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1952-02-16 第13回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月十六日(土曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 北澤 直吉君 理事 小峯 柳多君    理事 苫米地英俊君 理事 井出一太郎君    理事 川島 金次君       淺利 三朗君    井手 光治君       江花  靜君    遠藤 三郎君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       小淵 光平君    角田 幸吉君       甲木  保君    川端 佳夫君       倉石 忠雄君    小坂善太郎君       志田 義信君    庄司 一郎君       鈴木 正文君    田口長治郎君       玉置  實君    中村 幸八君       西村 久之君    南  好雄君       今井  耕君    川崎 秀二君       早川  崇君    藤田 義光君       岡  良一君    水谷長三郎君       風早八十二君    山口 武秀君       横田甚太郎君    稻村 順三君       成田 知巳君    石野 久男君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         文 部 大 臣 天野 貞祐君         運 輸 大 臣 村上 義一君         労 働 大 臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君         国 務 大 臣 岡野 清豪君         国 務 大 臣 周東 英雄君  出席政府委員         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         農林政務次官  野原 正勝君  委員外出席者         專  門  員 小林幾次郎君         專  門  員 園山 芳造君         專  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 二月十六日  委員倉石忠雄君、黒澤富次郎君、守島伍郎君、  西村榮一君及び成田知巳辞任につき、その補  欠として小坂善太郎君、永井要造君、天野公義  君、岡良一君及び八百板正君が議長指名で委  員に選任された。 同日  委員八百板正辞任につき、その補欠として成  田知巳君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 会議を開きます。  昭和二十七年度本予算の各案を議題に供します。質疑を継続いたします。川島金次君。
  3. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣がたまたまかぜのようであります。最初に実は安本長官にお伺いをしてから、大蔵大臣という心組みでおりましたのですが、御病気のことでもありますことを了承しまして、最初大蔵大臣お尋ねを申し上げます。  大蔵大臣は先般の本会議におきまする財政演説の際に、終戦後におけるわが国崩壊寸前にあつた経済危機を突破し、ようやく経済安定の糸口にたどりつくようになつたのも、一つには対日援助のしからしめるところであるのはもとよりあるが、もつぱら国民大衆のたゆまない努力にあつたということを強調されました。われわれもその点はきわめて同感であります。敗戦後における非常に苦難経済生活の中にあつて、よく今日のごとき日本経済発展と回復をもたらしましたことは、まことに大蔵大臣の言をまつまでもなく、働く国民大衆苦難に耐えた、たゆまざる精励と勤勉と努力ということがあずかつて、力があつたことは、きわめて明白な事柄であります。この苦難ないばらの道を勤勉と努力によつて、今日まで進んで参りました国民大衆は、今や待望の講和條約の効力発生を目前に控えて、わが国独立の第一歩を踏み出そうといたしております。この独立への一歩を眼前にいたしまして、国内における広汎な勤労大衆は、日本独立が真に名実ともに備わつた独立への一歩であり、その事柄を通じて何らかの形において、物心両面とも明るい希望が持てる独立の一髪を踏み出すことにならないかということを、衷心から期待希望をいたしております。しかるに今回提案されました予算をわれわれは通覧いたしました場合に、はたして政府がこの国内の広汎な勤労国民大衆希望期待にこたえるような経済財政等の積極的な施策に乏しいということをわれわれは認めて、衷心より遺憾にたえないのであります。ことに大蔵大臣は今回の予算の上で、防衛費中心とする講和條約成立に伴う諸般の経費を、およそ二千余億円計上しておる。この二千余億円の費用が、日本国内におけるところの勤労国民大衆生計の上に、重大な圧力となつて来るのではないかという懸念が、われわれには十分に持たれるのであります。大蔵大臣外国の例を引いて、防衛費は総予算のわずかに二〇房程度にすぎない。これを国民所得の五兆三百億に比較すれば、わずかに三・五%程度だという説明をいたしまして、この厖大な二千余億円に上るところの経費に対して、事もなげなる説明をいたしておることは事実であります。私どもはこの厖大防衛費外国所得に比較して問題にいたしたくはない。われわれの最も関心を持つべき点は、この費用中心として組み立てられました昭和二十七年度の予算及びこの予算を通じて行われまするところの政府財政経済政策が、この防衛費圧力に災いされまして、実質的には国民経済に大きな影響を與え、国民生活水準を低下せしめるのではないかという心配を、われわれは十分に持つのであります。大蔵大臣日本経済維持と、国際的な諸経費と内における防衛費との調整が、きわめて重大な問題であるということを、みずからも説明いたしておりますが、その調整がややもすれば跛行的な数字になり、完全な調整がとれなくして国民生活根底脅威を與えるような事情にありといたしまするならば、きわめて重大な問題であります。それはせつかくかちとるところの日本独立への一歩も、その根底からくつがえるような不安なしといたさないのでございますので、まずこの点に関する大蔵大臣のさらに明快なるところの信念と見通し等について、この機会にあらためてお伺いをしておきたいと思います。
  4. 池田勇人

    池田国務大臣 昭和二十七年度の予算のわくをどのくらいにするかということが、さきの臨時国会において問題になりまして、私は八千億円台と申しておつたのであります。八千億円台というときには、八千九百億円もあるし、八千百億円もある、どちらかというような質問もございましたが、私は国民所得に対しまして、独立予算として国際関係費あるいは防衛費がふえましても、大体八千五百二十七億円にとどめ得たことをみずから喜ぶものであります。しこうして八千五百二十七億円中、防衛並びに平和関係諸費国内費との問題でございまするが、私は防衛関係あるいは平和関係費用が、一説には相当多い二千五、六百億という話もありましたが、まあ二千億円台程度にとどめて、そういう特別の経費がいつたにかかわらず、内政費も二十六年度よりはある程度ふやし、しかもその内政費の内容におきまして、食糧増産治山治水、その他各般の、われわれの日ごろ主張しておりまする施策を行い得たことを、これまた喜ぶものであります。しこうして今後防衛費国際関係経費はどうあるべきかという問題につきましては、先般来お答えしましたように、国民経済発展によりまして国民所得増加を来し、これに基いて歳入その他の増がありまするならば、まず内政費の方を考うべきだ。国民生活安定向上が何をおいても第一義でございますので、そういう点をまかなう。そうして余裕があつた場合に、私は防衛その他に向うべきではないか。しこうして中には非常に心配する方もありまするが、私は今の程度国民所得ならば、防衛関係費の千八百二十億円というものは最高限で、将来もふやすべきではないと考えております。
  5. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣は繰返して国民生活維持が先決の問題であると言われております。しかしこの予算を通して、大蔵大臣言葉実質通りにそれが組み立てられておらないということを、われわれは遺憾ながら認めなければならない。たとえばここに一例をあげますと、今度の総予算額は、国民所得に対しまして一七%だと、大蔵大臣説明をいたしております。しかしその国民所得は、前年度すなわち二十六年度に比較いたしましては、二十七年度は政府の見込みでは五兆三百億すなわち四%の増ということを見込まれております。しかもこの国民所得の四%の増というものは、安本計画されておりまするところの一切の生産計画が順調に進み、貿易も、鉱二業生産も、また電力も、動力も順調に計画通りに軌道に乗つた場合の五兆三百億という国民所得が積算されたものと、われわれは信じております。しかしながらその計画が順調に進むことを、一歩しりぞいてわれわれは首肯いたしましたといたしましても、一方予算の面をのぞきますと、七百四十余億円すなわち前年度に比較いたしますれば、予算の面においては、一四%の増をいたしておるのであります。国民所得はただいま申し上げましたように、計画が順調に行つてすらも、なおかつ四%の増にすぎないと見込んでおるにかかわらず、今度の予算を通して国民負担は一四%増加いたしておるということになりますれば、そこには当然国民生活の上に大きな圧力となるであろうということは、火を見るよりも明らかであると私は思いますが、その点に関するところの大蔵大臣所見はいかがであるか、明らかにしてもらいたい。
  6. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得増加昭和二十六年度を四兆六千五百億円と見、昭和二十七年度を五兆三百億円と見ておりますから、私は八%程度増加しておると思つております。しこうして歳入歳出予算が七百数十億円の増加になつて十パーセントふえておる、こういうお話でございますが、これはその通りであります。しこうして国民所得増加割合租税收入状況等は、これはよほど違うのでありまして、たとえば二十万円の所得の人がありましたときに、その人の所得が二十二万円になつた場合におきましては、一割の増加になつた場合には、所得税等におきましては三割程度増加になるのが普通であります。こういうことから考えまして、国民所得増加がどれだけだから歳入増加がこれだけでなければならぬというわけのものではないのであります。すぐそれをお比べになるのは理論の飛躍と考えます。従いまして一般会計歳入歳出がこういうようにふえるということは何ゆえか、ことに問題は歳入がこうふえるのは何ゆえか、こういうことから来なければならぬ問題だと思います。
  7. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣こそ理論の矛盾だと私は思う。一方において国民所得推定がかりに四%という数字が明確でないとすれば、大蔵大臣の言う八%といたしましても、事実上租税等收入においては、前年度の予算に比して一四%の増加であるということは、まぎれもない事実であります、しかして一方国民生活の問題を顧みますれば、物価は昨年度に比して相当に暴騰いたしておることも事実であります。その国民生活物価騰貴から受けるところの実態等を勘案いたした場合に、一方に国民所得がわずかなふえ方であり、一方に財政の規模が一四%ふえ、一方において、また今申し上げましたように、物価上昇による実質的な国民生活の低下というものがそこにあるといたしますれば、そのことが必然的に国民生活水準の上に大きな影響なしとは、私は断言できないと思うのでありますが、その点についてもう一ぺん大蔵大臣所見を伺わせてもらいたい。
  8. 池田勇人

    池田国務大臣 国民所得生産増加を主として、雇用その他の増加を見まして、そういう数字になつておるのであります。しこうして国民生活水準がどうなるかという問題でございまするが、私の見るところでは、物価は昨年の七、八月ころから横ばいでございます。賃金はある程度上昇を見ております。公務員給與も上りました。従いまして国民生活は、ただいまのところ昨年の七、八月ころから下つておりません。ことにエンゲル係数、すなわち生活費における食糧費割合は、十二月は五〇%までになりました。十一月の五十三、四パーセントが五〇%になつた終戰後初めて五〇%になつたのであります。こういう点から考えまして、私は今後も物価横ばいになるような施策をとつて行きますので、国民生活は下らない、こう考えておるのであります。
  9. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣は、ただいま物価横ばいであるにかかわらず、一般勤労者所得はふえておるではないか、こういう説明でありますけれども、私の調査をいたしました範囲によりますれば、たとえば物価昭和二十五年六月の朝鮮動乱勃発当時を一〇〇といたしました場合に、総合において一五八・五、消費財において一三三・九、生産財においては実に一七一・八という七割強の騰貴を今日は見せております。これに反しまして一般賃金はどういう事情にあるかと申し上げまするならば、民間においても二割強、一般公務員におきましてはわずかに二割の賃金上昇を見せている現状であります。この事柄が何を意味するかということは、私が申し上げるまでもなく、政府は口を開けば鉱工業の生産力が四割も動乱以降に上昇したではないか、あるいは賃金上昇いたしたではないか、貿易も拡大されたではないかと言いまするけれども、今申し上げますように、物価のごときにおいては、総合において五割八分、実に六割弱の値上りを今日は示しております。一方において賃金はただいま申し上げましたように、二割ないし二割強の上昇でありといたしますならば、政府の言うように、物価横ばいであるから、国民勤労生活者の台所にさのみの脅威を與えておらないかのごとき口吻をもつて説明されますことは、勤労国民にとつてきわめて迷惑千万な事柄と言わなければなりません。今私があげましたこの数字は、政府みずからが発表いたしておりまするところの統計の数字を私はあげておりますので、この数字に間違いがありといたしますれば別問題でございますが、間違いがないといたしますならば、このことによつていかに今日の勤労国民生活政府経済財政政策にかかわらず、多くの負担をもつて今日その生活を営んで行かなければならぬ状態であるということは、きわめて明白な事柄と言わなければならぬのでありますが、もう一ぺんその点に関する大蔵大臣所見をただしておきたいと思います。
  10. 池田勇人

    池田国務大臣 生活水準の問題は、今のように朝鮮事変勃発のあのときをおとりになつて比較なさることは、私は適当でないと思う。たとえば物価にいたしましても国際物価影響によるのでありますが、日本為替相場をきめました昭和二十四年四月二十五日を基準にして参りますと、アメリカ、イギリス、日本消費者物価指数というものは、大体同じところを行つておるのであります。御承知のごとく朝鮮事変勃発の当時は滞貨金融が叫ばれ、物価が非常に下つたときであるのであります。その下つたところを基準におとりになるのは適当でない。従いまして国民生活指数という問題につきましては、終戰直後からいろいろな方法でやつておりますが、大体昨年の十月、十一月ころは戰前に比べて七〇程度行つておるのであります。これは六十七、八から一旦六十五、六まで下つたのが七〇程度に上つて来ておる。長い目で見ますと、私は終戰後六年間を通じまして、今の状態がいい方の状態である、こう考えております。物価が五割上つたとか申されましても、消費者物価指数もお考えにならなければなりませんし、賃金上つたことと、片方で税金の下つたことをお考え願わなければならぬのであります。そうやつてみますと、国民生活水準は私は徐々に安定向上に向いつつある、こう言えると思います。
  11. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣強弁をもつて物価賃金数字だけでは批判の適当ならざることを強調しております。しかも一方において税制の改革により税金が軽減されておるではないか、こういうもつともらしい説明でございまするけれども物価賃金上昇を上まわつて、そしてもし政府税制をそのままに放置いたすとすれば、今日の勤労国民大衆の大半は、その生存の維持すらも困難なような破局に追い込まれるであろうということは、きわめて当然であります。そういうことをもつてして一方において税が軽減されたではないかということは、責任ある大蔵大臣としては、單なる強弁にすぎないと私は考えられます。物価賃金と同等に並行して上つて行つた場合、その一方において税金が軽減されたというならば、それだけあるいは生計費緩和になつたではないかということは言えるのであります。しかしながらただいま申し上げましたように、物価上昇に追いつかないのが、賃金上昇傾向であります。そこに持つて来て若干の税金対策があつたからとて、勤労国民大衆の実質的な生計緩和というものは、成り立たないのであります。そういうことでは、われわれの十分に納得のできない説明であり、それは大蔵大臣の單なる強弁であり、詭弁にすぎないのではないかと思うのであります。  そこで観点をかえてお伺いいたしますが、一体安本は昨年の国会において、日本経済の三箇年自立計画を立てられた場合に、国民生活水準は、三年目には戰前の九〇%に回復せしむるものであるという方針を明らかにいたしたのであります。しかるに朝鮮動乱後におけるところの各般経済事情影響を受けて、昨年ようやく八〇%程度に回復されました国民生活水準は、昨今においては、残念ながら七〇%台を防徨するという、注目すべき状況であることは、政府もこれを認めておるのではないかと思うのであります。そこで私の、ことにこの際お伺いしたいのは、講和條約にも、あるいは賠償の規定の中にも、とにかく日本経済維持前提といたしておることを、きわめて強く強調いたしておるのでありますが、その條約等において強調されておるところの経済水準維持、すなわちこれを裏から言えば、国民生活水準維持にも、相通ずる事柄であろうと、われわれは期待をいたしておるのでありますが、その言うところの経済水準維持、すなわち国民生活水準というものを、一体どこに政府は置こうといたし、どこをもつて日本経済維持国民生活水準維持最低限度といたそうといたしておるかということについての限度を、この機会に明らかにされたいと私は思うのであります。
  12. 周東英雄

    周東国務大臣 御質問でありますが、昨年立てましたのは、二十八年度において八九%、約九〇%程度まで持つて行きたいという目標であります。残念ながら朝鮮事変等勃発によつて生産の増強はありましたが、一時価格のある程度上昇のために、その比率が七〇%に下り、今日においては七三、四%になつておるということは、お示し通りであります。しかし私どもは、その後における日本国内における産業復興状況なり、また講和後における日本産業復興計画なりから考えまして、やはり目標としてはでき得る限り戰前の九十一年を一〇〇として考えるときに、国民生活を、できるならば九〇%まで持つて行きたい、かように考えて、各般施策を考えておる次第でございます。
  13. 川島金次

    川島委員 国民生活という問題は、言葉のあやでは断じてないと私は思うのであります。問題は自主的な国民生活水準という意味は、一体政府がいかなる熱意と努力をその維持に傾けて行こうかという事柄の問題なのであります。現に今政府が言明せられた通り八〇%を越えた国民生活水準が、今や各般事情によつて、七四、五%に落下しておるというこの事実はいなめないことである。この七四、五%に落下しておるさんたんたる水準水準として、今後の財政経済中心とするのか、それとも各般の国際的な負担を今後負うにしましても、国内的には防衛費等負担をいたして参りますにおきましても、どの程度最低限度国民生活水準維持を必至としてそれを守ろうかという、その限度に対する政府の確信ある言明を得たい、かように思いましての質問でありますので、その点をさらに明らかにされたいと思います。
  14. 周東英雄

    周東国務大臣 川島さんのお話でありますが、政府の昨年考えたのは、今年、二十七年度に八九%という考え方ではないのであります。先ほど申しますように、二十八年度を目ざしてやつておる、途中少し下りましたが、今日七四、五%に行つておる。今後に向つてもやはり一つ目標に向つて施策を進めて行きたいということは考えておりますが、あなたが今お示しのように、講和後における賠償あるいは外債支払いその他に関する負担も、新たに増すのでありますから、その速度におきましては、やや遅れるのではないかとは存じますが、一足飛びに一ぺんに九〇になることは、これはなかなか困難な事情であろう、しかしながら今日ある七五%の水準を徐々にでも上げて行く、少くとも毎年二、三%でも上げて行くという程度の、一つ上昇をせしむるための国内的な産業施策をして行くことが、現在の行き方と思うのであります。これはいかに考えましても、いろいろな負担を片一方で考えつつ、やつて行く場合において、過去におけるがごとくガリオア等援助によつて、いろいろと楽な行き方ができたときとは違うのであります。しかし少くとも私どもは現在より下げないようにして、しかも目標に向つて年々進めて行くように、すべての経済施策を講じて行きたい、かように考えております。
  15. 川島金次

    川島委員 私がこの国民生活水準維持の問題について、繰返してお尋ねをいたしております真意は、今後の国内における防衛費、さらにまた国際的には賠償支払い外債支払い等が当面にありますので、その事柄と勘案して、何とぞして国民生活水準がかりそめにもこれ以低下してはならぬ、むしろ積極的にこの水準向上せしむるということに、政策の重点が置かれなければならないという私ども考え方に立つてお尋ねをいたしておるのでありますが。今の安本長官答えは、われわれの十分に納得する答えにはなつておりません。ことに今問題になつております外債支払いや、賠償の問題の解決等にあたりましても、何はともあれまずわれわれは国民経済維持、すなわち国民生活維持ということが、絶対の前提要件でなければならない、われわれの国民生活を破壊し、あるいは脅威を與えてまでも、その国際的な義務を履行しなければならぬということは、今日の世界的な人道的な精神の高まつておりまする国際的な状況から勘案いたしまして、日本国民生活水準に対して、脅威を與えてまでも、国際的に見て、日本賠償外債支払い等の強要がされることがあつては、それはさらに重大な問題であろうと思いますので、その事柄を繰り返し繰り返しお尋ねをいたしておるのでありまして、まずこの当面いたしました諸問題のただ中にあつて国民生活水準はどこが最低限度なんだというところが明白でありませんと、国内における勤労国民大衆独立への希望期待が、根底からくずされるという重大な精神的な影響もありますので、この点をもう一ぺん、くどいようでございまするけれども、明確にできるならばしてほしいと思うのであります。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 まことにごもつともな御意見でございます。まつた同感でございます。私はそのことを財政演説で申しておるのであります。国際関係もあるが、国内生活水準をどういうふうに徐々に、確実に向上して行くか。これが第一段の問題であります。われわれは全体的の問題として向上をはかりますが、最低限をどこに置くかということになりますると、これはなかなかやつかいなことであります。しかし私とすれば今が最低限で、これよりも上げよう、こういうことであります。  そこでお話戰前の八〇%という言葉がございましたが、今までそういう平均の年はございません。六四、五%から六八%、昭和二十六年は七三%程度つたと思います。これは月々によつて違いまして、十二月なんか相当上るのでありまして、大体今の七〇%あるいは七二、三%程度基準にいたしまして、これから徐々に上げて行こう、こういう考えでおるのでございます。
  17. 川島金次

    川島委員 現状の七四、五%が基準だということは、七四、五%程度最低限だということにも裏からは言えるのでありまして、それを基準とされることは、国民にとつてまことに心細い限りだといわなければならぬのであります。少くともわれわれ国民の立場からいいますれば、なるほど当面の防衛の問題、国際的な問題もあることは、われわれは万々承知いたしております。しかしながら少くとも戰前国民生活水準に比較して、どうやら九〇%程度をわれわれは最低限度国民生活水準だと確信し、その確信の上に立つて内外の問題を処理するという建前であるということを、われわれは強く要望いたしたいのであります。現に大蔵大臣も御承知の通り、西ドイツの国民生活水準は、日本よりも相当上にあることは御承知の通りであります。同じ敗戰国家でありながら、日本国民生活水準がややもすれば戰前に比較して七〇%台に落下するような、さんたんたるありさまであるに反して、同じ敗戰国であるところの西ドイツの国民生活というものが、日本に比較して相当上位にあるというこの現実にかんがみましても、政府は極力確信をもつて日本経済維持、同時にあわせて日本勤労国民生活水準維持ということについて、十分なる確信と、その確信の上に立つた内外の財政経済の諸政策を処理するという重大な責任があるのではないかと私は思いますので、その事柄を繰返して聞いたのであります。そこでこの問題で堂々めぐりしておつてもしかたがありませんので、大臣の帰る前にもう二、三点簡單にお尋ねをいたしておきたいと思うのであります。  この問題は別な問題でありまするが、今度の予算防衛費、安全保障費その他の警察予備隊、海上保安庁の経費を除きました全体の費用というものが、大蔵省に計上されております。従つて大蔵大臣がこの経費の各こまかいことについての権能が、目下のところではあるような形になつておると私は感じたのであります。この大蔵省の所管に属しておる厖大費用というものは、最後まで大蔵大臣が権能を持つて処理されるという形になつて行くものであるか、あるいは実際的に具体的にそれが支出される場合には、それぞれの省に、あるいは庁に移管されて支出をされて行くのであるか、またそういう場合において、今の費用がどの程度に分割されて行くかということについて、見通しなどを持つておるならば、この際聞かしてほしいと思います。
  18. 池田勇人

    池田国務大臣 従来終戰処理費一千億円余りも大蔵省の所管にずつと掲げまして、そうして適当に使つてつたのであります。しこうして今お話の点は安全保障諸費と思いますが、これは予算総則に書いておりますように、海上保安庁にまわすあるいは警察予備隊にまわすということがきまりますれば、閣議の決定を経まして、まわし得ることになつておるのであります。しこうしてこの安全保障諸費の大部分は施設費あるいは物件費、物件費の中においても大部分は通信関係費を予想いたしておりますので、それがどこの費目として使われるかということが確定いたしますれば、そちらにまわしてもよろしいと考えますし、大蔵省の経費として出してもよろしいのであります。
  19. 川島金次

    川島委員 それでは次の問題についてお尋ねしておきますが、例の賠償支払いあるいは外債支払い等に充てまする予算が、二百億ばかり計上されております。この経費の問題についてお尋ねいたすのでありますが、賠償の問題はフイリピンを初め、容易に解決の見通しが困難でありますから、にわかに当面この費用で足りるの不足のという問題はないと思いますが、問題はまず独立して、ただちに当面の重要なる問題となりますることは、外債支払いではないかと思います。この外債支払いの中で、私の記憶では確かに利子のみでも支払いの期限が到来いたしておりますのは四百数十億に上つておるのではないかと記憶いたしております。政府はこの外債の当面の期限の来ておりますところの利子総額の四百数十億にも上つておりますこの問題を、独立後にただちに解決しなければならぬことになつておるのか、それとも外債の利子の支払いについて何らか便宜があるというような見通しに立つておるのかどうか、その点はいかがですか。
  20. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、今までの利子が一億数千万ドル、すなわち四百数十億円ございます。講和回復後ただちに支払わなければならぬとは思つておりませんが、われわれは今後の国際信義の問題、日本の信用の問題から考えましても、できるだけ早い機会に債権者側と話を進めて行きたいと考えております。
  21. 川島金次

    川島委員 それでは次の問題をお尋ねいたしますが、これは先般同僚の西村君からもお尋ねいたした問題でありますが、重要なる問題でありますので、ここに繰返して私からお尋ねしておきたいのであります。対日援助、すなわち見返り資金勘定の返済の問題でありまして、これがもし大蔵大臣説明によりますれば、債務として確定いたすようなときには、あらためて法律を出して返済をするという形になるだろうという言明があつたように、私は聞き及んでおるのでありますが、憲法の第八十五條でしたか、日本の国が債務を負う場合には必ず事前において国会の承認を要するということが、明確に規定されております。一体債務を負うという日本の立場というものは、この対日援助はもうすでに全部使い果された金であります。使い果されておる外国からの金銭に対して、それをあらためて、債務となつた場合には債務としての法律を出して国会の承認を経ればよいのだという見解は、われわれ非常に強弁ではないかと感じたのであります。すなわち債務というわれわれの常識からいえば、外国から金銭を受けまする事前においてそれが債務であるか、債務でないかという問題がまず起つて来るのでありまして、この対日援助資金に関する限りにおいては、そういう問題を問題とせずして、この援助資金は使われて来て、使われてしまつたあとで初めてこれは債務たということにして、国会の承認を経るという手続は、憲法八十五條の明記いたしまするところの、国が債務を負うという憲法の精神に、はなはだしく背反するのではないかと私は信ずるのでありますが、この点についての大蔵大臣の御見解を示されたいと思うのであります。
  22. 池田勇人

    池田国務大臣 対日援助資金を使つてしまつたというお言葉でございますが、この点につきましては、対日援助物資を換価いたしました二十億足らずの金額は、昭和二十四年の私が大蔵大臣になつてからの金はまだ残つております。使つてなくなつたというわけではありません。私が大蔵大臣になるまでの十一、二億円というのはどこへ行つたかわからぬのでありますが、その後の八億九千万円というのは残つております。  それから次に対日援助は私が債務と心得ておるというのは、経済上のことを言つておるのであります。従いましてこれがほんとうに法律上の債務になりますときには、憲法八十五條の規定によりまして、歳入歳出同様、国が債務を負担する場合には、国会の協賛を経る、こうなつておりますので、いよいよアメリカとの話がつきまして、これが法律上の債務ということになりました場合においては、その際に国会の承認を得たいと思います。
  23. 川島金次

    川島委員 そうするとこの対日援助資金に関する限りにおいては、現在のところでは、まだ債務と確定しておらないと了解してよろしいのですか。
  24. 池田勇人

    池田国務大臣 アメリカと日本との話合いでまだきまつておりませんが、経済的には阿波丸の付属文にありますように、債務と心得ておるという表現をいたしております。しかしまだ法律的にどれだけが国の債務であるかということは、話がきまつておりません。従いまして、これだけの債務だということになりますれば、国会の承認を得る考えでおるのであります。
  25. 川島金次

    川島委員 大蔵大臣は対日援助資金はまだ使つておらない分もあるのだ、こういう説明をされております。少くとも対日援助を受ける日本の立場から、それは使つておらないのだという説明には私はならないと思う。対日援助によりまして、たとえば食糧が入る、その食糧に対する国民支払いがある。その支払つた金についての円はなるほど日本にありましよう。しかしながら外国から日本に債務的な金銭が受入れられているということは、これはずつと以前から引続き行われたことであります。従つてわれわれの法律的な解釈あるいは常識的な解釈からいたしますれば、そういう援助金という名称のもとであろうとなかろうと、金銭が入つて来、しかもその金額が将来債務になろうという場合には、必ずや事前において国民の承認を経るということが、私は憲法八十五條の精神でなければならぬと感じておるのであります。従つてこの問題はいずれ後日債務になる可能性があり、あるいはなるから、そうなつた場合に初めて法律を出して国民の承認を経れば、それで憲法には何ら抵触しないのだというような解釈は成り立たないと私は信じておるのでありますが、大蔵大臣はどういう御解釈でありますか。
  26. 池田勇人

    池田国務大臣 先ほどお答えした通りでございまして、対日援助は債務と心得ておりまするが、まだ正式の手続をとつておりませんので、いよいよ法律上の債務になります場合におきましては、憲法の條章に従いまして、国会の承認を得る考えであります。
  27. 川島金次

    川島委員 この債務という問題は、常識的に考えても、金銭を受入れるときに発生する。従つて国が債務を負うときには、金銭を受入れる事において、国民の承認を得る、すなわち議会の承認を経る。これが憲法八十五條の示された精神であると私どもは解釈いたしております。従つてこの問題は、対日援助を返す返さないの問題は別として、手続上一つの重大な問題がそこに含まれているということを、われわれは感じておるのでありまして、この問題についてこれ以上大蔵大臣と論争をいたしますることは、いたずらに水かけ論になりますので、後日に讓りたいと思うのであります。  そこでさらに大蔵大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、ただいま大蔵大臣が申されましたる通り外債支払いも、国際の信義上、なるべく独立後には早く交渉をそれぞれいたして支払いたい、こういう言明でありますが、その精神は私は了といたします。そこでまた賠償の問題は、いまだに各般事情から停滞をいたしておるような事情でありますが、しかしこれもやがては遠からず、明瞭になつて来るのではないかと信じます。そういうことを考えてみまするときに、この二百億の予算では、前年度の繰越分、すなわち使用しておりません費用が百十億かあつたと思いますが、合せて三百億程度の金額で、はたしてこの賠償の当面せる問題と、外債処理の問題が解決されるという見通しのもとに立たれておるかどうか、これは重大なのでございますので、重ねて私からもお尋ねしておきたいと思うのでございます。
  28. 池田勇人

    池田国務大臣 お話通りに、賠償の問題、その他外債の関係、あるいは対日援助もこれからきまることでございます。そのきまるときによりまして、年度区分になつておる関係上、余るかもわかりませんが、足らぬかもわかりません。余つた場合は翌年度、足りない場合には、状況によりまして補正予算を組まなければならぬと思いまするが、私の見通しといたしましては、この程度で大体まかなえるのではないかと考えております。
  29. 川島金次

    川島委員 この問題は、大蔵大臣も連帯の責任だろうと思うのですが、安全保障費等の防衛費の問題については、いずれ予算説明等を通して、その根幹をなす行政協定の内容も明らかにするであろうということは、首相みずからも明言されて参りました。しかるにこの行政協定の内容は、この委員会がすでに中旬を過ぎておる今日に至りましても、なおかつ暗中模索、不明瞭、あいまいのままになつておるようなありさまであります。われわれは少くともこの防衛費中心とする二百余億の経費の審議にあたりましては、何はともあれ行政協定の内容をつまびらかにしない限りは、その審議の責任を果したとはいえないことに相なりまするので、その点をわれわれは重大な責任の立場に立つて感じておるのであります。大蔵大臣も、一方においては政府の閣僚でありまするが、一方においては衆議院議員であります。この衆議院議員の立場から大蔵大臣が見た場合に、最も重大な行政協定の内容が今日まで不明瞭であります。その不明瞭な行政協定を中心として計上されてありまするところのこの費用が、われわれの審議に付され、しかも時日は刻々と経過いたしております。従つてこのままで参りますると、行政協定の内容がつまびらかにならないうちに、この予算委員会が多数の力で押し切られるのではないかという懸念すらも、われわれはいたしておるのであります。このような状態でありますることは、少くとも民主国会において、この重大な予算の審議に当を失するという責任をわれわれは生ずるのでありまするけれども大蔵大臣は国務大臣といたしまして、一体行政協定の内容がいつごろになつたならば、われわれの納得できるような具体的な説明ができ得ることになるのか、その点についての見解がありましたならば、この際明らかにしておきたいと思うのであります。
  30. 池田勇人

    池田国務大臣 二千三十億円の平和関係防衛関係費のうちで、二百十億円は、先ほど申し上げましたような外債賠償で、これは防衛協定とは関係ございません。それから七十三億円の海上保安庁と五百四十億円の警察予備隊も行政協定と関係はございません。そうすると残る問題は、六百五十億の防衛支出金と、五百六十億円の安全保障諸費でございます。防衛支出金の六百五十億は、この線で折衝いたしまして大体きまりますから、これは問題ないと思います。内容につきましては、実質的には国内で使用する費用でございます。今までの終戰処理費と似たものでございます。これは私の今の見通しでは、行政協定がいつきまりましようとも、この金額は動かないという確信を持つております。  それから次の安全保障諸費というのは、財政演説でも申し上げておりましたように、大都市から駐留米軍の移転するに伴います施設その他の分でございますので、これは本行政協定の中にあまり関係のないものでございます。それは今行政協定と直接に関係がない分も相当あるのでございます。これは行政協定がきまりましても、御承知の通り日米合同委員会によりまして米軍の駐留の移転がきまりますので、私は行政協定自体の発表で、すぐ解決がつく問題ではないと思います。
  31. 川島金次

    川島委員 どうも私のお尋ねいたしております事柄に対する大蔵大臣の答弁は、的をはずした答弁でありまして、まことに遺憾であります。しかし大蔵大臣の現状といたしましては、これ以上われわれに答弁をする確信も材料も持ち合せておらないと思いますので、いずれ岡崎国務相の出席を求めた際に、この問題についてはわれわれからお尋ねを申し上げたいと思うのであります。  そこでさらにお伺いをいたしたいことは、これは飛躍的な別な問題になりますけれども、御了承願います。わが国の今後における国内費用はもちろんでありますが、対外的に重大な諸負担が当面をいたしております場合に、われわれのその負担に耐えることと、国民生活維持ということと、またわれわれ日本国民が持つておりますところの財産、富、こういつた問題とは非常に重大な関連があろうかと思いますので、この機会に安定本部から、まず日本戰前における国内の富の状況、そして今日の時価によりまするところの富、財産の状況は、どういうふうになつているかについての調査がありましたならば、官民別に、公用財産と民間財産とを別といたしました額を、ひとつこの際明らかにされたいと思います。
  32. 周東英雄

    周東国務大臣 お答えいたします。それは資料がありますれば、その資料についてお話をいたしたいと思います。ただいま官民別の国富の推定というものについて私は承知しておりませんから、後ほど調査の上、ありますれば資料によつて示しいたします。
  33. 川島金次

    川島委員 この問題はいろいろの関連ある重大な問題でありますので、私はお尋ねいたしたいと思いまして、先ほども私的ではありますが、あらかじめ委員部を通じて要求をいたしておつたのでありますが、長官が持ち合せてないというのであれば、あとですみやかにこれを出していただきたいと思います。  そこで、時間も大分迫つて参りましたので、大蔵大臣にもう一、二度お尋ねをして大蔵大臣への質問は、御病気のことでもありますので、本日は遠慮したいと思います。  先ほど申し上げましたように、なるほど日本の今日においては、終戰当時から比較いたしますならば、鉱工業の生産上昇し、貿易の飛躍的な拡大もあつたことは認めます。がしかし、一方においては非常な物価上昇があり、しかもそれに伴うところの賃金上昇というものは、物価に追いついておらぬということも明白な事実でありますがゆえに、一般勤労国民生活は、今日におきましても、なおかつ非常に困難な立場に置かれておるということは、大蔵大臣といえども認めざるを得ない事柄であろうと、私は信ずるのであります。ことに最近の物価事情生計の実態からいたしまして、さらに今後電気料金の値上げも、すでにちらほら伝えられておるような有様であります。こういう事柄中心といたしまして、またもや何らかの形で各方面に物価騰貴が形成されて来るのではないかという懸念を、財政上にも経済上にも私どもは持つておるのであります。従つて勤労国民生活に対する希望、明日に対する希望というものは、ほとんどまつたくないといつてもいいような状態であるように私は見て参つておるのでありますが、大蔵大臣は近く出されますところの補正予算の際において、まず公務員のベースを引上げるという考え方を持つておるかどうか。またことに国鉄あるいは専売公社等のごとき公共企業体の経理の内容等にかんがみまして、上げる余地があれば上げてもいいというところの方針を持つておるかどうか、それについての見解を聞かしていただきたいと思う。
  34. 池田勇人

    池田国務大臣 ただいまの国民生活状況が、決して満足すべき状態でないことは、川島君と同感でございます。従いましてあらゆる施策を講じて向上させて行かなければなりません。しかるところ、今の状態において国家公務員並びに政府機関の国鉄、専売公社の給料を引上げる考えがあるかというお話でございますが、ただいまのところそういう考えは持つておりません。ただ最近におきまして、地域給の改正は行われると考えておるのであります。これは全般的ではございませんが、適当なところに直すことによります公務員関係の給與の引上げはあると思います。
  35. 川島金次

    川島委員 これはちよつとこまかいことでございますが、先般大蔵大臣は、農民の超過供出に対する所得に対しては、特段の配慮をして、すなわち端的に言えば、その所得に対しては免税の処置をとるという英断がなされるように承つたのでありますが、それとあわせてこの際お伺いしておきたいのは、農民の超過供出と、一般勤労者の超過勤務の手当に対する所得、これは大同小異の事柄であると私は感じております。そこで農民に対する大蔵大臣の特段の処置がありといたしますならば、一般勤労者の超過勤務の手当の所得に対しても、特段の配慮があつてしかるべきではないかと思うのでありますが、その点についての大臣の見解を表明してもらいたい。
  36. 池田勇人

    池田国務大臣 農民の皆さんの匿名供出につきましては、先般来お答え申し上げましたように、昭和二十七年の所得につきまして、適当な措置をとりたいと考えておりますが、そういうことをするからといつて、ただちに一般勤労者の超過勤務手当を免税するという結論にはならぬと思います。従つて結論から申しますが、超過勤務手当を免税する気持はただいまのところありません。
  37. 川島金次

    川島委員 この際時間がありませんから、大蔵大臣に対するきようの質問の最後として、岡野国務相も見えておりますから、両相にあわせてお尋ねをいたしておきたいのですが、それは地方財政の問題であります。政府は今度の予算措置において、地方財政の実情にこたえるためと称して、若干額財政交付金の増額を計上しておることは事実であります。しかしながら最近新聞等の伝えるところによりますれば、地方の財政は、ことに人件費の増額あるいは物価上昇等に伴い、一面においては財源たる税制の諸欠陷等からいたしまして、財政の窮迫を告げております地方が、次第に多きを加えようといたしておることは、政府もお認めのことと思うのであります。ことに最近新聞紙上で見るところによりますれば、全国の都府県において赤字財政に悩み、年度を突破することきわめて困難だと目されております都府県が、相当数に上り、いわんや貧弱な市町村におけるところの財政の危機は、きわめて憂うべき現象であるということを伝えておるのであります。従つて地方財政委員会等におきましても、この問題を重大な問題として取上げ、これが対策について政府等にも進言をいたしているやに承つておるのでありますが、この地方財政の危機の問題につきまして、大蔵大臣は当面の対策として何か考えがあるか、また抜本的な地方財政に対するところの恒久的な何らかの対策を必要とするのではないかと思うのでありまするが、そういう事柄について大蔵大臣は、何か構想を持たれておるかどうかということを承りたいと同時に、岡野国務相にはそれに関する大蔵大臣の答弁についての見解をあわせて表明してもらいたい、こう思うです。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 地方財政の問題は、さきの国会におきまして衆参両院から財政確立の決議があつて、それによりまして私は昭和二十六年度をうまく切り抜けなければならぬというので、鋭意調査をいたしております。最近に至りまして府県と一部大都市に非常な窮迫の状況が見えますので、今年度におきまして相当額の融資をいたしたいと今話を進めております。最近のうちまとまると思つております。  それから第二段の地方税制の根本的改正いかんというお話でございまするが、私は今のままでは適当じやない、まず行政機構の整理をおやり願い、また税制につきましても、平衡交付金と見合いながら、相当検討すべき余地があるのではないかと考えておりまするが、まだ結論を出しておりませんので、その緯度で御了承願いたいと思います。
  39. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答えを申し上げます。前段の点につきましては大蔵大臣が御答弁申し上げた通りでございます。  後段の点もやはり大蔵大臣の答弁と同じでございまして、このままでは地方財政は円滑に行かないのじやないかという考えを持ちまして、地方税制全体につき、あわせて平衡交付金制度も相当の改正をしなければならぬと考えております。すでに地方財政委員会では相当な研究をしております。しかしながら御承知の通りに地方自治制度というものが確立しますのには、ばらばらに法律が出まして、まだ事務の再配分あたりも十分できておりませんので、今回御承認を得ましたならば、地方制度調査会というものをつくりまして、そしてこれによく検討させまして、総合的の施策を講じたい、こう考えております。
  40. 川島金次

    川島委員 最後に一つ岡野国務相に承つておきますが、国務相は地方税制の改革を構想されておつて、伝えられるところによりますれば、まず附加価値税の延期のみならず、できればこれを廃止をする、なお固定資産税あるいは入場税、遊興飲食税の税率の引下げ、さらに一方には新しい財源としてタバコ、酒の消費税、こういつた一連の構想を持たれておつたということが、しばしば新聞紙上等にも発表され、またさきの委員会においても、この席上で私見として発表された事柄もありますが、それがほとんど有名無実に終つてしまつたのであります。その事柄については、どういういきさつでそういうことになつたか、また以上の問題等について、国務相は今後何らか積極的にこれが具体的な実現に向つて努力をするという構想を持たれておるかどうか、その点についてあわせて伺つておきたいと思います。
  41. 岡野清豪

    ○岡野国務大臣 お答え申し上げます。ただいまお説のような方針で、物事を進めておつたのでありますが、現下の客観情勢ではどうしても私の力が及ばず、改正法案が今国会に提出することができない状態になつております。しかしながら私はこの前も申しました通り、また先刻も申しました通り、十分そういう構想を持ちまして今後に処し、客観情勢の変化に応じてこれを実現したい、また努力したい、こういう考えを持つておりますから御了承を願いたい。
  42. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 池田大蔵大臣は本日おかぜの気味のようでありますので、午後休養をいたしたいとの申出があります。そこでこの機会に稻村委員及び今井委員から大蔵大臣に対して関連質疑の申出がありますので、それぞれ一点を限つてお許しいたしたいと存じます。稻村順三君。
  43. 稻村順三

    ○稻村委員 大蔵大臣お尋ねしたいことは、最近の新聞紙の水谷長三郎軍が講和條約発効後において日本に駐留する場合に、軍票を発行して国内に使用せしめるというようなことが出ておりました。軍票を発行されますと、それの通用する国の経済によほど大きな影響を與えることは、太平洋戰争の過去の経験におきまして、中国及び東南アジア諸国に起つた例においても、明らかに知ることができるのでありますが、こういうような事実が予想されるのであるかどうか、もし予想されるものとすれば、この軍票の発行の仕方いかんというものは、非常に大きな影響がございます。そこでどういう形でこの軍票が発行されるものか、またどの程度の額がいつごろから発行されるのですか、それからもしも駐留軍が駐留すると同時に軍票が発行されるというようなことになるとすれば、これは今から予想されておるのでございますから、おそらく二十七年度の予算の中に、この点が織込み済みになつていなければならないと思うのでありますし、また日銀券の発行高についても、これと関連して十分な留意を要すると思うのでございますが、この一点だけを大蔵大臣にお伺いしたいと思います。
  44. 池田勇人

    池田国務大臣 終戰後最近まで、すなわち十二月の暮れ、一月まででございますが、例のコンヴアーテイブル円——外国旅行者その他が所有しておりまするコンヴアーテイブル円が使用されておりましたが、これは一月の中ごろからやめました。日本の二重通貨というものは絶対避けなければならならぬ問題であるのであります。従つて行政協定の中に軍票の問題がありまするが、国内一般流通を認めるような軍票は発行させない考えでございます。
  45. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 今井君。
  46. 今井耕

    ○今井委員 これは小さい問題でありますが、所得の確定申告をしなければならぬ時期が切迫しております。それで一点だけお伺いしたいと思います。それは農業所得の課税標準のことでありますが、各国税局の間におきまして、課税所得基準に非常に大きな差ができておるということです。これは今地方で問題になつておるので、私も調べて来たのであります。一例を申し上げますと、大阪の国税局の管内のある府県で調べたのでありますが、たとえば鶏一羽の課税標準は、大阪の国税局の管内では六百円、他の隣の国税局の管内におきましては四百五十円、従つて鶏一羽に百五十円の課税標準の差があります。次に豚の雌について申しますと、大阪の国税局の管内におきましては八十円、隣の国税局におきましては五千五百円、ここに二千五百円の差があります。うさぎ一頭について調べますと、大阪の国税局の管内のある府県におきましては六十円、隣の国税局の管内におきましては三十円で、半額であります。それから生茶でありますが、茶の反当の課税所得でありますが、大阪の国税局管内では二万円から二万五千円であります。隣の国税局の管内におきましては一万七千円から二万円となつております。普通の畑の一反の課税所得が大阪の国税局の管内におきましては一万一千円、隣の国税局の管内におきましては九千円、ここに二千円の差があります。これはやはり全国的に均衡がとれておらなければならぬと思うのであります。私はこれは国税庁の方で国税局あてに税の割当をして適当におやらしになりますから、こういうような非常に大きな差が出ておるのではないかと思います。これが今地方で問題になつております。こういうような不公正な課税があつてはならぬと私は思うのであります。一体これに対してどういうような御指導をなさつておられるのであるか。  それからこの状況について、各国税局管内におけるところの課税標準を大至急調査されまして、そうして国会に提案をしてもらいたい。そうしてその結果もし不公正なのがあれば、もう確定申告をする時期が迫つておるのです。従つて急にこれを是正する、こういうことにしてもらいたい、こう考えるのであります。この点につきまして大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  47. 池田勇人

    池田国務大臣 鶏一羽の所得がどれだけあるかということは、これは鶏をたとえば百羽飼つている人、五百羽飼つている人、また飼料をいつ幾らで買つたか、また飼料の使い方等によつて各人各様であるべきはずでございます。従いまして所得というものは割当をしてはいけない、と同時にできれば標準率なんかもしたくないのがほんとうなんであります。今お話の一反の畑で一万二千円のところがあり、九千円のところもある。これはどういうところからお出しになつたか。今の特殊な畑のいちごをつくつたり、あるいはタバコをつくつたりするものは一反につきまして相当の收益がある、数万円もあるものがあります。しかし麦やいもというものだけならばそうはない。一反の畑から平均こういうような標準率をつくつているということは、各人ごとによつて違う。どういう作付をやつておるか、作柄をやつておるかによつてつておるのであります。一率に一反何ぼにせよという指令を出すと非常な誤りを起すのであります。従いましていろいろな地方の実情を見まして、常に連絡をし、国税庁におきましては多分二月に一回くらいは部長を集めて協議いたしておりましよう。また各国税局におきましては、署長あるいは直税課長をたびたび集めまして、権衡その他について留意をしておるはずでございます。こまかく申しますと、税務署の境ごとに権衡がとれておるかどうかということまでやつておると思うのであります。その点各種各様の状態でありますので、農家ばかりではございません。同じ洋品雑貨にいたしましてもいろいろこの点があるので、私はなるべく実際に調査して所得を決定する。また農家の方は、人はどうであろうとも極端な言い方かもしれませんが、自分が誠実にどれだけの所得があつたいうことを申告してくだされば、税務署はそれによることは当然であると思います。従いまして鶏一羽を幾らにきめようとか、一反の畑を何ぼにきめようということは、最も拙劣なやり方であると思います。
  48. 今井耕

    ○今井委員 私はそういう事情は農村で三十年ほど苦労しておるのでよくわかつているのであります。しかしやはりこういう標準によつて押しつけられているのであります。同時に畑の事情もそういうような特殊なものを栽培したものと、ただ普通の畑とはちやんと区別をしているのであります。特に豚というようなものについてはそんなものはありません。隣の府県と二千五百円も違う。同一国税庁管内において二千五百円違う。豚にはそんな差はありません。従いまして私はこの間にかなり欠陷があるという確信を持つて申し上げているのであつて、その間のこまかい事情はよく私は承知をしておるのです。従つてこの問題をはつきりと一ぺんお調べを願いたい。そうしてわれわれが納得ができるようにしてもらいたい。そうでなければ公正なる課税とは申されぬと思うのであります。それに対してそういうようにしていただけるかどうか、それをひとつ伺いたい。
  49. 池田勇人

    池田国務大臣 豚の問題でございまするが、豚にいたしましてもことしは豚が子供何匹産んだかによつて、食うものは同じですが所得は違つているのであります。従いまして、もちろんお話がございまするからわれわれは十分調査いたしまして不均衡のないように指令をいたします。入念に調査をして不均衡のないようにするということは税務行政の根本であります。さつそくこういうお話があつたからということを通知いたします。
  50. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 午前の会議はこの程度にとめまして、午後は一時半より委員会を再開して、質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————     午後一時五十八分開議
  51. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  これより質疑を継続いたします。川島金次君。
  52. 川島金次

    川島委員 岡崎国務相の都合もあるようでありますからお尋ねを申し上げることにいたします。  吉田総理大臣は、御承知の通り日米行政協定に関する問題は、予算審議の過程において逐次明確にされるであろうということを、われわれに約束をいたしております。本会議等でもそれを言明いたしております。しかるに予算案が本国会に上程されてすでに一箇月になろうといたしておりますのに、行政協定の具体的な内容については、遺憾ながら国民をして納得せしめるに足る具体的内容が、今もつて明らかにされておらない。こういう事情であるのであります。そこで新聞等の伝えるところによりますれば、ラスク・岡崎会談は大分円満に順調に進んでおるかのごとくに伝えられておる。しかも、おそらくこの協定は今週ないし来週に入るまでには、最後のとりきめが行われるであろうということさえも伝えられておるのであります。この機会にその後におけるラスク・岡崎会談の経過及び今日までの話合いの中できまつたもの、あるいは大体話合いができ上つたもの等がありますれば、この機会に明確にされたいことをまず希望したいのであります。
  53. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 話合いが円満に進んでおることは事実であります。元来この協定なるものは、両国政府の好意と善意と申しますか、そういうものに基いてつくられなければ、実際に運用ができないような性質のものでありまするから、いたずらに双方で権利を主張したり、義務をのがれたりするような気持でやつておりませんので、大体においては円満に進んでおります。  そこで、今までどういう話合いが行われたかと申すことは、題目について大体まとまつた意見がきまりましたときは、まだ協定文としてはでき上らなくても、これを起草委員会の方へまわしております。その項目はたくさんあります。ごく最近の方からいいますと、たとえば協定の改訂の問題とか、あるいは協定の終末はどうなるか、その他アメリカ軍及び軍属等が日本の法律を守るという原則を認めたこととか、あるいは日本国内におるアメリカ人で、在郷軍人会等を結ぶことを認めるとか、その他まだ最終的な話合いには至つておりませんが、二、三の点を除けば大体において意見が一致しておるのは、裁判管轄権の問題とか、また税金をどういう程度に課するとかいう点も、原則的には話合いがついておりますが、これはさらに両国政府に請訓することになつております。それから気象観測をどういう程度にするか、いろいろの点で原則的な話合いのできたのはありまして、これはその都度できるだけ発表もいたし、またそれに対する背景として、新聞等にも説明をいたしておるので、それを新聞が出しております。ただいろいろな点で、なかなか国際慣例もあることはありますが、一々日本の場合に適用することがはつきりしておらない部分もありますので、これらについて、たとえば法律の専門家、税の専門家、その他各方面の専門家が集まつて、専門委員会で検討しておりますので、また最終的な決定には来ておらないというのが実情であります。
  54. 川島金次

    川島委員 その程度のことは、本委員会で今日までも国務相からその都度言明されて来たのでありますが、国民の最も知りたい、関心を持つた事柄は、この行政協定によつて、一体米駐留軍の兵力はどのくらいになるか、あるいは兵力の規模はどの程度のものであるか、あるいはまた今日の占領軍がどういう形において再配置されるものであるか、あるいは基地はどういう方面と、どういう形において設定されるのか、こういつた問題について、きわめて重大な関心を国民は抱いておるのであります。行政協定の話合いの中で、そういう問題はいまだ取上げられておらないのか、また日本側から、そういう問題について積極的な希望なり意見なりを述べる機会があつたのかないのか、そういつたことについて、さしつかえなくばそのいきさつを承つておきたいと思います。
  55. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 米軍の兵力につきましては、この間も申した通り、安全保障條約の中でもイン・アンド・アバウト・ジヤパンと書いてありまして、日本国内の兵力だけが日本防衛する兵力ではないのであつて日本の周辺にある兵力もこれに加わるわけであります。他方われわれの方からいいますと、何ら適当な機関を持つておりませんから、外側からの脅威がどの程度であるかということは常識的にはわかつてつても、正確なものはわからないわけであります。防備力というものは相対的のものであつて、侵略するかもしれないと思われる力が弱ければこちらも大したものはいらない、強ければ大いにいる。これらの判断については、遺憾ながら今のところでは米軍の方で判断するよりしかたがない。それから、それがかりにどの程度のものがいるときまつたところで、国内にどのくらい置くか、外へどのくらい置くか、これも米軍の軍事専門家が判断しなければ決定しがたい問題であろうと思いますので、こういう点は、われわれの方では日本防衛といいますか、安全保障に足るだけの兵力を日本の内地及び周辺を合せて置いてもらうことについては、先ほど申しましたように、われわれは米軍の好意に信頼して、それにまかせておるわけであります。他方施設等につきましては、これは平和條約の第六條のC項というのをごらんになるとわかりますが、平和條約が効力を発生すると、占領軍が使つておる施設等は日本に返す、これは遅くとも九十日以内に返すことになつておりますから、多少の時日の変化はあるにしても、大体講和條約が成立しますると、今までの徴用といいますか、リクイジシヨンによつて使つてつた国内の施設及び区域は、論理的には日本に返されるわけです。そうして今度は新たに日米両国政府の間で平等の立場でもつて、どれがいる、これがいるということを相談して、それじやこれだけ提供しようというので、協議によつて提供さるべきものがきまるわけであります。しかしながらこれは形式的にいいますと、講和條約の効力が発生したときに、いよいよ日本独立国としてそういう施設をどの程度提供するかということをきめるわけでありますが、これは国民の関心も非常に多いので、われわれとしては下相談でもいいから、なるべく早くやつて、話のきまつたものは條約がいよいよ発効したというときになつたら、すぐに返すものは返す、引続き使うものは使う、あるいは新たに必要とするものは、新たに必要なものとして見るというようにしたいという希望を持つておりまして、そういう趣旨で相談をやつております。何分にも非常に多くの施設、区域が国内にありますので、かなり時間がかかると思いますが、できるだけ早くそういう方面の下準備も整えたいと考えております。
  56. 川島金次

    川島委員 そうすると、われわれの最も重大な関心を持つております駐留兵力及びその配置の問題については、アメリカ側に一任するということで、政府の方からこの程度という積極的な希望、意見は表明されておらないと理解してよろしいですか。
  57. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それはその通りであります。但し、実際上政府としてもある程度の知識は持つておりますが、かりにどのくらいの兵力を国内に置くかということを政府が的確に知つてつたといたしましても、これは一方においてはアメリカ軍の機密にもなるわけでありますから、公開のところで申し上げることはできなかろうと考えておりますが、われわれの方でも率直に意見の交換をいたしておりまするから、希望というようなむずかしいことでなくて、話合いはいろいろの方面からされるわけであります。ただそういう今言つたようなことがありまするし、またかりに兵力がどうしてもこれだけいるんだ、こうなつても、アメリカの国内の兵力の関係その他において、それだけ出すことはどうもうまく行かないからというような場合もあり得るわけであります。そういうときは、ほかの方の力を加えて、全体としての戰力を必要な程度に保持するという場合もあると思います。正確なことは今のところはまだ話にも出ておりませんが、そういうような事情でございます。
  58. 川島金次

    川島委員 そうすると、米軍の駐留兵力あるいは配置等については、機密にわたるということは理解ができるのですが、行政協定の中に協定の事項として明確にはされないのか、あるいは明確にするけれども、それは一種の秘密的な協定になる場合もあり得るのか、その点はいかがでしようか。
  59. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 行政協定は、協定自体のほかに了解事項とか、あるいは交換公文とかいうようなものができるかもしれません。しかしながらいかなるものでも、秘密にするものは一つもつくらないつもりであります。かりにそういう付属文書がついても、これは全部公開するつもりでございます。従つて秘密の話合というものは、全然考えられないのであります。  それからもう一つ、先ほど言い落しましたが、国内の兵力なるものが非常に重要ではありまするけれども、それだけでどうということじやない。たとえば沖縄における戰力が非常に大きい場合においては、国内は比較的少くていいというような場合もありますので、国内及び周辺の兵力を合計したものをアメリカは考えておる。われわれもそれでいい、こう思つておりますので、その点は誤解のないようにひとつ御了解願いたい。
  60. 川島金次

    川島委員 そうすると、行政協定が成立いたしました場合には、これがかりに批准前でありましても、仮の決定に対しまして、それらの兵力並びに配置、数、基地等の重要な問題等について、国会に、政府は内定の範囲においても報告をするという積極的な意思があるかどうか、その点は……。
  61. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 行政協定及び付属文書——これはあるかないかまだわかりませんが、そういうものについては、国会に報告する意思を持つております。但し私の想像するところでは、兵力等が行政協定の中に記載されるということはないであろうと考えております。これは時々刻々変化するものでありまして、そのアメリカの擁する兵力の必要とする施設、区域等は、これはすぐにはきまりますまいが、一定の期間を待てば、日本中にどれだけのものを持つかということはきまると思います。それは国民も皆承知するようなかつこうでわかるようになるだろうと考えております。それから推測して、ここがこれだけ大きな基地だから、ここは何かあるだろうという推測はできるかもしれませんが、しかしそこに一体常時軍隊がいるのか、必要な場合にいるために施設を持つのか、それはわかりませんから、必ずしも施設だけでどれだけの兵力ということは、想像はむろんできないと思います。しかしながら施設区域と今言つておりますが、そういうものについては別に隠すことはないと考えております。
  62. 川島金次

    川島委員 世上に伝えられておりますところと、私どもがこの委員会で岡崎国務相や総理大臣から漏らされたいろいろの説明総合いたして参りますと、何か行政定協の内容については、ことにただいま申し上げました兵力、あるいは規模、あるいは配置というような国民の最も重大な関心を持つております事柄については、今国務相が言つたように、單なる了解事項に付してしまう。その了解事項に付する場合に、それは現在のラスク・岡崎会談として行われている予備交渉において了解事項として取上げられて行くのか。それともまた一説にはあげてこれを日米合同委員会の方に委讓して行くのではないか。従つて行政協定が発表されたときは、最も国民の重大な関心を持つておる問題については出て来ない。その重大な関心を持つておる部分については、合同委員会の方に委讓されてしまつて国民の知らない間に重大な問題がその方できめられてしまう、こういう懸念を国民の多くは持つておりますが、その点はどういうことになりますか。さしつかえなくば率直にひとつ明らかにしておいていただきたい。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府考え方はしばしば申しておりますが、いわゆるデターリング・パワーとしてのアメリカ軍の駐留を認めるというので、アメリカが日本の安全保障をするというためには、当然相当の兵力は置くにいたしましても、極端にいえば、ごく少数の兵力をここに置いても、日本を侵略しようという国は、ここにおるアメリカ軍に対して挑戰をするものである。従つてかりにここにおるものが少い数であつても、その背後にアメリカの厖大なる国力を反映したアメリカの戰力を持つておる、それに対しての挑戰であるという意味で、日本を侵略することは容易にできまい。そういうことで抑制する力といいますか、そういうことが、ダレス大使も言つておるように、大きなねらいになつておる。  さらに第二には、昨日申しましたように、国内ばかりでなくて、日本の周辺にある兵力も合せて一つの戰力を築き上げるのでありますから、われわれの方ではアメリカの善意に信頼しまして、これだけあれば日本防衛ができるというその考えをそのまま受入れまして、それに要する施設はどれだけであるか、この施設の方は提供する、あるいは区域の方は提供する。そうしてアメリカの善意によつて、まず第一にデターリソグ・パワーとしての役割を果してもらう。万一それでも何か不詳事が起るような場合には、むろんアメリカは日本のために防衛してくれるはずでありますが、そういう意味で考えておりますから、兵力というようなものについては、行政協定もしくはそれの付属文書もしくは了解事項といいますか、そういうもので規定されることはないであろう、こう考えておるのであります。
  64. 川島金次

    川島委員 そうすると、以上の問題について国民が内容的に具体的に知るという機会はないということになるのでありますか、その点はどうでありましようか。
  65. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは先ほど申しましたように、かりに国民がこの内部に——この近所にはどのくらいの兵隊がおるかということは自然にわかりましようが、これがかりに大きくても、周辺におる力が何もなければ、これまた戰力としては小さいものであります。この中が比較的小さくても、周辺の力が非常に大きければ、戰力としてはかなり大きなものになる。そこで国民としても、この中におる兵力等をしいて知らなくても、全体にあるんだという考えから、アメリカの善意に信頼して、日本を守るに足る力をもつて日本国内及び周辺せを合て維持するのである、こう考えてもらいたいと思うのであります。
  66. 川島金次

    川島委員 要領を得たような得ないようなことで残念でございますが、その問題はその程度にしておきます。  そこでさらにお尋ねしておきたいのですが、これはしばしばここでも問題になつておるのですが、政府はむしろ積極的にこの行政協定の交渉の中において、問題の原爆について駐留軍がアメリカから日本へ運んで来たり、あるいは何らかの形でこれを貯蔵したり、それからその貯蔵したものを、日本を基地として攻撃にそれを使用するというような事柄というものは、今の世界情勢の段階においては、非常に日本にとつても危險なことではないかと、われわれは懸念をいたすのであります。従つて政府はそういう問題について、積極的にアメリカ側に話を進めたことがあるかどうか。またそういう事柄について、積極的にアメリカに期待する方法をつくるという意思があるかどうか、この点についてはどういうことになつておりましようか。
  67. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 原爆等の問題は、全然話合いに出ておりませんが、今お話の点は、原爆の問題という刺激する問題にはなりますけれども、元来もうアメリカの軍隊が日本国内及び周辺にいて、日本を守るということになりますれば、原爆がかりになかろうとあろうと、その程度の問題はあるにしても、根本的にはあなたの言われるように、よその国との戰争の渦中に入りやすいという一つの議論もあり得ることと思います。しかしながら、われわれの方では、ここに強大なる兵力がおればおるほど、外国の侵略はなかろう、従つて平和の維持ができるであろう、こう考えておるわけであります。原則的にはそういう気持を持つておりますが、原爆等の問題は全然話合いに出ておりません。
  68. 川島金次

    川島委員 そういうことのないことをわれわれは心から期待をいたす者の一人なんですが、そこで今度は観点をかえてお尋ねをいたします。理論的にはあり得るのではないかと考えられる直接侵略の場合に、それに対する非常事態といいますか、以前であれば旧憲法による戒嚴令の施行などという措置がとられましたが、新しい憲法では、その戒嚴令の措置のかわりに、内閣は非常事態の宣言ができるというふうに、私は記憶いたしております。そういう直接侵略、あるいは間接侵略においても同一でありますが、非常事態の宣言をいたしまするときに、駐留軍の協力を求める。その協力を求めます場合において、駐留軍と政府とが協議の上で、非常事態の宣言をするのか、内閣自体の自主的な立場において非常事態の宣言をするのか、内閣自体の自主的な立場において非常事態の宣言を行い、そのあとで駐留軍の協力を求めるという形に出るのか。そしてまた、駐留軍の協力を求める場合においては、日本国内におけるところの防衛力というものは、その駐留軍におけるところの指揮官である司令部のもとに隷属をして活動するということになるのか。その辺の関係はどういうふうになりまするか。構想なりとありましたならば、明らかにしてもらいたいと思うのであります。
  69. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは第一には、われわれとしてはそういう事態が起らないために置いておるのですから、原則的にはそういう事態がないことを予想して、いろいろの協定をつくつておるわけであります。しかしながら、万一の場合ということもありますから、そういう場合も当然考えなければならないわけでございます。しかしながら、行政協定を国会に出して承認を求むべしというような議論がままあります。これはつまり行政協定というものが、安全保障條約の第三條に基いて、かなり機械的といいますか、事務的な規定がたくさんあるのが当然であるのを、相当政治的の含みのある協定を結ぶのではないかというような点からの議論だろうと思います。ところが実際われわれのやつておりますのは、これをできるだけ事務的な、機械的な、従つて国会で認められた範囲で考えてやつておりますから、あまり政治的な問題は出て来ないと思つております。そこで今の非常事態といいますか、そういうとき政府が先に宣言してあとで相談するか、あるいは相談して宣言するか、こういうようなことは政府がきめるべきことであつて、行政協定というようなものは、安全保障條約第三條に基くものであつて、アメリカのデイスポジシヨンをきめるということになつておりますから、そういう点は入らない。また将来そういう点は、むろん日本政府としても考えて、適当に措置しなければなりますまいけれども、今ただちにそういう問題をきめるという事態には至つていないという実情であります。
  70. 川島金次

    川島委員 国務相は時間の都合で余裕がないようでありますから、他の機会にまたお尋ねをいたしたいことを留保して、最後にお尋ねしておきたいのですが、政府は従来しばしば国会において、講和條約の効力の発生は、おそらく三、四月の間に見られるであろうということを説明されて参つておる。しかるところ、最近の情勢によりますれば、フイリピン等を中心といたしまして、講和條約批准の前に賠償等の問題が先行いたしまして、その賠償問題がなかなかわれわれの期待するような程度に運んでおらないということも事実であります。そういつた事柄等を勘案いたしますると、政府が、またわれわれ国民期待しておりましたように、この三、四月に講和條約の効力の発生を見るということも、なかなか困難な状態になるのではないかという懸念を、われわれは持たされておるのでありますが、その点についての見通しについて、政府はどういうふうに考えられておるか。それからまた、たとえば一例でありますが、フイリピンのただいま進行中であります賠償問題が前提としてきまりませんと、フイリピン等における講和條約の批准もきまらないという形になつて参りますものやら、その点政府はどういうふうに観測見通し等をいたされておりますか。
  71. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 今の情勢を見ますると、アメリカの批准をほかの国が見守つておるようでありまして、アメリカの批准ができますれば、ほかの国もただちに批准の手続をとるのではないかと想像されております。そこであの條約は、御承知のように、本来は極東委員会に代表を出しておる十四箇国の過半数が批准したときに、効力を発生するということになつておりますが、ソビエトと中国とインドの代表が出ておりませんから、十一箇国になります。従つてそのうちの六箇国が批准すれば効力を発生する、こういうことになるわけでありまして、われわれの見るところでは、やはり三月か四月には六箇国の批准は完成するであろう、あるいはもつと多く完成するであろう、こう考えております。賠償の問題もありますが、元来賠償講和條約に調印したときに、つまり講和條約に調印して日本との正常関係が発生したときに賠償という問題は起るのでありますから、なるほど賠償の見通しがつかなければ批准しないということもあり得るかもしれませんけれども、批准しなければ、ますます賠償ということは話にならないわけであります。われわれの方はそれを、講和條約の発効の前に使節を出して、誠意をもつて先方の意見を聴取して、お互いの理解を深めて、深めた上で講和條約ができたら、すぐに話を始めようと考えておるのでありますから、そう無理に賠償の見通しがつかないからといつて批准をしないかどうか、これはわかりませんけれども国内の情勢もありますから、あるいはそういうことになるかもしれない。それにしても十一箇国のうち六箇国の批准は、やはりこちらが考えているように、三月か四月にはできるであろう、そういう期待を持つております。
  72. 川島金次

    川島委員 時間がありませんから最後に一点だけ聞いて、岡崎国務相への質問を一応終りたいと思いますが、最近行われております、また行われようといたしておりまする中華民国との條約の問題、それから日韓会談等の問題に付随いたしまして、私ども国民的感情、並びに実際の問題からいたしまして、現在の中華民国の支配いたしておりまする地域、それから韓国に対する問題に関しては、現状においては日本賠償を支払う程度のものではない、その根拠はきわめて薄いものではないかという感じを、われわれは国民的立場として持つております。しかるにかかわず、日華交渉においても、伝えられるところによりますれば、今後日本に対する賠償問題がこれまた重要な問題として取上げられるのではないかということが伝えられておる。また日韓会談におきましても、これまた韓国から日本に対して相当額の賠償の要求があるのではないかという事柄が伝えられておる。こういう問題については、われわれはわれわれとしての国民的な立場において、別の意見があるのでございまするけれども、実際問題として政府といたしましては、この二国に対する條約の締結あるいは交渉の成立の場合に、賠償に応ずるという心構えで今後の折衝をなさるのか、その賠償の問題についてはできるだけ他日にこれを讓るという形において、一応当面の條約の締結に入り、あるいは友好條約の締結に入るという形で臨んで行こうとするのか、その点はどういうふうに政府は考えられておりますか、この機会にただしておきたいと思います。
  73. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは両方の場合が違うと思いますが、中華民国政府との話合いは、全権が向うへ行つてみませんと、向うでどういう考えを持つておるか、実は正確にはわからないのでありますが、こちらで考えておりますのは、賠償というものは、今取上げらるべきものではないと思つて、こちらの案にはそれが入つておりません。実際話し合つてどういう形になるか、それは将来のことになります。韓国との間の話合いは、現にたとえば李承晩ラインという問題もあるし、たとえば日本の船が韓国に行つて、そのまま帰つて来ないという船もあり、あるいは韓国の方が、日本にある船は自分の方の所有物だと主張しているものもあり、それから講和條約が発効いたしますと、日本におる韓国人がいかなる国籍を持つかということはすぐ出て来る問題でありますから、そういつた当面の問題を急いで話し合つて解決したいという考えでありますし、また法律的に言つても、韓国政府に対しては賠償という問題は起らないであろうと、われわれは信じておる。ただいまのところはそういう目下の懸案を整理しよう、こういうことで会談を進めております。
  74. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 風早君から関連質疑の申出があります。一点に限つてこれをお許しいたします。風早八十二君
  75. 風早八十二

    ○風早委員 一点だけ岡崎国務大臣にお尋ねします。岡崎国務大臣は、先ほど原爆の使用の問題につきまして、あるいは原爆を日本に持つて来るというふうな問題について、行政協定の交渉には何らそれが出て来ておらない、こういうお話であります。また昨日山口委員等の予備隊の海外派遣問題について、同じようにその問題は前にもお答えがあつたのでありますが、公式にも非公式にも、あるいは雑談の間にもこれは出ておりません、こういうお話であつた。しかしながらこれは岡崎国務大臣が一つ前提をとつておられる。つまり行政協定は、ただ單に米軍の日本における配置という点についての協定であつて、それ以外の何ものでもない。従つてこの前提をとりますと、岡崎国務大臣の答弁があるいは正しいのではないかと思うのです。今日も川島委員質問に対して、同様に特に断つて行政協定ではと、こういうふうに言われたのを私は注目した。これはおそらくその前提からすれば、ほんとうではないかとも思うのです。しかしながらこういう問題は、しからばどこでも扱われないのかというと、そうではなかろう。従つて行政協定以外に政府がいかなる形で、たとえば行政協定の合同委員会以外に、別に米国との間に話合いをされる組織、並びにそこで扱われる問題の内容、その中にはこの海外派遣問題なり、あるいはまた原爆の問題なりが含まれているのではないかという点をお尋ねしたいのであります。  一点でありますから、ついでにこれにつけ加えます。かりに原爆問題あるいは海外派遣問題が、その機会においても、つまり合同委員会あるいは広く行政協定交渉の中、あるいはその他の場合にも行われないということがありましても、さらにまだ問題がある。たとえば兵種の問題、つまり兵力の種類、内容であります。これは必ずしもそこに原爆があるないにかかわらず、とにかくそういう問題、あるいはまた日本の予備隊との関係であります。予備隊の問題は行政協定では扱われないと言われる。しかしながら予備隊と米軍との間を結ぶ問題があるわけであります。当然これはなくてはならぬわけであります。実際に実力を発動する場合においては、この両者は一体とならなければならないのでありまして、その限りにおいて、その結合の問題がある。その場合においては、また統帥権の問題もある。現在統帥権という言葉が使われておらないとすれば、その言葉はどうでもいいが、とにかく指揮系統の問題がある。こういつた問題をどこで扱うのか。私は必ずや別に行政協定以外に、そういう組織があり、あるいは考えられておらなければならぬと思う。そういつたような問題について明確な御答弁を願いたい。そしてそこでは何を扱うのであるか、行政協定ないしは日米合同委員会なるものと、それとの関連性をもつてとつ御答弁願いたい。
  76. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 原爆とか予備隊の海外出動とかいうことは、行政協定の話合いではむろんのこと、その他政府との間のいかなる形における話合いにおいても、出たことは一度もありません。予備隊とアメリカの軍隊との協力関係が、ぜひ必要だとおつしやるのでありますが、必要ならば今後適当に措置をいたしますが……。
  77. 風早八十二

    ○風早委員 どの交渉でやるのです。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは別にどの交渉ということはないのでありまして、必要があればやるだけの話であります。これは政府として、行政協定を当然必要があればやる、必要がなければやらない。
  79. 風早八十二

    ○風早委員 防衛委員会のことはどうです。
  80. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 防衛委員会は、前にもここで繰返しましたが、そういう話合いは全然ありません。
  81. 川島金次

    川島委員 最初安本長官にお伺いをいたしたいと思います。これは午前中にちよつと触れたのですが、若干しり切れとんぼの形がありますので、もう一ぺん繰返して、明確に長官の言明を煩わしておきたいと思うのであります。と申しますのは、今後内政的にも国際的にもわが国民の負担増加は必至であります。それと相関連して、われわれといたしましては、何をおいてもまず国民生活水準維持並びに向上ということを、大前提といたすべきであるという建前をわれわれとつております。政府もまた同じようなことを言つておりますが、問題は言葉の末ではなくして、実際問題であります。先ほど大臣は、昨年の国会におきまして、経済安定本部の三箇年計画自立達成の中において、二十八年度には国民生活水準を、戰前の九〇%までに回復をいたすという計画を発表されておりました。従つて今後内政あるいは国際的な負担増加というものを伴いましても、所定の安本におけるところの国民生活向上に関するいわゆる九〇%の回復というこの目標を断じて守り通し、それを実現するということを重点として考えて行くのかどうか、その点についてももう一ぺん繰返してくどいようでありますが、明確な見解を、この機会に表明しておいてもらいたい、かように思います。
  82. 周東英雄

    周東国務大臣 川島さんの御意見の通り、今後における日本経済の推進については、あくまでも国民生活水準維持向上ということを目途にしておることは言うまでもありません。これははつきり申し上げておきます。しからばその目標をどこに置くかということにつきましては、お話のように、少くとも戰前の九〇%にまでは持つて行きたいということで、すべての計画を進めておるわけであります。しかしこれが一足飛びに来年からなるということは、むずかしいでしよう。少くとも午前中にも申し上げましたように、今日の七三、四パーセントを維持向上させる方向に向いつつ、国民負担について立てて行きたいと考えております。
  83. 川島金次

    川島委員 次にお尋ねいたしますが、今回政府行つております日米行政協定と相並行いたしまして、問題の日米経済協力に関する何らかの協定が近く行われるのではないかという期待国民の間には持つ向きもあります。また政府はすでに内々それらのことについて、相当具体的な準備をされておるという事柄をも伝える向きがありまするが、その点についての政府の方針を示してもらいたいと思います。
  84. 周東英雄

    周東国務大臣 まだ近く経済協力に関する協定を結ぶか何とかいうところまでは行つておりません。しかし少くとも講和條約発効後におけるアメリカその他の自由主義国家との間において、経済的に提携し、協力するということについては、ぜひともこれを実行して行きたい、それについてはさしあたつて日本における未稼動の工場並びに豊富なる労働力、この二つを活用することによつて一つには米国その他の自由主義国家等の必要とするものの生産をなして、これに協力をするし、それによつて日本経済力を高めて行くという二つの線に沿つて、進めて行きたいと考えております。いろいろと個々の問題についてお話が出ておりますが、政府においてはお話通り協力態勢の問題について今施策を進めております。この前もここで申しましたように、もう少し間を置いていただきますれば、確実に申し上げ得る機会には申し上げたいと思つております。
  85. 川島金次

    川島委員 そうすると日米経済協力に関する両者間の具体的なとりきめといいますか、協定というものはなくして、実際問題として経済の運行の上に具体的に進んで行くという形をとることになるのでありますか。その点は……。
  86. 周東英雄

    周東国務大臣 おそらく日本はこれだけの生産余力を持つているが、これに対してもし必要とする要求に対して、これだけの原料を與えられるならばこれくらいは生産できる、こういうふうな形に具体的に進んで行くと思います。あるいはそれ以外に関連して協定というのができれば別ですが、そういうことはおそらくまだただいまのところは考えておりません。
  87. 川島金次

    川島委員 最近特需に対する新特需の問題も、かなり一般経済界から注目されておるところであります。ことにアメリカは一九五三年度の予算において、厖大な軍事費が計上されて参ります。それに関連いたしまして、わが国に新特需ともいうべき性質の注文が相当あるのではないかと期待する向きもないではありません。そういう事柄について最近の状況がわかつておりましたならば、ひとつ示してもらいたいということと、今後そういつた事柄についての見通しはどういうふうに政府は考えておられるか、その点について持つておりましたならば、それを明らかに知らせてもらいたい。こういうふうに思います。
  88. 周東英雄

    周東国務大臣 先ほど申しましたように、具体的にはもう少し時間をかしてもらいたいと思います。ただ抽象的に今申し上げ得ることは、お話のようにものによりましてはある程度生産の話合いを持つて来ておるものもありますが、これらはあくまでも、日本は設備だけありますが、必要な原材料は持つて来てもらわないとできません。またそれをやるがためには、たとえばアルミのごときものにつきましては、電気を相当に食うのであります。私どもの一番憂うるところは、電気というものに対する開発が相当早く進んで来ればともかく、現在の場合において片寄つて使われることによつて起る他の産業への問題もありますので、ここらのところは十分注意をして話合いを進めて行かなければならぬということであります。ただ單に申出によつて、そのままのむわけには行きませんし、一つは原材料の供給確保の問題、それから開発の問題、それが一時的のものであつては、せつかく日本の設備を利用して始めましても、急にやめられたときに困る。将来もし具体化する場合においては、原材料確保のある程度の長期的な話合いと、またでき上つたものを長期的にある一定の年限をもつて顧みられなければならぬ等のことが、あわせて考えられなくてはいけないということで個別的に当つております。おそらくもう少しお待ち願いまして、適当な機会お話を申し上げたいと思います。
  89. 川島金次

    川島委員 日本は従来の大きな市場でありました満州あるいは中国等を、今日実際上において失つた形であります。従つて日本の今後の海外的な経済関係の進み方というものは、どうしても東南アジアの方面に重点を注がなければならぬ事情にあります。そこでこの東南アジアの開発の問題については、しばしばいろいろと論議されておりますけれども、これはもちろん日米経済協力の今後の具体的な形が、前提となることも重要な事柄だと思うのであります。政府はこの東南アジアの開発について、いろいろ積極的な手を打つておるやにも承つておりますが、実際的な具体的な現われというものは、われわれが期待するほどあまり出ておらぬ。こういうことも事実のようであります。この東南アジア開発に対する具体的な構想というものは、どういうふうに持つて行かれるのか。日米経済協力に伴い、東南アジア開発を行います場合、私は従来のような資金、資材の放任的な形では、この問題の積極的な円滑な進みというものは不可能ではないかと思う。それかあらぬか、すでに政府の方には、司令部等を通じて、物資の強力な統制というものが、サゼスチヨンされておるように、新聞では伝えられております。こういう日米経済協力並びに東南アジア開発等をめぐつての、今後の経済統制といいますか、経済計画等についての、安定本部長官としての構想がさだめしあるのではないかと思うのでありますが、それについての構想がありますれば、この機会に明らかにしてもらいたい。
  90. 周東英雄

    周東国務大臣 東南アジア開発の問題についてのお尋ねでありますが、これについてはたびたび申し上げますように、将来における日本産業の復興発展の上にも、原材料の獲得、しこうしてできるだけ近いところからこれを手に入れるというようなことが、コストの上からも、原料確保の上からも、必要であります。そういう意味から言いましても、東南アジア開発ということが、非常に大きな問題となつて出て来るわけであります。同時に東南アジアにおきましては、たとえインドネシア、フイリピン等においてもそうでありますが、特にインドネシア等におきましては、賠償と別個にその国の資源の開発、産業の復興のために、日本経済協力をしたいという申出もすでにあるわけであります。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕 こういう面からいたしまして、一は日本のため、一は現地の民族国家の発展のために、共存同栄の立場において、積極的に開発を進めたいと思つております。  これらに対してお尋ねの具体的な問題でありますが、今日具体的になつておりますのは、たとえばゴアの鉄鉱石なり、あるいはフイリピンの鉄山、あるいは銅の関係、あるいはインドネシアの二ツケルというような問題が、具体的に上つて、これにつきましては、両国家の民間相互の間における共同の形においての開発がもくろまれておるわけであります。これに対してはいろいろ資材等を日本から供給する必要のある面もありますし、こういう面が進むにつきましては、やはりアメリカ等における資金、資材等の援助も考えられるのであります。こういう点に御指摘のように、東南アジア開発に関する日米経済協力の線を通じて、東南アジア開発ということも考えられるのであります。同時に日本のプラント輸出、あるいは日本の技術者を出すということも考えられるわけであります。御指摘のように、東南アジア開発についても、具体的に経済協力の一環として考えておるのであります。  そういうことをやる上からは、資材等の方面に強力な統制がいるのではないか、こういうお尋ねであります。最近新聞に出ておる問題であります。これにつきましては、何も資材について、昔のような政府によるクーポン制の統制をやるということを意味しておるのでは別にないのであります。問題になつておる点は、今日世界的に稀少な物資については、その使用制限なり、あるいは用途の制限をするということについて話があります。これは事実であります。今日われわれといたしましても、従来二ツケルなりあるいはコバルトというようなものについて、すでに使用制限をやつております。この問いろいろ話がありました場合に、さらに進めてタングステン、モリブテン、合成ゴム、それから銅の一部の細工商品について、七、八品目でしたか、そういう話があり、さらにもう少しいろいろな問題について研究を要しないかという話があつたことは事実であります。目下政府において研究中であります。この点は誤解のないように申し上げておきますが、今日世界的に少い物資については、日本内地においては相当あるものでも、世界的な立場において、今から少し濫費を防いだら、どうかというような話もありまして、われわれは、十分その間にあつて、使用制限をなす場合において、中小企業者あるいは日本国民生活の上に、どう影響するかということを考えつつ、善処して行きたいと考えております。
  91. 川島金次

    川島委員 私に與えられた時間が少いのでありますから、経済安定本部長官に対する質疑はこの程度で、他の機会に讓りたいと思います。  次に労働大臣が見えておりますので、労働大臣に若干のお尋ねをいたしたい。本日か昨日かの新聞に伝えられたところによりますと、問題となつておりますゼネストの禁止法、これを何か労働大臣は労働大臣としての立場上から、具体的な構想を持ち、関係同僚閣僚の方へ強力な申入れを行つたやに伝えられております。もし伝えられるように、労働大臣にこの問題に対する具体的な構想がありといたしますならば、この機会にわれわれに聞かせてもらいたい。まずこういうように希望するものであります。
  92. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ゼネスト禁止法の件は、昨年来法務府において治安上から検討されていたということは、私承つております。私の方の面では今直接ゼネスト禁止ということは考えておりません。ただ独立後における労使調整の問題につきましては、相当考えなければならぬのではないか、かように存じまして、目下労務法制審議会に諮問中でございます。いずれ諮問の答申がございましてから考えたいと思つております。
  93. 川島金次

    川島委員 重ねてお尋ねしますが、労働大臣といたしましては、広汎なゼネストに対して、でき得ればこれを禁止する措置を望ましいと考えられておるかどうか。審議会の答申は別として、労働大臣としての立場で考えられておりまするその点についての率直な考え方を、明らかにしてもらいたいと思います。
  94. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は労使間の問題は、原則としては自主的に解決せらるべきものであると考えております。しかし自主的に解決できない場合は、やはり何らかの合理的な機関にかけて解決するという道が、考えられなければならないと存じます。  しこうして独立後における一番大きな問題は、何と申しましても、日本経済の自立達成の問題であろうと思います。その面において重要視される問題は、やはり労使間の円滑なる調整ということであるかと思います。従いまして私どもはできるだけ争議行為に出ないで、合理的な機関にかけて解決できれば、その道を選びたい、こう存じておるわけであります。
  95. 川島金次

    川島委員 今の御答弁で若干の労働大臣の考えております気持はわかるのでありますが、もつと率直にお答えを願いたいのであります。それは先ほど私が繰返して申し上げまするゼネストの禁止という問題に対して、労働大臣はどういう考え方を持つておるか。こういうゼネスト禁止法のごとき法律を出すことは、望ましくないと考えられておるかどうか。その点についての見解をお尋ねを申し上げているわけであります。
  96. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 私は健全な労働組合運動は、これを抑圧するという考えはございません。しかしながら自主的に解決をすると申しましても、実は過去の経験に徴しましてこらんになりましても、なかなかそう行かない場合がございます。しかもその争議を放つておけば、日本経済を危殆に陷れるおそれのあるものもなしとしないと私は思います。その場合におきましては、何らかの処置を講じて、合理的な機関にかけて解決する手段を考えておくことは必要だ、かように存じております、ただゼネストだから全部いけないというふうには考えておりません。
  97. 川島金次

    川島委員 次にお尋ねをいたしておきますが、目下この問題は労務法制審議会にかけられておりまして、しかも伝えられるところによりますと、論議が区々として対立的な形になつて、審議が難航をしておるというふうにわれわれは承つております。そこで労働大臣に率直にこれはお尋をいたしますので、率直に大臣としての考え方をお答え願いたいと思うのでありますが、問題となつておりまするものは、行政職、司法職にある公務員は別といたしまして、現業公務員あるいは公共企業体職員、これらに対するところの罷業権を含めました労働三権を保障するということは、憲法第二十八條の趣旨から行きましても、当然ではないかという考え方をわれわれは持つております。この事柄について目下労務法制審議会では、甲乙の議論が対立をいたしておりまして、ただいま申し上げるように、非常な難航を続け、その結論を見出すに困難な状況にあると伝えられておりますが、こうした問題につきまして、労働大臣は一体どういう考え方を持たれておるか。これは審議会の答申をまつ前に、そういう大臣としての見解を公にするということは、いろいろ考慮しなければならぬ点はよくわかります。わかりますが、きわめて事柄は重大でございますので、この機会に労働大臣としての私的な見解でもけつこうでありますから、その見解についての表明をこの際していただきたい、かように思うのであります。
  98. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 御指摘の点は、今お話になりましたごとく、目下労務法制審議会にかかつておりますので、今私の意見を申し上げることは適当でないと思うのでありますが、しかし自分の気持といたしましては、公企業のごときものが争議権を持つことは、今のところ穏当でないのではないだろうか。しかしておよそ団体交渉権と申しますか、争議権といいますか、それは経済的な地位の向上を達成する手段としてあるわけであります、しこういたしますれば、それを何らかの合理的な機関において解決できれば解決するということが私は目的ではないだろうか、かように存ずるわけであります。そうしますれば、現在国鉄等におきましては、仲裁機関等の機関にかけまして、これを解決するという道をとつておるのでありまするから、そういう方法で行けるのではないかと、かように存じております。
  99. 川島金次

    川島委員 私はその点について残念ながら労働大臣とは見解を異にいたします。少くとも公共企業体等のごとき職員の組合に対して、これは憲法上に保障されておるところの原則的な権利というものは認めてやるべきだと思う。しかしその権利がいたずらに濫用されないような施策というものは別に講ずべきであろう。あくまでもやはり憲法に保障されたる権利というものは尊重してやる。しかしながらその半面において、それが濫用されないところの経済的な措置あるいはその他の措置が懇切に行き届いておりますならば、そういういたずらな権利の濫用というものは必然的に行われないということをわれわれは期待をいたし、また確信をいたしておるのでありますが、その点について残念ながら労働大臣とは意見を異にする状態であります。  そこで時間がありませんから、最後にもう一つつておきますが、政府は最近閣議の決定をいたそうとしているように承つておりまする例の問題の行政機構の改革であります。われわれもまた行政機構の民主的な改革に対しては、何も反対はいたしておりません。あくまでも民主的な行政機構の改革を徹底せしむるということは、われわれも同意見でありますことはもちろんであります。がしかし、聞くところによりますと、労働省あるいは厚生省これらの省を合併いたしまして、一つの社会保健省というがごとき省をつくりたいということが、一府九省案の中に設けられているように新聞は伝えておりますが、こういう事柄は私はきわめて重大な問題だと思うのであります。日本経済再建をはかりまする重要なにない手は、何と言いましても労働階級であります。資本も大切、設備も大切だが、それを生かして日本経済の自立達成のために重大な役割を果すものは、労働者であると言わなければならぬ。この労働者の権利を守り、福祉を増進することに專念をいたしますところの任務を持つた労働省の大きな役目というものを、われわれは意識いたしております。その大きな役目を持つておりまする労働省が、厚生省その他の一省と合併してその傘下に入るということは、やがてそれは日本の労働界に対するところの大きな影響がありと私どもは懸念をいたすのでありますけれども、こうした問題について、当面労働大臣はいかなる見解を持たれておるか、今の行政機構の改革に労働大臣は賛成をしておるのかどうか、あるいはまたそういう事柄について、すでに同僚から内々的なお話合いが進められているかどうか、その点についての見解を示してもらいたいと思います。
  100. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 行政機構の改革の問題は、閣内におきましてもよりより相談中でございます。まだ私としては賛成とも反対とも申しておりませんで、愼重に考慮中であります。ただ行政機構の改革の問題は、御承知のように相当広汎に広がつておりますので、何とかして簡素化したいという気持につきましては一致しております。その簡素化をどういう方法でやるかということは、目下研究中でございますので、今のところこれ以上はお答えできません。ただ御指摘になりました労働者の権利を守り、労働者の福祉向上をはかるということにつきましては、欠くるところのないように努力するつもりであります。
  101. 川島金次

    川島委員 時間がありませんから運輸大臣にお尋ねをいたします。  大臣も御承知のごとく一昨々年運輸省から現場の企業体が離れまして、日本国有鉄道法が設置され、企業体として新しい発足を見るに至りました。しかしこの企業体として発足を見まするに至りました経過については、私が申し上げるまでもなく、これは日本政府と国鉄自体の自主的な見解も若干はありましたが、しかし大部分の面は、これは占領軍方面からのサゼスチヨンが大きな力となり、企業体の発足を見るに至つたことは、まぎれもない事実であります。しかも公共企業体を発足いたしまする場合におけるところの一つ目標というべき問題は、私から申し上げるまでもなく、公共企業体の経理予算の執行面における彈力性をまずこの企業体に持たせて行こうではないか。あるいはまた利益のあつた場合には繰越し損失の補填ができるようにしようではないか。また現金收入については、国鉄自体の考え方に立つて、必ずしも日本銀行に預入するばかりでなく、場合によつては市中銀行に預託することもでき得る道を講ずる、あるいは国鉄自体が建設的な事業のためには債券の発行も許す、こういうことと、あわせて最も重大な事柄は、国鉄の企業体に直接携わつております従業員の諸君の、ことに給與に対しましては、実際の生計費や、あるいは一般の国家公務員給與、あるいは一般民間におけるところの同一事業に携わつておる従業員の現実の給與、こういつた問題を勘案して別途考慮できる。すなわち一般公務員給與とは別個な独自の立場において、国鉄はその従業員の待遇が処理でき得るという明確な事柄をもその目標といたしまして、企業体が発足いたしたのでありますが、それがややもすれば現実においては不可能な状態でありますことは、大臣も御了承の通りであります。ことに経理の面、あるいは国鉄全体の財政面におきましては、結局のところ最終的な権力というものは、今もつて大蔵大臣が握つておるという実態でありまして、国有鉄道がその内部の経理において、あるいは建設、あるいは給與の面に独自の計画を立てましても、大蔵大臣がこれを認めない場合には、何らの方法がないというのが遺憾ながら現実の国有鉄道の姿であり、また給與の面においても同断であるのであります。ここで私は運輸大臣に一言申し上げまして、大臣の見解を聞いておきたいのでありますが、いよいよ日本の形式的には独立国になります。そこでこういう混乱の時代に、他の力が加わりつつ形態の新しい発足を見るに至りましたこれら公共企業体、端的に言えば国有鉄道法の根本的な改正を必要とするのではないか。そして公共企業体独自の権利義務を確立いたしまして、名実ともに公共企業体の形を整え直す必要があると私は考えておりますが、この事柄について運輸大臣はいかなる見解を持たれておりますか、明らかに示してもらいたいと思います。
  102. 村上義一

    ○村上国務大臣 ただいまのお話は国有鉄道の公共企業体制度をいかになすべきかというお話であります。公共企業体自体の制度改正について目途とするところは、いろいろお話になりました通りであります。これが現在その目的が達成されているかどうかといえば、必ずしも達成されているとは私は考えておりません。また内部の機構についても幾多の問題があると思うのであります。  これらの点につきましては、もちろん内外で各種の批判がありますが、およそ制度というものは御承知の通り長所もあり短所も伴う、しかも長短が常に表裏をなしているような場合が多いのであります。短所だけを取除き得るやいなや、短所だけを取除けば角をためて牛を殺す結果になるのではないかということが制度を検討する場合に、常に考慮されなければならぬ点だと思うのであります。国有鉄道の現在の制度につきましても幾多の批判があり、また短所もあり、もちろん長所もあると思います。最初目途としたところを実現すべく今日まで努力して参りまして、ある程度の効果は上つていると認めております。しかしながら完全に現われているかどうかはこれは疑問だと思います。むしろ否定せんければならぬ面があると思います。私としては以前からも検討しておりますが、今後とも十分検討をいたしたいと思つております。とにかく重大な問題でありまして、いまだ結論には達しませんが、十分検討の上、また御審議を願いたいと私は思つておる次第であります。
  103. 川島金次

    川島委員 他の同僚の質問の時間もございますので、あと二問だけ運輸大臣に質問をいたしまして、私は交代いたしたいと思います。  次にお尋ねをいたしますが、運輸省の当面の重大な問題となつており、しかも日本経済発展の上にも基本的な重大な問題でありまする造船の問題、これは昭和二十六年度の残余の問題もからみまして、運輸省の計画いたしておりまする計画と、実際に行います資金計画とがマツチいたさぬ、こういう関係で、二十六年度の残余の問題につきましても、非常に困難な事情にあると承つておりますが、この問題についてのお見通しはどうなつておるかということと、二十七年度における造船計画に伴いまし、運輸大臣が努力されておるところの裏づけとなるべき資金計画、そういうことについての確保の問題等についての方針あるいは見通し、現状等はどういうふうになつておりますか、その点についての事情をこの際説明してもらいたいと思います。
  104. 村上義一

    ○村上国務大臣 ただいまお話の二十六年度の問題とおつしやつたのは、例の二十七年度第七次後期の追加という問題をおさしになつていると思うのであります。この第七次後期の追加は、約五万トン建造するという問題であつた。この問題につきましては、先月末以来関係向きとそれぞれ交渉をいたしまして、五万二千二百トンを建造するということに決定いたしまして、それぞれ船主側に今話合いをし、さらに金融機関に話合いをし、大体妥結に達したような次第であります。大要を申し上げますと、大体五万二千二百トンで、貨物船は四はいで、二万八千総トン余りであります。油送船が二万四千トン余りであります。この建造費は総額で七十一億を要するのであります。大体四期にわけて支払いをなし、そのうち契約と着工とに四分の一ずつ、すなわち半分を払います。これは二十六年度中に払うことに相なります。残り半分は四分の一ずつ進水と引渡しとに支払いをすることに相なります。それで二十六年度に必要なる資金は三十五億五千万円であります。つまり半額であります。この三十五億余りの金につきましては、市中銀行から十五億、そして開発銀行から十五億、船主の自己資金で五億あまり、こういうことで話を進めまして、大体妥結いたしました。この月曜日あたりには契約も締結できるだろうと、今あつせんをいたしておる次第であります。  なお二十七年度につきましては、お話のごとく政府の重要な政策一つであることは御承知の通りであります。施政方針演説にも強調せられたところであります。この三十万総トン、運輸大臣としましては少くとも三十万総トンをぜひつくりたいと考えておるのであります。御承知の通り終戰直後に十一万総トンにすぎなかつた遠洋航路の適格船、外航航路の適格船すなわちクラス・ボートは、三年前から大いに造船に力を入れ、もちろん一面において外国船の買船もいたしました。また戰時標準船の改造もいたしましたが、今ちようど一月末におきまして百五十五万総トンの外航船の適格船を保有し得るように相なつたのであります。しかしながら輸出入貿易の数量のわずかに二九%を、日本船で積みとつておるにすぎないのであります。五〇%を積みとるという目標にはなお前途距離がある次第であります。なるべくすみやかに五〇%積取りの目標に到達したい。できるなら今後三年間くらいにしたいということを念願しておるのでありますが、おそらく相当困難じやないかと思うのであります。とにかく二十七年度におきましては、三十万総トンを建造するということにいたしますると、うち油槽船も考慮しまして二十七年度中に支払うべき金額は四百七十二億円に相なる。もちろんこの中には二十六年度において着工をしました新造船の代価で、二十七年度に支払うべきものも含まつておるのであります。要するに二十七年度中に支払うべき金額が大体四百七十億あるのであります。この中に今回予算に計上して御賛成を願つておりまする見返り資金は百四十億にすぎないのであります。さらに船主が市中銀行に返還をいたします金が百八十九億、大体百九十億あるのであります。そうして一面増資及び社債発行が大体予定せられておるものがまず四十億と考えることが至当ではないかと思つております。要するにこの市中銀行に船主から返還する百九十億、それを一旦返還してただちにまた新しい貸與をしてもらうと仮定しまして、これは可能であると思うのであります。四十億の増資もしくは社債発行を加えて二百三十億というものに相なります。船主の自己資本の造成と申しますか、大体確定的であると考えられるものは二百三十億、結局見返り資金の貸與すべきもの、貸與し得るものを加えまして三百七十億であるのであります。結局百億なお不足するということは明瞭であります。でありますから、もちろん一面におきましては、市中銀行からさらに借り入れるということも考え得るのであります。今日オーバー・ローンの現状におきまして、さらに多くを期待するということも困難であろうと思うのでありますが、また外資の導入ということも考え得るのであります。現に一、二社はこの問題を進めつつあるのであります。そういう関係はありまするが、要するに船主の自己資本を多く造成するように慫慂することが、最も必要だと思うのであります。政府としましては船主が自己資本を造成するように、適切な措置を論ずるということがもとより必要であると思うのでありまして、せつかくこの点につきましていろいろ考慮を重ねておる次第であります。大体そういう意味で四百七十億の資金は、ぜひとも調達したいと念願しておる次第であります。
  105. 川島金次

    川島委員 これで終ります。最後に運輸大臣に希望かたがたお伺いをしておきたい。承れば大臣も学校を出られるとすぐに機関区等に入られて、当時における重労働に携わつて来た御経験をお持ちだそうであります。私もその方面では君子の経験を持つております。先ほど申し上げましたように、国鉄の企業体は他の一般公務員と違いまして、賃金等におきましても別途の考慮が払われる建前になつております。しかも今日でもなおかつ国鉄における従業員の中で、機関区とかあるいは保線等に携わつておりまする従業員は、大臣もよく体験されました通り、四十何万かの従業員のうちでも、最も苛酷な労働に携わつておりますことは、大臣も了承されておろうと思います。  そこで私は一つの提案と希望がありますので大臣に伺つておきたいのですが、これら国鉄内部における現場の、ことに生命の危險にさらされながら、しかもかつ苛酷なと思われるような労働に携わつておりますところの、現場の第一線的な従業員に対しては、特段の配慮を払うという一つ賃金体系をつくる必要があるのではないか、また賃金体系ができなければ別途の措置をもつて、これらの従業員を特に優遇するような措置が、私は最も好ましい形ではないかと思うのであります。そういう事柄につきまして、大臣は経験者の一人といたしまして、何か考えられているかどうか。また今後そういう事柄について、国鉄総裁等とも打合せて、何らか積極的な対策を立てるという熱意を持たれておるかどうかということを、お尋ねいたしまするのと合せまして、全体的な国鉄の従業員の待遇につきまして、先ほども私は大蔵大臣等と論戰をいたしたのでありますが、物価上昇がはなはだしいにかかわらず、今もつて国鉄の従業員の賃金ははるかに物価上昇線には追いつかない形になつておりまして、その生活の実態は他の官庁に比べて労働率の多いにかかわらず、困難な生計を営んでおります。ことに各都市におけるところの公益質庫等をのぞきましても、公益質庫を利用します大部分は、鉄道従業員が多いとさえ、公に言われておるような実情でありまして、いかにこれらの窓口を通して見ただけでも、国鉄の現場従業員の生計が、現実においてはきわめて困難な事情にあるということを、うかがうにきわめて容易であるのであります。そういう観点からいたしまして、大臣は今後来るべき補正予算等の機会もあろうと思いますが、これらの重労働に携わるところの労務者に対するところの特別な配慮、並びに国鉄従業員全般にわたるところの給與の改訂等について、どのような考え方と配慮を持たれておるか、このことについての積極的な計画がありますれば、この機会お尋ねしておきたい、かように思います。
  106. 村上義一

    ○村上国務大臣 国鉄の従業員は、四十四万六千人おりますが、その中に種種雑多な職務があるのであります。御説の通り非常な重労働と考えられるものもありますし、特に危險を伴う業種がかなりあるのであります。これに対して報いるところが薄いじやないかという観点からの御質問だと思うのであります。今日国有鉄道の従業員の平均基準賃金は、一万八百二十四円でありまして、国家公務員とは若干上まわつております。なおその以外に、特に危險なる職務に対しては危險手当、その他いろいろな手当が支給されております。大体御趣旨のような精神に基いて、給與体系が盛られておることは事実であります。しかしながら一般公務員との振合いということが、なお強く各方面から考えられるためもありまして、給與そのものが職務の本質にかんがみて、十分報われておるかどうかということについては、検討を要するところであると思うのであります。長崎総裁におきましても、この点に慎重な考慮を払いまして、現に調査をいたしておるはずであります。どうぞ御承知を願います。
  107. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 今井耕君。
  108. 今井耕

    ○今井委員 時間の関係がありますので、簡單に二、三の点について文部大臣にお伺いしたいと思います。第一の問題は、実は大蔵大臣とお二人にお聞きをしたいと思つてつたのでありますが、大蔵大臣が御病気でおられないので、はなはだ残念であります。そこに主計局長がおられますから、もしおわかりであつたらば、同時にお答え願いたいと思います。  その第一の問題は、小学校や中学校の非常に古い学校、老朽校舎の問題でありますが、これは全国に非常にたくさんそういう学校ができまして、過日の雪で、危險のために臨時休校をしている学校が非常にたくさんできておる。そこで何とかこの問題は急速に解決しないと、非常に困る問題でありまして、これに対しては当然国庫から相当な助成をすべき問題だと思うのであります。承ると文部省も相当努力をしておられるようでありますが、その後の事情がどうなつておるか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  109. 天野公義

    天野国務大臣 御説の通り、私どもも老朽校舎については、非常に心配いたしております。予算も計上しましたけれども、それは認められませんので、どうしたらいいかということにつきましては、起債によるか、あるいは何かもつとほかのくふうはないものかということを、今事務当局に研究してもらつております。
  110. 今井耕

    ○今井委員 これが認められぬというところの根拠はどこにあるのか、伺いたいと思います。これはもちろん大蔵当局の方で、何か意見があると思いますが、御意見を承りたいと思います。
  111. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 昭和二十七年度といたしましては、従来〇・七坪がまだ十分にできておりませんので、それを一応完成することを目途といたしまして、予算を三十数億円計上いたしておるのであります。老朽校舎の問題につきましては、文部省の計算によりますと、百五、六十万坪あるようであります。今後財政状況を見て順次やつて行きたい、こう考えております。
  112. 今井耕

    ○今井委員 まず最初に、六・三制の校舎の建築ということに、重点を置かれておるということはよくわかるのでありますけれども、非常に急を要する学校がずいぶんたくさんできている。しかもそこの町村においては、一方において六・三制の校舎の建築のための負担を負わなければならぬ、同時に老朽校舎の改築をしなければならないということで、せつぱ詰まつておるものがたくさんあるのです。従つてただ理論的な、そういう順序だけを考えておる時期ではないと思うのです。従つてそういうような、ただ理論的なことだけではなしに、現実に即応して、これは急速に解決しなければならぬ問題だと思うのでありますが、もしそれができぬ場合においては、起債とか、そういうようなことについて、格別の配慮を払う必要があると思いますが、この点いかがですか。文部省はそういうような要求を相当しておられるか、あるいは大蔵省はどういうような御意見を持つておられるか、これをお伺いしたいと思います。
  113. 天野公義

    天野国務大臣 文部省としては、ただいま申しましたように、これをどうとりはかつたらよいかということに、非常に苦労をいたしておるわけであります。何か新しい、ただいまも申したようにくふうはないものであろうかというようなことを考えておつて、文部省としては、そういう線でやつておるわけであります。
  114. 今井耕

    ○今井委員 起債の点は、お考えはどういうふうになつておりますか。
  115. 天野公義

    天野国務大臣 これも普通ならば予算による、できなければ起債によるというよりほか、方法がないじやないかと思います。しかしそれも非常に困難のようでありますが、今努力いたしておるところであります。
  116. 今井耕

    ○今井委員 承りますと、昨年は十六億の起債を認めておるということであります。今年はこういうものを相当多く認めないと、非常に地方では困ると思いますが、大蔵省の方ではどういうような御意見ですか。
  117. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 昭和二十六年度におきましては、十五億三千万円の起債を認めたと思います。明年度におきましては、地方債の起債総額六百五十億ということになつておりまして、本年度より百億以上もふえることでありますので、そういう点につきましては、相当優先的に考え得るのじやないかと存じております。まだその具体的なわけ方につきましては、各地の状況等を見まして決定する予定になつております。
  118. 今井耕

    ○今井委員 まだおきめになつておらぬようでありますが、ひとつこの点格別の配慮をしていただかぬと、非常に困つておる地方があるということを聞いておりますので、特に心配をしてもらいたいということを希望いたします。なお文部省の方で、こういうような問題に今後対処するために、教育金庫法というようなものをお考えだということをひそかに聞いておるのですが、その構想はどういうようなものであるかということがわかつてつたら、ごく大体でよろしいから承りたいと思います。
  119. 天野公義

    天野国務大臣 この問題は、よく考えたり、いろいろしておりますが、どうもいろいろな欠点もあつて、まだここでこうと言つて申し上げるまでになつておりません。
  120. 今井耕

    ○今井委員 次に教育委員会の制度の問題でありますが、教育委員会の公選制を廃止するというような問題がまずあります。これは教育の民主化の上から考えまして、非常に重大な問題だと考えるのでありますが、文部大臣はどういうような確信を持つておられますか。
  121. 天野公義

    天野国務大臣 原則的にいえば、当然公選でなければならぬと私は考えております。ただしかし、公選で今までやつたそのままでは、どうしてもこれではいけない。いろいろな弊害が出て来ておると思うのです。だからそういう弊害を起さないで、しかも公選という原理を貫くには、どうしたらよいかということを今苦慮し、また研究いたしておるところであります。
  122. 今井耕

    ○今井委員 次に教育委員会の設置の單位の問題であります。これも今いろいろ論議されておるようでありますが、あまりまちまちになつておるのもどうかと考えるので、一応標準をきめてやつて行くというようなことが、必要だと考えるのでありますが、この問題について、大臣はどういうふうにお考えになつておりますか。
  123. 天野公義

    天野国務大臣 この設置單位の問題も、まだ結論に到達いたしておりませんが、しかし私見としては、市町村まで義務づけるということは、無理ではないかという考えを持つております。
  124. 今井耕

    ○今井委員 ほのかに承りますと、人口十万の都市だけに設置するようにするというような意向が、非常に強いようでありますが、過去三箇年間の経験から方々の意見なんかを徴してみると、それではあまり設置する場所が少な過ぎる、従つて人口五万以上くらいなところ、または農村なんかにおいては、郡單位ぐらいに委員会制度を設けてやつて行くのが、最も適切であるというような意見が、非常に多いようであります。こういう点についてはどんな御意見でありましようか。
  125. 天野公義

    天野国務大臣 ただいまも申し上げたことでございますが、市町村單位までということは少し無理ではないか。しかしその上をどこまでにするかということについては、今研究してもらつてつて、まだ結論に達しておりませんが、御意見のようなことは、十分に考えに入れたいと思つております。
  126. 今井耕

    ○今井委員 次に現在教育公務員給與準則について御研究のようでありまして、今国会に法案が出るようなことに聞いておるのでありますが、いろいろ承りますと、小、中学校と高等学校を二本建にするというような意見が非常に強い。ことにその中で今、高等学校の校長だけを別にするというようなお考えが、非常に濃厚であるということも聞いておるのでありますが、こういう点について、どういうようなお考えを持つておいでになりますか、この点お尋ねしたいと思います。
  127. 天野公義

    天野国務大臣 この問題はやかましく言われますが、要するに学歴とか、あるいは資格とか、勤続年数とか、そういうものを基礎にして、そうして給與体系を考えればよいのだという考え方です。
  128. 今井耕

    ○今井委員 ただいまの御意見は非常にけつこうだと思うのでありまして、ただそういうような職域だけによつて差をつけることになると、いろいろ学歴もひとしいし経験年数もひとしいものが、職域だけで区別されるということになつて来ると、非常な問題が起つて来る。こういう点から考えまして、特に今後こういうような案をつくるときに、十分実情をお考えになつておつくり願いたいということを、特に希望するわけであります。いろいろありますが、次の方もおられますから私はこれだけにしておきます。
  129. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 成田君より関連質疑の申出がありますので、これを許します。成田君。
  130. 成田知巳

    成田委員 ただいまの今井さんの質問に関連してお尋ねしますが、教育委員の選任方法は公選制度が望ましい、しかし現在の方法は弊害があるから、これを考慮中である、こういう答弁があつたと思うのでありますが、それに関連しまして、伝えるところによりますと、ことし行われる教育委員の選挙を一年延期する、こういうような説も伝わつておりますが、そういう臨時特例の法律をお出しになる意思はないか、御答弁願いたいと思います。
  131. 天野公義

    天野国務大臣 それらの点については、まだ何も結論に到達しておりませんです。
  132. 成田知巳

    成田委員 もう一点お尋ねしたいのでございますが、教育公務員の選挙活動の問題なのです。御承知のように、現在勤務箇所以外の地域における選挙活動は認められておるのですが、最近政府の方で全面的に教員の政治活動を禁止する、こういうような御方針になつておるということを承つたのでありますが、そういうことは文部大臣として、はたしてどうお考えになつておるか。
  133. 天野公義

    天野国務大臣 政府部内にそういう意見があるということを聞いたこともございませんし、私はまだそういう考えをいたしたこともございませんです。
  134. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 風早八十二君。
  135. 風早八十二

    ○風早委員 今日は特に厚生大臣としての御答弁を願いたいと思いまして、厚生予算についていろいろお尋ねしたいのでありますが、それにつきまして、今は大戰後六箇年にも七箇年にもなんなんとするのでありますが、その間の国民生活状態につきまして、大臣の認識並びに御所見を、まず承りたいと思うのです。そこでこれは少くも大臣は、私がこの方面において、今まで相当関心を持つて来た人間であるということは、ほかの人はとにかくとして、大臣はよく御承知のはずでありまして、今日はひとつ真剣に御答弁を煩わしたいと思うのです。  まず戰争犠牲者の問題でありますが、これは政府においては、そのうち特に軍人、軍属、遺家族の一部に対して、援護資金という形で特定の措置をとられておることは、かねがね本委員会でも問題になつた通りであります。しかしながら問題は、戰争犠牲者という場合に、非常に範囲が広いのでありまして、これら直接間接戰争の犠牲になつて、今日までいまだにその状況を回復されておらないという人たちは、相当に数も多いわけであります。おそらく国民全部がそれに近いものであるとすら考えられるわけであります。私はまず最近の生活保護者の実態について、どういう認識を持つておられるか、これに対してはどういう御所見であるか、これをまずお尋ねしたいのであります。
  136. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 生活保護法の実施につきましては、自分で働いて生活のできない者につきましては、いわゆる最低生活の保障というものをやつておりまして、その限度は、物価その他の上昇に伴いまして、漸次それに合せて来ておるつもりでございます。
  137. 風早八十二

    ○風早委員 大体の数字でよろしいが、今日要保護者がどのくらいであり、実際これらがどういう状況にあるか、今あなたの言われるその適当な保護というのはどういう内容であるか、これをひとつ答え願いたいと思います。
  138. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今数字は私持合せておりませんが、生活保護法の内容は、生活費、療養費あるいは生業扶助その他必要なものを掲げております。
  139. 風早八十二

    ○風早委員 生活保護法に要する本年度の経費というものについて、これで厚生大臣は満足すべきもの、あるいはやむを得ざるものと考えておられるか。
  140. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 生活保護費は前年度が二百十三億でございましたが、来年度は二百四十八億で、三十五億増加をいたしております。現在の財政上では、この程度でやむを得ないと考えております。
  141. 風早八十二

    ○風早委員 特にその中で生活扶助費と言われるものは、どういうことになつていますか。
  142. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今ちよつと数字を持合せておりませんから、あとでお示しをいたします。
  143. 風早八十二

    ○風早委員 ふえたと言われる数字はよく覚えていますが、減つた方の数字はお持合せがない。二十六年は百十五億であるのが、二十七年には九十八億に減つておる、こういうわけだと思います。実は三十五億ふえており、今年は生活保護法に要する経費全体が二百四十八億になつておると言われますが、これは一つは、物価の値上げに応じて、従来の五人家族で六千二百三十一円が七千円にスライドされた、こういうことが一つあると思います。さらに医療の單価が一割五分の引上げになつております。こういうことで、実質的にこの予算ではかえつて保護の打切り、あるいは保護費の制限ということが必至になるのではないかと思うのでありますが、その点はどうです。
  144. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話通り物価の値上りあるいは医療費の値上り等をくんで、先ほど申しました三十五億の値上りであります。別に減額をしておるつもりはございません。
  145. 風早八十二

    ○風早委員 生活扶助費そのものが下つておるというところにも、その一端が現われておりますが、事実本年度のこの予算は、すでにこうやつて二十六年度に比べて実質も今申したようなわけであるし、また実額も実際の生活扶助費としてはかえつてつておる、こういうことだと思うのです。これに対して厚生大臣として、こういう状態は一体どこからどうしてこういうふうになつて来るのか。あなたは厚生大臣として責任ある方でありますから、この生活扶助費の削減という、今まさに時代に逆行するこの処置に対して、一体どういうお考えであり、かつ努力を考えておられるか。
  146. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたように、われわれは減額あるいは削減をした覚えはございません。必要なるものを必要に掲げ、しかも物価の値上りあるいは療養費の値上りに対しましては、それに相応した予算の増額をはかつております。
  147. 風早八十二

    ○風早委員 そういう官僚式な御答弁は、いささか通用しないと思うのであります。問題は、しからば実際に今日国民生活、ことにこういう困窮者の生活がどうなつておるか。だから私はあなたにその認識いかんを聞いておるわけです。この間もPD工場の内部の労働者のあの悲惨なる状態、実に残虐な圧制を受けておる状態に対して、あなたはそれは知らない、またこれでよろしいというようなお話なのです。しかしながらまた今日、PD工場の中へは入つたこともおありにならないかもしれぬが、少くも厚生大臣として、一般の困窮状態というものに対しては、十分な認識がなければならぬと思うのでありますが、その前提が認められなければ、これは話にならぬわけです。あなたは予算を満足すべきものとおつしやる。私はどうしても良心的なお答えとは考えられない。大蔵大臣と相当やつてみたけれども、結局だめだつたと言われるなら、まだ話はわかる。今生活保護者の生活保護を受ける理由というものを私どもが調べてみますと、やはり生活中心者が病気になつておるのが二七%以上ある。生活中心者の收入が減少しておる。またその家族が病気しておる。こういうふうにいずれも病気と收入減少になつておりますが、今日はみなほとんど半失業状態であつて、壁一重ですぐ食つて行かれない、もう死ななければならぬというような状況にあるわけです。そういう原因がどこにあるか。これはもう少し真剣な責任のある御答弁を願いたい。どんな人が一体受けておるか。これは人にわけてみますと、未亡人が三三・三%で一番多いこともきわめて注目に値するわけです。今資料をごらんになるのもけつこうですが、こういうことは身にしみて頭になくちやならぬはずである。老人が一〇・二%、身体障害者が七・三%、子供世帶が一・九九%、まつたくこれは一見して戰争の犠牲者であるということが歴然たる状態なのです。こういう痕跡歴然たる状態に対して、あなた方はわずか純粋の軍人軍属の遺家族に対して涙金、しかもそれは大蔵大臣の言によれば、また新聞に出ておつたところでありますから、否定されるかしらぬが、五年すえ置きというようなことが出ておる。自由党の有田二郎委員質問に対して、公債までも五年すえ置きというような線までも言明されておる。こういうインチキなものなんです。つまりその政策の貧困というものをごまかすために、困つておるという事実そのものを否定されるお考えであるのか。これをひとつはつきりさせてもらいたい。
  148. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほど申しましたように、困つてほんとうに生活のできない方々に対しては、生活保護法によつて最低生活の保障をいたしております。ただ国力の許す限り、漸次それがよくなつて行くべきことは、われわれといえども決して希望しないことはありません。しかしながら国力を考えないで、ただ生活に困つているからといつて、幾らでも予算を計上すればいいというわけには参らないのであります。一方国民負担というものも軽減しなければなりません。一般国民負担を増し、説金をうんととつて、そうして困つた方だけに厚くすると言つても、それは国力全体を見なければならぬ問題でありまするから、われわれがしばしば言いますように、戰争犠牲者に対しても決して、われわれはこれでもつて十分とは考えない。しかし国力の充実をまつて漸次内容の改善をいたしたい、かように言つておる次第であります。
  149. 風早八十二

    ○風早委員 まことにけつこうなお話です。この国力を顧みないで、今日どんどんと軍事的な予算が組まれて行く。国力は顧みないで、国民が困つておるその中から税金をとつて、そうしてろくでもないところへ使つて行く。そういうことは確かによくないことです。しかしながらこれはこの国力の充実そのものの問題なんです。わが民族の興亡というのは、こういう戰争犠牲者をまずいかに救い上げ、これを健全なる民族に仕立て上げて行くかというところにあるわけであります。そこから出発するのです。その点を抜きにして、あなたは国力をとんでもないところへ蕩盡しようとしておる。まあこの問題は全部に関係する問題でありますから、ここではこの程度で省いておきます。  さらに私は今日人身売買が非常に横行しておるというこの事実について、どういうふうに一体これを認識されており、かつどういう手当をされようとしておるか、それを伺いたい。
  150. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほどの御質問なり御意見の中に、国の防衛の方に金をつぎ込んでおるからというお話であります。これは先般も大蔵大臣が申しましたように、やはり国の自衛ということはこれは当然考えなければならぬことであります。国の治安の点において心配がなければ、何もすき好んで防衛に力を入れる必要はございません。しかし今日の状態においてその不安があれば、それに対して善処すべきことは当然であります。  なお次に人身売買の問題でございますが、これらにつきましては兒童福祉法あるいはその他の法規によつて取締りをいたし、またこれを事前に防止するの方法は、できるだけ盡しておるつもりであります。
  151. 風早八十二

    ○風早委員 なるべくひとつ質問答えていただきたいのです。これでいろいろ理論闘争というようなことは、これはまたゆつくりやりたいと思うのです。また今の防衛というようなことをそういうふうにりくつを言われますと、これは幾らでも問題はある。この間の予算の公聴会で皆さん方が推薦された神近市子女史は何と言つたか。今日日本の民族の防衛は軍事費に金を出すことじやないのだ。これは今の国民の窮乏、これを建て直して行くこと自身が何よりも日本に必要な防衛であり、また何よりも強力な防衛である。それは社会保障制度の確立以外にはないのだと、はつきり言つているじやないですか。これに対して自由党はみんな粛として聞かざるを得なかつた。そういうようなあれに少しはあなたも耳を傾けなければならぬ。この人身売買の実情を私は聞いておるのだが、これについてはお答えがないのだ。少くも人身売買について摘発された者の数ぐらいは言つていただきたい。
  152. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま数字を持ち合わせておりませんから、あとでお知らせをいたします。
  153. 風早八十二

    ○風早委員 これはあべこべでありまして、政府は何にも資料を持ち合わせておらぬ。また頭にも入つておらぬ。そうして議員が一々これを数えながら質問しなければならぬ。まことにこれはこつけいしごくな話なのであります。今日人身売買というものはますますふえております。二十四年度では、これは第一摘発されたものの数だけでも六百七十四人というわけでありますが、これは摘発されたものだけである。実際に人身売買というのは、ことにこちらから東へかけて、関東から東北の農村と都市との関係で、非常に今これが横行しておるわけです。これはもう周知の事実であります。二十四年度におきましてはそのうち特に農家が六五%、家事使用人が八%、工員が八%になつておりますが、二十五年度になりますと、今度はこれは統計の、つまり項目のとり方が政府の統計でありますから、かわつたのかもしれませんが、それによると、売春婦が五五%、農家が一七%になつておる。女子が男子の五倍半にも上つておる。いずれもこれは売春婦として使われておる。二十六年度におきましても売春婦は五六%を占めており、ふえております。こういうようなことが政府の統計によつても示されておるわけであります。実際はそれどころじやないということです。これはわれわれもいろいろその実情が、実にもう想像以上だということを考えざるを得ない。その理由はみんな貧困のためです。ほとんど貧困のためです。だまされたというのはわずかです。ですからこれはもうやむを得ずこういうことをやつているのです。その前借金なんかを見ても最低四百円です。接客婦の場合には一万円から一万五千円、こういうわけです。こういうふうにしてこれをまた転売々々して、前借金を何度もかせぐというために、十八歳の少女が半年かに十二回も特飲店をくらがえさせられておる。これは東京朝日新聞の昨年の十二月十五日にも出ておりましたが、こういつたような実情があるわけであります。これに対して兒童局——これは特に人身売買は兒童局に限つたことではありませんが、子供にも関係しておりますから聞くのでありますが、兒童局の予算というものについて、これまたどういうふうにお考えになりますか。たいへんに今度は減つておるわけです。これでよろしいか。少し責任のある答弁を願いたいと思います。
  154. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 兒童福祉についての予算は、前年より若干減つております。それは施設費において毎年々々施設の増設をはかつて参りましたが、来年度からは今までほど増設をしなくてもよかろうというので、若干その増設を手控えただけであります。別に即定の経費を削減したのではございません。
  155. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 風早君に申し上げますが、お申合せの時間でありますので、あと一問で……。
  156. 風早八十二

    ○風早委員 なるべくはしよりますが、一問ということはちよつと困ります。
  157. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 別の機会がありますから、今日はそのようにお願いいたします。
  158. 風早八十二

    ○風早委員 はしよつてやりますが、あまりでたらめな答弁をしないでもらいたい。この兒童局につきましては二割八分も減つておる。昨年は九億のものが今度は六億になつておるのですから、これはちよつと減つておるというくらいな程度じやないのです。それも設備費はもう前に出したから今度はいらなくなつた。一見もつともらしいが、実はでたらめなんだ。これによりまして保育関係、母子寮というものの設備費は三割四分も減らされ、実に母子寮は新しく建つはおろか、今までの母子寮と申しましても、事実設備費といい、運転費といい、そういうことは実際の運用において、はつきりしておるわけではないのであります。総額は減つておる。それから保育所の給食費が九千二百万円全部削減されておるわけであります。両親の負担で給食を続けなければならぬ、こういうふうになつて来ておる。こういうふうなことは兒童局に限らない。結核対策費についても、あるいは国民健康保險の問題についてもいろいろありますが、今時間がないと言われますから、私は労働大臣に対して一点だけ最後に質問して、そのお答えに対して私が最後に一言だけ言わせてもらう。そのことをひとつ委員長に御了解を得まして、質問いたしたいと思います。  それでこういう広い意味で戰争の犠牲というものが、今日少しも償われておらないという実情があり、しかもこれに対して政府は非常にその手を打つておらない。しかし実際困つたつたといいますが、その困らせる原因があるわけであります。つまり今日の生活困窮者というのは、これはただ封建時代でありますとか、資本主義前の時代における場合と違いまして、今日ではどこまでもやはり資本と労働との関係で、その労働の過程からはみ出されるという関係で実はできておるわけであります。従つて私はこの労働の問題が、実はこの国民の広汎な困窮状態の、そのもう一つのものであると考えるわけであります。その労働の点につきまして、これもまた数字は持ち合せないと言われるかもしれないが、失業者の数でありますとか、あるいはまた賃金の今日の状態でありますとか、こういうふうなものについて、ひとつ認識と御所見を承りたいわけです。ことに賃金については、これはまたあらためて大蔵大臣と両方にお聞きしたいのでありますが、今回の予算においては、むろん賃金は人事院の勧告を無視した線ですえ置きにされておるのです。しかも人事院は、今度の国会中この改訂を出す意思はないということを、すでに今日表明しておる。しかるに片一方また電気料金はすでに東京では二割九分、大阪では三割二分も上つて行くという状態である。またこの電力料金を機軸にしまして、次から次に一まわり各日用必需品物価が上らざるを得ないわけです。従つて普通でありましても、人事院は五%の物価値上りに対しては、必ず改訂をしなければならぬということになつているはずであるその人事院が、一方ではすえ置きだということをいう。しかも今日では物価はおかまいなしに上げられる政策が、政府側から容認せられている、こういう状態です。これに対して結局そういうところから低賃金で押えられ、また首切りが出、それが生活困窮者をますますふやして行くという原因になつているわけでありまして、その点について、あなたは幸いに労働大臣も兼ねておられるから、この両方を総合して一体こういうことでよろしいかどうか、これについて御答弁を願いたいと思う。
  159. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 先ほどの件について先に申し上げておきます。兒童福祉についての予算が三億ほど減つておりますが、その点は先ほど申しましたように、保育所は毎年たくさん増設をして来ましたけれども、今までのような率で増設をする必要はないということで、若干減つただけであります。兒童福祉自体の内容を減らしたわけではございません。なお給食費が減つておりますが、これは学校の給食と同じように、農林省予算に組まれているからであります。  なお失業者の件でございますが、失業者の数は漸次減少しつつあります。なお賃金の点でございますが、賃金の点も実質賃金は漸次上昇しつつございます。
  160. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 風見君に発言をお許ししますが、今度は簡潔にお願いいたします。
  161. 風早八十二

    ○風早委員 どうも一つ一つ間違つた御答弁をされる。またごまかした答弁をされるので……。  失業者の点については、今一番繁昌していると言われる、政府資金が一番出ると言われる軍需工業においても、今日大量の首切りが事実東日本重工その他に出ているのはどういうわけかということも、また質問を留保しておきます。ましてや一般の失業というものは、目の前でどんどんふえておるわけでありまして、これも留保しておきます。  賃金については、今日少くとも政府でも認めている公式機関である人事院の勧告の線を割つてつて、実質賃金が上つているとはどういうことです。これはまつた責任転嫁もはなはだしい。結局戰争の犠牲者、また六年以上の占領制度、この二つが私は結局問題の根本原因であると思います。もう二度と再び戰争の犠牲に会うのはごめんだというのが、ここから出て来る結論だと思います。また占領制度というものがこの状態を招いておる。われわれは占領制度を一刻も早く撤廃させなければならぬ。おそらくそういう結論にならざるを得ないと思う。  最後にこの点について結局吉田内閣の施策は、労働者や一般国民の窮乏に対しては、ますますこれを犠牲にすることによつてのみ行い得るような政策である。(「ノーノー」)こういうことが事実この予算の面でもはつきり出て来ている。このことを私は申し上げて、なお質問は留保しておきます。
  162. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 この機会に昨日留保になつておりました石野君の関連質問を、一問に限りお許しいたします。
  163. 石野久男

    ○石野委員 ここから関連して質問いたします。今、風早氏の質問にもありましたように、労働條件あるいは一般生活事情等が、非常に悪くなつておると思うのでありますが、四、五の点について御質問いたします。  第一番には、先ほど売春婦の問題が出ておりますが、最近立川地区における売春関係のものは約三千二、三百名に及ぶということが、私どもの最近の調査によりましてはつきりしておるのであります。これらの人々は、かせぎをする人になると、一日に八千円ぐらいのかせぎをする人がいるそうです。しかしこのような人は、おそらく四年とからだは持たないだろうと言われております。そういう人々が全国に非常に多い。ところがこれらの人々が国際收支上の外貨獲得のために果しておる役割は非常に大きくて、いわゆる貿易收入の少くとも五分の一ないし六分の一は、これらの人々に負つているだろうということが言われております。そのためにいわゆる金融機関等も非常に重要視しておる。こういう観点から取締りが非常になされていない状態に置かれておる。これは非常に労働観の上から行きましても、好ましいことではないと思うのでございますが、これらの者に対する吉武厚生大臣、及び労働大臣の観点からする今後の対策なり、何なりというものについての御所見というものを、まず第一点としてお聞きしたい。  それから第二点としては、行政協定が今進行中でありますが、ここで進駐單関係労組の諸君の身分の問題は非常に重要でございまして、進駐軍労組の諸君は、行政協定が行われた後における自分たちの身分が、治外法権的な形において制約されるのではないかということを、非常に心配しております。この点についての労働行政の上からする、特に吉武国務大臣の確固たる、日本人民としてのこれらの労務者を、どういうふうにお取扱いになる所存であるかということについての所見を、第二点として聞きたい。  第三点は、同じく労働事情でございまするが、特に結核対策等につきましては、ある程度のものは予算等も組まれておりますけれども、金属鉱山労働組合等に対する珪肺の問題については、非常になおざりになつている面があります。他面この珪肺の脅威というものは、全労働者少くとも鉱山労働者に対しては、非常に大きな脅威になつているのでございます。これに対して予算上の措置はあまり十分なものも出ておりません。これに対して所管大臣としてはどういうふうに考えておられるか。また珪肺法等は、最近関連する労働者の中からも、早急に設定すべきだというような意向もありまするが、これに対して政府はどういうふうに考えておられるか。これが第三点。  第四点としましては、本年度の食糧事情が非常に急迫して来ているために、特に自由労務者の人々は、加配米が少くなるのではないかということを非常に心配している。これは労働者の生活事情を苦しくさせるという、非常に重要な問題でございますが、この加配米を今日以降減額しないようにする所存がおありになるか。またそういうような場合に対して、所管大臣としては農林省等との折衝をどのようになさる御所存であるか。以上四点について質問いたします。
  164. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 第一点の売春婦の増加するということにつきましては、私もはなはだ遺憾に存じておる次第であります。  第二の行政協定に織り込まれる進駐軍労務の問題でありますが、この関係につきましては目下折衝中でございますけれども、われわれといたしましては、国内法を適用すべきものであると目下折衝中でございます。また向う側も国内法は尊重して行く意向のようであります。  第三点の珪肺の問題でございまするが、これは御指摘のごとくまことに気の毒な病気でございまして、われわれとしてはできるだけ予防をすると同時に、治療に努めたいと思つております。現在労災の方で鬼怒川に療養所を設けて療養に努めておりますると同時に、来年度からはもう一箇所また療養所を増設しようと考えております。  次に第四点の労務加配の問題でございまするが、これは目下極力供出を急いでおります。供出が思うように参りますれば、もちろん加配米は存続して行くつもりであります。
  165. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 成田君に発言を許します。成田知巳君。
  166. 成田知巳

    成田委員 與えられた時間は二十分でございますから、二、三点要点だけをお尋ねしておきたいと思います。  先ほど風早委員の、防衛費の増強が結局国内費を圧迫する、こういう質問に対しまして、そうじやない、社会不安があれば防衛費を増強する必要がある、こういう御答弁がありましたが、問題はそうではなくて、やはり国内不安、社会不安を起さないような政治をすることが必要だと思う。こういう点で、失業対策費の問題についてお尋ねしたいのですが、昨年度の失業対策の日雇い諸費は七十七億五千万円、今年はこれが七十六億に減つております。約一億五千万円の減少になつております。現在日雇い労務者の問題が大きな社会問題になつているのでありまして、労働大臣御存じの通り金額において減つておりますし、また生計費騰貴という点から考えましたならば、実質的に大幅な予算の削減だと思います。これに対して失業者が漸次減つて行くだろうという答弁だけでは、私は満足できないのでありますが、現在顕在、潜在失業者を含めまして、失業者は大体どのくらいとお思いになつておりますか。またこの予算を減らしたことは、失業者の減少に基いたのだというお考えであるとするならば、どの程度の減少を見込んでいらつしやるか、お考えを承りたい。
  167. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 今ちよつと失業者の数の資料を持合せておりませんから、あとでお示しいたしますが、大体失業者は漸次減少しております。それから失業対策費につきましては、今御指摘のように約一億程度減じておりまするから、大体前年度とほとんど同じでありまして、それは実績を見まして、大体失業者につきましては一箇月二十日ないし二十一日くらいは、これで確保を十分できる見込みでいるのであります。失業者の数字につきましては、今調べましてお答えいたします。
  168. 成田知巳

    成田委員 この予算説明書によりますと、失業対策費の吸收人員を昨年度は十六万七千七百四十八名、今年は十四万五千、約二万二千の減少なんですが、これほど大幅の減少を見込んで、予算をお組みになつてさしつかえないかどうか承りたい。
  169. 河野一之

    ○河野(一)政府委員 現在の実情におきましては、相当失業者の数が減つてつているのであります。失業対策事業費もそれに応じて、前年より一億以上減つているのでありますが、これは最近の実績に対しまして、大体その上にさらに一割五分程度の水増しを見てやつているわけであります。従いましてそのような意味において、この数字の減りましたのは、失業者の数の減少に基くものでありまして、事業自体としては決してこれで不足を来すということはないと思います。
  170. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 申し上げますが、失業者は二十五年の七月が四十八万でございましたのが、昨年の七月には三十九万に減じまして、八月は三十五万になり、九月は三十一万、こういうふうにだんだん減少しているのであります。
  171. 成田知巳

    成田委員 この四十五万という数字政府の調べだろうと思いますが、顕在失業者だけを言つているのですか。潜在失業者というものはもちろん入つておらぬでしよう。
  172. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 さようでございます。
  173. 成田知巳

    成田委員 次にお尋ねしたいのですが、日雇い労務者に現在失業保險が適用されている。これは一歩前進だと思います。この日雇い労務者に健康保險の適用を考えるのは当然じやないかと思いますが、たとい失業保險の適用がありましても、一旦病気になりました場合に、日雇い労務者は医療費に非常に苦しんでいる。当然社会保障の立場から、健康保險法の適用を労働省としては考えるべきだと思いますが、現在どのような御方針でございますか。
  174. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 やはり健康保險の建前といたしまして、雇用関係にある者に限らざるを得ないと思います。
  175. 成田知巳

    成田委員 日雇い労務者といえども、市の公共事業その他と雇用関係があるから、働いて賃金をもらつているのでしよう。雇用関係がないということは言えないのじやないか。この問題はもし雇用関係を問題にされますならば、失業保險の関係も問題だと思いますが、雇用関係だけで健康保險を適用しないということは、御答弁にならないじやありませんか。
  176. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 雇用関係にあつて初めて事業主側から負担をし、また労務者側から負担をいたしまして、健康保險というものは成り立つているのであります。失業いたしますれば雇用者側の関係というものはなくなるわけでありますから、当然健康保險というものは雇用関係を前提とするものであります。
  177. 成田知巳

    成田委員 たとえば会社との雇用関係が切れて、失業になつたということは当然なのでありますが、市その他の公共事業との雇用関係というものは出て来るわけです。失業対策事業に包含される以上は……。そういたしますと、日雇い労務者として健康保險を当然考えるべきではないか、こう考えるのですが……。
  178. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいまの御質問の趣旨が多少違つていたと思つたのですが、失業者には適用がないと言つたわけで、その失業者が雇用関係に立てばまたあらためて考える。ただ失業救済でやつております事業に雇用されるものは、臨時的に個々に行われているだけであります。やはり健康保險というものは、一定の期間継続的に雇用関係がございませんければ、保險制度は成り立たないと思います。
  179. 成田知巳

    成田委員 継続的な雇用関係ができれば、失業対策事業に雇われている者も健康保險の適用を考える、こういうお話なんです。労働大臣は非常に臨時的にお考えになつておりますが、最近の失業状態から行きまして、現在の日雇い労務者というのは半ば恒久的になつているものが多いのです。恒久的になれば、今の御答弁から行きましたならば、当然健康保險法の適用を考えるということになりますが、こう考えてよろしゆうございますか。
  180. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 失業救済事業に雇われます失業者は、性質上臨時的なものであります。いつも引続いて行くという建前になつていないのでありますから、これを取入れるということはできないと思います。
  181. 成田知巳

    成田委員 それは性質というものと現在の実態というものに対する認識の相違なんで、これ以上申し上げる必要はないと思います。  次にお尋ねいたしたいのは、今度の税制改革で、政府は生命保險料の基礎控除額を二千円から四千円に引上げておりますが、普通の生命保險料さえも控除されるならば、当然社会保險の保險料もまた所得から控除すべきものだと思うのですが、政府はどういう方針を持つておられますか。
  182. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 この点は実は検討いたしましたが、生命保險料についての控除は、貯蓄奨励の意味において行われるのでありまするから、それで社会保險の保險料とその趣旨が違うということで、一応この問題は保留になつたのでありますが、私どもも御趣旨の線にはできるだけ沿うて行きたいとは思つております。
  183. 成田知巳

    成田委員 そこでこれは法務総裁もおいでになると、労働大臣と両方に質問したいと思つたのですが、労働大臣も新聞紙上でごらんになつたと思いますが、最近の毎日、朝日、産業新聞に、松江の日赤病院と高松の日赤病院で、人権蹂躙問題が出ておつたわけです。松江も日を同じゆうして問題になつておるのでありまして、これは最近の政府の人権蹂躙の政治の方向というものが、こういうものを現わして来た、こういうように私は考えておるのです。十二日の毎日新聞でございますが、すでにもう法務局も調査に乗り出す。松江日赤退院要求さらに判明、こういう大きな見出しで書いてある。その内容は、入院料の値上げ反対の運動を入院患者がやりましたところ、それに関連した患者数名が強制的に退院させられた。これが法務局の関知するところとなりまして、現在調査しているそうでありますが、法務局というのは、特審局その他人権蹂躙の方向にばかり動いておるかというと、こういう人権擁護の仕事もするらしいのでありますが、これが日赤の松江事件なんです。それから高松の日赤で、これまた人権問題になつておるのですが、最近看護婦が婚約いたしましたところ、看護婦は結婚することは御法度であるというので退職を強要された。さらにこの問題を追究して行きますと、過去にも四件ばかりそういう問題があつた。單にそれだけではなしに、文書の秘密その他も看護婦長その他が侵しておる、こういう事実が判明しまして、この問題も法務局が憲法違反の問題として取上げております。これは法務総裁にもお尋ねしたいと思うのですが、厚生大臣としてこういう問題についていかなる御所見を持つておるか。すでにもう新聞紙上で御承知かと思いますが、御意見を承りたいと思います。
  184. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 これは私取調べてからお答え申し上げます。
  185. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 この際お諮りいたします。本委員会において近く分科会を設置したいと存じます。つきましては分科の区分、主査の選定及び分科委員の配置等につきましては、先例により委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔一異議なし」と呼ぶ者あり〕
  186. 塚田十一郎

    ○塚田委員長 御異議なければその通り決します。  なお御報告申し上げます。昨日川島委員より要求されました警察予備隊の発注等に関する件であります。これは委員長あてに警察予備隊本部長官から次のように報告いたして参つております。要点だけを申し上げます。  一、南方向け天幕を発注した事実はない。  二、天幕調達計画といたしまして、携帶天幕約四万箇の調達を研究中であるが、その規格及び見積り価格は未決定である。  三、帝国製麻株式会社及び日本繊維工業株式会社の重役及び顧問の名前は、昭和二十七年度版日本繊維年鑑により調査したところでは次の通りである。帝国製麻株式会社は、社長山田酉蔵君外三常務、五取締役、二監査役、日本繊維工業株式会社重役は、社長坂内義雄君外三常務、六取締役、三監査役、もちろんその中には池田大蔵大臣の名前も大橋国務大臣の名前も見当りません。  なお補足的に委員長において調査いたしましたところによりますと、帝国製麻株式会社には顧問一名、相談役一名、顧問は高橋劉三という方であります。相談役は増田外十郎という方であります。それから日本繊維工業株式会社には顧問も相談役もありません。  それからなおその他について若干申し上げます。天幕の材料といたしましては、昔は陸軍では亜麻、すなわち麻が大部分でありましたが、海軍の方では苧麻、すなわちラミーを使つていたようであります。両者のうちいずれがよいかということでありますが、使つたものはおのおの自分の使つたものがよいと主張しているので、両者の比較はまだ判然といたしておりません。しかしてこの両種類の材料の大メーカーはおのおの数社ありますが、たいていはどちらか一方しかつくつていませんから、亜麻を選ぶか苧麻を選ぶかによつて、どちらか一方がほとんど独占的に注文を受ける結果になります。大橋君は十日ほど前に増原長官からこの問題について、亜麻にしようか、苧麻にしようかという相談を受けたことがあるそうであります。そのとき大橋君は、どちらが耐久力があるかと長官に聞いたところ、長官は、昔は陸軍では亜麻、海軍の一部は苧麻を使つていたが、使つたものはどちらも自分の使つた方がよいと言つておるので、その点ははつきりわからない。値段はと聞いたところ、これまた競争しておるから、どちらとも言えぬということであつたそうであります。そこで、それなら亜麻、苧麻の区別を度外視して入札を行い、結果によつて安い方を九割、はずれた方の種類については、落札価格またはこれに近い価格で、そのうちの安い値段を入れたものに、試験用として一割を契約したらよかろうと、指示したとのことがあるとのことであります。そこで入札はどうなつたかと調べましたところ、警察予備隊においては、大橋国務大臣の指示方針で入札しようと思つていたやさき、その後の調査で、亜麻は大部分国産原料で、二割以内がベルギー及び南方から輸入される。苧麻は一、二割が内地でできるが、他の大部分は中国から輸入されることがわかつた。中国からは現在直接わが国への正規の輸入がないから、香港から中継貿易で入つていると思われる。そのような事情でありますので、なおまた入札には付しておらないということが判明いたしたのであります。以上御報告申し上げます。  なお本件に関しましては、先ほどの理事会の申合せで、本日は発言を行わないという申合せでありますから、本日の会議はこの程度にとどめまして、明後十八日は午前十時より委員会を開会して、質疑を継続することにいたします。  これにて散会いたします。     午後四時四十分散会