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赤松委員 ちようど六三ベースのときでございましたか、私は
吉田内閣総理大臣に、
戦争犠牲者の問題に
関連いたしまして、
日本の将来につきまして
お話をお伺いいたしました。その際は
総理からきわめて誠意あふふるる御
答弁をいただきました。ちようどそのときは総選挙の前でございまして、
お互いにフエア・プレーで総選挙をやろうと
言つてわかれました。爾来ちようど三年になります。再び私は今
総理に
質問するのでございますが、今日は事情が非常に違
つておりまして、
国民は迷
つておるのでございます。ある者は非常に不安におびえており、ある者は疑惑を持
つており、この
国会の論議、
審議の過程を、ほんとうに子供を抱いた母親、
戦争の犠牲者、青年、多くの
日本は、それこそいろいろな感慨を込めてこれを見守
つておるのでございます。以下私は時間がございませんので四、五点要約をいたしまして、御
質問をしたいと思うのでございますが、どうぞひとつ
吉田内閣総理大臣は、この
日本人の切実な気持を十分おくみとりくださいまして、私に答えるとともに、
国会を通じて、不安と疑惑におののいておる
国民に対して
お答えを願いたいと思うのでございます。
まず第一点でございますが、この点は私寡聞にいたしましてあまり
国会において論議がなされていないように思うのでありますが、ダレス特使は直接侵略に対して、
日本の安全を米国
軍隊の手で守
つてやろうということを、しばしば声明いたしました。これに賛成する者もございます、これに反対する者もございます。それはいろいろな
考えを
国民が持つことは自由でございますが、少くとも
国会やあるいは
政府は、このダレス特使の声明に対しまして、われわれ自身の自主的な立場なり方針なりをきめなければなりません。そこで問題になりますことは、
米軍が、いわゆる直接侵略に対して守
つてやるんだ、こう簡単に
言つてはくれますけれども、私どもはか
つての太平洋
戦争におけるフイリピンの状態を忘れるわけには参りません。御案内のように、当時フイリピンは、マツカーサー元帥の率いまする
米軍が、いわゆる作戦的後退、戦略的見地から
米軍を撤退いたしました。そうして上陸いたしました
日本軍に集中爆撃を浴びせたのでございます。そのためにフイリピンの多くの民衆は、その巻添を食ら
つて多数の被害者を出したことは
総理十分御存じであると思うのでございます。また南鮮におきましても、これまた安全を保障するとい
つて、国連軍が出てくれましたけれども、今日南鮮におきまする朝鮮人の悲惨なる状態も、
総理十分御存じであると思うのでございます。私どもはダレス特使が何度御声明くださいましても、それをただ簡単に、私どもはありがとうございますとい
つて受取るわけには参らぬのでございます。南鮮のような状態になるんじやないか、か
つてのフイリピンのような状態が生れるのじやないか、これを
国民は心配しております。ことに私どもが知らない間に原爆が
日本に持ち込まれ、その原爆が
日本の知らない間に使用され、しかも外敵から知らない間に報復爆撃を加えられる。こういうような状態が生れたといたしますならば、これは党派を越え、すべての人たちの立場を越えた全
日本人の、それこそ悲惨な民族の運命に関する問題でございます。
吉田総理はその際にはたして
日本の安全を保障する具体的な方策というものがあるかどうか、ダレス・
吉田会談において、このことについてのお
話合いが十分になされておるかどうか、今日米英のさまざまな
軍備力を
日本の
防衛にまわすというようなことは、困難なように聞いております。時間がございませんからその資料は提示いたしませんが、困難なように聞いております。その際に
日本はどうするのであるか、米国におきましては、原爆に備えてただいま米国自身は、その防空演習に熱中しておるということを私は聞いております。
日本におきまして、この原爆戦、
近代戦に対する準備が一体どこのどこで行われておるでございましようか。かように私どもは無手勝流で、それこそわれわれはそのダレス特使のわずかの
一つの
言葉をたよりとして生きておるような印象を、
国民に与えておるのでございます。どうぞこの際、
日本の安全保障がこのようにできるんだということの具体的な方策を、
吉田総理大臣から
国民に示していただきたいと思うのでございます。