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1952-06-25 第13回国会 衆議院 労働委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月二十五日(水曜日)     午後二時一分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 前田 種男君       麻生太賀吉君    天野 公義君       金原 舜二君    塚原 俊郎君       三浦寅之助君    柳澤 義男君       山村新治郎君    熊本 虎三君  出席政府委員         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君  委員外出席者         参議院議員   中村 正雄君         大蔵事務官         (銀行局特殊金         融課長)    有吉  正君         專  門  員 横大路俊一君         專  門  員 浜口金一郎君         参議院専門員  磯部  巖君     ————————————— 六月二十四日  委員江崎真澄君、大泉寛三君、甲木保君、高橋  權六君及び田渕光一君辞任につき、その補欠と  して三浦寅之助君、佐々木秀世君、篠田弘作君、  松野頼三君及び塚原俊郎君が議長の指名で委員  に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  小委員補欠選任  労働金庫法案参議院提出参法第六号)     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 ただいまより会議を開きます。  日程に入ります前にお諮りいたしますが、去る二十三日三浦寅之助君が一旦委員を辞任されましたので、港湾労働に関する小委員会におきまして、ただいま小委員に欠員を生じております。この際小委員補欠選任を行わねばなりませんが、これは前例により委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認め、三浦寅之助君を小委員に再び御指名いたします。     —————————————
  4. 島田末信

    島田委員長 これより労働金庫法案参議院提出参法第六号を議題として質疑を進めます。山村
  5. 山村新治郎

    山村委員 この金庫法案においては、労働者幅利増進をはかるという点に主たる目的が置かれておりますことは、提案理由説明にもあるようでございますが、ただこの運用の面において、非常にむずかしい問題が幾多発生すると私は思うのであります。特に事業の面におきまして、「会員のためにする有価証券保護預り」という点が規定せられておりますが、これは有価証券によるところの融資を行うという意味も含まれておるのでございましようか。中村委員長にお尋ねいたしたい。
  6. 中村正雄

    中村参議院議員 有価証券によつて融資をするということは予定いたしておりません。
  7. 山村新治郎

    山村委員 それでは続いてお尋ねいたしたいのでありますが、五十八條の二にございます「会員のためにする有価証券保護預り」という点は、実際的にはどういう問題の行為をさすのでございましようか。
  8. 中村正雄

    中村参議院議員 これは一つ金融機関であります関係上、有価証券の預かりという業務もやるわけでありますが、大体労働者が半数以上の団体労働組合以外についてもそういうふうになつておりまして、労働者有価証券を多く持つておるということは想像できないわけでありますけれども労働者においてもいろいろな関係から持つておる者もありますし、またこれに入つておりますのは、労働組合だけでなくして、その他の消費生活協同組合等の他の組合もあるわけでありますので、そういうものの保管預かりということをやるわけであります。
  9. 山村新治郎

    山村委員 最初お答えによりますと、有価証券については融資をしないというお話であるようでございますが、第二のお答えとして、金融業者であるからして有価証券の預かりもするのだというお言葉は、多少矛盾しておるような気がいたしますが、その点間違いありませんか。
  10. 中村正雄

    中村参議院議員 矛盾しておると考えないわけでありますけれども労働金庫一つ金融機関であり、やはり会員の中にこういうものを預かつてもらいたいという希望もあれば、預かり得るようにしても何ら支障ない、こう考えて業務の中に入れておるわけであります。
  11. 山村新治郎

    山村委員 そこで第一の問いに関連をして申し上げますが、要するに金融業者である限りにおいて、有価証券によつて金融をするということも、あえて金融業者として変則じやないと思う。むしろ有価証券によつて金融をすることが、金融業者としての主たる仕事と言える点もあるかと思いますが、たとえば労働者がボーナスを株式にして、またその株を金にかえなければならない、しかもその株を手放すわけに行かないという場合において、なお株によつていわゆる有価証券によつて融資はできないようになつておるのでございましようか。
  12. 中村正雄

    中村参議院議員 有価証券によりまする融資ということを直接に考えておりませんが、本法の趣旨といたしましては、労働組合会員になつておりまして、その組合員に対して直接融資をやるという建前に、この金庫法はなつておるわけなのです。従いまして融資する場合における担保力等の問題として利用されることがあるということは考えられるのであります。
  13. 山村新治郎

    山村委員 そうしますと最初お答えなつ有価証券により融資をしないということは、担保としては預かるということを是認されておると解釈してよろしゆうございましようか。
  14. 中村正雄

    中村参議院議員 担保力一つといたしましての有価証券ということは考えられると思います。
  15. 山村新治郎

    山村委員 かりに担保力一つとして有価証券の保護預かり並びにこれを担保の対象とするという問題になりますと、金融機関の健全な発達という意味からは、その運行を誤らなければけつこうでございますが、ややもすればこれが誤るようになるおそれが多分にあるのじないかと思うのでございます。特にこの際、今までの労働金庫の成績において、不正貸出し、あるいは役員のいわゆる浮き貸し等の問題について、表面に現われた問題がどれくらいありまするか、専門員参考に伺つておきたいと思います。
  16. 磯部巖

    磯部参議院労働専門員 私からということでございますが、実は私もその点につきまして専門的にまだ研究するひまは持つておりませんが、私が金庫関係当局から常々聞いておるところによりますれば、今日までのところ不正貸付並びにそれによる貸付金のこげつき、または役員不正行為による損失というようなものは、まだ一件もないと聞いております。
  17. 山村新治郎

    山村委員 今のお答えによりますと、浮き貸し的な、あるいは不正な問題は、表面に現われておるのは一件もないということを伺つたのでございますが、中村委員長としては実際に今までの労働金庫において、そういう問題が全然起つておらないとお考えでございましようか。われわれは、ややもすれば役員の方々が自己の利益のために労働金庫の金を巧みに運用しておるというようなことを、ぼつぼつ聞くのでございます。中村委員長としてはそれらの点を耳にいたしたことがございますかどうか、御参考までにお伺いします。
  18. 中村正雄

    中村参議院議員 私幸いにいたしましてそういう例を聞いたことはありません。
  19. 山村新治郎

    山村委員 この法案はその趣旨におきましては、まつたくけつこうな法案でございますが、名委員長ともいわれる中村さんが、そういうことについては全然耳にされたことがないということは、いささか私は認識不足のような気がするのでございます。現に労働金庫ばかりではございません。あるいは各地農業会信用取引にいたしましても、はたまた信用組合にいたしましても、また銀行等の場合におきましても、相当金融逼迫の折から、この零細な金を、個人としての巧みな運用によつて利益をむさぼつておる傾きのありますことは、すでにこれは今の世相と言つてもよいくらいの現状であるのであります。きようは青野君もいらつしやいませんが、青野君あたりの耳にもそれらの点が入つているということをこの間おつしやつておられまして、やはり本問題の一つの弱点として憂慮されておる場面があつたのでございます。私は人間がこのような経済行為をする場合におきまして、りつぱな人間でない限りにおいて、ややもすればそういう誘惑に陷りやすい傾き多分にあると思うのでございます。従つてこの法案を立案するにあたりましてそのように合法的にしてしかも脱法を巧みにいたす一部の役員が、個人的な銭もうけをするというような点についての制裁なり、あるいはそれに対する禁止なりを、何條によつてせられんとする御意思でございますか、参考に伺いたいと思います。
  20. 中村正雄

    中村参議院議員 山村さんの御質問ごもつともと思いますが、私といたしましても、農業金庫といいますか、労働金庫以外のそういう庶民金庫について、いろいろの風評が新聞にも出ておりますし、また世の中が大体そういう傾向にあるということは身にしみて感じているわけであります。しかしながら幸いなことに労働金庫といたしましてはできてからまだ日も浅い関係で、先ほど御答弁いたしましたようにそういう点について聞いたことがないと考えているわけであります。しかしながらここで特に申し上げておきたいのは、現在の労働金庫においてそういう点の懸念があるということも考えられましたので、今度單行法をこしらえまして、労働大臣大蔵大臣の共管とし、特に金融面における業務に対して、監督官庁管理監督ということを強化するためにこの金庫をこしらえたわけでありまして、裏返して申しますと、山村さんの御質問のような懸念があるがために、この金庫を一日も早くこしらえなければならないと私は考えているわけであります。また零細な金を集めての金庫であります関係上、九十三條におきましてもこういう点についての検査請求権会員に與えている。このような條文からいたしまして、一般の監督官庁による管理監督以外に、会員の面からの管理監督の権利の発動する機会を與えるという條文も整備していることを申し添えておきたいと思います。
  21. 山村新治郎

    山村委員 ただいまの御答弁によりまずと、会員の面からの監督もなされ得るということでありますが、実際の面においては、金融機関内部を捜査して、どういう不正がある、どういう浮き貸しがあるという点を見破る能力のある会員は、おそらく私はほとんどないのじやないかと思います。同時にまた、きようは大蔵省の方もおられるようでありますが、よしんば大蔵省銀行信用組合を監査されるといたしましても、そこに巧みな脱法行為がなされている実例が幾多あると思うのでございます。たとえば花柳界方面建築資金については、今の金融措置の面からいつても一応禁止されているわけなのでありますが、それがある建設会社あるいはその他の事業会社に貸出しの形式においてパスし、その事業会社の関門を通つてそういうような建築の面にまわされているというのは一つの事実なのでございます。そういう面から行きましても、この金融機関内部の審査ということは、相当むずかしいものであろうと私は思うのでございます。従つて先ほどの御説明のような程度では、零細な汗とあぶらの結晶のこの預金者の金を、ややもすれば不正といいましようか、あるいはこの労働金庫の設立の趣旨目的とは相反した方面に使われるおそれが多分にあることを私は憂えているわけでございます。そこで専門員の方にちよつと伺いたいのでありますが、外国における労働金庫は一体どのような成功を収めているか、あるいはまたどのような不振の状態に陷つているか、国によつてまちまちと思いますが、おもな国の実情を参考までに聞かしていただきたいと思います。
  22. 磯部巖

    磯部参議院労働専門員 ただいまの御質問の前段の問題でございますが、ただいま各地信用組合なり銀行においてすら、いろいろな不在貸出しがありまして、本日ここに大蔵省の係官も見えておられますが、大蔵省の方におかれてもその監督には非常に苦心をしておられるということは、かねがね承つておるところであります。従つて労働金庫につきましてもそのような御心配をなさいますことは当然でありまして、私どももまつた同感でございます。しかしそれにつきましては、この法律の通過によりまして、現在の監督を一層強化するという点で、一歩でも進め得るのではないかと思うのであります。これは條文的に申しますと、第九十四條におきまして銀行法監督規定をほとんど全部適用しております。それからただいま委員長からお話がございましたように、九十二條、九十三條等で、会員が気がついた場合、大蔵省で気がつかれない場合でも、申し出れば大蔵大臣はただちに嚴重監督をする。その上にさらに罰則といたしまして、第九十九條に相当嚴重罰則が付せられておりますので、今日のところ新しい立法としては、この程度規定があれば、まずでき得る限りの不正の防衛はできるだろうと考えているわけであります。  次に、外国労働銀行成功または失敗の例を話せとおつしやいましたが、私どもの聞いておりますところでは、アメリカにおきましては相当労働銀行各地につくられて、順調な発達はしていたのでありますが、一九二七、八年ごろのあの恐慌当時にそれがつぶれまして、その後はその痛さに懲りてか、今日はあまり発達はしていないと承つております。しかしながらイギリスにおきましてはCWSという名前で労働銀行がございますが、この銀行は、イギリス労働運動が堅実な発展をいたしているのにつれて、きわめて健全な経営を続けまして、今日ではイギリス五大銀行一つとして数えられているというように聞いているのであります。この銀行は特に消費協同組合と密接な関連を持ちまして、今日でも非常な活動をしている大銀行になつているのであります。
  23. 山村新治郎

    山村委員 大蔵当局参考に伺いますが、この労働金庫に対して、私がさつき質問したような憂慮すべき問題についての監督が、はたして今の大蔵省能力並びに組織から言つて可能であるかどうかという点、もう一点は、はたして労働金庫金融機関として成り立つかどうかという点、特にアメリカにおいては現実に失敗している実例があり、イギリスにおいては一応成功の域に行つているとはいいますが、おそらく私はある程度政府関係の補助、育成があつたに違いないと思いますが、この程度法案内容において、はたして労働金庫というものが金融機関として成り立ち得るかどうか。またこれが失敗して、せつかく預金者に御迷惑をかけるというようなことがあつては、とんでもないことでありますが、この監督ができるかどうかという問題と、金融機関として成り立つかどうかという問題について、大蔵省の見解を率直にひとつ述べていただきたい。
  24. 有吉正

    有吉説明員 ただいまの御質問の第一点でございますが、金融機関に対しまずところの監督の問題と申しますのは、先ほどからの御発言通り、はなはだ困難な問題を含んでおるわけでございます。大蔵省当局といたしましては、現在のところ銀行初め信用金庫に至るまでの各金融機関検査監督をやつておる状態でございますが、本省に検品査部を設けまして検査官を持ち、各財務部においても検査官を持ちまして常時検査を行い、監督に努めておる次第であります。またその監督内容検査内容ということに相なりますると、もつぱら金融機関が外部の資金を導入して、それを運用して経営行つて行くことにいたしますと、金融機関公共性ということが大きく浮び出て来る次第であります。その公共性をとらえまして、健全な経営ができるかどうかという内容に入りまして、監督をいたしておる次第であります。先ほど御発言がございました中に一点、たとえば融資の問題にいたしましても問題が出て参る。不当な融資であるかないか、その金融機関融資の当、不当の問題ということに相なりますと、現在の情勢におきましては、融資の当、不当ということは、国家の政策的な目的からいたしますと、あるいは大乗的には当、不当の問題が出ようかと思います。しかし各金融機関経営の点から申しますと、この点は現在のところ融資の規正ということを、はつきりと法律にうたつておるわけでありませんので、單に金融機関内容健全性をはかるという意味におきまして、この問題を大蔵省として取上げて行きたい、かように考えておる次第であります。従いまして労働金庫というものが、本法律におきまして成立いたしましたあかつきにおきましては、労働金庫目的従つて融資というものに、われわれとしても深く関心を持たなければならぬ。特に労働金庫が零細なる資金吸収機関であるという観点から、公共性という点も強く考えて行かなければならぬということに相なるわけでありまして、他の金融機関に比べまして、特に力を入れて監督して行かなければならない機関一つであろうか、かように考える次第であります。大蔵省といたしましては、能力限界がございます。また現在おります検査官の数で十分であるということを断言することはできません。しかし現在ございますところの検査の機構なり、監督の機構なりを十分活用いたしまして、御趣旨の点誤りなきを期して行きたい、かように考えておる次第でございます。  次に第二点でございますが、かような労働金庫というものが、今後の経営がうまく成り立つて行くものであるかどうかという御質問のようでございます。なるほど労働金庫が、その内容といたしますところは、いわゆる事業金融というものから離れましたところの、消費金融中心にして参らなければならぬということになりますので、この経営はなかなかむずかしいということは事実だろうと思います。しかしながら従来の信用協同組合法に基くところの労働金庫発足からただいままでの経過をたどつてみますと、これが発足の当時は、各金融機関に共通して当てはまることでございますが、はなはだ経営がむずかしい。最初の一、二年はなかなか苦難でございます。しかしこれが基礎が固まり、会員というものがあつて、出資が増強し、預金吸収が伸びるということが彈力となりまして、将来の発展というものは、われわれとしましても非常に心強く考えておる次第であります。将来労働金庫として十分に伸びて行くものでなかろうか、かように考えておる次第であります。これは従来の経験から申しましたことでございますが、さらにこの労働金庫法という新しい法律が制定され、これによつて、従来の労働金庫がややともすればらち外に出るということが矯正されるということが十分に行われますならば、労働金庫としてその目的に沿つた十分な発展が望まれるのではなかろうか、かように考える次第であります。
  25. 山村新治郎

    山村委員 従来の協同組合法によつた労働金庫は、ある程度まで事業方面に貸出しをしておつたために、これについての是正がされるという点を指摘されておりますが、この点は、実際は労働金庫運用という面からいつて事業面に対する融資をしないために、かえつて脆弱性が出て来るということはないでしようか。
  26. 有吉正

    有吉説明員 御質問の御趣旨、私もまことに同感な点があるのでございまして、労働金庫消費金融だけで成り立つて行くかどうかという点の御質問だと思いますが、その点につきましても、金融機関消費金融だけを専門にして行つて、健全な発達ができるかどうかという問題は、一応反省して考えてみなければならぬと思います。しかしながら労働金庫というものが事業融資をし、その事業の生命とともに運命をともにするということになりますと、不測の事態が起らないとも限らない。その点で事業金融というものと労働金庫とは、はつきり区別されたものといたしたい。従いまして労働金庫事業融資をするという面において、労働金庫それ自体の発達は、さらに一段と大きくはかられるということは言われるわけでございます。しかしそうなりますと、一たび事業が瓦解した場合に、労働金庫はそのまま終息してしまうということになります。労働金庫消費金融中心として参ります際においては、その経営の規模なり、将来の発展性が、いわゆる大きくなるという意味においては否定されなければならぬと思います。しかし健全な経営安全性という意味から申しますと、消費金融中心にした労働金庫というものは、十分に成り立つて行くものではなかろうか、かように考えております。
  27. 山村新治郎

    山村委員 さつき専門員の方から、アメリカでは労働金庫失敗をした。しかしながらイギリスでは、CWSという名目のもとに、生活協同組合等を包含した金融機関として成功しておるという点について説明がありましたが、しからばアメリカにおいては何がゆえに失敗したか、またイギリスにおいては何がゆえに成功したか、これは今後の労働金庫の運営に非常に重大な問題だと思いますので、その点についての御研究をなさつたことがあるか、おわかりでありましたらお答え願いたいと思います。
  28. 磯部巖

    磯部参議院労働専門員 まことに申訳ございませんが、十分な研究は今からさしていただくつもりでおりますが、ただいま私どもの知つておる程度で申し上げますならば、アメリカ労働金庫は、産業別によつて立てられたものでございまして、従いましてその産業が頽勢におもむいた場合には、それにつれてその銀行もへこたれて行くというようなことで、その基礎がぐらついておるところに、大恐慌が来て一ぺんに参つたというふうに存じておるわけでございます。イギリスの方が、なぜ基礎が強固であつたかと申しますと、そういうアメリカ式でなく、全産業を網羅した組織をとつておりました関係上、全体として危険が分担されまして、今日まで、もちろん大恐慌危機もあつたのでありますが、そういう場合には銀行経営者が、非常に腹のすわつたりつぱな人であつたので、そのときに大胆な措置をとつたために、全組合員が信頼をして、何ら取付を起さなかつたというようなことで、その危機を切り抜けたとか、いろいろな事情はあるでございましようが、今日まで今申し上げたように続いて来ております。
  29. 山村新治郎

    山村委員 こういう重要な法案を出されるに、いささかどうもその根本的な御研究がなかつたというのは、非常に遺憾といたすところでありますが、これはひとつこの法案を審議するのに必要な問題でございますので、衆議院といたしましてぜひとも委員長よりひとつ専門員に命ぜられまして、この点の精細な調査をお願いしたいと思います。  そこで中村委員長にお伺いしたいのであるますが、元来がこの労働金庫消費金融であるという点については、たびたび御説明があるようでございます。ところが今の日本労働界現状から言つて、特に賃上げの要求をされ、とうてい今の賃金では食えないということを要望されるのが、今の労働組合現状であるときにおきまして、この金融機関のもとになりますかんじんな相当預金というものが、はたして集まり得る見通しがございますかどうか、その点ひとつ委員長からお伺いしたいと思います。
  30. 中村正雄

    中村参議院議員 この前の委員会つたと記憶いたしておりますが、柳沢さんからの御質問にもたしかそういう御質問があつたと記憶しております。なぜ団体主義をとるかということに関連して私申し上げたわけで、労働組合中心としての団体主義をとつております関係上、大体一人々々の個人加入ということよりも、労働運動一つの面ということも貯蓄というところに向け得る関係上、非常に資金を集めることが楽だ。またこれは具体的な例になりますけれども、かりに各労働組合等貯蓄奨励をやつておる組合もありますが、そういう場合でありますと、一人々々ですと、自分で給料をもらいましてから郵便局へ行くなり銀行に行くことはむずかしいわけでありますけれども、やはり賃金支拂いのときに一括してそれぞれの貯金を差引くこともできる、こういう便利もあるのがこの貯金の多く集まることである。またそれが団体主義をとりました一つの原因になつておる、こういうように私たちは考えて立案いたしたわけであります。
  31. 山村新治郎

    山村委員 預金吸収一つの技術としては、御説明のような点がうなずかれるのでございますが、本質論といたしまして、今の日本労働者がはたして預金を十分にして、労働金庫発展せしめるだけの余裕があるかどうかということについて、社会党の右派の中村委員長としての御答弁をいただきたいと思います。
  32. 中村正雄

    中村参議院議員 現在の労働者貯金し得るだけの収入があるかどうかということと、貯金し得る面があるかどうかということとは、違つておると私は考えております。現在の労働階級の収入が多いから貯金し得る能力がある、少いから貯金し得る能力がないというものではないのでありまして、やはり貯蓄というものは、特に零細なものを集めるという点につきましては、資金の余裕があるかどうか、生活の余裕があるかどうかということよりも、技術的な面において左右される面が非常に多い。これはおそらく山村さんも御同感ではないかと思うわけであります。今かりに百円の収入のある人は二十円貯蓄ができ、六十円の収入のある人は二十円不足だ、こういうものではなくして実態の生活におきましては、やはり百円でも苦しい。六十円でも苦しい。しかしながら百円の人も大十円の人も貯蓄し得る機会と方法に惠まれれば、ある程度の零細な貯金もでき得る。従つてこういう労働金庫をこしらえることによりまして、組合運動の一環としてやり得る方法をとりますれば、そのまま置いておけば貯蓄とかあるいは備蓄等を全然考えられない生活状態にあります者も、ある程度貯蓄はできる、こういうように考えておるのが、本金庫をこしらえる大きなねらいになつておる、かように御了解願いたいと思います。
  33. 山村新治郎

    山村委員 御説明の実際問題の運用については、私も同感の点が多分にあるのでございます。しかし現実にはストライキその他の強硬手段をもつてしてなおかつ賃上げの要求をされて、これでは食えないということを旗じるしに掲げて追られておるのが、今の労働組合現状であろうと思います。たといこれは、余裕があるなしにかかわらず、そういう組織をつくれば預金をするのだということをおつしやいますが、現実に食えなくなつた場合には、貯金預金をするどころのさたではないと思うのであります。見方によつてけ、あるいは人のものでも借りて来なければ、あるいは人のものでも何とかしなければ食えないという者があると思います。従つて、提案の根本趣旨は、多少とも現在の日本労働者には預金をする余裕があるということの前提のもとに出されたと思うのでありますが、この点は是認するにやぶさかであるかないかを伺いたいと思います。
  34. 中村正雄

    中村参議院議員 労働階級の賃金収入がどうであるとか、生活内容が余裕があるか困つておるかという問題ではなくて、例をとつて申し上げますと、現在の賃金が三十日のうち二十五日しか食えない賃金をもらつておるといたしましても、俸給をもらつたときに二十五日間のものを全部買うわけではございません。従つて端的に申し上げますならば、一箇月間の給料のうちで二十五日間に使うものを一度預けておいて、短日でも出して行くという方法がある。従いまして生活に余裕があるから貯金ができて、余裕がないから全然貯蓄ができないというものではありません。国策から考えましても、一箇月間の生活費を現金として労働者に持たすよりも、やはり一つ金庫に預託させておきまして必要の都度出すということは、国策上私は大きな貢献になると思う。そういう面から見ましても、やはり組合運動の一環としてやるとすれば、技術的な対策によりまして貯蓄吸収し得る。従つて貯蓄し得る能力ありやいなやということと、貯蓄ができるかどうかということは、違つて来ているという面をお答え申し上げたわけであります。
  35. 山村新治郎

    山村委員 私から申し上げるのははなはだ失礼ですが、ほんとうに名答弁です。名答弁でありますが、その答弁をそのま延長いたしますと、はたして労働金庫というものは採算上成り立つかどうかということにも疑問があるわけであります。すなわちその月の給料というものは、もらつたその目に全部使うものではないから、その間の預金があるということをおつしやられますが、その程度預金を元にして貸出しその他の業務行つて労働金庫の採算が成り立つかどうかということについては、私は幾多の疑問があると申さざるを得ないと思うのでありますが、一応この点は中村委員長の名答弁を称揚いたしまして、その点には非常に疑義があるという点を研究課題として、一応とりやめにしたいと思います。
  36. 中村正雄

    中村参議院議員 ちよつとつけ加えておきたいことがあります。今山村さんの御質問は、労働者貯蓄能力ありやいなや、生活が楽かどうかという御質問でありましたので、今のようなことを申し上げたわけでありますが、労働金庫に預託されまする金は、そういうふうに労働者の一人々々の貯金もさることながら、団体主義をとつております関係上、労働組合としては相当の基金をどの組合も持つておるわけであります。現在全国の労働組合が市中銀行に預けております組合の基金は、おそらく数百億上つておると思います。そういうものがやはりこの労働金庫に預託され得る可能性があるし、また預託することが労働組合にとつては便利だ。従つて労働金庫に預け入れる金は、一人々々の貯蓄もさることながら、組合としての団体の基金等も相当預け入れられる。しかもその基金というものは一時にいるものではありませんから、それを元にいたしまして生活のために各組合員融資でき得る。こういうものが金額の面におきましては大きなものになつておるということを申し上げておきたいと思います。
  37. 山村新治郎

    山村委員 賀来さんがおいでになられたので、ちよつと御参考に伺いたいと思います。この労働金庫法案の基本であります団体の加入を認めるということは、労働組合経済行為をある程度まで慫慂するという点にあると思うのでありますが、政府としては労働組合の経済要求、いわゆる経済的な行為というものについて、これを慫慂しようと思うお気持があるか、あるいはそれについて大した慫慂のおぼしめしがないのかどうか、その点をひとつお伺いいたします。
  38. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 御質問経済行為という言葉になりますと、いろいろ広い解釈ができるかと思いますが、われわれの考えております労働組合経済行為と申しますのは、組合法一條に書いてありまする労働者の経済生活の維持向上、これが原則でありますとともに、それがまた限度である、かように考えておるわけであります。さような意味から考えまして、労働金庫の今度の法案を拝見いたしましても、消費生活の合理化という面と、相互扶助をやつて行こうという点にあるのでありまして、それ以上に出て営利的にならなくとも、範囲の広い経済行為ということになりますと、これは適当であるとは申せませんが、さような限度においてこの労働金庫運用されるということは、これは趣旨としてはけつこうだ、かように考えておる次第であります。
  39. 山村新治郎

    山村委員 多少本論よりもわきの問題になるかもしれませんが、労働組合が物の売買あるいは金融などのような経済的な仕事を、はたしてどの程度までやつたらよいかということは、非常にむずかしい問題であろうと思います。たとえば現在政府の奨励によつて各地に農業協同組合がたくさんできております。ところがこの農業協同組合の経理そのものは、ほとんど一方的な買集めや一方的な販売で、同時に農林省の圧倒的な支持があるにもかかわらず、実際その経営内容というものは不振をきわめておる。一体どこにその根本の原因があるかというと、こういう団体経済行為というものは、ややもすればその役員なり指導者なりが、その経済行為の悪い面においての責任を負わないという点に、大きな原因があるのではないかと思います。  農業方面の問題でありますが、実は私の方の同じ村に澱粉工場が二つある。一つ個人経営の澱粉工場であり、一つは農業協同組合経営の澱粉工場である。ところが同じ村から出るいもが原料でありますから、どちらの澱粉工場も、その澱粉の歩どまりというものは同じパーセンテージであるべきにもかかわらず、一方の農業協同組合の澱粉工場ではこれが一六・五%しか澱粉の歩どまりがない。ところが他方の個人経営の方においては二〇・五%も歩どまりがあるという現実は何であるかといいますならば、いわゆる経営監督をしておる方々が事業に対する責任を持たないという点に、多分に私は根本原因があると思うのであります。この点から言いまして、なるほど表面は相互扶助である、お互いに助け合うという点は、非常に美しい言葉でありますが、ややもすれば人間である限りは、人間には欲望があるということを忘れてはならないのであります。従つて労働金庫によつて金融がつくといたしますならば、労働組合の指導者が神様でない限りにおいては、あるいは金の入り用に非常に追られた場合において、これを惡用することなしということは、何人も保障できないのじやないかと思うのであります。従つて私はこういうような団体の共同の利益をはかるための経済行為というものは、よほど愼重な運営と、またこれに対するところの綿密な監督をしない限りにおいては、そのために非常に団体を困らせ、あるいは指導者自身が非常な人生の逆境に陷るというような点を憂えておるのでございますが、特に発展途上にあります労働組合といたしまして、その指導者の方々が経済的な問題でもつて組合に迷惑をかける、あるいは組合の金を使い込んだり、組合を利用して自分だけが腹をふくらますというような問題があつたといたしますならば、労働組合に対する信頼というものは地に落ちてしまうと思うのであります。従いまして私としては労働組合として経済行為をすることはある程度までに限らないと、とんでもない間違いを起すおそれがあると考えているのであります。これは私個人の見解でありますが、政府並びに中村委員長は、労働組合の経済的な行為というものについてどの程度までの育成とこれに対するところの指示をいたさんとするお考えでありますか、その点を参考として伺いたいと思います。
  40. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 ごもつともな御懸念であり、同時に御意見であると考えるものであります。生活協同組合運動というものは非常に趣旨においてはいいのでありますけれども、とかく経営という実際に入りますと、やはり範囲を逸脱する傾向が、事実今まで一部には見られたのであります。特にここの団体主義のものになりますと、責任者と申しますか、理事者というものの責任が、明確なようであつて明確でない点があります。これはざつくばらんに申しまして、実は岡山の労働金庫が一時事故を起したことがありまするが、この原因も結局労働組合の幹部が安定性がないために、従つてその幹部によつて構成されておりまする労働金庫組合理事者たちが、やはりしよつちうかわるという結果が、その事故を起しました原因の一であつたという経験があるわけであります。故意に限度を越えての経済行為をやるものは、これはもちろん注意をしなければなりませんが、故意でなくても注意をいたしませんと、そういう結果を出すおそれがなきにしもあらずとわれわれは考えるのであります。ことに御懸念のように、日本労働組合運動は出発してから年限もさほどたつておりません。形においては非常にしつかりして参つておりますが、実体におきましてはなお数十年の歴史を経なければならないのであります。この労働組合労働金庫運動とは、密接不可分の関係にあるわけでありまして、もしも労働金庫運動が失敗をいたしますと、労働組合運動の組織自体に甚大なる影響を與えるということは、すでに現在の労働金庫関係者も十分に認めておるところでありまして岡山の労働金庫は一部失敗をいたしましたためにかえつてその点の欠点が発見されて、その後は以前よりもよほど経営もしつかりして来ますとともに、理事者もその責任及びその後の運営についても、非常に熱意を持つてやるようになりまして、雨降つて地固まるという結果が出たというような状況であります。これは零細なる金が集められるわけでありますから、ただ單なる協同組合という以上に、組織とも関係いたしますとともに、労働者の生活にも影響いたしますので、経営については御懸念の点は十分気をつけて行かなければならぬと考えるのであります。この金庫法案の立案の経過を承りますと、やはりその点について十分気をつけられまして、そして信用金庫法だけで—あるいは信用組合法でもつてつております現状からいたしますと、府県の監督にまかされ、府県の設立認可にまかされているという状態では、なおここ当分はそういう危険性がないとも限らないので、この監督嚴重にいたしたいというような御意向で、この認可権を中央の方に持つて来ると同時に、監督の責任も中央に持つて参りまして労働、大蔵両大臣の認可、あるいは監督下に置くというような御考慮が拂われたと承つているわけでありますが、それのみではなおまだ実際の運営に入りますと危險が出て参りますから、労働省といたしましては御指摘の線に従いまして、もしこの法案が通過をいたしまして、実施面になりましたらもちろんでございますが、現在におきましても、常時教育とその啓蒙宣伝によりましてさようなことのないように注意をして参つておりますが、今後もさような注意を十分して行かなければならないと考えておる次第でございます。
  41. 前田種男

    ○前田(種)委員 山村委員質問関連して、一、二の点を提案者並びに大蔵、労働両省に質問しておきたいと思います。合山村委員の言われたように、労働金庫の運営の問題が一番大事だと思います。零細な金を預かつてふしだらな金庫の運営をやると、とんでもないことになると考えられるわけです。それでこの金庫の運営は、労働組合あるいは生活協同組合等団体とは、まつたく別個の独立した人格の上に立つた経営でなくてはならぬ。組合の幹部が労働金庫理事になつておるからというようなことで、この金庫の運営が左右されるとたいへんなことになる。あくまでも嚴格な別個の団体として、金庫金庫としてその運営が確立されなければ、おそらく信用を博し、金庫の成績を上げることは七きないと思います。よく金庫の創立にあたつて、ストライキにもこの金を貸すとか、賃金の遅配、欠配にも融資するとかいうようなことをいろいろ宣伝して、労働組合の金を集めようというようなこともいわれておりますが、私はこういう点がむしろ嚴重にされなければならぬと考えます。労働組合関係しておるものだから、労働組合の自由にするというのではなくして、労働組合がよつてつて立てておる金庫でありますから、あくまで金庫の使命を把握して正しく運営されなくてはならぬと思います。この点につきましては大蔵省も労働省も、ともにその面における監督指導等について、万遺憾なき態度をとつてもらいたいと思いますが、そういう点に対する両省の方針を、第一点として承つておきたいと思います。  第二点は、これまた山村委員から、会員の監査制度が設けられておる内容について、個々の会員が一々金庫の運営の監査なんか、なかなかできるものではないというようなことを指摘されました。私も個々の会員はなかなか監査ができないということはわかりますが、団体加盟をやつておる個々の団体が、会員としてこの金庫内容を審査することは容易にできると思います。特に多くの労働団体をもつて構成しておる場合に、その労働団体内部にはいろいろ傾向が違うものもあるわけです。そういうときに、会員全体が相当牽制して、堅実な金庫の運営に持つて行くということにならなければなりません。一つの加盟労働団体が、その金庫の運営をある程度の力関係で持つて行こうとする場合、一方の団体はそれを牽制して、そうした不健全なやり方はやらせないというやり方にもなつて参ります。また会員団体として加盟しておりますから、会員の監査制もある程度活用して行ける道が開かれると思います。またぜひそういうことを活用するようにして行かなくてはならぬと思いますが、その点に対する提案者、当局の考え方を伺いたい。  第三点は先ほど山村委員が、今日もらつた給料では食えないような状態で、貯蓄などはできぬじやないかということも言われましたが、ここが労働金庫の一番妙味のあるところだと思います。自分らの金庫だという観念の上に立つて労働組合の基金の中から、あるいは個人々々の収入の中からも、本人の同意を得た範囲内において、給料から一定の金額を引いても、毎月継続をして貯金をするという方法も出て来ます。今日の労働大衆の賃金収入では、生活ができないという点はまつたくその通りでありますが、その中からでも個人々々ができるだけ切り詰めて、自分らの金庫預金しておこうということで、零細な金が相当預金されることになろうと思います。これは先ほども申し上げましたように、あくまでもこの金庫が健全なる発達をし、社会的な信用を博するように育成して行かなくてはなりませんので、大蔵省におきましても、一般の金融業者とはまた別個に、その点に対しては十分な指導育成をする方法を講じてもらいたいと考えます。そういう点についての両省の見解、あるいは提案者の考え方等を一点承つておきたいと思います。
  42. 賀来才二郎

    ○賀来政府委員 先ほど山村委員お答え申し上げました通り、われわれ労働省といたしましては、ただいま前田書の御指摘のいろいろな御懸念の点につきましては、まつた同感でありまして、労働金庫それ自体はけつこうな施設であり、何とかこれを発展してもらいたいという希望と同時に、その希望を持ちますだけに、また愼重な態度で行くべきであるということを常に念願をいたしておるのであります。たとえば今前田委員から御指摘になりました争議資金の貸出しという問題でありますが、これは別に法律では禁止もいたしておりませんし、またそういうことを具体的に取扱うような規約をつくるということもなかろうと思いますけれども、実際問題といたしましては、争議資金それ自体をこの労働金庫が貸すということは適当な考え方ではない。かような意見を持つておりますことは、先日船越委員の御質問に対しましてもお答えした通りであります。ただ先ほど参議院の労働委員長中村さんからお答えがあつたのを承つたのでありますが、労働組合がみずから争議資金として積み立てておる金がある。この金を市中銀行に預けるよりも、お互いの労働金庫に預けようという意味におきまして、労働金庫預金をいたしておる。その組合が争議をやるときに、必要に応じてその資金を出すということにつきましては、当然さようなことがあつてしかるべきであつて、一律に争議資金なるがゆえに貸出しは不可であるという態度はとるべきものでない。これは申し上げるまでもないと思いますが、さような考え方を持つのであります。われわれといたしましては金庫を設立するに際しまして、ただいま前田委員の御指摘のように、必要以上の利をもつてつて行くような組織の仕方は適当でないと考えるのでありまして、あくまで労働者あるいは労働組合の自覚に基きまして、相互扶助の必要性を認めた上での組織がなさるべきであると思うのであります。賃金遅配のときには貸してやるぞというようなものの言い方で持つて行くことは、適当でないと考えるのでありまして、現在の運営の状況を見ましても、賃金遅配について融資をしてやること自体は、相互扶助の立場からけつこうでありますが、これを融資するに際しましては、必ず使用者から約手をとるとか、適当な担保をとつた上で措置を講じているようであります。かような愼重な運営方式をとつてもらいたいと考えるのであります。監督嚴重にし、運営の愼重を期するために、労働省あるいは大蔵省といたしまして、十分監督を考えて行かなければならないわけでありますが、金庫自体の技術的な運営につきましては、やはり専門の経験と知識を持つておられる大蔵省が主となつておやり下さるのに対しまして労働省といたしましては全体的な運営の行き方について、ただいま御指摘になつたような各方面の事項について、大蔵省と十分な連絡を持つてつて行きたいと考えておるのであります。ただ労働省といたしましては、この愼重を期すがために、官庁の監督の態度を通じまして、経営について干渉にわたるようなことにならないように、この点はあわせて十分考えて行かなければならないものと考えているわけでございます。
  43. 有吉正

    有吉説明員 御質問の第一点の、労働金庫経営者労働組合役員関係につきましては、大蔵省といたしましては従来信用組合にあります労働金庫経営についても、その経営者にはなるべく長期間責任を持てる人が適当であるという趣旨から、その方々が労働組合といかなる関係に立たれるかということは一応別にいたしまして労働金庫が健全なる発展をなし遂げるために、常時責任を持つてこれが執務に従事していただける方々がなつていただくように指導して参つた次第でございます。先ほど山村委員の御質問に対してお答えいたしました通り、労働金庫がその経営内容において消費金融というものを中心にしたまことに困難な事業であり、かつ零細なる資金吸収という面から申して相当公共性の強い機関でありまして、これが経営については大蔵省といたしまして深甚なる注意と関心を拂つてつている次第でございます。この法案通過のあかつきにおきましては、労働金庫に対し従来の方針とかわりなく、周到なる用意をもつて臨みたいと考えている次第でございます。特に労働金庫預金吸収という点についての御質問もございましたが、大蔵省といたしまして、現在のところ各金融面資金量の増大をはかり、国民全般に対しまして資金の増強という趣旨をお願いしている次第でございます。労働金庫につきましても国民一般、勤労者の方々が、今後苦しい生活の中からも十分なる貯金の増強をおはかり願うように努めたいと考えている次第でございます。何分にも労働金庫一つ金融機関といたしまして、地種の金融機関と競合の関係に立つわけでございます。この競合の関係ということから申しまして、労働金庫が預貯金を十分集め得るかどうかということは、一に信用の問題と、労働組合内部において労働金庫を愛するかどうかという問題にかかつて来るだろうと存じます。信用の問題では労働金庫が健全な発展をなし、この金庫に預けても十分に安全であるという確信がなければ、勤労者の方々も預けるという気持を失われますし、また労働金庫を愛するという気持が失われますならば、これに預けないでほかの金融機関に持つて行くということになろうかと思います。かかつて労働金庫が健全に発達するかどうか、また相互扶助の精神ということが浸透し得るかどうかということにあろうかと思うのでありまして、この点に対しましてもわれわれとしては労働金庫が健全に発達し得る態勢に持つて行きたいと考えている次第でございます。また内部検査の点につきましても、内部から検査の云々ということがありませんように、われわれとしても常時検査監督を行い、内部におけるごたごたが表面に出ないように、金融機関としての信用力が十分につくようにいたしたいと考えておる次第でございます。
  44. 山村新治郎

    山村委員 ただいまの前田君の御質問関連して、最後に一点お尋ねしたいと思います。前田君からこの労働金庫はストライキの金を貸してはならない、あるいはまた賃金の不拂いについてみだりにこれを融資してはならないというような意味の御意見の開陳があつたようでございますが、参議院の中村委員長といたしましても同じような御意見をお持ちでありましようか、その点をお伺いいたします。
  45. 中村正雄

    中村参議院議員 前田委員の御質問のときに附加されました御意見を、今山村さんから言われたようには私は受取つておりません。言いかえますと、巷間伝えられておりますように、労働金庫はストライキの資金を貸すための銀行であるとか、賃金不拂いのために融資をする銀行であるというふうにいわれておりますが、やはり一つ金融機関でありますれば、さきに賀来労政局長から御説明申し上げたように、ストライキ資金を貸すというのではなくして、それぞれ会員であります労働組合といたしましては、いろいろな目的のために資金を集めているわけでありまして、それを今はすべて市中銀行に入れているわけでありますけれども、自分の銀行ができればおそらくこの労働金庫に預託すると思うのです。そういう面におきましてストライキのときにその資金を出すことは当然でありますし、またストライキ資金でありましようとも、その他の資金でありましようとも、融資するだけの担保力があり、また一般との振合いを考えまして融資するだけの條件に合致しておりますれば、ストライキ資金であろうとその他の資金であろうと出すわけでありまして、こういう目的のために出す、こういう目的のためには出してはいけないということをすべきではないと私は考えております。また賃金不拂いにいたしましても、賃金不拂いのために労働者は困つている、その場合に相互扶助の精神から融資することも、この銀行一つの面であろうと思いますけれども賃金不拂いであるからそのために融資する、不拂いでないから融資しないというのではなくて、すべて担保力なり他の條件があるかないかということによつてきまるわけでありまして、一定の目的のためには融資してはいけない、一定の目的のためには融資するというべきものではないと考えて立案いたしたわけであります。
  46. 前田種男

    ○前田(種)委員 今中村委員長答弁されたので盡きておりますが、私がさつき言つたのは、労働金庫役員労働組合と兼務するという場合が往々にしてある、そういう場合に自分の関係せる争議とか、賃金の遅欠配の問題のために金庫の金を引出すということになると、えてして不健全な金融になりがちである、そういうことを嚴重に戒めなければならぬという観点に立つての私の質問であつたわけであります。本人が二重人格的な立場に立つて、両方の役員を兼ねている場合もありますがあくまで金庫金庫としての別個の人格の上に立ち、健全な運営をモツトーとしてやるという立場に立つて、あるいは労働組合からは冷酷な取扱いだというようなことを言われることも覚悟してやらなければならぬというのが私の願いでありますから、その点に対する労働者なり大蔵省監督官庁としてのものの考え方はどうかということを私は聞いたわけであります。もちろんその金庫の当事者が責任を持つて融資するという場合に、その條件等について合致する場合は融資される方法がありましようし、それから自分が預金している団体の金あるいは個人の金は、引出すときにはいかなる場合においても條件がいらないわけでありますから、自分の預金した範囲内の引出しは当然なさるべきものである。問題はそれ以上金庫から金を借りようという場合であつて、これは預金とは別個の問題であるわけですから、自分の預金に関してはもちろんいかなる條件もあるわけではない、私はそう認識するわけです。
  47. 山村新治郎

    山村委員 非常にまぎれやすい問題であつて重大な問題でありますので、重ねてお尋ねしたいのでありますが、自分の組合預金をストライキに使う場合において引出すのはさしつかえないという御答弁があつたようでございますが、組合にかりに預金がない場合に、ストライキの資金を貸すか貸さないかという点について委員長にお伺いしたい。
  48. 中村正雄

    中村参議院議員 貸し出す場合の條件の軽重につきましては、いろいろあると思います。ストライキのための貸出しであれば危險性が多いとか、あるいは賃金不拂いの場合の貸出しであれば危險性が少いとか、いろいろ軽重の差はありましようけれども、貸し出す目的によつて軽重の差はあつても、ストライキのための貸出しはいけないとか、賃金不拂いのための貸出しはいけないとか、こういう目的によつて差別をすべきものではなくて、すべて健全なお確実という面について貸出しをすべきである、こういうことを申し上げておるわけであります。
  49. 島田末信

    島田委員長 次会は明後二十七日午後一時より開会いたすこととし、本日はこれにて散会いたします。     午後三時十一分散会