○
前田(種)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案されております
労働関係法規に対して
修正案を提案いたし、その大体の
内容を
説明申し上げたいと思います。もちろんわが党が掲げました
修正案の全文につきましては、
議案書として提案しておりますから、その
内容に讓ることといたします。
私は今日までいろいろ
審議をして参りましたその
過程におきまして、
労働大臣初め
政府当局が
説明を盡しましたところのその
内容は、今回の
改正は既存の
法規をある程度
整理統合するというのが主目的であるやに承
つたのであります。しかしそうした
観点からこの
内容を
審議して参りますと、決して
整理統合したあとが見えないのでございます。私
たちは
整理統合すべき
労働法規というものは、むしろ一本にすべきであると主張したいのであります。今日国内におけるところの
労働関係法規は、
公務員法あるいは
公企労法、今回制定を見ようとしておりますところの
地方公企労法、さらに基本的には
労働三法あるいはその他の
関係法規等がございます。しかもこれを管轄いたします諸官庁においても、いろいろ複雑な
関係にわた
つておるのでございます。私
たちは
労働法規は、むしろ
労働三法に一本にいたしまして、一元化されましたところの行政的な衝に当る
労働省が主管すべきであると考えるのでございます。そうした基本的な問題を解決することなくして、末梢的な、ま
つたく事務的な問題のみの
整理統合にすぎないのでございます。しかもその反面にこの
改正案の中には、基本的には
罷業権の問題あるいは
団体交渉権の問題、あるいはその他の
問題等につきまして、
憲法に保障されております基本的な人権に対して重要なる
制約を行おうとしておるのであります。私はそうした
観点から、今回の
内容につきまして、わが党が提案いたしました
修正案の
内容のおもなる点に対して
説明を申し上げたいと考えます。
まず
公企労法、
地方公企労法等に
関係いたします
内容におきましては、どうしても
適用範囲の問題あるいは
団体交渉の
範囲の問題、さらに基本的には
スト権の
問題等に触れまして、正常な
労働組合運動の発達を願うためには、そうした基本的な
條項が確認されなくてはならないということは言うまでもございません。今日
公務員その他のものがいろいろな点ついて、あるいはへたり込みをや
つたり、非合法の
組合活動をや
つておるということは、
組合運動の本来の姿から許されないという
観点に立
つて、非合法の
行為が顯著に見受けられます。私は公正な
組合運動を軌道に乗せる
意味において、
日本の
労働組合運動を健全化さすという
観点に立ちまして、こうした基本的な問題につきまして、もつと重要な点に触れてこの
内容が
審議されなくてはならないと思います。私はその
意味におきまして当然
スト権を
公企労法関係者諸君にも與え、あるいは完全なる
団体交渉権を與えることは当然なことでなくてはならないと思います。さらに
スト権のない
公労法関係、
地方公労法関係の
諸君に対しましては、
仲裁裁定によ
つてストにかわる協約あるいは
裁定によ
つて、
団体交渉によ
つて確認されておりますところのその
條件すら今日の
政府は蹂躙いたしまして、
仲裁裁定にすら応じないというような今日の
態度をと
つております。私
たちはそうした面におきまして、
現行法の十六
條並びに三十五條の
関係にあるいは制定されようとしております
地方公企労法十條の
関係等は、この際明確に
修正すべきであると主張するものでございます。
さらに問題にな
つております
単純労務者の問題は、
地方公企労法を制定いたすにあたりましては、
政府は
法規のもとに
制約を受けておりますところの約束を守らなくてはならぬのでございます。
全国に相当数またが
つておりますところの
現業関係の
職員あるいは
単純労務者の
問題等は、当然今回提案されましたところの
地方公企労法に関連いたしまして解決しなくてはならない問題であ
つたにもかかわらず、これを見送
つております。私
たちはこの点がはなはだ遺憾と思うのでございます。しかも
単純労務者の問題、
現業関係の
問題等をこの
法規に挿入いたしますことは、決してめんどうな問題ではないのでございます。なぜかと申しますならば、
地方公企労法の第三條の七に「その他の
地方公共団体の
條例で定める
事業」という一
項目を入れまして、画一的に
全国の
公共団体を縛るということでなくして、その
公共団体が
議会において
條例をこしらえて本法の
適用を受けるように
手続をいたしますならば、この法の
適用を受けさすということに道を開きますならば、画一的に
全国の
地方公共団体を拘束もせずに、任意にそうした
関係地方公共団体のそれぞれの事情によ
つて、この法の保護を受けるという道が簡単に開かれるのでございます。それにもかかわらず、
政府はこの一
項目すら考慮しようとはしていないのでございます。私
たちはこの点は重要な問題として取上げなくてはならない問題だと考えるものでございます。
さらに
審議の
過程におきまして、
労働大臣は、今日
公務員の中で
団交権が得られる
身分の人が相当ある。その面においては相当よく
なつたと言
つております。私もその事実は認めます。しかし現実にこの
法律が
適用された場合におきましては、一方には
公務員の
身分であり、一方には
公企労法の
適用を受けるということにはなりますが、その結果一体どうなるかということになりますと、中途半端になりまして、完全に
公務員のいろいろな
特権も與えられない。そうかとい
つて公企労法の
特権も與えられないというような矛盾が、いろいろの問題に出て来ております。第四十條の問題その他の
問題等の
内容を検討してみますならば、ここにも幾多の不都合な問題が出て来ているのでございます。私
たちはこうした問題も、もつと明確にすべきであろうと考えます。
さらに今度の問題で一番重要な案件でございますところの
労働関係調整法の問題につきましては、今さら私はここで申し上げるまでもございません。十
八條五号の
申請却下の問題は、かえ
つてこれが悪用されるきらいがございます。しかも
申請却下が
労働委員会によ
つて決定されるということになりますならば、今日公正な
立場に立たなくてはならない
労働委員会の存在に対して、かえ
つて労使双方からいろいろ猜疑心を持たれるという結果にもなります。また
労働委員会の公正が失われるという結果になる危険すらあるわけであります。またそのことによ
つてストが相当
制約されるということは言うまでもございません。
ストが
制約されるということは、結局企業家に対して大きな力を與えるということになります。私
たちはこの十
八條の五号の問題、さらに三十五條の
緊急調整の問題は、今度の三
立法の中の
中心問題であることは言うまでもございません。しかもこの
緊急調整の問題を
労働大臣の独裁的な権限にゆだねますということになりますならば、しかも
労働大臣の考え方によ
つてこの
緊急調整が発動されるという結果は、一体どうなるかということを考えなくてはならぬと思います。今日まで割合に中労委の活動というものは、公正な
立場によ
つて確保されておりますが、これは言うまでもなく、今日
スト権を持
つておりますところの
労働組合が、
スト権を持
つているという事実の上に立
つて労使
関係が調節されておるからでございます。もし
スト権が
制約されたあかつきに一体どうなるかということを考えて参りますと、
スト権がなくなりますならば、資本家団体は一ぺんに強くなります。この
ストの事実から申しましても、最小限度
ストに入るか入らないかというときに初めて労使
関係の問題が調節できるというのが今日の実情でございます。もしそうであるといたしますならば、
ストをやるかやらないかというせとぎわに来なければものことが解決つかないという今日の実情から判断いたしますならば、
スト権が
制約される、しかも
労働大臣の権限で
緊急調整が発動されるということになりまするならば、一方的に
労働組合側は非常な不利な
立場に立つことはいうまでもございません。しかも五十日間の
冷却期間がございます。こうした
労働問題の解決は、
関係当事者の自主的な解決にゆだねるのが
労働法の基本的な精神でなくてはならないのでございます。そうした点から考えましても、この
緊急調整は、不当に
政府が介入いたしまして、自主的なそうした
交渉がかえ
つて悪い方向に導かれるということが、今後予想されるのでございます。私
たちはそうした点等を考えてみましたときに、
労働大臣の権限のもとに
スト権が確保されるということに対しましては、絶対
反対をせなくてはならぬのでございます。
緊急調整の
制度については、これが決定的な権限は
政府の機関たるところの
労働大臣の独断でこれを持つということに今日の
政府案はな
つております。しかもこうした問題が、
労働問題の解決に決して役立つものではない。かえ
つて根本原則の上に立ちましては、
政府が干渉に介入をするということになるのでございます。私は治安対策の面からも、
政府は考えたであろうということが予測できます。その面から考えられればこそ、今日
社会的に
労働関係法規をめぐりまして、いろいろな問題が起きておるのでございます。今現に
議会で
審議されておりますところの問題を取上げてみますならば、一方には破防法によ
つて右の手をもぎとり、一方には警察法の
改正によ
つて左の手をもぎとり、一方にはさらに集団デモの大幅制限によ
つて右の足を切断し、さらに
労働三法の
改正をも
つて左の足も切断するということになり、この
緊急調整の
制度によ
つてがんじがらめにしてしまうというのが、今日
審議されておりますところの
治安立法並びに
労働組合関係に対するところの諸
立法の
現状でございます。私はこうした状態のもとに今後の推移を見ますならば、今後の
日本の状態というものは一体どうなるかということを憂えるものでございます。そうした
観点からどうしてもころした
制度というものは許してはならない、認めてはならないと私は考えます。私
たちはむしろ、
日本が
独立後ほんとうに労使
関係の調節が正常な軌道に乗ることをこいねがいます。その軌道に乗ることは、あくまでも
スト権を認め、完全な
団体交渉を認め、対等な
立場に立
つて今後の労使
関係のあり方が推し進められて行かなくてはならぬと考えるのでございます。私
たちはそうした点から、このような問題に対しては重要な
修正の意思を表明するものでございます。(拍手)
さらに私は最後に
労働基準法関係の問題について一、二取上げておきたいと思いますことは、
労働基準法の問題につきましては、
政府はいろいろ言葉を費して言
つておられます。しかし今日
労働基準法が国内に完全に
適用されておるかどうかということを考えてみますと、今日
適用されておりません。
全国どこに参りましても、脱法
行為は顯著になされておるのでございます。私
たちはこの脱法
行為がほんとうにどうしたら除去することができるということにつきましては、もつといろいろな点を考えなくてはならぬのでございますが、そうした実情の中にあ
つて、今日
改正案として提案されておりますところの女子の時間外
労働の問題、あるいは女子の深夜業の
問題等は、これが一つの糸口にな
つて脱法
行為に拍車をかけるという結果になりますから、今日提案されておりますところの二つの
條項の
改正は、さして重要な問題ではないようでございますが、今日の
労働基準法の実績に徴して、われわれは
反対せざるを得ないのでございます。
さらに七十條、七十一條のいわゆる炭鉱労務者のうちの十八才未満の幼年工の人々を、技能養成の
立場によ
つてこれを認めようとするところの特例は、あまりにも多くのいろいろなものを残しておるのでございます。私は今日の炭鉱労務者の実情、今日の炭鉱の災害率の多い
現状から申し上げましても、これはゆゆしき問題でございます。
労働大臣は過日も答弁にあたりまして、国際
労働機関もこの問題を認めているということを言
つておりますが、国際
労働機関は、この問題をそのまま認めておるのではないのでございます。ILOの石炭
委員会がこの問題を討議したのは、坑内の年少
労働者の保護をいかにするかという
観点からなされたものでございます。最低年齢の問題、あるいは職業指導の問題、職業補導の問題、健康診断の問題、あるいは夜間
労働、休憩時間、あるいは休暇、
社会保障、監督
制度、あるいは
社会福祉等、十一
項目の一つとして年少
労働者の問題が論議されたのであります。こうした十一の
項目が全部整
つて初めて論議さるべき問題が、ただ単にILOの
会議で問題に
なつたからとい
つて、
日本にこうした特例を設けようというような
労働大臣の物の考え方に対して、私
たちはどうしても賛意を表するわけに参らぬのでございます。しかもこのILOの討議は、本年の総会にまだ残
つております。第二次討議は、来年討議されなければならないような順序にな
つておるのでございます。しかもそうしたILOの決議すら、国際規約または勧告の裁決を理由として、その国の有利な
條件を下げることはできないというようにな
つておるのでございます。私
たちはそうした点等を考えてみましても、しかも今日のような
日本の非常に災害率の多い炭鉱
事業のもとにおいて、そうした年少者を入れた場合に、一体どうなるかということを考えなくてはなりません。
労働大臣は、イギリスでは十五才以上を認めておるから、イギリスですら認めておるから、わが国に認めるのは当然だというようなことを言
つておりますが、イギリスの実情は、
日本の炭鉱の実情とは雲泥の差がございます。しかも、今日世界各国の実情を見まするならば、アメリカ、南濠州、フランス、ポーランド、カナダ、トルコ、アルゼンチン、チリー、フインランド、ルーマニヤ、ユーゴ等は「十八才未満を厳重に
禁止しております。ブラジルのごときは二十一才で押えておるのでございます。この事実をことさら隠蔽いたしまして、イギリスの例をと
つて、今回の提案の理由の
説明にしておられますところの真意を疑わざるを得ないのでございます。私
たちは、厳格なる
條件を付して入坑を許す、しかも技能養成で、一般の坑内
労働ではないからいいという
政府の言い方でございますが、これはま
つたく詭弁にすぎないと考えます。私は、本来技能養成というようなものは、長期の講習を必要とするところの特定の技能者を、
労働過程において養成するために必要なる場合、あるいは第七十條によ
つて行うものであるというように言
つておりますが、私
たちはこうした
條項によ
つて、はたして巌重なる監督ができるかどうかという点は、今日の
日本の津々浦々にあるところの実情を見ただけでも、明確にその行政監督が行き届いていないということを、はつきりといわざるを得ないのでございます。私はこうした
観点から、この問題にしては、重要なる反省を促すとともに、わが党が提案しておりますところの、この点の削除ということは当然であろうと考えるものでございます。
さらに先ほど
森山委員も申しておりましたが、七十六條の問題、あるいは十二條の問題、あるいは八十一條に
関係いたしますところのいろいろな
問題等につきましては、今日長期療養を必要といたしますところの
職業病、あるいはその他のために休養をいたしておりますところの人々に対する標準賃金のスライドというものは、当然のものでなくてはならぬのでございます。こうした点については当然
改正しなければならない点があるにもかかわらず、そうした点等については、何らの考慮をめぐらしておりません。今日、三年前の人は、わずか三百円程度の標準賃金で療養をしなければならないというような、実にみじめな状態に置かれておるということも、
労働相自身よく知
つておられるような実情でございます。私
たちは、こうした点等を考えてみましたときに、どうしても、今回提案されましたところのこの問題に対しましては
反対するとともに、私
たちはむしろ進んで、
独立後の
日本のあり方というものは、御承知のごとく、もつと進んだところの
労働立法を確立し、しか一元化されましたところの
労働行政の上に立
つてそうして
日本の再建のために
努力せしめるようなあり方に進まなくてはならぬと思います。
私は、最後に申し上げます。
日本は今日資源がございません。しかも資金もないのです。
日本にありますものは、ただ一つ、
労働力があるばかりでございます。敗戦後の
日本が立直るかどうかということは、この唯一の資源でありますところの
労働力をいかに活用するかということが、今日ただ一つ残されておりますところの、
日本再建の唯一の資源でございます。私はこの点に関しましては一
政府部内におきましても、大蔵省の勢力が非常に強いから、
労働行政の面におましては、予算その他の面についてもいろいろ
制約されております。むしろ
日本の
政府部内においても、
労働大臣の地位が閣内における一番右翼の地位にな
つて初めて
日本の再建がほんとうに光明に輝くと私は考えます。私はそうした
観点に立
つて、今後の
労働行政の面を考えてみましたときに、いたずらに末梢的な問題に対する
改正でなくして、進んで
労働階級の協力を求め得られるような状態に
労働立法を改善してこそ、初めて独場立後の
日本の生きる道があるということを付言いたしまして私の
説明にかえる次第でございます。(拍手)