしもそこで話合いがつかなければ、調停委員会というものがそこに入つてこれをきめるということにした方がよいと思う。これは民間の場合には、中労委あるいは地労委などでもしばしばこういう問題を取上げておりますから、そういういわば民間企業の場合における労働委員会の慣行もありますので、そのようになさることがかえつてよろしいかと存じます。  それから地方公企労法で一番中心的な大事な規定は、第八条、第九条、なかんずく第十条でありまして、先ほど申しました第十六条と合せてこれが問題の規定であるということでございます。  以上私は気のつきました点、おもだつた点を若干拾い上げて意見を申し述べさせていただきましたが、私がこのような意見を述べましたのは、私は法律家ではございませんので、法律論的なこまかい議論をするだけの学識を持つておりませんが、私の以上申しました議論の出発は、従来すでにまがりなりにも労働委員会制度あるいは公労法による調停委員会制度というもので争議調整をやつて参りました。そしていろいろわれわれ考えましても、経験上はなはだ遺憾であるというような事態もある。これは何とかしなければこのままではいかぬという経験を私は持つております。従つて緊急調整という制度に私は賛成いたします。いたしますが、今回の改正を見ますと、従来われわれが持ちましたいろいろな経験を急に改めて、しかもかえつて事態円満妥結ということの妨げになりはしないかと思われる改正があることを私は指摘いたしたい。従つておよそ法の制定なり改正なりが、現状の事態からあまりかけ離れて行われるということは、立法論としてしろうとの意見を述べますと、私はかえつて不適当ではなかろうか、実情に合うた法律制定される方が妥当ではなかろうかと思います。現在のわが国の労使関係相互の実態、これらを考慮した上で、また労働委員会は何をしておるかということを考慮した上で、法の改正がはかられてしかるべきである。以上のような立場で若干の点を申し上げたのでございます。これで私の公述は終ります。
  4. 島田末信

  5. 藤田藤太郎

    藤田公述人 私は藤田でございます。このたびの労働関係法改正につきましては、労働組合としては重大な問題であります。われわれは改正でなく改悪だと考えておるのでございます。私自身公益事業労働組合立場からこれについて意見を申し述べたいと思うのでございます。  戦後六年以上経過いたしました現在において、その間に二十四年六月に一回の改正がございましたけれども、労働組合としては改正に対する意見はたくさんございますが、一応現行法の上に立つてこの労使調整が進められて来たということであります。労使調整の根本は、労使が対等の立場で、要するに労働組合罷業権を持つことにおいて対等のバランスがとれていると考えるのであります。この対等の立場で問題を調整するに支障のない法律がつくられて、運営されるところに意義があるものと私は考えておるのでございます。われわれ労働組合といたしましては、日本の民主主義を確立すると同時に、過去のような悲惨な状態に労働者が置かれることを繰返さないという強い信念で労働組合運動を進めて参つたのでございます。過去のような状態労使関係を現出するならば、日本の民主化はおろか、日本の経済の復興は期待が持てないと思う。過去のような状態にわれわれは追いやつてはいけない。われわれ労働組合は、民主主義確立の一方の力をになつているという認識の上に立つておるのでございます。  このたびの改正につきましては、要点を申し上げますと、まず第一に第十八条の五号の調停申請の却下の問題から申し上げて行きたいと思うのでございます。今度の改正の一番大きい問題につきましては、何といつて公益事業その他の争議制限の問題にあるのでございます。これをわれわれが検討いたしますに、現代の公益事業労使関係がいかなる状態にあるかということを、例をとつて具体的に御説明申し上げまして、その上に立つて却下その他の問題について話を進めたいと思うのでございます。現代の公益事業労働組合は、労調法三十七条による調停申請をいたしまして、三十日の冷却期間が過ぎなければ、罷業行為は許されておらないのでございます。調停委員会にゆだねられるわけでありまするが、調停委員会は、調停申請があつてから十五日すれば調停案を出すことに、法律の上ではなつておるのでございます。公益事業労働委員会の申請いたしました調停の問題が、いかような状態にあるかということを参考までに申し上げたいと思うのでございます。中央労働委員会において、二十四年の四月から七年の三月までの間に、調停が三十九件行われております。そのうちで、たとえば労働協約であるとか、特別に長くかかつているもの六件を除きまして三十三件でございまするが、これがどのような状態で進行しているかということでございます。労働組合が要求いたしましてから調停申請をするまでの日数が平均四七・二日かかつております。調停申請いたしましてから調停案が出されるまでの日数が五一・六日かかつておるわけであります。それの提示後において両者が回答するまでが一九・二日であります。中央労働会委員調停は、公益事業ばかりでございませんが、公益事業が当然この中のほとんどであります。このような状態調停が努力されながらかかつているのでございます。この三十三件の中には、突破資金、越年資金の問題とかいうようなものが含まれておるのでありまして、基本的な基準賃金その他の問題につきましては、もう少し長くかかつていると思うのでございます。われわれ労働組合といたしましては、三十日の冷却期間が過ぎたからいつて調停をお願いし、調停の進行中にストライキをやつたことはございません。調停案が出て、それを下部で審議する、要するに組合の間で審議する期間が大体一箇月から、全国組合であるなら一箇月以上、一箇月半かかるのが普通でございます。この上に立つて解決までの日数を申し上げましたが、そのような状態で、現在の公益事業労使関係は、労働委員会を通じて調整されているのが現状でございます。  労使間の争議のときの労働者側の態度の問題でございまするが、われわれといたしましては、できるだけ自主的に解決したいということで、要求書を出しましてから相当長い間自主的に解決に努力するのでございますが、相手方の使用者側は、罷業権のない、要するに、調停申請しなければ冷却期間が発散しないのでありますし、三十日の冷却期間が過ぎなければ罷業権が出ないのでありまして、罷業権のない組合に対しては、最近では自主的交渉におきまして、具体的に解決するような回答をしたことがないのでございます。ですから、連日労働組合は交渉意欲に燃えまして、何とかこの自主交渉解決したいというのでいたしますが、調停申請が行われ、または調停案が出てから問題にとりつく、冷却期間が済んでからこの問題に対して解決の話合いが進むというのが現状であるのでございます。  そこで今度の改正でございますが、このような公益事業労使関係があるという現状を十分にひとつお含みを願いたいのでございます。たとえば十八条五号の改正点であります。これは「申請をなした関係当事者による事件の自主的な解決のための努力が著しく不十分であると認めたときは、その申請を却下することができる。」とございますけれども、交渉が突き詰められていないときは、今のように却下ということになりますけれども、組合側が、先ほどから私が申しましたように、自主的な解決をいかに望みましても、調停申請をして罷業権ができるまではなかなか交渉の緒につかないというのが現状であるわけでありまして、これをもつて不十分であるという認定でもしも却下されるようなことになれば、公益事業の労働者のスト行使は将来できないという、非常に危険なおそれのある今度の改正点だと私は考えるのでございます。またこのような状態において、一方的に使用者側から押えつけられ、労働者側を益する何ものもないと私は考えるのでございます。  次は、三十七条の三十日の冷却期間を今度十五日に改めるという問題でございます。三十日の冷却期間を経なければ罷業権が発効しないというのが十五日になつた。これは非常に短かく、半分になつたので進歩したように見えますけれども、そうではないと思います。私が先ほどから説明いたしましたように、調停委員会にかかつてから平均五十日から二箇月もかからなければ調停案が出ない状態であり、この問われわれとしても、道義的にもこの結論を待つてわれわれの態度をきめるから、調停進行中にはストライキを行つたことはないのでありまして、このような状態を実際問題として見ていただきますならば、ちよつと見たところ、十五日ということは進歩したようでございますけれども、実際問題としては、この冷却期間を経なければ罷業権がないということと、調停進行中にストライキというものが実際問題としてやれるかどうかというような問題等からいたしますれば、結局見せかけに終るのではないかと思うのでございます。問題は労使が根本的に自主的に解決するのが建前でありまして、もしも解決ができないときには、この三者構成労働委員会調停またはあつせんにゆだねて、労使がその解決のために努力をするというのがあくまで建前であるべきものと私は考えます。しかし現状におきましては、冷却期間があるために、自主交渉自主解決がはばまれていることを見ていただくならば、冷却期間を廃止していただいて、そのかわりに一週間か十日の予告期間をもつてこれにかえていただくようにお願いしたいと思うのでございます。しかし一週間か十日の予告期間をもつてこれにかえていただくといいましても、われわれは公益事業の労働者でありますし、公益の問題については認識を持つているつもりでございます。もしも問題が解決しないで罷業行為に入るときには一週間か十日の予告をして、十分に国民大衆に知らしめる。そのような準備をすれば国民に了解していただけるのじやないかと思うのであります。こういうことになりますと、組合も使用者側も初めから問題の解決のために真劍に交渉せられ、罷業に至らずに解決するものがむしろふえるのじやないかと私は考えるのであります。もしも解決しないような場合が起きましたならば、できるだけ第三者の意見を聞いて、その上に立つて解決する努力は惜しんではならないと思いますし、そのような方向をとつたらよいと思うのでございます。  次に緊急調整の問題でございますがこの緊急調整の問題は、労働大臣緊急調整決定をされると、五十日間争議が禁止されるということであります。これは労働委員会において調停またはあつせんその他の方法でこの間に調整をはかるということでございますけれども、実際問題として五十日間禁止されましても、それだけ争議が長引くという以外にはないと私は思うのであります。争議解決をはかるには、やはり労使の問題解決に対する態度がまず第一であると考えます。単に五十日間罷業を禁止して、一方的に労働者の力を押えたからといつて、問題が解決するものではありません。両者の良識によるものと私は考えるのでございます。そこでたとえば現行法にも労調法の十八条五号に、労働大臣、知事が職権調停をすることができるということがありますし、これでけつこう緊急な問題については職権調停をやれるということでもございますので、今度の緊急調整、罷業さしとめ五十日という問題については、われわれとしてはどうしても納得が行かないのでございます。また「国民生活に重大な損害を与える」とありますけれども、われわれとしては、たとえばこれを使われるときの判断その他に対しては非常な不安を持つのでございます。そういうことになりますと、さつきから申し上げていますように、使用者側に益する以外に何ものもない、また争議を長引かす以外に何ものもないという結論になるのでありましては、われわれといたしましては、この緊急調整には絶対反対をするものでございます。  長くなりまして申訳ございませんが、もう一点だけお願いがございます。今度の労組法十五条の改正でございますが、有効期間の定めのない協約を改約するときには九十日の予告期間を必要とするということでございますが、たとえば、いろいろの問題について期間の定めのない協約がございますけれども、三箇月も前から予告しなければそれが改正できないということになるならば非常に問題でございますので、この点はわれわれといたしては、どうしても納得が行かないのでございます。この点もどうか労働委員会におきまして十分お考えの上にお願いしたいと思うのでございます。  時間も参りましたが、私は公益事業の問題点を摘出いたしまして、今度の争議行為の問題について、却下の問題冷却期間の問題、これを予告制度にかえていただきたいという問題。緊急調整の五十日というのは困るということ。それから労組法十五条の九十日間の予告についてはわれわれとしては非常に困る、こういう点はひとつ改正しないようにしてほしいという四点をあげまして、私の公述を終りたいと思います。
  6. 島田末信

  7. 大谷一雄

    ○大谷公述人 私は日新化学の大谷であります。  わが国の労働関係法は、わが国民主化の一環として制定されたのでありますが、当時そのバツク・グランドになります組合運動はきわめて未熟な時代でありましたし、当時のアメリカの占領政策その他によりまして多大の影響を受けてつくられたものであります。その後わが国の労働運動も次第に発達いたし、またわが国の産業も逐次整備して参つたのであります。これら数多き中小企業を含むわが国産葉の実態に即しまして今までできた労働関係法も逐次修正さるべきであると考えております。換言いたしますれば、憲法二十八条に規定してありますところの権利も十二条、十三条との関係におきまして、公共の福祉と調和せらるべきであつて、ただ一つの無制限なるものもあり得ないであろうと考えております。  今度の改正法について申し上げますと、まず第一に問題になるのは、調整法の三十五条の二のいわゆる緊急調整規定であります。公益事業その他特定の事業の争議公益に著しい損害を及ぼし、これを放置することによつて国民に重大なる損害を與えると認めたときには緊急調整決定をなして、中労委その他関係当事者に通告し、これによつて中労委はあらゆるあつせん、調停仲裁の方法等を講じ、一方公表後五十日間当事者は争議行為をしてはならぬと規定しておるのでありますが、いやしくも国民生活に著しい損害を及ぼすものである限り、これを当事者のみの問題として、未解決のままに放任することがいいか悪いかはきわめて自明でありまして、ここに法的措置を講じて、これが円満なる解決にあらゆる努力を払わんとする本案の趣旨は私はこれを了承するものであります。これをアメリカの例に見ましても九十日間の争議さしとめ、いわゆるインジヤンクシヨンがあります。なおこれで解決せぬときには、大統領の非常大権において、事業を接収するような規定もあります。また英国では、これは私が行つて来てないので、最近の事例として承つたのでありますが、なお強制仲裁制度もあるやに承つております。ロシヤにおきましては、争議することが絶対に許されないのであります。このように考えますときには、今度のような規定は、決して他に比較して行き過ぎとは申しがたいのであります。ことにその内容を見ますと、あつせん、調停仲裁、事実の調査公表、勧告、しかもこれらは仲裁は任意仲裁であります。双方が仲裁を申請した場合または労働協約に定めある場合となつておりまして、これをもつてしても、決して最後的の解決を見るかどうかははかりがたいのであります。ただここに緊急調整として事態を大きく取扱うことによりまして、双方の良識と解決のための意欲を喚起いたしまして、解決をはからんとするものだと考えるのであります。私も今日まで地労委の委員といたしまして、第一回の審問以来ここ五、六年間問題に携わつておるのでありますが、どうしたものでありますか、中労委の調停なり地労委の調停ではなかなか治まらないのであります。むしろ団体交渉が不熟でありまして、中労委なり地労委へ持つて来て、そこで初めて交渉を始める。そこで出た案が第一案となつて、さらにその次の争議に持つて行かれる。いわば調停、あつせんを行うところの労働委員会が第一案をつくるようなかつこうになつておるのが現実であります。しかも今までは個別的に行われた争議が、単に使用者に損害を與えるのみであるならば、日を異にして一日々々やつてもいいものを、一斉に行われることは、使用者に損害を與えるほかに公共に非常なる不便、不利を與える結果になるのであります。この点は軍に使用者に損害を與えるということ以上のものを感ぜざるを得ないのでありまして、今までの程度であれば、おそらく労働大臣緊急調整決定はなされますまいが、従来の例に見ますと、だんだん規模が大きくなつておりまして、国民として非常に大きな不安を感じておるのであります。いろいろ争議調整をやつておりますと、こういう法律問題とか労働問題とかを知らないような一般の人が、何とかならぬかと言うのであります。何とかならぬかというのは、一体調停やあつせんをやつてもみな断られておるではないか。これではどうにもならぬではないかというように私にはとられたのであります。今後労働運動がますます政治性を増加いたしまして、国民生活にきわめて重大なる関係を持ち、影響を與えることを考えますとき、私は実はこの緊急調整、しかもその内容を見れば、決定的であらざるものではたしていいのか悪いのか。さらに一歩進んで、強制的な仲裁または治安立法等も考えるのではないか。ただこれはやはり行き過ぎもあります。また労使の良識も信頼しなければならぬのでありますから、今ただちにその是非を論ずるわけには行きませんが、この点についても多大の疑問と関心を持つておることをここで表明いたしておきます。  次は労調法の十八条の、いわゆる十五日以内に自主的解決のための努力が著しく不十分であつた場合には、その申請を却下するという規定であります。これは今藤田さんからおつしやいましたように、確かに経営者の方も相手にせぬ場合もあつたでしよう。しかし経営者側に言わすと、やはり向うも相手にせぬ場合があつた。両方とも相手にせぬ。結局委員会に持つて行こうじやないか、こういうことであります。従つて先ほど申し上げましたごとく、委員会に持ち込まれると、イロハのイからやらなくてはなりません。これでは調停が長引くのは当然であります。そこに出た案が最終的な効果を現わし得るやいなやも疑問があるのであります。要するに本人がずつと幅を縮めて参りまして、もうこの点だというところまで行つて調停にかけられるのがあたりまえである。私はこういう意味におきまして、この規定があるならば、藤田さんがおつしやつたように、うつかりすれば却下されるからやはり誠意を示さなければならぬというふうに考えまして、労使双方とも虚心坦懐、団体交渉を自主的に行うことになろうと思うのであります。要するにこの規定ができたのは、今までの公益事業等の団体交渉があまりにも形式的であつたということで、その結果がこういうふうにして現われたものと断ぜざるを得ないのであります。私は地労委に長く関係いたしました経験から、これは労使双方の自主的解決を早めるか、もしくは調停を非常に便宜ならしめ、すみやかならしめるものであると思うのであります。ただ三十七条に、今までの冷却期間は三十日であつたのを十五日にしております。公益事業は電産、私鉄等に限らず、病院、衛生、電気、ガス、水道等もあります。これは地域的な問題であります。これらはやはり三十日くらいないと、実際調停はできないだろうと私は思います。でありますのみならず、これを十五日にいたしますと、なかなか十五日で解決せぬで、みんな緊急調整の方へしわ寄せされる危険があると思います。緊急調整は願くは起らないことを、そしてまた特殊な場合に限ることをわれわれは希望しております。原則としては、やはり現在の三十七条によつておおむね解決するということにしなければ、先ほど藤田さんが申されましたごとく全部こちらへしわ寄せされるのではないかという危険がなきにしもあらずであります。従つてこれはやはり三十日として、ただその三十日の場合に、却下する場合は二週間以内に却下しなければならぬというふうにつけられるならば、私は法としていいものになるのではないかと思うのであります。  次は特別調整委員の問題であります。今度の改正法によりますと、特別調整委員というものが、労使公益から出まして、そうして調停並びに仲裁に加わるのであります。仲裁はもちろん中立の方だけでありますが、現在の労働委員会は一体何をするかということがここで問題になるわけであります。あつせんにはあつせん委員があります。仲裁調停には、労働委員会委員も、この調整委員もなるとすれば、実は労働委員会委員というものは、この法律によつて有名無実に近いものになるのであります。そのやる特定の仕事というものは、法人の場合の組合の資格審査、これはほとんどなくなりますが、法へ登記の免税、地域的一般的拘束力、それから不当労働行為、これだけが労働委員会の任務ということになりまして、私はこれに多大の疑問を持つております。従いまして特別調整委員は緊急の調整の場合にのみ関係して、その緊急調整には特別の意味を人的構成においても持たせるということにした方が、特別緊急調整をして一段と軍からしめるゆえんだと考えるのであります。  次に、これは規定にはございませんが、ひとつひとつ私としての意見を申し上げたいのであります。労調法三十六条によりますと、安全保持の施設、いわゆる生命身体に損害を及ぼすようなことについては、争議行為としてでもこれをしてはならないという規定がありますが、もう一つ機器、設備の破壊を来す行為についてもまた同じということを附加していただきたいのであります。機械、器物を破壊いたしましては、争議解決後の労使双方とも損をします。機械、器物を破壊しないでも、労務提供を拒否することによつて使用者に十分な打撃を與えるのであります。こういうことは万々ないと思いますし、大体大きな組合では保全協定によつてつくられておりますが、これはひとつ書いていただいたらどうかというふうに思つておるのであります。  なお公益事業におきましては、争議の大要の予告をしていただきたい。たとえば争議はやる、電燈は何時から何時まで消す、ガスは何時から何時までとめる。そうしておきませんと、一般の家庭は木炭もない、ちよつとバケツに水をくんでおくのを忘れた、ろうそくを買うのを忘れたということになります。これは一般企業はそれによつて、別に損害はどうというわけではありません。ただ大衆が困ります。大衆は労使関係には無関係な方々でありますので、公益事業におきましては、その争議の大要を予告するという一つの項目を書いていただいたらどうかと考えるのであります。  次は労働組合法であります。労働組合法は、今度は争議中の資格審査をしなくてもよいということになりました。私はこれは賛成であります。実際やつてみましても、その通りには実際でき得なかつたのでありますから、できていない法律改正されてさしつかえありません。しかしながらそれではこれをしなくなつたらどうかというと非常に矛盾が起きます。今日これがなくなりますと——資格審査の恩典は法へとなつて免税を受けるとか、損害賠償、不当労働行為、こういうような場合に正当なる組合であるかどうかという資格審査を受けて、資格審査の結果適当なものであればよいわけであります。しかしこれには法の第二条かによりまして、一定の職務に携わる人、または経理上の援助を受けてはならないということがあります。ところが職制が改正なつた。そうして当然非組合員である者が今まで通り組合員として残つておる、また一部の思想的な上部の職務の人が、みずから進んで組合に入るというような場合、一体どうして資格審査というものをやるか、このことによつてそれが資格審査として不適格な組合員なつた場合に、今までの法人としてのいろいろな特典は一体どうなるのだという問題があります。従つて使用者またはその他から特に申請のあつた場合には、資格審査をするというくらいの規定を残置すべきであると思うのであります。あとは大体賛成であります。  次に労働基準法でありますが、今度の改正は大体労使公益三者で基準委員会におきまして協議決定せられました線に沿つて出て来ておるのでありますが、ただ二、三の点を申し上げますならば、まず第一に適用の範囲の問題であります。私はただいま資格審査が実際にそぐわないからやめたらどうかということには賛成だということを申し上げましたが、基準法に従えば、一八のところでも実は適用がある。しかし実際は行われておらない。これは法の権威を失墜するものであるのみならず、わが国の実情にそぐわないものでありますから、労働基準法の適用範囲を、五名なりあるいは十名なりに適用できる程度に改める方が、法の権威を維持するゆえんであります。  次は残業時間の協定であります。最近残業時間の協定に関しまして、別段の理由なきにかかわらず、これを拒否する一種の風潮があります。しかもこれは労働法反対のゼネストには参加せぬけれども、おれはこういうものを拒否したのだということを言うために、たつた一ぺんだけ拒否するというわけであります。私はアメリカへ行きまして、お前のところにこういう法律が、あるかということを申しましたところが、ない、おとなになれば労働時間は何ぼ、残業した方がいいかどうかはかれらがみずから判断する、こういうことを言つております。私はこの規定を削除いたしまして、労使の判断にまかせた方がいい、そこまで一々やる必要はないのではないかと思つております。  もう二つ、三つありますが、一つだけあげますと、今日日々雇い入れられる者は一箇月、それから試験雇いが二週間、それから期間の二箇月以内の定めのある者は二箇月を経過すれば、すぐ一箇月の予告期間をやらなければならぬことになつております。中小企業におきましては、これはなかなか耐えがたきことであります。しかもあらかじめその人の雇用関係の期間というものがわかつているのに、かくのごとき制度は少し厚きに過ぎると思いますので、この点についてもお考えを願いたいと考えておるのであります。  最後に公労法関係でありますが、私は実際問題としてこれに経験がありませんので、この際に是非を言うことを差控えたいと思いますが、公務員であるということ——もちろん現業の公務員に今度限られておるようでありますが、その公務員という一つの概念から言いまして、今度の改正が適当であるかどうかということについては多少の疑念を持つているということを申し上げまして、私の公述を終らせていただきたいと思います。
  8. 島田末信

    島田委員長 それでは、ただいままでに公述を一応終了いたしました藤林公述人藤田公述人及び大谷公述人に対する質疑を許します。船越弘君。
  9. 船越弘

    ○船越委員 藤林先生に一、二お伺いしたいと思います。先生は緊急調整の必要性は認めている。ところがこの緊急調整決定するのが、政府機関である労働大臣がやるところに修正する部面があるのではないか、こういうお説のように聞いております。それでこういうふうに緊急調整でもやらなければならないような国民生活に重大な損害を與えるような事態になつて来て、そのときに中央労働委員会公益委員だけでこの緊急調整をおとりなつて——中央労働委員会は御承知のように政府とは独立した機関ではございますが法的には何ら責任を問われないところの機関である。ところが緊急にしてまことに重大な事態の場合これを放置することはできない、労働委員会公益委員だけにまかせることはできない、どうしても国会に責任があり、国民責任を負うところの政府としてはこれをほつておくわには行かない、そこで労働大臣としては緊急調整をやる、こういうふうに私たちは聞いております。そこで結局国会や国民責任のある政府がこれをやるのが至当ではないかと思われる点があるのであります。もちろん先生のおつしやるように、労使の紛争問題に一々政府が介入するということは私もとらない。しかしこういうふうな緊急状態のあつた場合には、政府は措置をとらざるを得ないのではないか、またとるのが国民に対する責任ではないかと私は思う。そういう点についてもう一度先生のお考えを聞かしていただきたいと思います。
  10. 藤林敬三

    藤林公述人 お答えいたします。労働委員会といえどもやはり広い意味におきましては政府機関でございまして、その関係者である私たちは、やはり政府機関としての責任も痛感しなければならない。いわんや労働争議の問題が公益上至大な影響がある場合には個々具体的の問題については、だれよりも最大の関心を払つてその経過を見ておるのでございまして、従つてその場合には政府部内にもいろいろな事態の推移によつては御意見もありましよう。あるいはまた一般の輿論も沸き立つて参りましよう。そういうようなことをまるきり知らないでおつたということは中央労働委員会としていまだかつてありません。私たち労働委員会としては、このような事態に対し、ただ簡単に調停案を出せばそれで終りだということで今まで推移しておりませんし、先ほど私は実態に即してということを申し上げましたが、労働委員会としては調停機関としての責任争議の実態を追究しております。だから場合によりますれば臨機応変に緊急調整決定するということくらいは、政府が労働委員会におまかせになつた方がよいのじやないかと私は思います。いわんや労働委員会のやりますことをその時期を失しておるとか、不適当であるとかいうような御意見であるならば、委員会委員の任期は一年でございますので、適当にこれをおとりかえになることも政府としておできになるのではなかろうか、ましてや公益委員については、やはり労使双方の同意が得られますから、労使双方に同意を得る前にメンバーとして候補者をお出しになるのは政府であるので、不適当だと思えばそれを留保するなり、それを罷免できるのじやないかと思つておりますが、そういうような措置をおとりになつてもよいのじやないかと思います。何も労働大臣だけが国会に責任を持つということはない、なるほど労働大臣は国会においては労働行政の所管大臣でありましよう。われわれではございませんでしよう。しかし法的な機関としては、国会に直接責任があろうがなかろうが、われわれはやはり関係者の一人として、たとえ公益委員だけでなく、労使双方委員の方々も、今日では労働委員会という法的機関の存在については十分の自覚を持つて事に処しておられるから、そういう御心配というと非常に失礼でありますが、私の方にさせていただいても決して不都合なことはないのではないかと思います。ただ法理論的に申しますと、あるいは行政的ないろいろな観点からいうと、御説のような点のあることは私もよく存じております。またそういう御意見もたびたび伺つておりますが、しかし先ほども申しましたように、労働争議というものは生きものだということをこのごろはだんだん言われなくなりましたが、前にはよく言われまして、どうも杓子定規で行かぬ面が多分にあるものでありますから、このような措置の方が私はよろしいのではないか、こういう意見であります。
  11. 船越弘

    ○船越委員 もしこの労働大臣の権限をうんとしぼりまして、いよいよ緊急にしてしかも回復できないところの影響を国民生活に與えるときに、初めてやるというようなことがあつても、やはり公益委員会にまかせた方がいい、こういう御意見でございますか。  それからいま一点は、労働大臣公益委員の諮問を経てこういうことをやる、こういうふうに考えたらいかがかと思いますが、その点いかがでございますか。
  12. 藤林敬三

    藤林公述人 あとの方の御意見は私などもかつてつておりました意見でございまして、公益事業に指定する場合に、総理大臣中央労働委員会決定従つて特別のものを公益事業に指定することができるという規定が旧労組法にあつたように記憶しておりますが、しかしこれは双方の過半数が同意しなければならないので、事実上不可能なような規定でございます。そういう例もございますので、私といたしましては、それは労働大臣が要求されれば労働委員会できめる、但し三者できめるのでなくて、公益委員だけの過半数できめるというやり方は一つの便法かと存じます。しかしそれくらいできまるならば、実態はやはり労働委員会がきめるのと同じことでありますので、もしそうであるならば、労働大臣がとおつしやらなくても、むしろ労働争議の当事者に当るその当り方から言うと、その方がかえつてよいのではないかという意見を率直に申し上げておるわけでございます。
  13. 船越弘

    ○船越委員 藤林先生にやはりお尋ねするのでありますが、藤田さんの御意見によりますと、労使の自主的な交渉が結局は経営者側の責任において煮詰まらないという御意見でございました。ところが大谷さんのお話を聞きますと、幾分そういう面もあつたが労働者の方の考え方にもよつて煮詰まらない、こういうお話でございますが、従来の経験からいたしまして、この自主的な交渉が煮詰まらない原因はどちらにあるか、また両方にあつたといたしますならば、過去の経験からいたしまして、このたびのような却下制度を設けても結局煮詰まらないのではないかと思われます。それで却下制度を現在の労使の良識に訴えて却下しても、その効果をあげ得ることができないのではないかと思います。その点いかがでございますか。
  14. 藤林敬三

    藤林公述人 お答えをいたします。今の点はなかなか微妙な点でございまして、私今日正確な数字を持つておりませんが、中央並びに地方労働委員会調停申請がなされる事案について、問題がどちらから当初出たかということをお考えくださると、その大半は雇主側がお出しになるのではなくて、組合側がお出しになつている。これは数字を示さなくても皆さん御了解願えると思います。賃金をこれこれしかじか上げてくれという問題は組合側がお出しになる。従つて組合側調停に行く前にあらかじめ団体交渉を要請される、こういう事実の方が全体を通して非常に多いわけでございます。そこで自主交渉がうまく行かないという問題がそこへ出て来るわけですが、その場合に雇主側が自分の方に自主交渉によつて話を進めるのはどうもぐあいが悪いものだから、そつぽを向かれる事実の方がどちらかといえば多いと考えます。その点を藤田さんは先ほどたいへん心配されて言われたのですが、しかしそうかといつて大谷さんのおつしやるように、使用者側は一生懸命になつても、組合がそつぽを向いているというのは、使用者側からもお出しになることができるわけでございますから、そういう場合も従来全然なかつたわけではないと思います。そういうときは組合が都合が悪ければそつぽを向かれる事実はあつたと思います。従つて御両氏の御意見は、量的にいえば藤田さんの方が歩があるようでございますが、質からいえば両方に議論がございまして、結局これは水かけ論になるということでございます。ただ私はその際この意見を述べませんでしたが、この規定の運用に関しましては、ただこの規定だけだと自主交渉が煮詰まらないときというようなことが書いてありますが、煮詰まらないというのはどういう理由で煮詰まらないのかということを、却下する側の労働委員会が十分よくこれを考慮してこの規定の運用に当ることが必要だと思います。従つて両院の御審議におきましては、ぜひ私はこの点をこまかく御審議をしていただきたい。それは組合側からたとえば賃上げ要求が出ます。組合はとにかく熱心に団体交渉雇い主側に要求される。自分の方ではやろうと思つて一生懸命になつておられるが、使用者側があれやこれやと口実を設けて、というと何ですが、とにかくあまり熱心に乘つて来ない。そのうちに日にちが過ぎますから、じたばたして組合が調停申請をされるという場合に、客観的には自主交渉が十分行われていないことは事実でありますが、この事実の場合には、調停申請事項をその問題の発端等から考えず、自主交渉が十分できなかつたからといつて労働委員会調停申請を却下することは、私はきわめて不適当であると考えます。だからその規定の運用に際しましては、その事実がいかようであるか、また逆に使用者側から問題を出されて、組合が都合が悪いからそつぽを向いておつて自主交渉ができなかつたので、使用者側が調停申請をするような立場に出られた。これは煮詰まらないからだめだということは、労働委員会としてはよくない。こういうようにその実態に即してこれを運用して行けば、労使双方の御心配は、私はいらないのではないか。だからそういう心配のいらないように、言葉で補足し修正していただきますか、あるいはこのままだと、そういうようなぐあいに運用するのだというふうに、両院で御了解でもしていただいた方が、労働委員会としては事案処理上はなはだ好都合だと思つております。
  15. 前田種男

    ○前田(種)委員 大谷さんにお聞きいたしますが、原則として、占領下の労働法規はアメリカの占領政策から生まれた。これを日本の産業の実態に合うように改正されなければならぬということですが。基準法の改正に対して。あるいは除外例を設けるという一貫した方針だと思います。アメリカの実例等を言われまして、できますならば労使双方が違反等を起さずに、自主的に問題が処理されるようにありたいものだという御意見でございましたが、私も労使双方が円満なあり方で、法規違反ということは、できるだけ少くしてもらいたいという意見は認めます。今日の実情から行くと、法規の違反をすることはあたりまえだという観念に、全国津々浦々の実情はなつておるのです。私は少くとも欧米諸国のように、かりに法が悪くても、法律を守るという観念がもつと日本の国民の間に徹底しなければならぬと思うのであります。この点中小企業以下の事業は、今の基準法等について、御承知のように日本の実態に合うようにしなければならないということをいろいろ言われますが、相当小さい工場でも、雑費その他の方面においては惜し気もなく金を使つておりながら、事労働条件に関する賃金の支払いという面では、なかなか違反行為が行われて、姑息な手段をとつておるという点が相当見受けられる。私は資本家だけを責めようとは思いませんが、全体がもつと法規を守つて、そうしてより高い能率をどうして上げることができるかということについて、真剣に考えなければならぬと思う。賃金を安くして、あるいは時間を延ばすことによつて能率が上るという、長い間の日本の観念を、この際ぬぐい去つてしまうという方向に、全体として向かわなければならぬというように考えますが、こういう基本的な問題に対する大谷さんの意見を、もう一度ここで承つておきたいと思います。
  16. 大谷一雄

    ○大谷公述人 今おつしやつた通り、各人が遵法の精神によりまして法を守るという御見解につきましては私もさように存じます。しかしながら、法規があまりにも行き過ぎであつて現実に守られない、また現実に酷であるという場合には、法は実際に即すべきであつて、飛躍的でありほとんど不可能に近いことをしいるものであつてはいかぬということは、おわかりくださるだろうと思います。その辺の調和をどこに求めて行くかということは、立法者として、また為政者として、実際家としても考えなければならぬ問題ではないかと思つております。
  17. 前田種男

    ○前田(種)委員 その点から行くと、今日の中小企業の労働条件は、はたして今日の最低生活が守られるかどうかという問題からも来ると思います。しかしこの最低生活が守られるかということを、必ずしも相手方の企業者に全部を負担させるということがはたして妥当であるかどうか、もつと国家的処置をもつてやらなければならぬかどうかという問題にもなります。これは議論になりますから、これ以上私は申し上げません。  それから、先ほど現行法の三十六条をむしろ改正して、安全その他の問題のほかに、破壊行為をやつた場合をここに挿入すべきが妥当だという御意見でございましたが、私は労働争議争議行為として禁止されておるこの条項は、それぞれの事業場において安全協定というものがありますから、少くとも争議の場合でもそういうものだけは確保しなければならぬことは万人が認めるところであります。けれども、設備の破壊行為は、労働法規の取締りの対象ではなくて、刑法によつて嚴として取締りの対象となつておりますから、労働法規として必要はないのではないかと私は考えます。その点に対して御意見があれば承つておきたいと思います。  次に、基本的に緊急調整の問題について意見を拜聽いたしましたが、政府がこの程度の調整をやるのなら、これはないよりも増しだという意味の意思表示のように私は承りましたが、はたして私の推測する大谷さんの真意というものは、この程度の緊急調整ではだめだ、むしろ日経連はもつと強い線を出さなければならぬ、強制調停あるいは治安立法として考えなければならぬというように、つけ加えて言われておりましたが、その点大谷さん個人というよりも、日経連の方針がございましたら、承つておきたいと思います。
  18. 大谷一雄

    ○大谷公述人 まず三十六条の安全保持の問題でありまするが、化学工業その他におきましては、人命には損害はありませんけれども、労務をストツプすることによつて爆発したり、いろいろな問題が起るわけです。これは先ほども申し上げましたように、多くの工場では安全協定とか、その他の労使間の協定で大体やつておりますが、やつていないところもたくさんございます。これは非常に不安であるのみならず、労使双方にとつて一つもいいところのない問題である。また機械を手でもつて破壊するという刑法上の問題ではないのであります。そういうことにおとりを願いたい。  次に、日経連の意思はどうかということであります。あなたもおつしやいましたように、緊急調整はやむを得ぬ、また今日のいろいろな労働運動の推移から見て、これは必要である。さらに、これより一歩進むか進まぬかということはよほど問題である。私が日経連の代表として来ておるかどうかということは、委員長にお願いした上でなければこれは申し上げられませんけれども、日経連の線はどうかということはここで申し上げる必要はないと思いますが、日経連でもおそらく何もむやみと治安立法でなければいかぬとか、あるいはどうしても強制でなければならぬということはないのでありまして、今後の推移、その関係者がいかなる態度に出るかということにかかつておると私は思うのであります。
  19. 前田種男

    ○前田(種)委員 三十六条の問題は、人命云々とおつしやいましたが、私はもし化学工場等で爆発の危険があるというような場合ならば、現行法であつても労働省の解釈によつて、ある程度その点は善処できるという腹が当然あつてしかるべきだと私は考えます。  それから今日の実情に沿うてという意見でございますが、あまり弾圧法規的なものになつて参りますと、労働組合運動がかえつて曲げられて悪質になるという危険性があるのです。私は国家の将来のためにそれを非常に憂えるものであつて、できるだけ善導していい方向に導くということに対して、もつと国民立場に立つてお互いが考えなければならぬと思います。  最後に藤林さんに特にお尋ねしたい点は、申請却下の問題について先生がどう言われたか、私ちよつと遅れましたのではつきりしませんが、労働委員会というのは特殊の立場にある。それが煮え詰まらない場合に申請却下をやるということになりますと、労働委員会それ自身が一方に偏するというような結果になつて、却下後の労使調停、あつせん等にかえつて立場を失つてめんどうになる危険性がありはしないかという点が一点と、それから特別調整制度が設けられておりますが、これは屋上屋を架すということになつて、かえつて今日の労働委員会の存在が不必要になることになりますから、むしろ特別調整委員会というようなものは置く必要がない。もし必要があるとすれば今日の労働委員会に臨時に小委員会等を置く程度でいいのじやないかというふうに考えます。  それから基本的には緊急調整の法的処置が必要だと言われましたが、これをまじめに考えてみまするならば、この問題についていろいろ心配される向きもございますが、今日の三十日の冷却期間を、一体労働組合側が悪用したのか、使用者側が悪用したのか、使用者側が悪用したのかということについていろいろ議論がございます。また先ほど先生の御答弁になりました中にも申請する条項が組合側に多くて使用者側に少いと言われましたが、それは過去の経済の実態がそうあつたからそういう件数になつておると思いますが、今後の情勢として、不景気が相当続くということになりますと、人員整理の問題あるいは賃金の値下げの問題あるいは工場閉鎖の問題等が相当予想されて参ります。そういう経済状態になつて参りますと、やつぎばやに資本家側からいろいろな問題が提起されるということも予測されるわけです。それで私はこういう緊急調整が法的に成立するということになつて参りますと、ちようど冷却期間を悪用したと同じように、早い目に申請をして、却下されたらまた取上げられるような方向に盛り上げて行く。そして労働大臣が処置をすると五十日かかるから、五十日の時間を踏んで、結局五十日目になつて最後に努力されて解決つくかつかないかということに押し詰められてしまうという結果になつて参りますから、この程度の緊急調整の問題をこしらえてみたところで、実際にはさほど役に立たないという見解も立ちますし、またそういう戦術もとられる点が多分に含まれます。今日強制調停の道がありますし、またそうした法的の措置がなくとも、労使双方ができるだけ争議を避けて、解決をつけなければならぬという方向に労働組合運動の基本的な線を向け、お互いが努力しなければならぬということであつて、このことによつて救われる点が案外少いのじやないかという見解も立ちますが、こういう見解に対する先生の御意見を承つておきたいと思います。
  20. 藤林敬三

    藤林公述人 最初の却下の問題でございますが、なるほど従来は労働組合側から問題の提起が多かつたが、今後は雇い主側からいろいろ問題提起がなされるだろうというお見越しの議論がなされましたが、あるいはそうかもしれません。しかし将来のことはともかくといたしまして、現在並びに将来にわたつて問題の提起がいずれから出ようが、その際に相手方が都合が悪ければなかなか実交渉の線に乘つて来られないということがあることは事実のようであります。われわれもしばしばそういうことを経験せざるを得なかつたのでありまして、その場合に煮詰まつていないから調停申請を却下するではどうも問題提起者に対してはなはだ申訳のないようなことになりますので、私は先ほど希望として労働委員会がこの規定を運用する場合には、この事実をよく考慮した上で、すげなく問題をそう簡単に却下するような措置はとらないようにしなければならないということを申し上げたのでございます。そうすることによつて現在の状況では、おそらく組合側の御心配の大半は除くことができるのではなかろうか。しかし前田委員のおつしやるように、使用者側からどんどん問題が出され、組合側はそつぽを向いておるが調停委員会は却下しないで問題を取上げたということになりますと、これまたぐあいが悪いという御意見が出て来るかと思いますが、これは労使双方のお立場を公正に判断する立場から申しますと、どうもやむを得ないのではないかというように考えるのであります。  それから緊急調整の問題についていろいろ御質問がございましたが、一つは冷却期間の問題について、有名無実のように、また組合側あるいは使用者側がこれを戦術的にいろいろお使いになつたというのが過去の事実だ、従つて緊急調整というような制度を新たに設けると、これもまたそのように使われやしないか、従つて屋上屋を架するごとき結果になりはしないかという御意見のように拝聴いたしましたが、場合によつてはそういうことも多少出て来ないとは限らないと思いますが、私はそうではなくて、緊急調整労働委員会がその中で仲裁まで行うことができるということになつて、いわば調整上その事案争議の実態に即して、最も適当な調整方法を選んでこれを行うことができるということでありまして、その中に仲裁まで入つておりますので、労使双方がへたをするとここでぴしやつとやられるおそれがあるというので、これは戰術的にお使いにならない、私の方の考え方では、こういう制度を新たに設けることによりまして、むしろ反対にこれを回避して行かれるような努力を労使双方がなさるのではなかろうか、またそうしていただくことを立法の精神から言えばわれわれは希望するという意味で、私はこれに賛成であるのであります。従つて先ほど藤田公述人が、緊急調整制度ができると、当初以来から勘定すると非常に長い期間になるがという論拠をお述べになりましたけれども、大谷公述人のおつしやつたように、そうしばしば緊急調整を行うべきものではなくて、先ほど申しましたような条件で、これはこのまま置いておいたのでは公益上重大な影響だけが残る、しかも労使双方状況なり態度なりから判断すると、このような影響をこのまま置いておくことはどうもよろしくないという場合に緊急調整をやるべきであつて、そうでないときに公益上だけですこすこやるべきものでないと思つておりますので、戰術的にこれをお使いになるようなことは労働委員会としては当然避けて行くべきである。一括して申しますと、却下の場合もそうですが、今回の労働法改正ことに調整関係改正につきまして、公益委員としての立場で申しますと、ここに労使双方の代表の方がおられるわけでありますが、自主的に問題を解決するということについて、従来はどちらかというと、どうも遺憾の点が多いと申さなければなりません。労働組合、労働運動の実態から申しますと、調停の事前におきましても事後においても、やはり労使双方が熱心に自主交渉を持つて問題を納める。こういう状態を一日も早く日本の労働界につくり出したい。私としてはそう考えざるを得ない。おそらく公益委員の大半はこれを考えておることだと存じます。そういうわれわれの念願から申しますと、従来の例は必ずしもわれわれの念願に近いものではなく、むしろいずれかというと遠いものであります。従つて私は調停をいたします場合におきましても、できるだけそういうことのないように、調停案も作成しなければならないし、労使双方と御懇談もしなければならぬという態度で臨んで参りましたし、他の委員も臨んで来たと思います。そういう意味におきまして、この却下制度労使双方が御心配になるように、簡単に機械的に扱うことには反対でありまして、ここにこういう却下制度を入れられたことは、こういう趣旨に沿う限りにおきまして、妥当な規定としてこれを運用できないわけではないのではないか、こういうふうに考えております。  それから緊急調整のごときも、下手をするとこういうことで最悪の場合は仲裁などでやられる可能性があるので労使双方をこれでおどかすわけではありませんが、とにかくそういうまずいところに行かないように、問題を終結させるように御努力なさるという意味で、この制度の運用をはかるべきものだと、私は思つております。立法の皆さんにおかれましても、このような御趣旨で、何か言葉に足りないものがございましたら十分補つていただいて、こういう趣旨を貫徹していただくように御努力願うことを、私は希望せざるを得ないのであります。
  21. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 藤林公述人にお尋ねしたいと思います。実は昨日も中労委の代表としての御意見公述があつたわけであります。昨日は中労委のまとまつた御意見というふうには私ども伺つてはおらなかつたのでありますが、とにかく中労委会長代理としての細川潤一郎氏がお見えになりまして、そこで緊急調整の点につきましては、むしろ労働大臣というような一大臣ではなしに、総理大臣の権限をもつて緊急調整をすべきだという、決定的な御意見を強調しておいでになつたわけでございます。本日の藤林公述人の御意見は、長年中労委委員として御苦労をしておられました経験から割出しての貴重な御意見だと思いますが、むしろ緊急調整というものは軽々にやるべきものでははい。こういうふうに私承つたのであります。なお公益委員にまかせるべきものである。その方が事態を円満に、労資双方正実な解決の道がつくと思うという、これも御経験から割出された御公述だつたと思いますけれども、昨日の中労委の会長代理としての細川公述人の御意見と、本日の中労委委員としての藤林公述人の御意見との違いにつきまして、私どもこれをどういうふうに拝承したらよろしいのでございましようか。中労委のまとまつた御意見でございましようか、それとお先生の個人的なご見解として承つて参考にすればよろしいのでございますか。
  22. 藤林敬三

    藤林公述人 まことにごもつともな御質問でございますが、次のようにお答えを申し上げます。昨日細川さんもここにお見えになつて意見をお述べになりました。私も本日意見を述べましたが、中労委として、また労働委員会として、ここで公述する内容につきまして御相談は少しもいたしておりません。なるほど公述人の肩書きには中労委会長代理などということを書かれましたので、今のような御質問も出るかと思いますが、決してそういうつもりで私もここに伺つてはおりません。私は私個人として意見を述べております。むしろ労働委員会委員経験を持つておりますから、その経験上、私は私個人としての意見を述べております。従つて労働委員会として申し述べたのではありませんし、細川さんと昨日ここに参ります以前に打合せを申し上げて、おのおのの意見を述べておるわけでも全然ありません。細川さんも私と同じように、細川さん個人で御意見をお述べになつたもの、私は私でかつてに自分の意見を述べておるもの、こういうようにご了承を願いたいと存じます。  なおついでに申し上げますが、御承知通り藤田公述人も中労委の委員であり、大谷さんは大阪の地労委の長年の委員でございまして、本日はわれわれ三人とも全部労働委員会委員としては同じであります。
  23. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいまの御説明で明らかになつたのでございますが、中労委の会長代理という肩書は、藤林公述人ではなくて、昨日の細川公述人のときに、委員会で私ども拝承したのでございます。  質問いたしますが、国民に若干の不便があつても、労使の対立した場合の争議行為というものは国民が忍ばねばならないこともあるというような御意見公述の中にあつたと思うのでございます。そのことは、争議権というものが労働三権として憲法の中にはつきり認められておる今日、争議行為そのものもやはり公共の利益を確保するものの一つとして確認されておると、私どもは承知しておるわけでございます。昨日からいろいろ承つておりますると、労働者の争議行為というものが、何か少数者の暴力であるというような見解をもちまして、労働争議そのものが常に公益というものと相対立しておるような御見解が多く述べられておるのでございますが、その点で、藤林公述人の、国民に若干の不便があつて国民は忍ばねばならないという御意見は、私は非常に大事な御意見だと思うのでございます。私ども労働委員会というものは、特に中労委の公益委員というものは、政府というような行政府から独立したものであつてよろしいというふうに考えておつたのでございますが、今日の藤林公述人の御意見では、船越委員の質問に対しまして、政府の一つの機関だというような御答弁があつたと思うのでございます。ただいま組織を持つた労働者は、ほとんど吉田内閣に対して不信用であります。つまり政府に対する信頼がないのでございます。政府のやりました両条約、行政協定並びに各治安立法、このたび出ました労働法規の改悪等に対する政府の方針に対しまして、全面的に不信用なわけでございます。そういたしますると、公益委員としての中労委の藤林公述人から、政府の一つの機関としてというふうな御答弁があつたようでございますが、それでは、公平な立場労使双方調停をするという場合における、労働者側の信頼を受けることはできないのではないかと思うのでございますが、その点はどういうお考えで御答弁が出たのでございましようか。ちよつとお尋ねしておきたいと思います。
  24. 藤林敬三

    藤林公述人 お答えをいたします。最初公益に関する御見解とそれに基く御質問でございましたが、議論ではなく、私自身はやはり憲法に規定された争議行為、許された争議行為、これは憲法でも公益上云々というようなことで制限が設けられるような別の規定があるようでございます。しからばここらはどこへどういうふうにするかということは非常に問題がございましようが、私はそういう一般的な抽象論ではなくて、従来の経験に基いて申し上げると、公益上重大な影響があるが、過去の争議においてはわれわれはこれをがまんして参りもいたしましたし、また現に公益事業に対して争議権が認められております場合においては、絶えずそういう事態が起ることはだれも好ましいとは思つておりませんが、争議権の認められた以上は、場合によつては、争議行為発生してわれわれが不便をこうむるのもやむを得ないとしなければならないだろう、そういう意味でそういうことを申し上げたのでありますが、逆に申し上げますれば、私が公益上重大な影響も国民として場合によつてはがまんしなければならないと申し上げたのは、反対に言えば、公益上の理由をもつて何でもかんでも頭からこれを禁止してしまうというような態度に出ることはきわめて不適当であるということを申し上げたにすぎないのでございます。  それから緊急調整でやる、また何か現在の争議がとかく暴力でもつて行われておるから、これを禁止しなければならぬというような考えをお前は持つておるのではないかという御質問でありましたが、私が先ほど来申しましたのは、中労委で扱つて来た今までのいろいろな争議の実態に即して意見を述べておるのでございまして、その扱つた事件の中には、従来どうもこのままでは公益上の影響の方が大きくて好ましくないのではないかと思われるものがあつた。従つて緊急調整でこういう場合には問題を終結せしめることが——これは公益上の理由ばかりではなく、そう申しますのは、率直にいうと、場合によつては使用者側にとつても、労働者側にとつてもかえつて好都合だと思われるような事態もなきにしもあらずでございまして、いわば三者三すくみの状態というものがあり得るのでありまして、そういう場合にはやはりわれわれはこういう手も打てようかと思います。従つてそういう制度を認めることが暴力に対して云々というようなことで、こういうことを私は賛成しておるわけでも何でもないのであります。  最後に労働委員会が完全に政府から独立の機関でなければならない、私は政府機関の一つであるということを申したが、これはどうかという御意見でありますが、私は広い意味ではもちろん労働委員会も行政機関の一端にあると実は思つておるのでありまして、それでそういうことを申し上げたのでありますが、先ほど来御質問に答え、また私の意見でも申し上げましたように、緊急調整決定する場合に、労働大臣あるいは内閣場総理大臣がおきめになるということよりも、むしろ労働委員会公益委員がきめる方がよろしい。私の申しておりますのは、形から言えば、やはりこれは行政機関の一部にあるけれども、しかしわれわれ民間人がこの委員に非常勤で選ばれているゆえんのものもそうでありますので、できるだけ労使の信頼を得るように、われわれとしては実態はできるだけ独立機関のような存在で行きたいということを申し上げておるわけでございます。
  25. 島田末信

    島田委員長 この際ちよつと申し上げますが、午後の公聴会にさしつかえる程度に時間が延びて参りましたから、あとの質疑応答についてはごく簡潔に要点だけでお願いしたいと思います。
  26. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 もう一点藤林公述人にお尋ねいたしまして、他は日新化学の大谷公述人にお伺いしたいと思うのでございます。ただいま藤林公述人は、やむを得ない場合、これはもう公益とか何とかいうことでなく、労働委員会経験上われわれの力ではどうにもできなかつたし、どうしても緊急調整をしなければならない事態がこれから多くなると思うというような御見解のようでございますが、そういう事態は、具体的に申しまするとどういうふうな事態か、一つの例をあげて説明していただきたい。抽象的に政府は常にそういうことを申して、従来も弾圧方針を打出しては国民に対する自由を剥奪して来たわけでございまして、抽象的ではなしに、具体的な例として御説明願えればたいへんよろしいのでございます。  さらにもう一点、日新化学の大谷公述人にお尋ねしたいことは、化学関係でおいでになりますので、おそらくいろいろな爆発物等もお取扱いになつておると思うのでございます。緊急調整を発動いたしますのは、国民生活の利益、公共の福祉、つまり国民生活の安定と幸福のためにということが公共の福祉となつていると思うのでございますけれども、争議の中心になつております理由といたしまして、公益事業がなぜ争議を禁止されているかといえば、国民生活に非常に大きな関係を持ち、主要なる産業を占めているということであつたと思うのでございます。今度新しく行政協定によりまして日本の公益事業というものが、日本の国民よりもアメリカの軍隊と軍人、軍属並びにその家族——つまり合衆国軍隊が優先権を享有いたしまして、日本の国民が使うよりも駐留するアメリカ軍隊が優先的に享有するわけでございますが、これは、日本の公益の使用の際にも日本の国民の利益よりもアメリカ軍隊の利益ということが行政協定によつて残念ながら国会を無視した形できめられてしまつたのでございます。そうなりますと、そういう事態を前にいたしまして、そこで働く労働者が生活を守るためのストライキをやるという場合、その労働者のストライキというものが直接にこの行政協定の問題とぶつかつて来る事態が差迫つて来ているわけでございます。昨日も早大の教授から例があつたのでございますけれども、人間を残酷に殺した原子爆弾をつくつております工場の争議をアメリカ政府が禁止するという場合、それがはたして人類の幸福のためになるのかどうか、人間の生活の安定と幸福を保障するのかどうか、争議をさしとめることが人殺しをやめさせることだというような切迫した事態が今労働者の争議と結合して如実に出て来ている場合に、化学関係では特に爆弾、火薬などもおつくりになる場合があるかもしれない。あるいは現実におつくりになつておられるかもしれない。そういう場合に、これが公共の利益という名目で、あるいは労働大臣の権限で労働者のこのような争議が日本人の利益を越えてさしとめられて来るという事態に差迫つていると思うのでございます。まだ起きていないから私どもは何とも言えないというような御答弁ではなしに、そういうような状態の場合に、はたしてそれが日本の国民の幸福と生活の安定ということと結合されて緊急調整という事態が発動されてもよいかどうか、ひとつ御答弁願いたいと思うのでございます。
  27. 藤林敬三

    藤林公述人 私の御質問の分について具体的に例をというお話でございましたので、簡単にお答えをいたしますが、公益事業は多く料金制度であり、料金は、雇い主がかつてに自由価格のようにきめて事態に即応することができないものでございます。たとえば私鉄の運賃にいたしましても、運輸省がこれを厳密に原価計算をして認可をして行くというようなことでございますし、電気料金のごときは、電気事業に関する公益事業委員会で電気料金を御決定になるというようなことでございまして、そう簡単に行かない。収入の最も大きな源泉であるものが、ここに一つの壁がある。しかも賃上げ要求その他の問題が起きて来ますと、私らといたしましては、事態処理は非常に困難であるのでございます。こういうようなことは、先ほど公共企業体の場合にも申しましたが、公共企業体の雇主ははたして団体交渉能力ありやいなやということと、質的に言えばほぼ同じことが言える。そうした場合に、争議労使双方とも、もちろん世の中の人にこれに御注意願いたいということで行われているのではないのでありますが、われわれから見ると、場合によるとどうもそういうことも考えられるような争議行為がなきにしもあらず。こういうことになると、それでは公益が非常に阻害されてはなはだ申訳ないので、そういう場合には、われわれはやはりぴしやつと問題を押える以外にないのじやないか、公益事業は、概して多くの場合、そういうことがままあり得るようにわれわれは経験考える。具体的に申し上げれば、そういうことです。
  28. 大谷一雄

    ○大谷公述人 ただいまの柄澤委員の御質問は、非常にこまかくいろいろ例を引かれて申されたのでありますが、これは労働大臣決定する問題でありまして、私から何とも申し上げられないのであります。しかし現在の化学工業では、公益に重大な影響を及ぼすというようなものは、あるかもしれませんが、あまり御心配はいらないのじやないか、こう思うだけであります。
  29. 島田末信

    島田委員長 熊本虎三君。
  30. 熊本虎三

    ○熊本委員 藤林先生にお尋ねします。さつき藤田君から調停要求及び調停期間、さらに諾否期間の平均数字が出ました。これは間違いはないと思いますが、あらためて公益委員のあなたからお尋ねしておきたいと思います。  それからもう一つは、あなたの御意見は体験上、しかも良心的にお話くださつて非常に参考なつたわけでございますが、ただ最後に、労使双方ともという冷却期間の問題でお話があつたのですけれども、私がちよつと納得しかねるのは、すべて物事は対等の立場に立つてものが論じられなければならない、しかるに最悪の事態の労組の罷業権を制約しておいて、そうして問題の進捗があるということは、私どもなかなか簡単に了承ができないわけです。やるかやらざるかは、単に労組の直接の利害ばかりでなく、国家公共の立場から、あるいは争議をやつた後におけるその産業に従事する労働者の大所高所から見る利害等、これらを十分しんしやくして、やむにやまれざるときに行われるのが争議であろうと考えておるのでありまして、そういう点から考えてみて、一方の罷業権を制約しておいて、そしてものを進捗せしめることは、どうも私は片手落ちのような気がするのです。その点だけお尋ねしておきたい。
  31. 藤林敬三

    藤林公述人 お答えいたします。先ほど藤田さんがいろいろ調停の経過等に関する日にちの問題をお話になりましたが、これは私は詳細に統計的な計算などいたしておりませんが、藤田さんは労働委員会の資料に基いて御計算になつたのでございましよう。私もおそらく計算すればそのようになると思います。事実今調停だけでも、藤田さんは五十一日云々とおつしやいましたが、中労委で扱いますのは大きな公益事業調停でございまして、大体それくらいになつておりましよう。大体五十日くらいにはなつておると思います。ですから、藤田さんの御発言は、皆さんもその通りお受取りくだすつていいものだと思つております。  それからあとの、労使双方が対等云云ということを言われて、争議権が抑制されていて対等ではない、それを対等であるということで扱われるのは非常な片手落ちで、けしからぬというような御意見でございますが、私なども、しばしばそういう意見労働委員会の席上でも労使双方から承つたのでありまして、労働委員会の運用は、熊本さんも委員で御経験通り、従来私は公益委員といたしましてもとよりそのような声のあることを百も承知でございまして、問題を実際に治めるためには、そのような御意見のあるのを無視してしまつて、問題が簡單に治まるとは私は毛頭考えておりません。はたしてその御意見が正しいかどうかということについては、議論はもちろんあるにいたしましても実態に即して問題を治めようという場合には、御意見は御意見として十分尊重することによつて問題が治められるというならば、りくつよりもまず私はその現状に即して問題を解決して来たと、実は労働委員会のやつて来た仕事を回顧し得るのではないか。それから労働組合法、労調法その他の法律の運用、適用等に関しましても、過去の労働委員会仕事というのは、お説のような御心配が絶えずわれわれの耳に入りますので、そのようなぐあいに法の運用もなされて来、労働委員会の活動もなされて来たと申し上げてもよろしいのではなかろうか。私らも、一朝にして簡単にその法だけは、更改すると同時に、これをきれいさつぱり忘れようとは思つておりません。またそのようにすることはかえつて不適当かと思いますので、御心配の問題は法の運用なり労働委員会制の運用に関しまして、十分お互いに留意して行かなければならぬ点だと考えております。
  32. 熊本虎三

    ○熊本委員 先ほどの藤田さんの統計について大体御了承を賜わつたわけでございますが、しからばかくのごとき三十数件にわたる、長きは要求されてから約百日以上というようなことになつておりますが、その間に、調停委員会にかかつて調停中に、争議行為に入つたような事例がありますかどうか。
  33. 藤林敬三

    藤林公述人 どうも記憶がはつきりいたしませんが、おそらく、ないのではなかろうかと思います。あるいはそれはあつたかもしれませんが、もう最近では、労働委員会といたしましてもまた労使双方といたしましても、調停事案で扱つて調停ないしあつせんの進行中には、争議行為をお互いに愼しんでいただくということが不文律のようになつておりまして、これは大体動かすことのできない慣行のようでございますと申し上げた方がいいのじやないかと思います。
  34. 島田末信

    島田委員長 中原健次君。ちよつと申し上げますが、お気の毒だけれども、ひとつ簡潔に願います。
  35. 中原健次

    ○中原委員 時間がないそうでありますから、ただ二点だけ伺います。一点は藤林さん、一点は大谷さんに伺いたい。最初に大谷さんにお尋ねしますが、今度の労調法の中の改正部分については、非常に御賛成のようであります。しかもその御賛成の基礎になるものは、争議解決せしめるための意欲を喚起するのに役立つであろう、こういうふうに御指摘になられました。しかもその御指摘の結論を出されるためのお話の中に、アメリカにおける大統領の企業の接収権あるいはストツプ期間の問題等々があげられました。従つて日本においても、当然もう少し罷業権に対して制約を加えるということが解決の意欲を喚起するのに役立つだろう。しかも争議が継続している最中に迷惑するのは使用者と公益側である、こういうふうにも言われたと思います。その争議の継続につれて国民も非常に不満を持つに至る現象があるので、争議を早期に解決するためにはやはり労働者の罷業権をいろいろな形で押えて行くことが適当な措置であろう、こういうふうに大体一貫した御発言であつたかのように私は受取りました。あるいは聞き違いがあれば、訂正をいたします。  そこでお尋ねしたいのは、それでは争議が提起されました場合に、労働者側が、たとえば賃金の値上げ要求をいたします。その値上げ要求を経営者側が受諾することに困難な事情は大体どういうふうな場合にあるのか。ことに最近私どもの見聞したところによりますと、たとえば私鉄争議等も問題になると思います。私どものごく身近で見ました争議関係から言いますと、むしろ経営側の方では、社内留保とかいろいろ利益の留保箇所がたくさん数えられるようなことであり、かつ一応正式の配当といたしましても、必ずしも低い率ではない。つまりかなりいい経営内容を持つておるという場合をよく見、また見たのでありますが、そうであつてみれば、三者から判断しましても、今私鉄の労働者がその当時したくらいの要求を受諾するのに困難というような事情はどうも発見しがたい。しかも経営側では極力拒否する、あるいはその交渉をいろいろな言葉を設けまして引延ばして行くというような事実があつたかと思います。そうであつてみれば、その場合の争議解決が遅延いたしましたことによつて起る第三者、いわば一般国民の迷惑、不満というものは、労働者側に向けらるべきものではなくて、そういう現象の起つて来る原因は、むしろ経営者側の方にあるというふうな場合があつたのではなかろうか、あるいは今後にもあるかもしれません。従つて思うてみると、結局そういう場合には労働者側にその負うべき公共福祉に沿わないということからの責任があるのではなくて、経営側の方にむしろそれはあるというような認識も、私は当然生れて来るのじやなかろうか、こういうふうに思います。しかもそういう場合はめつたになくて、大体の場合労働者側の方に公共の福祉を阻害するような行為があつたのだというような考え方が依然として支配するならば、それは私は実態と判断とが全然違つておるのじやないか、こういうふうに思うのです。けれどもこれはその個々の事実々々を通してこの問題は判断しなければならぬことでありますけれども、まず今までの、原因の中の相当大きい部分であると私どもは考えます。しかるに大谷さんの発言では、まつたくその方の責任は労働者側にばかりあるように受取れたのであります。もとよりお立場の御関係もありますから、そういうふうにごらんになるのが当然かもしれませんけれどもあなたの教養ある良識にひとつ問うてみたいのです。実際そういうふうに断定してしまうことができるのかどうか。もしそういうふうに断定してしまうことができるとするならば、なるほど今度の改正案のごときも、ことに緊急調整措置のごときもむしろこれはおそきに失するし、弱い、もつと強く出していいのじやないかという文句が出るかもしれませんけれども、この点について、ほんとうにあなたの良識ある御回答をいただきたいと思うのです。  それからもう一点、これは藤林さんにお尋ねいたしたいのです。いろいろとお尋ねしたいことがあるのでございますけれども、時間がないようでありますから、その点は遠慮をいたします。ただ一点、それは公労法に関することですが、公労法に関して、十六条の問題を御指摘になられまして、こういうような措置のなさり方では、団体交渉を進めるとしても、その団体交渉の相手方としての能力を、たとえば、公共企業体自体が持つていないのじやないか、こういうことでは結局筋が通らないし、まつたく意味がなくなつてしまう、しかも一方争議権は否定されておる。こういう場合に現在公労法によつて適用を受けます国鉄及び專売、この両労働者の立場はまことにどうも何とも言いようのない筋の通らないような立場に追い込まれており、この公労法自体に疑問がある、こういうふうに御指摘になられました。私どももそういうように考えておりますし先年来の数次にわたります国鉄専売の特に裁定をめぐつて経験から言いましても、十六条並びに三十五条に対しましては、非常に異存のあるところであります。そこで藤林さんの御指摘のように、まつたく意味のないような公労法が依然として現存し、かつまた今回地方公営企業に対しましても、ほとんどそれと同じようなものが適用されて行こうとすることになつてしまいますれば、これは何としても了承のできない法の改正であるということをいわざるを得ないと思うのであります。そこで私はそういうふうな場合には、やはり争議行為をもつてこれに立ち向う以外に方法がないのじやないか、法でいかに争議行為を禁止するということを書いておきましても、これはやはり何らかの方法で、これに対抗する争議的措置を考えなければならぬようなはめに公共関係労働者諸君は追い込まれて行くのではないか。いわゆる不可避的に争議の手段に至るよりほかに道がなくなる、こういうことになるのではないか、私はそう思うのです。これに関しまして、藤林さんの御回答を得たい。
  36. 大谷一雄

    ○大谷公述人 ただいま中原委員から御質問がありましたが、大分私の申し上げたことを、私以上にお読み取りの御質問のようであつたのでありますが、現在の緊急調整は強制的なものを含んでいないのです。これできまつたら、双方ともこれに従わなくちやならぬというものじやないのです。そこで私は今日の労働運動を見ておりますと、まず地労委や中労委でやりまして、それを第一段階としてさらにストに入つておるのが実情であります。その場合、なおこういう決定的なものでないので、緊急調整をやるのですが、これに重大なる意義を持たせて、これが解決の意欲を盛り上らせるのに意義があるのです。しかし現状においてはどうしても第二段階のような場合があり得るので、この趣旨には賛成であるということを申し上げたのであります。アメリカその他の例を引きましたのは、ほかの国から見ましても、決して行き過ぎではないということを言つたのであつて、これより以上のものになるか、ならぬかは、これまた先ほど申し上げました通りに、日本の実情に即し考究さるべき問題である。こういうふうに申し上げたのであります。  さてこの間の私鉄の問題でありますが、大体二八%を限度として妥結いたしました。これはどうせ出すのであれば初めからわかつているのじやないか、そうはおつしやいませんが、まあ妥当なる線ではないか。それをがんばつているのは私鉄の経営者の責任者のように思うが、という御意見のように拝聴したのでありますが、しかしこれは藤林先生がタツチせられまして、中央解決できなかつたので、地方に流されまして私が大阪でやつたのであります。しかし当時の要求は低いところでも四七、八%、大きいところでは七〇%もありまして、それは結果の二七%とか二八%を見ておられたらごもつともな点もあると思います。しかし最初の要求は相当大きかつたのであります。従つて私だけの考えでありますが、二五とか六とか、あるいは経営者は大体二〇くらい考えておられたかもしれませんが、そういうところにおちつかせるために労資双方ともいろいろ協議の上戰術を練られておつたのではないかと思うのであります。決して初めから三〇なり二七なりという線が出ておつたのではないのであります。この点は要求自体をごらんになればおわかりになると思います。だから経営者のみが悪いようにおつしやいますが、これはその要求が当初は非常に膨大であつた。現にいろいろ新聞に出ているのを見ましても、五人家族か何か知りませんが、手取り七万円、さもなくば全部物量方式によつて二万幾らとか、相当な数字を要求しております。が、なかなかこういうものは日本の企業の実態からみてもむずかしいことでありまして、いつも経営者のみが悪いということは言えないのではないかと思います。
  37. 藤林敬三

    藤林公述人 公労法の御質問に対してお答えをいたしますが、先ほど公労法第十六条、今度の地方公企業労働関係法の第十条と同じ趣旨のものがそのままあるということについて疑問だけを申し上げて、具体的にこうすればいいという意見を申し述べませんでした。申し述べませんでしたが、それは先ほど申しましたように、私は法律家ではありませんで、いろいろ銀行がどうの、政府の予算措置をどういうぐあいにしてやられてどうのというこまかいことは不案内でありますので、あまり意見を申し述べて、お前はそれがこういうところに抵触することを知らぬのかということになりましてもと思いまして、遠慮をいたして申し上げませんでしたが、そういう誤りがあるかもしれぬというので、お前率直なことを言つてみろとおつしやるならば、ごかんべんを願つて私が申し上げたいのは、だからもちろん誤りがあれば訂正しなければならないと思いますが、私は公労法の従来の例からみますと、仲裁裁定は予算上の関係もありますから、即刻でなくてもこれは必ず実現できるのだという制度にしていただけば問題はこれでいい。ところが政府が仲裁裁定の不承認の承認を求めるのだというような議案の出し方をされたのでは、私たちは何のためにこれをやつているのだということになるのであります。その点を申し上げたのでありまして、だからそういうことでなくて、仲裁裁定が出されたらこれで予算上の措置を新たにしなければならぬなら関係省は、また公社は、大蔵省とよく御連絡の上でそういう予算措置をとつて国会にお出しになつて、国会の審議の上でこれが否決されれば、国会の審議を侵すわけには行きませんから、これはわれわれはやむを得ないと思いますが、そこまで行かないでとば口でやられたのでは、私たち調整機関に携つておるものは、何をやつておるのだということになります。この点はそういうぐあいに御配慮願えないものだろうか。また公労法だけの問題でなくして、国鉄、專売公社——今度新たにできる公社法の問題もそうでありましようが、国鉄でいえば日本国有鉄道法でございますが、この中にもこれに関係する条項が設けられておりますから、附帶的にはこういう条項もそういうぐあいに措置改正していただけるなら、この点もやはり改正しなければならぬ。こういうことになろうかと思います。そういうぐあいになされるならば、言いかえれば、仲裁裁定が出された場合にそれが実現できるということになれば、私は争議行為を禁止してもよろしかろうかと存じます。但し争議行為の方で、一般論から言つて十六条より離れて、国鉄や專売の場合に争議行為を認めてやるべきではなかろうか、そういう御意見に対しては私も相当程度賛意を表したい。私も実はかねがねそういう意見でありました。というのは専売公社がタバコをつくつているのは何も公益上の理由がないではないかという気持もある。鉄道の場合には、ここにいらつしやる藤田さんは私鉄でございますが、同じ企業であります国鉄は全国一本であつて、これは基本的に大きなもので比較するものではありませんが、事業の性格からいえば、私鉄たると国鉄たるとを問わず、公益事業としては同一でございます。一方は争議権を認め、一方は争議権を剥奪するというのはきわめて不公正ではないか。争議権自体の問題から言うと、私は国鉄の場合にも争議権は認められてしかるべきではなかろうか、但しその場合には、その争議権もそう簡單にひよいひよい使われてはわれわれとしても困りますので、緊急調整その他のもので何とか最悪の場合にはこれでやつて行けるというならば、これは公労法から離れて、私は公共企業体労働関係法というものがなくて、一般の労働関係法というものでもやつて行けるのじやないかということが、別の考え方としてはあり得ると思うのであります。私も大半そういう意見を持つておるのでございますが、ここではそこまで言いますと根本的な問題に触れますので、出された法案だけについて意見を述べたのでございます。
  38. 島田末信

    島田委員長 公述人の方にはまことに御苦労でございました。それでは午後は二時まで休憩いたします。     午後一時二十八分休憩      ————◇—————     午後二時十八分開議
  39. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  東京水道局長徳善義光君。
  40. 徳善義光

    ○徳善公述人 東京水道局長徳善義光でございます。公述をいたします前にお願いがございます。本日午後一時からというお呼出しでございましたが、はなはだかつてでございますが、ただいま都議会会議中でございまして、約一時間半程度のお許しを得て本日参つておりますので、私の陳述が終りまして御質疑等がございましてから退席させていただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  41. 島田末信

    島田委員 承知いたしました。
  42. 徳善義光

    ○徳善公述人 私は地方公営企業の管理者的立場にあるものといたしまして、今回の労働法規の改正特に地方公営企業労働関係法について若干の意見を述べまして御参考に供したいと存じます。  あらためて申し上げるまでもなく、公営企業はその及ぼすところ住民の福祉の増進に至大な影響を与え、従つて企業の合理性、能率化、経済性というようなものを私は第一義に考えるべきものと存じますので、これに関与いたします職員は、私ども初めといたしまして、平和裡にすべての事柄を解決して行かねばならない、かように心得ておるのであります。また地方公営企業は、ただいま地方公営企業法案となつて国会に御審議を煩わしているということを伺つておりまするが、これに関連いたしまする地方公営企業労働関係法も相ともに施行されるものと心得ております。両法案は、政府として議会に提案する前に、相当各方面の意見を聴取されて提案の内容がおきまりになつたと存じておりまするので、私考えまするに、現在の状況におきましては、実情から推しまして、この程度においては最善とは存じませんけれども、まず次善として妥当なものと考えておる次第でございます。しかしながら実務に当つております者として、また管理者的立場にある者といたしまして、二、三の意見を申し述べさしていただきます。  まず地方公務員としての身分地位にかんがみまして、団結権、団体交渉権を認めるにいたしましても、これはあくまでも地方行政組織の統一的性格と行政秩序の維持という観点からいたしまして、公益保護のためにある程度の必要な制限を考慮すべきものと考えるのであります。もちろんこれはこの法案には考えてございます。私は冒頭申しましたような趣旨からいたしまして、この程度の制限はやむを得ないものと心得ておるのでございます。  次に本法と表裏一体をなしておりまする地方公営企業の組織、財務制度規定いたしました地方公営企業法案と、適用範囲がそれぞれ異なつておることは適当でないと考えております。すなわち企業公営という面から一般行政とは異なつ制度考慮する建前からは、その組織、財務制度は、もとより労働関係においても一貫して適用されるものでなくてはならないと存じます。しかるに一方の企業法におきましては、一定の規模——これは従業員数で制限されておりますが、一定の規模のもとに適用される建前でございますけれども、本法は規模に制限のない結果、たとい数人の従業員が働いている企業にも適用されることと相なりまして、その結果は事業の運営面に多大の支障を来すばかりでなく、実情から推して、きわめて少数の従業員に、別に他の公務員と離れて労働組合法を適用するというようなことが、かえつて従業員の保護に役立つかどうか、また能率的経済的な運営ができるかどうかというような点が疑わしいのでございます。地方公営企業及び労働関係の事業面はともに同じでありますが、これを従業員数によつて法の適用をいたしております水道について申し上げますと、全国の水道が約七百ございます。そうして五十人以上の従業員があるものについて地方公営企業法が適用されるといたしますと、法の適用を受けるのは七十、適用を受けないのが六百三十ということに相なります。この点他の地方鉄道あるいは軌道その他の企業に比しまして、先ほど申しました影響が、水道という企業に対し、またこれに従事いたします職員に対してはなはだ多いのでございます。この点は両法案において御研究の上一致していただいたらどうかと思います。なお地方公営企業におきましては、法に指定いたしてあります事業以外のものでも、当該団体の意思で同法の適用をはかる道が開かれておりますが、その場合にも労働法は依然として適用されないという結果が、この法の通りを施行する場合には起るのであります。これらは法規の統一性、また法規を施行する場合の実情にはなはだ沿わないものと考えるのでございます。従いまして両法案を御審議の際に十分御研究をされたいと思うのでございます。すなわち原則として、この労働関係においては、従業員数で制限する方がよいとも考えております。また別の観点からいたしまして、企業としての内容を持つものにこれが適用の道を講ずるというようなことも考えていただけたらとも考えておるのであります。  次に単純労務者の扱い方については未定でありますが、国家公務員の現業職員については、今回公労法を適用することになつておるようでございます。地方公務員の現業におきまして清掃下水等については、将来本法に準ずることになるのではないかと一応想像されるのでございますが、一方公営企業という建前を考えますときに、企業として必ず成り立たないものにこの労働法を適用することが妥当でないというふうに考えられるのであります。従つてそのような処置をとられることにおいては、他の各種の条件を十分御研究していただき、また私どもに十分納得の行く線をお示しいただかない限り賛成しがたいのであります。なお先ほど全面的にこの原案につきましては、私どもとしては御研究に敬意を表して賛成すると申しましたが、特に調停仲裁について、別に機関を設けないで労働委員会によつてこの取扱いをすることにつきましては、賛成を申し上げるものでございます。  次に、この法におきまする規則に抵触する協約が結ばれた場合の議会等に対する措置は、おおむね賛成でございます。日数が十日以内と明らかに示してございますが、私ども自治体に関係しております者から見ますると、実施上におきましてきわめて日数的に無理である、十日では短か過ぎて困る、かように思いますので、冐頭申しましたような考え方で、公営企業及び公営企業関係法につきまして取扱うべきものと心得ておりますから、日数を十日としないで、すみやかにという字句に御訂正いただいたならばけつこうと存じます。  なお最後に申し上げたいのは、私どもただいま公営企業関係しておりまして最も不便に感じますのは、公営企業を取扱う特別の法規のないことであります。このために人手がたくさんかかります。不経済になります。能率の増進等あらゆる面において困つております。こいねがわくは、皆さま方の愼重なる御検討、御審議をいただきまして、地方公営企業及びこれに関連いたしまする労働関係法を同時にこの議会で御議決いただいて、私どもの事業運営がすみやかに施行できるように、またこれによつて住民の福祉の増進が一層期待されるようにお願い申し上げる次第でございます。以上きわめて要点だけを申し上げまして、御参考に供します。
  43. 天野公義

    ○天野委員 徳善さんにお尋ねしますが、今回の地方公営企業労働関係法に單純労務者が除外されておりますが、單純労務についてどういうお考えか、お伺いしたいと思います。
  44. 徳善義光

    ○徳善公述人 單純労務と申しまして、私は言葉通り單純労務と考えてお答えしたいと思いますが、地方公営企業労働関係法は、地方公営企業関係する方々が、先ほど申しましたような線で、企業を遂行するために必要な労働関係法と心得ておりますので、広く地方公務員の各部門における單純労務を入れますると、他の、たとえて申しますると道路、河川というような、一つ企業として常識上認めがたいものも入れなければならないというふうにも考えておるのであります。従つてこれは現在のところにおいては入れるべきものでないと考えております。
  45. 天野公義

    ○天野委員 公営企業とは別に、單純労務に関して、特別な單独法というものを必要とお考えになつておるかおらないか、そういう点をお伺いしたい。
  46. 徳善義光

    ○徳善公述人 私ははなはだ浅学非才でありまして、お答えするだけの資料の收集をいたしておりませんので、別途の機会にいたしたいと思います。
  47. 前田種男

    ○前田(種)委員 地方公企法の十条の問題に触れて、仲裁裁定がなされてから十日以内という日数は短か過ぎる、十日という期限をつけられても困るから、すみやかにという文字の書きかえをしてもらいたいという趣旨だと思いますが、根本的には、公企法の十六条の基本の線に触れての意見だと思います。これは争議権のなくなつた公務員関係団体交渉の結果、仲裁裁定という場合にこういう条項がある。要するに争議権がある場合には、ここまで仲裁裁定が拘束される。争議権のない場合に、それにかわる公正な仲裁裁定に対しては、当事者を拘束するという意味において十日という期限を付して、それぞれ議会に承認を求める手続きをしたいという意味でありますから、十日という日にちは、非常に短か過ぎるということにもならないと思いますが、もう一度この点に対しての見解を承つておきたいと思います。
  48. 徳善義光

    ○徳善公述人 ただいま申しましたのは、争議と申しますか、仲裁裁判をお願いしなければならぬというような場合には、私どもは誠意を持つてこの方向に進めようと心得ております。ただ先ほど申しましたのは、これはそれ……の地方議会の条例で違うことと存じますが、一例といたしまして、私の方の都議会のことを申し上げます。都議会に審議を受けます議案は、議会開会日の七日前に御本人に届くことが必至とされております。そうしますと、そのために印刷等がどんなに急いでも、他のいろいろの関係で三日ないし五日ないし五日かかるのではないかと思います。その議案をまとめますために、かりに協約が成立いたしましても、地方公営企業法によりまして企業庁がその協約をとりかわして、さらに監督者である知事またはときによつて議会方面とも打合せなければならぬと存じます。すなわち協約を円満裡にまとめるためにさよういたしますると、一日二日でできるということは、ただいままで東京都議会議案提出の実情から推測いたしまして、ほとんど困難でございます。それを十日というような明確な数字をおきめ願うことは、できないことを実はお引受けしなければならぬということになります。今法案御審議の最中でございますから、実情を申し上げまして、日付を十日としては困る、かように申し上げたのでございます。
  49. 前田種男

    ○前田(種)委員 それは都議会が開会中であれば十日以内、閉会中であれば、再開された議会の五日以内ということになつております。国会と違つて都議会の開会というものは、予算都議会の場合は相当期間がありますが、そうでない場合は、月に一回あるいは隔月というような状態ではないかと思います。開会中で裁定が下つた場合は、十日以内という点は曲げて、迅速にやつていただく意味において十日という期限が、親法であるところの公企労法にある。このまま地方公企法に載せたということになつておると思います。  それからもう一つこれは組織の点でお尋ねしたいのですが、徳善さんの所管でありますところの上下水道考えてみましたときに、上水道は今度の地方公企労法の適用を受ける、あるいは下水関係は受けないということになつて参ると思いますが、これは特別会計の関係から、そういうことにわけられると思うのです。実際上は上水道に従事しておる労務者も、下水道に従事しておる労務者も、その間において、そうかわりない仕事をやつてつて、一方は特別会計のために法の適用を受ける、一方は受けないということになつて、かえつてここからまたいろいろな面が出て参りまして、上下両水道関係の労務者と都の当事者との間に労使関係が円滑に行かないという点、あるいはそのことのために非常に苦労される面が出て来るのではないかという点を考えますが、そういう点はどうでしようか。
  50. 徳善義光

    ○徳善公述人 十日という日付につきましては、先ほど申しましたことによつて御了解たまわりたいと存じます。またただいま何日くらいかというお話もございましたが、私はでき得べくんば、二十日ぐらいはいかがでございましようかという一応の意見を申し上げておきます。  それから上下水道について、上水道だけが地方公営企業労働関係法の適用を受け、下水道は適用を受けないようになるというお話でございます。ただいまの御意見は一応の御見解と存じまして、私も御同感申し上げます。但し法は東京都あるいは大阪という一定の都市を目標とするのではなく、日本全国を目標とすべきものと考えております。わかりやすいために、局課の配合で申しますと、東京都は水道局に下水課があります。横浜は最近まで水道局に下水課があつたのでありますが、建設、つまり土木関係に移管してあります。名古屋は水道局にあります。他の都市においてもただいま申しましたように、ある都市においては水道局に入り、ある都市においては土木関係に入つております。これは小都市に行くほどこういう関係がそれぞれございます。また上水よりも下水——これは主として改良下水でありまして、在来下水ではありませんが、これはきわめて少いのでありますので、これは地方公労法にありますように、それぞれの都市において、政令の定める基準従つて条例に定めるのが、実情に即することであり、また現在までただいまのような情勢でありますから、妥当だろうと考えております。
  51. 前田種男

    ○前田(種)委員 私は各都市によつて局部の担当が違うことはよく承知しておるのです。その反対に、東京都の例をとりますと、上水の料金の何パーセントというような率で下水の料金がとられておるというような点も聞いておりますが、これの真相はあなたの方が詳しいから、私は追究いたしません。ただかりにその局部の担当が違つたといたしましても、結局上水道関係しておる現業の人と、下水に関係しておる現業の人は同じような仕事をしておるのに、一方は公企業法で保護される。一方は公務員法の適用を受けるという点が、理論的にいつても、実際的にいつてもちぐはぐな問題になるから、むしろそういう関係は一本の法規によつて、しかも労働立法の建前から保護されてしかるべきだという見解を持つておるわけです。これを一方は地方公務員法でやる。しかし地方公務員といつてもあなた方のような高級な公務員ならば、当然公務員でありますが、まつたくの單純労務者、あるいは現業関係の人々を、公務員だから公務員法で処置する。一方は公企法で保護するというものの考え方が統一を欠く。その結果いろいろな問題が出て来るので、その点に対するあなたの見解を承ろうというのが、実は私の質問の要旨でありますから、重ねてお尋ねいたします。
  52. 徳善義光

    ○徳善公述人 高級な吏員というお言葉をいただきました。お言葉通り承りますとたいへん光栄でありますが、実情はそうではございませんので、御了解を願いたいと思います。ただ今日私が参りましたのは、局長としての考えではなく、いままで多年経験いたしましたところと、各都市の実情、それから各方面に現われたことを総合して一応申し上げておるのでありますから、御了解をたまわりたいと存じます。また料金その他にかんがみましてのお話でございますが、これは地方公営企業という企業を主として、その経済化、能率化、合理化という点を考え、ひいてこれに従事いたします職員の厚生、従つて福利、これらがよいならば事業も繁栄するであろう。こういう建前から企業を本位として、公営企業法においては企業種目が決定され、さらに企業を主体として考えた結果、これに従事する職員地方公営企業労働関係法が適用されるものと考えております。この点はなるほど御指摘の通り、実際問題についてはいろいろ考慮すべき点もあり、また今申し上げましたような各都市の実情でございますので、それらの都市において、都市ごとにその実情、過去の経験、さらに料金徴収、あるいは経済面、予算面等も考慮して、条例等で定め得られるようなふうにおきめ願うならば、実情に適するのではないかと私は考えております。
  53. 中原健次

    ○中原委員 徳善さんにお尋ねいたしますが、ただいまの前田君の御質問は非常に重大な問題だと思います。ただいまの御答弁で考えますと、企業体の問題についての論は別にいたしまして、地方公営企業の従事員の問題ですが、この法によりますと、第三条で六項にわけて事業が指摘されてあるわけです。第六の水道事業という項の内容について考えますと、今までのお話から考えますれば、水道事業というものはその中に下水道が完全に含まれておるかどうか、ただいまの御答弁で考えられる点は、都条例でそれに対する適当な措置を講ずることができるような、そういうとりきめ方をしてもらえれば、企業体に関する公営企業法の範囲で、指摘しておるものにマツチするような条例決定もできる、こういうふうに言われたと思うのですが、そうであるとすれば、この労働関係法に関する場合、これをどのようにとりきめたら、指摘されたような言葉にこたえるような形になつて行くか、これは法の技術の問題ですが、それについて直接関係者としてのあなたの御見解を伺いたい。
  54. 徳善義光

    ○徳善公述人 ただいま水道というお言葉がございましたが、水道なる意味は上水道でありまして、法の示す水道事業の中には下水道は入つてございません。この下水道をどう取扱うか、またはかりに下水以外のこれに関連する企業があるといたしまして、一般的には水道事業というもの、あるいは他の事業のような例示された業務に属さないけれども、その都市の状況、財政その他によつて、これと同じように取扱うことがいいというものについては、その都市の実情に応じて、条例その他において基準の示すところによつて入れ得るような、すなわち地方公営企業法にございますようなお取扱いを願つたらいいと思います。と申しますのは、現在各都市が全部水道と一緒の局あるいは部の中にあればいいのでございますが、各都市それぞれ水道は普及発達しておりますが、下水道東京のように普及発達いたしておりまする所、いまだ下水が発達しない調査研究中、またなおその道程にあるもの、さらに岐阜市のごとく、東京都以上に高度の発達をしておる所がございます。従いましてこれを一律に法でおきめ願いましても、実情はこれに沿わないというのが私どもの知つておる限りでございます。どうかこういう実情をお調べの上に、その都市の実情によつて処理でき得るように話をおきめ願つたらけつこうと存じます。
  55. 中原健次

    ○中原委員 それでは労働関係法の第三条の適当な箇所へ、企業法の中に盛られておるような除外例を規定する、こういう措置を講ずれば、何とか都条例でそのような不安を除去するような方法が講ぜられる、こういうふうに言うのですか。
  56. 徳善義光

    ○徳善公述人 法を編成いたしまする技術上の問題につきましては、企業法と労働関係法と多少違う点があるかと存じます。私が申し上げました気持は、どんな条文をお入れになり、どの条文によつてどういうふうになさるかということは、ひとつ委員会の方におまかせしたいと思います。
  57. 中原健次

    ○中原委員 それでは、あなたは直接これに関係する当事者であられるわけですが、当事者とせられて、その公述を通じて国会なりあるいは提案者としての政府なりに対しまして、そういう不安を除去し、そういう混乱をあらかじめ防ぐための措置を講ずる積極的な働き、努力をなさるお考えはなのいか。私がなぜあえてそういうことを執拗に申し上げるかといいますと、こういう場合にすぐ問題になりますのは、人事問題なのです。関係労働者諸君が非常に私は心配していると思うのです。しかもあなたのおひざ元で、今そういう混乱も、心配も、動揺も何もないか、これについて一応実情を承つておきたい。
  58. 徳善義光

    ○徳善公述人 たいへん抽象的な御質問でございますが、実情はよく御承知のことだと存じてお答えいたします。積極的にどうする意思があるかないかという私に対するお問いでございますが、私は上司の命を受けて、上司の指示に従い、都議会の議決を要するものはこれが決定をまたねば積極的にやることはできないと思います。個人としての考えは持つております。それから水道局に下水課があり、ただいま何かお言葉があつたようでございますが、これはごもつともでございます。私は水道局のもの、下水のもの、そのおのおのの気持は知つております。また、これはまだそれほど問題になつておりませんが、折々開かれます水道委員会において、どうするかということの御質問も私にございます。しかしながらまだ私個人としてどうすることがいいか、また私がどう考えてもその通りになるかならないか、さらに内部事情等がいろいろございますので、この席におきましては、お前はどうするかとお問いいただいてもまだお答え申し上げる段階に至つていない。つまり発表いたすだけの機運が醸成していない、かように申し上げて御了解を得たいと思います。
  59. 島田末信

    島田委員長 どうも長い時間御苦労さまでした。次は東京労働組合連合会中央執行委員長、河野平治君。
  60. 河野平次

    ○河野公述人 私は、今委員長から御紹介をいただきました略称都労連と申しておりますが、その執行委員長を勤めております河野でございます。私の所属する団体は、東京都十三万職員のうち警察、消防の関係を除く一般都の職員、今公述された水道関係、交通関係のいわゆる公営企業現業関係職員及び教職員をもつて組織する団体であります。そういう立場から、本日の公聴会におきましては広汎な労働諸法規の問題が提議されておりますので、いわば一般的なこれらの諸法規についても重大な関心を持つておるわけでございまするが、何分にも制約された時間であります関係から、私は、私の直接の最も近い関係という立場において、地方公営企業労働関係法についてもつぱら意見を申し述べさせていただきたいと存じます。  先ほどの藤林さんの公述の中にも、ございましたが、私どもは国における国鉄専売職員と同じような意味において地方公務員としての現業関係という立場から、ここに地方公営企業労働関係法という特別法が制定される運びになつたのでありまするが、そもそもの沿革は、御承知昭和二十三年七月のマ書簡に基く政令二百一号によつて今日まで私どもはその適用を受けて参つたのであります。いろいろな方々によつて公述されたと思いますが、私どもは身分上の関係においては、一応役所から給料をもらつておるという点において、公務員というりつぱな名前を与えられておるわけでありまするが、現実には私ども交通関係の者にいたしましても、あるいは水道関係の者にいたしましても、民間における労働者とその実態は何ら選ぶところがないのであります。私ども電車の運転手、あるいはつるはしを持つて軌道を修理している人が、現実に行政面に携わる人と同じような感覚は持つておりません。あくまで民間における一労働者としての感覚しか持つていないのでありまして、また社会的にもそういう扱いしか受けておりません。役人としての扱いは受けておりません。一介の労働者としての扱いしか受けていない。ただ先ほど申し上げたように、役所から給料をもらうという点において公務員といううるわしい名前を与えられ、その逆にわれわれは、憲法によつてせつかく保障されたもろもろの権利が、いろいろな形において制約をされて来ているというのが現状でございます。この不合理を何とかしてわれわれは是正したいという観点から、当初の国家公務員法の制定されようとする当時から、さらにまた最近に至りましては、国鉄公社法あるいはそれに関連する公企労法、引続いて地方公務員法その他の法律が国会に上程される都度、われわれの立場を常に明確にして、われわれの主張、意見というものが取入れられるように運動を続けて参つたのであります。しかしながら不幸にいたしまして、私どもの考えているような法律制定されませんで、私どもの主張とは相当大きな開きのある。すなわちわれわれの基本的な権利ともいうべきものに対して大幅なる制限を加えられた諸法律が、今日実施されているというのが現状でございます。政府におきましては、このたびそれらの関係法規との関係を整備することを大きな目的としてこの地方公企労法が提案されたようでありまするが、私ども今申し上げたような見解からいたしまして、この地方公営企業労働関係法の適用対象になる労働者は、完全に労働三法の適用を受けられればよろしい、受けらるべきである。従つて今ここに提案されているような特別法の制定の必要はなし。すなわち労働組合法、労働関係調整法、労働基準法、この労働三法の完全適用を受けらるべきであるという主張を持つておるものであります。従いまとてこういう特別法の制定に対しては、それ自体必要なしというのが私どもの基本的な態度であります。ただ現実問題として今日の諸種の情勢を考えてみますときに、その基本的な主張は主張としてこれをくつがえすわけには参りませんが、現実の情勢の上に立つて、幾らかでもわれわれの主張に近づけるような方法をとつて行かざるを得ない実情ではなかろうかということを考えまして、いわば次善の策としてこの法律案についても真剣に検討を加えてみたい、こういうふうに考えておるのであります。そういう考え方から以下私どもの主張に立つてお願い申し上げますように修正可能であるならば、本案の制定に対して、賛意を表したい、かように考えているのであります。  そこでこの法案の逐条検討ということになるわけでありますが、いろいろな条文の表現とかいうような問題になりますと、多少問題点があるわけでありますが、そういう小さな問題はできるだけ省略して、大きな問題と思われる点についてのみ意見を申し述べさせていただきたいと考えるわけであります。  逐条的に申し上げまして、地方公企労法の第五条の問題でございますが、この第五条は言うまでもなくこれら職員の団結権を規定してあるわけであります。この原案を見ますと、さきに国鉄及び専売に適用された公企労法の文字をそのままとつておるように思われます。私どもとしては、これは言わぬでもよいことまで御丁寧に並べておるような感じを受けます。これは日本の法律家でなく他の国の法律家の助言があつて、このようなややこしい表現がなされたのだと思うのでありますが、今日の段階において、もう少し日本的な立場からこの表現を行つてもらいたいと、こう率直に考えるわけであります。そういう点から申しますと、第五条で団結権というものをあえて規定するならば、第五条は、職員労働組合を結成しまたはこれに加入することができるという一本でよいのじやないかと考えます。それから第二項第三項の問題については、非組合員範囲政令で定める基準従つて条例で定めるということになつておるのでございますが、今日政令二百一号のもとにおいても、組合員範囲というものについて特別に制約を加えられておりません。第三項の問題についても同様であります。これらはおおむね組合が自主的な立場に立つてその範囲をきめ、それに対して相手方の了解を得て、納得ずくで一つの線を引いて、組合員、非組合員関係を明らかにしておるのでありますが、このことのために事業上に支障が起るということもありませんし、もとより摩擦等は全然ございません。しかるにこういう労働組合が、自由なしかも自主的な立場に立つてみずから定むべき領域にあると思われるものに対してまで、あえて政府が政令でこれを定め、さらにまたこの基準従つて地方公共団体条例で定むるというようなことは必要でない。これはむしろ団結権の侵害であり、労働組合の組織に対する内部干渉であるといわなければならぬと思うのであります。そういうような見地から第五条の条文をもし置くといたしますならば、第五条の第一項だけにとどめる。第五条の第一項は、労働組合を結成し、またこれに加入することができるという一本によつてその精神を十分現わし得ると考えているものであります。  次の第六条の專従職員の問題でございますが、これもまた公企労法の型をそのままとつてございますが、この点についても、地方公営企業は、「その定める一定数を限り、」ということや、あるいは「労働組合事務に従事することを許可することができる。この場合においては、いかなる給与も支給してはならない。」こういうこまかいことまで法文で明らかにする必要はないのではないか。一定数の問題にいたしましても、ことに中段にある許可制というようなことは、組合の内部干渉をされる危険がありまするし、また給与の問題についても、今申しましたような点については、団体交渉という形があるわけでありますから、その中において事業主と労働組合との間で平和的に実情に即したきめ方をさせればいいのであつて、この点労働組合の役員としてもつぱら職員労働組合事務に従事することができる、これだけにとどめてもらつたらいいのではないかと考えるわけであります。  第七条の問題は非常に重要な問題だと思います。「地方公営企業の管理及び運営に関する事項は、団体交渉対象とすることができない。」ということになつておりますが、組合には決して経営権、管理権というようなものを侵害しようとする意図は毛頭ございません。今まではこの種の企業は都なら都の役所の特別会計として、いわば独立採算制的な性格を持つた企業経理をしておるわけでありまするが、今度の地方公営企業法によつて一層その関係が強く責任づけられるということに相なるのでありますから、それらの事業をあずかる者にとつては、経営者も管理者ももちろんのこと、そのもとに働く従業員といたしましても、事業がつぶれてもいいのだ、自分たちの要求さえ通ればそれでよろしいという考え方では決してございません。私自身都の交通局に満三十年間お世話になつておりますが、私どもの同僚には勤続三十年、四十年という人がざらにあります。まさに自分の生涯の飯の食い場所でありまして、腰かけ的に働く立場の者とは違います。そこへ行きますとむしろ経営管理の衝に当る者こそ栄転々々で、そういう重要なポストにはせいぜい二年か三年くらいしかいないということであつて、転々として立場がかわつて行く。われわれ労働者というものは、十年、二十年、定年になるまで終始一貫その職場を自分の生活の場として守つて行かなければならない立場にあるのであります。そういう観点から申しまして、一般に労働組合もしくは労働者というものは、自分の立場だけを主張するような、非常に無責任な、利己心の強いものであるかのごとき印象を受ける見方をされておる向きもあるようでございますけれども、私どもの組合は、さような考えは持つておりません。従いまして政令二百一号制定公市以後におきましても——あのときにわれわれ労働組合としての権利が相当制約を受けたのでありまするが、今日その政令のもとにおきましても、以前と同じような形において、いわゆる法律上許されない私的経営協議会というものをつくつて、事業の基本的な管理問題は別でありまするが、今日まで現実の運営等については、われわれも現実に参加して、当局の管理者とともに事業の発展のために力を盡して来ているというのが実情でございます。事実においてそういうことをやつてつても、決して経営権の侵害とかいう問題にはなりません。そこにはおのずから分というものがございます。その分をわきまえることのできない非常識な者であれば、問題が起り得るかもしれませんけれども、一定の常識を備えた者にあつては、どこまでが法的に許される限界であるかということくらいは、たいてい判断がつくはずであります。いわんや先ほど申し上げましたように、事業とともに生きるというか、事業と生活とは直結する関係にある者においては、みだりなことはとうていでき得るものではないのであります。そしてまた以下掲げられてある団体交渉対象の事項につきましても、この運営等の関係が密接につながる問題が多いのでありまして、悪質というか、非常識な管理者が出た場合に、この「管理及び運営」という言葉に籍口して、労働階級に対してどのような無理を言つて労働組合発言を押えようとする向きがないとは保証できないと思うのであります。そういうような関係から、ここでは管理に関する事項ということであつて「及び運営」ということは除かるべきではないかと思います。もしそれどうしてもこの運営という言葉を除くことができないというならば、この次あたりに持つてつて、管理及び運営に関する事項と団体交渉の事項とが関連する場合においては、この限りでないとか、団体交渉の方が優先するとか、何かこの関係を是正する明文が必要ではなかろうかと考えるのであります。さらにまたこの団体交渉対象事項でございますが、これには多く追加してもらいたいと考える向きがあるのであります。これは専売公社等の例もあります。たとえば就業規則に関する問題であるとか、共済、福利、厚生に関する問題とか、あるいは先ほど私は専従職員のところと組合員範囲のところ、団結権のところで申しましたが、専従職員に関する事項並びに組合員範囲に関する事項といつた点について、私の主張通りに修正したと仮定する場合、その方で削除さるべき部面に、この団体交渉の内容としてつけ加える必要があろうかと考えておるのであります。  その次に第八条、第九条、第十条の問題が非常に問題になると思われるのであります。これを端的に申し上げますならば、これら八条ないし十条の規定については、単なる形式上の手続規定とでも申しますか、そういう形のものであるということに改められたいと思うのであります。実質的には、この協定が成立すればただちに効力が発生するというように、この協定というものに対して強制力を持たせるということであります。協定が成立するまでの過程においては、あらゆる角度からあらゆる立場から検討して、両者が最後に意見の一致を見出すのでありますから、そのことが他の事情によつて効力を生じないことに相なりますれば、せつかく団体交渉によつて成立した協定事項も無意味になつてしまうおそれがある。そういう意味から、今申し上げたように、單なる手続規定として効力発生には支障をもたらさないという建前の規定にいたしていただけるならば、非常にけつこうだと考えておるのであります。  その次には第十一条争議行為の禁止の問題であります。これがこの規定中私どもにとつて一番重要なところではないかと考えております。この条文によりますと、ほとんど労働組合の行動が規制されてしまつて動きがとれない。指一本動かしても処罰されるというかつこうになつております。この関係については、いろいろな角度から私どもの見解を申し述べて御参考にしていただきたいと考えるのでありますけれども、時間の制約もありますので簡單に申し上げます。先ほども冒頭にちよつと申し上げたのですが、地方公務員という身分は、一応そういうことによつて規制されておるわけですが、実質的には、東京都電の乗務員であつても、隣を走る東急の電車の運転士、車掌であつて一つもかわらない。一方は郊外を走り、一方は都内を走つているという関係はあるかもしれない。しかしそれだつたならば、東京の地下鉄と東京都電とを対比してもらえばよい。一方は浅草から澁谷までであり、東京都電は、御承知のように網の目のごとく走つておる。地下鉄の乗務員に争議権があつて、都電の乗務員には争議権がない。大阪に行くと地下鉄は市の経営であり、地下鉄の乗務員諸君争議権がない。ところが東京の地下鉄の諸君は交通営団が経営の主体であり、大阪の地下鉄の諸君は身分が役所につながつているということによつてそういうふうに違つて来る。これは広い意味でいうと、国鉄とも対比できるわけでありますが、もつと身近な関係でながめましても、私鉄のバスの諸君あるいは郊外電車の乗務員の諸君と比較いたしまして、これほど厳重に、手も足も出ないほど強い制約を受けなければならない義理合いが一体どこにあるのだろうかということを考えざるを得ないのであります。ある人は憲法第十二条に公共の福祉ということがあるじやないかといいます。またある人は憲法第十五条に「すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。」そういう観点から公務員という身分の者はそういう制約を受けるのはやむを得ないのだ、こういう説も行われておりますけれども、私どもとしてはこれほど強い制限を強制される義理合いはない。憲法第二十八条の関係から行きましても、当然われわれにはこの種の基本権が与えられているのであつて、かりに公務員なるがゆえに若干の制限を加えなければならないということがあつたとしても、これは労働関係調整法の問題もあるし、また別途の立場から、何がしかの考慮を払えば事足りるのであつてかくのごとき争議行為の禁止に対しては、私どもとしては絶対に了承することができないのであります。この点は長い間の私どもの念願として主張を続けて参つたのでありまするが、不幸にしてその主張が貫かれておりません。これらの関係は特に十分お調べの上御研究いただきまして、でき得べくんば私どもの主張に近づけていただきますようにお願いしたいと思うのであります。こういう十一条の全面削除という主張からいたしますれば、第十一条の二及び第十二条という関連条文は全部不必要になるわけですから、私どもの主張が貫徹すれば問題はありませんが、ここに書いてある条文の上からだけ見てもずいぶん変なものだと私どもは思つておるわけです。それは十一条の二において「地方公営企業は、作業所閉鎖をしてはならない。」という制約があります。それを受けて第十二条に、「地方公共団体は、前条の規定に違反する行為をした職員を、直ちに解雇することができる。」ということになつております。ところが地方公営企業は、地方公共団体の行う事業であるといたしましても、一応こういう制限を付している以上、これを受けて十二条がこれの処罰規定というような形になつておる関係からいうと、十一条はいわば双務規定とも申すべき性格を持つておるものでありますから、第十二条に行つてもこの関係を受けて、地方公営企業体が作業所を閉鎖した場合の処罰規定が当然あつてしかるべきだと私どもは考えるのですが、実際上はそういうことはあり得ないでありましようがしかし精神の上からいえば、かくあらなければならないと考えます。  次に第十三条の苦情処理機関の問題でありますが、私は苦情処理機関という関係でなしに、十三条を置きかえていただきたい。苦情処理機関というのは、職員の苦情を処理調整する機関ということでありますが、苦情処理調整という限られた任務を持つ機関ではなく、もつと広い意味のこの種の機関が必要であろうと考えるのであります。それには先ほどもちよつと触れましたが、四角ばつて団体交渉をやるという機関だけではなく、ほんとうに真剣な立場から、自分たちの生活のよりどころとして発展させて行かなければならない一つの事業を、お互いに誠心誠意研究し合つて、それの合理的な能率化をはかつて行く。それを通じて職員の生活の安定をその中から求めて行くという実態が生まれるように仕向けるのでなければ、ほんとうの合理的な事業の運営は不可能ではないかと考えるのでありまして、そういう角度から、こういう限られた任務を持つ機関ではなくして、ここに経営協議会というような性格の機関を設けることを条文化していただきたいと思うのであります。この苦情処理機関を経営協議会というように字句の置きかえをして、あと若干第十三条第一項の末尾の方を、経営協議会は、地方公営企業の円滑な運営をはかるために必要な事項を協議決定するとかいうふうにしていただければけつこうじやないかと思うのであります。  最後に一言申し上げたいと思います。それは先ほどの徳善さんの公述に関連して、単純労務の問題が質疑応答の中に現われましたが、都ばかりでなく、地方公共団体の組織の中には、一つの採算を伴つた企業規定づけることのできない仕事に従事する者、衛生、港湾、土木、建築等たくさんございますが、それらの単純労務者も、さきの地方公務員法の制定の際には水道、交通関係については地方公務員法附則第二十項において当分の間ということで今日まで二百一号の関係で来ましたが、二十一項において、単純労務者についても同様な規定をされておるわけでございます。私どもは今回地方公営企業労働関係法の提案と同時に、それらの単純労務者の問題についても特別法が制定されるものと期待しておつたのでございますが、結果を見るとその問題が置去りになつておるようでありまして、まことに遺憾に存じております。単純労務に従事する諸君の日常の作業状態というものについては、行政、司法、税務とかいう種類の役人としての勤めではなく、ほんとうに単純な労働者としての仕事に従事するのであつて、これを普通の行政事務を扱う一般地方公務員と同じ法律で律するということは、はなはだしく不合理であると思われるのであります。特別法を制定するというよりも、その人たちが無条件で労働三法の完全適用を受けられるということが正しいと思うのでありますが、いろいろこの種の関係法規との関連において、何がしかの法的措置を行わなければならぬとするものであるならば、それにふさわしい法的根拠を持つた措置を急速に行われるのが妥当ではなかろうか。たまたま多くの関係の人が地方公務員法が適用されておるというそのとばつちりを食つて、そういう制約を受けておることから、これは不当な労働基本権の侵害であるとも言い得ると私は思うのでありまして、特にその点に御留意をいただいて、ここには出ておりませんけれども、何らかの関連づけにおいてこの際解決していただきますならば、非常にけつこうだと思うわけであります。  はなはだ不徹底な内容でございましたが、これをもつて私の公述といたします。
  61. 島田末信

  62. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 国鉄職員局長吾孫子でございます。今回の労働関係調整法等の一部を改正する法律案に関しまして若干の所見を申し述べまして、御参考に供させていただきたいと思います。  問題の要点だけを申し上げるようにいたしたいと思いますが、まず第一番に、従来の国家公務員法の適用を受けておりましたいわゆる現業公務員の郵便事業、印刷事業、造幣事業、林野庁の事業、アルコール專売事業、これらの国家公務員が今回のこの案では公務員法のわくからはずされまして、公労法の適用を受けるような案になつております。これらの現業の公務員が公労法の適用下に置かれる公共企業体職員と実質上同じような取扱いを受けるということにつきましては、実質的にはあながち反対いたすものではないのでございますが、国家公務員という身分を持つておりまする限り、国家公務員でありながら公共企業体労働関係法の適用を受けるということには賛成をいたしかねるのでございます。これはただいまの河野さんの御公述と全然正反対のようなことを申し上げることになるのでございますが、国家公務員というものは、ある意味において地方公共団体の公務員も同様であると思いますが、公務員というものの本質的な性格を考えてみますと、これはやはり国家の統治作用と申しますか、国家の権力の行使というようなものを分担し、かつ遂行する立場に置かれておるのでございまして、本来の私企業の労働者と同じような法律関係のもとに置かれているものとは考えられないのでございます。今までの言い古された言葉によりますれば、これは対等の労使関係ではないのでございまして、いわゆる権力服従の関係のもとに置かれているわけでございます。それでなければ国家にいたしましても公共団体にいたしましても、有機的な一体としての団体としての権力の行使ができない。国の権力の行使に当る立場にある政府の職員争議権を行使いたしましたり、あるいは団体交渉権を本来の意味において持つというようなことは、結論的には国家の統一的な性格を破壊するということになるのでございまして、いやしくも国家公務員という身分のもとに置かれている限り、それらの者が他の一般私企業やあるいは公共企業体というようなものと同様に取扱われることは許されないと思うのであります。ただ現在国家公務員にいたしましても地方公務員におきましても、その内容として種々雑多なものが含まれておりますことは事実でございまして、公務員というものの範囲の限定の仕方については大いに考慮されてよろしいのではなかろうか、また今回のこの法案に盛られておりますような現業の従業員というようなものにつきましては、これは国家公務員のわく外に置くことにいたしますならば、本法案通り公企体の職員並に取扱うということでさしつかえないと存ずるのでございます。そういう考え方に立ちますと、団体交渉権というようなものについてある一定の制限が加えられて来るということもおのずから理解されると思うのでございまして、公務員の立場というものは一般私企業の労働者のような使用者に対する関係が対等の立場ではない、権力服従の関係のもとに置かれておるものでございまして、一方使用者の立場に置かれております政府なり公共団体なりというものは、これまた完全な意味において、いわゆる交渉の当事者としての能力を備えておらないのであります。最後的な意思決定は、国家公務員の場合は法律により、あるいは予算によつて国会の承認をまたなければ行われ得ない。また公共団体の場合にもこれと類似の関係があるのでございまして、その意味において使用者の側に立ちますものの当事者能力にも一定の制限がある。いかなる場合におきましても、国家の最高の意思決定機関であるところの国会の審議権なり、あるいは当該公共団体の審議権を拘束するような協定を取結んだり協約をいたしたりするということは、その団体の統一的性格を保持するという観点に立つた場合に、論理的にもそういうことは許されないと思うのでございまして、そこに団体交渉権が制限されるということは当然の結論であろうと考えておる次第であります。その意味におきまして今回の法律改正案は、現行の法律に実質的に著しい変更を加えてはおりませんので、この点はさしつかえないと考えるものでございます。  次に公益事業の取扱いにつきまして、今回の改正案では従来三十日の冷却期間が定めてありましたものを十五日に短縮する。同時に当事者間の事前の交渉が不十分なときには、労働委員会調停の申請を却下するという案になつております。これは今までも公益事業調停申請の冷却期間というものが、あまり意味をなしておらないという批評が各方面からあつたのでございますが、その根本的な欠陥を今回の法案によつて是正されてはおりませんので、その意味において全面的賛成というわけには参りかねるのでございますが、なきにはまさる。公益事業であります以上、公共の福祉擁護のためにある程度の労働権の制限が行われるということは当然だと考えられるのでございます。ただ実際の公益事業争議状況というようなものを考えました場合に、単にこのような冷却期間、あるいは労働委員会調停申請を却下するというような方法だけでなしに、むしろ争議行為の一週間ないし十日の予告制度をとらせる。なおその争議状態によりまして、公共の福祉に対する影響の程度が大きいと認められる場合は、これに対して争議禁止の措置をとり得るような方途を法律の中に設けておくことが適当ではなかろうか、かように考える次第でございます。  なお今回の法律案の中に、公益事業に関する事件、または公益事業でなくても大規模もしくは特別の性質の事業に関するものであるために公益に著しい障害を及ぼす事件については、その事件が国民生活に重大な損害を与えると認めるときには、労働大臣緊急調整決定をすることができるということが入つております。そしてこの場合には、五十日間争議行為が禁止されるということが入つているのであります。これもあながち反対というわけではないのでございますけれども、こういうような立法を労働関係法の中に持ち込むということは必ずしも適当ではないのではなかろうか。と申しますのは、公益に著しい障害を及ぼす事件であつて国民生活に重大な損害を与えると認められるような事例は、いわゆる単純な経済ストというような事例の場合にこのようなことが必ずしも常に起るということは予想されませんし、またこのような条件に該当すると思われるような事態というものは、多くの場合、それがはたして労働関係法にいうところの争議行為であるかどうかということに疑問を生ずる場合も多々あるのではなかろうかと思うのであります。政治ストと経済ストというようなことがよく言われますが、その分界というようなものは、実際にはなかなか明確にいたしがたいのでありまして、そういう国民生活を脅かすような事態に対しては、労働関係法で規律するというよりも、むしろ一般的な治安立法と申しますか、そういう方面に讓ることが適当ではなかろうか。しかしながらこういうような条項が本法案の中に設けられているということに対しましては、これまたないよりはましでございまして、こういうことがあることは私はけつこうだと思いますが、どうも問題の性質から考えまして、むしろこういうような問題は、他の独立の治安立法に譲るべきではないかと考えます。以上、はなはだ簡單でございましたが、概要だけ申し上げます。
  63. 島田末信

  64. 重枝琢己

    ○重枝公述人 私は総同盟の中央執行員をいたしております重枝琢己でございます。労働関係調整法の一部改正、あるいは地方公営企業労働関係法案、あるいは労働基準法の一部改正案、こういう問題につきまして私の見解を述べまして、議員の皆様の善処方をお願いしたいと思うわけでございます。  まず総括的な点を申し上げますならば、本来労働関係の諸法令の改正、これを再検討するということにつきましては、占領時代の行き過ぎあるいは不備な点、こういうようなものを補うことを目的として始められたはずでありますけれども、それがいつの間にか、政府や資本家の反動的な労働者抑圧の意図を法制化するというような方向に進んで来たということについてはわれわれはきわめて遺憾に考えているわけであります。このようなことがもし進みますならば、労働者を中心とするところの国民の政府に対する反感、不信というものがいよいよ強くなりまして、国内不安も醸成され、国際的な信用という点につきましても非常にゆゆしい事態を招来いたしまして、平和的な、民主的な日本として、われわれが日本を建設しようということを内外に公約しているのでありますけれども、こういう日本に対して非常に暗い影を投げているようなことになる、こういうふうに考えます。  第二に労調法あるいは労働組合法について見ますならば本来整備して行かなければならない多くの点がありますが、こういうような点を見送つてしまいまして、反動的な取締法に化してしまう。こういうような傾向を明らかにしていることは、われわれの了承できないことであります。  第三に、こういうような法令の改正という場合には、本来ならば積極的に労働基本権を伸張させ、あるいは労働者の自主的な組織を強化し、その反面非常にむちやなことをやる資本家をよく指導してもらつて、その上に正当な労使関係を築き上げる。こういうような立場で日本の政治的な、経済的な自立を達成する方策がとらるべきであるかように考えるわけであります。また政府は、提案趣旨の中で、いろいろ答申案は審議会の意見を十分参酌しているとか、あるいは公益委員意見を尊重していると述べておりますけれども、これは必ずしも真実でなくて、自分の方に都合のいい点については非常に採用してありますけれども、その他の点についてはことさら目をおおつているという点があるので、われわれはこの点について遺憾に思うわけであります。そういう総括的な感じを抱くのであります。  そこで個別の問題に入りまして、労働関係調整法について申し上げますならば、二つの点について重大な反対を申し述べたいと思つております。第一点は十八条の改正でありますが、これは現在もその三号に、労働委員会に提訴がされた場合に、調停を行う必要があるというふうに労働委員会が決議したときに調停を始めるということになつておりますが、この項を削除して、当事者の努力が不十分な場合には申請を却下する、その場合には申請なかりしものとみなす、こういうふうに改正しておりますが、これは事第十八条の第三号について考えますならば、言葉をかえただけであつて、同じことである。従つてことさらにこういうような刺激的な方法をとる必要はない、こういう意味で反対をするわけであります。また第二の点について考えますならば、本来これは第十八条一号二号について問題があると思いますけれども、これは現行法によつても十分処理できるわけでありまして、むしろ労使間の自主的な交渉による問題の解決、それに対する意欲と責任感というものを助長することによつて、初めて問題の本質が解決されるものである。こういうふうに考えるのであります。第三の問題点は、労働委員会がこういうことをやることになりますと、勢い官僚的な運営、官僚的な介入ということになりまして、かえつて問題の解決を遅らせることになると思われますので、十八条については、現行で十分処理できる。改正の必要なしというふうに考えます。  第二は緊急調整の問題でありますが、この点につきましても、改正案にあります三十五条の二、三、四、あるいは三十八条の規定、こういうものは不要であり、現行の十八条あるいは三十七条を完全に運用するならば、十分に目的が達成される。こういうふうに考えます。特に労働大臣緊急調整決定権、あるいは緊急調整決定後に五十日間争議行為を禁止する。こういうことは事実上の争議禁止ということを各産業にわたつて行い得るところの権限を労働大臣に与えることになつて、このことから、労働関係の諸問題についての行政的な介入と、労働委員会が政府機関に隷属するという危険をもたらすものになるわけであります。さらにこの問題につきましては、審議会において公益側の委員が一致して主張されましたところの、総理大臣緊急調整の請求権を置き、それを労働委員会が審議をして、公益委員五名を含む過半数の決定によつて初めてそれを始めるという、こういう慎重な案を踏みにじつて、一方的にこういう案を出しておる。これはまつたく不要なことであるわけであります。われわれは以上のようなことから考えまして、緊急調整については、十八条の改正、三十五条の二、三、四、三十八条というものはまつたく不要であり、これをあえて改正しようとする態度はどうも納得が行かない。それは労働関係の自主的な解決と、責任のある労使の行動、あるいは労働委員会の眞摯な努力、こういうものを信頼せずに、思うままに政府が干渉して取締りをしよう、こういう基本的な意図が見られる。これはまさに逆行であつて、戦前の状態に帰るということさえ考えられるので、こういう点については絶対に反対するものであります。  公務員関係につきましては、労働関係法令審議委員会におきましては、公益側の委員の一致した見解としまして、原則として全部に労働基本三権を認める、それから少くとも現業関係の人たちにつきましては、争議権を認めるということが一貫して主張されておつたのであります。われわれはこういうような公益側の妥当な主張に基きまして、公務員関係の諸法令が立てらるべきだと考えますので、そういう線に沿つて委員各位が公企労法あるいは地方公労法その他について、十分なる修正をやつていただきたい、こういうことをお願いするわけであります。  また労働組合法につきましては、先ほども申しましたように、検討がなお不十分であるように考えます。特に次の四点について考慮を払つていただきたい。第一点は、労働委員会委員の選任は職権委嘱でなくて、やはり旧法においてとられておりましたように、推薦制度とすることがきわめて実情に合つた形になる、こういうようにしていただきたい。第二は、不当労働行為に対するある程度の整理はできましたけれども、これに対する罰則がきわめて軽い。こういうことでは、罰則をあえて顧みず、そういうことをやることもあり得るわけでありますので、この点をさらに強くする。第三は、不当労働行為が労働委員会で審問されるということになりますれば、たとえば首を切られた者、その他そういう不利益を受けた者は、一応かりに原職に復帰させて、その上でそういうものをやつて行く、こういうことにして行かなければ、最も被害を受けておる者は労働者でありまして、労働委員会の審問の期間中の生活のかてを得る方法がないわけでありますので、そういう方法をとらるべきであろうと思うわけであります。第四点は、労働組合の資格審査のいろいろな規定がありますけれども、これを十分に簡素化する、こういうことをやつていただきたい。これは答申案の中にも確かにあつたというふうに考えますので、この点はぜひやつていただきたいと考えます。  最後に労働基準法関係について三点だけ述べたいと思います。その第一点は、女子の時間外労働の問題でありますが、現在の六十一条に但書を加えてこれを緩和しようというような意図がございますが、もしこれが許されますならば、極端な場合には、女子は連続六日間、毎日二時間の残業が合法的に行われるということになりまして、本来の労働基準法が目的としておりますところの女子労働の保護ということと、はなはだしく背馳することになりますので、この点は現行通りにしていただきたい。  第二点は、女子の深夜業の問題でありますが、これを中央労働基準審議会の議を経て、命令で定めることによつて緩和しようとするものであります。この点につきましても、本来命令にそういうような大きな権限を与えるということは、非常な誤りを生むもとになるわけでありまして、そういうようなことを命令にゆだぬべきではない。第二に、従来労働基準審議会はこういうような緩和規定についてきわめて寛大と申しますか、非常にルーズであつて、そういう審議委員会で認められた現行の労働基準法が骨拔きになるといつた点が多々あつたわけでありますので、こういう点から考えましても、こういう規定を認めますならば、女子の深夜業禁止というものは文字通り骨拔きになつてしまうというふうに考えられるので、この点については強く反対いたします。  第三点は、炭鉱鉱山における年少者の就労の制限を緩和する規定でございますが、これは第七十条第二項に、技能者養成の規定として入るようになつております。これは結局は基準法の六十四条、十八才未満の就労禁止ということを命令によつて骨抜きにする結果になるわけでありまして、今度の労働基準法改正の中での最大の改悪であるというふうにわれわれは考えまして、絶対に反対するものでございます。元来この六十四条というのは、基準法の中できわめて進歩的な規定でありまして、それによつて鉱山の労働者は従来非常にこうむつておりました肉体的、精神的な重圧から幾分でも緩和されて、自分たちの将来に大きな希望を持つことができるようにようやくなつておつたわけでありますが、この状況を緩和しようとすることになれば、これはまつたくの逆コースでありまして、本来資本主義的な政策から派生して参りますところの、いろいろな弊害から労働者を守るということを建前にしております労働基準法の根本的な精神にもとるものである。同時に、国際的な信頼感を、労働基準法の改悪というものの中から失うという重大な結果になつて来ると思います。この点はきわめて重大でありますので、若干その理由をつけ加えさせていただきたいと思います。  第一は、政府はILOの炭鉱委員会の決議があるからということで、それを援用して、こういうことをやるのは妥当だというふうに規定しております。しかしながらこれはまつたく悪質な詭弁を詳しいおることになると思うのであります。その理由は、ILOの石炭委員会が年少労働者の技能養成をもちろん討議しておりますけれども、それはどういう観点からかと申しますと、年少労働者をどういうふうにして保護するかということを基礎において考えておるわけであります。そして職業指導、職業輔導、健康診断、夜間労働、休憩時間及び休暇、社会保障、あるいは監督制度、社会福祉、こういうような十一項にも上る総合的な問題の一つとしてその問題を検討しておる。従つてその中の一つをピツクアツプしてやるべき問題ではないのであります。しかも今あげましたいろいろの問題は、一般の鉱山労働者に対する施設と密接な関係がある。こういうものの全然不十分な日本におきまして、しかも他の項目と切離して技能者養成の名のもとに年少者の雇用を認めようとすることは、石炭委員会自体の討議の趣旨からはなはだしくはずれたものであるといわなければならぬのであります。それからILOの討議は、本年の総会において一般討議が行われ、第二次討議が必要であるということになつて来年の総会において第二次討議が行われる。その決定によつてようやく条約または勧告ということになるのでありますけれども、しかもそういう条約、勧告ができましても、ILOの憲章には、はつきりとそういうような条約、勧告を理由にしてその国の労働者の有利な条件を引下げることはできないということを明瞭に書いておるのでございます。こういうことでありますから、石炭委員会の決議を理由にして政府が改悪をやろうということは理由のないことになるわけであります。また政府はILOに対する正式な復帰の際に、ILOの憲章を十分に守りますということを、国民を代表して内外に宣言しておる。ところが今申し上げますように、石炭委員会の討議を不当に援用して労働基準法の改悪というものを既定の事実にしようというふうに考えておりますが、こういう態度は最も悪質な不信行為であると考えます。従つて当然そういうような点は国会において是正すべきであると考えるのであります。第二の反対理由は、御承知のように勝山の坑内は高温多湿、あるいは空気か悪く、有害な粉塵が多く、そしてまつ暗でありまして、非常に各種の危険か多いのであります。従つて成年者といえども肉体的、精神的に大きな負担を負つて労働しておる。また労働そのものが重労働で、非常に体力の消耗も大きいのであります。そのことは必然的に非常に高い災害率、あるいは罹病率、珪肺とか、炭肺とかいう特殊な職業病、あるいは身体が奇型になつて来るところの特殊な一つの奇型、そういうようなものが出て来ております。また死亡率も非常に多いし、坑内へ入つております者の平均年齢も非常に低いのであります。こういうところに端的に現れて来ておる。かつて政府の高官か某炭坑に入りまして、炭坑というところは非常に寒気のよいところだということを言つた事例がございますけれども、それは日本で最も設備の完備した炭坑の、しかも実際に作業をしている所からは数キロ離れましたところの、炭坑のほんの入口の所に連れて行つてもらつて、そういう感を漏らしたというにすぎないのであります。その点は十分御認識を願いたいと思うのであります。諸外国におきましては、こういうような特殊な条件に対して、いろいろの施設及び対策を立てております。ところがそういうものが全然備わつていない日本、しかも自然的な条件としても、非常に日本の炭鉱の条件は悪いのでありますが、そういうようなところでこういうことをやるということの弊害は、火を見るよりも明らかであろうと思うのであります。労働大臣は、先般の委員会の質問に対するお答えであつたかと思いますけれども、英国では坑内労働は十六才から認められているということで、あたかも世界の各国が十六才以上を認めているというような答弁をしておられます。労働大臣実情を御存じないのならばいたし方がございませんけれども、もし実情を御存じの上でそういうことを言つておられるとすれば、これは重大な不信行為があると思います。と申しますのは、米国、濠州、カナダ、トルコ、アルゼンチン、チリー、フインランド、ルーマニア、ユーゴ、フランス、ポーランド、こういうようなところでは十八才未満の坑内就労を忌避しているのであります。特にブラジルにおいては二十一才というような制限規定があるのであります。また英国の例を引いておられますけれども、英国における事情というものは、御承知のように社会保障制度が十分に完備した優秀な国であるということを考えていただいて、それと日本と十分比較していただきたい、こういうふうに思うのであります。  それから第三番目の理由は、厳格な条件を付して技能者養成をするならいいではないかというふうに言つておられますけれども、技能者養成というのは、これは第七十条に規定してありますが、「長期の教習を必要とする特定の技能者を労働の過程において養成する」とはつきり書いてありますけれども、坑内の労働の過程において養成するということになれば、どういうことになるでありましようか。それは先ほどから私がるる述べておりますところの、きわめて悪条件の中で労働をさせるということになる以外にはないのであります。こういう点が地上の労働と著しく異なつたところでありますので、こういう点は十分委員皆さんにお考え願いたい。一般労働と何らかわるところがないわけであります。従つてそれをやらせなければ技能者養成にはならない、こういうジレンマに落ち入ると思いますので、結局それを認めるということになれば、一般労働に十八才未満の者の就労を許すということの第一段階にしかなり得ないと思うのであります。  次に第四番目の理由は、政府は年少者の就職の機会ということについて問題を提起しておられますけれども、これは別個の観点から政府の社会政策、政府の施策としてやられるべきことであつて、それをこういうような弊害の多い問題と肩がわりをするということは、本来間違つている。同時に技能者養成によつて吸収し得るそういう未就労の青少年の数も、おのずから限定されていると思うのであります。  第五番目に、そういうような情勢であるにもかかわらず、この制限緩和を強行しようというのは、結局はどういうねらいかとわれわれ考えるならば、低賃金の年少者を雇用してやろうという、非常に悪辣な方法を考えておるとしか、われわれは想像することができないのであります。これはおそらく議員の皆様の良識をもつてしても、私はそうだろうと思います。  それから第六番目に、政府は、労働基準法についての答申案は、中央労働基準審議会で満場一致で決定され、全部一致して賛成をしておるのだということを盛んに各方面に述べられておりますけれども、しかしながらそれは大きな誤りでありまして、それは関係委員も出ておりましたけれども、それは関係委員の個人的な見解にしかすぎないわけでありまして、今日炭鉱や金属鉱山の労働組合が、こぞつてこの坑内就労の制限緩和に反対しておる事実を十分見ていただきたい、全国の鉱山労働者の声を直接国会は聞いて、この問題について善処していただかなければならないというふうに考えます。  第七番目に、最後の理由でありますが、政府のいうところの技能者養成ということは、現在の法規のままでも十分にそのことは行い得る。十八才未満の就労を禁止しておつても、十分それまでにいろいろな方法でこの問題がなされ得るということを私は申し上げたいと思います。でありますから何ら危惧される必要はないのであります。  以上のような事情を申し上げまして、非常な劣悪な労働条件のもとで、保護施設も少く、また文化施設も非常に少い鉱山で生産に従事しておる鉱山労働者の保護ということを、むしろ別な観点から立てていただきたい、こういう点を特にお願いいたしまして私の公述を終ります。
  65. 島田末信

    島田委員長 それでは本日の公述人公述はこれで一応終了いたしましたので、河野公述人吾孫子公述人及び重枝公述人に対する質疑を許します。天野公義君。
  66. 天野公義

    ○天野委員 河野さんにお伺いしたいのですが、先ほどのお話ですと、地方公営企業の労働者諸君にも労働三法を適用したらどうか、適用するのが当然であるというようなお話でございましたが、公共団体府県都市事業というものは、府県都市民の負担する税を主要財源として経営されておる。それでかりに争議権を与えてストを決行した場合に、対外的には民間事業も公営事業もやはり一般大衆に与える影響は同一といたしましても、経営の実態に及ぼす影響は、片方は府県都市民全般に影響する問題であるし、片方は民間の株主のみに与える影響でありまして、ここに重大なる相違があると考えるのですが、その点いかがでありましようか。
  67. 河野平次

    ○河野公述人 よその都市のそういう財政上の事情について詳しく調べておりませんので、お答えがちよつとできませんが、東京都の水道局、交通局関係については、私は三十年ほど交通局に世話になつておりますが、この関係において特別会計という経理をしておるのですが、交通局から一般会計に繰入れたことは若干ありまするが逆に一般会計から交通局に繰入れを受けた事実はないのです。水道もそういう建前でやつておりまして、東京都の経営ということになれば、一般論から言つて、今の御意見のように、税金を元として行つておる経営であるということは言い得るのですが、しかし現実の問題としては、そういう経理はやつておりません。交通にしても水道にしても、建設事業を起す場合におきましては起債を募つてつているのであつて、それの元本償還というものは、全部事業収入からあがつた財源をもつてそれに充当して参る、こういう関係であつて、税収入からそういう事業起債の方に対して振り向けるというようなことはありません。従つて今のような、都民に対する負担という面では、理論上あり得たとしても、現実面ではありません。
  68. 天野公義

    ○天野委員 東京都などは独立採算制で、事業拡張の場合には事業債でやるというようなお話でございますが、結局その事業債にいたしましても、その事業の所有権というものは一般都民にある。それで、やはりストをやつたり何かすればそれに対して相当の侵害もある。なるほど現象面で見れば、あるいは独立採算制でそういうようなこともあるかもしれません。もつと突き進んでみれば、やはり同じような事態がそこにあるし、またもつと根本まで行けば、やはりわれわれ都民というか、地方民の負担によつてそれができて来ておる。それからまたほかのいろいろな事業面にも、行政面というか、そういう面にも非常に影響もあるだろうと思いますので、独立採算制だから、また拡張するためには事業債でやるのだからいい、簡単にそういうふうに断定できないと思うのですが、そういう点いかがですか。
  69. 河野平次

    ○河野公述人 その点は非常にむずかしい問題になると思うのですが、私どもは都民の使用人であるからという関係において、一切使用人としての、労働者としての権利を主張しないでいれば非常に喜ばれることなのでしようけれども、われわれ労働階級の立場からいうと、かりに究極するところ都民の雇用人であるという関係なつたとすると、交通局長なら交通局長というものが直接われわれを雇用しているという関係でなしに、都民がわれわれを雇用しているという関係に究極はなるわけでしようが、もし都民がわれわれを雇用しているということであれば、その雇用主であるところの都民に対してわれわれの正当な要求をするという権利は保障されていいのではないかと私は思うのです。それが不当な要求をしたり不当な行為をするということがあつては、特に全体の奉仕者という規定づけをされている関係があるのですから、そういうことが許されないことは明白でありますけれども、正当な権利を正当な手続によつて主張するということは、一向さえぎらるべきものでないと考えているのです。
  70. 天野公義

    ○天野委員 これはいくらやつても水かけ論で、大体この問題に対する河野さんの御意見はわかりました。もう一つお伺いしたいのは、先ほど私が徳善さんにお伺いした単純労務の労働関係の問題ですが、これにもやはり労働三法を適用してやつた方がいいという先ほどの御公述ですが、この関係も今後われわれ考えて行かなければならない問題ですけれども、簡単に労働三法を適用していいのだというような考えはどうしても持てないので、もう一度その点についてのお考えをお伺いしたいのであります。
  71. 河野平次

    ○河野公述人 基本的な主張としては労働三法を完全に適用さるべきであるという主張です。ただ一般の公務員もあり、特に水道関係等においては、下水も水道局の中に入つているという関係もあります。そこで一般公務員法の適用を受ける公務員と、今度の地方公企労法の適用を受ける公務員と、あと単純労務がかりに労働三法の完全適用を受ける立場に立つということになりますと、都庁内においてのそれの取扱いと申しますか、その関係調整が非常にむずかしくなることは事実であろうと思います。そこで組合内部の問題にもなりますが、組合自体としてもその取扱いをスムーズにやるためには、十分な研究をしなければならぬ事柄です。そういうことがありますので、先ほども申し上げましたが、基本的には労働三法の完全適用をすべきであると主張いたします。けれどもいわゆる便所の汲取り人であつても公務員の名前をもらつておるという関係もあるから、他の方の普通の公務員法の適用を受ける者と、公企労法の適用を受ける者との関連において、実情に即した特別法の制定なりそれらの関連において適切な法的措置が行われることが必要なのではないか。それほど事情の違つておる者を、普通の公務員法の適用を受ける行政事務に携わつておる職員とまつたく同じ取扱いをしておるということは、酷に過ぎはしないか、その関係を十分御検討願つて、それに適応した法的措置を考えていただきたいということであつて、基本論と現実に即応した適切な法的措置という二段構えでお願いしておるわけです。
  72. 天野公義

    ○天野委員 吾孫子さんにお伺いしたいのですが、昨日専売公社の小川さんもやはり公述されておりましたけれども、今回公務法の中に郵便とか林野とかいろいろなものが入つて参りました。それが身分的には国家公務員の適用を受ける、そして労働関係公労法によるというその矛盾を突いておられましたけれども、その点をもう少し詳しく具体的にお話願いたいと思います。
  73. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 先ほどはきわめて簡単に申し上げたのでございますが、今度の法案に盛られておりますような現業の公務員につきましては、その仕事の実態という面から考えますと、この法案のように公労法の適用下に置いてもよろしいのではないかというふうに考えておるわけであります。しかしその場合にはやはり国家公務員という形ではなくてそれぞれの事業体を公共企業体に改変するとかなんとかいうような措置をとつた上で、いわゆる狭義の国家公務員でないということにして、こういうような扱いにすることが適当ではないかというように考えております。国家公務員そのものにつきましては、先ほど本質的な性格ということを申し上げましたが、これは一般私企業労使対等の法律関係とは違つておる点があるように思われますので、こういうものはやはり別個の法体系のもとに規律することが必要である。ただ国家公務員法そのものにつきましてはなお検討の余地が相当にあるかと思いますが、公務員であるものを一般私企業その他と同じ法律の適用下にそのまま置くということは、どうも不適当ではないか、そういうふうに考えておる次第であります。
  74. 天野公義

    ○天野委員 それではどうしたら一番いいか、そういう具体案があつたらお話願いたいと思います。
  75. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 私はここにあげられましたような事業につきましては、これを公共企業体に改変するのが一つの方法ではないかと思います。私見といたしましては、国家会務員の範囲をもう一ぺん限定して考え直すこともよろしいのではなかろうか。かつては狭義の官吏というものと、雇用契約によつて雇われております雇用人とを区別したことがあるのでございまして、先ほど来単純労働のお話も出ておりますが、もう一度事務員の身分関係ということを御検討願うことも必要なのではなかろうかと考えております。
  76. 山村新治郎

    ○山村委員 重枝さんにお伺いをいたします。基準法の一部改正については、政府は提案理由にも基準審議会においての満場一致の点を報告しておるのであります。ところがそれに対しましてあなたは、ここに出ておつた労働者側の委員の言つたことは個人的な見解であつて、少くとも労働者の意思を代表したものではないというような御発言があつたと私は聞いたのであります。この点もう一度再確認しておきたいと思います。
  77. 重枝琢己

    ○重枝公述人 それは委員個人としての見解であるようにわれわれは考えております。それは昨日も多分総評の長谷部法規対策部長が公述をいたしたと思いますが、総評としてもこの問題については反対の立場をとつて進んでおります。関係の組合としては全国組織としては現在日本鉱山労働組合と全日本金属労働組合が正式に共同の立場で反対をしております。炭労につきましてもその傘下の組合はほとんど全部この問題については反対の立場をとつておるのが実情でございます。
  78. 山村新治郎

    ○山村委員 これははつきりと委員個人としての見解であるという附帶条件としての発表ではなかつたと私は思いますが、そういうふうにあなたの方では解釈しておられますか。
  79. 重枝琢己

    ○重枝公述人 その審議会は非公開でやられましたので、小椿委員が私個人の意見であるというふうな断りをしておつたかどうかは存じておりません。しかしながら中央労働基準審議会の委員の性格から申しますならば、これは関係全労働者の総意をすべての問題についてただしてやるという組織になつていないことは御存じの通りでありますので、その点については私先ほど述べた通りであると了解いたします。
  80. 山村新治郎

    ○山村委員 かりに総評がそういう見解をとつておるといたしますとその委員の方に対しまして、その審議会終了後において委員の更迭を要望するとか、あるいはその方の見解を総評としてただすとか、何らかの方法をとつたのでしようか。
  81. 重枝琢己

    ○重枝公述人 その問題につきましては、事後ではなくて事前にわれわれは委員に対しても面会をいたしまして、いろいろな事情を述べて懇談をいたしたわけであります。その席上で自分としても軽卒であつた、しかしながら今となつてはいたし方ないので、この問題については自分個人の見解として一応そのままの態度をとらせてもらいたい。この答申がなされてもすぐそれが法律となるわけではないので、その後の問題については別途の観点から大いに善処して行こうというようなことが述べられて、われわれはそれを了承したわけであります。答申後においてわれわれがその責任を問うというようなことは、やつてもあえて間違いではないと思いますけれども、そういうようなことをいたずらにやること自体が、この問題の解決をはかる方向ではないと思つておるので、そのことはそのこととして、この問題は、国会その他に十分実情を述べまして、その上に立つて善処方をお願いする、こういうような方法を採用しておるわけであります。
  82. 山村新治郎

    ○山村委員 お話によりますと、委員会における発言は、これを認めておいて、なおかつこれに対しこの善処方を何もしなかつたということに解釈してよろしゆうございますか。
  83. 重枝琢己

    ○重枝公述人 そうではございません。われわれは、この非公開の委員会における委員発言を拘束する方法を合法的に持たないのであります。従つてそういうような趣旨委員個人の立場でやられる点については、これをそのまま放置すること以外には方法はないわけでありまして、われわれは、その他の方法で、十分それぞれの関係者が実情をつかんで善処していただくということがあり得ると思つたので、その委員発言を了承してその他の方法をとつておるということではなくて、委員の個人的な行動自体はやむを得ないものとしてそのまま放置して、その他の方法でこの問題を全鉱山労働者、全日本労働者の立場から解決するという方法をとつておるわけであります。
  84. 山村新治郎

    ○山村委員 おそらくその委員を選ぶ場合におきまして、政府としても総評の方に慎重な御交渉があつたことと私は思うのです。そういう点から言いまして、その委員発言は、イコール総評を代表する者の発言なりとする見方は、これは政府としても、世間としてもそう見ざるを得ないのです。ところがあなたのお言葉のように、その言葉は総評の意思ではないということでは、今後総評から出しておられる委員発言というものは、たといどういう発言をしても、総評がまた再検討して是認せざる限り、その発言というものは、総評の意思を全般的に表わすものとは解釈しないというように私たちとつてよろしいのですか。
  85. 重枝琢己

    ○重枝公述人 非常に重大な御発言のようでありますけれども、委員発言が全体を代表しておるかどうかというような御質問であります。もちろんこの委員の選出にあたつては、関係労働者、関係組合その他が参画をいたしております。しかしながらそれは先ほどから総評々々と言われますけれども、総評ということでやつておるのではなく、総評内外の全部の組合で、この各種委員の推薦はいたしておりますから、そういうふうに御了承願いたいと思うのであります。先ほど私は労働委員会委員の選任問題について若干申し上げましたが、現在は職権委嘱になつているわけであります。政府が最終的な責任をもつて委嘱することになつているわけでありまして、それに関係の代表者をわれわれが候補者として推薦するという形になつている。従つて一人を最終的に決定して推薦したということではないわけであります。  それからもう一つは、政府は、本日私が発言いたしましてようやく総評あるいは総評内外の関係労働者の反対の声があると知つたというわけではなくして、答申案ができる前に、私たちといたしましては、労働大臣あるいは労働基準局あるいは関係の方面によくお会いしてその事情は十分つぶさに話しておるわけでありますから、それを知らずに委員会の答申がそのまま全労働者の声だというふうに考えるのはどうかと思う。自分の都合のよい際にだけそういうふうな解釈をすることは、労働者の代表が発言したことを労働者代表の意見として政府が一切の責任をもつてそれを施策に移しておるかどうか、こういう点にも関連すると思いますけれども、そういうことはしばらくおくといたしましても、実情は今申し述べたような次第であります。
  86. 山村新治郎

    ○山村委員 今あなたがおつしやつたように、総評が少くとも責任をもつて推薦したことは間違いないと思う。推薦した委員の言動が総評の意思と反する場合において、それをそのまま黙認しておることは、いささか総評としてはふに落ちない態度だと思いますが、この点あなた個人としての考えはどうですか。今後もそういう態度があつた場合においては、そのまま黙認して参りますか。
  87. 重枝琢己

    ○重枝公述人 それはわれわれ内部の問題でございますから、お答えしなくてもよいかと思いますが、御参考までに申し上げますと、われわれとしても特定の問題が起つた場合に、それについて十分委員に連絡するということはやらなければならぬ。しかし委員の選出のとき、こうこうこういう問題について委員を選出するということにはなつていない。いわゆる労働基準法に基く一般的な中央労働基準審議会というようなものの委員としてずつと前に選出されたものであるというような事情もお考えを願いたいと思います。それから小椿委員は、その他の事情もございまして、現在委員を辞任いたしておりまして、後任の選定については、われわれの方で関係單産その他で話合いを進めております。
  88. 山村新治郎

    ○山村委員 だめ押しに伺うが、従つてその問題については、総評としては何ら世間に声明その他を発表したことはありませんか。
  89. 重枝琢己

    ○重枝公述人 小椿委員のやつたことを公表したかどうかという点は、どういうふうなことをお考えになつておるか知りませんが、昨日総評の法規対策部長が、公述人として、正式に総評としても反対しているということを権威ある国会の委員会で述べておることによつて御了承願いたいと思います。
  90. 山村新治郎

    ○山村委員 いま一点別の問題で伺います。先ほどあなたは、今度の労働法の改正案がもしも通つた場合には、ゆゆしい問題が国内的にも国際的にも起るだろうということを発言されたようでありますが、一体国内的に起るゆゆしい問題ということは、どういうことを想像されておりますか。
  91. 重枝琢己

    ○重枝公述人 ゆゆしいという言葉を使つたかどうかは、あとで速記録を見たいと思いますけれども、労働関係の諸問題について何かよからぬ、あまりおもしろくないことが起ると、その原因が那辺にあるかということを十分追究してそれを解決するという方策をとらずに、その起つて来た現象の表面だけをとらえて、そういうようなものを法律で禁止すればよい、制限すればよいというような態度をとること自体が問題の解決にはならない。そこで国内では、いろいろ労働条件その他の改善をしなければならぬという事実もあるし、そういう問題について、われわれ労働組合としては、最大の努力をし、あらゆる闘いをやつている。従つてわれわれは労使関係に満足しておりませんから、いろいろ荒れて来るだろうと思いますが、それはやはり資本家の態度あるいは政府の施策にいろいろな欠陥があつて、そういうような情勢を露呈して来ていることはいなめない事実であろうと思います。従つてそういうようなものをともどもに良識ある立場解決することが、問題の解決を一歩前進させるのであります。もちろんそういうような問題に関連をして、ことさらに国内の不安を醸成しようというような考えを持つておる勢力のあることをわれわれは否定はいたしておりません。しかしながらそういうようなものにすきを与えること自体も、また日本の国家としてはなすべきことではないというふうに考えますので、そういうようなことの言いがかりをつける口実を与えることをすること自体が間違いである。従つてゆゆしきことということは別といたしましても、労働関係についていろいろな問題が起きて来ることは事実であつて、それを利用して混乱を拡大させ、一つの目的を達成しようというようなものが起るということを申し上げたわけではないのですから、その点は明確に区別をしていただきたい。もしそのことで緊急調整その他ゼネスト禁止法あるいは破防法等の制定理由にしてもらうと非常に迷惑でありますので、その点ははつきりとお断りしておきます。
  92. 前田種男

    ○前田(種)委員 安孫子さんにちよつとお尋ねいたしますが、安孫子さんは先ほど現業の公務員と完全に公労法を適用されるものとを同一にすることには反対だ、つまり公務員のうちの現業関係が公企労法の適用を受けることには反対だ、それを後段では公務員から現業をはずして適用を受ければ別だというふうに言つておられますが、この点は大事な問題であつて、基本的には私は日本の労働者全部労働三法でいいと考えます。特に公共企業体だから、あるいは公務員のうちの現業だからといつて別の法律は必要でない。もし必要であるならば、労働三法の中に、公企労法関係のものあるいは公務員関係に対して除外例を設けたらいい。煩雑なそれぞれ別個の法律は必要ない。しかし今日すでにあります現行法規一本に統合することはなかなか容易でありませんし、現行法規を中心にしていろいろ改正するというような現実の問題として出て来ておりますから、私は基本的な問題には触れずに申し上げますが、現業公務員が公企労法の適用を受けることは、公企労法の関係からいうと、よけいなものが入つて来るために、公企労法の完全適用という問題が、公務員関係でいろいろな制約を受けるというようなきらいがあるから、あくまで別個にしてもらわなければならぬという意図もあつて、そういうことを言われたのではないかと思いますので、この点は大事なところですから、もう一度御意見を承つておきたいと思います。
  93. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 率直に申し上げますが、私は今度の法案に入つておりますような、現業の公務員を公労法の適用下に置かなければならない理由が、実はよくわからないのでございます。しかし業務の実態から考え公労法の適用下に置くというのであれば、国家公務員ではないということにして、公労法の適用下に置くことにしたらよかろう、こういうことを申し上げたわけです。国家公務員という身分が与えられておる限りは、その雇用関係法律的な性格から考えまして、別個の法体系で規律することが妥当ではなかろうか、こういう意味で申し上げたつもりであります。
  94. 前田種男

    ○前田(種)委員 全逓、林野局あるいは印刷庁の立場から申し上げますと、あなたの今の立場上からいつても、国鉄は完全に公企労法下にあるから、自分の方はいい、よそに対してはいろいろ意見があるしかし形は公企労法であつても、今日の国鉄の大半は国家予算である、しかも建設予算の大半は国家予算でまかなわれており、予算の出どころその他の点からいつても何ら区別はなくして五十歩百歩だというような点もあります。もちろんこの中には完全に独立採算制にならない部分もありますが、法規上はすつきりしなくてもいいことであるから、この点は認めて行こうというのと、いいことであつてもこれは一つの立法のもとでは困るというような意見もあろうと思います。それで私は現業関係を公務員から切り離すということは、公務員法の審議のときにもそういう方針をとつて来ておるわけです。それでむしろはつきりと公務員であると言われるようないわゆる昔の官吏として、明確に別個に身分を確保する、何十年勤めておつて現業員であるという身分の者は、あくまでも一般労働者と同等の立場において法的処置をもつて保護するという関係にすつきりした方がいい。私は企業体とか独立であるとかないとかいうことによつて、法の適用を受けるものと受けないものとあるという行き方よりも、そういう身分関係によつて、労働法規の保護を受けるものと受けないものとにはつきりと区別することがいいという意見を持つわけです。もう一点は、あなたは最後に、労働法規の中の緊急調整その他の問題に対しては、不適当だという意見でむしろ緊急調整等の内容を持つような問題は、治安立法として考慮されるのが妥当である、労働法規のらち外に置く方が妥当である、しかもその原因が大部分が政治ストあるいはその他のものが加味されるからという意見を発表になられましたが、私はその点について見解が反対です。ゼネストにいたしましようとも、労働法規のもとにこれを調節すべきでありまして、治安立法というような、犯罪を犯した場合を処罰するというような威嚇的な法規をもつてストを制約をするという行き方には反対です。しかもこのゼネストといえども、政治ストでなくして純然たる経済問題でゼネストが起きるということはあり得るわけです。そういう場合に治安立法の対象にするということは、労使関係の調節の上においてもはなはだ遺憾でありますので、むしろ労働立法の対象としてゼネストまで含めて、そういうことに対してどうするかということが考えられていいと思いますのでこの点は労働立法がいいか、また治安立法がいいかという問題に触れますので。もう一度あなたの御意見を承つておきたいと思います。
  95. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 ただいまの前段の方のお話は御意見として承りました。後段の方の問題につきましては、私が承知いたしておりますところでは、労働法上で争議行為という定義があるようでございます。それによりますと、労働者が経済的な要求を貫徹するための手段として行ふ行為が争議行為だというふうに、現在労働法でも定義されておるように承知いたしておるのでございますが、国民生活に重大な影響を及ぼすいわゆるゼネスト的な事態というものは、必ずしも個々の使用主に対する経済的要求貫徹の手段として行われておる争議行為であるかどうか、判断しにくい事態がたくさんあるのじやなかろうか。むしろ労働組合法の原則的な定義では律し切れないような事態——実際問題として国民生活の安全を確保するということのために必要な事態が、しばしば起きて来るのではなかろうか労働関係ということの範囲の中でそういう事態までも予想したことを立法するということは、少し対象の中心をはずれた処置になるのではなかろうかと思いますので、そういうようなものと区別のしにくいゼネスト的な事態については、別個の治安立法というような方法によつた方が適当ではなかろうかと考えておる次第でございます。ただしかしこの法律の中に、あの緊急調整のような措置が規定されておりますこと自体について、別に反対ではないのでございまして、あの方法よりもむしろ別の治安立法にした方がより適当ではなかろうか、こういう意見を申し上げた次第であります。
  96. 島田末信

    島田委員長 柄澤君。
  97. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 安孫子職員局長に率直にお尋ねしたいと思います。公述人としての安孫子職員局長は、きようははつきりした御意見を率直に述べられたようでございます。そこで私伺つておきたいのでございますが、お話によりますと、公務員と国家との関係、これは国家公務員も地方公務員もでございますがこの関係は権力の服従の関係であるということを言われたと思います。国家権力に対する地方、国家公務員の服従の関係ということによつて、労働者はストライキをやるべきでない、また国会の決定に対しても圧力を加えるような決定は越権行為だからやるべきでないという御意見であつたと思うのでございます。そこでそれでは一般の労働者は国家権力から解放されているのかどうか、また権力というものは一体どういうものなのかということについて、御返事をいただきたいと思います。
  98. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 私は憲法理論というようなことについて専門家でもございませんので、これまた率直に考え通りのことを述べさしていただきます。順序は少し前後いたすかもしれませんが、一般の労働者というようなものは国家権力のもとに置かれていないと言うのかとおつしやいましたが、およそ国民である限り、大なり小なりみな国家権力のもとに服しているものであるという点において、一般労働者が国家権力のらち外にあるものであるというふうには考えられないと思います。もしそういうような考えが許されるとすれば、それは国家というものが崩壊し、国家が否認されることになるのでありまして、その意味で一般労働者も国民である以上、国家権力のもとに服従するのは当然であると思います。ただ先ほど権力服従という言葉を使いましたが、これは昔から普通の行政法や憲法の本にも、よくそういう言葉が使つてございますので、その言葉を借用したまででございまして、要するに国家なら国家、あるいは公共団体なら公共団体というものが一つの社会的な実在として、団体としての存在を保ち得るためには、單にその団体を構成するばらばらの個人や、あるいは一定の地域というものがあるだけでは、それらの社会的団体は構成されないのでありまして、やはりそれらの一定の地域におります一定の人民を一つの国家にまとめ上げ、あるいはまた一つの公共団体に集約するところの権力と申しますかそういう力がなければ一つの団体はまとまらないと思うのであります。その場合に、国家公務員なり公共団体の公務員なりは、そのばらばらの個人を一つの団体にまとめ上げるための、国家の場合にはそれは統治権という言葉で呼ばれると思うのでありますが、団体の場合には何と申しますか、統治権にかわるような団体を団体たらしめる権力を行使する立場に置かれているものである。そういう意味においてもう少しつつ込んで申しますれば、国家を国家たらしめ、あるいは公共団体たらしめるところの一つの力そのものを分担し、これを遂行する立場に置かれているのであるからして、いわば国家の構成部分でもあり、また公共団体の構成部分でもある。そういう関係は、一般私企業の労働者における一対一の対等の関係とは違うのである。こういう意味で私は権力服従というような通常の法律書等に書かれております文言を借用したようなわけでございます。
  99. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 大分久しぶりで、きのうも珍らしく帝国という言葉が出たようでありますが、ただいまも権力服従というような言葉を聞いたわけです。国家権力の説明がるる述べられたのでありますが、どうも私にははつきりしないのであります。国家主権が国民に移つた、主権在民だというのが新しい憲法の精神であつたということを、まだ六年か七年で忘れるのはあまり早いのではないかと思います。国鉄の場合は、国会でも予算が自由にきまらない、大蔵大臣がきめるのでもなく、国会がきめるのでもない、何かの権力に支配されて来たということにならされてしまつて、ただいまのような権力服従という言葉国鉄職員局長の口から当労働委員会で出て来たのではないかと私は思うのでございますが国家の主権が国民にあるという主権在民の新憲法の建前には御異議はないのでございましようか。
  100. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 私ただいまの説明で国家の主権が国民にあるのだということを別に否認したということはないつもりでございます。ただ国家が国家として成立いたしますためには、ただそこに地域と人間があつただけでは国家にならないので、これらのものを一つにまとめる権力というものがなければならないだろう。ただその権力の渕源するところはどこにあるかというようなことは、私は何もさしておらないつもりであります。言葉が足りませんでしたがそういう意味であります。
  101. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 話がちよつとずれたようでございますけれども、そういたしますと、あなたの御筆法でありますと、国家権力に従属しなければならないという色合いは、まず第一に国家公務員であり、地方公務員であり、一般の労働者も決してこの権力から離れたものではないということになりますと、全部の労働者がストライキをやれないのだという結論になるのでございますか。
  102. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 私は全部の労働者がストライキをやれないのだということは毛頭考えておりません。ただ国家公務員、地方公務員、公共企業体職員さらに公益事業の労働者、公益事業でもない一般事業の労働者というふうに、おのずからその間に段階が画されて、労働基本権というものもそれぞれの事業の性格に応じて、いろいろな制限が国家権力のもとに設けられるのは当然のことではなかろうか、かように考えております。
  103. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 最近の一つの例を申し上げたいと思いますが。これは産業経済に出ていたのであります。「呉、山口地区に駐留する国連軍はこのほど「駐留費用は日本政府が負担すべきだ」との理由から、突然直接雇用している労務者一万三千名の給料を平均三千円切り下げたため、困つた労務者組合では「何とかしてほしい」と善処方を労働外務、大蔵の三省及び国会に訴えて来た、これは独立と国連加盟との空白時に発生した国際的労働問題であり今後もこうした給料澁帶、不払いなどが予想されるため、政府としても慎重に対策を練つている、なおこの問題について、政府では米軍を除く国連軍の駐留費は一切国連軍側が負担すべきで、国連加盟までは日本に負担の義務はなく、労務者の賃金従つて全額英濠軍が支払うべきだとの見解をとつており、近く岡崎外相とクラーク国連軍司令官の間に取決めを行うことになつた、しかしこの交渉が長引き、切下げ、不払い、渋滞などがそのままに放置されれば、争議権の認められている同労組の実力行使、解雇、新規採用から日共の内部工作など、現在の政府としては極めて困難な労働問題や国際紛議となる可能性が強いので、交渉は交渉として、とりあえず終戰処理費を割いてこの不足分にあてるほかはないとの意見が政府内部に強くなつて来ている。」こういう問題が一つ出て来ておるわけでございます。行政協定によりますと公益事業が優先的に米軍に使われるということになり、もちろん鉄道などもその対象の尤たるべきものだと思います。もしこういうことができて来た場合に、あなたの御見解で権力というものに服従しなければならないということで、国鉄の労働者がストもやれない、実力行使もやれない。政府はそれに向つて何ら政治的な手も打とうとしなければ、まつたく放置しておるという状態の場合に、三千円の賃金値下げという問題、不払いという問題に対して、一体日本の労働者はどうして生活を守ればいいかという問題でございます。あなたの御見解でございますと、服従しなければならないのであるというのであれば、実力行使もやれないし、権力に対しては何ら手を打てないという結論になると思うのでございますが、これは今の日本の労働者にとりましては一部分の問題ではなく、非常に広汎に拡がつて行く可能性のある問題だと思うのでございますが、ひとつ御見解をこの際聞かせておいていただきたい。
  104. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 ただいま、お読み上げになりました駐留軍関係の事件につきましては、私、あまり詳しいことを承知いたしませんが、お尋ねのありました考え方について申し上げさせていただきますと、現行法のもとにおいては、争議権を与えられておる労働者であれば、自分たちの生活を守るために、堂々と争議に訴えることができると思います。しかし、現行法上、争議権を認められていない労働者の場合は、これは争議権にかわる別の調停なり仲裁なりというような救済手段に訴えるほか仕方がないのではなかろうか。ただ権力という言葉を私が申し上げましたために、いろいろ御質問を受けておりますが、国家公務員の場合には、権力そのものを行使する立場にあるものでございます。そういうものが政府なり、公共団体なりの内部において争議をするというようなことがかりに許されるといたしますと、そういう団体そのものが成り立たないことになるのじやないか。こういうふうに私は考えておるわけでございます。
  105. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいまのような性格の場合でも争議権があれば、当然これは労働者として生活を守るために闘うことができる。国家公務員は争議権が与えられていないからできないのだ。日本の国会として、争議権を与えれば、これも闘えるのだという御見解で、初めの御証言と大分違うように思いますが、いかがでございましようか。
  106. 島田末信

    島田委員長 まだ議論をいたしますか。どうも質疑応答のような気がしない。議論だ。議論ならひとつ、この辺でとどめましよう。
  107. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 その点だけちよつと伺つておきたい。
  108. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 最後の点だけ、お答え申し上げたいと思います。私は国家公務員というようなものには争議権は与えらるべきではない、そういうふうに先ほど申し上げましたつもりでございます。
  109. 島田末信

    島田委員長 青野武一君。
  110. 青野武一

    ○青野委員 私は河野さんに一、二点、お尋ねしたいと思います。先ほど公述をなさいました中に、地方公営企業労働関係法案の中で、第十三条の苦情処理に関する、共同調整会議が開かれることは、これは法文では団交できらると書いてある。これを具体的に河野さんは経営協議会に置きかえたらどうか、そういう御希望が出ましたが、それについて、非常に大きな問題だと思いますので、お尋ねしておきますが、それに対する具体的な、何か構想を持つておられますか。それと東京労働組合連合会の中央執行委員長立場から、実に私ども、感心するようなお話が、率直に述べられました中に、たとえば京成電車にしても、地下鉄にしても、東京都の交通関係についても、実際にかわらぬじやないか、かわらぬが地方公務員の立場から、いろいろな制約を受けておるということは、不都合じやないかというお話がございましたので、それについて何か特別な労働組合法規、その他関係法規をいかに修正してもらいたいといつたような、具体的なお考えを持つておられるか。以上二点お伺いします。
  111. 河野平次

    ○河野公述人 第十三条の苦情処理の条項でございますが、単に職員が日常の労働の過程において、苦情等が出た、その場合にこれを調整するという機関であつては、きわめて範囲が狭いと申しますか、それだけの機関では大して意味がないと私は考えておるわけであります。それで先ほども公述のときに申し上げましたが、政令二百一号の公布される前においては、私どもにも、りつぱに労働三法というものが適用されておつたわけでありまして、その当時においては、もとより団体協約も締結してありまするし、またそれに基く経営協議会というものも設置されて、あらゆる問題が経営協議会において処理決定されて参つたわけです。そういう実態から行きまして、あの七月にたまたま政令二百一号というものが出ましたけれども、東京都におきましては、そういう法律上の関係ということは別といたしまして現実の問題として郵政を運営する意味において、はたまた、交通事業、水道事業というものを円滑に能率的に運営する意味において、法律いかんにかかわらずこういう機関があることが望ましい。そうしてほんとうに都政運営のためにプラスになるという見解が持たれたわけであります。そういう関係からいわゆる私的経営協議会という言葉を用いましたが、そういう形をとつて今日に至つているわけです。今日も私どもは法律上認められておりませんけれども、事業主との間に話合いで経営協議会というものをつくつて、一切の問題が、この前の第五条かの管理と運営という問題のときにも申し上げましたが、事業運営の面についても相当つつ込んで私ども発言をしまた事業主側がそれを採択すべきものは採択する。参考にすべきものは参考にして、事業の能率的な運営の面に役立たせてもらつているわけであります。そういう経験からいたしまして、もとよりその経営協議会という中におきましては、職員間に起つた、ここに書いてあるような苦情処理問題も当然俎上に乗つて合理的に解決をされているのでありますから、こういう一つの機関ができるということであれば、苦情処理だけであつてはもつたいなさすぎる。もつと積極的に事業の改善のために職員の意欲というもの、創意くふうというものを織込むことの方がいいんじやないか。そうすることによつてあのときも申しましたように、私どもはこういう独立採算制の企業体ということになりますと、ひとり管理者だけでなく、それを構成するわれわれの一人一人に至るまでが相当の責任を感じなければなりませんので、投げやりな経営であつてよろしいということにはならない。そういう関係から、私ども最大限の知恵をしぼつて、熱情を傾けて事業の円滑なる発展のために微力を盡しております。そういう過程を通じて、われぞれの生活の改善ということも、待遇、労働条件の改善ということもできて来るのであつて、そういう意味でこの機関というものを、もつと奥ゆかしい内容を持つた経営協議会に改むべきである。そうして單に労働関係、つまり利己的な感覚に基く要求の斗争場ということではなくして、もつと広い意味での事業改善のための機関に改めたらどうか。そうすることがぜひ必要である。これについての条文の整理等については、法律專門家の方々が、その精神にのつとつて処理していただけばよいのであつて、経営協議会の構成内容というものについては、それぞれ経験もありますから、何かモデルをつくつてくださるというのならそれでもけつこうでありますが、ただ条文だけでもよいのではないかと思われます。そういう見解からああいうことを申し上げた次第であります。  第二点の、われわれが類似産業として例をとりやすい私鉄関係と都市の交通の関係を比較対照したわけですが、そういう関係からいつて、一方は都市交通といえば、東京でも東京都内を疾走する交通関係であり、私鉄ということになりますと、東武、東急等に見られるがごとく、数府県にわたる広範囲の地域にまたがつた交通機関を持つておるのであつて、ストライキをやつた場合における公共福祉に対する影響というものは、これは局部的な都市電の比ではないと思います。実際の内容はそうであるにかかわらず、一方は公務員というレツテルが張られ、そのために役所から給料を受けているという関係だけの相違によつて、一方には罷業権があり、一方には手も足も出ない強い制限を加えているということは、適正ではないのではないかということを申し上げたのです。そういう関係から申しまして、私は冒頭に総論として申しましたように、地方公営企業労働関係法制定それ自体に反対で、現行法の労働三法を完全に適用していただけばそれで十分なのだ。こういう見解を持つのですが、それは一つの基本線というか、労働者として憲法に保障された基本的な権利を確保すべきであるという根本的な理念に立つて一つの概念であります。現実の問題といたしましては、私どもの意のごとくにならず、いろいろ制約された環境のもとに置かれているわけですが、そういう関係から現実論といたしまして、基本論はひとまず留保しておいて他のたとえば国鉄、專売等のごとき、あるいは地方公務員、国家公務員とのにらみ合せの関係からいつて、こういう法律制定することが必要であるということでありますならば、最小限度こういうふうに御修正を願いたいということで、逐条的に先ほど見解を申し述べたわけですが、あのような意見が採択されますれば、この法案制定に対して賛意を表したい。その具体的な内容は先ほど申し述べたあの内容に盛り込まれていることによつて御了承を願いたいと思います。
  112. 青野武一

    ○青野委員 河野さんにもう一点お尋ねいたします。御公述の中でちよつと触れられましたが、私どものところに各所から請願書が参つておるのであります。それは御承知のように、地方公務員法の第五十七条に、「単純な労務に雇用される者その他その職務と責任の特殊性に基いてこの法律に対する特例を必要とするものについては、別に法律で定める。」さらに同法の附則第二十一項に、「第五十七条に規定する単純な労務に雇用される職員の身分、取扱については、その職員に関して、同条の規定に基き、この法律に対する特例を定める法律制定実施されるまでの間は、なお、従前の例による。」とあります。それが今度の改正によりますると、実際上二十一項の法の精神は実現せられず、政令二面一号によつて、今まで不当な取扱いを受けて参つた。これは全国的に地方公務員に関しましては問題であろうと思いますが、単純な労務に従事する者たとえば掃除をする人とか、または電話交換手、文字通りこれら単純な労務者が地方公務員法あるいは国家公務員法によつて全部縛られてしまうということについては、一応法律においてこういう保障ができたにもかかわらず、実現することなく今日に至つて飾るのが、今度とりはずされる。そこで労働組合法によつて保障された労働組合活動の自由を認めた法律制定してくれ、もう一つは、労働基準法の適用を認めた法律制定されること、さらに政治的行為の制限を全面的に撤廃する法律をつくつてくれ、こういう三通りの請願が次から次へ全国から私どものところにも、また同僚議員のところにも来ておると思います。これについてあなたは東京労働組合連合会の責任者といたしまして——おそらくこれについては非常な御努力が必要であろう。また国会と密接な関係も持たなければならぬと思いますが、この問題についてどういうお考えを持つておられますか。組合の執行委員長立場から、この非常にむずかしい問題にぶつかられると思いますが、簡單でよろしゆうございますからひとつ御意見を聞かしていただきたいと思います。
  113. 河野平次

    ○河野公述人 その点は私の公述の一番最後に要望いたしておきましたし、先ほど天野委員からも御質問がありましたので、そのときにもお答え申し上げておきましたが、今おつしやいますように、この前の地方公務員法の制定のとき、実はその前からの継続の問題でありますが、そのときにもたいへん問題になつて、今読み上げられました地方公務員法附則二十一項に、そういう形において規定したといういきさつがあり、この地方公関係職員はその附則第二十一項に基いてこういう法律案が提案された、その関連性から申しまして、今回の改正にあたつて、單純労務者の法的措置の問題について適切な措置が当然なければならぬと思うのですが、聞くところによると、労働者においてもそういうことを痛感されて、閣議に提出した原案においてはそれを救済する法的措置も講ぜられておつたと伺つております。しかるに不幸にして閣議においては全部それを削除されたというようないきさつから、これには全然取残されてしまつたという経過だそうでありますが、私どもはその点を非常に遺憾に考えております。そこで先ほどの天野委員の御質問のときにもお答え申し上げましたが、これらの諸君に対しましても、私どもは基本的には労働三権をそのまま認めなければならないという主張を持つております。しかし他の同じ公共団体の中においても、公企労法を適用されるもの、一般の地方公務員法を適用されるもの等があります。それから単純労務者の諸君に対しては普通の労働組合法、労働関係調整法並びに労働基準法をそのまま適用されることになりますと、その他の法律適用者との関係においていろいろ運営上むずかしい問題も出て来ようかと考えられますので、これらのその他の法律適用者との関係をどう調整した法律考えてもらうかということが技術的な問題として非常にむずかしいであらうということは考えられますが、それにいたしましても、今日これらの単純労務の諸君の法的救済の措置をおいてけぼりにするということについては、どうしても私どもとしては了承しかねるのであつて、何とかこれを含めての改正にこの際していた荘きたいということを強くお願い申し上げたような次第であります。
  114. 青野武一

    ○青野委員 安孫子さんに一点だけお尋ね申し上げたいと思います。先ほどの公述のしまいの方で、労働大臣緊急調整をやることについては大体反対ではないが、適当でもない、こういうお言葉があつたようにメモをとつたのでございます。これは議論をするわけではございません。労働大臣緊急調整をするにあたりまして、公益事業に関して特に公共の福祉を害するといつたような場合は、私どもの常識では、大体公共の福祉とは何か、一般国民大衆に迷惑をかけないことだ。そうすると、労働大臣の頭一つでもしかりに濫用せられるとたいへんなことになります。いわんや日本は、平和的な基礎が次から次へ築き上げられておる時代ではない、非常に危い方向に進んでおるのです。これは国際的な新聞を見ても明らかなことです。国内的な情勢を分析しても、私どもは非常な不安を持つ。労働大臣の手に緊急調整権を握られるということは、先ほど重枝さんからも河野さんからも、これは一種の争議行為の禁止であるといつたお話があつたのは私も同感でございます。この点について、結局経済ストでは大体国民生活に重大な影響を与えることはまずないだろう、そういう点がかりにあれば治安立法で——取締らないよりましだ、こういうお話があなたからあつた。国有鉄道の職員局長のポストにおられる方は、いろいろな意味で非常に重要な立場に立つておられるのだから、私はその点について一応お尋ね申し上げたいと思いますことは、この国家公務員法をつくりましたときも私どもは反対、地方公務員法をつくりまたときも反対した。これは労働法ではなくして、国家公務員法というのは一種の官吏法だ、地方の役人さんの紀律を規定したもので、非常に制限が多い。また今度も大分制限が多くなつている。こういうときに非常に内容が不公平だ。というのは、今申しましたように、たとえば同じ公務員でも宮内庁の諸君が内輪もめしてストライキをやつても、国民生活には影響いたしません。鉄道は夜中に走つても、これがストライキをやると乘客に迷惑をかけるからという労働大臣の判断ですが、しかし建設省の出先の現場あたりは雨が三日も降ると工事がやれないから休む。そうすると休んでいる間でもストライキは十分できる。あるいは年度末になつて工事をやろうと思つても、予算がないからそのままやりつぱなし。そうすると建設省の出先現場諸君はいくらストライキをやりましても国民生活には何らの影響はない。一括して同じ公務員というわくの中にはめておるが、それぞれ分析して参りますと非常な不公平があるのです。それを一律に地方公務員法でも、今河野さんにお尋ねしましたように、ほんとうに単純な労務に従事しておる諸君も一緒に縛り込んでしまつておる。こういうところはやはり労働組合としては相当反対の意見が強いように思いますが、同時に、これは重枝さんにもお尋ねしたいと思いますが、争議権のないところに団体交渉権や団結権を認めたつてこれは大して役に立ちません。吉武労働大臣は、今度現業公務員に対しては団体交渉権を与えたといつて非常に得々として説明をなさつたそうでございますが、公共企業体労働関係法から行きましても、仲裁裁定が出てもそれを政府は実施しない。与党の諸君まで同情して、何とかしようと思つても、最後になると大蔵大臣が予算上、資金上支出不可能だといつて公労法十六条でけ飛ばしてしまう。それでは何のために労働三権を確立したかわからない結果になる。そういう点から考えまして、公務員の内容についても非常に千差万別でございますが、国鉄公共企業体労働関係法の中に縛られておりまして、私どもは将来こういうものをいろいろな面から修正して行きたいといろ希望を持つております。それが実現するかどうかはわかりませんが、そういう点で公務員法と公共企業体労働関係法に縛られているところの国有鉄道の従業員あるいは全専売、そういうものとの調整について、職員局長という重要なポストについておられるあなたの立場から、何かお考えがございましたら、最後にそれを承つておきたいと思います。  なお重枝さんにお尋ねしたいことが二、三点ございますが、時間の関係で省略させていただきます。ただ労働者の利益を代表して項目別に微に入り細にわたつて詳細に公述くださいましたことは、私ども非常に感激を持つてお聞きいたしました。時間がございませんので、御質問は申し上げません。その点ひとつ御了承願つておきます。
  115. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 ただいまお尋ねのございました第一点の、反対ではないが適当ではないと私が申し上げましたのは、労働大臣がこういう決定をすることについて私が申し上げたようにおとりになつたようでございますが、私が申し上げた意味は、労働大臣決定をすることについて反対ではないが適当ではないというふうに申し上げたのではないのでございまして、こういうような緊急調整の条項がこの法律の中に盛られるということについては反対ではないが、しかしこういうような労働関係法の中に盛るよりは、別個の治安立法によつた方がよろしい、そういう意味でこの法律の中に規定されることは必ずしも適当ではないというふうに申し上げたつもりでございます。なおただいまお言葉の中にございました権限の濫用とか権利の濫用というようなことは、これは労働大臣に限らず、いかなる人についてもいけないことだと考えております。  それから第二点として、国家公務員法や地方公務員法の内容において非常に不公平があるというお話がございました。これは私どもも大いに考えなければならない点であると思つておるのでございまして、この点は先ほどもちよつと申し上げたかと思いますが国家公務員法ができます以前におきましては、狭義の官吏と、官吏でない一般の私法上の雇用契約によりまするものとの区別が設けられておつたこともございます。さようなことも一つ考え方でございましようし、また現在国家公務員や地方公務員という一つの範疇の中にあまりにたくさんのものが含まれておりますので、こういうものの中味につきましてはいろいろと御検討をいただきまして、それらの範囲を適正に定めていただくということが非常にけつこうなことであると思つておる次第でございます。  なお裁定の拘束力というようなことに関連してのお言葉がございました。この点は実は私先ほど申し落したのでございますが、公務員、公企体の職員というようなものには争議権が与えられておりませんので、この争議権の与えられておらないということにかわる救済手段としての仲裁裁定であるのでございますから、仲裁裁定拘束力ということにつきましては、現行法よりもさらに強い、少くとも政府を拘束するような力を仲裁裁定に与えるべきでである。できればぜひそういうふうにしていただきたい、かように考えております。
  116. 島田末信

    島田委員長 中原健次君
  117. 中原健次

    ○中原委員 大体お尋ねいたしたいと思う重要点は、ほとんど皆さん聞いておられるが、ただここで私が吾孫子さんにあらためて申し上げたいと思いますことは、これからいろいろ複雑な状態が出て来るであろうということに関して、先ほどからも論議がありましたように、権力服従の問題でありますが、ここで問題になりますのは、最近しばしば政府が問題にされております政治的ストライキの考え方の問題です。政治的なストライキというのを一体どういう範囲規定されようとしておるのか。ただ単に経営者と労働者の間における労働条件の維持改善のための純粋な経済問題としての交渉以外の問題は、いわゆる純粋な経済問題でないということのゆえに労働組合が取上げるべき事項ではない、こういうような解釈がよくなされるのであります。ところで考えてみますと、たとえば今回ここで問題になつております労働関係法律案の問題にいたしましても、さしずめこれは労働者の経済権を脅かす問題にまでつながりを持つことがわかるのです。決してこれが純粋に、経済問題だけ切り離した形の中にこの三つの法律案があるとは思いません。この法律案が国会でもし労働者の意思に反する限度において決定をされるということになつて参りますと労働者は経営者側と交渉を進める前に、もうマイナスさせられておる、こういうことになるわけです。そこで労働者の立場から申しますとこれは何とかして、労働者に有利な法律措置を講じてもらうようにしてほしい、こういう念願を持つわけです。ところでその念願を持つていろいろ決議し、いろいろ要請もするわけでありますがその決議なり要請なりのいろいろな行動が、その法的措置を決定する国会あるいはそのときにおける国内の客観情勢を、有利に導くように醸成することができないわけです。そこでそれを有利に醸成せしめたいという念願のもとに、憲法二十八条の団体行動権をそこに考えるわけです。団体行動権を取り上げて、労働組合はもとよりその秩序ある組織の方法によつて、大衆的な形の実力行使ということが出て来るわけです。そうするとそれは政治ストライキであるから、あるいは政治的な行動であるからいけない、こういうふうに頭から否定してかかるといたしますならば、実は労働者としてはとるべきすべがないわけです。ただなされるがままにまかして、はなはだ申し上げにくいことでありますが、今日のような国会の形の中では、おそらく労働者の意思に反したことがきまりやすいと思います。これは否定できない。だからこそ今政府が出しております法律案の説明を聞いておりましても、政府の方ではこれを得々として御説明になりますし、それを直接その利害関係に立たされておる労働者の立場から考えると、いろいろ不満とか言いたいことがある。ただいま御指摘になりましたように、たとえば公企法にいたしましても、仲裁裁定決定公共企業体のみならず、直接政府まで拘束するものでなくちやとうてい意味がないと思う。そういう場合にも、労働階級にとつて有利な、好ましい問題は、せつかく公共企業体労働関係法改正にもかかわらず、これには触られておらないということになつて参りますと、どうしても労働者としては、そういう形の力によつて自分たちの考え方、願いを通すという考えになりますから、そういうことに対してどういうふうに吾孫子さんはお考えになりますか。(「国会を否認するつもりか」と呼ぶ者あり)私の発言中ですから、じやまをしないように……。その点はどうなのですか。これも単純に、一概に政治的な問題として拒否するという論が成り立ちますか、それとももう少し違つた見解が成り立ちますか。それについて吾孫子さんの御見解を承りたいと思います。
  118. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 今非常にむずかしい御質問なので、少し聞き落した点があるかもしれませんが、今度のこの法律改正によりますと、従来の労働組合法の中の争議行為に関する定義のところは別にかわつておらないのでございまして、従つて争議行為ということに対する考え方は、従来の労働組合法の解釈のままでよろしいかと思うのでございます。そういうふうに考えて参りますと、先ほども申し上げましたようにいわゆる緊急の事態というようなものは、組合法の原則に規定されてあります争議行為というものの範囲を越えるものが相当あるように思われる。そういうものまで、同じ法律の中でそれに対する規定を書くということも適当でないのではないか。そういうことも、別の治安立法にした方がよくはないかという考えの出て来る一つ理由になるように私は考える次第でございます。  それから団体交渉権の問題に関していろいろお話もございましたし、また仲裁裁定拘束力のことについてもお言葉がございましたが、この点は誤解のないようにお願いいたしたいと思います。私がさつき、政府を拘束するような裁定が必要だ、そういうふうに裁定の拘束力を強めていただきたいということをちよつと申し上げましたが、これは国会の審議権を拘束するというような意味で申し上げているのではないのでございまして、仲裁裁定の出た場合には、政府が当然それを国会に提出する義務を負う、そういう限度において、現在よりも裁定の拘束力を強めるようにしてほしいという意味で申し上げたわけであります。  なほ少しお答えの的がはずれるかもしれませんが、全体として今度の改正案を見ました場合に、国家公務員及び公共企業体職員に関する限り、今までよりも相当大幅に労働者側の方に有利な改正が行われているのでございまして、経営者側としましては、必ずしも全面的に賛成しておらない点もあるのでございますが、あまりこまかいことを申し上げても恐縮と存じまして、おもな点だけを先ほど来申し上げたような次第でございます。
  119. 中原健次

    ○中原委員 今度の改正案が労働者にとつてかなり有利であるというふうな御意見でありましたが、その議論は時間がありませんからいたしません。むしろそうではなくて、先ほど重枝さんも触れておられましたように、総評あたりは総評の代表者をここに送りまして、全面的に反対であるという意思表示をいたしておる。私どももそう思います。たとえば労働大臣の権限が非常に拡大されまして、労働団体に対する労働大臣の介入が合法化されて行くというようなことも見受けられるのであります。そういうふうに法律で合法的に介入ができるということを保障するとこれがどこまで介入するかわからない、いわば労働大臣の掌中に組合を握るというような形さえ出ないとも限らないと思います。そういう危険をはらんだ今度の労働関係諸法規の改悪になつておりますし、先ほど重枝さんが特に触れられました基準法の問題について考えてみましても、これではとうてい労働者が満足するどころか、とんでもない改悪になつておると思います。部分的にはまあこれならばと思う点がまつたくないとは言えないが、ほとんどの面ではむしろこれを改悪というような言葉で呼ばなければならないような内容になつておると思います。また都労連の河野さんもそういうことを言われておる。でありますからここではつきり職員局長の立場にあられるあなたとしては、もう少し視野を広げて考えていただきたい。政府の立場に立つてあるいは政府の権力関係の中でお考えにならずに、もう少し時代の動きというものをお考え願いたい。日本の占領が一応とまりまして、独立の形になつて来た日本としてこれでよいだろうか。要するに占領政策がさらに今後継続するかのごとき、あるいは場合によれば悪くなる分を含めての形が、たとえば政令三百二十五号が今度はかわつた形でわれわれ国民の上にのしかかつて来ようとするような傾向がある。そういうものを多分にはらんで、今回の労働関係諸法規並びに治安関係法規その他行政協定実施に伴ういろいろな法律の改悪が出て来ておると思います。こういう点については、やはり高い知性の人たちの立場から、冷静に御判断願いたいと思います。
  120. 吾孫子豊

    吾孫子公述人 いまいろいろおつしやいましたのでちよつとわからなくなつたのですが、私、先ほど申し上げましたのは、国家公務員や公共企業体職員に関する限り、現行法よりはよほど緩和されておる。しかし全体的に見ました場合に、公益事業あるいはその他の緊急事態というようなことに対する改正という点につきましては、必ずしも労働者側の立場において有利であると言えないこともあるかと思います。しかしただいまいろいろお教えいただきました点につきましては、私どももできる限り勉強いたしたいと思つております。
  121. 島田末信

    島田委員長 公述人各位には長時間まことに御苦労でございました。この際お諮りいたしますが、ただいま審議せられております労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案につきまして明二十一日の委員会におきまして国鉄労働組合中央執行委員野々山一三君、日本都市交通労働組合同盟中央執行委員長岡本丑太郎君の両名の方を参考人として招致いたしまして、右三案に対する意見を聽取いたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認めさようとりはからうことにいたします。  本日の公聴会はこの程度で散会いたします。     午後五時四十五分散会