○
野々山参考人 私は
国鉄労働組合並びに全
専売労働組合を代表いたしまして、ただいま
国会に提案されておる
労働関係調整漁等の一部
改正に関して
参考意見を述べ、各位の
参考にしていただきたいと存ずるのであります。
今回提案されております
労働関係法全般に対しての
意見については、すでに、一昨日、昨日ともに
労働者側の
委員が公述いたしておりますので、一般的な問題についてはなるべく省略させていただいて、私
どもが、
公労法が
制定されて以来二年有余、実際に
仕事をや
つて参
つたものといたしまして、
労働問題を
解決するためにつくられておる
法律は一体どうあ
つたらよいのか、こういう
観点から申し上げたいと思うのであります。一般的に申し上げまして、いろいろの
言葉は使われておりますが、今回の
法律自体を、私
どもすなおに
労働者の一人として受取
つてみる場合、最もさわるべきところにさわ
つていないし、
さわつたところが実はさわるべきところでなか
つたというところにあるようであります。特に
緊急調整の問題を中心といたしまして、さらに
調停請求却下の
権限等は、実質的に
労働者の
基本的な
権利を
国家公共の
福祉に反するという名のもとに制限しようとするのであります。一体
労働問題を
取扱つてみる場合に、
法律で何もかも縛りつけて行くことが、実際問題として友好的に
労働問題の
解決なり、それを通じての
産業の再建なり、復興なりというものを貫徹することができるだろうかといいますと、私は
労働問題は、そう簡単に
法律だけで縛
つて問題が
解決するものでない、こういう
基本的な
立場を持
つておるのであります。また実際問題として見ましても、何もかも几帳面に行くということでなくて、その
基本はやはり労資の自主的な責任というものにゆだねることによ
つて問題が
解決すると思うのであります。そういう
意味からいたしまして、
労働組合法並びに
労調法の一般的な
改正は、私
ども今回長い
間労働関係法審議会におきましても
主張いたして参りましたが、今回出ております
政府案はきわめて遺憾でありますが、
審議会等の
意見も十分に盛られておりませんし、さらにほんとうの
意味で一体
労働問題を友好的に
解決して行こうという
思想があるのだろうかと疑わざるを得ない点を遺憾に思うのであります。
さて
公共企業体労働関係法に眼を移してみますと、
卒直に申し上げてこれまたきわめて遺憾な話でありますが、
公労法ができましてから三年間、年末行事の
一つといたしまして、
国会の両院の大問題にされました
仲裁裁定はどうあるべきであろうかということについて議論された問題については、何ら触れるところなく、末梢的な問題にだけしか触れておらぬ。今日まで三年間裁定問題をめぐ
つて国鉄、
専売等の
労働組合ないしは
経営者側を含めましていろいろ失敗もし苦労をいたしました問題を
解決していないのでありましてきわめて遺憾に思うのであります。
さて具体的に私は今回提出されております
法案について、実際問題を扱
つております者の
立場から論及し、
先生方の
批判の材料に供したいと思うのであります。逐条的に特に問題になる点を指摘いたしまして
批判をし、さらに私
どものこうありたいと考えますことについて述べたいと思うのであります。
第一は、
団結権に関する問題であります。
従前の
法律によりますと、
公共企業体の
職員でございますれば、
組合に加入することができない。さらに
役員になることができない。また
組合員になる者の
資格要件については、
労働組合法の二条の
適用を受けておりますにもかかわらず、さらに
法律四条に基きまして機密の
事務を
取扱う者ないしは
管理、監督の業務に従事する者ということで、さらに
条件を付加し、さらにこれを
政令でも
つてきめるということにな
つておるのでありますが、それから
公共企業体の
役員及び二箇月
未満の
雇用契約を持つ者については
組合に入ることはできないとあります。
役員については問題はないのでありますが、二箇月
未満の
雇用契約の者については以下申し上げるような
理由でたいへん問題があるのであります。
一体公共企業体の
職員なるがゆえに、あるいは国が
全額出資をいたしている
企業体の
職員なるがゆえに、
団結権について
労働組合法の二条の
適用をさせておきながら、さらに
公共企業体労働関係法でそれを
規定しようといたしていることは、一体どういう
理由なのか、私
どもにはよくわからないのであります。根本的に
国家公共の
福祉という
言葉はあまり当らないのではないかと思うのであります。
従つてこのあたりでは国が
全額出資しておる
企業体の
組合であろうとも、先ほ
ども岡本参考人が申し上げましたように、
憲法がい
つております
労働者でもあり、当然
労働組合法の
適用を受けておる
労働者でもあると思います。
従つてここで新たに別な
労働者というものができて来るはずはないと思うのでありまして、当然この点は
労働組合法の
適用を受けてしかるべきものだ、こういうふうに思うのであります。
さらに
職制の問題にいたしましても、今回の
改正法によりますと、
不当労働行為制度との
関係と並行いたしまして、今回の
労働組合法の七条の各号の
規定を
適用いたしまして、
従前の
公労法第五条
不平等取扱いの
規定を廃止いたしました。この点については一歩前進しているかの感があるのでありますが、七条一号の
但書の
職制に関しては、これを排除をいたしておるのであります。私
どもは
公共企業体の
労働組合といえ
ども、りくつ拔きに何もかもオープン・シヨツプではいけないのだ、クローズト・シヨツプ・ユニオン・シヨツプでなければいけないのだ、こうい
つておるのではないのであります。
現行労働組合法の七条一号にありましては、同一の
事業場内において過半数の
労働者諸君が賛成した場合に
限つてユニオン・シヨツプを採用してもよい、こう言
つておるのであります。
公共企業体の
職員といえ
ども、やはりそうい
つたくらいのことは認められてしかるべきだ、これを制限する
理由はないと私
どもは思うのでありまして、きわめて遺憾に思う点であります。
さらに先ほどちよつと触れましたが、
不当労働行為制度であります。
憲法二十八条に
規定しておる
団結権を保障するにあた
つて不当労働行為が
団結権を
侵害するものを守る
規定であります。
一体公共企業体に
団結権を認めておるのにかかわらず、
不当労働行為制度の一部を
適用して、今回
法律の中できわめて遺憾に思うのは、
不当労働行為が事実あ
つて、それを摘発され、
仲裁委員会の決定に基いてそれが
違反であると判断をされ、
命令なり指示がなされた場合に、これを履行しなか
つたものについて
救済の方途が講じられていないのであります。これは一方で
不当労働行為制度を
適用しておるのだ、こういうふうに言
つておるのでありまするが、実際には
経営者側が
不当労働行為を取消しなさいと命ぜられても、
命令は受けましたが、取消さないと言
つたら、それでおしまいで、完全に
団結権というものが保障されるのか、一体
不当労働行為制度の本旨が保障されておるのかということになるのであります。ぜひともこの点については
労働組合法の二十七条及び二十八条、三十二条の
適用がされるようにしていただきたいと思うのであります。そういたしませんと、やはり
公共企業体なりあるいは今度新しく
法律に参加をいたして参ります電通、
郵政等、あるいはその他の
現業部門の長に対して
本当労働行為の取消しがなされても実際問題としてかりに首を切られた場合に、それが
不当労働行為であ
つたということにな
つても、
救済がされなければ何の効用もないの港あります。これは何か
法律案をつくられたときの誤りではないかと思うのであります。
さらに
組合の
資格要件と
審査に関する問題であります。今回の
改正によりまして、今まで
労働組合法の
五條ないしは二条の
適用を受けておりました
規定の中で、さらに
公共企業体の
労働関係法でよく似たことを七めんどうくさく
条件をつけて、これこれの
条件が満たされなければこの
法律に
規定する
権利を得ることはできないという中に、外部の
会計監査人の云々ということが同じような
規定でさらに重複して併課されてお
つたのであります。これが今回の
改正によ
つて改められたことについては私
どもは多少進歩したと思うのでありますがしかし
資格審査については、
従前通り附則の三項さらには三十八条をもちまして、
労働大臣の
行政権限なりあるいは
労働省の
行政範疇にその
審査行為あるいは
認定行為をゆだねておるのであります。これぐらいの
仕事については実は直接お役人にや
つていただくほどの問題でもないし、もつと
労働関係というものを民主化して行こうというならば、三
者構成である
労働委員会なりあるいはほかの
判定機関において
審査をさせることが必要ではないか。さらに
労働組合法の五条にきめております
事柄等については、最近の事情からいたしますならば、
かくまで
法律が指導をして行かなければならぬ事態にはないと思う。さらに結社、
団結の自由というものを認めておる建前からいたしまするならば、その筋は貫いていただきたいと思うのであります。
従つてそういう
意味から、五条の
改正と
審査関係の義務についてはもつと民主的な方法で、直接お役人が
仕事をするというような形から改めていただきたいと思うのであります。
第三は、
組合事務専従者に関する
公労法七条の
規定であります。この
規定は、
公共企業体が一定の数を限
つて組合事務に専従する者を許可することができる。但しその場合給与等は支払
つてはならぬ、こういう
規定であります。私
どもは、
組合事務専従者に給料を払
つてくれということは言
つていないのであります。でありますから、私
どもは全額
組合員から醵出をいたしました
組合費でも
つて組合事務専従者の給与その他全般についてまかなうことに了解をし、実際問題としてそうや
つておるのであります。しかるにもかかわらず、
組合専従者はこれこれであるとい
つて企業体がか
つてに人数をきめてしまうのは、少し
労働組合に関する干渉ということになるのではないか。さらに実際問題を見てみますと、具体例で恐縮でありますが、昨年まで私
どもの
組合では六百七十名ほどの専従者がお
つたのであります。ところが今年度になりまして、実際問題としてある
程度まで協議をいたして参りましたが、いよいよ話がまとまらぬということで
法律七条を発動いたしまして、一方的に約百名
程度の減員を強行されたのであります。一体今日の段階において、
労働組合を民主的に正常に育成しようとする御意図がおありであるならば、そうい
つた法律をお入れにな
つておくことは正常ではないと思うのであります。一般の
労働組合の場合でもこういう
規定はないのでありまして、ぜひともこれについては、私
どもがか
つてにきめるものをも
つてきめてくれという言い方をしているのではなくて、
労使の協議によ
つて専従者の数、
条件というものをきめるのだという
労使対等の
条件をこの際にも
主張をしておきたいと思うのであります。
第四は、
団体交渉に関する
規定であります。
一つは
団体交渉の
範囲であります。第二には交渉単位制の問題、第三には交渉
委員に関する問題であります。
団体交渉の
範囲に関する八条の
規定では、今日まで実際問題として起りましたことについてこの際ごひろう申し上げ、御
参考に供したいと思うのでありますが、第一項は、
公共企業体の
管理、運営に関しては一切
団体交渉をや
つてはいかぬということであります。第二項は、次に掲げる
事項については
団体交渉の対象にし、これについての
労働協約を締結することを妨げないというわけで、八項目の
規定があるのであります。実際問題として
労使間で今まできわめて深刻な論争をいたした問題は、ある事案について、一体これが
法律第八条一項に言
つております
管理、運営なのか、
団体交渉の対象である
労働条件なのかということで
一つの争いが起き、問題が
解決しないで余分な紛争が起
つておるのであります。
従つてここに
一つ問題がある。第二には、八条二項に並べてあります
事項は、一体制限列挙なのか、例示列挙なのかという問題のために、
労使間できわめて深刻な争いが起ります。第三には、この中に安全という字句がありますが、一体
労働基準法から見まして、安全と衛生とは切り離せるものだろうか。おそらく切り離せないものであり、
労働基準法においても
労働衛生と安全とは不離一体の扱いをしております。それにもかかわらず、
公労法の場合には、安全だけだというようなことで、一体衛生に関する問題は
労働条件ではないのかというような問題、あるいはそれでは一体衛生という問題は
団体交渉の対象にならぬのかとい
つたような問題で、これまたよく議論が起るところであります。さらには福利厚生等については当然
団体交渉の対象であるべきはずであると私
どもは思うのでありますが、
法律に書いてないので
団体交渉の対象にするわけには行かぬということで、実は
法律は、交渉
委員というもので
団体交渉を円滑に行
つて労使間の紛争を
解決するという目的で、
団体交渉も認めておるのでありますが、その認めた
法律が実は余分な争いを起すようにな
つておるのであります。従いまして、こういう
規定につきまして、
従前私
どもが
労働組合法の
適用を受けておる当時から、たとえば人事権に関与しては
組合がどういう
立場になるのか、一体
経営権にそれぞれの
組合がタツチしたらどうなるかということについては、私
ども十分承知いたしております。さらに当然慣行ができつつあります。でありますから、願わくば
団体交渉の
範囲対象を
規定することによ
つて、余分な
労使間の争いが起ることのないようにしていただきたい。でありますから、八条二項は削除を願いたいと思います。けれ
どもいろいろ議論もありましようから、むやみやたらに削除するということではなくて、この方式は制限列挙だという解釈をとらずに、例示列挙だという解釈をと
つていただきたいのであります。さらに今回の
法律改正によりまして、
従前就業
規則が
団体交渉の対象にな
つてお
つたものが削除されておるのであります。そのために実に
労働省の
事務官は、今回の
改正によ
つて多少
範囲が広ま
つたのだ、こういう説明を私
どもにはいたしておりますが、実際問題としては就業
規則が
団体交渉の対象
事項から削除されたことによ
つて、
労使間では
範囲が狭まるとい
つたような現象が起るのであります、この点は
従前認めてお
つた項目でありますから、もしこの
規定を入れるならば例示の方式をとり、さらに具体的に
労使間の争いの起らないように十分な配慮をされ、就業
規則等についても
団体交渉の対象である旨を明らかにしていただきたいと思うのであります。
第二の交渉単位制の問題であります。具体的な問題を提供して恐縮でありますが、今日私
ども国鉄労働組合と機関車
労働組合というものができて、交渉単位の問題でいろいろ論議をいたしております。一体交渉単位制というものは何のために取入れられたのだろうかということでありますが、一言にい
つて、当時の法
制定の経緯から申しまして、単位というものをきめ、交渉
委員という特定の排他的代表者をきめることによ
つて、共産党を
組合の支配から排除しよう、こういう意図があ
つたように思うのでありますが、今日の現状、
組合の内部ではそうい
つたことはないと思います。こういうものをきめなくてもよいと思います。さらに立法者は、交渉単位制というものをつくれば、
労働組合の内部の統一なり、あるいは運営なりというものが簡単になり、しかも
組合の民主化を促進するよいものだから、ぜひこの際取入れるべきだという
主張を終始なされてお
つたのでありますが、実際問題といたしましては、
日本の
労働組合の場合は諸外国の場合と違いまして、ほとんど
産業別なり企業別に
労働組合を
組織いたしております。そういう中に単位制というものを持
つて参りますれば実は効用が逆に、害だけを表面に出すようになるのであります。そのためにまた
労働省等においても余分に予算を組まなければならないし余分な
法律も
政令もつくらなければならぬというようなことが今までもなされておる。さらに毎年毎年行事のようにな
つて来ておることはきわめて遺憾であります。もつと
労働組合法の筋に合せておいたら、何もこんなことのためにむだな経費を使い、
労働法律をつくらなくてもいい。こういうことでや
つて行けるのでありますから、この際ぜひ廃止をされることを要望いたしたいと思うのであります。大臣も傍聴席におられるようでありますが、私
ども公労法の
改正について大臣に要請をいたしましたときに、大臣からもなるほど交渉単位制はよくないことだ、おれも直すことに賛成しようというお
言葉をいただいたのでありますが、
法律案は直
つておらないのでありまして、まことに残念に思います。どうぞ御協力を願いたいと思います。
第三には、交渉
委員制度の問題でありますが、これまた一般
労働組合法の
適用を受けてない
組合といえ
ども当然法人権を持ち、あるいは所要の手続をも
つて資格を取得いたしておるのであります。でありますから
団体交渉に関してのみ交渉
委員という特定の制限を附加しなくても、当然
労使対等の條件を保障される
立場に立
つておる
労働組合法でありますならば、交渉
委員制度は当然排除されていいものだ、取除かれていいものだと思うのでありまして、交渉単位制を含めてこの点も
修正願いたいと思うのであります。
第四は、調整機関と
判定機関の問題であります。今回の
法律改正によりますと、
従前の専売、
国鉄の
調停委員会を
一つにいたしまして、
公共企業体等
調停委員会と
公共企業体等
仲裁委員会ということで、やはり
従前の
考え方をそのまま取入れられて、多くの現業
関係の企業が
公労法の
適用を受けることになりましたから、
一つの
調停委員会、
仲裁委員会にすることにな
つておるようでありますが、実際問題を私
どもが扱
つて参りますと、ぜひこの点は御注意願いたいと思うのでありますが、調整機関が、
仲裁委員会なるがゆえに、
調停委員会なるがゆえにということで、実は
労使関係の紛争の中に入
つて円満
解決をする努力を果されるはずの
調停委員会と
仲裁委員会が、上だ下だとい
つて機関争いをして、お前の方から
仲裁請求が来ていないからおれの方は
仲裁を開始しないとか、あるいは
調停委員会が
調停打切り宣言をしないから
仲裁を開始しないということで、
労働紛争がいたずらに長びくのであります。でありますから
仲裁と
調停は別々にさるべきでなくて、もつと機動的に迅速に
労働争議を
解決するという建前を立てるならば、これを一元化することが必要だと思うのであります。そうしますならば
労使間の紛争ではなくて、
仲裁委員会と、
調停委員会との争いで今まで遅れて、そのために紛争が長びくというようなことが排除せられるのでありますから、ぜひこの点は改めていただきたい。同時に
公共企業体等
調停委員会なり
仲裁委員会ということで、一般の
労働調整
委員会と切り離して処置されておるのでありますが、この点につきましては、私は
労働争議の
解決に当られる
労働委員会なりあるいは
調停委員会なりが、それぞれの企業の実態なり、
労使関係に精通をされるという
意味で、単能化されることについては賛成であります。しかしながらそのことのゆえをも
つて調整機関を多くつくることはどうしても、実際問題にあた
つて労働争議の円満
解決にはさほど役立たない結果になります。さらには
調停委員会と
労働委員会とい
つたようなことでいろいろな争いが
事務上の問題で起
つておるようでありまして、できるだけこういうものは一元化して行くことが必要だ、
従つて調停委員会、
仲裁委員会というものを
労働委員会の管轄下に全部含めていただくように願いたいと思うのであります。
労働委員会の構成人員等を多少考えていただきますならば十分業務は遂行できる状態にあると思うのでありまして、
法律でその点をぜひ改めていただきたいと思うのであります。
さらにもう
一つ、二つつけ加えたいのでありますが、
一つは最初に申し上げましたように、現行
公労法の十六条第一項、二項と三十五条との
関係であります。前段申し上げましたように、毎年の年末
国会で専売、
国鉄の
仲裁裁定の問題でいろいろお話合いを願
つておることも、実は
公労法を
制定された当時の立法者の意思は、ああい
つたようなことが起るとは毛頭考えていないし、同時に
マ書簡によ
つて争議権は認めないが、これにかわる
仲裁制度によ
つて公共企業体等の
職員の生存権と
基本的人権を保障する建前に立つのだ、こういう強い要請に基いて
仲裁制度というものができたのであります。ところが実際問題にな
つて参りますと、賀来
労政局長でさえも——
法律をつく
つた当時の解釈が政治的な場面になりますと通用しないことにな
つてしまうことは遺憾であります。こういうようなことだけでなくて、そのことのゆえをも
つて、実際問題として
公共企業体等の
職員の給与問題は、今日なお
昭和二十四年に起りました事件が
解決しておらない。おそらく今月か来月中には最高裁の判決が出るといわれておりますが、裁判までかけてこの問題を争わなければならないとい
つたようなことは、およそ
労働問題の
解決ということには縁の遠い話でありまして、本筋を離れた問題であると思うのであります。そういう
意味からいたしましても、ぜひとも
仲裁裁定の効力並びにこれに対する
取扱い方について改めていただきたいと思うのであります。
ここに私
どもの
改正しようと考えております条文を朗読いたしまして御賛同を得たいと思うのであります。第三十五条の一項として、「
労働委員会のなした裁定は
関係当事者及び
政府をも拘束する。」第二項として、「裁定は
労働協約と同一の効力を有する。但し左に掲げる場合については、その手続きを経なければならない。(一)
公共企業体の予算上又は資金上直ちに支出不可能な
内容をもつ裁定又は
協約については、
国会に場おいて所定の措置がなされるまでその履行が猶予される。(二)前項の
協約又は裁定がなされたときは、
政府はその締結後十日以内にこれに必要な予算を付して
国会に付議してその承認を求めなければならない。但し、
国会が閉会中のときは、
国会召集後五日以内に付議しなければならない。」こういうふうに改めていただきたいと思うのであります。すなわち
仲裁裁定というものが両当事者を拘束する、一般的建前については
労働組合法の場合といえ
ども同一であります。さらに
労働協約と同一の効力を持つということは一般的に異論のないところであるにもかかわらず、
公共企業体労働関係法の十六条の運用については、
仲裁裁定が
調停案のごとく扱われていることは、それによ
つて一方に犠牲を負わせ、本質をゆがめておるものといわなければならないのであります。
従つてぜひとも先ほど申し上げましたように、改めていただくことを御賛同願いたいと思うのであります。
最後に
争議権についてであります。
公労法が
制定されましたときは、何とい
つても占領政策遂行ということのために
マ書簡が発せられ、これに基いて
政令二百一号が発令され、そして
公共企業体労働関係法なり、また国家公務員法ができましたのは周知の事実でございますが、一体
日本の
憲法は、
労働者について
法律でも
つて一切を制限することが許されて曲るかというと、私はおそらくそうでないと思うのであります。
従つてそういう建前からするならば、先ほ
ども岡本参考人が言われましたように、
憲法第十二条第十三条の
公共の
福祉の建前から論及され制限がされてお
つたことになる以外にないと思います。
従つてその
事業の性質からいたしまして、
労調法第八条にきめておるように、専売、
国鉄が公益
事業の中に含まれることはやむを得ないと私
どもは思います。さらにこれに独占企業だという
理由がつくといたしますならば、若干の制限が附加されることはやむを得ないといたしましても、根本的に
争議権を否認することは絶対に私は許されないと思うのであります。
従つて争議権は認めるという
立場に立ち、若干の制限について、私
ども労働組合は一切合財あ
つてはいけないということを強調しているのではないのでありまして、私の真意を十分了解願いたいと思います。
一つは公益
事業の指定、さらにはそれに伴
つて冷却期間なり予告制度なり、事情によ
つては職権
仲裁もやむを得ないと考えます。でありますからぜひともこの際本来の趣旨に立ちかえられまして、
争議権を認められるよう処置されることを切に要望いたしたいと思うのであります。
以上
公労法の今回の
改正案について
批判し、私
どもの考えておりましたことについて述べたのでありますが、特にこの際私は専売、
国鉄を代表いたしまして皆様方に要請いたしたいのであります。
労働関係法によりましてある
程度緩和をされたといたしましても、
審議会等におきましても問題になりましたが、一体専売公社と
労働組合、
国鉄公社と
労働組合との
関係において、完全な
意味で当事者能力を持
つているのか、当事者能力を持たない者同士で——公社側に能力を持たせないでおいて、問題の円満なる
解決を期待するのが正常な
関係であろうかというと、これは少し無理があると思うのであります。で私は
労使対等の
条件に立たせることを
主張しているのでありまして、その
意味でこのことが
労働問題の円満
解決、早期
解決のかぎであると考えます。
従つてそういう
意味では
日本国有鉄道法なり専売公社法によりまして、給与準則というものをきめさせ、さらに予算総額の
範囲内において給与準則をきめ、これを一歩も出てはならないというようなものもあるし、あるいは予算総則におきまして、給与の総額についてはこれよりは一銭も出てはならないとか、予算の流用をこの項に関してはすることはできないとか、そういうような措置をされますと、
労働関係法におきましてかりに先ほど申しましたような
法律ができたといたしましても、ほんとうの
意味での企業者側における能力というものが欠けておるのであります。でありますからこれでは問題の
解決にはなりません。現行法にいたしましても同じことが言えるのであります。本
委員会が
労働法の
改正の問題を論議されるにあたりまして、これらの問題を根本的にぜひ御研究をなさることが、ほんとうの
意味での
労働法の
改正になると思うのであります。その点をつけ加えまして
公共企業体側の
労働者を代表いたしまして
参考意見を述べた次第であります。以上で終ります。