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1952-02-23 第13回国会 衆議院 予算委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月二十三日(土曜日)     午前十時二十一分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 北澤 直吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    飯塚 定輔君       井手 光治君    江崎 真澄君       江花  靜君    大泉 寛三君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       小淵 光平君    甲木  保君       川端 佳夫君    栗山長次郎君       小金 義照君    佐藤 親弘君       志田 義信君    庄司 一郎君       首藤 新八君    高塩 三郎君       高田 弥市君    田口長治郎君       玉置  實君    永井 要造君       中村  清君    西村 久之君       松本 善壽君    南  好雄君       宮幡  靖君    稻葉  修君       今井  耕君    川崎 秀二君       吉川 久衛君    椎熊 三郎君       竹山祐太郎君    中曽根康弘君       早川  崇君    藤田 義光君       山本 利壽君    西村 榮一君       水谷長三郎君    風早八十二君       梨木作次郎君    林  百郎君       横田甚太郎君    赤松  勇君       田中織之進君    黒田 寿男君       小林  進君  出席国務大臣         内閣総理大臣  吉田  茂君         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         運 輸 大 臣 村上 義一君         労 働 大 臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         建 設 大 臣 野田 卯一君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         内閣官房長官  保利  茂君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         農林政務次官  野原 正勝君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月二十三日  委員飯塚定輔君、遠藤三郎君、小川原政信君、  角田幸吉君、小坂善太郎君、志田義信君、竹尾  弌君、中村幸八君、竹山祐太郎君、中曽根康弘  君、藤田義光君、稻村順三君及び横田甚太郎君  辞任につき、その補欠として高田弥市君、佐藤  親弘君、宮幡靖君、小金義照君、高塩三郎君、  松本善壽君、玉置實君、鈴木正文君、山本利壽  君、稻葉修君、吉川久衛君、赤松勇君及び梨木  作次郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山本利壽辞任につき、その補欠として竹  山祐太郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員竹山祐太郎辞任につき、その補欠として  椎熊三郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 会議を開きます。  昭和二十七年度本予算の各案を議題に供します。これより内閣総理大臣に対する質疑に入ることといたします。川崎秀二君。
  3. 川崎秀二

    川崎委員 予算委員会が開かれましてから、すでに三週間余りになります。野党側からかなり重要な質疑が連日放たれておるにもかかわりませず、政府答弁はきわめて不明確であります。ことに今度の予算案は、画期的な講和関係諸費二千二百億を含んでおりまして、もとより予算委員会経済政策の論争が中心の舞台でありますけれども、国民の大多数は、今度の予算委員会審議は、むしろ現在進行中の日米行政協定と、これにからんだところの種々の重大な問題に眼を寄せておるのでありまして、予算委員会に要求しておることも、これが中心でなければならぬと思うのであります。ことにここ一週間というものは、次々に国民権利義務中心になる問題が登場して参りまして、事態はかなり進行しておるのではないか。しかるに国会を通じての政府側答弁はきわめて不明確であつて、ほおかむりのまま通ろうというような形勢を見てとつて国民は非常な不安をいだいておるのである。たとえば緊急非常事態措置といえばたいへんむずかしく聞えますけれども、平たく言つて戦争が起るような場合に対して、日本は一体どうするのか、これは国民が求めておるところの声であります。こういう問題について、政府はきようはひとつ腹を割つてお話を願いたいと思うのであります。私はそういう問題に入る前、一応国内治安状況についてもお尋ねをしてみたいと思います。  まずお尋ねしたいのは、国内治安の問題であります。一昨日でありますか、植民地反対デモというか、集団暴行事件が各地で起りました。これはゆゆしい形勢でありますので、総理大臣としても昨日閣僚会議の席上におきまして何が御指示があつたようでありますが、一昨日来の状況についてどういうお考えであるか、総理所信をお伺いいたしたいと思います。
  4. 吉田茂

    吉田国務大臣 お答えをいたします。一昨日来の治安状態については、御承知通り、何らの重大なることもなくして済むことを得ましたのは、これは警察機関が前もつて用意をし、活動をした結果であると思います。今後も同じような事態があれば、ますます厳重に取締考えであります。
  5. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの御答弁と、昨日来閣僚が寄せられていろいろ御相談になつておるという方向とは、ずいぶん背馳をいたしております。ことに一昨日の騒擾事件においては、これを取締ろうとした警官が遂に袋だたきにあい、また手錠をはめられるというような緊急な事態が起つてつて、決して治安上万全を期したものと私は言えないと思うのであります。従つて政府においては特別な構想をもつて、今後この治安の維持に全きを期さなければならぬ。それについては何か首都警察法とか、あるいは東京を守るための一つ治安機構というものを考えられておるという報道がありますが、そういう具体的な構想は目下ありませんか。
  6. 吉田茂

    吉田国務大臣 ただいま申した通り、この事態にかんがみまして、あまり重大にならない、端緒といいますか、こういうときに将来のことを考えて十分な用意をいたすようにとは命じております。しかしながら、しからばただちにこういう組織にするとかいうような、驚いてまでということでないのでありますから、将来に備える機構については、関係方面において十分の用意をいたすようには申しております。
  7. 川崎秀二

    川崎委員 次に一般的な治安機構の問題。今度のような問題だけじやなしに、先般来閣僚会議等において非常に論究もされ、また閣内の不統一などの問題も出ておる治安機構の問題でありますが、近く治安機構に関する構想をとりまとめて、法案として国会に提出なさる御用意はありませんか。
  8. 吉田茂

    吉田国務大臣 警察治安機構等については、行政機構の一環として構想いたしておりますから、成案を得ますれば、得次第に議会の協賛を求める考えであります。
  9. 川崎秀二

    川崎委員 どうもこの治安機構の問題などで、閣内意見が不一致であるばかりでなく、何か非常ななわ張り争いのようなことをやつてつて、ことに大橋国務大臣のごとき、かつて法務総裁であつたときの意見と現在の意見とは、まつたく異なるというような、不安な印象を国民に与えてもらつては非常に困ると思うのであります。この点は十分に、首相の統率力も最近はややたががゆるんだのではないかといわれている折柄でありますから、御注意をいただきまして、治安機構の改革については万全を期してもらいたいと思うのであります。  次に、本日の新聞紙上によりますと、外資導入の問題が大きく報道されております。吉田総理大臣は、施政方針の演説の中にも、今後の日本経済自立にあたつて外資導入ということは欠くべからざる重要な案件であるということを、しばしば強調されておるのでありまして、そのことがやや具体的に現われているのではないかと思うのであります。どういうような構想外資導入をされようとしているのか、その点をお伺いいたします。
  10. 吉田茂

    吉田国務大臣 外資導入は、つとめてこれをはかるように、各方面にその同意といいますか、各方面を当つております。しかしながら、現在においては、こういうふうにしてこの方面からということの報告をするまでに至つておりません。しかし外資は近く導入されると思います。また私の考えている大きな外資以外に、小さな外資民間にすでに各方面に入つております。これがすなわち今日において貿易その他に繁栄を来しているゆえんであると思いますが、われわれの期待している導入問題も、これは少額でないものでありますから、これはただちに実現をするということは——ただちにとは言えないかと思いますが、近く実現されると思います。しかし今ここで、こういう方面からこれだけ入つて来るということの発表する時期には至つておりません。いずれ発表することにいたします。
  11. 川崎秀二

    川崎委員 ただいまの総理大臣答弁に、近く大きな外資導入が期待されるというお話でありまして、はなはだ耳寄りな話であります。そうしてその言葉の次に、小さな民間外資というものも入つて来るのだというようなお話もありますから、従つてこの外資形態について私はお尋ねをしたい。どういう方面からどれだけ入つて来るということを御発表することができなければ、ぜひここでお尋ねしたいのですが、その大きい外資というものは、形態としては商業ペースの形をとらずに、政治的な外資であるか、この点をぜひひとつ明快にしていただきたい。
  12. 池田勇人

    池田国務大臣 外資導入の問題につきましては、本委員会におきましてたびたび話が出たのであります。形態といたしましては、政府同士借款の問題と、それから国際通貨基金加入後における国際開発銀行からの政府あるいは民間借款の問題、第三段目といたしましては、アメリカ輸出入銀行を通じまして、アメリカの物資の日本へ入つて来た金を借りる、こういう問題、第四には民間コマーシャル・べースによるものであります。今までにおきましては、コマーシャル・ベースによります外資、すなわち株式投資によるもの、貸付金によるもの、あるいは工業技術貸付によるもの等を見ますと、大体ただいまのところ七千数百万ドルが参つております。しこうして今後におきましては、本国会で御審議を願いたい外資法の改正によりまして、相当今後は期待できると思うのであります。その次の第三の輸出入銀行を通じます借款は、御承知通り綿花借款四千万ドルが先般成立いたしたのであります。第二段目の開発銀行を通ずる借款につきましては、ただいま国際通貨基金加入の手続をいたしております。これができ上れば期待できると思います。最初の政府借款につきましては、政府としては考えぬことはございませんが、たびたびここで申し上げているように、ただいま政府がこういう措置をとつているという段階にまで至つておりません。
  13. 川崎秀二

    川崎委員 この問題については、大蔵大臣にさらに追究すべきですが、今日の質問総理大臣に対する質問でありますから、残念でありますが打切らしてもらいます。  次にこの際十月から創設される保安隊とか防衛隊とかいう問題は、まだ名称統一ができておらぬ。そこで先般も藤田君から質問があつた際に、まだ統一をされておらないということですが、しかるに交換文書なんかであちらと交渉している名称では、明らかにセキユリテイ・フオースという言葉であります。私は英語をよく知りませんが、アライド・フオースということが今まで連合軍というふうに訳しておつて、だれも連合隊などと言つている者はない。しからばこれはどうしてもセキユリテイ・フオースということになれば、安全保障軍あるいは保障軍というような形になると思うのですが、こういう文書を交換しておつて、はたして保安隊などという非常にそのものからは遠い感覚で今日の世の中をごまかすことはできないのではないかと思う、総理大臣からこれをお教えを願いたいと思います。
  14. 吉田茂

    吉田国務大臣 言葉の問題はいろいろきまつておらないために、私もかつてに使いますし、またその他の閣僚もかつてに使つておるのでありますが、セキユリテイ・フオースと言えばこれは実質から言うのであつて、これもきまつた考えで確定した言葉ではないのであります。俗に必要上、便宜上使つた言葉であつて、そのために書類を交換した等のことはありません。
  15. 川崎秀二

    川崎委員 書類を交換したことはないと言われるけれども、それには十分な例証があるのであります。しかしそのことはとがめませんが、こういうことと相並んで、すでに保安隊とは別個に最近では航空予備隊、こういうものを創設しようという動きがある、こういう問題について総理大臣はどうお考えですか。
  16. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 航空予備隊というのは初めて伺う言葉ですが、もつとも、たとえば農林省とかあるいは運輸省等でそれぞれのたとえば漁業の必要上その他の必要上、ヘリコプターを借りたいとか、買いたいとかいう話を聞いてはおりますが、別に航空予備隊などというものは私は聞いたことはありませんが、おそらくどこにもないと思います。
  17. 川崎秀二

    川崎委員 航空予備隊という名称はともかくとして、現に先般も中曽根君から質問があつたのでありますが、警察予備隊にはすでに高射砲中隊編成計画中である。事実そういう名称があるのだということさえ言われておる。これが発展しておれば当然航空予備隊になるだろう。今までの政府言葉では軍備はしない、軍備はしないと言つて事実上はだんだんそういうことをやつているのですから、航空予備隊は今初めて聞いた名称だなどというようなことを言われるけれども、実際はやるんじやないですか。     〔「それは改進党内閣だよ、二十年ほど先だ。」と呼ぶ者あり〕
  18. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまのところ、そういう考えは持つておりません。
  19. 川崎秀二

    川崎委員 私はこういう問題についてはそういう考えがないとかあらゆる機会において煙幕を張つて逃げられているので、実際何べん追究してみてもだめだと思う。しかし現にバズーカ砲などというような装備を持ち、また高射砲中隊編成などということをしているところを見ると、まつたく保安隊ないしは今回の警察予備隊というものは、軍隊的な性格に移動していることは明らかであります。これは共産党を撃つんだ、共産党が蜂起した際に使うのだというようなことを言われておりますが、日本共産党は大いに警戒しなければならぬ存在でありましよう。しかしながら日本共産党がいかに強大であつても、バズーカ砲高射砲中隊などというものを持たなければならぬほど強力な存在だとは思わない、共産党が地下にもぐつたという話は聞いたことはあるけれども、空へ舞い上つたという話は聞いたことはない。(笑声)よく考えてください。  次に目下問題の点について御質問を申し上げます。それはさきの国会安全保障條約を審議したときに問題にはなりましたが、今日の行政協定関連して深く論及されなかつた問題であつて、この点が一つ安全保障條約とまた今日の行政協定との関連において、盲点になつているのではないかと思われるのであります。それは安全保障條約の第一條でありますから、これは当然総理大臣の十分知つておられるところだと思う。その中に「アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近配備する権利を、日本国は、許与し」とある。平和條約の効力発生と同時に日本空白状態になるから、そこに当然アメリカ軍配備されることになるわけでありますが、この配備という言葉は、日本語の普通の軍用語に従うと、軍を一定計画のもとに配置するということだと私は解釈します。そこで今度米軍出動の場合などと非常に関連を持つのですが、政府はこの配備という言葉解釈は、出動など作戦行動は含まないということに解釈してよろしいですか。
  20. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 配備という言葉はいろいろの意味があると思いますが、要するに軍備全体に関して適当な配備をするのでありまして、出動するとかしないとか、そういうはつきりした言葉意味は、広く解する以外には方法ないと思います。つまりこういうことは入つてないのだとか、こういうことは入つているのだとかいうはつきりした言葉の定義はないと思いますが、いずれにしてもこれは広く解釈されてさしつかえないものと考えております。
  21. 川崎秀二

    川崎委員 これは配備そのもの解釈というよりは、安保條約の第一條における基本的な問題なんです。総理大臣がこの配備関連して、どういう意味でこの字句を使つたか。また同時にその背後に、どういう考え方を持つてやつたのかということが、今日問題になつておる米軍出動の問題とも非常な関連を持つて来るのであつて、私は重ねて総理大臣の明快な御答弁を伺いたい。
  22. 吉田茂

    吉田国務大臣 岡崎大臣は現に局に当つて交渉いたしておるのでありますから、私よりもつと正確なる観念を持つて交渉に当つておられる人であります。ゆえに主管大臣よりお答えいたしたのであります。
  23. 川崎秀二

    川崎委員 現在の行政協定交渉には岡崎国務大臣は当つておられるだろうが、安保條約が成立したときには、あなたは心魂を傾けてこの問題に取組まれたと思う。従つてそのことを記憶し、そのことの関連において、行政協定とその後に起つて来る問題を解釈されたものと思う。総理大臣所信を聞きたい。
  24. 吉田茂

    吉田国務大臣 その問題は岡崎大臣が最もよく承知いたしておりますから、かわつて答弁いたします。     〔発言する者多し〕
  25. 塚田十一郎

    塚田委員長 委員外の発言は御遠慮ください。なお委員でない方で委員席にすわつておられる方は委員外の席におつき願います。
  26. 川崎秀二

    川崎委員 すると、岡崎国務大臣に一問だけ伺いますが、第三條の「アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」とある。配備は広い意味解釈してもいいのですか。
  27. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 配備というのは、むろんその字の意味しか解釈できませんけれども、アメリカ軍出動する場合は、安保條約の中にちやんと三つの場合が書いてあります。従つてその三つ以外の場合には出動しないのでありますから、配備という字をいかようにおとりになりましても、アメリカ軍出動の方は別問題で、はつきり條約に害いてありますから、さよう御承知を願います。
  28. 川崎秀二

    川崎委員 しからばお伺いをいたしますが、広い意味解釈しようと、あるいは狭い意味解釈しようと自由だということになれば、これは安保條約においてこのアメリカ軍出動の問題が明らかになつておらない、その上にまた話合いをする協定などというものもできておらないということになりますと、一体この問題はどこで規定をするのか、どこで話合いをするのですか、話合い基礎はどこでつくるか、これをお伺いしたい。
  29. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 この安保條約並びに行政協定なるものは、お互い信頼の念を持ち、お互いに友好の観念を持たなければ実際に動かない問題です。たとえばアメリカ軍隊がここにおりましても、日本のために戦う気持がない軍隊であつたならば、日本防衛にはならないのであります。またアメリカ軍隊がここにおりました場合に、日本国民が全幅的にこれを支援して、一緒になつて国を守るということでなければ、やはり目的は達せられないのであります。従つてそういう点は、いつ出るとか、どういうふうにするとかいうような問題は、やはり両国間で友好的かつ信頼を持つて協議してきまる問題であります。この問題はこれ以上のことは申し上げる必要はないと思います。
  30. 川崎秀二

    川崎委員 私は岡崎国務大臣からお説教を聞きに来たんぢやない。一体この條約にも規定してないし、行政協定にもきめないとすれば、どういう形できめるのか。そういう事態が起つた場合にきめるのか。それではおそいではないかという質問がどこから出て来る。それはどういう協定をしておるのですか。あなたは防衛協定か何かつくろうというんじやないですか。     〔発言する者多し〕
  31. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います。
  32. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定の内容はまだきまつておりませんから、別に申し上げておりませんが、きまれば、これはいずれわかると思います。そのときに行政協定の中に、全然あるとかないとかいうことは別に申し上げておらない。なお防衛協定というようなものを考えておるかということですが、そういうようなことは全然ありません。要するに国際的の情勢でありますから、急にそういうことが起る場合もむろんあるでしよう。しかし前もつてこれは危険だというような情勢があることもあるわけであります。そのときどきの場合によると思いますが、いずれにしても、日米両国政府の間に隔意なくこういう問題については協議をされるのは当然のことであります。
  33. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、こういう問題は行政協定の中に入る場合もあり得るということですか。
  34. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これはやはり一部から言えばアメリカ軍配備関係する問題でもありますから、ごく原則的な問題は入る場合もありましようと考えております。
  35. 川崎秀二

    川崎委員 入る場合もあり得るということをおつしやいましたので、さらにお尋ねいたしますが、先ごろの予算委員会において吉田総理大臣は、緊急非常事態が起つた場合に、アメリカ軍出動アメリカ自由意思である、こういうことをお答えになつております。これはそのまま確認してもよろしゆうございますか。
  36. 吉田茂

    吉田国務大臣 それはその当時すぐさま、質問に対する了解が私の誤解であつたということを言つて、訂正しております。
  37. 川崎秀二

    川崎委員 どういうふうに訂正いたされましたか。
  38. 吉田茂

    吉田国務大臣 速記録をごらんください。
  39. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、それは自由意思ではあるけれども、その際においては必ず話合いがあるだろう、隔意のない話合いをするのだということのように、そのあとで訂正をされたと思います。そこで私はお伺いしたいと思うのは、話合いをするその際にするのではおそいということであつて話合い基礎はそれならばどうするか、その話合いはどういう機関で決定するか、どういう方法で決定するか、そういうことぐらいは、日本国民としてはこの事態にあたつて聞いてむかなければならぬ重大な問題だと思うので、あらためてお答えを願いたいと思います。
  40. 吉田茂

    吉田国務大臣 隔意なく相談をいたしますから、その辺のことは政府におまかせください。
  41. 川崎秀二

    川崎委員 その際において指揮権はどうなりますか。
  42. 吉田茂

    吉田国務大臣 これも隔意なく相談いたします。     〔発言する者多し〕
  43. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  44. 川崎秀二

    川崎委員 隔意なく相談するといつても、その前において相談するが、アメリカ軍行動に対して日本が介入するということは、常識上は許されないという答弁もしておられるのであつて、そういうことになると、問題は非常に深刻になるのであります。安全保障條約第一條に予想するような、日本に対する外部からの武力攻撃によつて米国軍攻撃された場合には、アメリカ軍は必ずこれに反撃をする。必要があれば、攻撃行つた国の領土にまで追撃する場合があるかもしれない。そうすると、それに対して敵側はさらに強力なろ反撃を加えて来ることが予想されるのであつて近代戦は御承知のごとく電撃戦でありますから、以上のような攻撃を反復いたしておりますと、日本にある米軍戦争状態に突入するかもしれない。その戦争状態の突入によつて日本もまた巻き込まれるという非常事態が起つて来るのであります。総理大臣も御承知通りアメリカ武力発動常識として日本政府の介入するところではない。しかし話合いはするのだ。話合いはするが、向うの自由だということになれば、これは結局強姦されるということを意味するのであつて日本に駐留するアメリカ軍日本国民の知らない間に戦争状態を引起し、われわれはそれによつてアメリカに基地を提供しているのでありますから、戦時国際法上の軍事幇助を行うために中立を放棄することになり、自動的に即時戦争状態に入ることになるのであります。だから、その際においてぜひともきめなければならぬものは、防衛協定をつくるか、あるいはまたその他の法律的措置をもつてきめておかなければ、そのときになつて話合いをするというなら、これは米軍の自由にしてもかまわぬという考え方が少しでも頭にある総理大臣考え方でありますから、私は非常な危険状態に陥ると思うのである。これは国民は悲壮な気持でこの問題の推移をながめておるのであつて隔意のないお話合いをここで願いたいと思うのであります。
  45. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 元来先ほど申しましたように、協定を実際に有効に動かすためには、お互い信頼の念をもつてやらなければならぬわけであります。北大西洋條約の例を引くまでもなく、アメリカの最高司令官のもとに、あそこでは各国の軍隊が緊密に連絡して、欧州の防衛をやつておるわけであります。日本の場合におきましても同じことであります。ここでもつていたずらに権利を主張し義務をのがれるというような考えでなく、お互い隔意なく相談し、かつお互に信頼の念を持つてこの国を守る努力をいたしておる。片ひじを張つて権利の主張をするということでなくて、この防衛ができるものと私は考えております。従つて先ほど総理大臣の言われました通り両国間に隔意なき協議をいたし、しかも現在の情勢というものは、特に急激な変化のある場合もありますが、むしろ危険がだんだん来るというような情景は、多くの場合には予想せられるものでありますから、おそからざるうちに十分なる協議を遂げる。いろいろの場合がありまして、法律でつくり、協定でつくるということは、非常にリジツドといいますか、柔軟性がなくて、あらゆる場合に当るということはなかなかむずかしゆうございますから、その事態事態に応じて両国政府隔意ない協議を遂げて必要な手段をとる、これが最良のことと信じております。
  46. 塚田十一郎

    塚田委員長 川崎君の御発言時間はあと四分であります。そのつもりでお進めください。
  47. 川崎秀二

    川崎委員 質問に答えないでお説教ばかり聞かせておいて、そういうことではわれわれ質問にまじめにとつ組んでいるとは思えない。ぜひこの際お伺いしたい点は、秘密協定、了解事項というものはないというけれども、行政協定にも原則的には入つて来るかもしれぬというような答弁であつたのですが、こういう問題については話合いをしておるのか話合いをしておらぬのか、その点を伺いたい。
  48. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 両国間に隔意のない話合いをすべきものであるということについては、むろん話合いをいたしております。
  49. 川崎秀二

    川崎委員 そうすると、秘密協定がないということをしばしば言われておるのでありますけれども、現にそういう話合いをしておつて、そうしてある種の了解があるというならば、これは秘密協定といわなければならない。そこに問題があるのです。それは文書で確実に来ておるものかどうかは知りませんけれども、すでにそういう隔意ない話合いをすべきだという基礎だけは話し合つておるということになるならば、その内容を私は明示してもらいたいと思う。
  50. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは文書にしようがしまいが、安全保障條約を結んで、両国が緊密に連絡して、この国の防衛を全うするということについては、両国がそれについて緊密な連絡をして話合いをするということは、これは当然なことであります。これを秘密協定とかなんとか言われるのは私にはとうてい了解ができない。
  51. 川崎秀二

    川崎委員 そういうことは白紙委任状ともいうべきものであつて、私は事実岡崎・ラスク・カクテル協定か何か知らぬけれども、行つておることは事実だと思う。そこでこれは何べん押問答しておつてもしかたがありませんけれども、ぜひ今後の外交方針の基本として、公開外交というものを現在の政府は推し進めてもらいたい。秘密外交で国を誤つた例はかの有名なルーズヴエルトでもあるのであります。ヤルタ秘密協定において彼が誤りを犯したために、アメリカ国民から非常な非難を受けておる。偉大なる政治家であつてもそういうような非難を受けておるのでありますから、ぜひヤルタ協定に次いで東京秘密了解というようなものがあつたならば、日本国民は先に至つて非常な不利な條件をつけられることは必至であります。どうぞそういうことのないように願いたいと思う。私は吉田総理大臣は講和会議までは非常ながんばり方を示しておられたが、最近はどうもたががゆるんだんではないかと思う。この点をしつかりされて、ルーズヴェルトがあの問題で玉にきずを残したわけではありましようが、あなたはひとつきずに玉くらいはつくつてもらいたい。(笑声)この秘密協定なんというものなしに済んでもらいたいということを、国民とともに熱願をするものであります。  また今回の行政協定中心問題である裁判の管轄権の問題でありますが、これは数日来衆参両院で問題となりまして、輿論もこれをきわめて重視しております。独立を前にして、従来占領下であるがゆえに特殊の扱いが行われておつたアメリカ軍並びに軍属及び外国人の犯罪に対する国民の感情は次第に鋭敏になつて参りまして、富士銀行ギヤング事件に対する輿論の反響は従来になく深刻なものがあるのであります。この際においてわれわれが特にお伺いいたしたい点は、こまかい問題は別にいたしまして、米人の駐留地以外の犯罪までアメリカに裁判権があるということは、少くも北大西洋條約を締結しておる国々との間において非常に不平等な問題があるではないか、フイリピンでさえこの問題については、はつきりした協定を結んでおるにかかわらず、われわれは差違のある非常に不平等な裁判権の譲渡をしなければならぬのでありまして、これは治外法権ではないといつても、明らかに治外法権的性格を帯びておることは事実であります。私はこの問題に対して総理大臣はどういうお考えをもつておるのか、基本的なお考えをまず伺つておきたいのであります。
  52. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは裁判管轄権と称するものと考えますが、各国に外国の軍隊が駐屯した例は前にもありますし、現在もあるのであります。従つてこれに関する裁判管轄権というようなものは国際法にも一部規定があり、また国際慣例としてある程度認められておるものもあるのであります。われわれが今考えておりますものもまだ結論には達しておりませんが、この国際法ないし国際慣例を出ずるものではないのであります。なおフイリピンの場合には、基地以外の点ではフイリピンの裁判権が適用されるではないか、こう言われましたが、それはその通りであります。そのかわりフイリピンの場合は広大なる基地を設けまして、その基地の中ではフイリピン人といえども、第三国人といえども、アメリカ人といえども、全部アメリカの裁判権が適用されるのであります。つまりたての半面をごらんになりますと、これは一般の国際法学者は治外法権的色彩が強いというので、最近ではいわゆる属人方式といいますか、人によつて区別する裁判管轄権をするのが普通になつておりまして、北大西洋條約の行政協定ができますれば、これは別であります。このときはわれわれもこの北大西洋條約の協定によつて、新しい同様の協定をつくるつもりでございますが、それができるまでは、たとえばイギリスとアメリカとの間の協定もやはりこの属人方式をとつておるのであります。
  53. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村榮一君。     〔発言する者多く議場騒然〕
  54. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村榮一君に発言を許しました。川崎君に発言を許しません、西村君に発言を許しました。お申し合せの時間でありますから……。——西村君に発言を許しました。川崎君、西村君と御交代ください。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  55. 塚田十一郎

    塚田委員長 それではいま一問に限つて、ごく簡単に川崎君に結論をつけていただくよう、御発言を許します。
  56. 川崎秀二

    川崎委員 結論に入ります。元来この日米安全保障條約が結ばれましたのは、駐留米軍出動しなければならない事態が起るかもしれないという情勢を考慮してのことであります。しかるにこの問題に対しての御答弁がないことは、はなはだ遺憾でありますが、最後に私がぜひお伺いしておきたいことは、アメリカ上院におけるブラツドレー米国統合参謀本部議長の言明によれば、アメリカ日米行政協定の締結をもつて、講和、安保両條約批准の條件とすると言つておる。それまで待とうと言つておる。ところが日本はどうですか、すでに安保條約、講和條約の批准は終つておる。そして行政協定が成り立たないうちに、予算案が先に出て来ておるという状態です。條約そのものの締結というものが不可欠であるとアメリカ側は称しておる。それほど重大な問題です。しかるに日本においては、すでに、行政協定の内容が明らかにならないのに、予算案が出て来て、その予算案もすぐに採決を迫るというような状態では、これは民主主義の本則に誤つておると思うが、総理大臣はどういうお考えを持つておるか。われわれはこういうような事態が進行する以上は、予算案に対して反対とか返上とか、あるいは修正とかいう態度はとれない。予算案の承認というものを拒否しなければならない。そういうことに相なると私は思うので、総理大臣の明快なる答弁を私は要求しまして、質問を終ります。
  57. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 お答え申します。この行政協定安全保障條約の承認の要件でないということは、ラスク特使も明言しているところであります。     〔発言する者多し〕
  58. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村榮一君。
  59. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は本日総理大臣に向つて行政協定の問題について質問いたさんとするものでありますが、西ドイツにおいては、アデナウアー総理大臣は、西ドイツが防衛軍に参加するかいなやの問題を決定するときに、七十歳の老躯をひつさげまして、連日七時間にわたつて討論に立つておられるのであります。私は本日割当てられた時間は二十分でありますが、国会議員が時間の配給を受けて、その短時間にかけ足で総理大臣の意向を聞かなければならぬということは、日本の議会政治のために私は悲しむものであります。私は時間の問題よりも、国会議員が十分なる審議を尽して、日本の進路を誤らざるように、国民の代表として責任を果すのが当然であると思のでありますが、私は総理大臣に、議会を尊重するの態度でもつて、本日御答弁を願いたいのであります。私もまた日本の国策上不利になるような、総理大臣のあげ足とりの演説をしようと思いません。どうか国民の憂えているところを了とせられて、十分国民が納得するような御答弁を煩わしたいと思うのであります。私は時間がありませんから端的にお伺いいたします。  総理大臣は、先般来しばしば、日本の自衛力はいかなる場合があつても、海外に出動しないという声明がございました。国民はこれを了といたしております。そこで私は重ねてだめを押しておきたいことは、朝鮮動乱の休戦協定が万一決裂したといたしまして、日本は国連協力の名によつて出動を要求せられても、やはり従来の声明通り、断固として拒否せられるか、重ねて私は総理大臣の御見解を承つておきたいと思うのであります。
  60. 吉田茂

    吉田国務大臣 私が従来答弁いたしているにもかかわらず、しばしば同じ問題を繰返されるので、私は質問者の誠意を疑うのであります。ゆえに私は私の答えた以外について、岡崎国務大臣交渉の衝に当つて、その議事の経過についてお話することがあればと思つて、私は岡崎君に譲つておるのであります。さらに同じようなお尋ねでありますが、警察予備隊その他は海外に出動させることはいたさせません。
  61. 西村榮一

    西村(榮)委員 総理大臣のただいまの御答弁、私は満腔の敬意を表して承つておきます。どうかその意気で御貫徹願いたいと思うのであります。  次に先ほど岡崎国務大臣川崎君との間におきまして、あるいは昨日の参議院の外務委員会において、岡崎国務大臣は、行政協定をとり結ぶに際しまして、日本の裁判権の問題に言及せられております。その裁判権の性格は、属人主義の原則によつて行政協定は結ばれるのだ、こう御説明になつておるのでありますが、総理大臣はそれを御承認なさいますか。
  62. 吉田茂

    吉田国務大臣 交渉については、岡崎君がその衝に当つてつて岡崎君に全権をゆだねてあります。
  63. 西村榮一

    西村(榮)委員 その岡崎君のお話を承認なさいますか。(「愚問だ」と呼ぶ者あり)しからばお伺いいたしたいと思いますが、属人主義の原則と領事裁判権の原則とは、どこに相違があるかということをひとつ承りたい。
  64. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 領事裁判権と属人主義というのは、これは全然性格の違うものと私は考えております。現在の属人主義というのは、あまり正確な言葉ではありませんで、便宜上私も使つておりますが、属人方式とかいつておりますが、これは一国の軍隊が他国に駐屯する場合の裁判官管轄権の一つの方式と心得えております。
  65. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は総理大臣にお伺いしておるのでありますから、総理大臣は努めて御答弁を願いたいのであります。     〔「事務的なことじやないか」と呼びその他発言する者あり〕
  66. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  67. 西村榮一

    西村(榮)委員 これは事務的ではありません。領事裁判権というものは、きわめて征服的なものであり、かつ人種的差別がつくというので、近世の国際法上においては、この領事裁判権は漸次属人主義との法制上の区別は、思想的にも法制的にもこれは区別がつかなくなつたのでありまして、岡崎さんはただいま属人主義ということは領事裁判と全然違うとおつしやるのであります。あなたがしばしばおつしやつたように、あるいは総理大臣が言われたように、この行政協定のモデルは北大西洋同盟並びに米比協定にとつておるのだと言われるのであります。しからば北大西洋同盟にはどういうふうな治外法権的特権を駐留軍に与えているかと申しますと、それは合衆国軍隊が基地外において軍事的性質の犯罪並びに合衆国の軍隊が軍事施設、装備、その他アメリカ合衆国の安全を脅かす犯罪を犯したときにのみ合衆国の裁判権があると、この裁判権は限定せられておるのであります。しかるに日本においては広汎なる裁判権をアメリカ当局が持つということになるのでありますから、これと日本行政協定によつて結ばれる属人主義とは、一体どこに相違がございましよう。なぜ相違を来すか。この原則をなぜ行政協定にあたつて日本は主張しないのであるか、総理大臣の御見解を承りたい。
  68. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 まず初めの点でありますが、いわゆる領事裁判権というのは、これも俗称と思いますが、これは軍人であろうと一般のシヴイリアンであろうと、全部ある一定国の国民に対してはその裁判管轄権を持つのであります。また裁判権の内容については、刑事、民事を問わず、その国の裁判管轄に服するのであります。私がただいまいわゆる属人方式は違うと申しましたのは、一国の軍隊が他国に駐屯する場合のことでありますから、日本の場合でいえば、たといアメリカ国民といえども、軍隊に所属しない者は別に裁判管轄権がないのであります。また民事については全然別であつて、これは刑事だけであります。そこで全然話が違うのだ、こう申し上げるのであります。なお北大西洋條約に基く行政協定は今お話通りでありますが、遺憾ながらこれはまだ成立していないのであります。成立いたしておりませんから今の国際慣例から申しますと、フイリピンとアメリカの間に結ばれたような、いわゆる属地方式であるか、あるいはイギリスとアメリカとの間に結ばれたような属人方式であるか、この二つしかはつきりしたものはない。そこで属地主義よりは属人方式の方が一般にすぐれておるといわれておるのでありますから、この属人方式にだんだん各国がよつて来ておる。こういうことでありまして、将来北大西洋條約の行政が成立いたしました場合は、日本もこれを選択する権利は当然留保いたすつもりであります。
  69. 西村榮一

    西村(榮)委員 属人主義というのは、軍人にあらざる人々といえども、基地外におけるその軍人並びに軍属、家族の日本の国法違反に対して適用される方式ということになりますね。
  70. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは全部が全部ということではありません。つまり各国によつて違いますけれども、たとえばイギリスとアメリカとの間の協定によりますれば、やはりそういうふうになつております。また今おあげになりました北大西洋條約の行政協定、これはまだできておりませんけれども、それでも国に所属するものとしては軍人、軍属、いわゆる文官及びその家族、こういうことに承知いたしております。
  71. 西村榮一

    西村(榮)委員 領事裁判と属人主義との相違は、シヴイリアンの裁判権もその国にないのだという御説明になつたのでありますが、これは国際條約並びに国際慣例によりますれば、その駐留軍がその国に法権免除の特権を与えられておるのは、軍人としての任務遂行にのみ限定されておるのであります。従つてその軍人が基地を出まして、個人の資格において犯した犯罪というものは、近世国際條約、国際法学のもとにおいては、これはすべからくその国の裁判、属地主義によるのが、これは文明国家の対等の條約といわねばならないのでありまして、あなたのおつしやるようなシヴイリアンの裁判権もないのだということが領事裁判であるということであるならば、軍人がその法権免除の特権を与えられておるのは、先ほど申しましたように、軍人としての職務遂行のための場合のみ免除されておるのである。しからばアメリカ軍人といえども、基地を離れて個人の行動をしたときには、あるいはその家族が日本の国法を基地外に犯したときには、これは一般アメリカ人と同じように日本の法律をもつて裁判するのが独立国家として当然ではないか、この点を承りたい。
  72. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま北大西洋條約の加盟国の間、アメリカと他の加盟国との間に行われておりまする協定によりましても、いわゆる属人法式がとられておるのであつて、これを今度北大西洋條約の行政協定によつてお話のような点に改めようといたしておるのであります。従つて現状においてはそうなつておらないのであります。われわれの方も現状においては各国の例と同様のことをいたそうといたしておるのでありまして、北大西洋條約の行政協定が成立した場合は、これを選択する権利は当然持つておる、こういうことであります。
  73. 西村榮一

    西村(榮)委員 北大西洋條約では、先ほどお話申し上げましたように、合衆国の軍隊の、軍事基地外における軍事的性格の犯罪以外には、その国の裁判権は存在いたしております。もう一ぺん読み返してごらんなさい。  そこであなたが言われるように、この條約がかりに批准されていないから、批准されるまで属人主義の原則によつて裁判権がアメリカ側にあるのだ、こういうことでありますならば、私は原則として、協定の中には、このモデルに従つて私は日本の裁判権を確立し、しこうして占領軍から駐留軍への切りかえの間における一定の時間並びにこれらの国々が批准を完了されて、この原則が世界的に確立されるまで、これは変則的な問題として、日本アメリカ側と協議して裁判をするというふうにとりきめるのがあたりまえなんであつて、原則的にアメリカの裁判権を認めて、将来それを修正するということでは、一国の條約の体系をなさないのでありますが、これを岡崎国務大臣はどうお考えになつておりますか。私はこれと相関連して、しからば日本は米英條約、米仏條約、あるいは北大西洋條約のモデルがとれぬといたしますならば、百歩譲つて考えても、米比軍事協定の第十三條には、フイリピンはどういう條約を裁判権の上に求めておるかと申しますと、まず第一に合衆国の軍隊の所属員が基地外で犯した罪で被害者も合衆国軍隊の所属員である場合、第二は合衆国の軍事上の安全に反するもの、第三においては基地外において合衆国軍隊が特定の軍務に従事中に犯した犯罪、この三点以外にはフイリピンの裁判権をフイリピン政府は認められておるのであります。これを対照して、日本の現在進行中の裁判権の原則に認め、しかも家族にまで適用するということは、一体日本は、どこの根拠をもつてそういうことが協定に結ばれるか。近世の文明の歴史にはそういう歴史がありません。承りたい。総理大臣から承りたい。
  74. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいまフイリピンの例をとうとうとお述べになりましたが、あなたは基地内における裁判管轄権が、フイリピンとアメリカ協定ではどうなつておるかごらんになりましたでしようか、基地内においては排他的にアメリカの裁判権が通用いたすのであります。これがすなわち属地主義であります。広大な地域をつくつて、その基地内ではフイリピン人も第三国人もアメリカ人もすべて排他的にアメリカの裁判権が適用される、そのかわりその基地の外ではフイリピンの裁判権が適用されるということであります。これがつまり属地主義なのであります。そこでフイリピンの裁判権か……。     〔発言する者多し〕
  75. 塚田十一郎

    塚田委員長 林君に御注意を申し上げます。
  76. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 全然適用されない地域が国内にあるということがつまり治外法権的であるというので、最近ではこれを改めて属人的な方式にかわりつつある、こう先ほどから申し上げておるのであります。なおイギリスとアメリカとの間の話合いも、ただいまの北大西洋條約の行政協定ができますれば別でありますが、それまでは今われわれの考えているようないわゆる属人方式によつておるのであります。要するにただいまの国際慣例では、新しい北大西洋條約の行政協定という方式ができるまでは、今すぐにあなたのおつしやつたような属地的な協定か、属人的な協定しかないのでありますから、その二者のどちらかを選ぶということになると思います。
  77. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村君、あと三分であります。
  78. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は時間がありませんから岡崎君と結論をつけることはできません。問題は……。     〔発一言する者多し〕
  79. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  80. 西村榮一

    西村(榮)委員 裁判権の問題と基地の大小の問題とは、これは別個に取扱わなければならぬ。基地が向うが大きいからというので裁判権をルーズにするわけには行きません。基地の大小と裁判権という国権の制限を受くる事項とは、おのずとこれは法制上政治的な性格として別に扱わなければならぬ、私はそれを申し上げておきたいのです。  そこで私は時間がありませんから総理大臣お尋ねしたいのです。総理大臣は安政五年七月二十九日、アメリカとの間に締結されたる江戸條約を御存じでありますか。——総理大臣、安政條約を御存じですか。     〔「答弁の要なし」と呼び、その他発言する者多し〕
  81. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  82. 西村榮一

    西村(榮)委員 御存じなければ私が申し上げましよう。安政五年七月二十九日、アメリカとの間に締結されたる江戸條約には何と書いてあるかと申しますと、裁判権の問題に対して、日本人に対して法を犯せしアメリカ人はアメリカ領事裁判所にて吟味の上アメリカの法度をもつて罰すべし、これが安政五年締結されたところの江戸條約であります。この九十余年前の江戸條約と今日岡崎君の交渉せられておる裁判権の問題とを対照いたしまして、どこに相違があるか、日本人に対して法を犯せしアメリカ人はアメリカ領事裁判所にて吟味の上アメリカの法度をもつて罰すべし、これが九十余年貫かれたるアメリカの属人主義の法理的原則、治外法権である。これを撤廃するために日本国民は明治二十七年まで臥薪嘗胆、血のにじむ努力をいたしまして、遂に明治三十二年にこれを撤廃した歴史は外交官であるあなた方は御存じでありましよう。これと現在の属人主義とどこが違うか承りたい。
  83. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは普通の国際関係において行われるものでないので、しばしば申しおりますように、一国の軍隊が他国に駐屯するという特殊な場合の規定であります。ただいまおつしやつたのは普通の国際関係において軍隊等がない場合の一般の規定であります。そこで一国の軍隊が他国に駐屯する場合の例は、過去においてもしばしばあり、現在においてもしばしばある。それに基いての国際法ないし国際慣例というものはすでに相当程度詳しく成立しておるのでありまして、これに基いてわれわれは協定を結ばんとしておるのであります。
  84. 塚田十一郎

    塚田委員長 西村君、お時間であります。御交代を願います。
  85. 西村榮一

    西村(榮)委員 あと一問だけ……。
  86. 塚田十一郎

    塚田委員長 ではあと一問簡潔に。
  87. 西村榮一

    西村(榮)委員 私は総理大臣にお伺いしたいのは、本国会においてあなたがしばしば声明されたところによりますと、去る一日の予算総会において私の質問に対して、本行政協定は予備交渉の段階であつて、正式調印は講和條約発効後にされるのである、こう御答弁なさいました。次に岡崎国務大臣は十二日の私の質問に対して、近く調印の運びになるであろうという答弁をなさいました。ここに閣僚とあなたとの間には重大な答弁の食い違いを来しておる。しかもブラツドレー統合参謀本部議長は今から一週間前、アメリカ上院において証言していわくこの行政協定アメリカの対日講和條約の批准の基礎になるのであつて行政協定が成立しなければ講和條約を拒否すべきである。この三者の意見は完全に食い違つておるのであります。日米安全保障條約第三條には何と書いてあるかと申しますれば、合衆国軍隊日本並びに日本の周辺に駐兵するために、その兵力の配備について両国政府行政協定によつてこれをとりきめる、こう書いてある。これは合衆国軍隊の兵力の配備について行政協定が限定されておるのであつて日本の裁判権、予算権あるいは国権に大なる制約を加えるところの、国民権利、義務に影響するところのこの條約上のとりきめは、私は日米安全保障條約によつて現内閣に白紙委任状を国会は出しておらないと思うのであります。従つて私は行政協定国会審議を経なければ効力を発生しないと確信しておるのでありますが、時間がないからこれは別といたしますが、先ほど申し上げましたように、総理大臣はこれは予備交渉で正式調印は講和條約発効後にする、岡崎国務大臣は来週中に調印すると言い、アメリカのブラツドレー統合参謀本部議長の証言とも食い違つております。私はここに今その御答弁の食い違いを総理大臣に難詰しようとは思いません。けれども総理大臣が一日に私の質問に対して答弁された、これは予備交渉であつて正式調印は條約発効後になすのであるということが、万一諸般の情勢から裏切られてその、言明を取消さなければならない状態に達したときには、総理大臣はいかなる責任をとられるか、その点を承つておきたい。
  88. 吉田茂

    吉田国務大臣 これは調印といいますか、いずれにしても両国全権の間に話がきまつたことはその間に有効に成立し、調印というかどうか知らないけれども、一応の協定の達した場合には調印もしくはイニシアルをするということは、これは交渉において当然な経過であります。
  89. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はこれで終ります。ただ予備交渉と言われたあなたの言明はよく銘記しておいていただきたい。同時に発言者としてこの政治的責任をとつていただきたいということを申し上げて、私の質問を終ります。
  90. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早八十二君。
  91. 風早八十二

    ○風早委員 條約に基くアメリカ軍の駐留は、兵員はどれくらいであり、基地はどこどこにあるか。大体この駐留軍の編成のあらましの報告を願いたいのであります。
  92. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは日本の安全を保障するに足る兵力でありまして、その兵力は時々刻々違う場合もありましようし、また種類によつて異なる場合もありましようし、軍の機密に属することでありますので、報告することはできないと考えます。
  93. 風早八十二

    ○風早委員 軍の機密というけれども、民主国においては国会の前に軍の秘密はありません。アメリカにおいても軍の問題は上下両院の軍事委員会があります。原爆のようなきわめて重要な軍の機密に属すると考えられる問題に対しても、上下両院の原子力委員会があります。     〔「ソ連はどうだ」「ソ連は何もないぞ」と呼び、その他発言する者多し〕
  94. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  95. 風早八十二

    ○風早委員 軍の統帥はあくまでも政治に従属しておるのであります。ましてや日本においては、日本は憲法を持つておる。この憲法は戦争を放棄し、軍隊を廃止しておる。軍の機密なるものはあり得る余地がない。もし日本が今独立するというならば、どこに一体軍の機密というものがあるか。アメリカの軍についても、当然日本国会に対してその内容を報告する義務がおると考えるけれども、この点について岡崎国務大臣はどう考えるか。
  96. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 他国の地の機密を外国の国会に報告したという例は聞いておりません。     〔「日本が費用を出しているじやないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  97. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  98. 風早八十二

    ○風早委員 戦前におきましては、日本では、政治から独立した軍の統帥権というものは、大元帥というものがこれを掌握しておつた。一方政治は天皇のもとに政府国会が従属しておる。しかしこの天皇と大元帥は同一人であつた。そこで軍はどこまでも政府国会から独立した権限を持つて、この大元帥をかさに着て、国会に対しても報告の義務を負わなかつた。しかしながらその戦前においても、なお兵制については当然国会に報告しておる。しかしながら今日は、戦後は、日本の国家体制は一体何だ。今、西村委員も言いましたが、諸君は今から百数十年前のあの江戸條約の昔を考えておるのだ。吉田総理は今ここであらためて、リツジウエイあるいはその他の米軍司令官を日本の大元帥に迎えようというのであるか。これは吉田総理大臣に答えてもらいたい。     〔「答弁の要なし」「そんなばかなことがあるか、総理答弁だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  99. 塚田十一郎

    塚田委員長 御答弁がないそうであります。
  100. 風早八十二

    ○風早委員 これは重大な問題だ。総理答弁を求める。
  101. 塚田十一郎

    塚田委員長 重ねて申し上げますが、御答弁がないそうでありますから、御質疑をお続けください。
  102. 風早八十二

    ○風早委員 吉田総理大臣は、この質問に対して御答弁がないところを見ますと、これはこういう場合があり得るということを予想しておると、われわれは判断せざるを得ない。戦前において立憲政治の立場から吉野作造博士は「帷幄上奏論」を著わした。そうして軍の統帥と政治とを分離して、大元帥のもとに政治から独立しておるこのやり方に対して、まつこうから反対した。しかしながら、それでもとにかく兵制についてまでも国会に対して黙して語らずという専制ぶりというのは、この吉田政府が初めてだ。われわれが政府米軍日本を売り渡すというのはこれなんだ。この米軍の基地の所在、米軍編成並びにその行動のいかんということは、これは日本国民の負担行為であります。日本国民がどれくらい今税金をふやされておるか。これはみんなこれに関係しておる。その意味においてもこれを明らかにしなければ予算審議はできなかつたはずなんだ。さらにアメリカ軍行動のあらましということを知つておくことは、われわれ実際生命財産の保護の必要から当然なんだ。飯田君など軍事スパイという名目でやられているけれども、この飯田君は一体何をした。飯田君はただ政府が公然と発表しておる地図を持つておつたということが軍事スパイだという。この地図は政府が公然と発表しておる地図である。こういう事態は今後もしばしば起ると思うのでありますが、政府はまた再びこういう事態に対して、軍事スパイという名目をつけてこれを検挙するつもりであるか、これを明らかにしてもらいたい。
  103. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 必要があれば適当な措置はどんどんとります。
  104. 風早八十二

    ○風早委員 必要があればではわからない。いかなる必要かを聞いている。いかなる根拠かを聞いている。渋谷の駅頭において、愛国行進曲をかけて再軍備、徴兵促進運動というものが行われておる。これに対しては政府は何らの措置をとらないでやらしておる。しかも同じ渋谷の広場において、今学生諸君が徴兵反対、再軍備反対の署名運動をやつておるが、これをたちまち取締り、警察にぶち込む。大体アメリカのやり方、そうしてそれに屈従しておるところの吉田政府のやり方は、この日本の解放運動、日本の民族の平和と独立を闘おうというこの運動を圧殺することである。この点はさらに中国におきましても同様である。中国が民族の解放運動をやる。これを圧殺しようとしているのはどこであるか、アメリカじやないか。インドシナはどうか。フイリピン、インドネシア、至るところアジア諸国に対する共通の干渉者として現われておるのはだれであるか。すべてこれはアメリカ帝国主義ではないか。こういう点からして、政府が今やつておるところの弾圧政策というものは、日本の独立をかちとろうとする運動を圧殺するものであるということを確信せざるを得ないのであるけれども、吉田総理大臣日本の愛国運動に対してどういう態度をとるつもりであるか、この際最後に総括的にこの質問に対してお答え願います。
  105. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 ただいま風早君の愛国運動という意味は私たちにはわかりませんが、われわれは法規に基いて適当な処置をとつております。渋谷街頭の事件におきましても、都の公安條例に反するから取締るのであつて政府としては決して無理な弾圧なんということはやつてないのであります。
  106. 風早八十二

    ○風早委員 およそ徴兵あるいは再軍備ということは、憲法において禁ぜられたことである。また日本国民が今後奴隷的状態に陥れられ、戦争にかり立てられることである。従つてこれに反対しておる運動が今起つておる。この具体的な運動がどこの法令に反する。これが今の法務総裁答弁ではさつぱりわからない。
  107. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 街頭において都の公安條例に反するような行為をやつたからこれを取締つておるのであります。すべて政府は適法な法規に基いて措置をとつておるということを断言する。     〔発言する者多し〕
  108. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  109. 風早八十二

    ○風早委員長 この徴兵反対の署名運動のどこが法規に違反しておるか、それが一つもわからない。これは明らかに徴兵反対の愛国運動を圧殺するとしか考えられない。  私は次に裁判権の問題あるいは治外法権の問題についてお尋ねしたいのでありますが、この問題について、属人主義は当分の間という答弁政府当局によつて行われておりますが、当分の間ということは一体いかなる意味であるか。
  110. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 北大西洋條約の行政協定の効力を発生するまでということであります。
  111. 風早八十二

    ○風早委員 北大西洋條約においても属人主義は破れておる。しかるに日本が今この属人主義というものをとる、こういう理由がどこにあるかということを聞いておる。
  112. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど西村君の御質問に答えた通りであります。
  113. 風早八十二

    ○風早委員 当然の常識に従うと、今の兵制においては、近代的な軍隊というものは一人に当つて大体七人の軍属を持つことができる。その軍属も一人一人がまた数名を持つことができる。かりに今、日本で六個師あるとしても、たちまち数十個師にふえてしまう。そういう実に莫大なる人員というものが日本国内にうようよとしておつて、これが治外法権を持つてアメリカの裁判権のもとに属して、日本の裁判権から排除される、こういう奴隷状態というものを今政府がやろうとしておる根拠は一体どこにあるか。
  114. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 先ほどからしばしば申しておる通り、これは国際法ないし国際慣例の原則に基いて協定をいたそうと思つております。
  115. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君、時間でありますので、あと一問で御解決をおつけ願います。
  116. 風早八十二

    ○風早委員 今の日本警察は、アメリカの兵隊のギヤングが白昼銀行を襲撃する、こういうふうな事件があつても、これに対して何ら取締ることができない。これはもちろん占領下であるということを政府は答えるであろうが、こういう点を今度の行政協定において一体どういうふうに改めて行くか、この点についてのはつきりした答弁を求めたいのであります。
  117. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 行政協定におきましては、先ほど申した通り国際的に行われている範囲のことは、むろん行うようにいたすつもりでおります。
  118. 塚田十一郎

    塚田委員長 赤松勇君。     〔発言する者、離席する者あり〕
  119. 塚田十一郎

    塚田委員長 では風早君、簡潔にあと一問をもつて打切りを願います。
  120. 風早八十二

    ○風早委員 こういう事件についてはすでに草鹿刑政長官も、去年あたりからこういう事例が相当たくさん出ておるということを言つておる。これに対して警察が何ら取締ることができない。またかりに日本警察がこれをつかまえても向うへ渡さなければならない。こういうことが一体独立するというこの日本に、はたして通用することであるか。今政府答弁によれば、これは国際慣例に従つてというけれども、一体北大西洋條約——諸君が一番今範としようとしておるところの北大西洋條約においても、属人主義が排除せられておる。そういう国際関係を全然度外視して、日本だけが進んでアメリカの奴隷になろうとしておる。今アメリカ日本並びに中共並びにアジアの諸国に対する共通の干渉者として出て来ておる。従つて政府の今のやり方、政府の立場というものは、完全にこのアジア侵略の作戦部隊としての、アメリカの傭兵に今なり下つておるのであります。われわれ日本共産党が今日何もやらなくても、実際国民日本の平和と独立をかちとるために、あくまでこの再軍備と徴兵に反対し、そして米軍日本からおつぱらうということを念願せざるを得なくなつているのだ。それは日本の利益のため、独立のため、国民の生命財産を保護するために当然の必要として、国民自身が今立ち上つているのである。われわれ日本共産党はただその先頭に立つておる前衛であるにすぎない……。
  121. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に申し上げます。簡潔に質疑の要点を申し述べられんことを望みます。
  122. 風早八十二

    ○風早委員 われわれが何をしなくても、全国民は必ずアメリカ軍隊並びにこれに屈服して日本の国を売り渡そうとしておるところの吉田政府を追い払わざるを得ないのであります。われわれはこのことを宣言して質問の最後といたします。(拍子)
  123. 塚田十一郎

  124. 赤松勇

    赤松委員 ちようど六三ベースのときでございましたか、私は吉田内閣総理大臣に、戦争犠牲者の問題に関連いたしまして、日本の将来につきましてお話をお伺いいたしました。その際は総理からきわめて誠意あふふるる御答弁をいただきました。ちようどそのときは総選挙の前でございまして、お互いにフエア・プレーで総選挙をやろうと言つてわかれました。爾来ちようど三年になります。再び私は今総理質問するのでございますが、今日は事情が非常に違つておりまして、国民は迷つておるのでございます。ある者は非常に不安におびえており、ある者は疑惑を持つており、この国会の論議、審議の過程を、ほんとうに子供を抱いた母親、戦争の犠牲者、青年、多くの日本は、それこそいろいろな感慨を込めてこれを見守つておるのでございます。以下私は時間がございませんので四、五点要約をいたしまして、御質問をしたいと思うのでございますが、どうぞひとつ吉田内閣総理大臣は、この日本人の切実な気持を十分おくみとりくださいまして、私に答えるとともに、国会を通じて、不安と疑惑におののいておる国民に対してお答えを願いたいと思うのでございます。  まず第一点でございますが、この点は私寡聞にいたしましてあまり国会において論議がなされていないように思うのでありますが、ダレス特使は直接侵略に対して、日本の安全を米国軍隊の手で守つてやろうということを、しばしば声明いたしました。これに賛成する者もございます、これに反対する者もございます。それはいろいろな考え国民が持つことは自由でございますが、少くとも国会やあるいは政府は、このダレス特使の声明に対しまして、われわれ自身の自主的な立場なり方針なりをきめなければなりません。そこで問題になりますことは、米軍が、いわゆる直接侵略に対して守つてやるんだ、こう簡単に言つてはくれますけれども、私どもはかつての太平洋戦争におけるフイリピンの状態を忘れるわけには参りません。御案内のように、当時フイリピンは、マツカーサー元帥の率いまする米軍が、いわゆる作戦的後退、戦略的見地から米軍を撤退いたしました。そうして上陸いたしました日本軍に集中爆撃を浴びせたのでございます。そのためにフイリピンの多くの民衆は、その巻添を食らつて多数の被害者を出したことは総理十分御存じであると思うのでございます。また南鮮におきましても、これまた安全を保障するといつて、国連軍が出てくれましたけれども、今日南鮮におきまする朝鮮人の悲惨なる状態も、総理十分御存じであると思うのでございます。私どもはダレス特使が何度御声明くださいましても、それをただ簡単に、私どもはありがとうございますといつて受取るわけには参らぬのでございます。南鮮のような状態になるんじやないか、かつてのフイリピンのような状態が生れるのじやないか、これを国民は心配しております。ことに私どもが知らない間に原爆が日本に持ち込まれ、その原爆が日本の知らない間に使用され、しかも外敵から知らない間に報復爆撃を加えられる。こういうような状態が生れたといたしますならば、これは党派を越え、すべての人たちの立場を越えた全日本人の、それこそ悲惨な民族の運命に関する問題でございます。吉田総理はその際にはたして日本の安全を保障する具体的な方策というものがあるかどうか、ダレス・吉田会談において、このことについてのお話合いが十分になされておるかどうか、今日米英のさまざまな軍備力を日本防衛にまわすというようなことは、困難なように聞いております。時間がございませんからその資料は提示いたしませんが、困難なように聞いております。その際に日本はどうするのであるか、米国におきましては、原爆に備えてただいま米国自身は、その防空演習に熱中しておるということを私は聞いております。日本におきまして、この原爆戦、近代戦に対する準備が一体どこのどこで行われておるでございましようか。かように私どもは無手勝流で、それこそわれわれはそのダレス特使のわずかの一つ言葉をたよりとして生きておるような印象を、国民に与えておるのでございます。どうぞこの際、日本の安全保障がこのようにできるんだということの具体的な方策を、吉田総理大臣から国民に示していただきたいと思うのでございます。
  125. 吉田茂

    吉田国務大臣 日本の独立安全の保障についていかなる話をダレス氏と私がいたしたか、その会談の内容については、ここにお話をする自由がありませんが、しかし日本が独立いたした以上は、その独立安全を保護するためには、アメリカといえども決してこれは他国のこととは考えないのである、ゆえに集団攻撃に対しては、ともにともに集団防禦に立とう、大体の話はそうであります。いかなる場合に、こういう場合に、ああいう場合にと、個々の場合はあえて必ずしも考えておりませんが、しかし一旦危急の状態が生じた、あるいはまた日本の独立を脅かすような不幸な事態が生じた場合には、米国政府としては安全保障條約の規定に従つて、互いに援助し合うという話はできておるのであります。
  126. 赤松勇

    赤松委員 この問題に関連をいたしまして、先ほど政府の方から相互信頼の上に立つてという言葉をしばしば聞くのでございますが、もとより私どもは、それがどの国でございましようと、相互信頼の上に立つて友好関係を結ばなければならぬのでございます。ただこれについて問題になりますことは、これは総理はあまり地方にお出かけにならないのでおわかりにならぬかと思うのでございますが、先般も名古屋におきまして演説会を催したところ、二万三千人の聴衆が集まりました。その際に多くの青年、ことに高等学校の青年が非常に多いのでございます。この高等学校の諸君にいろいろ聞いてみますと、高等学校の諸君が考えておりますことは、徴兵制度の問題とそれから日本軍隊の統帥権が外国人に握られるということに対しまして、非常な不満とそれから非常な不安を感じておるのでございます。そこで私心配いたしますことは、かりにアメリカ日本に対しまして何ほど国内の武装態勢を要求いたしましても、またかりに政府がそれを国民にお勧めになりましても、統帥権が外人の手に握られ、外人の指揮命令下に日本の青年が唯々諾諾と私は死んで行くとは考えないのでございます。これは西ドイツにおきまする例でもおわかりになるように、統帥権の問題は、民族感情に与える影響、きわめて大きいのでございます。ことに徴兵制度をしくか、志願兵制度をしくかという問題につきましても、政府がお考えになつているように、そう簡単に今日の青年は、志願兵制度でございましようと、徴兵制度でございましようと、その警察予備隊あるいは保安隊に応募するとは私は考えられないのでございます。それほどに今そういう問題に関するところの青年の決意は、今日むしろ入隊拒否の方向に行つていると私は判断しておるのでございます。(「ノーノー」)むろんいろいろな判断がございましよう。判断は自由でございましようけれども、少くともこういうような青年の動きに対しましては、為政者として敏感でなければならぬのでございます。もし政府が予想しておられますように、この十月に保安隊に切りかえて、多くの青年を募集されましても、その青年が思うようにその保安隊に入隊しなかつた場合、政府としてどのような措置をおとりになるか、ただいまの質問関連をいたしまして、政府の、ことに吉田内閣総理大臣のお考えを全国の青年にかわつてお伺いするのでございます。
  127. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 ただいま赤松さんからいろいろ御注意になりまして、われわれも青年の気持とかあるいは一般国民考え方ということについては、深甚な注意を払つております。われわれの立場から言いますれば、青年のみならず一般国民が奮つて自分の国は自分で守るのだという気持になつてもらいたいのであります。それに関係しましてたとえば警察予備隊といいますか、何か日本の将来のいろいろのものが外国の指揮下に立つとかいうような心配その他があるというお話でありますが、こういう点につきましては、国民の自分の国を愛するという考えをそこなわないように、われわれは細心の注意を払おうと考えております。もつともただいまの国際的なやり方といいますか、情勢と申しますか、これは北大西洋同盟條約でも御承知のように、欧州の各国の軍隊が一緒に統合いたしまして、おのおの主権もございましよう、統帥権もございましようけれども、あえてこれを強く主張せずに、お互いに助け合い、そしてアメリカのアイゼンハウアー元帥を最高司令官に迎えて、統合司令部をつくつておる、こういうような現状なのでありまして、欧州におきましても自国の主権とか自国の統帥権ということをむやみに主張して、国全体の防備を誤ることのないようにという考え方に、だんだん傾いております。しかしながら日本の場合は必ずしもそうも行きますまいし、ただいま赤松君のお話のようなこともありますから、慎重にかつ注意を持つて、この問題について善処したいと考えております。
  128. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田寿男君。
  129. 赤松勇

    赤松委員 もう一問だけ……。     〔「結論をつけさせろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  130. 塚田十一郎

    塚田委員長 それでは簡潔に質疑の要点を述べられて、あと一問に限つて発言を許します。
  131. 赤松勇

    赤松委員 一点だけお伺いいたします。  米ソの間にたとえば宣戦布告が行われた場合、あるいは国連加盟国の間にいろいろな戦争状態の起きました場合、国連協力の名のもとに日本が軍事的に協力する義務があるかどうか、この点につきまして、吉田・ダレス会談においてはどのような話合いが行われたか。特にその際日本憲法との関係はどうなるのであるか。私の聞くところによりますと、この秋に総選挙を断行して、そうして来春憲法を改正して、公然と再軍備を行つて、海外派丘等の戦争体制をつくり上げるのだというようなうわさも聞くのでございますが、はたしてその真偽はどうでございましようか、政府所信はいかがでございましようか、これを最後にお尋ねしたいのでございます。
  132. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 国連協力につきましては、われわれはできるだけいたしますけれども、自分の能力にはおのずから限りがあります。また国内の憲法とかその他の法規に制限せられる点もありまして、何でもできるというわけに行きません。憲法なり法律なりその他実情によつて制限された範囲内でできることをいたすのでありますから、たとえば予備隊の海外派遣等については、総理からたびたび申されているように、そういうことはないわけであります。その他すべてわれわれは国内の憲法その他に基いて行動するのでありますから、その範囲を出ることはないと確信いたしております。
  133. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田寿男君。
  134. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は同僚の予算委員が急に旅行いたしまして、今日突然予算委員になりましたので、あるいは私の質問の中に、注意はいたしますけれども、重複をするようなことがあるかもしれません。そのときは政府から御注意をくださればよいと思います。しかし私の立論上の前提として重複したことをお尋ねしなければならぬようなことがあるかもしれませんが、しかしそのときは簡単に結論だけ答弁していただけばけつこうだと思います。  そこで今日、予算委員会において重大な問題となつておりますのは、行政協定の内容が今日までなお不明であるにかかわらず、そのままで政府防衛費を審議させようとしておる、こういう政府の態度に対する野党側の不満、ここに問題があると思うのであります。そこで、これにはさらに根本的な考え方が政府にあつて、それがこういう態度をとらせているのではないかと私は考えるのであります。政府は、大体行政協定国会審議を要しない、こういう根本の考え方を持つておる、その理由といたしまして、行政協定安全保障條約の単なる実施細目に関するものであるから、国会審議を必要としないのである、こういうように言つておられるのであります。私どもはもしそれが法律に対する政令の関係、憲法第七十三條の六号にあります法律に対する政令の関係というような関係に、安全保障條約とこの行政協定とがあると見て、そういう関係であるから、この行政協定については国会審議を必要としないのである、こういうように言われるのでありましようか、どうでありますか。私はそれにつきましては、すなわち行政協定の内容がはたしてそういうものであるかどうかというようなことにつきましては、根本的な疑いを持つておりますけれども、念のためにこの点をお伺いしておきたいと思います。審議を必要としない理由といたしまして、それが単なる実施細目であると思うからである、こうお考えになつておるようでありますが、どうでありますか。念のためにひとつお伺いしたい。
  135. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 大体はお考えのようなことと考えるのでありますが、元来行政協定というのは、アメリカでは多くの場合にエグゼキユーテイヴ・アグリーメントで、アドミニストラテイヴ・アグリーメントということは、比較的少いのでありますが、これは大統領をチーフ・エグゼキユーテイヴと言つておりますから、大統領の権限内でできる仕事をエグゼキユーテイヴ・アグリーメントと申しておると了解しております。つまり行政協定と申しますのは、條約をつくつた場合に、その條約の実施項目について行政府限りででき得る範囲の協定を結ぶ場合に、これをエグゼキユーテイヴ・アグリーメント、もしくはアドミニストラテイヴ・アグリーメントと申しておるのでありまして、もしそれ以上の点があります場合には、それは法律案を出し、もしくは予算案を提出して国会の承認を求め、その他所定の手続を経てやることであります。一般の常識では、今申した通りそういう国会の権限等に関係なく、行政府の権限ででき得る範囲の協定を結ぶ場合に、これを行政協定言つておると了解しております。
  136. 黒田寿男

    ○黒田委員 それで政府の御見解はわかりましたが、私はそこに非常に大きな誤りがあると思う。今、岡崎国務大臣日本でも行政府の権限において行政協定を結び得る、従つて国会の承認を経る必要がない、と言う理由といたしまして、アメリカの例をとつて説明されたようであります。そこで私は日本アメリカとの條件の差異というものが、全然岡崎国務大臣のお考えの中には含まれてない、と思う。これは私は非常に重要な問題であると考えます。私も、アメリカ政府間のみのとりきめといたしまして、すなわち国会の承認を経ないでいいものといたしまして、この行政協定を結ぼうとしておる、これは私もよく理解できるのであります。アメリカの立場からこの行政協定の締結について、政府のみでできると言つておることは、私には理解できる。なぜ、しかるに日本の場合には理解できないかと申しますと、アメリカでもこのような問題がかつては問題になつたことがあるのであります。かつてアメリカが外国に軍事基地ないし軍用基地を求めようという問題が起りましたときに、はたして議会の決議を経ないで、大統領がそういう問題に関する協定を結ぶことができるかどうか大統領の独自の権限として、行政府の独自の権限として、それができるかどうかということが、アメリカでも問題になつたことがあるのであります。そのときにアメリカでもいろいろと研究がなされまして、その結果それができる、そういう結論に達した。けれどもそれができるということには條件がある。それはアメリカが他の国とこのような協定を結びます場合に、アメリカ側としては義務を負担するというような、そのような問題がなく、アメリカ側は権利を獲得するそういう場合、そういう内容を持つ協定をする場合にはアメリカ大統領は行政府の権限といたしまして、あえて立法府の決議をまつことなくして、政府間のみのとりきめとして、このような行政協定を結ぶことができる。研究の結果がこうなつた。アメリカでもずいぶん研究いたしました結果、そういうアメリカ憲法上の一つの確信に到達いたしまして、その確信に基いてアメリカはやつておるのである。今回の日米安全保障條約に関する行政とりきめの場合も、アメリカからいたしますれば、その内容を見ればよくわかりますように、権利を獲得することばかりであります。そこでアメリカ権利を獲得し、重大な義務を負担するという行政とりきめでありませんから、アメリカ側としては政府だけの権限としてこれを結ぶごとができる、こう言えるのであります。ところがさぎのまねをからすがしてはいけない……。
  137. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田君に申し上げます。質疑は要点を簡潔にお願いくださらないと、時間を超過いたします。御注意ください。
  138. 黒田寿男

    ○黒田委員 これは非常に重要な問題であります。政府の間違つた考え方の根本的な点を私はここで説明しておかなければならない。ところが日本は、さぎのまねをからすがするようなことをする。私はこの二重方式を、すなわち安全保障條約と行政協定との二重方式をとつたのは、これもやはりアメリカ式であると考えますけれども、そのアメリカ式は、アメリカとしては今申しましたように理由がある。ところが、日本はこの行政協定をなすにあたりまして義務を負担しないのか。アメリカ権利を得るのみで義務を負担しないのであるから政府だけでやれるけれども、日本は義務を負担しなければならない点がたくさんある。私はその点は、時間がございませんから、また別の機会に申しますが、そういう義務の負担をしなければならない行政協定であるかどうかということをちよつと私は聞いておきたい。そしてもし日本がこの行政協定において、いろいろな施設の設定、その他治外法権的なものの設定等、日本の主権が縮小され、あるいは義務を負担しなければならぬというようなことになるとすれば、アメリカの側でなし得ると言い得られることも、日本で同様に言うわけには行かぬ。アメリカ行政協定政府だけでやつてもいいということができても、日本はそういうわけには行かない。権利義務に関する問題である限りは、日本では、国会審議を経なければならぬ、こういうことになると思う。ここに根本的な差異がある。抽象的にお伺いしますが、一体この行政協定に基いて、義務を日本が負担するというようなことにはならないのでしようか。単に日本権利を得るというだけのものでありましようか。アメリカとの大きな差がそこにあるのであります。これを私はひとつ政府に聞いておきたい。
  139. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 黒田君のお話は、どうも私には承服できません。アメリカ権利のみを獲得するときに行政協定をとりきめてよろしいというお話でありますが、現にすでに大綱は、両国話合いで発表しております。今度の行政協定の一項目として、アメリカの軍人軍属その他の所属員は日本の法律を守り、尊重し、かつこれを遵守する義務があるということが規定されるはずであるということを発表しております。つまりアメリカ権利のみを獲得する協定でないことは、この事案からもおわかりのことと思います。
  140. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田君に申し上げますが、一間の御質問の時間が長いようでありますから、ごく簡潔に、最後に一点だけ……。
  141. 黒田寿男

    ○黒田委員 岡崎国務大臣の御説明は、アメリカ人が日本に来る場合、日本の法律、日本の主権に服する、こういわれるだけだ。これはあたりまえのことであります。特に日本に対しアメリカが義務を負担するという問題ではありません。それは、どこの国の人が日本に来ても、当然日本の主権のもとに服すべきものであるとおつしやることと違わない。そこで、私は、この協定は、そういうふうに、アメリカ側からいえば、政府でとりきめをなし得る権限のある問題であるけれども、日本側としては国民権利義務に関する重要な協定であるから、どうしても国会審議に付さなければならぬ。こういう結論になると思う。それでもなおかつ政府国会審議を必要としないとおつしやるのでありますか、念のためにもう一度お尋ねしておきたい。
  142. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは先ほど申し上げました通りでありまして、なおそれに基いて法律その他予算等が必要になれば、これは当然国会に提出して御審議を求める、こういうわけであります。
  143. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田君の発言を許しません。  午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を開会することといたします。  暫時休憩いたします。     午後零時十五分休憩      ————◇—————     午後三時二十二分開議
  144. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き、会議を開きます。  中曽根委員より議事進行について発言を求められております。この際これを許します。中曽根康弘君。
  145. 中曽根康弘

    中曽根委員 議事進行につきまして、委員長並びに委員長を通じて政府お尋ねをいたします。  本十三国会の一番大きな問題は、何といつても千八百二十億円に上る防衛関係諸費を明らかにすることと、現在進行中の日米安全保障條約に基く行政協定の内容を明らかにすることであります。しかるにこれらの問題に関する現在までの政府答弁はきわめて不明瞭であり、かつ不誠意であります。本朝来、総理大臣に対しましてわが党の川崎委員以下野党議員が懇切丁寧に質問したにもかかわらず、総理大臣は急所にかかるとあるいは黙秘権を行使する、あるいは猿のごとく歯をむいて怒るこういう状態であつて、国会議員に対する誠意ある答弁とは受取れないのであります。特に予算委員会がいよいよ終末の段階になつて、一番明らかにしなければならないところは——国民のために明らかにしなければならないことは、第一は行政協定の内容、特に行政協定の中の重大問題である刑事裁判権の内容であります。この問題につきましても、先ほど私は本会議質問したけれども、岡崎国務大臣答弁はきわめて不明瞭であり、不正確であり、不誠意であります。  第二の明らかにしなければならない点は、緊急非常事態條件並びに措置であります。行政協定は、日米安全保障條約に基いて外国軍隊が駐屯する政治的状態を規定するだけであります。従つて、外国駐屯軍が極東の平和及び安全維持に寄与しようとして外国に出動する場合、及び日本国内の内乱に出動する場合は、行政協定では盛り切れない、別個の協定を要するのであります。これらの外国軍隊出動に際しては、あるいは逆にその反対に、外国の反撃を受けて日本が爆撃を受けるかもしれぬ。かくしては日本が事実上戦争状態につり込まれるという危険性もあるのでありまして、内乱出動の場合及び外国に出撃する場合のいろいろな條件措置をあらかじめとりきめておかなければならないのであります。特に日本の現在の立場は、国力もないし、装備もないし、明らかに米国その他よりは弱い国にあります。弱いこれらの国が自分たちの正当な権限を留保しようとすれば、当然明確なる條文をもつて文書に規定しておかなければならないのであります。政府はその場になつてお互いに好意的に話合うと言つておりますが、その場になつたんではおそいのである。その場になつたんでは事実上向うの支配を受けるということになるのであります。事前に明確にして、文書協定して行くということは、日本の自衛と権利を守る最大のやり方であるだろうと思うのであります。これらの点についていまだに明らかになつていない。  第三番目は防衛支出金の内容であります。六百五十億円に上る防衛支出金の内容は依然として明らかにされておりません。  第四番目は安全保障諸費五百六十億円であります。これも同じように明らかでない。特に安全保障諸費は今まで池田大蔵大臣答弁によると、防衛支出金には出ないということは明確になつた、また大橋国務大臣答弁によれば、安全保障諸費は警察予備隊ないしは海上保安庁の経費にも今のところは出さなくて済むと答えておる。しからば一体これは何に出すのであるか、アメリカのいろいろな施設あるいは軍隊が移動する場合にのみ使うのであるか、それにしては多過ぎる。しからばそれは当然来るべき防衛隊あるいは保安隊の装備強化のために、いわゆる事実上の再軍備の予備金として臨時軍事費的性格でこれが留保されておるのではないかという疑問すらあるのであります。このようなことが独立第一年目の予算として正しいかどうか、一方考えてみれば、軍人遺家族の補償費はわずかに百五十六億円である。わけのわからぬ安全保障費は約その五倍の五百六十億円である。このような均衡を失したことを独立の第一年目にやつていいかどうかということは、これは国会のみならず、国民のひとしく関心を持つているところであります。  これらの四点に関する内容が依然として明らかにされておりません。これらの内容を明確にするまでは、われわれは国民に対する責任上予算委員会をとずるわけには行かないのであります。しかるに政府並びに与党は、その国民の要望をしりぞけ、国民の権限を無視して、多数をもつてすみやかにこの予算委員会を打切ろうとする策動すら見える。これは単に多数、少数の問題ではない。日本の議会政治のために、憲政の擁護のために、われわれはわれわれの正当な主張を最後まで叫び続けなければならないのであります。今度の国会のやり方を見ても、政府は再軍備しないと今まで言つて来た。しかるに一月三十一日にこの席上で吉田総理大臣防衛隊なるものを吐き出した。これは国民はどういう印象を持つているかというと、言いかえれば自分は妊娠していないのだ、不義の子を宿していないのだ、こう言つて盛んに抗弁しておるにもかかわらず、腹がだんだんでかくなつておるのは国民の見ておるところである。千八百二十億円というふうに膨脹して、お腹が大きくなつておるにもかかわらず、自分は関係がないのだと言つて口をおおうておる。いやそればかりではない。現に不義の子は生れておるのではないか、憲法の私生子となつて出て来て、それが認知されない状態にある。その一つがこの防衛隊になつておる。それと同じような不明瞭なことがただいま申し上げた四つの点において依然として残つておるのであります。これらの点を明らかにしなければ、われわれは国会議員としての責任を果し得ないがゆえに、委員長に対してそれらの点を最後まで明らかにすることを要求し、委員長はいかなる措置をとるか、委員長お尋ねしたいと思うのであります。
  146. 塚田十一郎

    塚田委員長 お答え申し上げます。委員長におきましては、今までも努力して参りましたが、今後も極力善処いたしたいと考えております。なお政府側におきましてもお聞き及びの通りでありますから、善処せられんことを望みます。
  147. 中曽根康弘

    中曽根委員 ただいまの委員長言葉を……。
  148. 塚田十一郎

    塚田委員長 発言を許しておりません。これより一般質問を継続いたします。小峯柳多君。     〔発言する者多し〕
  149. 塚田十一郎

    塚田委員長 中曽根君に発言を許しません。小峯君に発言を許しております。
  150. 小峯柳多

    ○小峯委員 予算委員会も結末に近づくようになりまして、いろいろの質問は一応出尽しておるのでありますが、ただ行政協定防衛支出金や、また安全保障諸費に関する質問は、ただいま野党の諸君から議事進行がありましたように、私ども与党といたしましても、この結末に近づきました機会に、なおその内容を精細に伺いたいと思うのであります。但し行政協定は、野党の諸君のおつしやいますように、外交交渉に関する技術の問題もあり、また審議の問題等もありますので、野党の諸君と同じような発言をいたすつもりはありません。ただしかし、千八百二十三億円に上りますこの大きな一般歳出の中における項目は、この際事情の許す限り、特にまた最近行政協定も結末に近づきつつあるやに承知しておりますので、この機会に、この問題を中心に、大蔵大臣に与党の立場から御意見を伺いたいのであります。  最初にこの千八百二十三億に上ります支出のうち、防衛支出金の内訳を伺いたいのであります。先ほども申し上げましたように、もうすでにその内容に大体の見当がついておると承知いたしますので、この際御発表願いたいと思います。
  151. 池田勇人

    池田国務大臣 お答え申し上げます。防衛関係経費の千八百三十三億円の内訳につきましては、従来たびたび御質問がございまして、お答えいたしておるところでございます。すなわち千八百二十三億円の内訳は、防衛支出金の六百五十億円、警察予備隊の五百四十億円、海上保安庁関係経費の約七十三億円、しこうして安全保障諸費の五百六十億円でございます。  ただいま御質問防衛支出金の六百五十億円につきましては、従来説明いたしておりますところは、労務費、光熱費、役務費、需品費あるいは通信費、あるいは国鉄の支払い、こう言つておりましたが、今たつてお話でございますので、私が六百五十億円と防衛支出金を見込んだ根拠の内訳について申し上げたいと思います。すなわち六百五十億円を見込みました理由は、従来の終戦処理費並びに昨年の七月以降アメリカ軍が負担しております労務費の大部分、役務費、需品費の一部分等を加えまして、そうして今後一年間における、すなわち今年の四月から来年の三月末までにおける物価の事情、今までの実績等を考えまして、大体私は千三百億円を要すると見込んでおるのであります。しこうしてこのうち行政協定できまる問題は、日本がどれだけ負担するかという問題であります。アメリカ日本アメリカ軍を駐留することに要しまする全部の費用は、おおむね私は六、七千億円と見込んでおるのであります。しこうしてそのアメリカ軍が六、七千億円使用いたしまするうちに、日本におきまして使用する諸費、すなわち労働者に払つたり、国鉄運賃を払つたりする等の金が、千三百億円であるのであります。従いまして、米国の方では千三百億円以外に五千億を負担する関係を考慮いたしまして、日本で使われる金の半分程度は、私は日本の財政上からいつて負担するのもやむを得ぬじやないかと考えたのであります。しこうしてただいまのところ千三百億円の半分を日本が負担すると、はつきりはきまつておりませんが、今までの経過から申しますと、私は最高限六百五十億円を来年度負担すればいいという見通しをつけております。これは予算編成いたしましてから数箇月かかりましたが、しかしこの間の私の見通適しは、行政協定の折衝にあたつてもかわつておりません。しこうして六百五十億円を負担することは、そういうことから来たのでありますが、この六百五十億円の内訳を申しますと、この六百五十億円のうち、不動産あるいは施設等の賃貸料につきましては、全部日本が負担することにいたしております。これは不動産、あるいは土地、建物等の負担を日本が優先的にしますということは、アメリカ軍の駐留しておる各国との間の話合いが大体そうでありますし、また聞くところによりますと、アメリカでは相互安全保障法によりまして、不動産の賃貸料を政府は負担しないという法律を制定しておる関係もありますので、この六百五十億円のうち不動産等の賃貸料は日本側が負担する、これが九十二億円であります。残りの五百五十八億円、すなわち一億五千五百万ドルが、不動産の賃貸料以外の日本が負担する分と考えておるのであります。しこうして今までの実績から考慮いたしますと、この五百五十八億円のうち、アメリカ軍の移動によりまして、日本国有鉄道に支払いいたします金が大体百億円でございます。電話料、電信料等で電気通信省並びに郵政省に払うと予定されるものが、五十四億円であります。しこうして光熱費、すなわち電気、ガス、水道の料金が六十億円と見込んでおります。また需品費につきましては、これは石炭代の八十四億円を含みますが、百七十七億円を要すると見込んでおります。また役務費につきましては百五十四億円、設備器具費は十三億円、合計五百五十八億円であります。このほかアメリカにおきましては、アメリカが直接負担いたします労務費は四百四十億円であり、役務費が六十億円であり、需品費及び設備器具費は百五十億円で、アメリカ日本におましてこれらのいろいろな費用に六百五十億円を負担する、日本は賃貸料の九十二億円を合せまして、六百五十億円を負担する、こういう関係に相なつておるのであります。
  152. 小峯柳多

    ○小峯委員 防衛支出金の内容は、今一応伺つたのでありますが、野党の諸君が盛んに臨時軍事費的な性格だというふうに言つております安全保障諸費について、おそらくまた中身の見当がついておると思いますから、そういう言いがかりを一掃いたしますために、御明示願いたいと思います。
  153. 池田勇人

    池田国務大臣 安全保障諸費の五百六十億円につきましても、従来その項目については御説明いたしておつたのでありますが、大体の見当もつきましたので一応の私の推算の根拠を申し上げたいと思います。  すなわち五百六十億円のうち営舎等の建築に要しまする経費が大体三百七億円でございます。営舎等の建築は、大体営舎を四十万坪で二百億円、住宅を十二万坪で四十八億円、営舎、住宅等の敷地購入九十数万坪で五十億円、附帯費として九億円を見込み、三百七億円でございます。また通信施設費といたしまして、七十億円見込んでおります。このうち有線施設が三十三億円で、無線施設が三十六億九千万円と相なつておるのであります。また営舎付属工場施設として三十五億円を見込んでおるのであります。また荷役設備といたしまして十一億円を計上いたしておるのであります。なおこの前も説明いたしました通り、巡視船等の設備拡張に大体十億円を見込んでおりますし、治安機構の拡充等に三億円を計上し、四百三十七億円でございます。     〔発言する者多し〕
  154. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  155. 池田勇人

    池田国務大臣 残りの百二十三億円につきましては、港湾施設につきまして、二十五億円、道路につきまして八十億円程度を見込んでおります。道路につきましても、これは六大都市、七大都市におります進駐軍関係のものが、この土地から離れて行きますので、どこへいつ離れるかということは、行政協定に基きます合同委員会できまるのでありますが、それによりまして道路の建設あるいは道路の新設並びに幅員の拡張あるいは木橋をつくりかえるとか、いろいろな費用がいります。以上大体五百六十億円の費用を見込んでおります。
  156. 小峯柳多

    ○小峯委員 防衛支出金と安全保障諸費の内訳を伺つたのでありますが、この際防衛関係諸費をこれ以上もうふやさないで行くんだ、またここ二、三年の財政計画の中では、これ以上ふやす必要はないというふうに大蔵大臣しばしば言明されておりますが、今内容の項目についてお話になりましたのを機会に、その信念を重ねて明白にされたい、かように考えます。
  157. 池田勇人

    池田国務大臣 防衛関係の費用千八百二十億円は、私の考えでは現在の日本の財政状況から申しますと、最大限度だと思います。従来終戦処理費あるいは警察予備隊等で平和関係処理の費用を見込んでおつたのに対しまして、五百億円程度の増でございますが、これは最大限度だと思います。今度しかし日本の経済が発展し、国民所得がふえる、そういう場合におきましては、まず第一に内政費を考えなければなりません。国民生活の安定を目途といたしまして、いろいろな施策を講じなければなりませんが、しかし千八百二十億円の防衛費で、これで将来十分だとも言えぬと思います。私らは生活水準の向上をはかりながら、他方では防衛の漸増ということを言つておるのであります。これにはかわりございません。防衛の漸増を先にして、国民生活の安定をあとにするという考えは毛頭ございませんが、国民経済の状態に対しまして、ある程度の防衛費の漸増ということは考えなければならぬと思います。しかし防衛費の漸増と、千八百二十億円がどれだけふえるという問題がありますが、今のところは私はふやす考えはございません。というのは千八百二十億円の中で、防衛支出金と警察予備隊との関係はどうなるか、こういうことになりますと、われわれは防衞漸増、われわれの力で防衛するということを漸次増加して行くとすれば、私は防衛支出金のアメリカ軍のための費用の六百五十億円は、漸減を主張いたしたいと思います。私は大体これは認められると思つております。     〔発言する者多し〕
  158. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  159. 小峯柳多

    ○小峯委員 今のお話防衛支出金と自衛費との内容の振りかわりがあるように御答弁があつたのでありますが、それ以外にも経済力の増強に伴つて、ある程度の漸増があるかもしれない、こういうふうに了承いたしましたが、そこでまだ少し早いかもしれませんが、あなたはここ二、三年の日本の財政計画に関する骨格、その中でどんなぐあいにこの防衛関係費がなつて行くんだということのお目通しをお持ちでございますか、承つておきたいと思います。
  160. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通り千八百二十億円のうちにおきまして、六百五十億円の防衛支出金は通常の状態では減るともふえません。警察予備隊は漸増の関係でふえるかもわかりませんがこれもあまりふやさない。しからば安全保障諸費として計上しております五百六十億円の行方はということになりますと、これは進駐軍がどの程度に六十都市以外に出て参りますかという問題がありますし、これがずつと長く続くわけのものでございませんから、もし警察予備隊と合同することが万が一あるとすれば、安全保障諸費その他と勘案して考えるべき問題で、要するに千八百二十億円は、私はできるだけふやさぬようにして行くのがほんとうだと考えております。
  161. 小峯柳多

    ○小峯委員 私は大蔵大臣に最初の質問のときに、経済政策と財政政策との兼ね合いのことでお尋ね申し上げております。今お話を承りまして、この経済力の充実に伴つてその予算のあんばいをするときには、内政費に重点を置くんだというような御答弁で、私のこの間の質問の答えが実は出ておるように思うのでありますが、しかしこの問題は何にしても大切で、今まで大蔵大臣のやり方が財政優先の方法でやつて来ておるように私どもにも思われますので、またこの防衛関係費その他を含めて財政が経済を牛耳るようになつてしまいますと、日本の経済力は発展を期待しながら、なかなかその実績が上らぬというふうにも考えられますので、この際あなたの財政政策と経済政策に関するお考え方をますます固められて、ぜひこの日本の経済力の積極的な発展に寄与するよう特に要望申し上げまして、私の質問を終る次第であります。(拍手)
  162. 塚田十一郎

  163. 藤田義光

    藤田委員 ただいま与党の小峯委員から質問がございまして、実は野党の質問によつて詳細解明する予定でありましたが、与党の国民に対するゼスチユアとして私が席を譲つたわけでございます。しかるにこの与党同士の問答にもかかわりませず、池田大蔵大臣の御答弁では、なお満足できないのであります。おそらく今回の通常予算は、池田大蔵大臣にとりましては、政治家として最後の予算であろうと思います。私は池田大蔵大臣が十回近い予算編成したその労苦は認めます。しかるがゆえに、池田大蔵大臣の最後の葬送予算ともいうべき今回の予算に有終の美をなさせたいという議員同士の友情から、この際あくまでその予算の内容はすつきりした御答弁がないと、永久にかつて在職した池田大蔵大臣の汚名を残すことになりますので、この際私は詳細に質問を続けたいと思います。  まず第一にお伺いいたしたいのは防衛支出金でございます。防衛支出金の概要に関しましては、ただいまの御答弁よりも詳細に本朝の新聞に出ておりましたが、大体軍隊の一人の維持費はどのくらいかかると大蔵大臣は見ておられますか。もし軍隊の維持費に対するしつかりした認識がなければ、防衛分担金に対する科学的な根拠は出ないわけでございます。この点に関するはつきりした数字をこの際お示し願いたい。
  164. 池田勇人

    池田国務大臣 軍隊一人の維持費と申されますが、どこの軍隊の維持費でございましようか。
  165. 藤田義光

    藤田委員 これは頭脳明晰なる大蔵大臣の御答弁とも思えません。当然防衛分担をするのはアメリカに対してでありますから、正確に言えばアメリカのインフアントリーの一人の維持費は幾らであるかということをお伺いしている。
  166. 池田勇人

    池田国務大臣 これは私は、質問といたしましてはなかなかいい質問のように思われますが、実際問題としてお聞きになるのならば、陸軍がどういう装備をした場合の一人当りの額か、あるいは空軍がどういうふうな場合の額か、こういうふうになりまして、いろいろの関係があると思うのであります。しこうして、私は前もつて答えておきますが、アメリカ軍の一人当り、陸海空、平時、戦時、準戦時の項目についての一人当りは存じておりません。ある程度は知つてつても、お答えできません。
  167. 藤田義光

    藤田委員 いかなる状態における維持費であるかというお尋ねでございますが、これは日米防衛の建前から駐留するアメリカ軍の一人当りの維持費という意味であります。しかし陸海空軍に対する維持費に関しては、自分は知らぬということを言われましたが、これは実に心外であります。これに対する認識なくして、防衛分担金の計算はできぬはずです、私は、この維持費は大体一人当り四十三万円ないし五十万円と思います。そうすれば、池田大蔵大臣の説明にありました一千三百億という、いわゆる日米共同の分担金は、実に二十六万人を維持するに必要なる厖大な予算でございます。われわれの想像によれば、かかる厖大なる駐留軍が講和條約発効後日本に駐留するとは想像だにできませんが、この点はどうお考えになりますか、お伺いいたしておきます。
  168. 池田勇人

    池田国務大臣 一人当りの維持費四十数万円と御計算になる根拠が私にはわかりません。
  169. 藤田義光

    藤田委員 これは政府機関の権威ある資料でありますので、私ははつきり申し上げますが、維持費は四十三万円ないし五十万円と政府機関が認定いたしております。しかもこれは一ドルを三百穴十円とすれば大体四十三万円、しかしいろいろな情勢を考慮いたしまして、一ドル五百四十円と仮定すれば、一人当りの維持費は五十万円というしつかりした計算を出しております。これは向うにすわつておる大橋国務大臣の部下のところでりつぱな資料がありますので、即時取寄せて研究していただきたいと思います。この根拠からしますれば、二十六万人という駐留軍を日本に維持させることになります。駐留軍の数に関しましては、岡崎国務大臣は、軍の機密であるから発表できないと言われる。知らぬということならば問題でありますが、発表できないと言われますから、おそらく講和條約発効後の駐留軍の数は知つておられるにもかかわらず、二十六万人と算定して、防衛金を支出されんといたしております。この点に関する大蔵大臣の見解を伺つておきましよう。
  170. 池田勇人

    池田国務大臣 私は先ほど小峯委員の御質問に対しまして申し上げたごとく、防衛負担金は、従来の終戦処理費、並びに昨年の七月以後アメリカ軍日本国内におきまして使用いたしました労務費、役務費等を勘案して、千三百億円としたのであります。しこうして不敏と申しますか、警察予備隊の人が、アメリカの駐留軍一人当りの費用を幾らくと計算したという数字は、私大蔵大臣は見ておりません。
  171. 藤田義光

    藤田委員 防衛に関する大蔵大臣の訓識がいかにもおそまつであるということで、私は国民の一人として、屡はぼう然としておるのであります。先ほどの小峯委員質問に対しまして、七千億くらいかかる、そのうちから日米共同負担は千三百億という詭弁を弄しておられます。こういう厖大な金が駐留のために必要はございません。私がはつきり申し上げれば、かりに日本で二十一万トンの海軍を建設すると仮定いたしますと、創設費はなるほど三千五百六十億という厖大な予算を要しますが、維持費はわずか四百八十四億で済みます。飛行機といたしましても、創設費は一機に対しまして三億七千万を要するが、維持費は一機に対して一億でございます。こういう数字からしまても、今回の防衛支出金の根拠は、まことにずさんであるということを私は申し上げておきたいのであります。これは私の意見としてお聞きおき願いたいのでございます。  次にお伺いいたしたいのは、大蔵省から出しました予算の、防衛支出金に関する説明の中で、その最後に、わが方の負担は米国側に比べて僅少であると考えられる、と述べられております。けさの新聞でも御存じの通りアメリカの分担金が一億五千五百万ドルに対しまして、日本は六百五十億でございます。これでどうして日本の分担金が少いのか、その辺の計算をお示し願いたいと思います。
  172. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカの負担が一億五千五百万ドルと私は考えておりません。先ほど申し上げましたように、アメリカ軍の駐留に要しまする費用は、大体千三百億と私は推定いたしておるのであります。しこうしてただいまのところ不動産の賃借料九十二億円と、その他の費用一億五千五百万ドル、すなわち五百五十八億円以外の駐留に要する費用は、アメリカが全部負担してくれるごとと考えておりますから、私は少くとも日本の六百五十億円以上のものをアメリカが負担すると期待いたしておるのでございます。
  173. 藤田義光

    藤田委員 次にお伺いいたしたいのは、どうも先ほどの小峯委員質問に対しましてはつきりしません。これは本質的な問題でございますので、この際重ねてお伺いいたしますが、防衛支出金と安全保障諸費の性格の相違をお示し願いたいと思います。これは先ほどの小峯委員に対する御答弁からしますと、費目の内容はほとんど両者ではないか。国民に厖大な防衛支出金を負担しているという印象を与えないために二つにわけたという印象を受けたのでありますが、この点に関しましてお伺いいたしておきます。
  174. 池田勇人

    池田国務大臣 これは委員会ももう当初からおわかりくださつていると思うのであります。防衛支出金というのは、あのとき触れたように、あえて負担金と言わずに、きまるまではアメリカ軍日本にわれわれの希望によつて駐留してくれるのでありますから、その一部負担するというわれわれの側からの防衛のための支出金であるのであります。それでその内訳は、今言つたようにまだはつきりきまりませんが、鉄道運賃とか、あるいは通信費とか、あるいは需品費、役務費、光熱費というようなものであります。そしてアメリカの負担しているのは主として労務関係、進駐軍労務者二十数万人の労務費がそのおもなるものであつて需品費等もあるのであります。こういう内容を持つております。  それから安全保障費というのは、行政協定に基きまする合同委員会によつて、駐留軍が六大都市、あるいは七大都市になりますか、そういうところから出て行く場合を想像いたしまして、これはわれわれはそういうことがあつてほしい、なければならぬという考え方でございますが、そのときの移動費、移動に伴う施設費等を主たるものといたしておるのでありますから、内容はただいま説明した通りでおわかりと思います。
  175. 藤田義光

    藤田委員 平和條約第六條に基きまして、講和條約が効力発生をしましたその直後から九十日間で、いわゆる進駐軍の性格がかわつて来るのでございますか、あるいは講和條約の効力発生とともに駐留軍になりますか。この辺は財政的にも関係がありますので、お伺いいたしておきたいと思います。
  176. 池田勇人

    池田国務大臣 私は行政協定できまるのではないかと思いますが、平和條約では九十日間は進駐軍としており得ることになつておりますが、平和條約が成立と同時に行政協定が成立いたしますならば、私は駐留軍としておるものと考えております。
  177. 藤田義光

    藤田委員 実はその点は防衛分担金の負担の問題に関しまして重大な問題であります。もし進駐軍ならば、従来の予算の性格を持つて参りますが、駐留軍になれば、今回の予算に計上されたものの負担ということになります。大蔵大臣がこの問題で関係方面と折衝されましたときは、四月初めの講和條約が効力発生して大体六月一ぱいで進駐軍の性格を失うという前提で交渉されましたか、あるいは四月初めから駐留軍になるという前提で交渉されましたか。お伺いしておきたい。
  178. 池田勇人

    池田国務大臣 私は先ほどお答え申し上げましたように、米軍に対しましては講和條約成立と同時に駐留軍になるものと考え予算編成しております。向うともそういう話をつけております。
  179. 藤田義光

    藤田委員 駐留軍であることと、進駐軍であることによりましては予算的にも、日本の負担状況が違つて来るかと思いますが、この点はどう考えますか。
  180. 池田勇人

    池田国務大臣 その通りでございまして、さきの国会でも平和回復善後処理費として一応組んでおるのであります。従いまして三月十日に講和條約が成立いたしますれば、その後においては平和回復処理費を使つて参りましよう。しこうして平和回復が五月一日になる場合においては、四月一ぱいは終戦処理費でまかなつて行かなければなりません。従つて終戦処理費は繰越しも必要と認めます。
  181. 藤田義光

    藤田委員 そうしますと、平和回復処理費として百十億円計上されておりますが、この二百十億というものも防衛支出金と同じような性格のものでございますか、あるいは全然別個のものでございます。
  182. 池田勇人

    池田国務大臣 私は起り得るあらゆる場合を考えて御説明申し上げたのであります。大体三月一ぱいに講和條約の成立が、できるかできないかというところでございまして、それ以前、二月一ぱいとかなんとかいうことは期待いたしておりません。
  183. 藤田義光

    藤田委員 そういたしますと、予算編成にあたりまして、いつ講和條約が効力を発生するかという認定が、平和回復処理費の計上、あるいは防衛支出金、安全保障諸費の計上に関しまして非常に重大な関連があつたわけでございますが、池田大蔵大臣は何月何日ごろ講和條約の効力が発生するという認定のもとにこの予算を組まれたか、これは重大な点でありますので、お伺いいたしておきたい。
  184. 池田勇人

    池田国務大臣 大体三月一ぱいと考えております。
  185. 藤田義光

    藤田委員 岡崎国務大臣はラスク代表と会談のために出かけられるそうでありますから、この際一言お伺いいたしたいと思います。本日午後四時過ぎから行われます岡崎・ラスク会談は最終的なものでございますか、あるいはまだ何回かラスク氏の出発前に会談される予定でありますかどうか、その点をお伺いいたします。
  186. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは会談してみないとわかりませんが、私の想像ではまだ数回必要ではないかと思つております。
  187. 藤田義光

    藤田委員 実に自主性のない御答弁でござまして向うさんの都合によりまして会談が続くかいなかをきめられておるようであります。岡崎さん独自の立場から、いつごろまでに会談を打切る予定であるという目通しがあるはずである。ラスク氏の都合によつて日本の会談が延びたり縮んだりすることはないはずである。もう一度……。
  188. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私どもはそうきまつてどちらの都合ということは言つておりません。向うで何か申したときにこちらで気に入らなければ、またこちらの意見も言うのでありますから、そこで話してみなければ、こちらで意見を言う場合もあり、向うで意見を言う場合もあるから、すぐにはきまらないと思います。
  189. 藤田義光

    藤田委員 けさの新聞では来週月曜日、あさつてには仮調印するということがはつきり報道されておりますが、その前々日の土曜日午後の会談が最後だろうということは一般の常識のある人は当然想像します。特にアメリカの風習によれば、日曜日は万難を排して戦争でも休むという風習がございます。その風習から申しましても今回が最後の会談ではないかと想像されますが、まだたくさん重要な問題が残つておりますかどうか、お伺いいたします。
  190. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 問題は多少まだ残つております。また日ラスク大使は土曜日の午後でも、日曜一日、いつでも待機して、必要があれば会談すると申しております。
  191. 藤田義光

    藤田委員 そうすると、けさの新聞にありました二十五日に仮調印するということは、間違いでございますかどうか、お伺いいたします。
  192. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 これは新聞の観測記事だろうと思います。われわれは一回も二十五日に仮調印をするということは言つておりません。また仮調印をするか、本調印をするか、これもまだ何も言つておりません。
  193. 藤田義光

    藤田委員 先般の国務相の答弁では、新聞で随時発表しておるというような御答弁がありましたが、自分の都合の悪いときは、新聞の観測報道であろうという御答弁でございます。この点は私はおそらくこの新聞報道が正確ではないかと思います。見解の相違になりますので、この問題に関しましては、これ以上お尋ねいたしません。ただ行政協定に関しまして今朝来わが党の川崎あるいは中曽根委員が本会議、当委員会でも質問いたしておりますが、それに対しましても、ほとんどはつきりした御答弁はございません。特に先ほどの本会議における御答弁は、当委員会答弁を集約したようなものでございまして、国民の失望を買つておるわけでございます。この際私がお伺いいたしたいのは、岡崎国務大臣は元陸軍中将辰巳氏を軍事顧問に使つておられるといううわさがございますが、その点をお伺いいたしたいと思います。
  194. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 私も個人的には辰巳さんを承知しておりますが、遺憾ながら辰巳氏は追放者でありますから、そういう方を軍事顧問という名前で使つたことは一ぺんもございません。
  195. 藤田義光

    藤田委員 何故協定政府から今まで明らかにされました範囲内においてすら相当軍事的知識を必要といたします。近く結成を予想されます合同委員会におきましては、この方面の知識が相当なければ、アメリカは陸海空のエキスパートを動員して、おそらく委員あるいは委員代理に起用するだろうと思いますが、この人事問題につ関しましては何か御計画がありますかどうですか、この点をお伺いいたしておきます。
  196. 岡崎勝男

    岡崎国務大臣 われわれは普通のシヴイリアンを使えば十分この仕事はできると考えておりまして、軍人等を使う考えは毛頭持つておりません。
  197. 藤田義光

    藤田委員 その点に関しまして大橋国務大臣の御見解をお伺いいたします。
  198. 大橋武夫

    大橋国務大臣 岡崎国務大臣と同様の見解を持つております。
  199. 藤田義光

    藤田委員 おそらくこれは大橋国務大臣の発表記事だろうと思いますが、先般防衛本部に対する大橋国務大臣構想らしいものと談話が出ておりましたが、これは事実でございますか、お伺いしたいと思います。
  200. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊と海上保安庁を合せまして保安関係の新しい機構をつくりたい、こう考えまして、ただいま政府といたしましては、これを検討いたしておるところでございます。
  201. 藤田義光

    藤田委員 この行政機構はいつごろ発足させられる予定でございますか。
  202. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいま研究中でございますが、できる限り早く成案を得まして御審議を願いたいと思つております。
  203. 藤田義光

    藤田委員 これは警察予備隊令の改正、予備隊令に相当する法律の実施とともに発足するという御予定でございますかどうか、重ねてお伺いいたします。
  204. 大橋武夫

    大橋国務大臣 警察予備隊につきましては、ただいま議題となつております予算案のうちに、来年度における増員を計画いたしておるわけでございましてこの増員につきましては、予算案に伴う法律案でございますから、とりあえず増員に必要な部分だけの警察予備隊令の改正法律案を早く提案いたしたいと存じております。しかして警察予備隊の将来の改善の方途等に必要なる法律案はこれをその次に出したい。いずれにいたしましても、本国会において御審議をいただきたいと存じております。
  205. 藤田義光

    藤田委員 海上保安庁と予備隊の統合は研究中であるようでございますが、出入国管理庁というものもこの官庁に統合することが適当ではないかと思いますが、この点に関する研究を進められておりますかどうですか。
  206. 大橋武夫

    大橋国務大臣 外務省所管の入国管理庁の処置につきましては、政府といたしましては別途考えておりまして、私の手元において研究をいたしております、ただいま申と上げました機構の中には含んでおりません。
  207. 藤田義光

    藤田委員 先般海上保安庁と警察予備隊の幹部をもちまして、治安機構創設準備会議というものを創設されたようでございますが、これは官制上の根拠はないと思いますが、この機構の準備会議の態勢は当分継続される予定でございますかどうか、お伺いいたします。
  208. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この新機構の立案はとりあえず私自身の責任で作業を運びたいと存じます。しかし何分一緒になる人たちが警察予備隊と海上保安庁の人たちでございますから、その関係の事務当局者たちに一応お互いを知り合う機会を持つと同時に、内容的にもいろいろ話し合いまして、私が案をつくる際の参考となるべき事項について、ただいま研究をしてもらつておるわけでございます。この作業は大体今週中に終ると思いますので、来週以後私の手元で直接運ぶようにいたしたいと存じます。
  209. 藤田義光

    藤田委員 予備隊と海上保安庁の目的は、現在の法令によれば全然異なつております。従いましてもし同一官庁にすれば、両官庁の目的を統一する必要があると思います。この点に関しましては、先般木村法務総裁予算分科会でほかの問題で少し答えられたことがありますが、この際担当国務相の御見解をお伺いいたしたいと思います。
  210. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ごもつともなことでございまして、海上保安庁の目的と警察予備隊の目的は明らかに現在異なつておるのでございます。しかしながら、これらは相互に関連させて運用いたしますことが行政運用上便利であると、こう考えられますので、従いましてこれは一つ機構に統合して運用できるような形にいたしたい、こういう研究をいたしておるところでございます。
  211. 塚田十一郎

    塚田委員長 藤田君、あと三分ほどであります。
  212. 藤田義光

    藤田委員 今度の新機構に関しましては、これを保安本部とするか、あるいは保安庁とするか、この保安の名前はかわるかもしれませんが、庁とするか、本部とするか、この際大橋さんの御意見を伺つておきます。
  213. 大橋武夫

    大橋国務大臣 新機構についてはまだ研究中でございまして、いかなる形にするかということを的確に申し上げる段階に至つておりません。ただ内閣所属の外局的なものにいたしたいと考えておるのでございます。名称をいかにするかの問題もあわせて研究をいたしております。
  214. 藤田義光

    藤田委員 その任務の性質上、海上保安庁と警察予備隊が同じ官庁に統合されました際において、相当深刻なる対立を起しはしないかということを憂慮いたします。この点に関しまして何か両者の対立防止のために対策を考えておられますかどうですか。考えておられましたならば、その具体的な内容をお示し願いたいと思います。
  215. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点は特に重大な問題と考えましてそうした点がただいまの研究の大きな題目の一つと相なつておると思うのであります。
  216. 藤田義光

    藤田委員 この際事務当局の研究題目にあらずして、大橋国務相の対策をお伺いいたしたいと思います。
  217. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私といたしましては、事務当局におきまして、一通りの研究におきまして、一通りの研究をしてもらつておりますので、その研究の結果を聞きまして、十分に私としての研究をいたしたい、こう思つております。
  218. 藤田義光

    藤田委員 政府予算説明書の中の安全保障諸費の説明におきまして、学校その他教育訓練機関の設置等を考慮して計上しておると思います。これは予備隊で使うというふうに了解してよろしゆうございますか。
  219. 池田勇人

    池田国務大臣 予備隊で使うか別個にするか、ただいま検討いたしております。
  220. 藤田義光

    藤田委員 それではこの学校、訓練機関の設置は駐留軍が使うのでないというふうに了解してよろしゆうございますか。
  221. 池田勇人

    池田国務大臣 これは駐留軍が使うことでないことはもちろんでございますが、保安機構の拡充強化をいたしまする関係に伴うものでございますから、今海上保安庁とかあるいは警察予備隊とか、こういうことははつきりきまつておりません。機構ができましてから考えたいと思います。
  222. 藤田義光

    藤田委員 海上保安庁と警察予備隊を統合して一つの官庁をつくる。そのほかに国家警察がございます。法務府の特審局がございます。これら三者の機関の横の連絡調整は今後大きな問題になりますが、この点に関しまして、担当両大臣はどういう方策を講ずるつもりでございますか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  223. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 藤田委員の仰せの通り、この連絡調整ということは、最も必要なことであろうと考えております。それでまずもつてこの連絡調整は機構の面からも考えられますが、私が最も重要視するのは精神的な面であろうと考えております。お互いに手を握つて完全な連絡をとるという方向に進まなければ、その成果を上げることはできないと考えております。第一にあげられることは、精神的の訓練、それについては人の入れかえもしなければなりません。いわゆる人事の交流もしなくてはならない、こう考えております。できる限り私は調整をとつて円満なる連絡を期したい、こう考えております。
  224. 藤田義光

    藤田委員 日本治安問題の中心をなすのは、さしあたり首都の治安をあずかつております警視庁の対策だろうと思います。この点に関しましては、昨日簡単に予算分科会でも法務総裁の御答弁を願つておりますがこの際首都警察法というようなものをお考えになりますかどうですか、お考えになつておれば、いつごろ具体化される予定でありますか、あるいはそういう対策がなければ国家警察に編入される予定でありますか、新聞に盛んに報道がありますので、この点をこの際明らかにしてもらいたいと思います。
  225. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 仰せのごとく東京都は日本の敏治の中心であり、文化の中心であり、経済の中心であります。この警察を警視庁にまかせるということは私はこれははなはだ不合理で適正でないと考えております。いわゆるこのの東京都における警察の問題については、政府は行政管理を行うこともできず、運営管理を行うこともできない今の警察法の建前になつております。従つてこの強化をはかることが、さしあたりの問題として私は急務と考えておりますが、しかしながらこれをいかにして行くか、ただいま仰せのごとく首都警察法という単独法を設けて、これに対処するか、あるいはまた国家警察のもとにこれを納めるとか、これは相当考慮を要すべき問題であろうと考えます。しかし今単独に首都警察法なるものをやるかどうかということについての、私はまだ決心はいたしておりません。しかし少くともこの政治の中心であり、経済の中心であり、文化の中心である東京都に対しては、政府は責任をもつて行政管理を行い、運営管理を行うような処置をとりたいと、こう考えております。しかしこれを行うについては、御承知通りきわめて民主的に、摩擦のないようにやつて行きたいと考えておりますので、せつかく今考慮中で、まだ結論に達していないということを申し上げておきます。
  226. 藤田義光

    藤田委員 警視庁の性格がかわつて参りますと、自警連の中心たるものがなくなります。従いまして大阪の警視庁その他各自治警というものの存立問題が非常に重大化して来るだろうと思います。首都警察あるいは国警編入等を研究されているようでございますが、それと並行してほかに自治警察に対する方策をお考えでありますかどうですか、お伺いいたしたいと思います。
  227. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私の今の考え方といたしましては、さしあたりこの東京都について考えておるのであります。しかし仰せのごとく、大阪あるいはその他大都市についても相当考慮しなければならないと考えておりますが、地方の各市につきましての自治警というものについては、今の段階においては考えていないのであります。いわゆる従来の通りでやつて行けるのではないかと考えておるのであります。しかしこれも含めて今研究中であるということを申し上げておきます。
  228. 塚田十一郎

    塚田委員長 川島金次君。
  229. 川島金次

    ○川島委員 先ほど大蔵大臣から防衛費の内訳の問題について、若干具体的な数字の説明があつた。そこで私は非常に奇異の感に打たれたのであります。     〔委員長退席、有田(二)委員長代理着席〕 と申しますことは、政府は先般来行政協定の内容についてはまだ固まつて来ておらない、いわんや兵力の問題、海軍基地の問題、陸軍駐屯部の問題、そういつた諸経費の最も重大な基礎となるべき問題がまだきまつておらない、そういう基礎がきまつておらないのにかかわらず防衛支出金の輸送費とか、需品費とか、用役費とか、あるいは安全保障費においての諸施設の大まかな数字が大蔵大臣から説明されておる。これを裏返しに言うと、もうすでに防衛関係においては、駐留軍の大体の兵力、あるいはその駐留軍が陸海空軍を通じていかなる地点に基地を設け、あるいは駐屯するかという事柄等についても、大まかに見通しがついてこそ、初めて今の大蔵大臣の説明するような予算の具体的な内容が積算できるということになつたのではないかと思うのですが、その点について、私は説明を聞いておりながら、たいへん奇異の感に打たれたのでありますが、その点は大蔵大臣としてはすでに見通しがついているのか、それとも大体のことはわかつておるなら、この際にわれわれにそれをできるだけ明らかにされることが、政府の責任ではないかと私は存ずるのであります。その意味において、そういう事柄について、大蔵大臣のわかつている事柄の範囲内でこの際説明をしてもらいたい、こういうふうに思います。
  230. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど小峯委員お答えいたしましたのは、予算に計上いたしました六百五十億円の防衛支出金の内訳いかん、こういうことでございますので、六百五十億円を見込みました根拠を申し上げておるのであります。しこうして、ただいままでに申し上げ得ることは、防衛支出金としての最大限度は六百五十億円ということは言い得ます。しかし御承知通りに、昨年の七月から米国において従来の終戦処理費を大体半額程度負担いたすことに相なりましたにつきましても、先ほどの説明でおわかりになるように、用役費は大部分こちらで、向うが少い労務関係費は全部アメリカ側で負担しておる。こういうふうに金額の総体が大体ただいまのところきまつておりますが、どういう費目をどうするかという問題につきましては、ただいま折衝中であるのであります。ただ六百五十億円、千三百億円を見込んだ根拠はここにあると言つておるのであります。
  231. 川島金次

    ○川島委員 その根拠ということはわかるのですが、その根拠を立てる前のもう一つの根拠があるわけだ。それは兵力の問題、基地の問題、駐屯の地域の問題、これらの事柄が最も先決の根拠となる。その上においてこそ初めて防衛支出金の問題、安全保障費等の問題の根拠というものが、そこから生れて来る。この根拠を私は聞いておる。
  232. 池田勇人

    池田国務大臣 防衛支出金につきましては、千三百億円という前に従来わが方で負担しておりました終戦処理費並びに昨年の七月からアメリカ軍が負担しております経費と、物価その他を見込んで、昭和二十七年度においてはこういうふうになる、こういうふうに言つておるのであります。私は大体の兵力等は想像はつけておりますが、先刻も申し上げましたように、これは言えません。(「なぜ言えないのか」と呼ぶ者あり)これは言えません。従いまして最もわかりやすいように話をし得るのは先ほど説明した通りで、繰返して言つたのであります。     〔「兵力を言え」と呼ぶ者あり〕
  233. 有田二郎

    ○有田(二)委員長代理 林君、御静粛に願います。
  234. 川島金次

    ○川島委員 私の言う根拠のまたその前の根拠となるべき問題については、大蔵大臣は、知つているが、言えないと言われた。ところが先日の総会における総理の私の質問に対する答弁の中で、日米安全保障條約の第三條に「アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両政府間の行政協定で決定する。」と明記されているから、この駐屯軍の兵力その他についても、当然にこの行政協定の中に締結される性質のものではないかという質問に対して、まだきまつていないから、きまれば公表すると、総理大臣がみずから言われたことを私は記憶しておる。きまれば公表するが、その前に、今大蔵大臣答弁によれば、すでに大体の見込みもついておる。大体の見込みがついているとすれば、この際その見込みなりとも明らかにされないと、先ほど大蔵大臣が説明した防衛費の内訳というものの根拠に対するわれわれの認識というものが固まらないということになるのである。そういう意味で、大蔵大臣がせつかくそういうことについての見通しがついておるというならば、この際ぜひとも明らかにしてもらいたいと思う。
  235. 池田勇人

    池田国務大臣 御質問の点が二つあるのがごつちやになつているのかと思います。三條にいつておる問題は、アメリカの駐留軍がどれだけという問題と、またそれ以上にどこに駐留するかという問題、施設並びに地域の問題。そこで私が申し上げますのは、アメリカ軍の駐留いたします場所のいかんを問わず、大体防衛支出金としては、従来の関係からいつて、こういうふうに見込んだのであります。しこうして安全保障條約第三條にあります施設及び地域のところは、総理お話になつているように、まだきまつておりません。しかしどこに行くかにいたしましても、六大都市、七大都市から出て行くことは相当はつきりしておるのでありますから、それが出て行く場合における坪数並びに経費を費目別に申し上げたのであります。だから、安全保障諸費の問題と、防衛支出金とは違えてお考え願いたいと思います。
  236. 川島金次

    ○川島委員 私の方は別にごつちやにしているわけではない。その根拠を明白にしなければ、認識をする材料が明確にならないではないか、こういうことを言つている。兵力が幾らでどういうところに駐屯して、どういうところに基地ができて、どういう活動をするかということがわからなければ、予算はわからぬ。  それではお尋ねしますが、駐留軍は大体五個師ないし六個師団であろうと新聞では明白に伝えております。岡崎国務相は、ラスク会談の経過については、その都度新聞に発表しているではないかと言つておる。そのラスク会談の進行中に、駐留軍は五個師ないし六個師団であろうということが報道されておる。この事柄について大蔵大臣は聞き及んだごとがあるかどうか。また大蔵大臣が今見込んでいるのはそういう線であるのかどうか、それをひとつ……。
  237. 池田勇人

    池田国務大臣 駐留軍には、陸軍部隊も、航空部隊も、海軍部隊もございます。五個師、六個師という問題は、陸軍部隊だと想像いたしますが、私の見込みは五個師、六個師でなしに、陸軍部隊、海軍部隊、航空部隊、全体を見まして計上いたしておるのであります。
  238. 有田二郎

    ○有田(二)委員長代理 川島君に申し上げます。時間が参りましたから、いま一問簡単にお願いいたします。
  239. 川島金次

    ○川島委員 それではこれは木村総裁と大橋国務相にお尋ねするのですが、安全保障費五百六十億の予算説明の中で、「治安の確保を期するため、警察予備隊及び海上保安庁に計上した経費のほか、たとえば営舎の建築、通信、道路、港湾等諸施設の整備、巡視船等における装備の強化、監視施設の充案等について特段の措置を講ずるとともに、治安に関する機構の確立、学校その他教育訓練機関の設置を考慮して計上したものである。」こう書いてある。これで予算の説明五百六十億が五、六行で終つておるわけだ。この際私は国民の立場において、この五、六行で簡単に片づけられておりますところの安全保障諸費の五百六十億の中で、大橋、木村両相が所管されておりますところのこの予算の内容の具体的な問題について、この際できる限り詳細に、しかも具体的な説明をひとつ求めておきたいと思う。
  240. 池田勇人

    池田国務大臣 予算説明書にはお話通りに書いてございます。予算害につきましても文字としてある程度の内訳が記載してあるのであります。それ以上のことは先ほど申し上げました御説明で御了承願うよりほかにございません。
  241. 有田二郎

    ○有田(二)委員長代理 川島君、まだ質疑の通告がありますので、なるべく多数の方に発言の機会を与えたいと思いますので、時間を厳守願いたいと思います。
  242. 川島金次

    ○川島委員 池田大蔵大臣に聞いたのではない。木村、大橋両相に聞いたんだ。
  243. 大橋武夫

    大橋国務大臣 予算のことでございますので、ただいま大蔵大臣の説明された通り、御解願了いたいと思います。     〔「具体的に説明しろ」と呼びその他発言する者多し〕
  244. 有田二郎

    ○有田(二)委員長代理 時間が参りましたから風早君に発言を許します。両大臣とも答弁はないそうであります。
  245. 川島金次

    ○川島委員 木村、大橋国務相が立つておるじやないか。
  246. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 大蔵大臣の今申し上げた通りであります。
  247. 川島金次

    ○川島委員 その内容を聞いているんだ。そんなばかな話はないじやないか。
  248. 池田勇人

    池田国務大臣 安全保障諸費は大蔵省の所管に載つておると私は記憶いたしております。従いまして私が申し上げたのであります。これがお話通りに、この機構の改革がきまりましたならば、その上で移すこともあるであろうことは先ほど答弁した通りであります。これで御了承願います。     〔有田(二)委員長代理退席、委員長着席〕
  249. 川島金次

    ○川島委員 大蔵省でやつたつてある程度の計画があるだろう。大橋、木村両相は大蔵大臣にすつかり掌握されておる。     〔具体的な説明がなければだめだ。」と呼びその他発言する者多し〕
  250. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に発言を許しております。風早君。
  251. 風早八十二

    ○風早委員 今池田大蔵大臣は一番大事な問題について答弁されなかつたのであります。結局問題がここにあるわけだ。遂に予算が最終の段階に達しておつても、まだ行政協定に対してはほおかむりして行くというその根本的態度を改めなければ、結局予算は通すことはできない。この五百六十億の内訳でありますが、今の川島委員の個々の項目について一つも具体的な御答弁がないわけであります。ただこの中で一番大きな費目である兵舎等の建築の問題、これは少くも米軍がどのくらいの兵数実際おるのか、このことが明らかにならなければ、兵舎の建築にこれだけ多額にいるということはだれも納得行かない。われわれはもちろん米軍の即時全面的な撤退を要求するけれども、おる米軍の数がわからなければ、この予算基礎というものは何ら示されないということになる。従つて私は池田大蔵大臣質問することは、この兵数並びに現在の兵数からどれくらいふえるのか、必ずふえなければならないと思うのでありますが、どのくらいふえるのか、この点について御答弁を願います。
  252. 池田勇人

    池田国務大臣 兵舎の問題につきましては、先ほど来の答弁以上にはお答えできません。
  253. 風早八十二

    ○風早委員 そうすると、まつたくこれは池田大蔵大臣は、ただ盲判を押して、そうしてこの概括予算を押しつけるというだけのことだ、こういうことになるのですね。それでは少くもこの点だけは答えられるはずだと思います。というのは補償の問題、今までは米軍の一方的な行動によつて日本の人民の生命財産に多大の危害を与えた場合がしばしばあるのであります。これに対して池田大蔵大臣は、今までは占領下であるから、米軍の側には補償の責任はない。従つて日本政府が見舞金としてこれに若干のものを出すのだ、こういうお話であつたわけです。しかしながら今日はもはやそれは通用しなくなつた。この補償の問題については、どういう手続で、また予算の上にはどういう費目となつてこれが出て来ておるか、この点を明確に御答弁を願う。
  254. 池田勇人

    池田国務大臣 問題をはつきりしていただきたいのでありますが、まだ占領治下でございますから、米軍の行為によりまして……。     〔発言する者多く議場騒然、聴取不能〕
  255. 塚田十一郎

    塚田委員長 私語を禁じます。
  256. 池田勇人

    池田国務大臣 今申し上げた通りであります。そうして今後におきましては、平和克服後におきまする損害の補償につきましては、行政協定で今話をしております。
  257. 風早八十二

    ○風早委員 少くも行政協定でまだ話をしているということこれはすでに行政協定の仮調印が一両日に迫つておると伝えられておるわけです。少くもこの補償の問題については、これは大蔵大臣は絶対にこれを知らないとは言えないだろうと思う。何も隠すことはない。特にこれは日本の大事な生命、財産に対する補償の問題であります。御遠慮はいうないのであります。この点は一体どこで補償されるつもりか、この点は何も行政協定云々と言われなくても、進んで大蔵大臣答弁されるべき、これは大蔵大臣は非常にいい立場にあると思う。御答弁願います。
  258. 池田勇人

    池田国務大臣 いい立場とか悪い立場ではございません。講和成立後独立国になりましたら、そういう場合の損害は補償いたしますがどこの費目からどう出すかという問題につきましては、ただいま留保させていいただきたいと思います。
  259. 風早八十二

    ○風早委員 どこの費目かわからないというのでは——つまりこの予算は通つてしまう、そうして行政協定が出て来る、それからでは間に合わないじやないか。結局補償はないということになりはしませんか。一体その場合にはどこの費目でこれに流用するかというようなことは、少くもここではつきりと報告されなければならないはずでしよう。あまりにもこれは事理明白だ、その点はどうなんです。
  260. 池田勇人

    池田国務大臣 補償はいたします。しかしどういうような費目で補償するかという問題になりますと、防衛支出金あるいは平和回復善後処理費であります。
  261. 風早八十二

    ○風早委員 今防衛支出金と言われましたが。その内訳はすでに示されておる。一体その中のどの費目がこれに充てらるのか、今のは逃げ口上じやないですか、実際われわれはこの補償についてはいくら探してみてもその費目は見当らない。逃げ口上であるのか、あるいは追加予算を予定しておられるのか、ここでもう一ぺんはつきり御答弁願いたい。
  262. 池田勇人

    池田国務大臣 補償の問題につきましては、いろいろの種類がございますので、防衛支出金あるいは平和回復善後処理費——平和回復善後処理費におきましても補償の十億円を入れております。従いまして補償の種類によりましてどこから出すか、しこうしてまた米軍に損害を与えた場合等も負担割合等がございますので、ただいまは申し上げかねます。
  263. 風早八十二

    ○風早委員 国民の生命、財産に最も直接関係のある補償の問題について結局大蔵大臣は何らの保障も与えておらない。この問題はこれではつきりした。  そこで第二、予備隊の漸増ということを言つておるけれども、米軍の漸増ということが具体的に示されておらない。この米軍の漸減方針について、これは大橋国務大臣お尋ねします。
  264. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は米軍の漸減ということは承知いたしておりません。
  265. 風早八十二

    ○風早委員 予備隊は漸増といい、米軍は漸減ではないという。そうすると少くも現在よりはふえる、予備隊もふえる、こういうことだとわれわれは理解しておきましよう。それ以外にない。  そこで今北大西洋同盟の範にならつて太平洋同盟ということを目標にして日本のいわゆる国防力なるものを漸増しようという計画であると思いますが、この点は間違いないか。もう一度これは新聞にも出ておつたし、あるいは他の箇所で答弁もあつたと思いますが、太平洋同盟を目標にしてはつきり政府は予備隊なりあるいはまた米軍の漸増をはかつておるのか、この点を明確に言つてもらいたい。
  266. 大橋武夫

    大橋国務大臣 米軍のわが国内におきまする駐兵の量でございますが、これは米軍駐留の目的上必要な範囲に限るわけでございまして、それはそのときどきの実情に応じて決定せらるべきものであり、一概に漸減あるいは漸増、そうしたものではないと私は考えております。  それかから警察予備隊の増員計画でございますが、これは警察予備隊の性質から見まして、今日増加することが日本治安にとり必要である、こういう考えをもつて増員の計画をいたしたのでございまして、北大西洋條約あるいは同盟、そうしたものとは関係なく、日本政府といたしまして、国内治安の実情から見まして必要であるという増員計画をいたした次第でございます。
  267. 風早八十二

    ○風早委員 日本警察予備隊、いわゆる保安隊というものの漸増計画——これは漸増ではないと思いますが、漸増計画についてアメリカの国防省と国務省との見解はどういう点で違いがあるのか、これをひとつ説明していただきたい。
  268. 大橋武夫

    大橋国務大臣 アメリカの国防省あるいは国務省といたしまして、日本警察予備隊の漸増問題についていかなる意見を持ち、いかなる違いがあるかこれは私から申し上げる限りではないと存じます。
  269. 風早八十二

    ○風早委員 これはアメリカの下院の歳出委員会においてアメリカ空軍参謀次長のローリングス中将が証言として言つておることでありますが、それによれば、日本軍の再軍備の規模というものは一九五二年から五三年の二箇年計画が実施されなければならない。これによると陸軍が三十万、海軍が五万、空軍が十万といわれております。この達成速度は五二年にこの計画の半分をやり、五三年には一〇〇%をやる、こういうことになつておる。しかもその費用の分担は、これは池田大蔵大臣に重大な関係があるわけでありますが、アメリカの負担は五二年においては六百億円、また日本の負担は千六百五十億円とほかに予備隊費として千四百五十億円で都合三千百億円、そうするとこの国防省の見解によれば、アメリカの負担は日本の負担の五分の一、日本の負担はアメリカの五倍ということになるわけだ。五三年度になりますと、アメリカの負担はなしで、日本の負担は二千二百五十億円と予備隊千九百億円で都合四千百五十億円、実にべらぼうなものになる。こういう計画アメリカの歳出委員会において堂堂とローリングス中将の口から証言せられておるわけだ。これはもちろん国防省の見解であります。しかもこういう陰の手じやなく、表の手がどんどんと動いておるわけだ。この場合に国防省と国務省との見解の相違を聞いたのは、これが結局国務省の見解となり、また見解に影響し、そうして行政協定にも今影響しておるに違いないわれわれは判断するがゆえに、この資料を今出したわけだ。こういう計画があるけれども、池田大蔵大臣なりあるいは大橋国務大臣なりは、一体こういう計画があることを知つておられるのかどうか、また知つておられなかつた場合においては、もしこういう計画があるとすれば、これは一体今日本政府考えておることとどの点がどう違うのか、この点をまず大橋国務大臣から御答弁願います。
  270. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本政府といたしましては、警察予備隊の来年度におきまする増員の計画といたしましては、三万五千人を増加いたしまして十一万という数を目標といたしておるわけでございます。これ以上には私どもは何らの計画をただいま持つておりません。
  271. 池田勇人

  272. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に申し上げますが、時間が参つておりますから、意見をなるべく少くしていただいて、質疑の要点をお述べくださらんことを望みます。
  273. 風早八十二

    ○風早委員 防衛分担金の問題で、日本が半分を、アメリカが半分を背負う、これは実に妙な話でありまして、アメリカ日本でかつてなことをやるのに、アメリカが半分で日本が半分ということは、そもそも最初からけしからぬのであるけれども、しかしそれにしても半分を負うというこの半分が今度の予算によつても絶対に半分じやない。またすでに国防省がこういう強硬な意見を証言しておるということになれば、将来この点についてはますます一方的な負担になつてしまうわけだ。こういう点について大蔵大臣としては今日はつきりしたことはどの程度言えるか、この点をひとつ御答弁願います。
  274. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど小峯委員に対してお答えした通りであります。
  275. 風早八十二

    ○風早委員 今の答弁は不服です。小峯委員に答えたと言われることとこれは問題が違います。私は負担の仕方について聞いているのです。(「同じだ」と呼ぶ者あり)同じじやない。この半分を日本が背負わなければならぬということは、最初からわれわれは反対である。しかしながらその半分にもなつていないじやないか。六百五十億円というものは、日本が六百五十億円出して、アメリカは六百五十億円も出してやしない。しかも日本の安全保障費なるものが実質上は防衛分担金と同性質のものである。そうしてみれば、これは明らかに日本が半分どころじやない、ほとんど大部分というものを背負つておるのではないか。この点で大蔵大臣としては一体どういう根拠で半分ということを言いながら、負担の問題についていまさら日本が大部分負担をするというような予算を組んだのか、この点明確に答弁してもらえば、私の質問はこれで終ります。
  276. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほど小峯委員に答えましたところで十分尽きていると考えております。私は半分を負担するというのではありません。大体半分程度を負担することにすれば六百五十億円になるわけでありますから、財政事情から六百五十億円計上したのであります。しこうしてこれ以上の負担は昭和二十七年度においてはない。これ以上になればアメリカが負担する、こう私は答えているのであります。
  277. 塚田十一郎

    塚田委員長 林君の関連質問を一問に限り許します。林百郎君。
  278. 林百郎

    ○林(百)委員 大橋国務大臣にお聞きしたいのでありますが、あなたのかつて予算委員会における答弁と、昨日の予算委員会の分科会におけるわが党の横田委員質問に対する増原警察予備隊の隊長の答弁とに重大な食い違いがあるのであります。それは警察予備隊員が二年間の期限が来てやめたいと思うときに、正当な理由がなくしてやめさせるわけには行かない。要するにやめたいという意思に対して、正当の理由があるかいなかによつてこれを阻止する、あるいは許さないということを増原警察予備隊長は言つているのであります。ところがあなたは、この前の本予算委員会における答弁の際には、やめたいという者は自由にやめさせると言つておる。この点は非常に重大な食い違いです。結局警察予備隊の当該の責任者である増原氏は、大体やめさせない、そうして今訓練している者はそのまま続けて訓練させて行く、そうして将来はこれを軍隊に仕上げて、肉弾の準備にして行こうということを言外に含めておるのであります。この点について、目下警察予備隊員である者は、むしろもう警察予備隊員をやめたがつている。早く六万なり幾らなりの退職金をもつて、こんな危険な将来軍隊になるようなところはやめたいという希望をみんな持つている。これに対して当該の最高責任者は正当な理由がなければやめさせないと言つておる。憲法の職業保障に対する重大なる侵害であります。これに対してあなたはどういう考えを持つているか、このことが一つ。  もう一つは、この前あなたは予算委員会で私の質問に対して、警察予備隊員の希望者が非常に多い。多過ぎてだれを選抜していいかわからないで困るから、市町村の推薦制をとると言いましたけれども、実際は第一次募集と第二次募集とを比較してみて、非常に激減している。従つてこの激減している募集に応募させるには、将来アメリカがやつておる選拔徴兵制をとるということが伝えられておるのであります。この点について、警察予備隊は非常に応募者が少くなつている。これに対して将来選拔あるいは徴兵というような制度をとることを考ているかどうか、これは農村の次男、三男あるいは学生諸君にとつては、将来再び徴兵制がしかれるかどうかということについては、重大な関心を持つているのであります。もしあなたが徴兵制というような強制的な制度は絶対にとらないというなら、それをこの場ではつきり言明してもらいたいのであります。
  279. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第一の御質問はおそらく今年の秋、二年の期限が切れた際に警察予備隊に現在おります諸君がやめたいという者はその希望によつてやめることができるかできないか、この問題に関連して私と増原長官とのお答えが食い違つている、こういうことだと存じますが、国会におきます答弁は原則といたしまして国務大臣がやらなければならないので、政府委員として私と十分打合せがなかつたので、あるいは私と違つた答弁に聞えたかもしれませんが、この点はこの間私の申し上げた通りに処置をいたしたいと考えております。  それから第二の点でございますが、徴兵をやるか、やらないかという御質問でございます。これは軍隊ではございませんので、私どもは徴兵義務というようなものは初めから考えておりませんが、この募集につきましては、あくまでも志願募集、自由募集という制度でやつて参りたい、こう考えております。
  280. 塚田十一郎

    塚田委員長 田中織之進君。
  281. 田中織之進

    ○田中(織)委員 先ほどからの主として大蔵大臣との質疑応答を伺つておりますと、どうも行政協定の内容を政府予算を組むにあたつて、また現在までに結論に到達している部分を政府側はもちろん十分御承知のことだと思うのでありますが、それを国会を通じて国民に知らされておらないというところにどうも質問に対するお答えがぴんと来ない点が出て来ていると思うのであります。ことに先ほどからの大蔵大臣防衛関係の御説明を承つておりますと、二十七年度の予算編成当初に大蔵省が考えたように、一種の予備費的な性格を現在の段階においても持つている。そういう意味で大蔵省は二千数百億というものを予備費として計上しようということを計画されたやに聞いておるのでありますが、その点は一応一理あると考える。しかしその予備費という中に二千数百億という厖大なるものがあつて、それが今回の財政法の改正等を通じて年度を継続してやるというような形になりますと、戦争中の臨時軍事費と同じような性格を持つという一面の弊害が出て来るので、当時から問題にされた点だと思うのでありますけれども、しかしただいまの大蔵大臣の御答弁のように、少くとも二、三年の間においては、防衛関係費は本年の千八百二十億よりふえるというようなことはまずあるまいということまで、かなり断定的に答えられ、そうして防衛費六百五十億、あるいは警察予備隊の費用五百四十億、安全保障費五百六十億をはじき出した根拠になつておる行政協定の内容を大蔵大臣が答えられないといたしますれば、政府は少くとも岡崎国務大臣なり担当者から、この委員会を通じて明らかにしなければならぬ義務があると思うのであります。ことに私がその意味大蔵大臣にお伺いしたいのは、大体防衛費はアメリカが負担する防衛駐留軍の費用千三百億の半分程度のものを計上しておいたならば、本年はまずこれで間に合うだろうということでありますが、少くともアメリカが負担する千三百億の半分を負担すればいいということは、行政協定によつて原則的に了解しておる問題でありますかどうかその点大蔵大臣からお答え願いたいと思うのであります。
  282. 池田勇人

    池田国務大臣 これは先ほど小峯委員質問のときにもお話申し上げましたように、私が六百五十億円の防衛支出金を計上いたしましたのは、アメリカ軍日本へ駐留することによつて要しまする費用は、私の推算をもつてすれば六、七千億円であります。そのうち日本がどれだけ負担するかという場合におきまして、日本が負担する分は、アメリカ軍の装備とか、食糧とか、給料はみな全部日本は負担しない。ただアメリカ軍日本に駐留した場合における日本で支払い費用——日本での支払い費用でもアメリカの駐留軍が食べます卵とか、りんごとか、こういうものは日本は負担しませんよ、食糧以外のアメリカの駐留軍が日本で支払う労務費とか、運賃とか、電話料が何ぼかということを見ますと大体千三百億円ございますから、六百六十億円ぐらいは、われわれの方で希望して駐留してもらうのだから負担するのが適当だろう。しかも六百五十億円というものは、日本の状態としてはこれは出さなければならぬ、この程度は負相すべきだという信念で行つたのであります。しこうしてそれが半分になるかならぬかという問題につきましては、私は今のところ、千三百億円を越えても六百五十億がふえるとは考えておりません。六百五十億円で、もうこれ以上できない、日本の経済が先になる、  こういう考えで六百五十億円を計上いたしたのであります。
  283. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大蔵大臣のただいまの御答弁を伺つておりますと、先ほどからの、細目の点については行政協定で話を進めておるのだから答えられないという答弁との間に、私は食い違いが出て来ることになると思うのであります。ことに問題は、これは二十七年度の予算全体に通じても問題になる点だと思いますけれども、行政協定の最終的な決定の結果いかんによりますと当然法律案なりあるいは予算というものも、この予算案と別個に議会に出て来なければならないような行政協定のとりきめが進められておるというふうに私は理解しておるのでありますが、その点は大蔵大臣の言われる意味は、特に行政協定については、今後予算及び法律の伴うものは議会の承認を求めるというけさほどの総理答弁からいたしまして、その関係をも含めた、いわゆる行政協定関係防衛費その他のものが、この予算に計上しておるものだけで足りるとお考えになつておるのかどうか、伺つておきたいと思います。
  284. 池田勇人

    池田国務大臣 予算に関する限りは、行政協定がきまりましても、防衛支出金六百五十億円は絶対に動かないという確信を持つております。
  285. 田中織之進

    ○田中(織)委員 そうするとちよつと角度をかえてお伺いいたしますが、先ほどの小峯委員質問に対する大蔵大臣の安全保障諸費の五百六十億の内訳の中に、営舎の関係の三百七億というものがございます。これはおそらく駐留軍の関係その他で使用するためのもので、まさか木造のものではないだろうと思うのであります。こういう安全保障関係あるいはこれは当然警察予備隊関係等にも入つて来ると思いますが、こういう面のたとえば鋼材、その他の資材の面における計画というものを的確に持つておられるかどうか。この点は、安本長官もお見えになつておりますが、木造ではないとするならば、鋼材の面等において、二十七年度におけるこういう関係の需要というものは私は相当厖大なものになると思うのでありますが、そういう関係から来る予算基礎的な問題についての見通しを、ひとつ大蔵大臣から承りたいと思います。
  286. 池田勇人

    池田国務大臣 六百五十億円の防衛支出金につきましては動きません。それからお話の安全保障諸費の五百六十億円につきましては、これは先ほど来たびたび申しておりますように、行政協定に基きまして、合同委員会によつていつどれだけの部隊がどこに動くかにより違うのであります。しこうして営舎のみならず住宅等も入つておりますから、相当資材がいることは承知いたしております。従いましてこれの使用につきましては、一般民間需要と考え合せながら施行して行かなければならぬと思つております。
  287. 田中織之進

    ○田中(織)委員 私は二十七年度の予算全体を通じて問題になる点はそこにあると思うのであります。ことに駐留軍の関係あるいは国内治安という意味における警察予備隊の増強関係、その他の関係で使います鋼材その他の資材は、率直に言えば、これはすべて非生産的な方面に使われるのです。そこでこの詳しい問題は、私は別の委員会で当該政府委員との問に質問をすることに譲りますけれども、そういう面におけるいわゆる生産との見通しの問題、あるいはまたこの予算を組んでいる物価水準というものは、昨年の第十二国会に出た補正予算のときの物価水準をそのまま引継いで来ておるというような関係からいたしまして、この予算のいわゆる脆弱点という問題がここに起つて来る。しかもこういう非生産的な支出が、この予算が通過した後、特に下半期に大量に放出せられる関係で、なけなしの、ことに基礎資材の面におけるそういうものに対して圧迫を加えることによつて、下半期に予想せられる深刻なる価格インフレというような関係からいたしまして、私は大蔵大臣の手放しの楽観というものはきわめて危険なことが、現在われわれの審議の対象として出して来ている予算の面からすでに出て来ておると思うのでありますが、特に物価水準の問題及び一般の民間に必要とする物との間のそういう生産関係等を、大蔵大臣はどこまで考慮されてこの予算を組んでおるかということについて、重ねて御答弁を煩わします。
  288. 池田勇人

    池田国務大臣 御承知通りに生産は、徐々ではありますが、ふえて参つております。鋼材その他につきましても相当の増加を来しております。セメントも増加いたしております。しこうして片一方で不急不要の固定資産は融資を相当制限いたしております。生産の増強と融資の統制、また政府資金の使い方につきましても遺憾なきを期しまして、お話のような物価の非常の高騰を招くようなことは起さない考えで進んでおります。
  289. 塚田十一郎

    塚田委員長 あと一問で結論をおつけ願います。
  290. 田中織之進

    ○田中(織)委員 大蔵大臣が現在、当初予算を出しておる建前から見ますならば、補正予算の問題について触れない立場はよくわかりますけれども、こういう点にこの予算はきわめて問題を含んでいるということを私は指摘せざるを得ないのであります。最後の質問ということに委員長から指定をされているので、私は大橋国務相並びに木村法務総裁及びこれに関連して大蔵大臣からもお答えを願いたい質問を申し上げたいと思うのであります。それは警察予備隊の装備の関係でございますが、現在はアメリカから貸与されているのであります。これはいわゆる無償貸与だというふうに理解しておるのでありますが、その通りでいいかどうかということ、それからもしこれを警察予備隊が使つている間に消耗した場合の補償というか、それはどうなるのか、それからこれをもう永久に貸しくだされて行くのか、返済をしなければならないものであるかどうかこれは先ほど大蔵大臣がお述べになりましたいわゆる防衛漸増という関係から見れば、若干の増加が防衛費全体の関係から今後考えなければならないという点とも私は触れるのでありますが、近く海上保安隊関係で海上の例のアリゲート艦というようなものも貸与を受けるということを聞いております。それは現在の予備隊の装備と同じような関係において返済の義務あるいは消耗した場合の弁償の問題がどうなるかという点であります。さらにこの点は行政協定とも関連を持つて来るのでありますけれども、米国とフイリピン国とのいわゆる安保條約に基く米比軍事協定によりますと、フイリピンのさしあたりの武器はアメリカから貸与を受ける、しかし将来は武器はフイリピン国で購入するのだということを規定しておるのを見ておるのでありますが、日本の場合は将来にわたつて永久にアメリカから借りるものであるか、特に十月から機構がかわつて、かりに保安隊防衛隊というようになる場合において、この装備を日本の国によつてたとえアメリカから古手を買うにいたしましても、その面における財政負担は大きな問題になつて来ると思うのであります。とうていこの予算に盛られておる程度のものではなくて、三千億、四千億という厖大なものに達すると思うのでありますが、この関係は、現在進めておる行政協定との関連において、警察予備隊の担当大臣である大橋国務大臣はどういうふうに考えておるか。また行政協定の内容としてはどういうふうに進んでおるか。この点は午前中の川崎君の質問にもありましたけれども、ある意味から見れば、そういう武器貸与の関係、あるいは、先ほどから大蔵大臣ははつきりお答えになりませんけれども、安全保障費の中にあります、たとえば日本国内防衛像の訓練のためにする学校の建設というような問題は、米比軍事協定によりますると、はつきりその中に書かれておる。少くとも当初はアメリカの本国に行つて訓練を受けるという関係が規定せられておるのであります。その点から見ましてもこれは大橋国務大臣というよりも、むしろ後ほどでも岡崎国務大臣が見えたらお答えを願わなければならぬと思うのでありますが、現在の行政協定の中に、はたしてこういう米比軍事協定のような関係の細目的なものまでが進められておるのかどうか。もし十月以降いわゆる自衛のためとか防衛漸増という関係から保安隊あるいは防衛隊という関係で、現在の警察予備隊を存続せしめる観点に立ちますならば、特に安保條約との関係においてそういう規定をしなければならない必要があるのじやないかと思う。これはあるいは講和発効後九十日の経過期間の中において締結しなければならないものではないかというようにも考えられるのであります。この点について大橋国務大臣としてどういうふうに考えておるかという点。最後の質問でありますので、これに関連して法務総裁にもう一点伺つておきたい問題は、けさほどの総理に対する質問で、総理並びに岡崎国務大臣から、いわゆる警察予備隊の海外出動というものは絶対にないのだということの言明があつたのであります。しかし参議院における政府側答弁及び今朝の答弁等を通じまして、これは国内法特に憲法との関係においてそういうことができないのだというふうにお答えになつておるのでありますが、この点はあくまで私は憲法の第九條の関係だと思うのであります。それは憲法の第九條における第二項の一番最後にある国の交戦権が認められないという関係からいたしまして、外国に予備隊、あるいはこれが将来保安隊ということになる場合においても、出動しないという意味であるのか、あるいはこれは憲法第九條の第一項にありますところの、いわゆる武力の行使はやらないという規定の関係からいたしまして、海外に向つて出動させることはやらないという意味合いなのか、それともまた、憲法の九條の第二項の前段にありますところの、いわゆる陸海軍その他の戦力を保持しないという関係から見て、海外出動というものは、先ほどの本会議における法務総裁答弁によれば、戦力ではないという強弁をされておる関係から見まして、この戦力を保有してはならないという規定、いわゆる国内法の関係で、たとい講和條約の第五條による国連に対する協力義務の関係からいたしましても、今後海外出動ということがあり得ないという意味であるかどうか、この点について木村総裁から明確な御答弁を煩わしたいと思うのであります。
  291. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私に対する御質問は、警察予備隊において借り受けております武器がどういうことになつておるかという点でございまして、この現在の実情を申し上げますと、米軍から貸与せられております武器は、まつたく無償で使用をいたしております。またこれの損失、破壊、破損等につきましては、米軍において無償で修理をいたすということに相なつておるのでございます。また亡失につきましては、今まで一度亡失した例がございますが、それについても格別損失補償の要求を受けたこともございませんし、いたしてもおりません。講和発効後におきましてはいかなる法律関係になるかという点でございますが、この点につきましては、まだ何ら先方からも話合いもございませんし、大体今までと同様の関係で使用ができるものである、こういうふうに考えております。なおこれについて行政協定に何らか的確な條項がきまるかどうかという御質問でございますが、この点はひとつ岡崎国務大臣からお聞きいただきたいと思います。
  292. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 警察予備隊海外に出動のことでありますが、これは総理も私も前に申しました。絶対に海外に出動することはあり得ない、その根拠は憲法第九條第一項の「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争の解決する手段としては、永久にこれを放棄する。」この明文から出たのであります。要するに日本国家といたしましては、将来いかなることがあつても、他国に対して威嚇のために武力を行使しない。このことは憲法第九條第一項の規定に明らかでございますから、将来にわたつて日本警察予備隊は海外に出動することはあり得ない、こう考えます。
  293. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田寿男君。
  294. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は法務総裁大橋国務大臣質問いたします。先ほど防衛分担金の内容と称せられるものを大蔵大臣から御説明になりましたけれども、問題は依然として残つております。行政協定の内容が依然として不明であるのに予算の数字を説明するというのは私どもには理解できないのであります。問題はあくまで行政協定の内容を明らかにすることにある。野党側のこの態度は不変であり、それは、根本的なものであります。これをやらないで根拠のない予算審議するということは、無意味であると思います。どうしても私は行政協定について国会の承認を必要とせずという政府の態度につき、徹底的にその根拠を明らかにしていただきたいと思うのであります。この問題につきましては、私は午前中、岡崎国務大臣と若干の質疑応答をしたのでありますが、順序から申しますればもう少し岡崎国務大臣質問いたしました後に、法務総裁並びに大橋国務大臣お尋ねしたいと思いますけれども、岡崎国務大臣が御退場になつておりますので、やむを得ず法務総裁大橋国務大臣お尋ねいたします。  政府が今回の行政協定につき国会の承認を求める必要がないとする弁解の一つとしまして、行政協定を実施する上において予算措置や法律の制定を必要とする場合は、それについて国会審議を求めるのであるから、国民行政協定の内容についてそんなに神経過敏になる必要はない、こういう意味の弁解をしておられるのであります。そこで法務総裁お尋ねしてみたいと思います。これは法務総裁お答えできるかどうかと思いますけれども、大体今回の行政協定に基きまして、何か新しい法律をつくらなければならぬというような御予想がおありでありますかどうか、あるとすればどういう法律を今のところつくらなければならぬという予想であるか、これについて、ちよつと最初にお尋ねしてみたいと思います。
  295. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 それは行政協定の内容いかんによりますので、それが明らかになつてから法的措置を講ずる必要があれば講じたい、こう考えます。
  296. 黒田寿男

    ○黒田委員 そうしますと、今のところ行政協定に基いて新しい法律がつくられるかどうかということについては全然見当がつかぬ、こうおつしやるわけですが、そうおつしやるのでありますならばやむを得ません。そこでこの問題はこの程度にしておきまして、次に法務総裁お尋ねしてみたいと思いますことは、この行政協定について国会の承認を求める必要がないと政府が御主張なさいますのは、この協定が憲法第七十三條三号にうたつてありますところの條約ではないからというような御見解に基いてでございましようか、その点をちよつと承りたい。
  297. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 行政協定安全保障條約の実施に関する細目を規定したものでありまして、本條約である安保條約がすでに批准をされた以上は、再び行政協定について国会の承認は要しない、こう考えます。
  298. 黒田寿男

    ○黒田委員 実はただいま法務総裁がおつしやいましたことと大体同じようなことを、この前の国会におきまして当時の法務総裁であられました大橋現国務大臣が言われた。しかしそこに問題がある。これが重要な問題である。政府はそのように言われるのでありますから、そうするとやはり行政協定も憲法第七十三條第三号の條約であるということはお認めになつておる。しかし安全保障條約を承認したときに、この行政協定という條約も事前承認をしておるのであるから、今回あらためて国会の承認を得る必要はない、こういう御趣旨であると思います。そうでございますか、念のために承りたい。
  299. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 行政協定安保條約の一部をなすものであると思います。
  300. 黒田寿男

    ○黒田委員 そこで、これは、大橋国務大臣法務総裁時代の御答弁と同じでありますが、私どもは、それに対して承服することができないのであります。一体、憲法第七十三條の三号の條約、その條約について国会の承認を求めるということ、それは内容の確定した條約において初めて承認を求めるという問題が起るのであります。まだ内容が全然不明な場合に、なおかつ、ある協定についてこれを一種の條約と予想して、それを事前に承認するというようなことは、私は現在の憲法の解釈としては許されないことであると考えます。第七十三條第三号の條約の承認というのは内容の確定したる條約についてである。従つて内容の確定もしない、将来どういう内容において結ばれるかわかちないような行政協定と称する條約をまだそういう内容不明な時期におい事前に承認するというのは憲法の精神に反しておる。大橋国務大臣法務総裁当時におつしやつたあの説明に対しては、私はどうしても了承することができません。今日、木村法務総裁は同じことをおつしやる。私はこの点については納得の行くような御説明をいただきたい。法務総裁のお考えは危険な思想である、憲法破壊の思想である、これをどうお考えになるか、御質問申し上げます。
  301. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私の意見はその通りでありまして、これは黒田君と意見の相違であります。
  302. 黒田寿男

    ○黒田委員 この問題については、私は意見の相違だというようなことで簡単に引下ることはできません、これは大問題です、憲法解釈上の重大問題であります。まだ内容がきまらない條約を、内容の確定のはるか以前の時期において白紙委任的に承認するなどということ、このようなことをすることは、憲法は、絶対にその精神としておりません。従つて法務総裁意見の相違だとおつしやつて私の質問を回避せられようとされるかもしれませんが、私は断じてそういうことで承服することはできません。また政府のそのような御説明を、国会の承認を要しないという政府の御意見の根拠と承ることは私には断じてできないのであります。     〔「憲法の解釈に対して内閣が一致した意見を持つてない、それでどうして予算審議ができる」と呼び、その他発言する者あり〕
  303. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います、黒田君の発言中であります。     〔「これは日本憲法上の大問題だ、そんなことは許されないと呼び、その他発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  304. 塚田十一郎

    塚田委員長 御意見があれば適当な機会に発言を求めておつしやつてください。(発言する者あり)御静粛に願います。御意見があれば発言を求めて静粛に御発言ください。御意見があれば発言を求めて正当に御発言願います。     〔発言する者、離席する者多く、議場騒然〕
  305. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。(「行政協定に対する感覚がまるで違うのだ」と呼び、その他発言する者多し」)私語を禁じます。ただいま黒田君の発言によつて、その点が明らかにされつつあるのであります。正当に発言を求めてください。(発言する者多し)黒田君、御質疑を継続願います。御静粛に願います。——法務総裁より発言を求められております。これを許します。
  306. 黒田寿男

    ○黒田委員 私、その前に……。     〔発言する者多し〕
  307. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。黒田君の発言を許します。
  308. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は委員長に対しましてこの際特に希望したいと思います。ただいまの政府の御答弁は、私は従来の、ありふれた、単なる見解の違いというような問題として看過することはできません。大橋国務大臣や木村法務総裁の御答弁には、この両大臣がどう言われたからといいまして私ども野党としては、それだけでどうするということはできません。これはどうしても総理大臣に出て来ていただいて……(発言する者多し)総理大臣に出て来ていただいて、総理大臣に直接聞きたい。総理大臣に……(「そんな必要はない」と呼ぶ者あり)いやある。こういう問題は根本問題でありますから、どうしても総理大臣に聞きたい。木村総裁や大橋国務大臣からはこれ以上聞きたくない。私はぜひ総理大臣に御出席を願つて、この問題に関する政府の御見解をはつきりと承らなければ、私は引下ることはできませんから、ぜひそのようにおとりはからい願いたいと思います。
  309. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田君に伺いますが、総理大臣が御出席がなければ質疑を継続されない御意向でありますか。
  310. 黒田寿男

    ○黒田委員 今国会の重大問題でありますところの予算審議し、あるいはまた、行政協定の問題を審議いたしますときに、総理大臣がこれ以上御出席がないということは、私どもは予想することができない。われわれ議員の要求に基いて断じて総理大臣は明後日御出席にならなければならぬと思います。
  311. 塚田十一郎

    塚田委員長 それは黒田君の御意見でありますから……。
  312. 黒田寿男

    ○黒田委員 委員権利をもつてそのくらいのことは御要求なさらなければなりません。私どもは総理大臣が来ないというようなことを予想して私の質問を進めることはできません。これはどうしてもお呼び願いたいと思います。
  313. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田君に申し上げます。ただいまのは黒田君の御意見として伺いました。そこで委員長から黒田君にお尋ねいたすのでありますが、本日総理大臣の御出席を要求されても、それは事実上不可能であります。そこで黒田君は、総理大臣が御出席なければこれ以上質疑を御継続になる御意思がないのかどうかお伺いしたいと思います。
  314. 黒田寿男

    ○黒田委員 私は意思はありますけれども、総理大臣がおいでになるかならないかということは、委員長御自身もきめることはできない問題であります。これは将来における不定の問題であります。従つて私は総理大臣が御出席になつてから私の質問を継続する、こういうことにいたしたい。そのことは決して私の質問を放棄したことでは断じてないのであります。総理大臣がおいでになつてから、この問題を総理御自身の口から私は承りたい。
  315. 塚田十一郎

    塚田委員長 ちよつと速記をとめて。     〔速記中止〕
  316. 塚田十一郎

    塚田委員長 速記を始めて。木村法務総裁より答弁のための発言を求められております。
  317. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私の言があるいは前のと矛盾したことを言う疑いがあつたかもわかりませんが、さらに私はここで申し上げます。今度締結さるべき行政協定の案件は、本條約であります安保條約の実施のために——これは私も申し上げたのです——必要な細目を定めたものでありまして、本條約に付随するとりきめにすぎないのでありますから、これについては別段批准を求める必要はない。私はこういう意味で前から申したのでありますが、あるいは言葉の食い違いもあつたかもしれません。
  318. 黒田寿男

    ○黒田委員 先ほど法務総裁が私にお答えくださつたのと、今おつしやいましたのとは全然違う。書生つぼの人がそういうことを言うのでありますならば、あるいはあとの言がどうとか、前の言がどうだとかいうことの判断はどうでもいいかと思います。しかしいやしくも一国の法務総裁が、ごくわずかの時間に重大問題の法律解釈について全然異なる意見を申されるというようなことでは、ただいま法務総裁がどうお考えになつておりましようとも、私は政府の権威ある答弁とは受取れません。(拍子)そこでどうしても私は総理大臣の御出席を求めます。総理大臣が来られてからその御解釈を承りたい。それに対しましてまた私も自分の考えを申したいと思います。私は総理大臣お答えがあるよう特に委員長にお願い申し上げておきます。
  319. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 私はさきも言いました通り安保條約の細目を定めたものであるから……(「細目じやないじやないか」と呼ぶ者あり)私は前からそう言つた。実施の細目を定めたものであるから、批准する必要はないというのです。かりに條約にするにしても、すでに委任を受けているものであるから、あらためて批准を求める必要はない。
  320. 黒田寿男

    ○黒田委員 法務総裁のお考えは、私が先ほどから言いますように、単なる意見の相違というような問題ではなく、非常に重要な問題であります。憲法解釈に関する板本問題であります。将来の條約締結に関する根本問題であります。もし政府のような御見解で、どんどんとかつてに白紙委任状的事前承認を国会の多数をたのんであえてなして、そしていざという具体的な問題の発生いたしましたときには、国会の承認を得ることを要しない、こういう解釈をもつてどんどんと條約を締結されては、これでは国民権利を守ることはできません。どうしてもこの問題につきましては総理大臣の御見解を承りたいと思います。     〔「総理大臣の出席を求めているのだ」「重大な問題だ」ばか言うな、では質疑を打切るよ」と呼びその他発言する者多し〕
  321. 塚田十一郎

    塚田委員長 速記をとめて。     〔速記中止〕
  322. 塚田十一郎

    塚田委員長 速記を始めて。  黒田君の質疑を御継続願います。
  323. 黒田寿男

    ○黒田委員 くどいようでございますけれども、やはりこの問題は重要な問題であると考えますので、先ほども委員長にお願い申し上げましたように、きよう御出席願えなければ、明後日でけつこうでございますから、やはり総理大臣に御出席を願いまして、そうして総理大臣のこの問題に関する御見解を承つて、さてそのあとで私どもそれに賛成するか反対するか、これはまた別問題でありますが、しかしどうしてもこれは重大な問題でありますから、総理のお口から親しく解釈を承りたいと思います。私はそのあとでまた私の質問をしたい、そういうふうにおとりはからいをぜひお願いいたしたいと思います。
  324. 塚田十一郎

    塚田委員長 黒田委員の御希望は承りました。  井出委員より発言を求められております。この際これを許します。井出一太郎君。
  325. 井出一太郎

    ○井出委員 私は野党全員を代表いたしまして、ここに動議を提出いたすものでございます。  われわれは一月二十八日以来本委員会におきまして昭和二十七年度予算審議いたして参りました。わが国が独立第一年に際会いたしまして、きわめて重大なる予算でありますることは論をまちません。この間野党側といたしましては慎重審議いたしたつもりでございます。そのことは野党の声こそまさに国民の声を代弁するゆえんであるからであります。今や予算審議は最終段階入つて参りました。われわれが最も重大視いたしました行政協定の内容を明らかにせよという点に関しまして、幾たびか総理の出席を求め、本日のごときも、あらゆる角度から総理に対しましてその内容の明示を迫つたのでございますが、諸君お聞き及びの通り、あるいは言を左右にされる、あるいは顧みて他を言われる堅白、異同の弁を弄する等々によりまして、国民が真に聞きたいと願望しております行政協定はいまだに明らかにならずして、本予算はあるいは近くこの委員会において打上げになろうというような状況に相なつておるのでございます。あるいはまた財政問題につきましても、先ほど大蔵大臣の御答弁を承つておりますと、川島委員質問に答えていわく、予算説明書の中に数行記載をしてある、あるいは予算書の中に目が明示してある。さらに本日小峯委員質問に答えて若干漏らされた程度以外には、この段階においては明示できない、このように大蔵大臣ははつきり言われおる。われわれは当の責任者の大蔵大臣がかように言われるのに対しては、これ以上この審議を続けることも無意味であるとさえも考えるものでございます。  さらにまたただいま黒田委員質問に対しまして、木村法務総裁は重大なる失言をせられた、黒田委員総理の出席あるまでは国政の最高責任者である総理の口を通じて、そのことを明快にされない限りは質問を留保したいと言われておる。われわれは従来とも慎重に審議を尽して参りましたけれども、まだまだこの予算は、これを追求するならば幾多問題が残つていると思うのでございます。さような観点から、本日の質疑はこの程度をもつて打切りまして、明後日頭を冷静にして客観情勢の推移とも相まちまして、そのころにはあるいは行政協定はもつと明確にわかつて参るかもしれない、かような意味で明後二十五日定刻より本委員会を開かれまして、質疑を継続すべしという動議をここに提出いたす次第でございます。(拍手)
  326. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの動議に対して討論の通告があります。これを許します。西村榮一君。
  327. 西村榮一

    西村(榮)委員 私はただいまの動議に賛成いたすものであります。なぜならば、先ほど木村法務総裁が黒田君に御答弁なさいました行政協定は国際條約であるという見解は、私は法務総裁として最も良心的な御答弁であると確信しておるのであります。しかしながら木村法務総裁はそれにつけ加えられて、本国際條約はすでに日米安全保障條約の中に事前に了解を求めているから、これは国際條約であつて国会審議の対象外になるという御説明があつたのでありますが、これは法律家としての木村君と政治家としての木村君との板ばさみになつた自己矛盾の弁明であると思うのであります。ということは、法律家であるならば、日米安全保障條約の各章をごらんになれば、さような詭弁はなし得ないのでありまして、日米安全保障條約第三條に何と書いてあるかと申しますと、アメリカ合衆国軍隊日本国内及びその附近における配備を規律する條件は、両国政府間の行政権協定で決定する。原案は、日本文字は行政協定となつておりますが、両国政府間の行政権協定で決定する、こう書いてあるのでありまして、日米安全保障條約第三條は、合衆国軍隊日本国内及びその附近に配置する兵力を規律する條件であるのであります。日本国民権利義務予算処置が伴い、国権の制約を受くる條約をここに取結ぶ権能というものは、日米安全保障條約の中には与えておらないのであります。私は前半における木村法務総裁の法律家としての良心的答弁は了といたしますが、後段におけるこれは事前の了解であるということは、これは、木村総裁はかつて弁護士でありますから、下級裁判所における刑事弁論としては成り立つかもしれないけれども、政治家としての良心的答弁としては成り立たない。吉田内閣の支柱となすものは、法律解釈はこれは決勝総裁がなすのでありまして、岡崎君並びに吉田総理大臣は外交官のエキスパートではあるけれども、法律家ではありません。われわれ野党が国民を代表いたしまして本案を審議する上にあたつてその法律解釈、憲法の解釈を求めるにおきましては、これは吉田総理大臣並びに岡崎国務大臣解釈よりも、法律専門家であり、しかも内閣においてその担当者である木村法務総裁解釈を正しいと考えるのでありまして、この意味において、重大なる法務担当者と、総理大臣並びに外交関係者との間において意見の不一致を来しておるのであります。この意見の不一致はどこから来しておるか。文字の解釈ではありません。つい日本の置かれた政治的苦悶の象徴が内閣の不統一の言明と相なつたのでありまして、この点においてこれを政治的に明確にして予算審議に入ることこそが、国民政治の負託の責任を果すものだと確信いたしますがゆえに、ただいま動議に出されましたように、総理大臣の出席を求めて解釈を明確にした上審議に入りたいと存ずるのでありまして、私は賛成の意見を述べる次第であります。
  328. 塚田十一郎

    塚田委員長 林百郎君。
  329. 林百郎

    ○林(百)委員 野党が何ゆえ行政協定の問題を取上げて、これが明確になるまではわれわれ予算審議の責任が持てないということを言うか。さらにまた本日、木村法務総裁総理との間の行政協定の性格に対する重大な答弁の齟齬を目の前に見まして、われわれはますますこの問題が明確になるまでは、絶対にわれわれの予算審議権を放棄することができないのであります。(笑声)なぜわれわれが行政協定の内容をわれわれの国会で明らかにすることを政府に要求するかといいますと、第一には、アメリカの上院におきましては、まず行政協定が明確になるまでは日米の講和條約の批准をしないと言つておるのであります。日本は講和條約は批准するわ、安全保障條約は批准するわ、行政協定は今やほとんど仮調印の段階に行つている。そうしてこうしたすべてのものを材料にしてアメリカ側では、行政協定をとりきめるまでは日米の講和條約を批准しないと言つて、これをもつて行政協定に対する重大な重圧を加えて来ておるのであります。このことは、明らかに占領下においてとられるものはすべてとられて、われわれが主張すべきものはすべて放棄するという、まつたく売国的な状態のもとにこの行政協定をとりきめようとしておるのであります。  その次に重要な問題は、アメリカのブラツドレー参謀総長も言つております通りに、朝鮮戦線におけるところの休戦会談が成立する前に日本との行政協定を締結しなかつたならば、アメリカの朝鮮における作戦は重大な齟齬を来すということを言つておるのであります。すなわちこのことは、吉田内閣の閣僚たちが何を言おうと、アメリカでは明らかに朝鮮戦線に日本の物的、人的資源を動員する準備として、朝鮮の休戦協定が成立する前に日本の再軍備を確固不動のものにするために、この行政協定をとりきめているということは、これは明瞭なのであります。要するにこの行政協定日本国会にもかけずに、しかも朝鮮の休戦会談成立前にこれをとりきめようとすることは、日本の物的、人的資源をあげて朝鮮事変に動員することであり、アメリカのアジア作戦の計画日本の一切を犠牲にするという、これまたまつたく売国的な意図を持つてなされていることを日本閣僚諸君は十分承知しているからこそ、われわれにこの行政協定を明確にすることができないと思うのであります。  第二の問題は、日本に駐留する米軍行動する場合の規定は話合いによつてきめるというような、故意にわれわれを欺瞞するような答弁をしているのであります。しかし皆さん、特に閣僚の諸君に聞いていただきたいことは、朝鮮事変が起きたときに——はたして日本相談があつて朝鮮事変が起きたでありましようか。(笑声)明らかにわれわれが全然関知しない間に朝鮮事変は起きているのであります。今後おそらくこれと同じ事態が、朝鮮あるいは台湾あるいはヴエトナム等において、アメリカ軍隊アメリカの作戦の自己の判断だけで戦争が始まり、そしてアメリカの作戦の必要上からわれわれの知らない間に戦争に入ることによつて、われわれはこれに協力するという安保條約あるいは行政協定によつて日本戦争に巻き込まれるということは明らかなのであります。要するにわれわれは、アメリカの判断によつて……。
  330. 塚田十一郎

    塚田委員長 林君に御注意申し上げます。討論の趣旨を逸脱しないように御注意願います。
  331. 林百郎

    ○林(百)委員 自動的に戦争に巻き込まれるのであります。戦争するかしないかということは、日本の主権にとつて最も重要な要素であります。ところがこの戦争をするかしないかという自由が、アメリカによつて決定されるのであつて、全然これに対して決定権のないようなこういう売国的な行政協定に対しては、われわれは徹底的にこれを追究する必要があるのであります。だからこそわれわれは、これを国会で明確にすることを要求しているの、あります。  その次には、この米軍行動に対して日本警察予備隊がこれに協力することは、これは明瞭であります。しかも日本警察予備隊アメリカ軍の顧問があり、アメリカ軍の武器を借りている以上は、万一戦争的な行動……。
  332. 塚田十一郎

    塚田委員長 林君に重ねて御注意申し上げます。討論の趣旨を逸脱なさらないように願います。御注意なければ中止いたします。
  333. 林百郎

    ○林(百)委員 なぜわれわれが行政協定を明確にすることを——要するに動乱が起きた場合に、日本警察予備隊に対する統帥権は米軍がこれを握るということは、日本警察予備隊の実体からいつて明瞭であります。われわれはこういう日本の青年が、日本警察予備隊が、日本の肉弾がアメリカの統帥権のもとに犠牲になるようなとりきめに対しては、これをやはり国会において十分審議する必要があると思うのであります。われわれはこのような売国的な行政協定をこの国会において審議することなくして、もしこの予算の討論を終結するようなことがあるならば、われわれは国会議員としての職を放棄することになり、われわれの子孫に千載の悔いを残すことになると思うのであります。われわれは国民負託された国会議員としての審議権を行使するために、この行政協定の内容を明らかにすることを要求し、あわせて吉田総理大臣と木村法務総裁との間の重大な食い違いに対して、行政協定の憲法上の性格に対する重大な食い違いに対して、あくまでこれを明確にする必要があると思うのであります。われわれはこのように重大な問題が国会審議されているときに、あの大磯でのうのうと週末休養している吉田総理に対して、野党はいかなることをしても吉田総理の出席を求めて、この重大な国策上の齟齬を明らかにする必要があると思うのであります。われわれはこの意味において井手君の動議に対して絶対賛意を表するものであります。(拍手)
  334. 塚田十一郎

    塚田委員長 討論は終局いたしました。これより採決いたします。この動議に賛成の諸君は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  335. 塚田十一郎

    塚田委員長 起立少数であります。よつてただいまの動議は否決されました。  なおただいまの林委員の発言中、もし不穏当の言辞がありますれば、速記録を調べました上で適当の措置をとることといたします。  有田委員より発言を求められております。これを許します。有田二郎君。
  336. 有田二郎

    ○有田(二)委員 質疑はこれをもつて終局されんことを望みます。
  337. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいま有田君より提出されました質疑終局の動議について採決いたします。この動議に賛成の諸君は起立を願います。     〔賛成者起立〕
  338. 塚田十一郎

    塚田委員長 起立多数であります。よつて質疑は終局いたしました。本日はこれにて散会いたします。     午後六時二十一分散会