運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1952-05-17 第13回国会 衆議院 労働委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年五月十七日(土曜日)     午前十一時七分開議  出席委員    委員長 島田 末信君    理事 倉石 忠雄君 理事 福永 健司君    理事 船越  弘君 理事 森山 欽司君       天野 公義君    塚原 俊郎君       三浦寅之助君    山村新治郎君       川崎 秀二君    熊本 虎三君       柄澤登志子君    中原 健次君  出席国務大臣         労 働 大 臣 吉武 惠市君  出席政府委員         法制意見長官  佐藤 達夫君         刑 政 長 官 清原 邦一君         労働事務官         (労政局長)  賀来才二郎君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      亀井  光君         労働事務官         (婦人少年局         長)      藤田 たき君  委員外出席者         検     事         (検務局公安課         長)      神山 欣治君         鉱務監督官         (資源庁鉱山保         安局長)    伊藤 俊夫君         専  門  員 横大路俊一君     ————————————— 五月十六日  日雇労働者賃金値上げに関する請願大石ヨ  シエ君紹介)(第二七六八号)  帝国石油労資紛争に関する請願森山欽司君  紹介)(第二八〇五号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  公述人選定に関する件  労働関係調整法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第二二〇号)  労働基準法の一部を改正する法律案内閣提出  第二二一号)  地方公営企業労働関係法案内閣提出第二二二  号)     —————————————
  2. 島田末信

    島田委員長 これより会議を開きます。  前会に引続き、労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案一括議題といたします。質疑を続行いたします。熊本虎三君。
  3. 熊本虎三

    熊本委員 数日間にわたり、あらゆる角度から御質疑がございましたので、なるべく重複しない範囲でお尋ねをしたいと思います。特に労働大臣に冒頭お聞きしておかなければならないことは、労働関係法保護法であるか規制法であるかということであります。私どもは言うまでもなく労働関係法保護法であるという観点に立つて論じたいと思つておるのでございますが、労働大臣いかがお考えになつておるか、お尋ねしたいと思います。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お尋ねの中で労働関係法と申されておりますが、今回提案をいたしております法律案は、内容的に申し上げますと、労働関係調整法の一部改正に関する法律案公労法の一部を改正する法律案労働組合法の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案、その上に新しく地方公労法案を提出いたしております。いずれも労働立法でありますから、もちろん労働者保護目的としておりますが、労働関係法は、御承知のように労使間の紛争いかに平和的に解決して行くかという問題を規定しておりますので、その点におきましては、単に労働者だけでなしに、労使間の紛糾を調整する。それにはあわせて一般公共の立場からもそれが平和的に解決することが望ましいのでございますから、その点についての処置も講ぜられておることを御了承願いたいのであります。
  5. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまの答弁によりまして、大体労働問題の保護立法であるということをお認めになりました。ただ調整法は文字の示すごとくに、これは調整するにはおのずから一定の限度があるというふうにお話になりましたが、しかし調整法の二条、三条を見ましても、ことごとく自主的に平和解決することを中心にやつておるのであつて、他から介在すべきことは、これは最小限にとどめてあると私は解釈するのでありますが、その点いかがお考えになりますか。
  6. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お話のごとく労使間の紛争は、労使間が自主的に解決すべきことが原則であります。これは御指摘通りであります。従いまして労働関係調整法にもその原則はうたわれており、また今後といえどもそうあるべきであると思います。ただおそらく熊本さんの言わんとされるところは、そうであるにもかかわらず、緊急調整の規定を設けたことについてのお考えであろうと思いますが、緊急調整の条項をごらんいただきましても、その点は明瞭になつておりまして、労使間の関係は自主的に解決さるべきであるが、それが遺憾ながら解決をされないで、しかもその紛争公益事業でありまするとか、あるいは大規模争議であつて、これをほつておけば国民生活に重大なる障害を与えると認められるときに、緊急調整の措置を講ずる、こうあるのでございますから、私どもはできるだけそういう事態に立ち至らない以前に解決されることを希望するものでございます。
  7. 熊本虎三

    熊本委員 頭がいい大臣先まわりをして、どうも発言を封鎖しようという御意思のようでございます。お説の通りで、私は結論はそこへ持つて行こうといたしております。ただそれ以前にお尋ねをしたいことは、しからば今回提案されております改正案は、特に調整法においては、規制の面を強く出しておる、こういうことに解釈してよろしゆうございますか。
  8. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お考え方によりますれば、規制の面が現われております。しかしながら先般も申し上げましたごとく、争議というものは自主的に解決されるべきものではありまするけれども、しからば争議権をもつてストライキに入れば、常に思うようになるのだというわけではないのでありまして、この点は長い間そういう労働運動に御体験のある熊本さんもおそらく御了承のことだと思います。しかも今指摘しましたような公益性の強いものになりますと、ストライキをやりましても、一般輿論の支持を得るということはなかなかむずかしい点もございます。それから労使間の紛議というものは、行きがかりによりますと、どうもどつちも引込みがつかないという場合も往々にしてあるのであります。そういう場合に争議をしばらく待つて、そうして間に人が入つて平和的に解決するということでございまするから、その平和的に解決することが一方的に偏しまして、使用者側に有利な裁定をするということになれば、勢い中労委等労働者側も信用しなくなる。今日七年の間経験いたしまして、ようやく労働委員会というものも労使間が信用して来ておるゆえんのものは、やはり公正な取扱いをして来ておるからであります。でありまするから、ストライキをやれば思うようになるのだということを前提に置きますれば、制限されることは非常に不利になりまするけれども、そうではございませんので、いたずらにストライキに入つてお互いの犠牲を大きくするよりも、平和的に、合理的に解決をして行く、こういうことが労働者にとつても有利である。また一般大衆にも迷惑が少くて済む、こういう観点から規定したものであります。
  9. 熊本虎三

    熊本委員 ただいまの大臣答弁は本会議でも聞きましたし、委員会でもたびたび繰返されていることでございます。もちろん労働争議をやることが組合側といたしましても目的ではない。従つてその結果はいずれがいいかというようなことについては、その情勢によることであつて大臣のお説の通りであります。私どもは御承知通り同盟運動に参加いたしておりますし、特に私が直接関係している産別等におきましては、いまだ組織以来一回もストライキをやつておりません。しかし条件においては他の産業に断じて劣らない条件をとつている。私はその体験者であります。従つてそういうことを大臣から一々御説明を受けなくても、これは労働組合自身が判断し、労働組合自身が自主的になすべきことである。それを何かしら労働組合はいまだ幼稚にして、その指導理念に透徹するものがなくて、お役所がさしずをしなければ、むだな争議をやるかのごとき前提の上に立つて言われることは、はなはだ失敬千万だと思う。要するに私の聞こうとすることは、そういうことではないのであつて、今回出された労調法に関する限りは、規制の面を強化しようということであるかどうかということである。一々あげるまでもなく、たとえば十八条の第一項及び第三項に至るものについて、従来公共事業限つてつたものを、もしくは特別の性質の事業あるいは公益に著しく障害ありと認めたるもの、こういうことまで拡大して、そうしてこれに対する調停申請却下をつけ加えておる。こういうことは労働組合が自主的にあれということで、労働組合法の中で、断じてこれが単なる思想団体であつてもいけなければ、政治団体であつてもならない、同時に資本家の介入を許すべきものであつてはならないという労働組合法規制があるほど、自主的でなければならない労働組合行動について、政府がタッチしてさような干渉をするということは、労組関係法の根本に触れて、これは逆転のおそれありと私は言わなければならないと思う。そういうことについていろいろと御説明がありましたが、なるほど労働組合が終戦後今日までの間において、大臣が言われるように、ややともすると多少本質から逸脱した時代もあつたかもしれない。しかしもしそれらがありとすれば、自主的な方向に向つてこれを是正することに育成、強化しなければならないはずである。すでにそれではだめであるという前提の上に立つて官庁がこれに介入し、労働組合の自主権を抑えて行くというようなことは、どこから考えても進歩的にあらざる逆転改正であると私は解釈するのであるが、大臣いかがお考えでございましようか。
  10. 吉武恵市

    吉武国務大臣 原則的には熊本さんのおつしやる通りであります。しかし熊本さんも御指摘になりましたように、あなた方の指導されている総同盟だけが日本労働組合ではないのでありまして、過去七年の間におきましても、相当労働争議において思わしからざる現象のあつたことは、あなたも御指摘になつた通りであります。そういうことは指導によつて組合健全化すべきでないかというお話でございますが、その通りでございます。私はそれについては今後といえども努力を払うつもりでございますけれども、遺憾ながらそう簡単に急速に心配のないようにというわけにも参らないのでございまして、やはり一方公共福祉のために、最悪の場合においてはそういつた争議によることなしに、合理的に解決するという道をも講じておくことは必要だと思います。このことはいつも御指摘しておりまするが、ただ日本における労働組合現状ばかりでなしに、アメリカのごとく労働組合については相当の年数を経て、相当健全化している国においてすら、緊急調整制度があるくらいでございますから、いわんや日本現状におきまして、この程度の緊急調整制度は必要であると私は解釈いたしております。
  11. 熊本虎三

    熊本委員 大臣のお言葉は、大臣自体としては非常に苦労をされているかと存じます。しかしそれは年寄りの冷水であり、親が自分子供に対していつまでも子供のような考え方を持つて心配し苦労するという体のところが多分にあろうかと存じます。御承知通り日本労働運動が、みずからの体験とともにだんだんと健全な方向にたどりつつあり、もしそうでない方向に多少あるといたしましても、それらは今後多少の時とともに、一切の運動健全化方向をたどるべき見通しはまさについているのであります。それを親心のいたすところであまりによけいな心配をされることによつて、合法的にあくまでも自主的な、しかも日本再建に、あるいは日本の経済に十分心している労働組合をもあわせ、すなわち精神的にも実際的にも不安の方向へ押しやるというごときことは、あえてこの際すべきでない。そういうことをされるがために、ますますもつて労働行政というものに不安を巻き起すのである。こういうような問題に関しては、当事者は十分考えてものをしなければならないと私はあくまでも考えるのであります。先ほど来もう本会議並びに委員会におきましても、大臣はみずからの考え方が是であつて、他の意見は  一考の余地なしというごとき信念と態度をもつて臨んでおられるようでありますから、あまりにこのことの押問答をしても時間が費えるだけかと思いますが、重ねて申し上げておきます。要するに将来いかなる世界的な偉材となろうとも、それが生れてすぐにそれだけの能力と行動力を持つことはない。ようやくにして過去を省み将来を思い、正常化せんとする労働運動に、逆手を使つてこれに混乱を与えるというようなことは、特に独立後の将来に対して単に労働行政の面ばかりでなく、日本再建のために、日本文化向上のために、あえてとらざるところと考えるのでありまして、私は重ねて御一考を煩わしたいと存じます。特に三十八条における五十日間の冷却期間でございますが、これは昨日も前田君からも懇々と申し上げましたので、あまり多くは申し上げませんが、これに関連して私はお尋ねしたい。警察官はなぜピストルを持つのか、予備隊はなぜ機関銃を持つのか、この点をお尋ねしたい。
  12. 吉武恵市

    吉武国務大臣 前段の問題でありますが、日本労働組合健全化して行くことについての期待は、私といえどもつておるわけであります。しかしながら熊本さんが心配がないとおつしやつても、それは御自分指導されておる総同盟については、あるいはその御確信があるかもしれません。しかしながら今回の破防法につきましても、労働三法にいたしましても、政治ストによつてでもこれに反対する。総同盟はそういうことはいけないから、おれたちはやらないという声明をされておる。これは健全なる組合としてきわめて適切なる御処置であると私は喜んでおる。しかしながらあなた方の組合のような行動をとられるのが全部ではないのでありまして、一部にはやはり違法だということはわかつていても、あえてこれを行うという組合もあるわけであります。ですからそういう現実のもとにおきましては、まだやはり心配がないとは申しがたいのであります。  なお後段の警察官はなぜピストルを持ち、予備隊はなぜ機関銃を持つかというお尋ねでございますが、これはしばしば主管大臣からも申しておりますように、治安維持の上において必要な場合があり得る、こういうことでございます。
  13. 熊本虎三

    熊本委員 労働組合罷業権というものは一体どういう役割をするのであるか、重ねてお尋ねいたします。
  14. 吉武恵市

    吉武国務大臣 罷業権は私からよりも熊本さんに御説明願つた方がいいか思いますが、労働者労働条件維持改善のために、必要な場合にはやむを得ず憲法第二十八条によつて保障されたところによつて行使するものでございます。
  15. 熊本虎三

    熊本委員 国家治安を維持する警察官ピストルを持たなければならない。特に一旦不祥の起きた場合に、国民の血涙であるところの負担をもつてしても予備隊を増員しなければならない。こういうまつたく芳ばしからざる方向に向つておるのでございますが、これらはあえて持てる武器を濫用すべきものではない。もしそれが持たないからいつでもやつてよろしいということになるならば、たいへんな問題になると思うのでございまして、それと同じように、やむを得ざるときに行使するところの備えであると私は考える。労働組合が、相手が強欲非礼な暴虐無人な資本家であつて、当然与うべきものを与えざるときに労働組合が、最後のわれわれの権利たる労働争議を行使するということは当然である。その最後の行使し得るわれわれの罷業権というものを政府が制約して、一体相手方がどういう態度に出て来るかということの保障がつきますか。今までに現われておりまする多くの労使間の問題を見ましても、一たびドツジ・プランによつて自立経営、あるいは資本蓄積などという言葉がはやつて参りますと、そういうことに名をかりて労働条件の当然なる引上げを拒んでおる。しかもだんだんそういう空気が助成さるるに従つて、今日では平和条約たる労働協約の問題に関してすら、完全にこれを締結しているところが一体幾つあると思いますか。ことごとくがりくつをつけて労働協約の締結をも否認し、そうして国際的な情勢、国内的な反動への逆転とともにあえて専制にふるまつている。こういう日本資本家階級のいまだ進歩的ならざるものを相手に置きながら、単に労働階級の持てる最後最大権利を押えることに吸々として、はたして日本労働行政が完全に行くとお思いでしようか。あとから資料を出してもらいますが、労働協約というものはあなたが御承知通りに、労働組合が平和にものを処理したいと求めて、いわゆる平和条約を締結して、不祥事たる労働争議に持つて行くまいというところに労働協約を求めているのである。この労働協約を破棄しているのはだれであるか。ことごとく今日の悪徳資本家である。これらの資本家に対するところの規制一つもこの改正法ではないのである。そうしてただ労働組合にのみあらゆる面で大きな規制をし、特に罰則をも附加して、労働者を圧迫する方向へ持つてつておる。たとえて言いますと、基準法の問題につきましても、一々お答えになることは、国際労働条約でもこれをやつているんだ、だから決して無理ではないということを、何かしら鬼の首でもとつたようにおつしやるのでありますけれども、しからば日本の今日の経営者が、はたして欧米の経営者のように進歩的に理解を持つて、しかも国家再建のために産業に寄与しているものが一体幾人あるとお思いでしようか。私は国際労働条約に抵触するとかしないとかいうことではなくて、日本労働組合にまだ幼稚なところがあるとすれば、今日の資本家階級に無理解きわまる反動的な自己本位経営者多分にあることを知つている。それを何らこの改正法によつて独立を控えて、これから日本産業発展のためにと言われる大臣が、労働者のみに規制することを考えて、そういういまだ無理解きわまる資本家に対して何らの規制をしないという、一方的な片手落ちの改正法案は、私ははなはだもつてよろしくないと考えておりますが、重ねてお尋ね申し上げます。
  16. 吉武恵市

    吉武国務大臣 争議権労働者基本権であるから、これは絶対的なものであるかのごときお言葉でありますが、しかし憲法に保障いたしておりまする争議権は、同時に憲法においては十二条によつて公共福祉のために使わなければならぬということがございます。でありまするから、なるほど労働者の方から見れば基本権でありましようが、そうだからといつて、どんな場合でも、どんな方法でもやつでよろしいというわけのものではないのであります。従つて今回提案いたしました法律も、争議をしてはいかぬとは言つていないのであります。争議は起るでありましよう。好ましくはございませんが、自主的解決をして、そのときに思うように行かない場合にはストライキに入ることもあるでありましよう。初めからストライキに入つていかぬとは言つていない。ただ争議に入るが、その争譲がだんだん大きくなつて公益事業争議であるとか、あるいは大規模争議であつて、これを放置すれば国民生活に重大な障害を与えると思うときには、一時それをとめて、中労委にその調停、あつせんをしてもらう、こういうことであります。でありますから先ほども申し上げましたように、労働争議自体目的であるならば、五十日間制限することもおそらくそれは労働者にとつては困る。しかし争議権というものは、争議権そのもの目的ではない。労働者労働条件維持改善目的である。それであれば仲裁が間に入つて、そして公正な判断をしてまとめてくれるというならば、それによることは一向基本権の侵害ではない、かように私は存ずるわけ  であります。
  17. 熊本虎三

    熊本委員 どうも意見の相違かもしれません。私は労働省がお考えになつて、そして冷却期間の三十日を十五日にし、そのかわりに今度却下権は厖大な権利をとられたのでありますが、それでわかりますように、それは労組が単に罷業権を早く獲得したいということだけの従来の関係ではない。前田君も言つておりましたように、結局ストライキ権が行使されるというところにーそこまで行かなければ相手方はなかなか自己の腹を出さないのが、今日の資本家根性なんだ。それをたとえば労組罷業権を早く獲得したいということで、まだ機熟さざるにもかかわらず、調停するからという意味で却下権を獲得したり、あるいはそのために三十日はいらないということで十五日にされたりしておりますが、そのこと一つ考えましても、その責任は単に労働者ばかりではありません。おおむねの責任経営者側にあるのである。しかるにその経営者側は五十日間、吉田さんじやありませんが、葉巻をくわえてそつぽを向いておられるような特典を与えて、労働者罷業権を五十日間冷却するというがごときことは、私はどういう大臣の今日のお考えであろうとも、その結果は逆であるという考え方を強くするわけでございまして、この点については十分お考えを願いたいと考えております。なおいずれ逐条審議もあろうと思いますししますから、私は各論に触れませんけれども労調法に関する限りは、これはもうだれが何と言つて改悪である。しかもその改悪が苛酷なる労働者への権利の圧縮である、こう私は断定せざるを得ないのでありまして、この点は十分お考え願つて、同じ答弁ならばもういりません。  そこで私は、時間の関係があるということでございますから、逐条の問題につきましてはあとお尋ねをいたしますが、今資料をぜひ出していただきたい。労働基準法実施当初におきましては、一年間に全適用企業体の三倍の違反事件が起きております。今日ではだんだんとこれが是正指導されたとは思いますが、今日の基準局はおおむねさじを投げて、これらの摘発等ももういやになつておるくらいでありますから、その摘発件数を出してもらつたところで、大した参考資料にもなるまいとは存じますが、今日基準法についての違法事案はどのくらいになつておるかという参考資料、それからこれは賀来労政局長がよいだろうと思いますが、先ほど申し上げますように、昨年一箇年間において過去に労働協約があつたものが、それが今日無協約状態になつておるもの、それから労働協約を締結するために要する平均期間ーあるものは三箇月ないし六箇月、はなはだしきに至つては一箇年を要してなおかつ協約はできておらない。そのほとんどことごとくが、資本家の悪質なる利益本位の建前からできておらないのである。以上、一つは無協約状態のもの、一つ交渉に要する期間、これの参考資料を出していただきたい、かように考えるのであります。   次に地方公営企業の問題でありますが、せつかく与えられる法律につきまして、ないものを与えるという考え方であつてはならない。法制化するならば、その立法化によつて、より公平であり、妥当であるものを出されなければならない、かように考えます。大臣  はこれは今までなかつたものを与えるのだという、非常に恩恵的な方面の力をお入れになつておりますが、まずないよりましだという考え方は、はなはだよくないと思う。従つてこれが立法につきましては、どういう考え方でなされたか、一々項目も上げてはありますが、今日は内容は申しませんが、ほんとうに地方公営企業体に関して、労働者の権益を守るために、最大の便益を与えるというお考えでこれを立案されたかどうか。基本的な態度を一応お聞きしておきたい、かように存じます。
  18. 吉武恵市

    吉武国務大臣 地方公営企業労働関係法についてでありますが、これは最初提案の際にも申し上げましたように、現在のところ団体交渉権を持つておりません。しかしながら実態は国鉄専売等と同じようなものであるがゆえに、国鉄専売と同じような、公労法に準じた取扱いをなすべきであるという観点から提案しておる次第であります。現在のところはただいま提案をしておるものが妥当であると考えておる次第であります。
  19. 熊本虎三

    熊本委員 立法の精神はそこにあるというお話でありますが、そうだといたしますれば、その関係においてでき得る限りの是正、進歩があつてしかるべきだと存じます。従つていずれ逐条審議で各論に入りましてから、具体的に項目をあげて御質疑を申し上げ、さらにこちらの意見を申し上げることにいたしたいと存じますので、私はこれで質問を打切りますが、重ねて申し上げておきます。どういう御意思で提案されようとも、この調整法に関する限り、本会議並びに本委員会において、大臣が切々たる御答弁をされる、その現われとはおおむね反対の方向に行くことを私は断言してはばからない。従つて先ほどからお願いしております参考資料が出ましてから、あらためてまたそれについて質問をお許し願うこととして、本日はこの程度にいたしておきます。
  20. 島田末信

    島田委員長 中原健次君。
  21. 中原健次

    ○中原委員 まずこのたびの労働関係法律案に対しまして、このような法律を必要とするいろいろな客観的な条件があるという御判断ももとよりあると考えますが、私はまずそのことについて一応労働大臣から、そのような御認識のきわめて重要な中心点を最初に承つておきたいと思います。
  22. 吉武恵市

    吉武国務大臣 三法を提案いたしました理由につきましては、先般本会議におきましても、また本委員会でも申しましたように、今回の法律案の第一点は、国家の現業官庁の職員で、国鉄専売だけが公労法によつて団体交渉権を持つておるが、その他の逓信、あるいは印刷、造幣、営林等の似通つた現業官庁は、団体交渉権を持つておりません。これは公務員である性質からやむを得ぬことではありまするけれども事業の実態は国鉄あるいは専売と似ておりますので、同様な取扱いをすることがいいのじやないかという観点から改正をいたしております。それから地方の公共団体における公営企業の市電であるとか、水道等、これも同様な趣旨で、現在のところは団体交渉権を持つておりませんが、これも国鉄専売と同じような取扱いをすることが、労働関係においては妥当ではないかという観点から改正をいたしております。これはおそらく御了承願えるのじやないか思います。それから労働基準法は、過去施行いたしました実績にかんがみまして、多少日本の国情に沿わない点あるいは過去の運営の経験から徴しまして、直したらよかろうと思われる点で、これも三者からなる労、使、中立の完全なる一致を見たところでございます。従つてこれもいろいろ御意見はあるでありましようが、私は妥当な改正であると思つております。ただ一点緊急調整の点が、おそらく中原さんも御意見があるところだろうと思いますが、これは先ほど熊本さんにも申し上げましたように、争議というものは、自主的に解決されることが原則である、しかし万一それが自主的に解決されないで、争議が大きくなり、しかもそれが公益事業でありあるいは大規模争議であつて、ほつておけば国民生活に重大なる障害を及ぼすというときに、政府は、ただこれは自主的に解決するのだから、しかたがないのだと言つて見ておるというわけには行かないのであります。でありまするからその際は、今日せつかく公正なる機関というものかあるのでありまするから、その労、使、公益からなる中労委にかけて、平和的に解決する手段を講ずる。これは独立後の自立経済の叫ばれておる日本において、私は特に必要であると思う。しかもそのことは、日本だけが初めてやる制度ではございませんで、民主的な国のアメリカでさえそういう制度を行つておる。でありまするから、この点も静かにお考えいただきまするならば、私は御了承願えるのじやないか思います。
  23. 中原健次

    ○中原委員 そのような立法の技術といいますか、措置については、提案説明の場合にも大体承つたところでありまして、それよりも私はもう一つわくを広げまして、このような法律措置をするためには一この法律措置が、関係労働者のためによしとしてせられたものと一応説明づけられるのだと私は思うのであります。そうであつてみれば、まずその前に、今日のわが日本の特殊事情とも言うべきもの、日本独立したのである、従つて独立日本の新しい出発に際して云々ということに政府もしばしば触れられるわけでありまするが、その政府のいう独立後におけるわが日本の国内の経済の諸事情あるい政府のいろいろな諸措置を通しまして、国民、なかんずく労働階級の生活の条件というものが、物質的にあるいは精神的に、いろいろな面からどのような展開を遂げるか、この問題について、もとより見通しを持つておいでになるはずだと考えますので、その問題について政府の見解を解明していただきたい、かように考えます。
  24. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は独立後の日本経済の自立はなかなか困難な問題だと思いますが、決して悲観的ではありません。過去七年間におきましてもいろいろ援助は受けておりますが、やはり勤労大衆がよく働かれる結果、日本の生産力は増強いたしております。今日のところ戦前に比べまして約一四七%を越えているわけでありますから、その点を見ましても、やはり日本の勤労大衆がよく働かれた結果であると感謝をいたしております。この事情は今後といえどもかわらないことだと思います。労働者の生活の状態も、それに従いまして漸次よくなりつつございます。しかしながら労働者の生活は、戦前に比べ約八〇%近くにもどつたのでございまして、まだ戦前の域に達しない。従つて労働者階級の生活にかなりの苦しさがあるということも私は十分に了承しております。しかしながらそのことは、ただ労使間の不均衡から来ておるものではなくして、日本が戦争中に多くの物を失い、そうして産業が荒廃に帰したというところにあるのでありますから、何といつて労働者の生活を向上させるゆえんのものは、まず日本経済の復興に力を入れることだ、かように存じております。
  25. 中原健次

    ○中原委員 大臣の見解によれば、国民生活は好転する要件を持つに至つている、大体こういうふうに言われたと受取るのであります。また漸次国民の生活がよくなつて、八〇%くらいの回復を見せているということにも触れておいでになりますが、私はこの場合に、その国民生活の上昇回復の率がどこに由来するかについての議論をしようとも思いません。これは大臣の見解と私の見解とが違うのでありまして、また収集した資料からも大分距離があるのでありますから、そのことについて議論しようとは思いませんが、大臣の見解のように、国民生活が好転して少くとも上昇線に向つているというのであるならば、政府が最近特にあわただしく相次いで出して参つた治安的な性格を持つ関係諸法規、こういうようなものが今日のそういう客観条件の中で、なぜそれほどに必要とするのであろうかという疑問が当然起つて参るわけであります。国民が、少くとも希望を持つて生業にいそしむことができる条件、さらにそれに対して今日の瞬間にいささかの苦痛はあろうとも、必ずそれは克服して、やがて希望のかなたに到達することができるということを確信し、あるいはそれを認めておるならば、いろいろな混乱する状況が起つて来ようとは考えられないわけであります。それであるにもかかわらず政府は、最近の傾向から考えまして、どうもあらゆる部面に治安的な対策を強化しようとする傾向がしきりであります。その点に私どもは、やはり何だか政府の施策と政府の認識している現在の国内の客観情勢との間に食い違つたものがあるのではないか、どうもその間に一致したものを見出すことがむずかしい、そういう疑惑をここですぐ感ずるわけでありますが、これに対して大臣はどうお考えになられますか。
  26. 吉武恵市

    吉武国務大臣 治安立法は、破防法その他考えておりますが、これにつきましては、もちろん国民生活の安定ということに力を尽さなければならないということに私は異議を唱えておるわけじやありません。政府といたしましても十分努力をいたす。しかしながら中原さんも御存じでございましようが、終戦後今日まで、ただ国民生活だけでいろいろな事件が起つておるとお考えになりますが、これはもちろんその面もあるわけでありましようが、その大きい原因というものは、思想的な背景がございまして、つまり自分の政治的な意見を貫くためには、暴力もあえて辞しないという一部の者があるわけであります。これは例をあげろとおつしやるのならば、終戦後今日までたくさん例がございます。しかもこれらの行動が、ただ個人の思いつきや犯罪でないことも明瞭であります。でありますれば、もしあなたがこういう暴力を肯定されるという立場にお立ちになつての議論であれば、これは別であります。しかしあなたといえどもかくのごとき暴力というものは、好ましくないとお考えになつていると私は信じてやまない。もしそうだとするならば、これらの極端なる暴力を除去することが、やはり日本の民主政治確立の上において必要である。必要であれば、その必要な措置を講ずるということは、私は当然ではなかろうか、かように存ずる次第であります。
  27. 中原健次

    ○中原委員 答弁によれば、結局ある政治目的をもつてする思想的な背景が、破防法その他の治安関係の諸法律を必要とする、こういうふうに指摘されたと思うのですが、それなら私はお尋ねをしたいのです。かりにそういうような思想的な背景が存するといたしましても、問題の対象は多数の大衆に対する施策であろうと思うのであります。一部少数の、政府が口を開くたびごとに、メーデー以後言うておいでになるような一部少数の過激分子、そういう者が対象じやなくて、それによつて影響され、動揺されると予想される大衆の、いわゆる大衆的な行動に対する憂いであろうと思うのでありますが、それならそのような国民大衆の生活実体の安定があり、あるいは希望のある場合に、そういう思想的な影響をよく受入れるものかどうか。大衆というものはやはり自分の生活に不安と非常な脅威がありまする場合に、いろいろな動揺が伴うて来るものなのであつて国民の生活に、さきに大臣指摘されたように、希望を持つことができ、あるいは生活上昇に対する確信があるとするならば、いたずらに単なる思想的影響によつて動揺させられる憂いは毛頭ないと思うのです。それにもかかわらず政府がそういう施策を必要とするということは、政府がほんとうに国民生活の向上、安定というものをはかるだけの確信を持つておらない、そういうことを私はみずから語つておるのではなかろうか、このように思うのです。従つてたとえばこの労働関係諸法規の問題にいたしましても、幾たびも大臣が繰返し繰返し説明しておいでになるような、そういう確信のある意図がこの根底にあるのならば、私はそういう不安は起らないだろうと思います。にもかかわらずそういう不安があるがために、治安関係の諸法規のようなもの、その他いろいろな大衆を抑圧するような施策を必要とすると感じるところに、私は政府自身のほんとうの腹の中に大きな不安があるからではなかろうか、こういうふうに思うのであります。従つて大臣の今の御答弁を総合して考えますと、どうもそこに一貫したものを受取りがたい。そういうふうに考えますると、大臣言葉の表現にもかかわりませず、実際はこの場合労働階級を押えつけて、悪い言葉を使えば、おどしつけて、そうして思うままにこれを使いこなそう、いわゆる労働階級に対する強度な搾取の確立の中に経済の再建をはかつて行こう、こういう無理なことを考えているところに、政府が治安等の問題に対して確信を持つことができない実情に逢着しているのじやなかろうか、私はそのように思うのです。この点について大臣はどうお思いになるか、この場合承ります。
  28. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は先ほどもお答えいたしましたように、国民生活の安定に力をいたすべきであるという御議論については、異議があるわけじやありません。私ども今後といえども努力いたさなければならぬと思つております。しかしそれさえやればいいじやないかというわけのものではないのでありまして、それと同時に一方にはそれをいいことにして、擾乱をはかる分子があるわけであります。でありまするから、そういうものにつきましては暴力的な行為を抑制する措置をとることは当然であると思います。アメリカあたりの国民生活は、日本国民生活と比べれば相当な隔たりのある生活をしているでございましよう。しかしそういう国でも、やはり治安上の必要から治安立法をしており、私ども今回提案いたしました労働三法は、治安的な意味から出しておるわけではありません。これは何とか平和的に紛議を処理しようという意図から提案しているのでありまするが、この緊急調整制度も、先ほど申しましたように、労働者の生活というものは日本から比べれば相当高度な生活をしているアメリカでもやはり必要と認めて、立法しておるのであります。でありまするからただ一方だけ考えれば、片一方はいいんだというふうに、そうりくつめいて世の中というものは行かない、両々相まちまして平和的な、民主的な政治というものは確立して行くことが必要である、かように考えております。
  29. 中原健次

    ○中原委員 労働関係調整法の一部改正等からうかがわれまするように、やはり争議手段を何とか押えて行きたい、こういうねらいはどのような説明にもかかわりませずうかがえるわけであります。もとよりわれわれも争議を好むものではない。争議を必要とせざるような経済条件あるいは労使関係が確立するならば、もとより言うところはありません。しかしながらそれにもかかわらず争議行為を必要とする実情のあるということは、労働階級の生活条件が恐ろしく低い水準に追い込まれているからなんであります。  そこでこの争議行為の問題に関連して、この場合明らかにしておきたいと思うことをあらためて承つておきたいのであります。それは先般来から大臣がしばしば政治ストということを繰返して言うておいでになる。もちろんこの政治ストということについての限界あるいは概念規定等について、われわれが大臣考え方をそんたくできないということではありませんが、しかしながら事があまりにも重大でありまするから、この場合大臣政治ストという概念の規定は一体どういうところにあるのか、これをあらためて承りたい。
  30. 吉武恵市

    吉武国務大臣 これもしばしば申し上げましたごとく、憲法二十八条によつて保障しております争議権というものは、労働者労働条件の維持向上のために、労使間の紛議を解決する際にやむを得ず発動するところの手段である。でありますからそれ以外の目的、すなわち先般十八日に行われましたことく破防法が自分たちは反対である、そういう政治的な意図を達成するためにストライキをやるということは許されていない。でありますからかくのごときものを政治ストと言うのでございます。もしそういうことが認められるということであるならば、おれたちはあの内閣はいやだ、だからストライキをやる、あるいは何をやつてくれ、それが達成しなければストライキをやる。こんなことが憲法で保障されている国はどこにもございません。
  31. 中原健次

    ○中原委員 それでは続いて承つておきたいと思いますが、こういう場合があるのです。たとえば一つ産業の中に、AならA工場にストライキが起る、争議が起る、そういう場合に同一産業の他の工場の労働組合が、これに対していわば同情するストライキを敢行する。だんだんそれが波及して全同一産業に及んで行く、こういう場合はよくある例であります。これも一つのゼネラル・ストライキという形になりますが、これはあくまで大臣の見解では、政治ストという範疇に入るものであるかどうか、この問題についての見解を伺いたいと思います。
  32. 吉武恵市

    吉武国務大臣 同情ストにつきましては、これが政治的な目的であるかどうかは別といたしまして、やはり正常なるストライキの範疇外であると思います。これは各国におきましても、同情ストについて違法であるか、違法でないかということは、相当論議されている点であります。
  33. 中原健次

    ○中原委員 もちろんいろいろな角度から論議されている問題でありますが、しかしこの同情スト等につきましては、すでに長い五十数年の歴史があるわけです。従つてまたこれを承認する判例も多々あるわけでございます。従つて否定するような立場からこれをながめるという見方は、やはり労働階級の側に対する理解といいますか、その側からものを判断する、あるいは少くとも中立的な立場から判断する判断の結論ではないと思うのです。第一そこにすでに労働大臣の立場が出ているように思うのです。もちろんそのときの一つ一つの具体的なストによつて判断が出て参りましようが、にもかかわらずこれに対して最初からこれは肯定できない、一つの純粋なストではないという判断のもとにこれを見ようとするそういう見方は、はなはだ残念でありますが、大臣を今まで見て参りました私の判断としては、それがいかにも当ることを遺憾に思います。やはり大臣政府の置かれている表現上の中立と申しますか、そういう中立的な立場をどんどん離れて行きつつあるのではないかというふうに感じられるのです。その点についてはどうですか。
  34. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は労働問題につきましては、きわめて公正な立場でものをながめているつもりでございます。中原さんがそういう見解を持たれることが、あまりに労働者に偏したお考えではないか、かように思います。
  35. 中原健次

    ○中原委員 それではさらにお尋ねいたしますが、このような場合によく引例される問題は、いわゆる憲法公共福祉云々の問題です。この公共福祉という規定を規定するためには、あるいはそういう実在する争議に対しての認定を決定する場合には、いろいろなこともありましようが、まず大まかにそういう規定を規定づけるための公共福祉の範囲といいますか、こういうものについてはどのようにお考えになつておいでになりますか、承りたい。
  36. 吉武恵市

    吉武国務大臣 公共福祉にはそのときどきによつていろいろ違います。その法文に掲げました規定におきましても、その条項の趣旨によつて違うと思います。どういう場合をお話になつておるか存じませんが、ごく部分的でありましても、その部分的な地域において公共福祉に重大な影響がある場合は、またそれに基く法律的な処置が講じてあるならば、その法律の精神に従つて解釈すべきである。また国家全体的な公共福祉関係のある事項につきましては、それは全般的な場合の公共福祉でございます。でありますから、ただ抽象的に公共福祉というもの自体の解釈からは出て来ないと思います。
  37. 中原健次

    ○中原委員 それだけに実は公共福祉という見解で規定しようとするその規定が、非常に不安なのです。政府の置かれている立場で、いろいろにその場その場で判断がつくわけでございません。  ところで私がまずお尋ねしておきたいと思うことは、労働組合法の第一条あるいは第三条で、いろいろ労使間の関係指摘しておると思いますが、これに対しまして政府がしばしば繰返して指摘されておる点は、非常に簡単なことでありますが、ただ問題は労使間の紛争の処理のために云々ということで尽きておるわけでありますが、しかしこの条文だけについて考えをいろいろ深めて参りましても、大分政府の見解と違つたものが実際はやはり規定されておるというふうに考えられる向きがあります。たとえばただいま申しましたような同一産業内における、あるいは全産業内におけるそういうゼネラル・ストライキの形をとつて参ります場合にも、第一条の規定にいう労働者、あるいは経営者という場合には、その別個の一つ一つ労働組合労働者、あるいは資本家、こういう関係において労使関係考えるだけではなくして、それをさらに拡大すれば、労働者階級全体につながり、あるいは個別資本ではなくて、その資本あるいはその資本全体につながつて行くという労使の対立した関係が、やはり一条、二条からもうかがわれて来ると思います。こういう点について大臣の御見解はどうなんでありましようか、これも承りたい。
  38. 吉武恵市

    吉武国務大臣 労働法において労使間、つまり労働者と使用者といつておりますのは、その間に雇用契約の締結されておる間柄であります。でありますから今中原さんが御指摘になりました労働者階級、使用者階級などという観点にお立ちになるのは、いわゆる階級闘争理論であります。そういう階級闘争理論の上に立つて争議権が認められておるわけではございません。
  39. 中原健次

    ○中原委員 そこでこの問題は、地方の段階における労働階級の立場というものが問題になつて来るのであります。そもそも労働者に対して、こういうふうな法的な措置を講じなければならなかつた客観的ないろいろな条件があるわけなのであります。そういう条件があるからこそ、労働者の生活権を高場するために、いろいろ法的な措置が講ぜられたわけであります。だからこそ、たとえば第二条の四項を見ますと、こういうことが書いてある。これは除外規定という解釈ですが、「左の各号の一に該当するものは、この限りでない。」として、「主として政治運動又は社会運動目的とするもの」というふうに、わざわざ「主として」という言葉が肩にかかつておるわけであります。これはその前の労使間の問題を規定いたしまする、いわゆる労働運動の中にやはり政治的な、あるいは社会的な運動というものが加味されておるということを意味するからこそ、第四号は特に「主として」という文字が、政治団体等を規定するためにかぶさつておるとわれわれは思うのであります。このようにいたしましてやはりものの解釈というものは、そのときの客観的な条件に規定づけられて来ることは、もとより言うまでもないと思うのです。これについて「主として政治運動又は社会運動目的とするもの」というこの規定をあえて置いたことの関連におきまして、私はたとえば昭和二十四年四月における東京高裁の判決を思い出すのであります。これはいわゆる労働階級を中心とする一つの大衆行動に対して与えられた判決でありまするが、大臣はもちろんこれを御存じであろうと思います。非常に重大な意味を持つた判決であるからでありますが、これらの関連について大体大臣はどうお思いになられるか、この場合承つておきたいと思います。
  40. 吉武恵市

    吉武国務大臣 労働組合法第二条の四号にございますように、主として政治運動、社会運動をするものは労働組合でないということは、その通りであります。先ほど申しましたように、労働組合及び労働組合運動と申しまするか、団体活動を憲法二十八条が保障しておりまするのは、労働者労働条件の維持向上を目的とするものであります。でありますから、主として政治運動をやり、主として社会運動をやるために、かくのごとき権利を保障していない。それを文字通り規定しておるのであります。ただしかし労働組合といえども、政治的な見解を持たれることまでは制限していない。従つて労働組合がいろいろな政治的見解を持たれることはやむを得ないと思います。しかしその政治的見解を持たれても、その政治的目的を達成するために、ストライキ権を保障しておるという規定はないのであります。なお判決の例を御引用になりましたが、私は昭和二十四年四月の判決とはどういうことを御指摘なのか、存じません。
  41. 中原健次

    ○中原委員 それでは判決文をここに持つておりますから、申し上げます。これは憲法第二十八条のいわゆる勤労者の団結権、もしくは団体交渉権なるものの行使に関する問題でありますが、ここで東京高裁の判決はこういうように申しております。「憲法は右の如く単に勤労者についてのみ団結権等を規定しているけれども一般人と雖も為政者に対して施政の改善を求むるため団結して交渉又はデモ行進その他の団体行動に出ずることを制限禁止する趣旨ではないのは憲法第二十一条が集会結社の自由を保障しているのに徴しても明である。而してこの理念は終戦後におけるわが国民主化に伴う当然の帰結であつて本件において……食糧事情の窮迫状態を打開すべく示威運動をなしたことは…当時の食糧事情からいえば敢えてこれを阻止弾圧すべきでなく、これを違法とする何ものもない。従つて之に当然附随して行われる喧噪罵詈、怒号等も改めて咎むべきでなく、又かかる団体行動自体から発生する威力を利用してその代表者が相手方交渉することも亦団体行動であつて是亦違法性ありとは云はれない。」こういう判決文になつている。これは結局日本労働階級を初めとする全国民大衆が、あの長い封建制のもとで抑圧され、そうして極度の生活不安の中に追い込められておりました場合に、この失つた人権を奪回するために起るいろいろな政治的な意味を含む大衆行動だと思いますが、このことは現在もなお解消しておりません。だからこそ高裁がここに決定いたしました憲法第二十一条との関連において、国民がそのときの権力、あるいはそのときの支配的立場を持つものを対象といたしまして、その大衆的な威力をもつてこれと交渉を進めて行くという行為は、きわめて妥当であるという判決決定が出て来たということも、また何らふしぎとしないところであります。従いましてこの高裁の判決に対して大臣の見解はどうであられるか、これもあわせてお尋ねしておきたい。
  42. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私はその判決を見ておりませんから、詳しく見た上でないと的確な御返事はできないのでありますが、ただいまお読みになりましたところでもわかりますように、労働組合がデモをやる、それは憲法二十一条の集会、行進の自由があるから許されるべきだという判決であるように思います。私ども労働組合がデモをやるとか、行進をしてはならないということは一度も言つたことはございません。先ほどあなたに申し上げましたのは、政治的目的のためにストライキをやることは許されていないということを申し上げたのであります。その判決は政治的な施策の改善のためにストライキをやつてよろしいという判決ではないように、私は見受けられるのであります。
  43. 中原健次

    ○中原委員 この問題に関連してすぐに問題になることは、今日の政府の立場というものが、労働階級との関連並びに資本階級との関係において、一体どちら側に多く結びついているかというところに、ストライキをもつて労働階級が立ち上らなければならないというような条件の合理性、非合理が出て来るように思うのです。つきましてはまずここで関連して伺つておきたいのは、最近日経連が頻繁に方針を出しているようであります。その日経連がことに最近政治ストに対する考え方、あるいは方針等を打出しながら、だんだん日経連のその方針と政府の方針とがふしぎにも一致しつつある。むしろその関係が非常に緊密に深められつつある、そういうことを予想するにかたくない事例がたくさん出ておるわけであります。従つて政府は、この日経連の最近の、こういう政治スト等に対する考え方、あるいは方針、こういうものをどのように理解しておいでになるのか、まずそれを伺いたい。
  44. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいまの中原さんのお言葉を聞いておりますと、労働者がストをもつて対抗することは、労働者側に言い分があるから合法的であるというふうなお話でありますが、先ほど来申し上げましたように、いかなる政治的な理由があろうとも、法律が許さない手段をもつてやることは、非合法であります。そのことをとめることが民主政治の確立であります。自分たちの主張のためには手段を選ばないというのが、暴力主義的な行動をとる人々の考え方で、これが今日までいろいろ政治を誤らしめたのであります。それは極右であらうと極左であろうと同様であります。日経連の態度を御指摘になりましたが、日経連の態度は、法治国家において正しき法律の解釈のもとの態度である。ストライキというものは、労使間の紛糾解決のために憲法二十八条が保障してある。これを自分たちの関係ない政府の施策に対抗するために、自分のところでストライキをやつて損害をこうむる、あるいは規律を侵す。そういうものがほつたらかしにされていいということはあり得ないことであります。これは政府もさような解釈をいたしておりますし、日経連もそういう解釈をすることは当然であります。
  45. 中原健次

    ○中原委員 それではお尋ねいたしますが、日経連のいろいろな方針決定の中に、職場防衛隊の編成という一つの計画がある。この職場防衛隊の編成については、どういうふうにお思いになりますか。
  46. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私どもは職場の防衛隊をどういうふうに考えておるか、まだ聞いておりません。しかし一部に職場を撹乱しようという意図の者があることはあると、私はかように考える。従つて職場を撹乱する者をみずからの力によつて防衛しようということは、これは一職場ばかりではございません。われわれの家においても同様であります。そういうものに対しては、それぞれ国民がみずから守る処置を講ずることは、私は適切であると思います。
  47. 中原健次

    ○中原委員 なかなか経営側のいろいろな施策に対して御理解がおありのようでありますが、この防衛隊の計画の基準等の資料を見てみますと、実は何だか非常に恐るべき敵を仮想して、こんなものを日経連自体が先頭に立つて施策しておるのではないかという疑惑を多分に与えるわけです。しかもこの防衛隊というのは、単に身をもつて身を守るというようなものではなくて、自分の使用しておる労働者の中から、思想的に進歩的なものを理解しがたいような人たちを総動員して、たとえば六尺棒であるとか、あるいは水力何々等々の防衛武器携帯云々だとか、いろいろなことを書いておりますが、こんな計画を読んでみますと、何だか日本の国内に恐るべき一つの暴力団の計画が着々と進められており、これはもう自衛という線を越えて、何か妙なものが底に流れて来るというにおいがする。これは先般も連合審査会で申しましたところでありますが、最近警察あるいは予備隊等が備えておるいろいろな武器等から連想されることは、一つ間違うと、もうそれが国の権力活動という名において合法的に制約さるべき範囲を逸脱して、暴力行使にまで発展する危険性をはらんでおるという危惧よりも、もつとひどい危惧がこの防衛計画の中に出て参るわけであります。これをもつて、まことにけつこうな施策である、けつこうな計画であるというふうに大臣が推奨するに至りましては、われわれは少くとも労働者のための行政を担当する主務大臣の思想に、非常な危惧を持たしめられざるを得ません。そういうようなことは、もう少し慎重な考慮がいるのではないか、私どもはそのように思うのであります。ことに大臣は、日経連の方針は非常に合法的であるとしきりに言われます。なるほどそれは合法的でもありましよう。今日の少くとも政治支配の背景は、ここらから出発しておるのでありますから、当然その意図のままに立法措置も講ぜられておりましようから、解釈はそうなろうかと思いますが、少くも立法府としての国会で問題になることは、そのような一応恐るべき危険を蔵しながら進んでおる政治の方向に対しまして、やはり強い批判が当然起つて来なければならぬのではないか、そういうことが起つて来なければ、妥当適切な政治施策はとうてい期待することができないことを、われわれは一層痛切に思うものであります。従つて日経連の政治スト等に対する考え方あるいは方針につきまして、最近幾たびか政治スト処理委員会が放送をいたしておりますが、この政治スト処理委員会が大体三回ばかりにわたりまして出しておる方針は、どうも大臣のここで言われておる言葉とまことに符合する点があまりに多過ぎるのであります。そうなつて参りますと、やはり政府の立場が、私どもが杞憂するような偏向を最近特に濃厚に冒しつつあるのではなかろうか、こういうことを思わしめられるわけであります。だからこそ、そういう立場で立案する法律改正あるいは法律の制定等につきましては、どうしてもそういうにおいが濃厚にならざるを得ない。このように私どもが気づかうのは、あまりに当然なことなんです。だから大臣は、この日経連の政治スト処理委員会の数次にわたつて決定しております方針に対して、どういうふうに考えておいでになるか、これももう一度ここで伺つておきたい。
  48. 吉武恵市

    吉武国務大臣 中原さんのお言葉を聞いておりますと、どうも現実の認識について非常な相違があるように私は思います。われわれが治安立法をいたしますゆえんのものも、ただ架空的にものを考えておるのではありません。現に各所でいろいろな暴力が行われておる。われわれはこれをいかに防止して、平和な民主政治を打立てようかという努力をしております。それにもかかわらず、中原さんの言葉を聞くと、あるかもしれぬが、それは大したことはないのだというふうにお考えになつておる。そこに根本的な誤りがある。あるいは見解の相違があると思います。従つて政治的にいろいろな批判を持たれることは自由であります。私は政治的の批判についてとやかく言つておりません。それはいろいろな人がおるのでありますから、いろいろな政治的な見解を持たれることはあるでありましよう。しかしその政治的な見解を達成するために、民主政治というものが確立される。そうして議会政治というものがある。それなのに、政治に対する批判があるからといつて、手段を選ばないという非民主的な考え方を持たれる方がある。でありますから、日経連のとりました態度は、民主的な政治の上に立つ人の考え方としては当然であります。これは日経連ばかりではないと私は思います。とにかく法律で許されないことをやつても、それはしかたがないのだ、ほつておくというような考え方には、民主政治を願う人々はおそらくだれしも反対するものと思います。従つてそれに反対されるということは、そもそも根本の考え方において、そういう民主政治に対する見解を異にされるのではないかという感じを私は深くする次第であります。
  49. 中原健次

    ○中原委員 問題の焦点はそこにあるわけです。政府が肯定される立場というものが、どうも最近だんだん露骨になつて参りました。従つてそれだけわれわれもそれをつかむのにつかみやすいと言える。たとえば例をもつて申しますれば、さきに破壊活動防止法案が上程されて、ここに論議されて参ります過程に、この破壊防止法案に対しまして、一体賛成をしたのはだれであるかということです。反対をしたのはだれであるかということです。この現実はあるわけです。どのようにこれを言葉巧みに説明づけようといたしましても、この法律案に対して、賛成した者と反対した者の立場が、あまりにも画然としているということです。しかもその法律提案者は政府であつたわけです。ここにこの現在の段階における今の政府が、表面上中立という立場をもうすでにどこへか置き忘れてしまつて、露骨に資本家の立場の防衛の、あるいは資本家のいろいろな諸計画のために役立つ政治、施策を行おうとするそのねらいが、やはり出ているということが言えるわけなんです。だからこそこここで破防法に対する公聴会を開きましても、公述人の全部が一、二の人はいろいろ希望条件を付して、ある意味では賛成したような傾向があつた思いますが、その他の方は全部口をそろえて反対しておるし、新聞協会にいたしましても、あるいは弁護士協会にいたしましても、その他いろいろ日本の進歩的な指導勢力の範囲の中におきましても、大体破防法に対しては賛成しておらない。しかも決定的にさえ反対しておるにもかかわらず、政府は撤回するどころか、あくまで強行に押し切る。手続から言えば、国会内の勢力関係において政府の与党が多数を占める以上、それはなるほど合法的決定を見ることは言うまでもない。ところが現実の日本国内の実態からいいますと、そこにまた大きな矛盾が出ているわけなんだ。そういう矛盾の中に立つて政府が施策をやることは、どうしても無理がある。無理があるということは、やはりある意味では、国内の安定なるべき秩序をみずから破壊するの挙に出ているということを言われてもしかたがない。そういう点について……。(「質問しておるのか」と呼ぶ者あり)これはぼくの見解です。だから聞いている。そういうような見解は成り立つわけだ。だから政府としては、これに対してどういうふうな答弁ができるか。これがいろいろな法律的施策等の場合に、どうしても出て来る一つの背景なんです。そういう背景があるからこそ、やはりそういう法律、施策等が出て来るわけです。だからこそこの点については、われわれは相当時間を用いても論議しなければしかたがない。これをそのままわれわれが見送ることになれば、無責任もはなはだしいことになる。だから論議しておるわけなんだが、それに対して吉武労働大臣はどうお思いになりますか。それでよろしいとお思いになりますか。その点についても見解を承つておきたいと思います。
  50. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私どもは破防法にいたしましても、国民の多数はこれを期待しておると思う。破防法の中に盛られておりまするように内乱を起したり、騒擾を起したり、人殺しをしたり、火をつけたりすることを国民の多数が歓迎するということは、われわれが常識で考えられない。これは一部にはそういうことをやろうと思つているのがあるかもしれません。そういう者はあるいは反対するかもしれませんけれども、私は国民の多数の者は、これに反対しているとは思わない。しかし先ほど申しましたように、政治的な見解を異にする方はありますから、反対を表明されるということを私はとやかく言つているのじやない。批判をされると、いうことをとやかく言つておりません。それは国民の一部の中には反対される方もございましよう。あるいはそういう階級もあるかもしれません。しかしそれを論議して民主的にきめて行くというのが民主政治のやり方である。反対があるからといつて、その反対のためには手段を選ばない、非合法でも私よろしいといつてこれを合理づけようとされるところに、私とあなたのものの考え方に相違があるのではないか。それは民主政治、議会政治の否定的な考え方に基くお考えではないか、かように私は考えるのであります。ですからあなたはそれに対して反対があるとおつしやるなら、私も反対のあることを否定しておるのではありません。それは賛成している者もあり、あるいは反対している者もありましよう。これは政治的なあらゆる施策について、やはりそれはあり得ることである。だからそれをどうしてきめて行くかということが、いわゆる民主政治のやり方である。それを通すために手段を選ばないというのが、いわゆる暴力主義的な政治のやり方である。われわれはあくまでも民主的な政治によつて政治をやつて行こう、かように存ずる次第であります。
  51. 中原健次

    ○中原委員 多数が行動すると、その多数の行動というのが、ややもすればそれを暴力的だとか騒擾的だとかいうような言葉で、そういう断定が起りやすいのです。それはもちろんわれわれもわかる。だからこそ大衆行動をする者は、大衆行動に対する秩序、大衆行動に対する責任というものをいつの場合にも考えておるわけです。そういうことに政府が、先ほど熊本さんも指摘しておいでになつたと思いますが、妙に行き過ぎた親心で、いらざるおせつかいをし過ぎているということのために、一層そのことが紛糾をかもす結果になるわけです。その点は、すでにメーデーにしましてもその他の場合にも、いろいろ実例が出ているわけです。そのことはよしといたしまして、私がここで言いたいことは、そうして聞きたいことは、とにもかくにも戦後六年何箇月の経験の中に、きわめて不十分ではあつたけれども労働階級がみずからのものとして獲得しておる労働権、あるいは国民としての地位というふうなもの、あるいはそれに関連する人権、こういうふうなものを剥奪されようとするときに、これを取返そう、あるいはこれを守り抜こうという考え方を持つて立ち上ることは、これはきわめて当然のことなんです。だから労働階級はほかに方法がないのであつて、たとえば何々会社の労働者政府に来て大臣を動かす力はもちろんない、あるいは国会を動かす力も実は持つておらない。従つて労働者は、やはり多数結束して国会の外において大衆行動を起す、それがいわゆるデモンストレーシヨンの場合もあろうし、あるいはストライキの形をとる場合もあるであろうが、とにもかくにも大衆が自分の利益を守り通そうとするために、その願いを貫徹しようとする手段として大衆的な形で行動するということは、これはもう当然過ぎるほど当然の事柄に属する。しかるに直接資本家交渉を要せざる問題について、交渉すれば政治ストライキであつて、そういうことは非合法であるというふうにきめつけて、これを押えようとすることは、結局労働階級自分の権益を守ろうとするためのそういう行動を否定するということにつながつて来ると思うのです。だからこそ先ほども指摘いたしましたように、憲法の第二十一条あるいは二十八条との関連等において、これは当然そこで問題が出て来るわけなんです。だからこそ労働階級が今日までに獲得しておる権益が失われようとするときに、たとえばそれが法律改正あるいは新しい法律の創設等によつて破砕されようとする場合に、これを守ろうという意欲が行動に移つて行く、そういう場合にこれが否定されて来るとすれば、一体労働階級自分の政治的な権益をどのように守るのか、守る方法がないのじやないかということになつて参ります。だからそういう考慮があればこそ、新憲法がそういう行動を保障したわけなんです。だからわれわれがとにもかくにもか細いながらも保障されたこの政治的な権利一つのたてとして、労働階級のまさに失われようとする、あるいは破壊されようとする権益を守ろうとするこの行動をあくまで貫き通すということは、合法的なことであると私どもは理解する。にもかかわらずそれに対していろいろ難くせをつけて、いわばけちをつけて、このことをよく理解しがたい大衆に、それはあやまちであるかのような印象を与えるという計画的な動きが、どうも政府の中にあるように思われる。ゆえに私はこの場合、労働者自分の与えられた権益を守るために、労働者の唯一の団結した力をもつてこれに対抗しようとする大衆行動法律が守れないようなことでは、ほんとうに日本の今日の時代が一歩前に行くということはとうていできない。あとへやらすことは簡単でありましようが、前進させるということはとうていできない、かように思う。労働大臣労働行政についてはいろいろ心配しておいでになることと思いますが、そうであるならば、このことが日本を一歩前進させるために、日本のよき進化のために役立つように、これを守り抜いて行くという良心が私はあるべきものであると思うのです。これらのことについて大臣はどうお思いになるのか。労働階級にはほかに方法がないのです。そう言えば、大臣は議会を通じてやればいいと言われると思います。しかし議会を通じてかりにやるとしても、議会に信託して出しておるところの議員だけれども、ある瞬間におけるいろいろな客観条件で判断するその判断にだけゆだねておれない場合があり得るわけなんです。これは遺憾ながら現実の日本の議会制度が、まだほんとうに国民の利益を代表するように、実は徹してできていないからです。これが徹しておれば、そういうこともあるでしよう。けれども議会政治としては、年数ばかりはたつてつても、まだはなはだ未熟でありましては、どうしても大衆がそこに不安を感ずる。だから大衆が自分の純真な気持から要求しておるその要求を議会にも反映させたい、議会人にも理解をさせたいということのためには、やはり議会の外におけるそういう大衆行動よりほかにすべがないのです。だからそういう意味のいろいろな行動が、たとえばストライキという行動をとりましようとも、これは当然承認されなければならない。私はきわめて合法的な行動であるというふうに考えるわけなんです。大臣の御見解を承つておきたい。
  52. 吉武恵市

    吉武国務大臣 たびたび申し上げておるところでありますが、かりに労働者側に反対があり、それが立ち上つて大衆行動に出るといたしましても、それは法律で許された範囲において行動すべきであります。その立ち上る理由があるからといつて法律に許せないものまでも合法づけよう、正当化しようということが、非合法主義のものの考え方であります。非民主的なものの考え方であります。いかなる理由があろうとも法治国家においては、法律の範囲において行動すべきものである。自分には言い分があるから、それで人にけがをさせてもよろしい、あるいは火をつけてもよろしい、何をやつてもよろしいということでは、民主政治というものを否定するものである。ですからあなたはそれを合法化しようとされるならば、みずから議会政治というものを否定される立場に立つと考えられます。だからそういうものは議会を通じ、また法律の許された範囲において行動する、そうあるべきものと私は確信をいたします。
  53. 中原健次

    ○中原委員 大臣の御答弁はやはり大臣の立場に立つ独断論だと承ります。火をつけたり、人を殺したり、そんなことが悪いということは、いまさらここで言う必要はない。だれの常識からしてもそんなことを肯定するはずがない。そんなら労働者ストライキをやる行為のどこがそういうことを意味しているのか。ストライキをやろうとするその行為を、そういうとんでもない破壊行為に結びつけようとするところに、政府考え方、立場がある。何とかそこにけちをつけようという考え方があればこそ、そういうものの言い方をする。今大臣は火をつけることが罪悪である、家をこわすこと、人を殺すことが罪悪であると言われたが、そんなばかげたことを聞く必要もなければ、論議する必要もない。そんなことではなく、合法的に団結し、団体交渉をする権利というものを考えて参りますと、当然政治的な関係が織り込まれて来ざるを得ない。経済、政治といつても、そんなものは画然とどこからどういうふうに区別するか。経済と政治の関係というものは、きわめて複雑に入り込んでいるわけであります。それを画然と区別しようとするところに、支配者的な意図があるわけであります。それをわれわれは言つているんです。それを画然とさせようとしてみたところで、実際は画然としようがない。たとえばこういうことがある。これは日本資本家がよくやることですが、たとえば炭鉱国家管理法案が提案されました場合に、一体国会を中心としてどういうことが動いておるか。時の政府もまたその中の一つの動きとして、一体どういうふうに動いたか。あの当時のことを純粋に判断することができるならば、金を持つた大きな資本家階級は確かに座敷にすわつていても、みごとに日本の政治を右左に支配することができるわけであります。このことは炭鉱国家管理法案の原案が非常に歪曲されて、悪修正されましたときのいきさつを知つておる者には、すぐわかるんです。これが今日の政治の実態である。その方が罪悪でない、合法的である、これはとんでもないことです。われわれ労働階級にとつては、そういうような、ばかげたことをすることもなからねば、またすることもできない。だからこそ純粋に力と力とが結びつく、肉塊と肉塊とが結びついたいわゆる労働階級の団結、そういう武器を持つて立つよりほかない。それはだれも認めているし、憲法も承認している。だからその点において、それがもし単にその企業内における経営との交渉だけでは解決つかないような問題は、政府に向つて行動するであろう、あるいは国会に向つて行動するであろう。そういうことが合法的でない、非常に暴力的である、火をつけることにつながつておる、人を殺すことにつながつておるぞという印象をばらまこうとすることは、けしからぬと思う。労働階級はそんな不純な考えは持つていない、きわめてまじめにものを考えている。そういうことについて大臣考え方が、さつきから繰返して申しますように、あまりにも一方に偏在し過ぎている。政府は中立的な立場に立つてものを判断すると一応言われておるけれども、やはり何とか努力して、そこへやろうとすることが必要である。それにもかかわらず遺憾にも、実情はそうじやないということを思わしめるのでありまして、だからこそ政府が一生懸命最近健全組合運動というような言葉をもつて、いろいろなことを主張しておいでになるが、健全労働組合というこの規定づけにいたしましても、実はこの健全労働組合というものの規定づけは、遺憾ながら労働者の意思によつて決定せしめる方向へこれを導こうとするのではなくて、支配者の立場から労働組合方向を決定させようという一つの押しつけ的な意図が、この健全労働組合運動の規定の考え方の中にうかがわれて来るわけなんです。そういうような見解のもとに立つて労働行政の施策を行うということになつて参りますれば、日本労働階級が納得せぬのはあたりまえなんです。もし日本労働階級が納得するということになれば、遺憾ながら後退するより道がないし、下手を行けば死滅のふちまで行くより道がないのです。こういう社会進化の法則ということについて、大臣はもう少し考えてしかるべきだと私は思うのです。やはり労働大臣という地位は、少くとも閣僚の中においてまず一番進歩的な地位になければならぬはずなんです。その人が一番保守的な反動的な見解の中に没入して行くということになつて来れば、労働省の存立意義をだんだん薄めて行くと思います。従つて労働省というものが労働階級の支配、取締り、抑圧機関ということにどうしても惰して行くよりほかにない、こういうように思います。おそらく労働省関係大臣以下各指導者諸君は、一応進歩的な判断のできる人たちばかりと実は今日まで思つておりました。ところが実際調べて追究して行くほどに、これほど反動的な陣容を集めたところはないのだと、いまさら唖然たらしめられるところがあるのであります。こういうことについて大臣は、これらの見解から成り立つ、いわゆる健全労働組合運動を強要しようとするための今回の法の改正、こういうふうに私どもは理解せざるを得なくなつて来た。もちろんこれは各逐条審議の場合にこの問題は当然問題になつて来ることでありますが、今日は総体質問ですから、私は総体的に尋ねているわけなんですが、これは一体どういうことになるのでしようか。このことについても伺つておきたいと思います。
  54. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私が先ほど例をあげましたのは、非合法の一つの例として示したのであります。でありますから先ほども申しましたように、法律の許さないストライキ労働者が、自分たちは政治的な見解を異にするのだ、あの政府はおれらは反対だ、だからストライキをやつて汽車もとめる、あるいは電気も消す、これもやむを得ぬのだということでは、民主政治の確立にならない。ですから私はそういう非合法はやるべきでない、その例としてお示しした。あなたは労働者に言い分がある場合にはストライキもよろしいとおつしやる。政治的目的であろうともストライキはやむを得ないとおつしやるところに、私どもと見解を異にいたします。そんなストライキは世界各国どこへ行つたつて許しておりません。ですから私が言わんとするところのものは、合法的にやつてほしいということです。政治的な見解を持たれることは自由であります。社会的進化はわれわれも希望いたします。しかしそれはどこまでも合法手段をもつてやらなければならぬ。社会進化のためには非合法でもよろしいというわけには行かないのであります。この点はひとつ十分お考えおきを願いたいと思います。
  55. 中原健次

    ○中原委員 時間が過ぎて皆様に御迷惑をおかけしてまことに相済みませんが、もう一時になつたようですが、実は私の質疑の要点は尽しておりません。ただ前半を今質問したにすぎませんので、まだ後半に属する分が質疑されませんことには、この法案の審議に対する私の態度がきめがたいのです。私はさらに後半の質疑のあることをここではつきり申し上げておきます。従いましてこれは委員長のおとりはからいによつて、午後からもうしばらく継続質疑をお許し願いたいと思います。  なお大臣のこの見解につきまして、私どもはゼネストが非合法であるとは思つておりません。政治的なストライキが非合法であると思つていないことは、さつきから繰返した通りでありまして、この政治的なという名前をつけてこのストライキを押えようとするところに、いわめるこれを非合法とする理論づけがあるわけなんです。これを非合法でないと断ずる理論づけがあるのです。われわれはそうでない、これは合法である。これを許さないと一体労働階級はどうして今後立つて行くのかという問題になつているので、ここに非常に重要な論点があると思います。しかしいたずらに横車を押すようなことは私は喜びません。従つて一時を多少まわつたようでありますから一応質疑を打切りますが、この問題をさらにあとに残すことを委員長に要請いたしまして、午後の継続を何とぞお許し願いたいと思います。
  56. 熊本虎三

    熊本委員 私は非常に時間を守りまして短かくやつたのですが、ちよつと関連して御質問申し上げます。  私の考えが基本理念の上に、中原君とすべてが一致しておるかどうかは別であります。ただ先ほど来の質疑の中でちよつと聞いておかなければならないことができたのでお尋ねしておきます。大臣に承りますが、労働者は何といいましても単純で率直な性格の持主であることは、これはお認めになろうかと思いますが、その点いかがでしようか。
  57. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は労働大衆はさように存じております。でありますからこの労働大衆を指導される指導者の方は、よほど考えていただきませんと、誤つた指導をされるとたいへんなことになると存じております。
  58. 熊本虎三

    熊本委員 それから経営者の中には相当金と時間にものを言わせて、悪質な老練者のあるということもお認めになるはずだと思いますが、その点はいかがでしようか。
  59. 吉武恵市

    吉武国務大臣 数多くの使用者の中でありますから、そういうものがないとも言えないでありましよう。
  60. 熊本虎三

    熊本委員 従つてたとえば先ほどの日経連のとつております行動の中に、やはり非合法的なものがおるから、合法的な防衛をするのだ、こう言われる。そこで労働者のやることは、そういう悪質な資本家もいるので、その非常に備えるという不安とともに用意をするということが、これがただちに総合的行き過ぎであるというような御見解のような答弁がありました。おそらく大臣のほんとうの腹はそうじやなかろうと思うのでありますが、私の聞きようが悪かつたかもしれないので、その点明確にしておいていただきたい。
  61. 吉武恵市

    吉武国務大臣 職場において防衛的な態勢を整えるということは、私はまだ聞いていないのであります。しかしながら先ほど御指摘なつた中に、そういうことを考えておるというお話でございましたから、それはそういうこともあるであろう、というのは、職場を撹乱しようという意図の者もないではない。これはおそらく熊本さんも御承知思います。全然そういう考え方を持つておる人がないとは言えない。そうすれば職場の方でそれに対してみずから守る態勢を整えるというのは私は当然じやないか、かようにお答えしたのであります。
  62. 熊本虎三

    熊本委員 そこで私のあなたに言つておきたいことは、労働者に行き過ぎがあると同様に、経営者側にも行き過ぎがある。これは事実なんです。従つて労働者側に行き過ぎがあるものは、やはり国家再建のために取締り、裁定の手段は必要である。同様に経営者側にもそういうものがある場合においては、労働大臣よろしくこれを規制しなければならない。この言葉がどうしてもないのです。だから私はその点について、そういうものは全然ないから、労働者だけを規制するんだというお話とすれば、はなはだもつてけしからぬと思うから、私は言うわけでございまして、特に悪質な資本家の中には、おのれらが合法の域を逸脱せざる範囲において、単純なる労働階級を手段をもつて誘導し、そうしてそこから来る派生的な問題をして取締りの対象たらしめんとするような、悪質な資本家がおることを見のがしてはならない。でありますから、労働大臣がさような点にも十分考慮するという意思がおありならばいいけれども、そういうことに一つも触れておられない。この点ははなはだ遺憾であるから、私は質問をしておるわけです。
  63. 吉武恵市

    吉武国務大臣 そういう悪質な使用者がおりましたならば、それに対し断固たる処置をとることは当然であります。当然でありますから私は申し上げなかつたのでありますが、念のために申し上げておきます。     —————————————
  64. 島田末信

    島田委員長 次にただいま議題となつております労働関係調整法等の一部を改正する法律案労働基準法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法案に関する公聴会の公述人の選定に関しましてお諮りいたします。  公述人への通知、公述人の出頭の時間的関係から、ただいま公述人の選定をいたしたいと思います。公述人は諸般の状況よりいたしまして、その数を総員十四名といたし、日本労働組合総評議会法規対策部長長谷部儀助君、全逓信従業員組合中央執行委員長永岡光治君、東京都労働組合連合会中央執行委員長河野平治君、日本私鉄労働組合総連合会中央執行委員長藤田藤太郎君、日本労働組合同盟中央執行委員重枝琢己君、日本経営者団体連盟労働法規委員長箕浦多一君、日新化学工業株式会社常務取締役大谷一雄君、日本国有鉄道運輸総局職員局長吾孫子豊君、日本専売公社総務部長小川潤一君、東京都水道局長徳善義光君、中央労働委員会委員、慶応大学教授藤林敬三君、中央労働委員会委員細川潤一郎君、国学院大学教授北岡寿逸君、早稲田大学教授野村平爾君、以上の方々といたしたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」「異議あり」と呼ぶ者あり〕
  65. 森山欽司

    森山委員 ただいまの顔触れにちよつと不足しているところがあるかと思いますので、申し上げたい。というのは、今回の改正には公労法改正があります。公共企業体としては国鉄専売両者とも理事者側から二名も代表が出ている。ところが国鉄専売労働者側から一人も出ておらない。その意味で労働者側に両企業体のいずれかから代表者を出されて聞かれるように、ひとつおとりはからいを願いたい。
  66. 島田末信

    島田委員長 これは理事会ですでに大体協議済みでありまして、すべて皆さんの御意見を参酌した上で私に御一任願つた点であります。但しただいまの森山君の御意見もいずれ両日に開く人数なり、時間なり、あるいは交渉の結果も考えなければなりませんから、いずれ理事会でまた御協議申し上げることにいたします。それでは御異議なきものと認めまして、さように決定いたします。
  67. 柄澤登志子

    ○柄澤委員 ただいま強引に多数だということで打切られようとしておるのでございますけれども、婦人の労働者の問題と少年の問題が出ておりまして、婦人は国民の半分以上の代表であります。その中の勤労婦人の問題でございますが、婦人の代表をぜひその中に一名加えていただきたい。それは総評でもけつこうでございますけれども、私鉄あるいは全百貨、全銀連、こういうようなところからの婦人部長をぜひ出していただきたいと思うのでございます。
  68. 島田末信

    島田委員長 承りおきまして、いずれ理事会で協議いたしましよう。それでは午後二時まで休憩いたします。     午後一時十六分休憩      ————◇—————     午後二時四十九分開議
  69. 島田末信

    島田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。
  70. 森山欽司

    森山委員 議事進行について……。来週の月曜日から開かれる公聴会の人選についてでありますが、午前中の会議でも、公聴会の人選の決定の際にちよつと申し上げたのでありますけれども委員長提案された人選を見ますと、私ははなはだ不満の意を表せざるを得ないのであります。すなわち今回の労働法の改正は、労働組合法労調法のみならず、公共企業体労働関係法あるいは地方公営企業労働関係法、この二つの改正並びに制定が議題となつておるわけであります。この二つの法律の適用を受けるところの労働者の代表が、今回の公聴会の人選から漏れております。私は何ゆえにこのどうしても欠くことのできない労働者が人選から漏れたかということについては、理解ができないのであります。先ほど来の折衝によりますと、委員長は、これは理事会で一任されたからというようなお話があるのであります。人数は十五人で、労働代表は五人である、こういうお話であります。私は少くも公共企業体の労働者側としては、国鉄関係を出すように専門員の方に申し出てあるわけであります。また取調べました結果、他の委員からも専売労働組合を推薦しておるのであります。しかるにかかわらず今回の公聴会の人選においては、公共企業体の労働者代表がだれも人選に載つておらない。また詳細に検討してみますと、地方公営企業労働者代表も、正確に申せば今回の人選に載つておらないのであります。今回の労働法改正の重要な意義を考えますと、いかなる結論が出るにいたしましても、私は広く労働者側代表あるいは経営者側代表あるいは公益代表といわれる方々の意見を、時間の許す限りできるだけ聞き、その上に立つて法案の審議を進めるということでなければならないと思う。しかるにどうしても欠くことができないこの労働者側の代表二名が人選から漏れておるということは、一つには、これはおそらくこの人選に当つたところの労働委員会の専門員の横大路君が、はなはだ労働感覚がなく、かつまた職務に対して怠慢な結果であると思つておるのでありますが、専門員のことをとやかく言つてもしようがないので、むしろかかる労働感覚のまつたく欠如した、労働常識をまつたく欠いたところの案をのまれたところの島田委員長の労働感覚、これはおそらく自由党の労働感覚を示すものではないとは思うのでありますが、私ははなはだ遺憾にたえないのであります。私はここに委員長に対して、この二名の労働者側代表を追加されることを望みます。そうしていかに野党であろうとも、私の言うようなりくつに合つた話にさえ耳を傾けることができないところのやり方を、絶対多数の上に推し進めようとするならば、今後の労働法の改正の審議においては、あなたに対して協力できないということを、この際はつきり申し上げておきたいと思います。
  71. 熊本虎三

    熊本委員 これに関連して簡単に申し上げます。私、理事でもありませんし、今日までの議事進行のための理事各位の御努力にもかかわらず、いまさらこういうことを申し上げるのははなはだどうかと思いますけれども、たとえば都市交通の問題にいたしましても、東京都の交通局長は公聴会に出るわけですが、その対象となるべき労働者の代表者は出ないという。それで一体公平なる公聴会の意義が遂行できるかというと、私はできないと思う。単に東京の問題ばかりでなく、全国の都市における交通を代表する代表者を一人入れてもらいたいというのが、私のお願いである。繰返し申し上げますが、経営者を代表する者が出て、そこに従事する労働者が出ない公聴会が、公平であると私は考えません。委員長並びに理事の方々の格段の御努力はさることながら、これはいろいろいきさつ等もあつたろうと思いますけれども、特にその点を考慮していただいて、一名、二名のことであるから、増員して公平に公聴会の真の意義を発揮できるようにおとりはからいを願いたい、このことを私は希望申し上げておきます。
  72. 島田末信

    島田委員長 森山君、熊本君のただいまの発言に対しましては、いろいろ選定の諸事情についていきさつもあるようでありまするが、御希望は十分われわれも勘案いたしまして、公聴会でそれが実現できない場合、また別途の方法もあろうかと思いますから、極力何らかの形で方法をとりたいと思います。天野公義君。
  73. 天野公義

    ○天野委員 刑政長官にお伺いしますが、今回の改正案を拝見いたしますと、罰則規定が非常に不均衡に考えられるのでございます。そのことはもうすでに長官のお聞きのことと思いますが、外国にこのような罰則規定の例があるかどうか、まずそれをお伺いいたします。
  74. 清原邦一

    ○清原政府委員 お答え申し上げます。私まだ十分調査いたしておりませんが、英国では、緊急事態の場合につきましては、罰則の規定があるそうであります。
  75. 天野公義

    ○天野委員 まだ研究していないということですが、この間賀来政府委員に相当つつ込んだ質問をしたときに、それは法務府からひとつ答えていただくというふうな御答弁をいただいておるので、今日は明快な答弁を承ろうと思つて、御出席を願つたわけでございます。今までの労調法の罰則規定によりますと、団体を罰しておつて個人は罰しておらないという原則を持つてつた。ところが今度の改正案によりますると、個人をも罰する、しかも罰金刑を科するということになつておるのでございまして、これは非常に苛酷な罰則規定ではないかと私は考えておるのでございます。こういうような個人に対する罰金刑なり、このような刑罰というものが、まず外国の立法例にあるかどうか。共産国家のような国家は別といたしまして、非常に進歩した民主国家の中にこのような立法例があるかどうか、それをお伺いしたいと思います。
  76. 清原邦一

    ○清原政府委員 ただいまの問題につきましては、委員長の許可を得まして、検務局の公安課長に御説明をいたさせたいと思います。
  77. 神山欣治

    ○神山説明員 命によりまして私からお答えいたします。一応こういうような調整期間内における企業の罰則の問題につきましては、個人を罰する場合と組合を罰する場合とがあるように思われるのであります。カナダにおきましては、労働組合が違法にストをやつておる期間内、一日幾らという罰金刑を科しておる実例がございます。なおそのほかにも、清原長官がお答えになりましたように、全国緊急事態におきましては、タフト・ハートレー法自体には罰則の規定はございませんが、裁判所のインジャンクシヨンに反した場合に、その労働組合のみならず、個人についても裁判所侮辱制裁法ということで、刑罰が科せられるように私たちは了解しております。またその他の実例におきましても、個人は絶対にないとも私たちは理解してないのであります。なお公益事業に従事する従業者が、冷却期間内にストライキをやつたという場合に、現行法では団体を処罰しておりますが、それを行為者個人を処罰するというふうに建前をかえたという点でございます。この点は従来労働関係調整法第三十九条に、その争議行為について真に責任ある団体を処罰する、その真に責任ある団体というのは、社会的に見て実際争議行為について、共犯理論のいかんにかかわらず、実際上責任あるものを処罰するという規定のように理解されるのであります。しかしながら法律的に考えますと、真に責任あるというのが、教唆であるとか、誘惑であるとか、扇動であるとかいう場合でありましても、いかなる場合でありましても、結局争議行為をやるに至つたほんとうの責任者、これは社会的に見てそれが責任の帰するところであるというように認められるならば、共犯理論を超越して処罰するということであり、しかもその団体を処罰するということになつておるのであります。これを私たち法律的に見ますと、従来の刑法理論、罰則理論からいたしまして、例外をなすものであり、従来は誘惑をした、あるいは扇動したというだけでは罰しないのを、ここでは誘惑であれ、扇動であれ、教唆、指導であれ、何でもかんでも、一応責任があるものは罰し得るというふうに解釈されるのであります。この点は法律的に考えてどうもおかしいので、一応責任あるというのは、従来の刑法理論に従つて責任を追究するということが、論理的に考えて必要なことではないかというように考えたのであります。ところで論理的に、法律理論的に当然考えられる理論構成をもつてやる場合には、やはり行為者個人を処罰するということでなければならぬと思うのであります。
  78. 天野公義

    ○天野委員 外国の立法例をお伺いすると、労働関係調整法について、個人を罰するような刑罰規定はないということは、逆にはつきりしておるのであります。外国の立法例にあるといいますが、それはほかの立法例にあるので、治安立法であるとか、全国緊急事態であるとか、そういう別の立法にゆだねられておつて労働関係調整法には、個人を罰する刑罰規定がないということに了解してよろしゆうございましようか。
  79. 神山欣治

    ○神山説明員 お答えいたします。今全国緊急事態と申し上げましたのは、アメリカの労働法でございますタフト・ハートレー法のことを申し上げておるのであります。タフト・ハートレー法自体につきましては罰則はございませんが、その裏打ちとして裁判所侮辱制裁法というものが働くということを申し上げた次第であります。
  80. 天野公義

    ○天野委員 それでは私は、日本以外の民主的な国家には、労働関係調整法には、個人を罰金刑に科するような罰則規定がないと了解いたしますが、それでよろしゆうございますか。
  81. 神山欣治

    ○神山説明員 お答え申し上げます。タフト・ハートレー法もやはり労使関係法でございますので、日本的に考えますと、あるいは労働関係調整法ではなかろうかと存じます。従いましてタフト・ハートレー法の違反につきまして、その法律自体には罰則はございませんが、やはり裁判所侮辱制裁法という法律の罰則によつてそれが支持されており、裏づけされておるということを申し上げたのであります。
  82. 天野公義

    ○天野委員 それでは次に第二点に入りまして、今度は罰則規定の不均衡の問題についてお伺いしたいと思います。国家公務員が国民に対する奉仕者といたしまして、公務員法に違反した場合に、罰則規定といたしまして、懲役ないし罰金刑を科せられるということは、当然了解できるのであります。ところが公共企業体労働関係法によりますと、法律によつて有する一切の権利を失い、かつ解雇されるものとするという罰則規定だけのように了解いたします。そういたしますと、国家公務員は罰金なり懲役なりにする罰則規定を受ける。公共企業体の労働者諸君は、最悪の場合に解雇されるということ、そうして今度は労働者諸君の方には罰金刑まで科せられる。これは私は非常に不均衡だと思いますが、その点について長官の御意見を承りたい。
  83. 清原邦一

    ○清原政府委員 お答え申し上げます。国家企業体の諸君につきましては、一切の争議行為を禁止されておることは、御承知通りであります。従いましてこれに違反いたしました場合には、公共企業体労働関係法に規定する一切の権利を奪われます。同時にまた解雇もせられるのであります。さらに進んでは行政上懲戒処分を受けるおそれもあるのであります。このようにして厳重なる規定を設けておりますから、実例を見ましても、過去においてあまり争議行為がないのであります。二十四年六月の国鉄スト事件以来、その例を見ないのであります。従いましてこれに対しては特に罰則を設けておりませんが、これは決して均衝を失しておるものではなくして、争議権の有無、あるいはその後の処置等を考えまして、罰則をつけない方がむしろ均衡を得ておるものと私ども考えておる次第であります。
  84. 天野公義

    ○天野委員 どうもはなはだ了解に苦しむ御答弁のようでございますが、この法律を見てみれば不均衡だということがはつきりわかる。片方では争議行為を禁止されておるのに、いろいろなことをやつたときには、罰金まで科せられる。罰金を科せられれば前科者にもなるし、当然解雇されるということも予想される。片方は解雇されるだけで、懲戒処分ということはまた別個の問題になる。片方は労働者諸君が、たとえば扇動されて争議をしたような場合、また業務につかなかつたような場合、そういう場合までも、この条文を適用されるおそれがある。私はこの条文は非常にあぶない条文であり、しかも不均衡だと思いますが、もう一ぺんお伺いしておきたい。
  85. 清原邦一

    ○清原政府委員 お答え申し上げます。たとえば国家公務員法の百十条、地方公務員法の六十一条によりますと、三年以下の懲役及び十万円以下の罰金でございますか、そういうふうに規定いたしております。ところでこの三十七条違反でございまするが、これはもちろんその違反行為自体は刑法第二百二十四条の威力業務妨害罪と同一視すべきものではないことはもちろんでございます。しかしながらこれは法律的見地から見まして、これを侵犯した場合にある程度の制裁を科し得る。しかも効果のある制裁を科す必要があろうかと思います。かかる場合にその刑の量定をいかにすべきか、これにつきましてただいま引例いたしました威力業務妨害罪は、御承知通り、罰金刑が二百三十四条では一千円となつておりますが、罰金等臨時措置法によりまして現在は五万円になつております。従つてこれよりも軽く、かつまた国家公務員法、地方公務員法に規定しておる十万円よりもさらに軽い大体三万円ぐらいが妥当じやないか、かように私ども種々検討の結果立案した次第であります。
  86. 天野公義

    ○天野委員 要するにこの条項というものは、今の御説明では私には納得ができない。非常に不均衡である。しかもこれが非常に悪用されるおそれがある、私はそういうふうに考えておる次第でございます。この国家公務員法、また公労法労働関係調整法、この三つの罰則というものは非常に不均衡だ。もしこれがほんとうに均衡がとれておるのだ、これでいいんだという御説明が伺えるならば、もう一度お伺いしたい。
  87. 神山欣治

    ○神山説明員 今刑政長官から御答弁申し上げたのでありますが、一言にして申し上げますと、公共企業体及び一部の現業公務員、これは行政処分、懲戒処分ということによつて、その違反を防止する、あるいは違反した場合における効果的な制裁を科し得る。片や民間の公益事業におきましては、使用者が懲戒罷免をするということも、法律的には別といたしまして、事実問題といたしまして必ずやるということも考えられませんし、さらにまた不当労働行為の場合におきましては、一応解雇をいたしましても、労働委員会へ救済を求める。従いまして解雇した場合にも譴責でよろしいというようなことにも相なる実情でございます。従いましてこれを使用者のみにまかすということでは、違反防止の確実なる効果を期することはできないという意味におきまして、これは刑罰の法規をもつて違反防止の励行確保をするという趣旨でございます。
  88. 天野公義

    ○天野委員 どうも納得行きません。労働法は、個人に対する刑罰法規は抜きにして、別個の刑法なんかにまかして、もつとゆとりのあるものにするのがほんとうだと思いますが、御当局もよく御研究くださつて、後ほど了解できるような御説明でもできるならば、そのとき伺いたいと思います。
  89. 中原健次

    ○中原委員 議事進行について……。きようは総体質問の日なんですが、総体質問の日に主管大臣が午後はおいでにならない。また事務当局だけよこして関係している大臣が来ないというのは、総体質問という特殊性から考えてりくつに合わぬと思う。委員長、どうお考えになりますか。
  90. 島田末信

    島田委員長 速記をやめて。     〔速記中止〕
  91. 島田末信

    島田委員長 速記を始めてください。
  92. 森山欽司

    森山委員 今回の労働法改正の中に、地方公営企業労働関係法案が含まれておるのでありますが、この法律の制定によつて地方公務員法の附則第二十項は除かれるわけであります。ところで附則第二十一項に「第五十七条に規定する単純な労務に雇用される職員の身分取扱については、その職員に関して、同条の規定に基き、この法律に対する特例を定める法律が制定実施されるまでの間は、なお、従前の例による。」という条文がございますそこで単純労務者は、今度の地方公営企業労働関係法の適用から漏れておる。一体これはどういうわけか、これに対する法的規制考えているのかどうかということを昨日労働大臣に質問いたしました。特にこの問題は昭和二十五年十二月八日に、時の保利労働大臣ができるだけ早くこれに対する法的規制考えたいと言われ、そのまま今日に至つている問題であります。しかもなお今日において法的規制がない。今回の地方公営企業労働関係法案の中においても漏れている。こういう単純労務者の法律上の問題は一体どうなつているのかということが、私の伺いたいところであります。そこで地方公務員法上依然として残るところの附則第二十一項の「なお、従前の例による。」とは一体どういうわけか。昨日の労働大臣の話を伺うと、ゼネスト禁止等を内容とする政令第二百一号は講和発効後六箇月後に失効する。効力がなくなつても、内容自体はなお従前の例によつて残るのだというような御説明である。そこでどうも労働大臣答弁を聞いていると、講和が発効しても、少くも政令二百一号に関する限りは、単純労務者については占領の継続と何ら差がないのじやないかと感ぜられるのであります。それでこれに関する法理解釈、特に日本憲法の精神から見て、そういう解釈が妥当であるかどうかということを法制意見長官に伺いたい、こういうことでございます。
  93. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 お答え申し上げます。労働大臣答弁を御引用になりましたが、私は労働大臣の答えた通りであろうと存じます。問題として政令二百一号をおあげになりましたが、第二十一項で従前の例によつているものの中に、政令二百一号が入つていることは事実でございます。しこうしてそういうことが新憲法に照してどうであるか、あるいは占領終止後の今日においてどうだというお言葉がございましたが、その点はごもつともなお気持であろうと存じます。ただ御承知通りこの政令二百一号が出ました当時に、すでにこの二百一号の憲法問題が出されまして、これが違憲ではないかという議論があつたわけでございますが、政府としてはこれは違憲ではないということで態度をきめておつたのであります。今日におきましてもその態度にはかわりはないわけであります。従いましてこれが従前の例によるという形において、今後ある期間政令二百一号としての実体が続くということについて、私は憲法問題はないと確信いたしておるのであります。  それからもう一つのお気持の、占領が終つた後においてポツダム政令のごときものを残しておくことはどうかという点は、政治上の感覚の問題になると存ずるのでありまして、われわれとしては、今日において実体が必要である、あるいは別に不当なことはないということでありますれば、その実体についてそのものを存続させることは、もちろんさしつかえないことであります。その実体の御判断は、立法政策の問題としてこちらでもいろいろ御審議を願うことであろうというふうに今考えておる次第でございます。
  94. 森山欽司

    森山委員 政令二百一号が失効した後においても、それと同じ内容の、なお従前の例によるという労働大臣の解釈と、あなたの解釈は同じであるということですか。
  95. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 私は同じであると申し上げたつもりでございます。
  96. 森山欽司

    森山委員 そうすると政令二百一号の内容と日本憲法関係はどういうことになるか伺いたい。
  97. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 ただいまも述べたのでございますが、たとえば国家公務員法をごらんになりますと、実体上政令二百一号と同じものが国家公務員法の中に入つているわけでございます。これについてはやはり理論上の問題としては憲法問題があるわけでございますけれども、何人も今国家公務員法のその条項が、憲法違反だという議論を唱える人はないと私了承しておるのであります。少くとも実体においては今申し上げました通り憲法上の問題はないと考える次第でございます。
  98. 森山欽司

    森山委員 国家公務員についてスト権や何か奪われる問題については、現行憲法の解釈からこれを容認し得るといたしましても、少くも単純労務者にまでそれを拡張することが許されるのですか。
  99. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 理論上から申しますと、単純労務者といえども全体の奉仕者であるという点においては、普通の公務員と同じ性格を持つておるわけであります。理論上の問題としては違いはないと思いますが、先ほど触れましたように立法政策の問題として、いろいろお考えがあるでしようということであります。
  100. 森山欽司

    森山委員 そうすると国家公務員からスト権を奪うことが憲法に違反しないという理由は、全体の奉仕者という観点からでございますか。
  101. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 主としてさようであろうと考えております。
  102. 森山欽司

    森山委員 それは行政の職にあると、単純な労務の提供にあるとを問わないという御見解でございますか。
  103. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 その通り考えております。
  104. 森山欽司

    森山委員 政令二百一号は憲法より上位の法であると御解釈になつたのですか、憲法よりも下位の法であるという御解釈になつておられたのですか。
  105. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 政令二百一号は例の勅令五百四十二号に基く政令でありまして、憲法のわく内でできておる政令である、委任命令であるというふうに考えております。
  106. 森山欽司

    森山委員 法制意見長官お話労働大臣意見と同じであるということになりますと、公務員からはスト権を奪つて何らさしつかえない、どういうことでもできるのだということになるわけでございますね。
  107. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 どういうことでもということになると、これはうつかりお答えできないのでありますが、ただいま御提案申し上げておりますような限度においては、万々間違いないというふうに考えます。
  108. 森山欽司

    森山委員 公共福祉という観点から労働者から団体行動権を奪うということが、現行憲法で認め得られるといたしましても、憲法で保障しております生活権という問題について、それに対する保障がなくても、なおかつそういう団体行動権を奪うということが、憲法の精神に合しておるとあなたはお思いになるのですか。
  109. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 生活権と今の団体行動権を奪うということの関係は、政治上の関連がきわめて密接であることはおつしやる通りであります。従つて政府においてもその点については十分関心を持つておるということでありまして、法律の理論といたしましては公共福祉という問題もありましよう、さらにはただいま申し述べましたように全体の奉仕者だという観点から推して、妥当な限度というものがあるわけでありますから、その範囲にとどまる限りにおいては問題はないということになるわけであります。
  110. 森山欽司

    森山委員 そういう解釈は労働省の方とお打合せの上で確立した解釈ですか。
  111. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 打合せするまでもなく、何人が考えても正しいことを私は申し上げておると存じております。おそらく労働省も同じ意見であろうと思います。
  112. 森山欽司

    森山委員 重ねて伺いますが、そういう御見解が日本憲法立法の精神であるとお考えになりますか。
  113. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 憲法第十五条でありましたか、公務員について全体の奉仕者ということを憲法自身がうたつておるわけであります。それらの点を勘案いたしましてさような結論になることは、憲法の当然予想しているところであると思います。
  114. 森山欽司

    森山委員 そういたしますと今回政府地方公営企業労働関係法を制定されましたけれども、附則第二十一項の単純労務者については依然としてそのままであります。一体このままにほつておくというような態度はいいことか悪いことか、あなたの解釈については私は異論があります。ありますが今はあなたと論争することが目的でなくて、法制意見局の意見を私どもは聞き置いているだけであります。あなたはこれをいつまでもこのままに放置しておくというようなやり方が、一体法の体裁上建前からいつて好ましいことかどうか、伺いたい。
  115. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 今のお尋ねは、私の役割を逸脱したことでございますから、いろいろなお考えがありましようということだけを申し上げておきたいと存じます。
  116. 森山欽司

    森山委員 これは妙なことなんで、私はあなたの権限を逸脱しているかどうかわからないと思う。この法律に対する特例を定める法律が施行されるものである、こういうことなんです。昭和二十五年の十二月から今日まで足かけ三年間、法的規制が全然なされておらない。おそらく附則の一番末尾にこういうことを書くことは、近い将来にこれに対する法的措置をなすということであると考える。これをこのままほつておいて、そういうようなやり方をしておくということが、一体法律の建前から見てもいいかいかという意見を聞くと、私の所掌外だと言われるのはどういうことですか。
  117. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 そこまで伺えば非常にわかるのです。私ちよつと軽率にお答えしたかもしれません。それは別の法律ができるまでということでございますから、それ自身が別の法律ができることを期待しておる。それは間違いないことであります。
  118. 森山欽司

    森山委員 期待しておるということだけではなくて、要するにすぐにもできそうに言つておいて、当時保利労働大臣はもうできるだけ早い時期にということを参議院でちやんと言つている。もう三年もたつて今日に及んでいる。今私からあなたにむし返してこういうことを聞き返さなければならないような問題を起しておる。こういうことは法律を整備するという建前から、好ましいことであるかどうか、それを伺いたい。これはやはりあなたの権限に入ると思う。法制意見でございますよ。
  119. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 おつしやる通りうつちやらかしにして、いつまでもほつておくことは好ましくないということは申し上げるまでもありません。ただ労働行政責任を持つておる労働大臣が、誠意をもつて考えておることだろうと思うのでありまして、そこまで私が立ち入つて申し述べることは、これは少し僭越であるという趣旨でございます。
  120. 森山欽司

    森山委員 きのう労働大臣に対して、私はこの問題について立法化する気持があるかどうかと聞いたのですが、当分ないような返事でした。そうすると法制意見局からみると、好ましからざる傾向であると思うので、ひとつあなたの方から労働大臣に勧告していただきたいと思います。
  121. 島田末信

    島田委員長 次会は来る二十一日午前十時より開会いたします。なお十九、二十日の両日は午前十時より公聴会を開会いたします。  本日はこの程度にて散会いたします。     午後三時三十五分散会