○前田(種)
委員 もちろんこれは調整
機関以外に、非常権を持つておる
アメリカの制度である。しかし資本家に対しても、無理を言
つた場合は、
政府はその事業を接収するというだけの非常措置、こういうものが使われることは、国として遺憾なことでありますが、そういう権限を持つて、資本家にもにらみをきかし、しかして
労働者の方も押えるというところで、均衡が保てると私は
考える。
一つだけ切り離してどうということを私は
言つてない。もう
一つは、やり
労働組合運動の本質は、あくまでも罷業権を與えるということが本質であつて、その罷業権が行使されずに、労使
関係が円満に行くという
あり方にならなければならぬと思います。私は昨年十月イギリスに行
つたとき、ち
ようど十月二十六日でありましたが、選挙の勝敗がきま
つたときに労働党本部に行き、
労働組合総評議会の本部に
行つて、いよいよ保守党
内閣ができた場合に、今度は労働攻勢が相当きつくなるだろうということを、端的に質問いたしましたときに、労働党のミスター・ヒーレーという国際局書記長、
総評議会の、ミスター・ネルという国際局の書記長は、私にこう言
つた。そう簡単なものじやない。イギリスの
労働組合は
ゼネストをやるだけの実力を持ち、八百万近くの組織も持つておるが、労働攻勢が、今後きつくなるという簡単なものじやない。労働攻勢が積極化されるかそうでないかということは、
政府の出方によつてきまるのだ。もう
一つは、今度の選挙でもわかる
ように、六年間も政権を担当してお
つた労働党が、依然として票数の上
においては保守党よりも二十二万も多く票を
とつておる。その差はわずかに二十五だ。普通ならば六年も政権を
とつた政党なら、もつと大きな開きで負けるのがほんとうだ。それだけの実力を持つておる。だから今後労働攻勢がきつくなるだろうという君の質問は、一応もつともだがと
言つて、つけ加えてこう
言つてくれた。イギリスの労働党なり
労働組合は、そう単純に物事は
考えてない、いわゆる町で社会主義者が革命
行動をやる
ような、そういうばかなことは
考えてないのだ。それから
政治ストをや
つたり、
ゼネストをやるという
ような
やり方を簡単にやれば、国の経済が破壊される。国の経済が破壊されると、一番先に困るのは、資本家でなくて
労働大衆だ。そういうばかなことは、イギリスの
労働組合や労働党は
考えてないのだ。しかしわれわれは実力を持つてそういうことは
考えずに、結局、勝負は投票箱ときめるのだという
考え方をるる話しておりましたが、さすがにイギリスの労働党の
幹部であり、
総評議会の
幹部である実力を持
つた人の言葉として私は聞いて来ましたが、かくあるべきだと思います一しかし
日本の実情はなかなかそうは行かない原因がある。先ほどからお尋ねした
ように経験も浅いし、実力がない。あるいは経済上
においても、その他の條件
においても、そういうわけに行かない。私はやはり
日本においても、今の
ような状態で
日本が経済的に再建されるとは思つておりません。どうしてもこういう
関係を正常な方向に導いて、むだな摩擦を避けて行く
ようにしなければなりません。しかしそれは何も
労働組合だけの責任ではなく、資本家も同様責任を負い、
政府また責任を十分
感じてやつて行かなければならない問題であるはずです。そういう観点からいつて、今度の
治安対策全体の
政府の
処置は、はなはだ遺憾だ。むしろ
労働組合関係を刺激する結果に
なつておる点が
多分にあると私は見ております。しかも
労働組合の基本的な権利であるところの
争議がやれない
ような状態にしてしまいますと、先ほどから繰返し申し上げます
ように、使用者側の意思というものは相当強く
なつて参ります。私はやはり罷業権を完全に與えて、いつ何時でも
争議ができる
ような状態に置いておいて、そうして
争議が起らずに問題が処理されるというところに、対等の
立場に立つて労使
関係の調節がとれる。しかしそれが今度の
緊急調整で相当曲げられるという結果になりますから、この点だけはどうしても承認ができない問題だと私は
考えます。この点について
大臣は、この程度のことはやむを得ない今日の状態だと言われますが、私はやむを得ない状態だと了解するわけには参りませんし、どうしてもこの点だけはこの條項から削除してもらう
ようにしなければならぬ。また削除させなければならぬと
考えます。さらに今言われました
ように、これはめ
つたに使うべきものではないと繰返して
言つておられますが、三十五條の二に書いてあります
ように、
公益事業に限つておりません。その規模の大きさ、あるいは特別の性質の事業ということになるから、小さな事業でも特別な性質のあるものについては適用されるという場合が出て参ります。従来の労調法で行きますならば、強制調停等は
公益事業に限られておりましたが、今度はそうではなくして、一般見聞事業でも特別な性質の事業ということになると、
国民生活に重大な影響を及ぼす、あるいは国家産業に重要な影響を及ぼすという
ような問題は、どの産業といえ
ども国民生活に
関係のない産業はない。だからこれは解釈上によつては、あるいは今後
政府のものの
考え方によつては、相当幅広く悪用されるという危険性が
多分にあると思います。局限された、真に
国民生活上やむを得ないというふうに、非常に消極的に
考えられるべきものばかりでなくして、相当広汎な問題まで対象にして、特に規模の大きい小さいにかかわらず、特別なる性質の事業に関してはという
ようなこういう文句を使われたところにも、相当
意味慎重なる
政府の
考慮がめぐらされておる。その
考慮は
労働組合側から行けば、どうしても納得できない
考慮が携われておると私は見ておりますが、
大臣の
見解はどうでし
ようか。