運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-06-18 第13回国会 衆議院 労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年六月十八日(水曜日)     午後三時二十六分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君    理事 前田 種男君       天野 公義君    三浦寅之助君       柳澤 義男君    山村新治郎君       熊本 虎三君    柄澤登志子君       青野 武一君    中原 健次君  委員外出席者         参議院議員   中村 正雄君         参議院議員   一松 政二君         労働事務官         (労政局労政課         長)      阿部 泰治君         参議院法制局参         事         (第一部長)  今枝 常男君         参議院法制局参         事         (第一部第一課         長)      中原 武夫君         専  門  員 横大路俊一君         専  門  員 浜口金一郎君         参議院労働委員         会専門員    磯部  巖君     ――――――――――――― 六月十二日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  足鹿覺君が議長指名委員選任された。 同月十三日  委員柳澤義男辞任につき、その補欠として野  原正勝君が議長指名委員選任された。 同月十四日  委員船越弘辞任につき、その補欠として柳澤  義男君が議長指名委員選任された。 同月十六日  委員野原正勝君及び足鹿覺辞任につき、その  補欠として船越弘君及び上林與市郎君が議長の  指名委員選任された。 同月十七日  委員石田一松辞任につき、その補欠として早  川崇君が議長指名委員選任された。 同月十八日  委員上林與市郎辞任につき、その補欠として  青野武一君が議長指名委員選任された。 同日  船越弘君が理事補欠当選した。     ――――――――――――― 六月十四日  失業対策事業労務者賃金引上げ等に関する請  願(佐々木更三君紹介)(第三七二七号) 同月十七日  失業対策事業労務者賃金引上げ等に関する請  願(本多市郎紹介)(第三八五一号)  同(冨永格五郎紹介)(第三八九五号)  失業対策事業費国庫負担増額等に関する請願(  本多市郎紹介)(第三八五二号)  応能性賃金制度廃止に関する請願冨永格五郎  君紹介)(第三八七五号)  失業対策事業費国庫補助増額等に関する請願(  堀川恭平紹介)(第三九一〇号) の審査を本委員会に付託された。 六月十日  国立産業安全博物館設立に関する陳情書  (第二二三六号) 六月十四日  労働法規改正に関する陳情書  (第二四六一号)  労働委員会委員定数減少反対に関する陳情書  (第  二四六二号) 同月十七日  労働関係法改正案に関する陳情書  (第二五六四号)  労働法規改正に関する陳情書  (第二五六  五号)  けい肺特別法制定に関する陳情書  (第二五  六六号)  失業対策事業に関する陳情書  (第二五六七号)  同(第二五六八号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  理事の互選  小委員及び小委員長補欠選任  労働金庫法案参議院提出参法第六号)     ―――――――――――――
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。  日程に入ります前にお諮りいたしますが、去る三月二十七日川島金次君が委員辞任されております。なおまた委員柳澤義男君が去る十三日、委員船越弘君が去る十四日、いずれも一旦委員辞任されておりますので、ただいま理事の数が一名及び珪肺病対策小委員会におきまして小委員欠員を生じております。この際理事及び小委員補欠選任を行わねばなりませんが、これは前例により、委員長より指名いたしたいと存じます。御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認めます。  それでは理事には船越弘君を指名し、珪肺病対策小委員にはそれぞれ熊本虎三君、柳澤義男君及び船越弘君を指名することといたします。  なお船越弘君は珪肺病対策小委員長でありましたので、小委員長欠員となつております。小委員長選任につきましても、前例により委員長より指名いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 島田末信

    島田委員長 御異議なしと認め、船越弘君を再び珪肺病対策小委員長に御指名いたします。     —————————————
  5. 島田末信

    島田委員長 次に港湾労働に関する小委員長天野公義君より、港湾労働に関する小委員会における今日までの調査経過につきまして、中間報告をいたしたいとの申出があります。これを許すに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 島田末信

    島田委員長 御異議なければこれを許します。天野公義君。
  7. 天野公義

    天野委員 港湾労働に関する小委員会経過について、中間報告を申し上げます。  御承知のごとく港湾労働に関する小委員会は、去る二月一日の労働委員会におきまして設置せられたのでありますが、爾来小委員会といたしましては、二月七日横浜港、二月十三日東京港の各現地に参り、両港における労働事情調査をいたし、さらにまた三月十九、二十日の両日には、これらの港の労使代表十五人を参考人といたしまして小委員会出席を願い、隔意なき意見を聴取いたしました。また四月十、十一日の両日労働専門員室並び国会図書館調査立法考査局をして、横浜港の実態調査を行わしめ、五月五日よりは、浜口専門員が大阪、神戸両港の現地調査をいたす等、港湾労働に関する調査を順次今日まで進めて参つた次第であります。  港湾運送事業は御承知の通り、海上運送に先行し、または後続して、貨物の海陸連絡及び中継の運輸事業でありまして、その業種は、船内荷役事業はしけ運送事業沿岸荷役事業に大別され、全国約十万の港湾労働者がこれに従事いたしており、これがわが国経済自立の面からも、またそのための貿易振興建前からも、等閑視することのできない部門であり、その健全なる発展は、わが国喫緊要請であると考えられるのであります。  ところでこの港湾運送事業の過去の推移を見ますに、戦前におきましては、まつたく自由放任状態にあつたとも言えるほどに、その経営形態は、労働ボス親方制度でまかなわれる労働者供給事業の、いわゆる封建企業形態が濫立しておつたわけでありまして、それが戦時中、船舶不足を補うための荷役迅速化ということで、港湾運送業等統制令が施行され、一港一社制の方針が確立し、群小企業全国百二十五社程度に統合されたのであります。しかし戦後、昭和二十一年九月に前述の統制令が廃止され、さらに二十二年から三年にかけて、戦時中の港運会社船舶荷役会社に対し閉鎖機関の命令が下されましたので、これを契機として、零細港湾運送業者が再び進出することとなり、戦時中の十倍を越える業者濫立状態を示し、またこの間にあつて、総司令部港湾労働者戦線統一に関する勧告、コンフアレンス・メモの指示、朝鮮動乱による高度な荷役増強要請港湾運送事業法制定等、きわめて重要な課題を含んで、港湾運送事業は現在に至つているのであります。従いまして港湾における労働関係は、港湾運送事業そのものに内在する諸問題を解明することによつて、明らかにされて参ると考えるのでありますが、さきに述べた企業零細化について見ますに、資本金三百万円以下の業者数約七五%、労働者百人以下の業者数約八八%という数字はその一端を示すものであり、この零細化及び後進化という内在的傾向といわゆる波動性との関連において、多くの問題がこの事業にしわ寄せされ、それに伴つて労働関係実情にその特異性が現われているのであります。すなわちこれらもつぱら労働力に依存する事業においては、そのいわゆる波動性との関連において、常用労働者数一定数にとどめ、大部分を臨時的な労働力でまかなつて行くことは、この種事業の一般的な傾向でありますが、さらに常用労働者といえども日雇い的常用形式が大部分であり、きわめて複雑な形態が示されております。従いましてその労働条件、特に賃金形態においては不明確なものが存在し、これらと企業零細性とあわせて労働者供給事業への危険性は絶無とは言い切れないものがあります。なお現在職業安定所における労働者マル船登録日雇い紹介あるいは相互融通方式実施労働組合による労務者供給事業許可等港湾労働力需給調整の方策がとられているのではありますが、一方労働時間、休日、労働災害福利厚生施設等等にいまだ多くの問題が山積されている実情であります。  このような現状に対しまして参考人等意見を総合いたしますと、全日本港湾労働組合の主張するところは、港湾労働においては近代雇用のあり方とおよそ縁遠いものがあり、このために港湾労働者生活最低生活から没落し、栄養不足環境衛生不備から疾病の危険にさらされており、この状態の改善のためには、労働基準法の完全な励行の上に立つて労働力需給調整、就労の安定性を生み出すための科学的、政策的な法の制定、いわゆる港湾労働法制定を要望しており、総同盟その他の労働組合の主張するところは、この単行立法制定に必ずしも一致してはいないが、現行労働基準法ないしは職業安定法の完全な実施もしくはその不備を指摘し、かつ港湾労働者に対する福利厚生の諸対策を熱望している点では、一致した意見となつております。  一方経営者側意見としては、この単行法制定必要性については、現行公共職業安定所の機構と内容の整備をもつて十分であるとし、港湾実情から見て時期尚早であると強く反対の意を示し、なお現行労働基準法による時間外労働賃金年次有給休暇解雇予告等の諸点について、実情に沿い得な叶いとしてその改正を主張しておるのであります。  以上はきわめて概略的に港湾労働事情について述べたのでありますが、現在小委員会全国主要港湾における労働事情について、それぞれ報告を徴し、これを整理いたしており、また諸外国の港湾労働法収集整備中でありまして、近くこの具体的検討を行い、あわせてわが国港湾実情対比研究をいたす予定であり、さらにさきに述べましたごとく、港湾における労働関係が、他産業に見られる労使関係労働基準職業安定の実情ときわめて相違し、その特殊性事業に内在する零細後進性関連して、きわめて不安定かつ脆弱なものとして現われ、労働事情またきわめて特異な姿を露呈しておるのでありまして、貿易振興による経済自立のため、輸送力の高度な増強要請される今日、小委員会としましては、この問題と真剣に取組み、今後各主要港の現地における実情調査をも試み、港湾労働に関する調査研究を続け、立法上の参考に供したいと考えるのであります。  以上簡単に小委員会の今日までの経過につきまして、御報告申し上げた次第であります。     —————————————
  8. 島田末信

    島田委員長 これより労働金庫法案参法第六号を議題といたします。前会の委員会においてすでに提案理由説明を聴取しておりますので、本日は質疑に入りたいと存じます。質疑の通告がありますからこれを許します。柳澤義男君。
  9. 柳澤義男

    柳澤委員 参議院から提出せられました労働金庫法案につきまして提案者の方々にお尋ねいたしますが、まず第一にこの単行法による労働金庫法、かような独立立法が現在の状況におきましてなぜ必要であるか。単行法の必要の具体的な事由を御説明願いたいと思います。
  10. 中村正雄

    中村参議院議員 お答えいたします。提案理由説明のときにも申し上げましたように、現在全国で十六の都道府県におきまして、労働金庫と銘打つたものができておるわけであります。しかし現在これの基礎法律がありませんので、一応信用協同組合として設立され、運営されて参つておるものであります。ところがこの組合は御承知のように中小企業等協同組合法の規定によつてつておるわけで、本来の労働金庫とは第一その構成組織におきましても違つておりますし、また金融性格目的におきましても違つておりますので、どうしても事業運営支障を来しておる、こういう関係でこの単独立法をどうしてもこさえなければいけないという必要を痛感いたしまして、各派共同提案参議院で立案したわけであります。
  11. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまの御説明は大体提案理由説明のときに承つたようなお話でありますが、ただいまのお話の中に事業運営に現在の法規では支障を来すとおつしやられたのでありますが、現在の運営されておる実情を見ますと、まだほんの育成過程にあつて、はたして現在の法制運営上どのような重大な支障があるかということは、私どもの最も疑問にするところなのでありますが、この事業運営の上に支障を来すという具体的な事例をお示し願いたいと思います。
  12. 中村正雄

    中村参議院議員 一応先ほど申し上げましたように、現在十六の都道府県設立されておりまして、具体的に支障を来す点がはつきりしない、こういう御質問のように承るわけでありますが、一応この法律をこさえました趣旨というものは、具体的な不便もさることながら、現在労働金庫というものがこれらの地区に設立され、なお今後も各府県に設立されようといたしておりまする機運にかんがみまして、未前にこれらの不便を防ごうということも制定一つ目的であつたわけであります。現在の不便につきましては、立案に参画いたしました法制局の職員より説明いたします。
  13. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 中小企業等協同組合法によりまして、労働金庫をつくります場合に生じます不便と申しますか、現在の支障を申し上げます。これはまず第一に構成員の面において現われるのであります。中小企業等協同組合法による信用協同組合個人対象にして、その個人が三百人以上なければ設立できないということになつております。この労働金庫団体構成を原則といたしております。労働組合が三百以上なければできないということに形式上はなるわけでございます。そのために三百の法定数に足らない組合しか加入しておらない労働金庫は、やむを得ずその労働組合を幾つかの支部ごとにわけてしまつております。また組合のうちのある部分組合員組合からはずして個人として、個人の資格において加入させるということで、三百の法定数を満たしておるのであります。このために、せつかく労働組合における福利活動を促進するというねらいをもつてできました労働金庫が、組合を分裂させるという逆効果を生じておるところがあるのでございます。その点が第一の支障でございます。  それから中小企業等協同組合法によりますと、個人だけを対象にしておりますが、労働金庫では団体会員といたしまして、しかもその会員である団体に所属しておる個人たる組合員との結びつきも考えなければいけないということになるわけであります。それは具体的には、組合員資金吸収するという面からつながりを持たせる必要がございます。このことは中小企業等協同組合法ではまかない得ない事柄であります。  それからさらに業務運営上支障につきましては、先ほど中村委員長から仰せになりましたように、現在はさしたる支障は生じておりませんが、これを未然に防ぐ必要がある。そのことは、具体的には労働者零細資金を集めて、その運用をやつて行きます金融機関としては、絶対に蹉跌を来してはならない。すなわち厳重なる業務上の監督措置を、法律によつて確保して行くことが必要でございます。ところが中小企業等協同組合法によりますと、設立に関しては都道府県知事自由裁量であり、監督については知事監督ということになつております。これを大蔵大臣労働大臣共同監督に移して、的確なる監査が常に行われることを法律上確保する必要がございます。
  14. 柳澤義男

    柳澤委員 どうもただいまの説明では納得できないのは、まず第一に三百の法定数が必要である。この三百の法定数が満たされないと設立されないとおつしやられるのですが、その会員の三百に満たないようなちつぽけな労働金庫をつくつたところで、これはとうてい経営が成り立たない。むしろこれはもつと法定数を上げてもいいくらいではないか、かような疑念が持てるのであります。なぜ個人対象としてならないのか。個人対象とするからいけないという理由も納得できない。団体構成をこの法案建前としていることは、拝見してよくわかるのです。しかし団体構成建前としなくても、個人対象とする現在の運営でもちやんとやつて行ける。設立そのもの支障があると、先ほど来まず第一の理由としておつしやられるけれども設立されて、運営されているのが現状である。おそらくその間に設立支障がなかつたことを——すでに十六も設立されたというし、なお設立されつつあるとものがあると聞いておりますので、この点支障があるということはまことに納得しがたい。いわんや団体構成でなければならないという理由が私どもには納得できない。しかも労働組合というような団体であるとするならば、これはあるいはその他の団体とたいへん広くとつてありますが、その他の労働者団体というだけでは、法人格を持つた団体ではないので、おそらく法人格を持つていない団体だけだろうと思います。消費生活協同組合というものはもちろん別ですが、その他労働者団体といわれるのには、きわめて性格のあいまいな、おそらく法人格の持たないものであるから、団体構成であつても、個人構成であつても、それからこれを世話する人のいかんによつて多少の差異はありますけれども、この設立に障害があるということの理由には毛頭ならない、かように考えまして、この点は現行法ではできないのだというお説には私どもにわかに賛成できない。これはぜひもつと詳しく説明していただきたいというのが第一点。第二の点は、組合員資金吸収する云々というお説が今あつた。しかし組合員資金吸収する小さなかたまりだけを考えなくても、労働者というものは未組織のものも日本全国にまだ半数以上ある。むしろ私の立場から言わせれば、組織あるものはほんの一部であつて——労働者の定義は、法案から見ても非常に広い。職業の種類を問わない。賃金、給料その他これに準ずる収入をもつて生活するといつたら、八千万の国民の中にどれくらいございますか。おそらくこれは未組織のものがずつと多いことは明らかであります。こういうようなものは全然対象にしないで、わずかに組織あるものを対象とするかのごとき御説明である。組合員資金吸収するという御説明では、せつかく労働金庫単行法をつくるならば、もう少し広くしたらよかろう。あえて組合員資金吸収——組合員といつても、しかも組織組合というようなものだけを対象にするというお説にはにわかに賛成できない。これをもう少し納得の行くように説明していただきたい。もう一つは、第三点としてあなたのあげられました監督措置ということであります。現行法でも決して信用金庫に対する監督をずさんにしているわけじやありません。いわんやこれに対する監督がないわけじやありません。十分なる監査、監察が行われているのであります。その認可知事であるということが、大臣であるのとどのようにその効果において違うか。あるいはそれは認可をしてもらうに手の届き方が遠いからたいへんだという点はあるかもしれませんけれども、そんなことは監督の目の届くということは別個の話である。知事認可したといつても、厳重な監査の方法は幾らでもある。現に信用金庫がずさんな監督をしているというように聞えて、今の御説明では監督措置がどうこうということではこれは納得できないのであります。つけ加えて申しますが、今のような点に御支障があるというお考えでおつくりになつたのでありましようけれども、それなら現行法改正ではなぜ補えないのか。その現行法改正では補えないという理由もひとつ立法理由として御説明願いたいと思います。
  15. 中村正雄

    中村参議院議員 設立団体主義でなければなぜいけないかという御質問が第一点であろうと思います。それにつきましては、第一に団体主義をとりました趣旨というものは、御承知のように労働者自体担保力なりあるいは補償能力におきまして非常に力が弱い。従つてこの金庫におきまして貸出しする場合におきましても、労働組合という一つ組織をつかまえることによりまして、一つ金融機関でありまする安全確実という点が、ある程度保償され得るという点も一つあるわけであります。また一人々々の組合員対象といたしますると、実際の問題といたしまして事務が非常に煩雑になるということも考えなければならないわけであります。また現在の法律つて設立困難性はないじやないか、こういうお話でありますけれども、現在の法律によつてやるためには、先ほど法制局の課長から御説明申し上げましたように、労働組合という団体組織でやるために、三百の労働組合をつかまえるということは、一府県内においても非常に困難性がある。そこで個人加盟まで入れまして、ようやく今の法律に合わして法定数を充足しておる、こういう状態になるわけであります。また監督の点につきまして云々という御質問がありましたが、現在の法律でありますと、これは地方庁が監督いたしておりますので、やはりこういうものは大蔵省の直轄の監督にするということがいいのではないか。そうすることによりまして、この金庫運営におきましての万支障なきを期したい、こういうふうに考えておるわけであります。  また第二点としておつしやいました未組織労働者が相当いる、こういうものはどうなるかというような御質問趣旨だと思いますが、労働金庫は広汎な預金の吸収と、貸付金の回収の確保をはかるために、すべて団体金融建前といたしております。しかしながらこの労働金庫会員となることのできる労働者団体といいますものは、労働組合のみを言うものではありません。生活協同組合健康保険組合住宅組合共済組合共済会互助会あるいは貯蓄組合等労働者福利厚生目的といたしまする団体でありますならば、すべて労働金庫に加盟することができるようになつております。従つて労働組合を結成しておらないいわゆる未組織労働者も、結成、加入の容易なこれらの団体を通ずることによりまして、容易に労働金庫を利用でき得る、かように私たちは考えておるわけであります。
  16. 柳澤義男

    柳澤委員 建前が違いますから、ただ質問をしても仕方がありませんが、少しせんじまして、ただいまのお話の中で、団体主義行つた方担保力があるというお話でありまするが、これは団体と申しましても、組合員の多数が借りるような場合は、むしろ組合員外の親類や何かで有力な担保を持つている人の担保力の方が、共同担保でお互いに借りつこしているよりははるかに担保力があろうかと私どもは思う。  それから先ほどのもう一点、現行法では三百の組合を集めるということはとうてい容易でないから、三百人個人のあれで行つておるというお話ですが、現行法自体個人主義個人対象としてできております。ですから、組合を三百集める必要はありません。三百人以上の会員でたくさんなんだ。この点は何かお考え違いではないかと思うのです。それから未組織についていろいろお話がありましたが、なるほどそういつたような団体、ここにいうその他の労働者団体組織を、今のお話では必ずしも労働者団体というのでない、いろいろな意味の団体を指摘されたようであります。しかしその中に必ずやある程度の労働者が包含されておることは考えられますけれども、しかしながらその場合でも必ずしも団体を通じなくても、各個人として入つても何にも支障のないということであつて、私はむしろ個人として入ることを禁ずる方がかえつてこの精神に反しはしないか、資金吸収にもかえつて骨が折れはせぬかということを考えるのですが、ただいま申し上げた点において私の考え方はどこかあなたの方の考え方と齟齬しておるのではなくして、あなたの方の御説明が足りないためだとおつしやるならば、その点を明らかにしていただきたいのであります。その上で次に質問を進めます。
  17. 中村正雄

    中村参議院議員 担保力の問題、確かに御説のような場合もあり得ると思いますが、一つ金融機関でありますれば、やはり貸出しにつきましてはいろいろの面から考えまして、労働組合会員全部に貸出しすることができるかどうかは、そのときどきの具体的な担保力なりあるいは事項について判断されるべき問題でありまして、抽象的に申し上げますならば、労働組合あるいはその他の団体という一つ担保力を基盤にいたしまして、一人々々の個人に貸出しできるというところに団体主義のねらいがあるわけであります。  第二の御質問でありまするこの会員は、何も団体でなくても三百人おればいいという現行法の規定は、私もその通りに考えております。従つて私の御説明申し上げましたのは、労働組合なりその他の組合団体主義によつて、現在の法律によつて設立する場合におきましては、労働組合のみでは三百の会員ができないから、足りないところは個人の資格において三百という会員を充足いたしておる、こういう現状を申し上げたわけであります。  それからもう一つ労働組合以外の団体の加盟もできるじやないか、こういうお話でありますが、本法の会員となります団体というものは、本文にもありますし、提案理由にも申し上げました通り、労働組合消費生活協同組合その他労働者をもつて組織する福利共済のための団体、これが主眼になつておりますので、御了解願いたいと思います。
  18. 柳澤義男

    柳澤委員 ただいまの御説は、私は必ずしも団体に加入していなくても、その対象はつかめるのではないか、かえつてその方がよいのではないかというように申し上げておるのでありますが、それは考え方の相違でありまするから、この程度にとどめまして、次にもう一点お尋ねしたいのは、法律的には今論議したような次第でありますが、今度実際問題といたしまして、現在各地にありまする労働金庫なるものが、いまだ非常に設立日も浅い。その実績も、はつきり申し上げますと、はたしてその実績が今後も成績をあげて行けるバロメーターとしてつかみ得るかどうかということは、非常な疑問であります。私は現在の状態におきましては、あるいはこれは零細資金労働者から集めて、実績が上らない場合が生じはせぬか、過去におけるヨーロツパ並びにアメリカにおいて行われたこの種の労働金庫がことごとく失敗しておる実例を見まして、また日本におきましても早々できましたものについては、すでに失敗をいたしておる事実を聞き及んでおります。これらの事情からしまして、最近まだ半年、一年、古くて二年にならないというようなものを参考とし、これが続々できて行くから、今や単行法をもつてこれを制度化しなければならないというには、少し早いのではないか。なお従来の実績の経緯をよくにらんで、零細資金を集めて、それで泣かせる結果のないような確実なる見通しをつけ、実績をもつて、将来を測定できるような時期になつてから単行法制定をしても、私は決しておそくないのではないか、かように実際上の問題からお尋ねするのですが、この点いかがでございましようか。
  19. 中村正雄

    中村参議院議員 御説ごもつともでありまして、実は私たちが本法を立案いたしました趣旨も、その点にあるわけであります。すなわち現在できておりまする労働金庫は、中小企業等協同組合法によつてできておるわけで、従つてこれでは組織系統に不便があるということは、先ほど法制局の課長から御説明申し上げたような次第でありまして、こういう懸念がありますので、監督も厳にし、そうしてそういう懸念を最小限度に食いとめよう、そのためには、現在のこの中小企業等協同組合法の基礎に立ちました労働金庫では不安があるというのが、この法律をこしらえました根本趣旨でありまして、ただいまの柳澤委員のような御説がありますゆえに本法を立案した、かように御了解願いたいと思うわけであります。
  20. 柳澤義男

    柳澤委員 たいへん御説はもつともですが、私は実際の現在の事例から申しておるのでありまして、今のお話のような抽象的なお答えを聞こうと思つたのではありません。ことにこの法案の内容を見ましても、非常に監督々々とおつしやられますけれども、現在の信用金庫に対する監督以上に、どこが一体厳重な監督になるのか、そういう点もとんと見当りません。でありますから、この点については、ただ大臣監督だから厳重だ、知事認可だから簡単だというようにお考えになられることは、これは大きな間違いであるというように私は考えるのでありますが、この点もその程度にとどめまして、もう一点次にお尋ねいたしたいのは、しからば現在の最高の貯金のある、また貸付のある、つまり実績を最も上げておる事例を、一、二でけつこうですから御説明願い、その所要人員、所要経費、そして利息をつけてこれを返還しているのでありますが、はたしてこれが運営上、数理的に見て合理的である、立つて行けるというような事例を、ひとつ御紹介願いたいのです。
  21. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 御質問の第一点でございますが、監督権を強化いたしました大きな点は、ただいま御指摘がありましたように、設立を免許制にしたことでございます。それから一般的に監督権を大臣に持つてつたことでございます。このことは知事監督するのを大蔵大臣……。
  22. 柳澤義男

    柳澤委員 その点はよろしゆうございます。その次の事例だけお答え願います。
  23. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 今の第二の御質問は、ただいま差上げました表にございます。
  24. 柳澤義男

    柳澤委員 この表では、実際と食い違つてわからないのです。それは留保して、この次までにお調べを願います。  その次に、大きな問題ですが、それは労働金庫という名称でありますが、これに労働者団体だけでなく、使用者側の協力があつたならば、もつと有意義な、もつと巧みな運営ができはしないか、こういうような考えを持たれるのでありますが、この点について立案者はいかにお考えですか。
  25. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 中小企業協同組合法では困るという理由は、先ほどから中村委員長が申し上げられましたが、もう一つ、中小企業協同組合法によりますと、必ずしも労働者だけをもつて構成しないということは、集まつた金が事業資金方面にも運用されるおそれがある。今労働者が一番困つておりますのは、生活資金をどこから受けるか、担保力を持たない各労働者が、消費金融をどうやつて確保するかということが、大きな問題なのであります。その際に労働者が積み上げた零細なる資金が、自分たちの生活資金、消費金融にまわされずに、それが事業資金の方へ流れて行くということは、まことに困るということが一つ理由であつたのであります。その理由が、ただいまの御質問に対しますお答えにもなるかと存じます。
  26. 柳澤義男

    柳澤委員 簡潔にお聞きいたします。今のお説ですと、生活資金、消費金融建前にするように聞こえますが、この第一条の目的で、「これらの団体の行う福利共済活動のために金融の円滑を図り」、といつたような条章から、今のお説のように、産業資金は絶対に省き、生活資金のみだというように解釈されるのでありますか。
  27. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 ただいまの私の申し上げ方が少し舌足らずであつたかと思いますが、第一条の目的に書いてございますように、組合福利活動の中には、必ずしも消費金融だけではございません。しかしそれは究極においては、組合員たる労働者生活のプラスになるわけでございます。ただいまの申し上げ方が少し悪かつたと存じますが、その中のある部分は消費金融的な性格が強いということでございます。
  28. 柳澤義男

    柳澤委員 そうなると、ますます立法目的がこんがらがつてしまつて、最初の御説明の消費金融目的とするということから、今のお説ですとそうでない。産業資金をも含むというようなお説になつてしまつて、そうすると私どもには、いわゆる労働金庫の特性が、どつからも浮び出て来なくなつてしまう。どうもこの点今の御説明は、前後まつたく撞着矛盾しておると考えられるので、ちよつと納得できません。  さらにまだたくさん質問したい、どうも合点の行かないことがあるのですが、本日私は総括的な質問のみにとどめまして、この程度に打切つて、さらに質問を留保いたしたいと思います。
  29. 島田末信

  30. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 提案者に御質問したかつたのでありますが、お見えになりませんので、どなたでもよろしゆうございますから御説明を願います。  今まで実施されております実情の上に立つて、今度単独法が必要とされて出されて参つたのだと思うのでありますが、ただいまの御説明を聞いておりましたが、私どもといたしましても、新しい法律を出すことによつて労働者の福利が増強されるということについては、納得の行かない点が多いのでございますが、それ以前に具体的な今までの労働金庫の利用されております内容につきまして、たとえば北海道ではどうなつて、兵庫ではどうなつているか、労働金庫をどのようにして活用しているかという貸出の内容でございますね。これをひとつお示し願いたいと思います。
  31. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 お手元に労働金庫法案に関する審議参考資料というのがお配りしてございます。この十九ページ、二十ページの横になつておる表でございますが、ここに労働金庫組織概況一覧がございます。それから一枚飛びまして、二十三から二十四というところに、労働金庫貸付内訳図がございます。この左の方に、たとえば医療費が何パーセント、住宅費が何パーセント、高利貸の肩がわりが幾らというように図示してございます。それで御了承をお願いいたします。
  32. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先ほどあなたも御説明の中におつしやつておりましたように、大体生活資金であり、しかも高利の肩がわりとか、あるいは医療費とかいうような、労働者の低賃金による生活の赤字とか、そういうようなものの穴埋めということが、労働金庫の主たる運用の部分を占めているというふうな表は、これは兵庫だけが示されておりますけれども、各府県ともそういうことになつておるのでございましようか。
  33. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 兵庫の労働金庫は一番古くできましたので、これをとつたのでございますが、大体においてこういう傾向と大差はないのであります。それからこの表の右側もあわせてごらんいただきたいのでございますが、個人組合に対する貸付のパーセンテージが出ております。これによりますと、個人対象貸付の約倍が団体貸付になつております。
  34. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 この貸出し内容の、たとえば岡山の場合は賃金の遅払いに対して三五%、高利の肩がわりが一七%となつておりますのは、個人団体も含めての合計したパーセントでございますか。
  35. 中原武夫

    中原参議院法制局参事 上の方にございます医療費、住宅費、高利肩がわりというのは、個人対象の貸付でございます。下は組合に対する貸付で、別個のものでございます。
  36. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 先ほど提案者の御説明にもございましたが、今までの信用組合法でやつていたことは不十分なので、それで今度の単行法を出したということでございますが、その出しました理由の中で、監督を厳にし、労働大臣大蔵大臣認可制にすることによつて、それらの運営上の非常に足りない部分を補つて行きたいのだというような意味をおつしやつていたと思うのでありますが、柳澤委員の御質問の中にも、低利でやつて行けば労働金庫運営というものは、十分うまく行くように思う、しかし労働金庫性格そのものは、たとえば今のような逼迫したような状態では、賃金の遅配とか、非常に高い利子を安く借りかえるためとかいうような、最も利子の少い、安価な営利というようなものを離れた運営であるということが要求されておると思うのでございます。そうしますと、ただ労働大臣認可にするとか、大蔵大臣認可制にするというようなことで、本質的な問題は何にも解決できないように私ども思うのでありますが、その点はどこに一体労働大臣大蔵大臣認可制にしなければならないという根拠があるか、それをひとつ明確にしていただきたい。
  37. 磯部巖

    ○磯部参議院労働専門員 私からちよつと今の御質問につきましてお答え申し上げますが、単行法をつくります理由として、先ほどからいろいろ御説明を申し上げておるわけでございますが、大蔵大臣労働大臣の共管に移して監督を厳重にしなければならない理由は、先ほどからもるる一話がありましたように、現行法中小企業等協同組合法の規定によつて設立されておるのでございますが、その結果地方庁の監督にまかされておる、従いまして地方庁の監督が非常にルーズだということを、私ども申し上げてははなはだ失礼でございますが、大蔵大臣直轄あるいはそれに労働大臣も加わつて監督いたしまする方が、技術的な面におきましてもいろいろな点においても、はるかに厳重に行い得るということは確かだと思うのであります。  それからさらにただいまの組合運営上、現状におきましては中小企業等協同組合法によつて認可されておる、名前だけ労働金庫になつておりますが、この法律趣旨は、営利事業目的として資金の融通ができるのでございます。というよりもむしろそれが主たる目的でございます。ところが、労働金庫がもしも誤つて営利的な事業に誘惑をされて、それに資金をまわすようなことがございますと、間違いが起りやすい、それで先ほどお話がありましたように、非常に利子の安い、賃金遅払い対策であるとか、あるいは医療費の貸付とかいうことばかりやつてつては、あまり引合わぬようでございますが、むしろそういう堅実の方向のみにあくまで制限してやつて行くべきものであり、またそうあつて初めて労働金庫が伸びる、こういうふうに私ども考えます。従つてあくまで労働金庫は営利の事業をしない、そして労働者の福利共済事業のみに専念するという建前を中心といたしました立法の必要がある、こう考えるわけでございます。
  38. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 新しい単行法を出すのは、つまり労働金庫というものの運営を非常に強固にして行くためであり、堅実にして行くためであるということが主になつておいでになるわけでございますか。
  39. 磯部巖

    ○磯部参議院労働専門員 御説の通りでございますが、その前に先ほどから申し上げておりまするように、現在中小企業等協同組合法によつて設立を認められておるのでございますが、これはあくまでも法律の脱法と申しますか、ごまかしということは少し語弊がございますが、あの法律によつてはちよつと趣の違う性質の組合を許しているのです。たとえば私生児のようなものだと私どもつておるのですが、しかも法律のあるないにかかわりませず、ともかく全国にもう数十という組合が現在できつつありますし、今後もできつつある傾向でございますので、これを、あくまでよいものであるならば、国家が公認する、同時にこれを育成し、かつ厳重な監督を加えるという立場から、どうしてもそのための法律をつくつた方がいいのではないか、しかも事は零細労働者資金を預かり、これを運用するものでございますから、中小企業者のための法律を適宜運用でやつて行くというようなことを言わないで、ここで別個のものを特につくつてあげてもいいのじやないかという考えが基礎になつておるわけであります。
  40. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 私のお聞きしたいのは、賃金遅配とか、高い利子で高利貸のために苦しめられている労働者が、労働金庫によつて生活を幾らかでも安定きせるために、労働金庫の単独法を出したい。それが主になつているというふうな御趣旨であるならば、地方の長官の認可制から労働大臣大蔵大臣認可制にするということだけで、どこにその保障があるかということなのです。
  41. 磯部巖

    ○磯部参議院労働専門員 ただいま労働金庫は一府県一銀行の方針で進んで来ておるのでございます。先ほど申し上げましたように、現在の法律のもとにおいては、一定の要件を備えたものは認可しなければならないという解釈になつておりますので、相当大きな府県、あるいは小さな府県でもいいのですが、そこに二つも三つも労働金庫をつくるということになつて来ますと、零細労働者が基礎でございますから、基礎が危うくなります。そうするとつぶれたりして、不測の損害を与えることになる。そこであくまで一府県一銀行の原則を貫くためには、やはり中央に免許の権限を集めておいて、その方針で行きたいというのが根本なのでございます。そういう意味があつて、両大臣認可というのが出て来ておるのが実態でありまして、地方庁の監督よりも、意地の悪い監督をさらに強化しようという意味で、両大臣を持つて来たわけではございません。
  42. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 この法案の提案の理由の中には、あくまでも労働組合運動の一環として労働金庫というものが設立され、単行法としてきめられるところに意義があるのだということを言われておると思うのでございます。そういたしますと、労働組合というものは御承知のように、はつきり資本家と対立して、保障された労働三権をもつて自分の生活を守つて行くところの組織だということは、申すまでもないと思うのでございます。その労働者が、賃金遅配や何かを資本家の責任において支払わせるのじやなくて、足りない自分たちの給料のわずかな積立てからこれを借りる。しかも今度は、労働法や何かを改悪している張本人である労働大臣認可を受けて、労働金庫をつくつて行く。まことにこれは矛盾しておると思うのです。労働組合運動の一環としてといいますが、これでは労働組合運動というのは骨抜きになつてしまうのではないか。当然資本家がしなければならないものを、労働者自身が、賃金遅配や高利の肩代りを、自分の零細な金でもつてつて行くということは、実に矛盾していると思いますが、その点はいかがですか。
  43. 一松政二

    一松(政)参議院議員 賃金遅配や何かの場合、零細労働者が現在においてどこへ行つて金融を求めておるかというと、これは多分質屋だとか、あるいは知合いの者、中には高利貸から借りておる者もいるわけです。こういう者が労働金庫のできるために、そこへ行つて、普通の金利で、ともかくそういう窮地に陥つた一時的の場合をしのぐ、そうしてそれは組合の保証によつて借りる。そして他日自分がまた余裕のできたときにそれを払う。また賃金労働者が、全部が全部あなたがおつしやるように一つも余裕がないのだということでは、つまりこうものの余裕が出て来るはずはないわけです。やはりその間には、ないながらも倹約する人もあるし、あるいは貯蓄する人もある。そういう者の資金を一時的に足りない方に融通してあげる。現在ではこれが中小企業等の協同組合でやつておりますると、そういうものにまわすよりはまだ高利になつて、中小企業その他にいわゆる事業的に金融をすれば非常にもうかる。あるいは中には非常にいろいろ誘惑もあろう。そういうものを防いで、もつぱら労働者のために、そういう必要な場合に、できるだけ労働者生活にクツシヨンを与えてやるということは、私は大いに意義のあることだろうと思うのです。それから労働大臣監督ということは、ただ労働組合関係について監督するのであつて労働大臣監督権は、別にこれの金融的な関係について監督する意味ではございません。今あなたがおつしやつた通り、労働組合の健全なる発達の一環として、労働大臣がこれに関年するわけであります。
  44. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 つまり余裕があるから貯金をするので、困つたときにそれを利用するのは当然だと言われますが、失業保険なんかでもそうです。食えたい、食えないといつてあぶれを反対している日雇い労働者でも、掛金を引かれまして、その適用がなかなか受けられない。厚生年金もその通り、実際もうひどい状態で、労働者が政府に完全に掌握されまして、それが通用されておらないという先例はあるわけでございます。私どもが伺いたいのは、労働組合の本来の組合運動というものを、相互扶助的な共済組合的なものに切りかえて、そういう性格を多分に与えて行く、また現実に資本家が当然責任をもつて賃金遅配を埋めなければならないものを、労働者金庫から出させて行く、この事実は、提案者の方はその方がよろしい、ストライキが起きないし、社会不安が起きないから、労働者の負担であろうと何であろうと、とにかくそういうむのをつくつて行けば、闘争が起きないからいい、労働組合運動の性格がどうなろうと、その方がいいのだというお考えで、そういう事態を御承認の上で、この法律を提案なすつているのかどうか、これをひとつ伺つておきたいと思います。
  45. 一松政二

    一松(政)参議院議員 柄澤委員はちよつと提案を少し曲げてお考えになつていはしないかと思います。これはむしろ社会党の、今おりました中村委員長が大体の立案者です。それでわれわれは共同提案として、そうしてそういうものはしごくけつこうであろうから、むしろあなた方の側の立案にわれわれは同調した。今あなたのおつしやるようなことはこれはすこぶる当らないのであつて、われわれはむしろあなたの希望するような方向にこれを持つて行く、もつぱら福利厚生のために運用して行くのであるということが趣旨なんであつて、あなたから何か私どもの方が、政府の側の立場か何かのようにおつしやられることは、すこぶる迷惑なわけなんであります。
  46. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 私どもはやはり社会党とはちよつと立場が違います。私の質問しましたことにつきまして、それを中心にして御答弁願えればよろしいのです。つまり労使間の紛争をなくすることを主眼にして、労働組合運動の本質というものが曲げられても、やはり共済組合的なものになつても、とにかく労使間の紛争をなくするということが主眼になつてお考えになつたのであるかどうか。
  47. 一松政二

    一松(政)参議院議員 訂正いたします。労使間の紛争をなくしようというのが、労働者も資本家も、あるいは国民のほとんど大部分、九九%の人の念願であると私は思う。その念願に沿うて、そして福利厚生をはかるのに少しでも寄与するならば、そういうことがいいのではないかというのがわれわれのねらいでありまして、私はここで釈明いたしておきます。私はあなたが社会党であつたように考えたことに私の間違いがあつたのであつて、あなたが共産であるということが今はつきりいたしましたから、それではどんなことを申し上げましたところで、あなたのお気に入るようなことはなかろうと思います。
  48. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 よく御提案のねらいはわかつたわけでございます。そこでもう一点お聞きしておきたいことは、今までそういう役割を労働金庫が果して来たということを御確認の上で、もつとこれを広く拡大しようということだと思うのでございます。結局今までの賃金の遅配とか、高利の肩がわりとか、医療費とかいうようなものが大半を占めておりまして、私どもから申しまサれば、これは当然資本家が責任をもつて労働者に果すべきです。賃金の遅配を埋める等のことは当然果すべきであるのに、それを労働者自身が自分の少い給料の中から積み立てて、お互いに相互扶助的な役割をして、資本家に対するところの紛争が結果として少くなつたということを御承認、御確認になつたと思うのでございます。これは社会党に御賛成になりましてのあなた方のお立場としては当然だと思うのでございますが、労働組合としての立場から申しますれば、事は労使の紛争が主眼ではなくて、労働者生活の安定というものが主眼であります。しかもそれは当然資本家から奪われたものを取返す、払われないものを払つてもらうという形で、当然働いた労働に対する補償を要求して闘うのでございますが、この法律で、今の御説明でございますと、そういう資本家の当然の義務を行使させることを、むしろ妨害することになると思うのでございます。労使の紛争をなくするということが主眼であるあまり、資本家の負担ではなしに、労働者の負担において労使の紛争をなくしよう、そういう大きな役割を労働金庫が果して来た。それを拡大して行こうというのが、この法律の果している一つの役割だということを御確認になつたというふうに了承いたしますが、いかがでございますか。
  49. 一松政二

    一松(政)参議院議員 今のあなたのお話を承つていると、あなたの党は口ぐせのように資本家々々々と言うが、資本家というものはどこからか金でも非常に持つてつて、そうしてそれを一方労働者をいためつけておいて、何か栄耀栄華にでもふけつておるような印象を与えますけれども、今の企業及び日本の企業家の置かれている立場、あるいは世界的な問題でもありまするが、経営が行き詰まらないで賃金の遅配をしておるところはありません。その経営が行き詰まつておるときに、あなた方は資本家とおつしやるけれども、その資本家というのはだれのことを言つているのかわれわれにはわからぬが、そこで何も賃金の遅配をこれでもつて埋めるという趣旨でもなければ何でもない。みんな人間にはいろいろさしさわりの起つたときに不慮の金のいることがある。そういうことはだれでもあることです。そういうことのために福利厚生施設というのをお互いに独立の立場で、労働者労働者の仲間、国民は国民のお互いの仲間で、そういうことを考えて、組合をつくつてつて行こう。そういうものの便宜をできるだけ助長して行きましよう。現に独立の法律がなくてもそういうことを考えておやりになつているが、それをさらにやりやすくして上げようというわけです。あなたのようにただ何か資本家がおつて、そうして資本家がやるべきことを労働者の積立金か何かによつてやろう、そういう考え方というものはわれわれは夢にも考えたことはない。これから以上はもう討論になると思いますから差控えたいと思います。
  50. 島田末信

    島田委員長 次会は明十九日午後一時から開会することといたし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十八分散会