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磯部参議院労働專門員 それでは私からお答えさしていただきます。ただいまの
熊本さんの御
質問の第一点は、従来
地方の
知事が
認可しておりましたのを、今度の
法案によりますれば、これを
中央に持
つて来て、
労働大臣、
大蔵大臣の共管にして、その
免許にした、これはむしろ
地方の
事情を知
つておる
地方の
知事にまかした方が、より妥当ではないかという点でございますが、これにつきましては、御
承知の
通りに
労働金庫というものは、きわめて零細な
労働者の
資金を預かるものでございますので、その
経営はなるべく広い
範囲で、広汎にわた
つて零細な
資金を集めて、
経営することが必要でございます。どうしても
指導を加えまして、これは第二の御
質問に
関連することと思いますけれども、
一つの
都道府県一
金庫という
程度の大きさをも
つてすることが妥当でもあり、またその
健全を期するゆえんである。今日までの
経過におきまして、これが
指導に当られました幹部並びに
労働省あたりの御
方針が、そうであ
つたのでございます。幸いにして今日までは御
承知の
通り、十六の
労働金庫はいずれも
府県全体を
範囲といたしておりまして、一
府県一
金庫の
建前で来ております。しかしながら御
承知の
通り、今日
基準法とな
つております
中小企業等協同組合法の
建前によりますれば、一定の
資格條件を備えました
申請がありました場合には、これを
認可しなければならないという
建前にな
つております。従いまして今日におきましては、今申し上げましたように、一
府県一
金庫の
状態で進行しておりますが、今後
労働界の
事情の
変動等によりまして、その基盤でありまする
労働陣営が分裂をしまして、あるいはその他の
事情から、
二つないし三つの出願がありました場合は、その
地方地方の
知事の
意見によりまして、数個の
労働金庫が
認可されるということも十分想像し得るのでございます。そうなりますと、今申し上げましたように非常に危険なことにもな
つて参りますので、これはやはり
中央にまとめまして、
労働大臣、
大蔵大臣の
協議の上で
認可するということにしておきまして、そうしてあくまでただいまの
方針を貫き得るようにしておく方がよいのではないかというので、この
免許主義をと
つたわけでございます。
引続きまして第二の御
質問につきましても、大体お答え申し上げたことにな
つたのでございますが、それならばなぜ一
都道府県一
金庫主義をはつきり法律に書かないかという点の御
質問だと思いますが、それらにつきましては、今の御
質問にもありましたかと思いますが、
都道府県と申しましても、一般の人口七、八十万から百万前後の
府県と、それから東京のごとき七、八百万にも及ぼうかというような大きな
府県とでは多少
事情が違いますので、将来の場合においては、大
府県におきましてはあるいはそういう
心配なく、
二つの
金庫を許すということもかえ
つて実情に即するような場合があるかもしれま
せんし、この点は先ほど申し上げましたように、その
精神をも
つて中央に
権限を委譲するということによ
つて、
行政的に
運営して行く方がよかろうという
趣旨で、そういう
條文を特に入れなか
つたのでございます。なお
中央に
権限がたといございましても、
地方の
事情に即さないような
行政をするおそれがないかという点につきましては、御
承知の
通りに
労働省におきましては
地方に
労働部、また
労政課、さらにその下には
労政事務所というようなものもございまして、常にその
地方の
労働界の
状況は手にとるごとくわか
つておりますし、また大蔵省におかれましても、
地方には財務局その他の出張所がございまして、それらの点につきましては、たとい
権限が
中央にございましても、
十分地方の
実情に即した
行政はと
つて行ける、むしろそういう各
地方のブランチからの情報を集めまして、全国的なバランスを考えての
行政なり監督なりがや
つて行けるのではないか、こういうように私どもは考えておるのでございます。
それから第三の御
質問は、
賃金遅配等の場合に
労働金庫から
労働者に
金融をする、そういうことを現在もや
つているし、将来もそういうことがあり得る以上は、むしろこれらの
事業主から出資させるというようなことをしたらどうかというような
意見があるが、それに対する
原案者の考え方はどうかという御
質問でございまするが、これは先ほども御
質問の中にございましたように、
労働金庫はあくまで
労働者がその自主的な共助協力によりまして、必要とする生活
金融をや
つて行こうという
趣旨で、今日までその盛り上る力によ
つて発展して来たものでございまするので、これに対して
経営者が参加する、
経営者から援助するということを加えますることは、かえ
つて労働者の盛り上る意気を害するおそれもございまする上、また御
承知の
通りに
労働運動に対して
経営者が介入する、支配するということは、あくまでも愼重にこれは避けるべきであろうと私どもは考えておるのでございます。従いまして原則といたしましては、あくまでも
経営者のお世話にならないということで出資もし、また預金もいたし、
経営をするのでございまするが、
賃金遅配等の場合における
金融は、これはその結果として
経営者が非常に助かる、また喜ぶことにはなると思いまするが、あくまでも貸出しは遅配のために苦しんでいる
組合員に属する
労働者に対する貸出しでございまするので、これはあくまでも先ほどから申し上げましたような主義、
精神を貫かして行くのが、
金庫の正常かつ
健全なる発展のために私は必要であると思
つておるのでございます。なおしかしながらそうは申しまするが、この
條文の第十一條をごらんいただきますると、第四号に「前各号に掲げるものの外、その
金庫の地区内に事務所を有し、且つ、
労働者のための福利共済活動その他
労働者の経済的地位の向上を図ることを目的とする
団体であ
つて、その構成員の過半数が
労働者であるもの及びその連合
団体」ならば、その名称のいかんを問わず
金庫に加入することができるのでございます。従いまして過半数が
労働者でさえあれば、たとい
経営者、
事業者がこの
団体にお入りにな
つていてもさしつかえないわけでございまするので、こういう
団体をおつくりいただきまして、
経営者がその好意的な援助として大金を預け入れていただくということは、むしろ歓迎してもさしつかえないと思うのでございます。なお第三号の規定には、健康保険
組合あるいは国民健康保険
組合というような
団体も入
つているのでございますが、御
承知の
通りこの健康保険
組合は、
労働者だけではなくて
事業主も法律上必要なメンバーとして入
つておりまするので、こういう点からも
事業主は何ら遠慮されることなく、この
労働金庫にこれらの
組合を通じて
資金を導入されることは可能なわけでございます。
それから最後の御
質問は、未
組織労働者が加入できないではないかという御
質問でございまするが、これもただいま申し上げましたように、第四号のその他の
団体というものを利用していただけば、たとい会員がきわめて少く、極端な場合を申し上げますれば、二人あるいは三人というような小人数でも、この
団体は結成することができるわけでございますので、未
組織労働者といえども、この
労働金庫をぜひ利用したいという意思をお持ちになりまするならば、この第四号の利用に上
つて、必ず加入されることは可能なわけでございますし、またこの
法案がもし幸いにして通過いたしましたあかつきにおきましては、おそらく
労働省といたされましては、先ほど申し上げましたように、全国各
地方庁の機関を動員されまして、また
労働金庫の協会等におかれましても、おそらく大々的に未
組織労働者にも呼びかけられまして、このような
団体を結成して、そうしてどんどんと
金庫に入られるように、一大運動を起されるものであると私どもは確信しております。