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1952-02-09 第13回国会 衆議院 予算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十七年二月九日(土曜日)     午前十時十五分開議  出席委員    委員長 塚田十一郎君    理事 有田 二郎君 理事 上林山榮吉君    理事 小峯 柳多君 理事 苫米地英俊君    理事 西村 久之君       淺利 三朗君    天野 公義君       井手 光治君    江崎 真澄君       江花  靜君    小川原政信君       尾崎 末吉君   小野瀬忠兵衞君       角田 幸吉君    甲木  保君       北澤 直吉君    栗山長次郎君       志田 義信君    島村 一郎君       庄司 一郎君    田口長治郎君       田中 角榮君    玉置  實君       南  好雄君    宮幡  靖君       今井  耕君    中曽根康弘君       藤田 義光君    西村 榮一君       水谷長三郎君    風早八十二君       山口 武秀君    横田甚太郎君       稻村 順三君    成田 知巳君       小平  忠君    世耕 弘一君       石野 久男君    小林  進君  出席国務大臣         法 務 総 裁 木村篤太郎君         大 蔵 大 臣 池田 勇人君         通商産業大臣  高橋龍太郎君         労 働 大 臣         厚 生 大 臣 吉武 惠市君         国 務 大 臣 大橋 武夫君         国 務 大 臣 岡崎 勝男君  出席政府委員         大蔵政務次官  西村 直己君         大蔵事務官         (主計局長)  河野 一之君         大蔵事務官         (主税局長)  平田敬一郎君         経済安定事務官         (総裁官房長) 平井富三郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁         日本銀行政策委         員会議長)   一萬田尚登君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君 二月九日  委員天野公義君辞任につき、その補欠として田  中角榮君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  昭和二十七年度一般会計予算  昭和二十七年度特別会計予算  昭和二十七年度政府関係機関予算     ―――――――――――――
  2. 塚田十一郎

    塚田委員長 会議を開きます。  本予算の各案を議題に供します。これより質議を継続いたします。なお本日は参考人として日本銀行政策委員会議長日本銀行総裁萬田尚登君の御出席願つておりますので、質疑の進行によりましては、参考人意見も聴取することといたしたいと存じますから、御了承願います。それでは質疑に入ります。有田二郎君。
  3. 有田二郎

    有田(二)委員 一万田さんがお忙しいので、厚生大臣にお聞きする点は一点だけにして、この次の機会に譲りたいと思います。まず厚生大臣にお尋ねしたい点は、池田大蔵大臣が非常にきらつておるパチンコが、今日池田君の意図に反して、全国的に蔓延しております。パチンコのいい悪いという論議は別といたしまして、今日。パチンコ設備において非常に遺憾な点があるのであります。すなわち最近大腸カタルなり赤痢なりが、非常にはやつて参りまして、特にパチンコからはやつて来るということを私ども仄聞いたしておるのであります。パチンコのお店において消毒薬設備あるいは手を洗う設備、かようなものが当然あるべきであるのにかかわらず、全国的にパチンコ屋にこれらの消毒設備がない。そのために今日大腸カタル赤痢が蔓延し、さらにそういう伝染病のはやる時期が近く到来するわけでありまするし、非常に私はこの点を懸念いたしておるのであります。厚生大臣としての御所見を承りたいと思います。
  4. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいま有田さんの御質問の点でございますが、御指摘を受けますると、なるほどごもつともだと存じます。多くの人が出入りをいたしまして、その手で器具を次々にさわるということになりますと、おそらくそういうふうな心配があろうかと思いますので、この点はさつそく十分取調べると同時に、それぞれ適切なる指示をいたそうかと思つております。御了承いただきたいと思います。
  5. 有田二郎

    有田(二)委員 厚生大臣の御答弁で満足したのでありますが、ひとつ拙速をたつとんで、すみやかに全国的に処置をおとりになることを切望しまして、厚生大臣への質問を終る次第であります。  次に一万田さんにお尋ねいたしたいことは、オーバーローン長期金融の問題についてでありますが、最近オーバーローン解消の問題がやかましく言われるようになりまして、先般小峯委員質問に対しまして、大蔵大臣投資銀行という構想を発表されたのであります。しかしながら、いろいろこれには問題がありまして、特に資金の面におきまして、おそらくは預金部資金から金を持つて来ない限り、非常にむずかしいのではないかということも言われておるのであります。一万田さんの御所見を承りたいと思います。
  6. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 私の考えを申し述べますが、今回長期金融機関をさらに整備しよう、これが投資銀行法だろうと思うのであります。投資銀行という名前は私は必ずしも賛成しないですけれども商業銀行長期金融機関をこの際に再建する、こういう行き方けつこうだろうと思います。またこれに基きまして、長期金融界の再建、これは債券発行になるわけでありますが、資金源をどうするかという御質問のようでありましたが、まことにごもつとものことでありまして、私ども資金源確保には非常に骨が折れる。これは新しい銀行ができた場合でありますが、非常に骨が折れる。これは今後展開されます貯蓄増強ということで、全体としての資金をふやしまして、銀行等金融債を持つていただく。この債券を持つていただくという方向に進めて参りたい。同時にまた、政府預金部資金というようなものをできるだけお貸しを願いまして、こういうことでやつて行きたいというふうに思います。
  7. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに来年度の預金部金融債引受け停止に対して、一万田さんとしての対策を伺いたいと思います。
  8. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 預金部資金の運用につきまては、私からいろいろと申し上げるのもいかがかと思いますし、これは大蔵大臣の主管に属するので、大蔵大臣とよく相談してやることが適当と存じます。
  9. 有田二郎

    有田(二)委員 長期資金源は、見返り資金減少かたがたきゆうくつ化すると考えられるが、産業設備資金をいかに確保されるおつもりであるか、また右に関して投資規制強化する御意向があるか、投資規制は現在効果的に行われておるかどうか、この点についてお伺いいたしたいのであります。
  10. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 この資金源確保は、何といいましても預貯金増大という本筋を通らなくてはなりません。従来この預貯金増大につきましては、いろいろと支障がありました。同時にまた今日日本の国力といたしまして、そうゆとりもないという点もあつたであろうと思いますが、幸いに今回はたとえば、非常に議論がありますが、政府預金利子引上げというものも実施され、こういうものを機会にして全国的に貯蓄増強の大運動を展開して、資金確保をはかつて行く、これが第一の本筋であります。そして今申しましたような長期金融機関の整備、今日では興銀あるいは開発銀行、こういう長期金融機関を通じまして、これらの債券発行により、あるいは肩がわりという方法長期資金確保して行きたい。しかし何といつて資金が不足していることに間違いはないので、日本銀行としては、なさねばならぬことがあまりにも多いのでありまして、同時に貧乏しておるという状態でありますから、資金量増大をはかりますとともに、この資金が最も有効適切に流れるように、ほんとうにいるところに、いわゆる量と質の規整というか調整を加える、これが必要であります。またこれがためには、私の考えでは、やはり金融政策だけによるということはなかなか困難であります。限界があるのであります。と申しますのは、金を借りるときに、あるいは貸すときに、いかにこれを吟味いたしましても、要するに金というものは使い道いかんによつてこそ効果が発揮されるので、金を借りて行つた使い道一本々々の金を押えて行くとすれば、金融というものは円滑に行きません。ですからどうしても金融規制につきましては限界があります。私の考えでは、根本においてはやはり経済政策というものを日本の現状に最もふさわしいように樹立させる、そうすると金融調整と相まちまして、うまく資金の流れが規整される、かように考えております。そういうふうにやつて行くことによつて、今後長期資金の調達については、あらゆる努力を払いまして、今申しましたような合理的な経済政策が樹立されるということを前提といたしますれば、私は資金確保もできると思う。またそういう方向に行けば、日本経済が安定して来ます。そこで初めて、なるほど日本経済は見通しとしてはしつかりしておる、あるいは国民経済が非常にしつかりしておるというようなところにおいて、外資の導入ということも今後に期待ができる、かように考えております。
  11. 有田二郎

    有田(二)委員 さらにお尋ねしたいのは、資本市場育成と、特に増資起債円滑化に対する対策を伺いたいと思います。
  12. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 今申しましたように、長期資金確保が非常に大事であります。私ども起債市場あるいは有価証券市場というものの育成強化をはかりたいと思います。特に今日の日本経済の弱い原因、いろいろな問題を生ずる一つの点は、すべての企業資本構成が悪い、言いかえれば、資本金が非常に小さく、非常に多くの借入金に依存しておるという状態が問題を生ずるのであります。そこでどうしても増資起債によつて資本構成強化して行かなくてはならぬ。そういう意味合いにおきまして、起債市場強化をはかることが必要であります。どういうふうにはかつて行くかといえば、これはむろんそう簡単には行かない。やはり要は全体としての資金の蓄積がうまく行き、同時にまた有価証券市場に関与しておる諸機関強化をはかる、同時にまた大衆におきましても、有価証券というものに対して十分の理解を持つていただく、また私ども日本銀行としても、株に対する取扱いについて、弊害を生じない限りにおいて便宜をはかる、というようなもろもろの方法によりまして、今後有価証券市場の健全な発達を助成したい、かように考えます。
  13. 有田二郎

    有田(二)委員 オーバーローンが、もしも大蔵大臣のいわゆる投資銀行というものによつて、漸次解消されるということになりますと、今日市中銀行なり地方銀行オーバーローンで困つておりますけれども、またオーバーローンでもうけておるということも言えると思うのでありますが、今日の銀行経営というものがオーバーローン解消によつてさしたる影響がないかどうか。もしも影響があるとするならば、今どんどん各銀行支店を設置し、大きなビルを建て、そうして非常な拡張をやつてつてちようど繊維業者がどんどん五千錘を一万錘にし、一万錘を二万錘にして、運転資金のことを考えないで、今日困つているような状態銀行に起らないとも限らないのでありますが、これに対する御所見を承りたいと思います。
  14. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 金融機関オーバーローンの問題は、私といたしますれば、日本の今日の財政経済運営の上から、好ましくはありませんが、余儀ないというように考えておるのであります。しかしこの姿は決してよろしくありません。これはできるだけ是正をしていただきたい。この是正をして行くのには、何としてもやはり日本国民が働いて、そうして汗水を流して所得をふやして行く、その所得から貯蓄をして行くという、貯蓄増大ということで根本解決しなければなりません。経済の問題に決して近道の解決はないのでありまして、働き、そうしてためるということ以外に方法はないのであります。そこで今回大いに貯蓄増強運動をやつて、まあ私の推定では、いろいろ意見はありましようが、全体としては相当巨額の、千億にも近い預貯金増大を期待し得るだろう、またそういう大きな熱意と希望を持つてつておるのであります。こういうふうに預貯金がふえて来ると、オーバーローンという事態解消して、そこに初めて正常な状態にもどり、また先ほど言いましたように、長期金融機関の確立ということによつて、今日の商業銀行長期貸出しが長期金融機関の方に移つて行くことによつて商業銀行長期金融機関との間の姿、比例、特に国際的な慣例に立つ商業銀行の姿も改善される、こういうふうにして解消して行くことができると思つております。私たちこういうものはそう短兵急にする必要は少しもないと思います。健全なる目的を目ざして、その実現の可能性が十分ある限り、何もあせることはない。オーバーローンを一朝一夕にすぐに解決をするということを考えることにおいて、技術的にただ当面をよく見せるだけでは、根本は少しも解決しない。むしろ次オーバーローンを助長するというような結果を見るのでありまして、そういう行き方は私としては今はやりたくない。あらゆる正常な努力払つて、その結果においてなおかつ解決の道がないとすれば、まあ形の上でもよろしい、ある程度の技術的の処置考えなくてはならぬと考えておりますが、今日は今こそ匿名預金というものも許されている状態であり、正常な打つべき手がたくさん残つております。今後における財政というものについても、非常に考えてもらわなくてはならぬ点が多々あるのであります。そういうふうな大きな問題がたくさん残つておるというときに、姑息なただ表面的な行き方ではいけないと私は考えております。そういうふうにやつて行けばオーバーローン解消というものは、ある時日をもつてすれば、そう心配することはないと私は思います。
  15. 有田二郎

    有田(二)委員 投資銀行の設立が論議されることになつて一番問題になるのは、私は勧銀であろうと思うのであります。勧業銀行は今日預金が約六百億、勧業債券が二百億、支店が約百軒ということを承つておりますが、勧業銀行商業銀行になるということについて考えられることは、勧業債券という特別なものを別に持つということは、私は他の銀行とのアンバランス考えておるのでありまして、この際勧業銀行商業銀行になる以上、この勧業債券は別な機構をもつて勧銀から引離してやるのが私は妥当である。かように考えるのでありますが、せつかく大蔵大臣も御出席になつておるのですから、大蔵大臣の御所見日銀総裁の御所見を承りたい。
  16. 池田勇人

    池田国務大臣 御説のような考え方がありますので、ただいま政府としては研究をいたしておる次第でございます。
  17. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 他の銀行とのアンバランスというような点は、どういうふうな銀行ができるかによつて実は問題になると思います。他の銀行と申しましても、本来のことはおそらく大蔵大臣がおられますので、大蔵大臣の御意見の方が正しいのでありますが、商業金融機関はたとえば短期――むろん長期を全然出さぬというのではありませんが、主として短期資金を出す銀行長期銀行、この区別を截然としよう。こういう趣旨だと思います。アンバランスができないように、一方は短期、一方は長期にする、そういう関係からその間に新しい銀行もつくるとすればできると思います。そういう銀行を必要とするかどうか、これは今後大蔵大臣がおやりになると思いますが、調和的に十分やれると思いますので、少しもそういう点私ども心配していないのであります。
  18. 有田二郎

    有田(二)委員 先般大蔵大臣が県に二つの銀行を許すことを考えておるというような御答弁があつたようでありますが、私は今日は信用金庫なり、特に議員提出法案相互銀行というものができた。相互銀行というものが今日まだ内容が整つていない点は非常に遺憾であつて、この点はぜひとも大蔵大臣においても十分関心を持つて相互銀行育成をやつてもらいたい。最初無尽会社内容は悪いけれども、まあ名前だけでもよくしてくれという話があつて、われわれも賛成したのでありますが、この点ひとつ大蔵大臣においても十分監督願いたいのでありますが、とにかくそういうふうに相互銀行ができ、いろいろとふえて参つておる際でありますし、一県二行という考え方には、もつと検討してみる必要があるのではないか、なるべく銀行の許可は少くすべきではないか。かように私は考えておるのでありますが、日銀総裁として銀行をどんどん許可されることがいいのか、あるいはそういうのはなるべく慎重にやつた方がいいとお考えになるのか。ひとつ日銀総裁の御意見を承りたい。
  19. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 相互銀行お話でありますが、これはやはり私の考えでは、無尽ということを問題にしておるのであります。無尽というようなこういう一つの業態は、日本の今日の社会情勢には非常にけつこうなものであります。とにかく私は相互銀行が、自分経営のしやすいという意味から、あまり銀行化することは私は希望しない。できるだけやはり無尽の本体を保ち、それを援助するというような補足的な意味でこの銀行業務をやる。そうして無尽の健全な発達相互銀行という形において完成させたい、こういうように運営をして行つてほしいと私の立場から考えております。これらの監督については大蔵省の管轄で、私から申し上げることもないと思います。
  20. 有田二郎

    有田(二)委員 大蔵大臣に対する質問はまた後日にして、一万田さんは時間がありませんので、一万田さんに質問の重点を置きたいと思いますが、池田さんがおられるために一万田さん大分遠慮して御答弁なすつておられるようでありますが、どうかひとつ遠慮せぬで答弁していただきたい。  さらに中小企業対策についてお尋ねいたします。三月、三月は産業界資金需要は相当増加するものと予想されるのであります。特に中小企業に対しては大企業へのしわ寄せの結果、金融難が激化するものと私は考えるのであります。従つてこの際日本銀行中小企業別わく資金は、中小企業にとつて非常に適切な制度であると私に考えておるものであります。しかるに最近日銀当局はこの制度を廃止することを考えておられるとの説を私は聞いておるのであります。われわれとしてはむしろ廃止どころではなく、二月、三月の時期には、臨時にそのわくを拡充する必要があるとすら考えておるのであります。ざらにまた最近における各銀行中小専門店の業績、これなどをあわせてひとつ日銀総裁の御答弁を承りたいと思います。
  21. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 中小企業金融金融のうちでも最もむずかしいものであります。そうしてそれはほんとうを言うと、やはり対人的な信用というものに依存をするものが多いのでありますが、終戦後においては不幸にして、対人的信用を確立するまで中小企業の基盤が固まつておりません。そういう面からもなかなか困難があるのであります。私の方の、たとえば中小企業に対する特別のわくについて今お話がありましたが、こういうふうな行き方は、実は望ましくないことはもう申すまでもないのであります。これはただ助けてあげる、全体として私の方の蔵のお札を出すことはできるだけこれはやめなくてはならない。日本銀行の蔵のお札を出すことで事が解決するとすれば、これは紙とインクと印刷機があれば間に合う、そういうことで片づかないことであります。ただ、しかし、それでも能がないというのではありません。これは必要に応じて出さなければなりませんが、必要以外に出してはならないのであります。そういう意味におきまして、なるべく早い機会日本銀行から中小企業に対して別わく融資をするというようなことはせずに済むような、そういう状況が来ることをただ希望しておるというだけでありまして、今日特に中小企業に対する別わくを廃止するというようなことは考えておりません。これだけは御了承を願つていいと思います。そして私どもは、中小企業については非常にむずかしい、どちらかというと社会政策的な点も加味しなければならぬ点も多いのでありまして、どちらかといえば財政資金の御援助も受けたい。最近におきましては、商社の破産が若干あつたようであります。これらが中小企業の方に幾らかしわ寄せしているという点もあります。また中小企業の方からメーカーの方にしわ寄せしておる、これは事態が非常に複雑であります。いずれにいたしましても実情をよく調査しまして、これは各支店とも地方々々の中小企業実態をよく把握して、そして適切な金融の道を講じて行つて遺憾のないように心がけたいと思います。
  22. 有田二郎

    有田(二)委員 一万田総裁中小企業に対する熱意を承つて非常に私は安心したのであります。とにかくできる限り中小企業に対して、十分な関心を私は持つていただきたいと思うものであります。さらに最近大紡績に関係のある商社筋に対しては、市中銀行融資対策考えるとか、あるいは日本銀行においても種々考慮を払われておられるようでありますが、同じ繊維産業でも、中小企業に対しては、金融面において何ら対策を講ずることなく、倒産するにまかせてあるような印象を与えておるようでありますが、何らかの具体的な対策をお考えになつておられるかどうか、総裁の御意見を承りたい。
  23. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 中小企業のそういう金融難につきましては、今申しましたように、私どもとしては実態をよく見まして、そうして個々について――それはどうしても金融となれば、相手を選んで金融をつけるという行き方以外に方法はないのであります。従いまして個々中小企業状況を見まして、そうして将来なるべく強くなつて行くように、ただ漫然と今日の窮境を救つて上げるというような行き方はとつておりません。どうしてもいかないものは、これは私はやはりやむを得ない。しかし将来十分見込みのあるというような企業については援助をやつて行く、こういうふうにどうしても個々状態を見つつやる。繊維の大きな商社についても大体苦しんでおりますが、これについても同じであります。商社会社も、私の考えは、金融々々と申しますが、もう少し、たとえば金融に困つておる商社あるいは中小企業メーカーでもよろしゆうございますが、自分自身で、まずいかにして自分商社なり会社なりあるいは店を健全に、かつ栄えるようにするかということに、もう少し熱意がなくてはならない。自分の方はそれほど努力しないで、ただお人まかせで金融をつけてくれるだろう、何とかしてくれるだろうというような態度では、これは将来に禍根を残すことになるのであります。特に日本銀行等から国家の資金をもつて何とか考えるというような場合に一層そうであります。まず私のそういう点において希望いたしたいことは、商社自体自分責任においてこれは商売したのである。もう少し損得について自分自身責任を持つ。そうして損をした場合には、自分自身がいかにしてこれを補い、かつ立ち上るという努力をまず示す。そこに金融関係その他の関係のものも、そういう状況ならひとつ力を合せ、そして金融をするとともに、金融後の商社強化される、そして日本経済全体が強くなる。そういうような方法で今金融考えておるのであります。
  24. 有田二郎

    有田(二)委員 総裁の御意向はよくわかりました。さらにお尋ねしたいのは、現在の繊維、鉄鋼その他を中心とする、中小企業でないものでありますが、それらの貿易商社金融難、ひいてはそれらのメーカー金融難に対して、日本銀行根本的な対策を私は承りたいのであります。さらに貿易商社並びにメーカー中心とする金融難は、大体過大輸入過大生産内外市場の悪化を原因とするもので、単なる金融措置をもつてのみ私は解決し得ないことは明らかであると思つておるのであります。生産部面の調節、市場対策金融対策等を総合して解決に当らなければならぬことは、もちろん総裁のおつしやる通り、われわれもさように考えるものであります。しかしながら、日本銀行その他の方針を実際に伺つてみますと、もつぱら倒産前の回収急ぎの形であると思われる向きが非常に多く、業者が銀行に行くと、手形のやり方が悪かつた、やれ第二会社をつくつたらどうかというように、最近の銀行屋さんは、まつたく失恋後の間貫一のような状態であるのであります。(笑声)この点十分私は考えていただきたいと思う。こういうような状態で行きますと、いたずらに経済界の混乱を助長させるのみであると私は思うのであります。思うに、前述のような過大輸入、過剰生産の行われたのは、業界の思惑から出たことはむろんであります。しかしながら同時に、日本銀行を含めた銀行信用の膨脹を基礎として行われたことも論をまたないところであります。今日のこの状態責任の一端を日本銀行も各銀行も負わなければならぬ、かように私は考えておるものであります。従つてかかる状態日本銀行並びに市中銀行等が片棒をかついで招来したということもあわせ考えて、十分にこれが対策を講ずる必要がある。従つて倒産前の回収急ぎの競争をやつておられる各銀行並びにこれが指導に当つておられる日本銀行も、私は十分検討し、考えて行動される必要があるのじやないか、かように考えると同時に、これらに対しては協調なしくずし的に解決するのが妥当と考えられるのであります。従つて手形の延期なり新規の貸増し等を計画的に行うことが、ぜひとも必要であると考えられるのでありますが、総裁の御所見を承りたいと思います。
  25. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 今御質問の点につきましては、先ほども私が申し上げておる通りでありまして、まず商社におきましてそういうふうにやつて行く。これは商社ごとによつて事態が違うのであります。従いましてこれらの商社金融をよくするのには、個々商社についてよく内容考え自分たちとしてひとつこういうふうに責任を持とう、こういうふうな状態を生じた原因も何がゆえにこうなつたか、その原因をよく探求しまして、その原因に基いて、それを是正して行く、責任をとるところはとるというふうにして、たとえば繊維商社におきましては、銀行と紡績会社商社というような関係の深い、先ほども申しましたように、銀行も全然責任がないというようなことはむろん考えておらないのであります。従いまして一番中心になる商社がまず事態をはつきりしてそうして力を合せてやる。今日幸いこの三者で話を進めて、事態を健全なる方向に、よりよくなるという方法解決をしようとみなで努力をいたしております。大体御希望に沿うことができるだろうと考えております。
  26. 有田二郎

    有田(二)委員 さらにお尋ねしたいことは、日銀政策委員会の問題であります。議長として、日銀政策委員会の廃止が論議されておるのでありますが、この点に対する御所見を伺いたい。さらに最近では日銀政策委員会というものは、あまり開かれていないように承つております。また最近大蔵大臣池田さんと一万田さんの間が非常にうまく行つておる。こういう状態においては、日銀政策委員会がなくてもうまく運営がやつて行けるのじやないかとも考えられるのでありますが、この日銀政策委員会の廃止に対して、議長としていかなるお考えを持つておられるか、承りたいと思います。
  27. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 この政策委員会は中央銀行を最も合理的に民主的に、いわゆる日本経済に最もふさわしいように運営するという構想のもとにできたものであります。大蔵大臣日本銀行総裁の間がうまく行くということはこれは当然なことです。うまく行かぬとなれば、これは国の非常な不幸であると思う。そういうことはいまさら言うまでもありません。国を思う念に燃えておる者といたしまして、そういう点において見解が一致して同じことをやるのはこれは当然のことと思います。そういうこととは別に、今申しましたような趣旨で、主として中央銀行運営が非常に中立であり、かつ実情に沿うという点からできておるのであります。これは私は非常によい制度であると思つております。しかしながらもちろんさらにまたりつぱな、だれが考えても今の制度よりも非常によいという制度考えられるならば、これはそのときに検討を加えることも私はやぶさかでないし、けつこうだと思います。なお政策委員会を最近あまり開かぬようなおしかりを受けましたが、決してそういうことはありません。毎週二回開いて、むしろ最近は何といいますか、漢語でいえば侃々諤々、たいへんな論議でにぎやかであることを申し上げておきます。
  28. 有田二郎

    有田(二)委員 さらにお尋ねしたいことは、七次船後期では大分がんばられたようでありまして、おかげでわれわれの大先輩である山崎運輸大臣が国務大臣におかわりになられる一幕もあられて、一万田さんににらまれると、大臣も首があぶないというような誤解を国民がいたしておるようであります。私はさように曲解いたしておりませんが、そういうような面がございます。特にこの点に対しての一万田さんの御苦心談なり、また昨八日社会党の西村委員質問に対して池田大蔵大臣は、来年度は見返り資金から百四十億円、その他市中銀行から造船資金を極力出すようにして、大体三十万トン程度新造船をつくりたい、かように八次船の構想を発表せられておるようでありますが、一万田さんの御所見を伺いたいと思います。
  29. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 ただいまいろいろお話がありましたが、誤解を受けているのは私の不徳のいたすところであります。金の問題についてもただ私が念じておりますことは、日本経済をインフレにしてはならぬ、何としても基本線としてインフレにしないという一つの前提を置けば、今日の状況においていろいろお金の使い方非常にやかましくなることは申すまでもないのであります。決して造船資金について非常に渋るということはないのであります。たとえば第七次の後期の造船に対しまして、なかなか市中では長期資金が少い。少いのでありますが、政府資金の三十五億でございますか、そういう程度の資金に対して、民間からは実際において六十億くらい出ておる。半分半分で七十億になつておるのでありますが、しかしあれは船の単価をトン当り十四万円にしてあるからどうしてもそうなるので、よほど船価の引下げをこいねがつてもそう一足飛びに行きません。どうしてもトン当り十六万円くらいはかかる。そうするとトン当り二万円の差額が出るのであります。当時の金融情勢から六十億というものは非常に困難であるが、これまた民間で背負うこともやむを得ないであろうと考えたのであります。そういうふうにしてできるだけ電気とかあるいは造船あるいは鉄鋼の合理化、こういう資金についてはなけなしの金をあらゆる苦心を払つて出しておるのでありまして、いたずらに金融を締めておるのではありません。インフレにしてはいかぬという基本線を守つて、可能な範囲において融資をやつておるということを御了解を願いたいと思います。
  30. 塚田十一郎

    塚田委員長 有田委員にちよつと申し上げますが、一万田参考人は十一時には行かなければなりませんので……。
  31. 有田二郎

    有田(二)委員 わかりました。  話題がかわりまして、これは日銀に関係のないことでありますが、一万田さん個人に関係してお尋ねしたいのであります。以前から一万田さんは、新党総裁の下馬評が各新聞によく報道されておるが、イエス、ノーともおつしやつておられないのであります。これはもう当然でありますが、いよいよ昨日改進党として新党が結成されてめでたく発足をいたされたのでありますが、この際この新党である改進党の総裁に一万田さんが御就任になる御意思があるかどうか、これは日銀の総裁であるだけに非常に重大でありますので、御所見を承りたいと思います。     〔「それはつまらぬ」と呼び、その他発言する者あり〕
  32. 塚田十一郎

    塚田委員長 お答えがないようであります。
  33. 有田二郎

    有田(二)委員 一万田さん御答弁ないようでありますが、われわれとしては重大な関心を持つておるということを申し上げておきます。  さらに一万田さんにお尋ねいたしたいと思うのであります。これは日銀の問題でありますが、日本銀行の問題について一昨年私は一万田さんに月給が高過ぎる、待遇がよ過ぎるという点を申し上げた。もちろん私は日銀の待遇がよ過ぎるとは考えないのでありますが、現在占領下におきまして、一般公務員なりその他の者が耐乏生活をやつておる。それに対して日銀が普通の給与であるというところに、私は一万田さんにいろいろ所見を申し上、当時一万田さんは私の意見に賛成されて、その後いろいろと整理をされた。一昨年の暮れには五千万円のボーナスを削つたという例もあるし、日本銀行が新しく二十億でビルを建てるということも、一万田さんみずからがこれを削られたという御努力に対しては私は多とするのでありますが、まだまだ足りない点がある。特に最近私が考えますのは、戰前日本銀行は二千五百名の職員であつた。それが昭和十九年に五十余名になりまして、今日では九千三百五十名の職員を擁しておる。今日政府が行政整理を断行して、国民の税負担軽減にあらゆる努力をいたしておることは一万田さんも御承知の通りであります。最近一万田さんは津その他五箇所の事務所を一月十五日付で廃止されて、政府の方針に沿うて整理をやられつつあることはもちろんでありますが、近く独立国家として批准も三月の下旬に行われるのではないかと言われておるときでありますし、関係方面がお帰りになると同時に、日銀の仕事も相当減つて来ると私は思う。従つて局部課の整理並びに北海道に例をとりましても、札幌、小樽、函館、また四月から釧路に支店ができる。四箇所も北海道に支店の必要はない、かように考えるものであつて、むしろ支店は札幌一店だけで、あとの小樽、釧路、函館のごときは事務所でもいいとすら私は考えておるわけでありますが、とにかく政府の行政整理に伴つて日本銀行もどうかひとつ今日の国民経済の困窮している状態をあわせお考え願つて、どういう整理をなさるつもりか、その御方針を承りたいと思うのであります。
  34. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 たいへんありがたいお言葉でありまして、これは非常にありがたいと思つております。御趣旨に沿うようにやりたいと思つております。ただ何分にも日本銀行政府の仕事をほとんど引受けておるわけです。為替委員会の業務、これも全部。それから見返り資金の運用というようなものについてもみんなこれは私の方に来ている。特に統制が前あつたころは一層そうでありましたが、今日でも政府の仕事を多く引受けております。こういう関係から自然人もふえておりますし、また今日の通貨の状況からなかなか仕事も厖大になつて来ているようであります。しかしできるだけ御趣旨に沿うようにやりたい。すべての面におきまして節約をすることは申すまでもありません。まだ支店の設置等についてお話がありましたが、この機会に誤解がないようにしておきたいと思いますが、新しく設けましたのは釧路であります。これが近いうちにできる。これは北海道のあの奥地の開拓ということが、今後日本経済の再建あるいは食糧の増産北海道は非常に処女地である。ところがなかなかああいうところを調べたりいろいろする機会がありませんので、それで多くの方々の御意見に従いまして、まず日本銀行があそこに支店を設け、そうしてそういうふうな期待に沿いたい。そういうことをいたすことが日本経済のためにいいだろうと、いうような趣旨から、あそこだけは新しく設けた次第です。そのほか大体私の方の店は国民経済に対しましてサービスをやり、できるだけ経済の運行が各地方にうまく行くようにお世話することを主としてその役目としておるのでありますが、それぞれの地方にとりまして銀行支店をやめるというような点も、これは地方々々の経済がなかなかうまく行くものでもなかろうと思つております。実情に即しまして決してむだのないようにいたします。その点は御了承を得ておきたいと思います。
  35. 有田二郎

    有田(二)委員 日銀総裁の整理に対する決意をお聞きして安心いたしました。どうかひとつ努力を願いたいのであります。  先般読売新聞に「独占事業を衝く」という題のもとに日本銀行内容が書かれておつたのでありますが、その際に三十五年度の下期に九十四億一千万円の利益、昭和二十六年度上期は百六十二億四千万円、合計一年間に二百五十六億五千万円の利益があつた、しかるに国庫納付金がたつた八十三億九千万円しかないのはけしからぬという考えをもちまして、昨日銀行局長は日銀の監理官でもあるので河野君を呼びまして意見を徴しましたが、これは総収益が二百五十六億五千万円であつて、いろいろな経費を引きますと、結局純益は九十八億七千六百万円であつて、そのうち八十三億九千万円が国庫納付金であるというような昨日の説明でわかつたので、その点の納得はできたのでありますが、いろいろな経費につきましては、私はまだまだ節約でき得る面があるのではないか。今日国民あげて血税を払つて非常に税金で国民が苦しんでおるときでありますし、一銭でも日本銀行において節約されまして国庫納付金におまわしになることは、最も望ましいことである、と同時に大体一万田さんもさような線で今まで御努力になりておつたように私は考えておつたのでありますが、どうか二十五年の下期九十四億、二十六年度の上期百六十二億、合計二百五十六億五千万円、この総收入の中からできるだけ経費を節約して、八十三億九千万円よりは、さらに上まわるような国庫納付金にしていただきたいと思うのでありますが、日銀総裁の御所見を承りたいと思います。
  36. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 節約の点につきましてはまつたくお説の通りでありまして、私もお説を体しまして努力を払うつもりでおります。ただ日本銀行の利益があまり上ることは決して日本経済上好ましくない、言いかえれば日本銀行の貸出しがふえるということは経済としては好ましくない。私としては日本銀行経営上非常に苦しくなつて利益があまり上らない、そういう日本経済が到来することを希望しておることだけを申し添えておきます。
  37. 有田二郎

    有田(二)委員 さらに続いてこの点について大蔵大臣の御所見を承りたい。日銀の国庫納付金について、大蔵大臣としてもここ数年非常に御努力になつておられると私は了承いたしておるのでありますが、この点さらに一万田氏と御相談の上、国庫納付金をさらにふやしていただけるように御努力願えるかどうか、この点だけお伺いしたいと思います。
  38. 池田勇人

    池田国務大臣 日本銀行でできるだけ節約していただきまして、法の命ずるところによつて納付金を徴収いたしたいと思います。
  39. 有田二郎

    有田(二)委員 最後に一点お尋ねいたしたいのですが、日本銀行の整理に対して、一万田さんもまた大蔵大臣も相当考えを持つておられると思います。当然私は日本銀行のみでなくして、市中銀行あるいは地方銀行その他の銀行――金融機関においても私は整理を行う必要がある、かように考えるものであります。これらの整理についてまず大蔵大臣はどういう構想を持つておられるか。このままでいいとお考えになつておられるか。むだは排して、今日非常に金利が高いというような状態をあわせ考えましても、銀行の整理が必要である。銀行内部のむだを排することが必要である、かように考えるのですが、大蔵大臣の御所見を承りたい。
  40. 池田勇人

    池田国務大臣 銀行経営の合理化につきましては、私はさきのお答えで、またその前にもたびたび申し上ておるところでございます。銀行経営合理化については、一段の意を用いておるのであります。
  41. 有田二郎

    有田(二)委員 一万田さんもこの点について――もちろんこれは大蔵大臣の所管でありますけれども日本銀行総裁としてあるいは政策委員会の議長として、各銀行に自粛していただくというようなことについて御感想があれば承りたいと思います。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田参考人 私も御説の通りであります。同時に私どもの立場からすれば、今後銀行の収益というものは非常に苦しくなる、これは日本銀行からの借入れの資金にしても今後はなるべく減して行かなければならぬ。そうすると日本銀行はもうからなくなる。これはまた銀行の公共性から見ましても、預貯金が増加すれば貸出しの金利を下げまして産業界にまわす、こういうようにしますと、銀行自分自身の力における収益はななか今後むずかしくなる。そういう意味において銀行自体としても経営の上から合理化をはかつて行く、むだを排する、こういうことにならざるを得ないだろうと思います。そういうふうに私どもも話し合つて行きたいと思います。
  43. 有田二郎

    有田(二)委員 まだまだ質疑いたしたいのでありますが、一万田さんの時間が参りましたし、共産党の風早さんの質疑の時間が参りましたので、後日に譲りまして、また御質問いたしたいと思います。
  44. 塚田十一郎

    塚田委員長 一万田参考人に厚くお礼を申し上げます。風早君。
  45. 風早八十二

    ○風早委員 先般から岡崎国務大臣、大橋国務大臣並びに木村法務総裁を毎日待ち暮らしておつたのでありますが、さつぱりこのごろ姿を現わさない。何か国会以上の非常に重大なことでもおありになるのだと思うのでありますが、きようは幸いに皆さんお顔がそろつておるようでありますから、ここでお聞きしたいのでありますが、労働大臣の方から、時間の関係でなるたけ先に労働大臣の方の所管を問題にしてくれという申入れもありましたので、労働大臣の方からひとつ始めさしてもらいたいと思います。労働大臣は、申すまでもなく、日本の労働者の状態の改善について、政府として重大な責任を持つておる方であります。ところでこの日本の国内におきまして、占領下、米軍が直接管理をしておる工場があるのであります。しかしながらこれらの工場に実際に働いておる人たちはやはり日本の労働者である。従つてこの日本の労働者に対しては、労働大臣は、その状態並びにその状態改善については、十分な責任があるものとわれわれは考えておる。そこでお尋ねしたいのでありますが、一体労働大臣は、この軍管理工場内の労働者の状態につきまして、どういうふうにこれをつかんでおられるか。これを満足にすべきものと考えておられるか、この点をまずお尋ねしたいと思います。
  46. 吉武恵市

    吉武国務大臣 お答えをいたしますが、別に支障ないものと考えております。
  47. 風早八十二

    ○風早委員 重ねて伺いますが、あなたは軍管理工場の中で労働者がどういう状態にあるかということを御存じであるか、その一端だけをひとつ漏らしていただきたい。
  48. 吉武恵市

    吉武国務大臣 個々の工場に私はまだ行つておりませんが、全体として別にさしつかえのある話を聞いておりません。
  49. 風早八十二

    ○風早委員 それは何か下僚からの報告によつて、そういうふうにあなたは考えておられるのか。その点はどういう根拠で今のようなことを言われるのか、重ねてこの点をはつきりしておきたいと思います。
  50. 吉武恵市

    吉武国務大臣 もちろん労働大臣は下僚の意見を聞きまして判断をしておるわけであります。
  51. 風早八十二

    ○風早委員 この両条約の批准と、安保条約の具体化であるところの行政協定が結ばれるということによりまして、日本の労働者の状態がどうなるかは、労働者の最大の関心事であります。従来PD工場、――これはプロキユアメント・デイマンド工場というわけでありましよう。要するに直接米軍がその必要上管理しておるというふうになつておるところの工場でありますが、特にこの工場は、━━━━━━━━━━━━━━━━━労働時間あるいは休憩時間、賃金、さらに首を切つたりまた雇い入れたりする雇用の問題、その他万般の待遇につきましては、労働基準法というようなものはまつたく適用されておらぬのです。━━━━━━━━━━━━━━━━━━二人や三人が集まつてもすぐどやされてしまう。しかも、たとえば相模原の製作所のごときは、一人当りの請負賃金というものはわずか二十四セントだといわれている。これは、昨年問題になりましたスコツト大佐と日立製作所のいわゆる新特需契約、これが請負賃金労働者一人当り一時間当りがわずか四十セントだと言われてたいへん驚かれておつた。そのうち少くも三十二セントというものは、これはどうしても工場の方のあらゆる費用、――すなわち、原料を除くいろいろの費用、動力費であるとか、あるいはその他の製造過程における一切の費用。また税金、利潤、その他一切を含めてやはりそれだけはいる。残るところはきわめてわずかなもので、それが労働者の賃金として与えられる。その四十セントに対しても、さらに半分に近い二十四セントの賃金がこの工場に対して与えられる、こういう状態であるのであります。これに対して労働者の基本権であるところのストライキはどうか、ストライキは絶対に許されない。ストライキ権は剥奪されている。労働者は、その待遇改善を自主的には獲得する何らの手段もこれらのPD工場では持つておらない。東日本重工業の下丸子工場におきましては、この正月に、軍の命令で、何の理由も示されずに十二名が首を切られておる。それからYEDといいますから、これはおそらく横浜技術部隊とでも訳するのでありましようが、ここのことでありますが、たとえば相模原の小松製作所におきましては、このYEDなるものが予備隊を入れて工兵の訓練をやらしており、ここでは身体検査に一人一時間もかけている。こういうような状態である。━━━━━━━━━━━━━━━━━日本政府はこれらの実情を放置していて、何ら日本人保護をやつておらないという証拠は、今すでに労働大臣が言われたように、この状態は何も問題ないと思う、これでよろしいと思うというその御答弁の中に、きわめてはつきりと現われている。政府はこういうことを知らない証拠である。赤羽の軍管理工場におきましても同様のことがあるのでありまして、実は参議院の予算委員会では、この状態を知りまして、これはどうしても公式に調査に行かなければならないということを決議しております。参議院の予算委員会では、赤羽の軍管理工場に対してその調査を決議しております。しかしながら、これに対して占領軍は拒否している。議員にも見せられないような実情がこの軍管理工場の中で展開されている。このことについて労働大臣はどう考えられるか。
  52. 吉武恵市

    吉武国務大臣 ただいま風早さんがPD工場の状況お話になりましたが、これらの工場にはもちろん国内法の適用はあるのでありまして、別に違反の事実を私どもは聞いておりません。賃金の問題を御指摘になりましたが、賃金の問題は、賃金を強制しているわけではございませんで、これはその賃金の条件において雇用しているわけであります。勤めているわけであります。それは個々の工場々々において労働条件が差異があるのもあるでありましよう。特にこのPD工場の労働条件が悪いとは私どもは聞いておらないのであります。  なお、東日本重工業の解雇の問題を御指摘になりましたが、これとてもそれぞれの根拠のある理由によつて解雇していることでございまして、決して私どもは不当に違反をした事実があつたとは考えておりません。
  53. 風早八十二

    ○風早委員 私は今の答弁によつて、労働大臣はまつたく労働大臣の資格はないということを断言せざるを得ない。一体この状態に対して、これは知らないのは大臣だけであつて、そこの労働組合、さらに業界では、この当のPD工場の経営主だち自身も一体どういうことを考え、また今行動しておるか、横須賀の追浜の冨士自動車の従業員組合では、今度よく行政協定のとりきめが行われる、これはどうなるのだろう。今までの、━━━━━ような状態が今後どうなるのだろうということは、これらの従業員の最大の関心事でありまして、この過程においてここに陳情書を出しております。     〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕  現在日米政府間において行政協定の交渉が連日行われておりますが、わが軍管理工場に働く者として、最も大きな精神的重圧として考えられておりますことは、昭和二十一年十一月三日、日本国憲法が公布されるに及びまして、われわれはこの憲法前文に示された精神を日常生活に具現し、明朗にして健全なる労働を一生続けたいと念願しておるところであります。従いまして各条に規定されております権利義務につきましては、大なる関心を持つばかりでなく、これが正常に運営されることを常に期待しておるのであります。現在わが軍管理工場に就労しております者として、従業中の日常生活において、軍工場指揮官及び会社より別紙のごとく通達され、さらに就業規則にも規定されておるものの将来のあり方につきましては、労働条件改善の上からも真剣に考えなければならないことでもありますし、現在会社が軍基地内にある関係上、この条項が独立後においてもそのまま残されるとしたならば、部分的であつても、日米関係に大きな禍根を残すこととなるのではないかとわれわれはおそれるものであります。このことは一人われわれ組合の問題ではなく、軍管理工場に働く労務者は、大同小異これらの制肘を受けておるのではないでしようか。われわれはこれがため現行法の矛盾さえ考えておるのであります。われわれは現在まで労働三法の完全な適用を希求いたしておりましたが、独立後においては憲法上われわれの身分的保障といたしまして、この種の制肘事項をすみやかに解消される努力こそ、衝に当つておられる人たちは、各党の政策に関係なく、なされねばならないことを確信いたしておりまし。われわれは法を信じ、正常にして健全なる労働を愛するがゆえに、われわれの身分的保障が、軍基地工場といえども明確に行政協定に綴り込まれることを切望してやまないものであります。  こういう陳情をしておるのでありますが、今出て来ておりますところのいわゆる別紙というものがある。これは工場監督官ジヤコブソンという署名で、これは会社にあててあるところの文書でありまして、政治活動に関する件というのがある。合衆国政府の財産、駐屯箇所、キャンプ――これは陣営、ステーシヨン――これは官署、事業所、フアシリテイース、というのは各種利用施設、たとえば車両、電話等も含む、そこでは一切の政治活動は制限されている。従つて当追浜兵器工場内においては一切の政治活動は許されないことを、ここにあらためて注意しておく。  二、どんな性質のものにせよ、演説を行つたり、ビラ、カード、手紙を配つたり、どんな種類にせよどう、ポスターを張つたりして、どんな種類にせよ追浜工場で就業中の者に対して、いずれかの政党の影響を与えることは――これは自由党の影響をさえも与えることも政治活動のうちに含まれるものである。政治活動は就業時間中はもちろん、就業時間外、土曜日、日曜日及び祝祭日でも追浜兵器工場では、何どきであつても禁止する。合衆国政府の備えつけまたは利用設備が正常に稼働している時間中は、前記のいずれの合衆国政府財産内でも、政治的性格を有する労働組合活動は禁止する。これはいずれも労働組合法並びに労働基準法の違反です。破壊的性格を有する労働組合活動は当地区の境界内においては何どきであつても厳禁する。どんな形のものにせよ政治的ないしはその他の組織をつくるための集会はアシスタント・グループ・マネージヤー、または工場監督官の許可を得なければならない。貴社はこの通牒を貴社の日本人従業員全員に周知させるとともに、これを追浜兵器工場地区内の全工場及び建物の掲示板によく目につくように掲示するものとし、貴社には全員がこの取締りの規定を承知したことを確認する責任がある。こういう非常な命令をこの会社に突き出しておるのであります。これに対して会社もやはり就業規則というものを出して――出してではない、実は現在労働協約というものは締結をじやまされておりまして、労働協約はない。従つて一切の服務規律というものがすべて就業規則によつてとられている実情でありまして、その就業規則として今の工場監督官の命令がそのままここに引写しにされております。なおその中にはこの規則またはその規則に基いて発せられる会社の命令もしくは指示等は、その一部または全部が工場監督官の命令と相違するに至つた場合においては、右の部分または全部はこれを無効とする。ここまで書いてある。従つてここには何ら日本の工場等の自主性もない。いわんや労働者の自主性というものは与えられておらない。その結果を今私が一々言わなくても、こういう軍命令なるものが工場規則として工場に押しつけられ、労働基準法も労働組合法も全部蹂躙されておる。この事実あつても、なおかつうまく行つておるということを、労働大臣ははたして言われるのか。
  54. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私どもはそういう工場においても現在国内法は適用されており、支障があるとは思いませんが、ただいま御指摘になりましたように就業中に演説をやり、ビラをまく、そういうことは当然許されるような御質疑でございますが、終戦後日本の各種の工場の中にそういう事実の行われたことはございます。しかしそれは決して許されるべき行為ではない――工場長やその他が許せば格別でございますが、それは当然許されるべき行為とは私は思いません。また工場内においていろいろな規律のあることは、これは管理者として当然であります。その規律に従わなければ、その従わないために処分を受けることも当然であります。工場外においてどういう政治活動をなさろうと、それは権利として当然御主張になつていいのですが、その工場の中の規律までも侵して、おれたちは自由な行動をとるのだ、こういうことをおつしやり、それがしかも国内法で保護してくれろと言われても、その御要求自体が私は御無理じやないかと思います。
  55. 風早八十二

    ○風早委員 工場の中の規律と言われますが、その工場の中の規律をいかなる基準によつてなされるか。これは憲法で認めておるところの基本的な人権並びに労働者の基本的な諸権利、そしてこれに基く労働組合法並びに労働基準法があるわけなのです。これがすなわち基準になつておる。これに従つて各工場の規律というものはできるわけであります。従つて頭から工場の自主性というものを無視する、こういう軍の処置というものが実際に通用し、横行しておるというこの状態は、これは根本的に日本の法律、特に憲法に対する、基本的人権に対する根本的な侵害なのです。こういう状態があるということは、これは事実なのです。これはただ単に労働組合だけがこれを申しておるのではない。いかに軍が一方的にその工場自体に対してその契約を押しつけておるか、その場合の実際の契約でもつて定められたところの値段、あるいはその納期、こういうふうなものが、一方的にその会社の能力や都合をいかに一切無視してなされておるか、このことについては、やはり経営者自身の陳情書があるわけなのです。これは池貝自動車でありますとか、あるいは日本建鉄あるいは日本製鋼、日発モータース、富士自動車、昭和飛行機、東日本重工の東京製作所、あるいは川崎製作所、ビクターオート、日野ヂーゼル、こういつた諸工場が進駐軍自動車委員会というのをつくつておりますが、この自動車つ委員会会長ビクターオートの中西定吉氏の名において、全部の署名をした陳情書を出しておる。     〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕 この陳情書によりましても、いかに米軍が一方的な調達あるいはその契約内容を一方的に押しつけておるかということが明瞭に出ておる。米軍の調達及び直接調達の方式によつて行われる場合は、本来自由対等な商業基礎によるべき契約が、非対等かつ一方的なものとなつておる結果、業者は往々にして不利不当な条件をしいられ、ために企業の基礎を脆弱ならしめ、その経営と労務に及ぼす悪影響は、結局業務の円滑なる遂行を危殆に瀕せしむるに至るべきこと。契約の一方の当事者が進駐軍であり、当事者の他方が敗戦国の民間業者であるという現実は、必然的に契約の内容とその実施を一方的、強圧的なものたらしめる結果を生んでおる。これはいわゆる特需業者として需品の入札に応じている一般業者とはその趣を異にするにもかかわらず、価格その他ほとんど一方的の契約条件を強制して契約締結の諾否を迫るというありさまである。結局条件の不利不当または不合理を忍びつつ契約の締結を余儀なくせられる実情であつて、その結果は経営の基礎を弱体化し、その労働条件に及ぼす影響は、労務者の生産意欲をそぎ、その対米感情を無用に刺激しておる。こういつたこともこの陳情書の中にあげられておるのであります。従つてこの行政協定が今回とり行われるにあたつて、この労働条件というもの、さらにもう一つさかのぼつて、この会社自体に対する進駐軍のやり方というものをこの際に一擲する必要がある。これは当然のことであります。今までの責任については、労働大臣はまつたく事実そのものを否認するということによつて、その責任を免れようとしておるが、しからば実際に今後これらの状態、ことに進駐軍の介入に対して、今後はどういう保障をもつてこの労働者並びに業者のその利益を保障せんとするか、これについてまず労働大臣から労働の部面について答弁を要求したい。
  56. 吉武恵市

    吉武国務大臣 今のような工場が注文をする人と注文を受ける人との間に結ばれておる契約でございまして、その契約で無理があつて引受けられなければ契約はしないはずであります。別に契約を強制しておるということは私は聞いておりません。従いましてそれは注文するものと注文を受けるものとの間の契約のことであつて、それにわれわれはそうとやかく言うわけには行かぬと思う。ただその契約の内容及びそれによつて行われることが、国内法に違反をするようなことがあれば、これは当然私どもとして要求しなければならぬ。従前においてもその点においては十分気をつけておるつもりでおりますが、今後におきましてもそれはわれわれとして当然気をつけて行くべきである、かように存じております。
  57. 風早八十二

    ○風早委員 この問題については特別に行政協定に関連しておるのでありまして、行政協定で具体的にどうこれを処置するかについて、なお岡崎国務大臣に御答弁を願いたいのであります。
  58. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 行政協定は元来国内に駐留するアメリカ軍のデイスポジシヨンを定めることになつておりますので、はたしてこういう問題を行政協定の中に入れるかどうかということについていまだ相談中でありまして、入るかどうか、まだ決定はいたしておりません。ただ、今までの話合いでは、普通の健全なる労働組合なり労働者なりが働く場合においては、何ら問題がないのであるけれども、往々にして共産党員が入つて来て秩序を乱したり、煽動したり、いろいろなことをやりますので、これをいかにして排除するかということがただいま問題で、研究中であります。
  59. 風早八十二

    ○風早委員 また聞き拾てならないことを言われた。共産党員、私も共産党員である。共産党員が入つて来たということはどういうことなんだ。共産党員は労働者の中にはたくさんおる。共産党員がもし秩序を乱すというならば、共産党員というものは今日われわれが合法政党としてこうやつて綱領をちやんと掲げ、公然たる活動をしておる。経営の中で最もまじめに、労働のみならず労働組合の活動を最もまじめに積極的にやつているのは共産党員だ。これは岡崎国務大臣が、共産党員が入つて来るためにこの工場が撹乱されると言うことは、これはまつたく暴言もはなはだしいと思う。そういう前提をもつて政府が当つておるということが、どういう結果になるか。私はもう一つ聞いてみたいと思う。この共産党員共産党員ということをもつて政府は結局今やろうとしておる奴隷的な協定、こういうものを合理化しようとするその意図はますます明白でありまして、その証拠に、この労働者の今後の状態について一体治外法権というものを事実上許そうとしておる。米軍がこういう状態にあるという事実そのものを彼らは認めようとしない。従つてそういう事実を認めないところから、この事実の改善ということを何ら考えておらないということは明らかであります。業者もまた労働組合も、こぞつてこの事実に対しては、みな厳重な抗議をしておる。しかも政府はこれに対して、事実そのものを否認しようとしておる。岡崎国務大臣にこれは答えてもらいたいが、この治外法権というものは、一体どういうことになるのか。今度の行政協定で治外法権を認めるのか認めないのか。
  60. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 治外法権はありません。
  61. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、横田委員より質疑の申出があります。この際これを許します。
  62. 横田甚太郎

    ○横田委員 ただいま聞いておりますと、アメリカ人好みの人間ばかりとあつて 行政ぼけしたところの岡崎国務大臣が、妙なことを言いましたが、ここに一つの例がある。二月七日に、参議院の予算委員会で何が起つたか知つているか。二月七日に参議院の予算委員の連中は、日本製鋼赤羽工場へ視察に行くようになつてつた。そのときに工場長がこの委員を工場に入れなかつたという事実がある。参議院の予算委員会で行くことになつてつたが入れない、参議院の予算委員会全員が共産党員だつたのか、そうじやないだろう。その点におけるところの見解と、この赤羽工場のごとき、日本人に内容を見せないような工場で何をこしらえているか。それからこういうような日本にあつて日本人の見られない工場が、今後どしどし日本にできるのか。できるのであるならば、これを行政協定の中にどうして取入れてどう扱つて行くか。あまりのたのた言わずにはつきり答弁してもらいたい。
  63. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 赤羽工場云々のお話でありますが、私は参議院の予算委員が、共産党員だから拒絶したという話は聞いておりません。それからただいま占領丁にありまして、米軍の考えによつていろいろの行動は行われると思います。それについては日本の法律が適用されるのが原則でありますが、軍の機密保持上そういう点において制限があることは、これは当然であります。
  64. 横田甚太郎

    ○横田委員 軍の機密というても、日本の憲法は戦争を放棄している。われわれはこの戦争放棄の現行憲法があるなら、工場でそんなものをこしらえているなら、それは一々川へほおり込んでしまえ。それが平和憲法を守る正しい行き方だ。この点におけるところの見解を明らかにしろ。
  65. 塚田十一郎

    塚田委員長 横田君にちよつと御注意申し上げますが、本委員会の品位のために、発言をよほど御注意願いたいと存じます。さもなければ発言をお許しいたしません。     〔発言する者多し〕
  66. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、成田委員より質疑の申出があります。この際これを許します。
  67. 成田知巳

    ○成田委員 ただいま風早氏の質問に対しまして、厚生大臣と岡崎国務大臣との答弁に食い違いがあると思います。PD工場におきましても、軍命令よりも国内法は優先するということを厚生大臣答弁された。これに対して岡崎国務大臣は、軍機密の立場から行つたならば、国内法に対して例外を設ける場合がある、こういうような御答弁であつたのですが、その点についての両相の意見を承りたい。
  68. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私は決して食い違いはないと思います。ただ、いわゆる労働関係におきましては、そういうPD工場であろうと他の工場であろうと同じであるが、占領下であつて、占領下の別な関係から、いろいろな制限のあることは当然であります。
  69. 成田知巳

    ○成田委員 労働関係におきまして、国内法が優先するということになりましたならば、少くとも軍機密という立場からいつても、労働基準法その他の国内法を破ることはできない、こう解釈してよろしゆうございますか。
  70. 吉武恵市

    吉武国務大臣 私が先ほど申しましたのは、注文を出す者がだれであろうと、注文する者と注文を受ける者との契約は契約であります。その契約が国内法を拘束することは考えられない、こういうことであります。契約以外のものから制限を受けることは、また別であります。
  71. 成田知巳

    ○成田委員 岡崎国務大臣に念を押しておきます。先ほど行政協定で、あるいは共産党その他が秩序を乱すという場合には、PD工場その他について特別な規定をするかもしれない、こういうお話でありますが、行政協定というものは、日本政府とアメリカ政府のとりきめですが、もし国内法を破るような行政協定をつくるとすれば、やはり特別の立法をお出しになる予定があるか、そういう方針でお進みになるか、お尋ねいたします。
  72. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これは吉田総理から数回お答えがありましたように、法律を必要とするようなとりきめについては、法律ができたときに有効になるように話合いをいたします。
  73. 風早八十二

    ○風早委員 今契約によつて国内法を変更することがあり得るというように私は聞えたのでありますが、そうですか。労働大臣に答弁してもらいたい。
  74. 吉武恵市

    吉武国務大臣 注文をする者と注文を受ける者との契約は契約です。それがつまり国内法を拘束するとは考えない。別の面で制限があれば、これは格別である。今岡崎国務大臣が答弁をいたしましたのは、もし行政協定で、それに対して特別の拘束をする必要があれば、国内法を設けることがあるであろうが、それはそのときに、とこう言つておるわけであります。
  75. 風早八十二

    ○風早委員 そこで岡崎国務大臣に聞きたいのだけれども、この拘束というのは、今まではこの通り厳然たる事実としてあつたわけです。これは国内法も契約もくそもない。契約自身が一方的だ。しかもその中で、この国内法というものは完全に蹂躙されておる。(「承諾したのだ」と呼ぶ者あり)承諾せざるを得ないような━━━━、一方的な命令でもつて……。     〔発言する者あり〕
  76. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  77. 風早八十二

    ○風早委員 これは実力である、法律じやない、実際工場そのものを拘束しておる。ところでこの問題は今日の段階においては、もはや解決しなければならない。今この行政協定のとりきめにあたつて、岡崎国務大臣は、これがはたして行政協定のとりきめ条項の中に入るかどうかはわからないと言われたけれども、この点はもう少し具体的に答弁してもらいたい。わからなければ一体どういう法的な措置を講ずるのか、また入る範囲はどこの範囲が入るのか。その辺は目下折衝中であつて、よく御存じだと思いますから、その範囲を具体的にひとつ示してもらいたい。たとえば日本の労働組合法やあるいは労働基準法、こういうものが、今契約あるいは契約以外の条件でもつて、すなわち米軍の実力でもつてこれが拘束され、蹂躙されておる、こういう事実があるわけです。その点はどういうふうに行政協定でなるのか、これをもう一ぺん言つていただきたい。
  78. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいまでも米国の実力をもつて一方的に強制するというようなことは全然ないと信じております。大体契約というものは、お互いに相談して、両方が合つて成立するものであつて、一方的の契約などというものは聞いたことがありません。行政とりきめにおきましては、ただいまいろいろの角度から研究中でありまして、まだ結論に達しておりません。
  79. 風早八十二

    ○風早委員 そういう契約論なんかをやつてみたところで、しようかないが、しかしながらいやしくも法律をやつた岡崎大臣ともあろう者が、契約は一方的なものがないと言うことは、これは欺瞞もはなはだしい、無視もはなはだしい。大体国鉄の運賃あたりと一般の乗客との間の契約はどうです。これは完全に一方的じやないか。そういうことは今日の段階においてたくさんあるし、とうとうそれが極端に達して、もはや契約という名前だけは付しておるけれども、実際には契約でも何でもないということは、経団連までが言つているじやないか。ラスク氏に対して提出している行政協定に関する要望を見たらどうです。契約じやないのだ。一方的に軍が実力でもつてこれは押しつけておる。だから今後は少くともわれわれは、今まででもこういう欺瞞に対しては徹底的に闘つて来たが、今後は日本が独立するとか平和になるとかいうことを言つている政府としては、一体どういう法的措置をもつてこの点を片づけるつもりであるか、この点について少しも答弁がないじやないか。大橋国務大臣にひとつこれは答弁してもらいたい。
  80. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 この問題については、私は所管大臣でございませんから、所管大臣から申し上げます。
  81. 風早八十二

    ○風早委員 いや、私は前法務総裁という肩書を大いに尊重して、りつぱな答弁があるだろうと思つて聞いたわけであるけれども、これは案の定だめだ。しからば岡崎大臣にもう一度聞きますが、では具体的に行政協定では、このPD工場の問題については、どういう措置を講ぜられようとしておるか、これはただまだわからないでは済まされない問題である。
  82. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 すでに新聞にも発表いたしております通り、原則的には、将来安全保障条約によつて日本に駐屯する軍隊及びその軍隊に付属する文官及びそれの家族は日本の法律を守る、こういうことに話合いはできております。この点は、詳細な条文については今ドラフテイング・コミテイーで研究しておりますが、原則的な話合いはきまつております。あとは条文にいかにこれを表わすかというだけでありますが、これもほとんど話合いがついております。従つて個々の問題については、一々――たとえばこれからはPD工場というものはなくなりますが、いろいろの工場について、法律を守るとか守らぬとかいうことを書入れるべきであるかどうかという点は、ただいままだ研究中で、結論に達しておりません。
  83. 風早八十二

    ○風早委員 その点をもつと具体的に、たとえばこのPD工場の場合ですが、この契約当事者は一体今度はだれになるのか、この雇用主というものは新しい駐留軍になるのか。今基地内にたくさん工場があり、また今後も工場を建てようとしておる。そういう工場は、今までは管理という名前で、事実は向うのかつて気ままにこれを引まわしておつたのだけれども、今後はその場合の責任当事者というものは一体だれがなるのか、これが一つ。さらにその場合に、労働者というものは、これは一体軍属になつてしまうのか。あるいはやはり日本の労働者としてとどまるのか。こういうところは、ただ民法上の雇用関係で今後ははつきりするのか、あるいは軍属になつてしまうのか。こういう点が明確にならなければならぬと思うのでありますが、今言われるように、もう条文にするばかりだというのであれば、これらの点について、はつきりした御答弁を願いたい。
  84. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 こういう点はすべて従来の国際法及び国際慣例に従うことになつておりますから、その方面の関係に精通せられておる風早君は十分御承知だと思いますが、念のために申し上げれば、将来アメリカの駐留軍が使用する施設内において設ける工場については、アメリカが管理いたします。施設外の工場等については日本側の管理にゆだねられます。  それから日本国民は、アメリカの法律からいつても、アメリカの軍属にはなれないのでありますが、日本側でもこれを軍属にするという意向は全然ありません。
  85. 風早八十二

    ○風早委員 この施設というのはどの程度の施設ですか。今政府では軍基地というものは一切ないというようなことを言つておるけれども、施設というのはこれらの基地の中の一つの施設のことを言うのか、あるいはまたこの基地全体、たとえば富士のすそ野のあたりで広義数百町歩あるいはそれ以上に及ぶところの、そういう広大な地域を全部言うのか、その中でかつてに工場が建てられ、それがみな向うの軍管理工場になるのか。そういうふうな施設という言葉がはなはだあいまいでありまして、もう少し施設についてはつきり言つてもらいたい。これは今すぐ問題になつて来ると思う。
  86. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 施設というのは、日本国中にアメリカの駐留軍が日本の安全を守るに必要と考えられる点について、これを使用する場所であります。従つてただいまのところは、どれが施設になるかということは、まだ全然きまつておりませんが、できるだけ早くこれを各個に研究し、そしてきめて行く方針であります。なお念のため申し上げれば、アメリカ側と日本側との間の話合いの原則としては、日本経済にじやまになるようなところはできるだけ避ける、こういう方針で行つております。
  87. 風早八十二

    ○風早委員 施設という概念がそんなにあいまいなもの、あるならば、実際これは日本国中どこでも向うで都合がいいということになれば、施設になるわけです。その中での工場はすべて向うが管理し得るということになれば、日本国中どこでも、どの工場でも、かつてに向うがこれを管理するというようなことにもなる。これは非常に危険な状態です。こういうことに対して政府はただ漫然と施設という言葉でもつてごまかしておるが、これは将来非常に大きな禍根を残すことになる。こういう点はもう少し明確な政府考え方というものがあると思うのであるけれども政府としては、その施設はどういうふうな範囲に考えておるか、またどういう条件をもつてこの交渉に臨んでおるか、こういう点もはつきりさせてもらいたい。
  88. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 そのような御心配は全然ありませんが、これから一つ一つきめて行くのであります。そこでこれがきまりますると、発表いたしますから、そのときにごらんになれば、なるほど施設というものは決して心配のないものであつたということがおさとりになると思います。
  89. 風早八十二

    ○風早委員 とんでもない。それではわれわれの責任のある質疑応答にはならない。そんなばかな話があるか。細工はりゆうゆうだからみんな待つている、これでは一体国会が何のためにあるのか。政府責任というものはどこにあるか。この施設については、これはきわめて危険な問題が今に起つて来る。これは日本の全領土というものが――かつてに向うの施設にせられたのが今までの現状です。しかし今後は少くともそうあつてはならないし、そうあつてもらつては困るというのが、労働者並びに業者自身の要望なのです。これに対して相かわらず施設というあいまいな言葉でもつて、これから至るところにアメリカの支配を植えつけて行くという、そういう地ならしを政府はやつているのじやないか。それがすなわち政府を売国奴というゆえんなんだ。  軍属の問題でありますが、日本の労働者は国際法上アメリカの軍属というものにはなれないのだという話であるけれども、それならば今度ははつきり民法上の雇用関係従つて、その関係が樹立されるのか。これはさらに何か第三の措置があるのか。実際問題として労働者がその自主的な行動を制約されないような、そういう法的な保障というものはどこに求められるのか。この点についてさらに岡崎大臣の答弁を要求します。
  90. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 先ほども申しました通り、アメリカの軍隊及びこれに属する軍属等は、日本の法律を守るということになつております。ただ個々の問題につきましては、一体これを行政とりきめの中に入れるのがいいかどうか、また入れるべきが至当であるかどうかということは、ただいま研究中であります。
  91. 風早八十二

    ○風早委員 このPD工場の労働者の状態が、まつたく一方的奴隷的な状態で今日まで来ておるということは、これは政府は何にも知らないというけれども、厳然たる事実であることは、すでにこれらの書類によつても、これらの実際の声によつても明白であると思う。これは経団連を初め、また当該PD工場の工場主だち、さらにその従業員たち、みんな一致した認識であり、そしてこれに対して改善を要求しておることもまた一致しておる。政府だけがほおかむりしてその責任を回避し、みすみす向うの支配を植えつけて行くということの手伝いをやつておる。このことは吉田政府の致命的な売国的性格であるということを、私はこの際にさらに確認して、次の問題に移りたいと思います。  大橋国務大臣がせつかく待つておられますから、まずひとつ大橋国務大臣に一点伺いたいのだが、一昨日でありましたか、大橋国務大臣は地方行政委員会において、立花委員質問に対して答弁をして、ことし六万人の予備隊を募集する、これについては市町村に割当ててその推薦方を依頼してあると、こういう答弁をしております。このことはきわめて重大です。これは結局アメリカの推薦徴兵制、選抜徴兵制というか、要するに今アメリカのやつておる徴兵制、それの引うつしではないか。これはアメリカの選抜徴兵制とまつたく同じものじやないか。これについて大橋国務大臣はどう考えておるか。
  92. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 風早君の御質問は共産党の一般的なやり方と同様に、まつたく間違つた前提のもとに質問されておるのであります。私はそういうお答えをいたしたことはございません。従つてお答えを申し上げません。
  93. 風早八十二

    ○風早委員 ここにはその当の質問者もこの場内におるのでありますが、昨日言つたことをまさかぬけぬけと否認されることはあるまいと思う。これは新聞にも出ておる。この言葉通りの問題を言つておるのではない。要するに今年六万人の予備隊を募集する、こう言つたことは、これは確かなことですね。これについては市町村に割当てて、その推薦方を依頼してあるということも、これは言つたことは間違いないと思います。いずれにしても、この言葉がどうあろうとも、これは確かなものであると思う。今政府日本でアメリカの選抜徴兵制をひな型にしてしこうとしておるではないか、この積極的な質問に対して答弁していただきたい。
  94. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 あんまり積極的な御質問でもございませんが、お答えはいたします。さようなことを申したことはない、こういうわけです。なるほどことしは六万人程度の募集が必要となるかもしれぬ。たとえば七万五千人が在隊いたしておりますが、ことしの十月前後に当初の二箇年の約束をもつて応募いたした者が期限が参ります。その際に三分の一程度の者が自由に退職するのである。この退職は、当然自由に認めるべきものでありまして、また認める方針であります。従いましてその欠員の募集を必要といたします。なお今年度におきまして、三万五千人の増員を計画いたしておりますから、都合約六万人程度の者を新しく募集する必要があるであろう、こういうふうに考えております。しこうしてこの募集につきましては、志願制度によりまして、自由に申し込んで参る者から募集をする方針であり、これによつて確実に必要な要員を充足し得るという見込みであるということをお答え申したのでございます。御質問にありましたごとく、市町村長に推薦を依頼してあるなどということは、私は申しておりません。事実そういう依頼をいたしたことはございませんから、共産党の諸君と違いまして、私どもはないことをあつたと言うことは絶対にございません。
  95. 風早八十二

    ○風早委員 今その証拠を見せたい。北海道で実際にこの予備隊の募集をやつておるのであります。ところがたつた六人しかこれに対して応募がなかつたということは著明な話になつておる。だからこれは結局強制徴集以外にないじやないか。大蔵省ではすでに徴兵の場合の費用がどのくらいになるかということを調査を進めておるということも、これまた事実なのであります。これは大蔵大臣としては否定するにきまつております。いよいよ出て来てどうにもごまかしがつかなくなるまでは、否定するにきまつておる。しかしながらもう徴兵の準備をちやんとやつておるじやないか、今大蔵省で徴兵の場合の費用について準備調査をやつておるということは、これは、もし大臣が知らないとすれば、大臣が知らないだけであつて、実際にはやつておる。  さらに台湾の問題について――岡崎大臣いないのですか。――それでは木村法務総裁はどうですか。
  96. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して山口委員より質疑の申出があります。この際これを許します。
  97. 山口武秀

    ○山口(武)委員 今大橋国務大臣が共産党はうそを言つておる、共産党と違うから政府はうそを言わない、こう言われましたが、どういうことでそういうことを言われるのですか、共産党がいつうそを言つたのですか。
  98. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま共産党議員の風早君がないことをあると申しましたから、それで申したのであります。
  99. 山口武秀

    ○山口(武)委員 たとい今の話が百歩あるいは千歩譲つて、風早君の質問が間違つていたとしても、共産党がうそを言つたとは何です。風早君というものと、共産党一本と混同するということはどういうわけなんです。うそを言つたのは下山事件にしろ、三鷹事件にしろ、君たちでなかつたのか、もつとはつきり聞きたい。
  100. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。
  101. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それは答弁じやないじやないか。なせ議員一般の一人の問題と、共産党という問題を混同されたのか。おれはこのことを聞いておる。しかもこれは国会で聞いておる。しかもここは一応国会の予算委員会である以上、筋道が立つた話がなければならないはずである。君の答弁が筋道の立つた答弁か、もつとはつきり聞きたい。
  102. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 前言の通りでございます。
  103. 山口武秀

    ○山口(武)委員 何が前言の通りなんだ。それならばそれでもかまわないのだ。だれが見ても風早君の質問がうそであつたとは認めないだろう。まずその点は一応はおくが……。     〔「うそばかり言つている」と呼び、その他発言する者多し〕
  104. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。
  105. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでもいいが、共産党の風早君個人の言つた問題と、共産党を混同して、そういうことにしてものを言つておる。(「共産党の性格から言えば同じじやないか」と呼ぶ者あり)違うじやないか。今の質問というものと、共産党がうそを言うという問題を別個に出したじやないか。その事実を君たちは無理に混同している。政府の論法というものはこういう論法なんだ。君たちのはこういう論法なんだ。第一、再軍備をやりながら再軍備をやつていないと言つておる。これが政府の論法なんだ。
  106. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 風早君の御質問は、共産党を代表して質問しておられるのでございます。私は代表質問として拝聴をいたしております。
  107. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうじやないわ。代表して言つているとすれば、今の言葉の問題と別の問題として共産党はうそを言うものであるという、こういう別個の形で出したじやないか、問題が別個じやないか。どこに君らのりくつがあるのだ。もつとはつきり聞きたい。(「関連質問終り」と呼ぶ者あり)いや、一つの話がはつきりしなければ次の質問に進めない。
  108. 塚田十一郎

    塚田委員長 お答えがないようであります。
  109. 山口武秀

    ○山口(武)委員 それでは政府答弁というものは、そういうような論理を無視した答弁である。これはたまたまここに現われたものではない。再軍備をしながらも再軍備がないというようなことを、ぬけぬけと言う政府だから、このような答弁ができるのだ。そういうことだけはつきりさせておいて、私の質問をやめます。
  110. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して、成田委員より質疑の申出があります。この際これを許します。
  111. 成田知巳

    ○成田委員 ただいまの風早氏の質問に関連して……。徴兵制度をとることはない、志願兵制度だ……。     〔発言する者あり〕
  112. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います。
  113. 成田知巳

    ○成田委員 これで六万の完全な補充ができる、こういう御答弁がありましたのですが、もし六万人政府の予定通り応募する者がなかつた場合はどうするか。
  114. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 予定通り応募者があるということを確信いたしております。
  115. 成田知巳

    ○成田委員 募集方法といたしましては、志願兵制度をおとりになるらしいですが、その際募集の条件といたしまして、現役が終つた場合に予備役に編入する。予備役はまた一旦緩急あつた場合に強制徴集されるのだ、こういう条件をおつけになる、いわゆる予備役制度をおとりになる御方針があるかどうか。
  116. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 退職いたしました者に対しまして、一定年限の間、応召の義務を課するかどうかという問題は、ただいま研究中でございます。しかしこの場各におきましても、現在おります隊員が退職をした後に、一方的にさような義務を課するという考えはございませんので、今後さような必要がありまして、応召義務を課するということにきまつた場合におきましては、国会においてその点を法律案として御審議を願うべきものと考えております。その法案の出ました後に、そのことを承知して応募した者に対してのみ、さような義務を課する、こういうことでございます。
  117. 成田知巳

    ○成田委員 現在の隊員に対して予備隊に編入して強制徴集はできない。これは法律上当然だろうと思う。次に募集される人に対して、そういう条件付で募集をするという場合には、国会の承認を求めるような御答弁ですが、その際問題になるのは憲法との関係です。憲法の十八条に、何人といえども犯罪による以外は苦役に服さしめることはない、こういう規定があります。今度もし予備役の強制徴集ということになりまして、内乱が起きたというようなときは、生命の危険も冒さなければいけない。これと憲法との関係をどうお考えになりますか。
  118. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 これは憲法第十八条というよりは、むしろ二十二条の職業選択の自由の問題とより関係があるのではないかと思います。ここで私ども考えといたしましては、これらの憲法の各条項の範囲内において、さような義務を課するような方法を研究いたしておるわけでございます。
  119. 塚田十一郎

    塚田委員長 先ほどの風早委員質疑に関連いたしまして大蔵大臣より発言を求められております。これを許します。
  120. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵省におきまして徴兵制度を研究しているというお話でございますが、風早さん、何か論拠がございますか。こういうことを言われますと、国民が非常に惑いますから、私は大蔵大臣としてもう一回根拠のあるお話を願いたい。
  121. 風早八十二

    ○風早委員 論拠はあなた方の下僚に聞いてごらんなさい。これは大臣がおそらく命令したとしかわれわれは判断しておらない。大蔵省が今徴兵の場合には、どれくらいの費用がかかるかという算定について、準備しているということは明白な事実です。大蔵省に行つてごらんなさい。あなたの足元をよく見てごらんなさい、やつております。この事実は、われわれは事実をつかんでいるからこそ、ここで確信を持つてつている。先ほど大橋国務大臣は、再軍備をやつてつても再軍備をやらぬ……。     〔発言する者多し〕
  122. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います。
  123. 風早八十二

    ○風早委員 今日私がPD工場の、これだけに詳細に、綿密にこの事実を出しても、それでもまだそういうことはない。あるいはまたそういうふうな状態はきわめてけつこうだ、今少しもまずい状態はないというような答弁をするような政府なんです。ここに白と出ておつても、これを黒という。政府は色盲じやないか。こういう政府が、いくら今ここでそういう強弁をしたつて、これは絶対に……(「何という事務官だ」と呼ぶ者あり)そういうことを、私が説明をする必要はない。しかし事実はどこまでも事実だ。これは確信をもつて言える事実である。さらに先ほど岡崎並びに大橋国務大臣に対して、私が申したことが事実かどうかというようなことが問題になつているようだけれども、これはこの場内にも証人がおる、行政委員会の委員もおる。今年六万人の予備隊の募集をするについて、市町村に推薦方を依頼することを考えておるということは、これははつきり言つておるのだ、速記録を見ればすぐわかることなんだ。こういうふうなことについても、その場では必ずそうじやないといつて、言いのがれをする、その次にはすぐ出て来る。現にこれはついでだから言つておくけれども池田大蔵大臣は今回のこの軍事予算が国会に出されたときに、予算委員会で最初まず予算の審議に入る前に、この予算以前の問題がある、すなわちこれは財政法の第十四条第二項でありますか、これがまだ出ておらない。出ておらない法律を論拠にして予算総則が出ておるが、これは明らかに財政法違反じやないかというので、まずこの問題を究明したところが、そういうことは先例があると言う。ところが先例があるといつたその先例は、昭和二十四年度の予算案の提出の際に、やはり財政法と並行審議をやつておるという問題があるわけです。そのときにわが党の志賀義雄委員が、これに対して池田大蔵大臣予算委員会において追究している。これは困るじやないかと言つたところが、それに対して、こういうことが先例になつたのでは……「志賀を証人に出したらどうだ」と呼ぶ者あり)これはもう速記録はあるんだから……。速記録はここにある。     〔「志賀を証人に出せ」と呼び、その他発言する者多し〕
  124. 塚田十一郎

    塚田委員長 御静粛に願います。なお風早君に申し上げますが、質疑はあまり脱線にならぬように御注意願います。
  125. 風早八十二

    ○風早委員 脱線ではない。いかに政府が黒を白と言つたかということを言つておるのだ。(「大蔵大臣との問答はどうした、忘れたか」と呼ぶ者あり)池田大蔵大臣はそのときに、いやこれは絶対に先例にいたしません、これを先例にするということは私は考えておらないということをはつきり言つておるのだ。これは今度速記録を調べてみたところが、はつきり出ておる。ところが今度大蔵大臣はそれを唯一の先例にして、この先例があるから、この予算審議はさしつかえないということを言つておる。こういつたような大蔵大臣なんだ。黒を白と言うことはもう平気なんだ。前言を翻すことは平気なんだ。そういう大蔵大臣であるからこそ、今のような強弁ができるのだ。われわれがここにあげるところの一切の事実は、あくまで証拠と確信に従つて発言しておることをはつきり断言しておきます。これで午前中の質疑を終ります。
  126. 池田勇人

    池田国務大臣 大蔵省の仕事に対しましては、私が責任を持つております。しこうして大蔵省が徴兵制度の調査に入つたという事実を見せていただきたい。もし事実を見せなければ、あなたはうそをおつしやつておるのだということになります。     〔「その通りだ」と呼ぶ者あり〕
  127. 風早八十二

    ○風早委員 そんなばかな話があるか、(「事実を出せ」と呼ぶ者あり)事実はそのこと自身が事実なんだ。よく大蔵省へ帰つて調べてみたらいい。
  128. 塚田十一郎

    塚田委員長 午前中の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半より委員会を再開して質疑を継続することといたします。  これにて休憩いたします。     午後零時二十五分休憩l2     午後二時三分開議
  129. 塚田十一郎

    塚田委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。風早八十二君。
  130. 風早八十二

    ○風早委員 外務大臣は見えないようでありますが、外務大臣と通産大臣にお尋ねしたいのであります。  第二回平和擁護世界大会が本年の四月モスクワに開かれる国際経済会議に対して、日本に招請状を送つて来ておるわけであります。このことについては国際経済会議がどういうものであるか、あるいはまたこれに対して日本の財界なり、産業界なり、労働界なりがとういう要望を持つておるかというようなことについては、大体はすでにいろいろな報道機関に報ぜられておるのでありまして、大体のことは政府も知つておると思います。政府はこの招請を受けた個人が旅券法の規定に従つて旅券の請求をした場合に、もちろんこれを交付すべきものであると思いますが、念のために政府の見解を聞かしてもらいたい。     〔「旅券は外務省の所管だ」と呼ぶ者あり〕
  131. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 便宜お答えを申し上げます。旅券につきましては、申請に対しまして外務省より治安関係の当局の方に御相談がある場合がございます。これに対しまして支障の有無を取調べました上、外務省にお答えをいたし、これに基いて外務省から発給される、こういう手続に相なつております。これは申請がありましたならそういうことにいたしたいと思います。
  132. 風早八十二

    ○風早委員 これは船の都合もありますし、きようにもこの申請を正式にする場合があり得るのでありますが、これに対して政府はすでに見解を持つておると思うのです。その見解並びにその法的な根拠について、ついでに大橋国務大臣から答弁を願います。
  133. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まだ外務省から何とも問合せがございません。
  134. 風早八十二

    ○風早委員 いや問合せがあると言つておるのではないのであつて、これはきようにも正式にその申請があるかもしれないのであります。これに対して大体政府の腹も、法的根拠とともに、きまつておると思うのであります。それを聞いておるのであります。
  135. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 きようにも申請がありましたら、さつそくきようにも取調べます。
  136. 風早八十二

    ○風早委員 一体政府はこの国際経済会議内容を知つておるのか、これをついでに大橋国務大臣に聞きたい。
  137. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 申請書によりまして詳細取調べの上、内容を検討して決定いたしたいと思います。
  138. 風早八十二

    ○風早委員 私はこの問題は日本経済産業並びに国民生活に、重大な死活の関係を持つておる問題であると考えるのでありまして、その点からこの国際経済会議内容について、政府の認識をこれからただしてみたいと思います。日本の今後の貿易の進路というものは、政府の方針、言いかえればアメリカの方針に従えば東南アジアに向つて集中される、その反面中華人民共和国、ソビエト同盟、こういうところに対してはほとんど禁止的なる制限を加え、ますますそれを強化するというような方針であると、これは政府もすでに公式に出しておるところであります。しかしながらその前に、一体そのことが日本国民生活、日本産業や、また経済に実際に利益であるのかどうか、このことをひとつ冷静にまず判断しなければならないと思うのです。こめ問題については、具体的に、たとえば東南アジアが今問題になつておりますから、東南アジアを中心にして私は政府のこの問題に対する認識を聞いてみたいと思い、通産大臣にお尋ねするのでありますが、アメリカの東南アジアに対する政策、つまり対外政策の中での東南アジアに対する貿易政策、これは一体どういうものであるか、また同時に日本の東南アジア市場に対する貿易政策というものはどういうものであるか、これを通産大臣からひとつ答えていただきたい。
  139. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 お尋ねのアメリカの東南アジアの通商方針というものは、私はここでお答えをすることは適当でないと思います。日本としては、東南アジアの開発、通商に非常に力を入れる、それがわれわれの方針であります。
  140. 風早八十二

    ○風早委員 さつぱりわからない。だれもわからないと思う。東南アジアに対して日本の行つておる政策は明瞭であるといつても、これは日本産業を、東南アジアの市場との関係で一体どういうふうに今後発展さして行くのか、その内容を私は聞いておるわけです。またアメリカの東南アジア貿易政策というものは答える限りでないと言われますが、これもそうは言われないだろうと思う。日米経済協力というのが現政府の方針である。この日米経済協力というのは、特に東南アジアを中心にして今後具体的には行われるわけだ。これは切つても切れない関係にあり、日本の貿易政策は、結局このアメリカの対外政策、特に東南アジアに対する関係の中に従属して入つて来ておるわけです。そういう意味でまずアメリカのこの政策を明らかにするということは、これはあなたが日本の貿易政策を明らかにする場合に必ず必要であると私は思うのです。そういう意味で、ひとつあらためてこの両者を含めて、もう少し御親切なる説明をお願いしたい。
  141. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 ごもつともでありますが、日米協力で、まだわれわれは東南アジアの問題でデイスカツスする機会を得ていないのであります。従つて私がこの席でアメリカの方針をお尋ねをいただいても、まだ今日は御答弁できないのであります。それから日本の東南アジアに対する貿易というものは、予定の通り進んでおります。昨年も少くとも五割以上の輸出の増加ができておるのであります。この東南開発が遅々として進まない、ということをよく言われるのでありますが、開発は相手の国があることですから、日本だけの意思によつて開発することはできない、ことに開発をするためには長期の投資をすることになるのでありますから、この交渉なかなか進まないのであります。それで協定ができましても、実際開発のために得た物資が日本に来るのは、たいていの場合一箇年後になるわけです。現在協定ができ上りましたものは、ゴアの鉱石でありますが、これも昨年でき上りまして、今年のおそらく九月か十月にようやく鉱石が来ることになるのであります。そのほか数箇所について開発の協定を今検討しておりますが、これについてはまだ御報告をするような階段に達しておりません。
  142. 風早八十二

    ○風早委員 どうもさつぱり要領を得ないのであります。それでは私はひとつ問題の基準を出してお尋ねしたいと思います。東南アジアに対する貿易、反面において中華人民共和国並びにソ同盟に対する貿易の禁止的制限、こういう政策が、日本国民の生活水準を引上げるか引下げるか、また日本の民族の産業を実際発展させるかどうか。そういう点に関連してこの基準からひとつ具体的に説明していただきたい。これなくしては何のためにこれらの貿易が進められ、あるいはまた重要な国家資金がこのために投ぜられるかわけがわからない。
  143. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 貿易のことは相手方のあることですから、日本の意思だけで運ぶことはできぬわけであります。おそらく風早君は中共貿易を盛んにしなくちやいかんというような御意見を吐かれておると思うのですが、これも相手方があることですから、日本だけの意思で中共貿易を盛んにすることはできないことは、はなはだ遺憾に存じております。
  144. 風早八十二

    ○風早委員 アメリカの独占資本が軍備拡張を続けておることは御承知の通りでありますが、新しい戦争を準備しながら、重要な資源、とりわけ軍事に必要な戦略的な資源を手に入れようとしてますます活発に動いております。アメリカの独占資本は、植民地を持つておる列強が経済的に困つており、これらの国が経済、政治、財政の上からアメリカに負ぶさつておるという状態、そういう条件を利用しながら、東南アジア及び太平洋地域の多数の国の経済を支配し、特にゴム、すず、石油、その他重要な鉱産物、並びに軍事戦略物資の採取を牛耳つておるのが現状なのである。アメリカのインドネシアに対する対外投資の比率は、戰前アメリカの全対外投資のうち五%を占めておつたのに対して、一昨年――一九五〇年には四〇にまでふえております。これらの資本は、すべて採取産業に向けられておる。また重要資源の発見に充てられておる。この数年間に、アメリカの独占資本は、インドネシアで有色金属の鉱山、百万エーカー以上のゴム園を手に入れております。多数の精油工場をつくつております。インドネシアの石油の採取、精製、輸送に投じられた資本の総額は四億ドルに及んでおるのである。アメリカのこの独占資本、特にスタンダード・オイル・オブ・ニユージヤージー、ソコニー・ヴアキユーム・オイル・カンパニー、イギリスの独占資本ロイヤル・ダツチ・シエルもこれに加わつている。こういうものは太平洋地域及び東南アジアのほかの国でも石油の採取権を手に収めているのであります。ニユーギネア西部で発見された大油田地帯は、ネーデルランド・ニユー・オイル・カンパニーがこれを手に入れております。しかしこのオランダ会社の資本は、やはり六〇%がアメリカの独占資本のものなのです。オランダの別な会社パシフイツク石油というものも、やはり石油の利権を手に入れましたけれども、これはまつたくアメリカの石油独占資本スタンダード・オイル・カンパニー、テキサス・オイル・カンパニーのこの二つのものにほかならない。またアメリカの三大ゴム・コンツエルンであるところのユーナイテツド・ステーツ・ラバー・カンパニー、フアイヤーストーン・タイヤ・ラバー・カンパニー及びグツドイヤー・タイヤ・ラバー・カンパニー、これらはスマトラ島の大ゴム園を独占しております。インドネシアからオランダ資本をどしどし追い出しております。タイは第二次世界大戦までイギリスの会社が支配していたところでありますが、ここにもアメリカ資本がどんどんと入り込んで、今英米資本は猛烈に角逐しておる。第二次世界大戦までアメリカの銀行はタイに支店を全然置いていなかつたのが、現在タイの首都バンコツクでアメリカの銀行が活躍している。その資本は五億ドルでこれはほかの外国銀行を合せたものよりも大きい。このためアメリカの独占資本はタイの経済を支配する地位に今のし上つたのであります。このことはタイのゴム輸出を見るとはつきりわかります。四九年にはタイのゴムの六〇%はアメリカに輸出されるに至つておる。アメリカのアナコンダ・ラバー・エンド・テインーカンパニーはタイのすず生産を独占しておる。そのため、一九四九年の十箇月間にタイで採掘された総額七千七百十九トンのすずのうち、三千トン以上というものはアメリカに輸出されている。アメリカの朝鮮への出動によりまして、アメリカの独占資本はますます血眼になつて、ウオルフラム、マンガン鉱といつたような戦略物資を追い求めるようになつております。その結果アメリカの輸入総額のうち軍事戦略物資の占める比重というものは非常に大きくなつております。いわゆる後進国開発計画に関するトルーマン大統領の第四項計画、つまりポイント・フオア、この実行の諮問委員会の報告につけられた統計表を見ますと、アメリカの輸入総額のうち、軍事戦略物資はその七三%を占めている。これらの軍事戦略物資はその四分の三以上が、経済の遅れた諸国、特に東南アジアと太平洋地域の諸国から輸入されております。先の諮問委員会の報告によりますと、アメリカのすず輸入額の三六%はイギリス領マレーから、その一六%がインドネシアから輸入されております。天然ゴムの九六%がインドネシア、マレー、セイロンから輸入されておる。東南アジア諸国の原料資源に対するアメリカ独占資本のこの掠奪的なやり方というものは、表面はいわゆる経済援助、技術援助といつた各種の協定の形をとつて行われておるのですが、アメリカ独占資本はこれらの協定を結ぶ際に、必ずその国の経済と政治をアメリカに従属させるような要求と条件をちやんと持ち出しておるのです。アメリカのいわゆる経済援助のおかげで、フイリピンはますますアメリカに縛りつけられてしまうことになつている。アメリカ支配者の圧力でフイリピン政府は貿易に関するベル法を採択しましたが、この法律はフイリピンの経済に対するアメリカ独占資本の絶対支配を固めるためのものであつた。これによりますと、アメリカの商品には関税がかけられない。それでなくてさえ力の弱いフイリピンの民族産業は、当然非常な圧迫を受けておるのであります。アメリカの独占資本はフイリピンの経済をいびつに発展させております。これは日本についても同様なのです。第二次世界大戦以前を見ますと、フイリピンが輸出していたのは、コプラ、麻、砂糖、タバコだけであつた。ところが終戦後アメリカはフイリピンの経済をさらにいびつにしております。フイリピンは実際しただ一つの原料コプラだけを供給する国にされてしまつております。コプラは輸出総額の三分の二を占めており、その九〇%がアメリカに輸出されておる。アメリカ独占資本の支配によつてフイリピンに非常な経済恐慌がもたらされておる。アメリカ独占資本に押されて、フイリピン政府はフイリピンにとつて有利な中国貿易をしやにむにやめさせられてしまつている。現在フイリピンの輸出の九六・五%は、外国資本特にアメリカ資本の手に握られております。アメリカの援助によつて東南アジア、太平洋地区のほかの国々に同じような状態がつくられている。こういうふうにアメリカという国が東南アジアに向つてどういうことをしておるかということは、政府はよく知らないようでありますが、これで大体政府の認識も深まつたと思う。このアメリカのやり方の一環として、日本はどうでもこうでも東南アジアとだけ貿易をやれ――もちろんほかにもありますけれども、かんじんなお隣の中共やソ同盟というものとの貿易を禁止しておる。ところが次には、アメリカの東南アジアに対する政策というものが、相手の国の民族産業を破壊させておるということ、その生活水準をこのようにさんたんたるものにしておるということは明らかであります。他方において私は政府に尋ねたいのだけれども、ソビエト同盟の東南アジアに対する貿易政策というものについて、政府の認識はどういうものであるか。これもひとつただしておきたいと思います。
  145. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 ポイント・フオア方式で未開発地の開発のために、アメリカがアメリカの資本をそれらの部分に輸出して開発をしておるということを詳細にお教え願つたのですが、アメリカの資本が入つてそういう未開発地が開発されれば、日本にはいい影響がある、つまり日本の貿易が盛んになることになる。それらの未開発地が、軍需物資か何か知りませんけれども、ただ出しているわけじやないですから、私はこれは非常に歓迎することだと思います。それからソビエトの東南アジアに対する通商政策、そういうものは不幸にしてわれわれは承知しておりません。
  146. 風早八十二

    ○風早委員 国際経済会議が四月にモスクワで開かれる。この国際経済会議に対して日本の民間の代表者たちが参加するという場合に、政府はいかなる態度をとられるかということが、私の質問の問題である。従つてそのためには、政府はこの国際経済会議に対してどういう認識を持つているか。その認識がはたして正しいものであるかどうかということを明確にしなければ、これはこの結論に対する判断を誤るわけです。従つて私はこの場合どうしてもソ同盟の、特に今東南アジアを中心にして言つておりますから、東南アジアに対する具体的な政策について政府意見を聞いているわけです。当然政府としてはこれは考えていなければならない事項なのです。特に通産大臣としては、どうして一体日本の貿易を発表させるのか。これはあくまでも日本国民経済がそのために勃興する、日本国民生活水準が高まるというためでなくてはならぬわけだ。ところがその反対にこの貿易をやつたために水準が下り、また民族産業というものがこれでかえつて破壊されるということでは何もならないわけです。その点を私は聞いているわけですが、その点については少しもお答えがない。ただ貿易が発展すればいいじやないかというお話です。そういう点は通産大臣はどういうお考えでしようか。今なされている貿易、将来なさろうとする貿易、それが具体的に日本国民の生活水準を一体上げているのか、この点を聞きたい。
  147. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 私は今とつている東南アジアの開発を促進することが、日本の生活水準を害しているとは全然考えません。かえつてプラスするものが大いにあると私は信じております。
  148. 風早八十二

    ○風早委員 政府はいつもそう思つておらないと言うだけであつて、何らこれに対しても納得の行く説明をやらない。それではただ政府の無責任なる放言であつて、何ら問題を解決するものじやない。われわれは日本の今の民族の危機、ことにこの経済的な危機というものが、いかにして打開されなければならないかということを問題にしているのでありまして、たとえば生産がふえる、資本家がもうかるといいますが、国民生活水準は下つているという現状です。経済安定本部の長官はきよう見えないようでありますが、経済安定本部で出しているその資料自身によつても――一体政府の資料というものはなるべく事実よりもいいように出すものであるが、それでも実際に、鉱工業生産水準というものがすでに百四十何パーセントも戰前から上つていると言いながら、実際はその場合に国民生活水準は七〇%以下に下つている。そういうのが事実なのです。従つて今までやつて来たこの貿易というようなものも、結局それは根本的に切りかえなければ、日本国民経済国民生活にはマイナスになつているということなのです。それをどうしたら切りかえるかという積極的な問題を私は提起している。この二十六年の上期を見ましても、各重要産業、特にこれは軍需向きの産業でありますが、中には五十八割あるいは五十七割、四十九割という莫大なる利潤を収めている。配当は四割から八割であるとか、あるいは四割から六割であるとかいうような実に莫大なる配当をやつている。しかも実際労働者の生活、国民の生活はさんたんたるものである。これについてはまた後ほど労働大臣や厚生大臣が出て来たときによくこれはただしたいと思いますが、実にひどい状態に陥れられている。失業者はちつとも救済されておらない。こういう状態でありますから、われわれはどうしたら日本の貿易というものを、ほんとう日本国民経済のため国民生活のためになるような貿易に切りかえられて行かれるかということを聞いているわけです。そのことを問題にするために国際経済会議が開かれようとしているわけです。このソビエトの東南アジアに対する政策の一端を、私はこの際政府に知らせておきたい。それでなければ議論が先に進まない。
  149. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に申し上げますが、なるべく質疑の要点をお述べいただいて、質疑をお進め願いたいと存じます。
  150. 風早八十二

    ○風早委員 それでは先に答えてください。
  151. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 御質問の趣意が私に十分に了解できないのですが……。
  152. 風早八十二

    ○風早委員 日本国民生活水準並びに民族産業の勃興に対して、実際アメリカのとつている貿易政策、ソビエトのとつている貿易政策、これがどういうそれぞれ関係があるかということを聞いているわけです。日本の貿易も同様でありまして、これが国民生活の水準を上げるのか、下げるのか、民族産業を勃興させるのか、破壊するのか、それを聞いている。さつき私がるるとアメリカの東南アジア貿易政策を述べたのはそれなのです。ここにはつきり出ている。これはアメリカの軍需産業をもうけさせたかもしれないけれども、実際には東南アジアの諸国、フイリピンを含めてこれらの諸国に対して非常な困窮を与えているわけです。だから日本は気をつけなければいけないと言つている。その点をどうかと言つているのです。
  153. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 生活水準の問題ですが、七一%というような数字が出ておりますけれども、私は実質はこの数字以上に改善されていると信じているのであります。そうしてわれわれ政府のとつている政策方針が、順次生活水準を高める確信を持つているのであります。
  154. 風早八十二

    ○風早委員 町に行つて見ればわかる、工場に行つて見ればわかる。シンガポールの通商会議というのは、これはECAFE、すなわち国連のアジア極東経済委員会であるから、よく御注意願いたい。その主催のもとに、アジア極東諸国の通商問題に関する会談が開かれている。アジア極東諸国の代表並びにタイ国代表も出席しております。これはもう日本の各大新聞にもみな報道されている。このアジア諸国の人たちの大きな反響を巻き起したこの会議の会談の中に、こういうふうなことがあるわけです。アジア極東の諸国の代表は、自分たちの国の農工業を発展させるために、機械資材の供給額をぜひともふやしてもらおうと思つている。今度の通商会議に大きな期待をかけている。マレー、セイロンその他多数の国の代表は、イギリス経済が軍事化に狂奔しているため、設備や技術、資材はイギリスから少ししか来ないことに不満の意を述べた。インドネシア代表は特恵関税制度を痛烈に非難して、これは実際上インドネシアが同地域の大多数の国と直接貿易するのを妨げていると述べている。さらに既定的事実として、輸入品の値段がどしどし上つていることもここで指摘せられている。これもみな人ごとではありません。みな日本の今の貿易に当てはまつている。よく聞いてもらいたい、ソビエト同盟の代表ミグノフはこのとき演説の中で、アジア極東諸国の通商が、これらの国の工業化と農業発展のために、いかに大きな意義を持つているかをはつきり述べ、ソビエトの外国貿易機関はこのために役に立ちたいと思つていると指摘しておるわけであります。さらにソビエト代表は、互恵の条件で同地域の諸国に工作機械、電力設備、電気機械、運搬機械、採取工業用施設、紡績、軽工業機械設備、農業用機械、その他これらの国の工業化と農業の発展に必要な各種機械、セメント、木材、肥料、穀産物、また消費用物資を供給できると言つておるのです。ソビエト同盟はこれらのものを売るかわりに、これらの地域の生産品、ジユート、麻、ゴム、樹脂、米、コプラ、香料、茶、すず、キニーネ、何でももらいたいと述べておる。そこでシンガポール初めアジア、極東の多くの新聞はこの会議に関する論調の中で、ソビエト代表の演説を一番注目した、こういう記事が出ておるのであります。これは日本の貿易に重大な関係があるわけです。このソビエト同盟の対外貿易政策、特に東南アジアに向つて具体的に提示しているこの問題は、どこに戦争のにおいがあるか。どこに軍事的なにおいがあるか。みんな相手の国の民族産業の勃興に役立つような品物を……(発言する者あり)自由党の反共分子を取締つてもらいたい。
  155. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います。
  156. 風早八十二

    ○風早委員 実際商品の性質それ自身を見ればわかる通り、これは相手の国の民族産業を勃興させるためのものなのである。たとえば日本とソビエトとの貿易についても当てはまることでありまして、向うからは粘結炭が入つて来る、木材が入つて来る、その他日本としては重工業あるいは軍需工業にでも使おうというようなものでも向うは入れる。しかし日本から向うに入れるものは木船であるとか、その他まつたく平和的なものである。こういう実際の貿易の内容を見ても、ソビエト同盟の貿易政策というものにもう少しまじめな関心を払う必要がある。他方において、アメリカが今やつておる貿易政策というのは、これは相手の国の国民であるとか、その国の民族産業、特に中小商工業なんというようなものはどうなつてもよろしい。むしろこれが破壊されることを基礎にして行われておる。そういうふうにここにはつきりした対照が現われているのでありまして、こういう点を認識することなくしては、国際経済会議に対する判断は誤るわけです。岡崎国務大臣も列席されましたが、まず通産大臣から、日本産業ほんとう意味での発展、従つて日本国民生活にとつては重大な関係があるこの貿易について、こういう二つの対照が出ているが、政府の今後の東南アジア中心の貿易政策は、一体どういう本質を持つているのかということを、通産大臣から答えてもらいたい。
  157. 高橋龍太郎

    ○高橋国務大臣 ソビエトの貿易政策についてるるお話がありましたが、私は先刻申し上げましたように、ソビエトの通商政策というものをよく知らないのであります。またあなたの今ここでお述べになつたお言葉、それがそのまま真のソビエトの政策であるかということも私は判断ができないので、これ以上御答弁はできません。
  158. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早委員に重ねて申し上げますが、質疑時間の都合もありますので、なるべく質疑の要点を簡潔にお述べくださらんことをお願いいたします。
  159. 風早八十二

    ○風早委員 この国際経済会議に対して業界並びに財界の関心は非常に高いのです。なせ高いか。どうにもならないのだ、今の状態では。今の政府の政策ではどうにもならないのだ。どうしてもこの際、特に今批准も近いといわれているこの際に、はつきり貿易政策の切りかえが必要である。このことはどんなに政府がおどかしをかけようとも、実際に業者の偽らざる声であります。     〔発言する者あり〕
  160. 塚田十一郎

    塚田委員長 静粛に願います。
  161. 風早八十二

    ○風早委員 その証拠には、ここに国つ際経済会議中心とする全世界の貿易促進に関する請願書というのが出て来ております。こういう請願書が方々の地域の民族産業から出ておる。これは一々今読み上げるのは割愛いたしますが、こういう業者の声が出て来ておる。また東洋経済新報ですでに特集号でもつて掲げておりますが、日本の財界の大立物が相当集まつて、ソビエトのダムニツキーを囲んで懇談会をやつております。その席でもやはり切々と、今後の日本行き方は結局日ソ貿易、あるいは中日貿易を促進する、これを促進して行くということのみが日本の現状を打開する道である。さらに自分はこの懇談会に行くとすれば、今大臣のいすが目の前にぶら下つておるが、そういうものも振り切つて、大臣のいすよりも日本経済全体の問題であるというかたい決意を持つてここへ臨んだのであるというような意見を披瀝しておる財界の大立物もある。みなはあまりに不勉強であつて、東洋経済新報のこういう懇談会の記事も見ていないでやじを飛ばしておるようでありますが、こういう日本経済今後の進路というまじめな問題、これをどう切りかえるかということに対して、政府に何ら認識がないというに至つては、まつたく唖然たらざるを得ない。そこで岡崎国務大臣が来られましたからあらためて聞いておきたい。今申したような国際経済会議に対して日本の財界その他から、いよいよ実際に出かける、ついては旅券をもらいたいというような交渉があつたとき、日本政府はこれを出すという考えを持つているか、これを岡崎国務大臣からはつきり答弁してもらいたい。
  162. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 これはいろいろ関係があると思います。今風早君からソ連のいろいろな政策をお述べになつたのを拝聴しておりましたが、われわれは実際どういうような通商政策が、ソ連とその他の国に行われているかということを見なければ、ただ口で言つただけでははつきりわからないのであります。そこでヨーロツパのソ連と衛星国家との間の通商貿易の状況、あるいは中共との状況等を見比べまして、必ずしも風早君が言つたような事実を認められないのであります。現に香港には中共地区から逃げ出そうとする人がきびすを接してやつて来て、中には銃殺されておる人もある。東独においてもしかり、オーストリヤ方面においてもしかりであります。またポーランドにおきましては、ソ連の元帥がポーランドの軍隊の参謀総長になつておるというような、いろいろな事実もあるので、われわれは一九四九年のコミンフオルムの大会から端を発したこの経済会議につきましては、いろいろ研究すべきことがあると考えております。なおわれわれの同胞のうちの、ソビエトからまだ帰つて来ない人々の遺家族からは、すでにこの何十万という人々を返してから先でなければ、ソビエトに代表等を出すことには全然承服ができないという、強い要望もあるのであります。こういう点から考えまして、われわれはなお多くの研究すべきものを持つておる、こう思つております。現にまだ旅券等の申請はありませんけれども、ありましてもこういう点を十分研究しようと考えております。  なお私の承知するところでは、財界方面からソビエトに行きたいという意見を述べられた人のあることを聞いておりません。
  163. 風早八十二

    ○風早委員 そういうものがあるかどうかを聞いておるわけじやない。そういうものを今きようにも申請するという場合において、一体政府はどういう態度をとるか、及びその法的な根拠は何かということを聞いておるわけです。質問に対してはつきり答えてもらいたい。
  164. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 ただいま申した通り、旅券の申請がありましても、われわれは研究すべき幾多の問題がある、そういうことを申しておるのであります。
  165. 風早八十二

    ○風早委員 どういう研究すべき問題があるか、これは旅券法の定めるところに従つて旅券を申請して、それ以外にどういう――その旅券の申請者が旅券法の規定に該当するか、しないかということが問題なのです。これについてもう少しはつきりした答弁をしてもらいたい。
  166. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 われわれは国民の保護を必要としておるのであります。ソビエトに行つた人々が多く帰らない状況であつては、まずこの点から、無事帰れるかどうか十分研究して考えなければならぬ。また外貨の問題も研究してみなければならぬ。いろいろの点が研究すべき問題として残つております。
  167. 風早八十二

    ○風早委員 けさほど来岡崎国務大臣は、実に国会を侮辱し、われわれ議員を侮辱しておる。結局政府は目の前に黒があつてもこれを白と言いくるめる。この国際経済会議の問題については、新聞の伝えるところによれば、政府は、これは好ましくないというふうな意向を漏らしておるようです。いろいろな責任のない形でこれを漏らしておるようです。これでもつて思いとどまらせよう、つまり行くまでに封じてしまおうというようなおどかしに使つておるようです。しかしながら実際問題としてこれを申請した場合においては、何ら拒否すべき法的な根拠は一つもない、このことは明らかだ。それを何だかんだと、全然見当違いなデマ記事を寄せ集めた今の岡崎国務大臣の答弁というものは、結局この問題がいわゆる鉄のカーテン――鉄のカーテンがあるということをかねがね宣伝しておつたけれども、今度は一挙にその中へ入つてくれということを言われておるので、今度は鉄のカーテンということは言われなくなつたものだから、その中へ入つたら帰つて来れないという、とんでもないデマを飛ばしておる。政府はこのようにして、まつたく真実がわかることが最も恐ろしい。もし恐ろしくないならば、真実を知らせようという相手方の国に対して堂々と行つたらいいじやないか。結局鉄のカーテンというのは岡崎国務大臣のポケツトにあるだけで、相手にはありはしない。私は岡崎国務大臣に対してこれ以上、この国際経済会議の問題を聞いても結局むだであると考えるから、これは政府がいかに真実を知ることを恐れ、真相を明確にすることをいかに政府が恐れておるかということを証明するものであると信ずるのでありまして、この問題を先に発展さして行きたいと思う。  ダレスに対して吉田総理が出したこの間の手紙でありますが、その際に吉田総理とダレスとの間に密約があるということが伝えられているけれども政府はこれに対しては、この事実はどうであるか、これをひとつ岡崎国務大臣にただしておきたい。
  168. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 政府は国会に隠すべき何ものも持つておりません。密約等は全然ありません。
  169. 風早八十二

    ○風早委員 ダレスの随員のスミスとスパークマンという二人が、東京に参りましてすぐ台湾に飛んでおる。蒋介石はこの二人を前に大演説をやつております。この詳細については実は国府の機関紙中央日報に詳細に書かれておる。その他国府の各機関紙に一齊に掲げられておる周知の事実である。このスミス、スパークマンを前に、蒋介石は大きな演説をぶつておりますが、その中で太平洋統一軍というものをつくつて、ただちに共産党勢力を極東から駆逐しなければならぬ。日本は二十個師団、台湾は二十個師団、韓国は十個師団、フイリピンは十個師団、合計六十個師団ですぐやらなければならぬ。こういうようなことを言つておる。そのときにこのスミスとスパークマンの二人は拍手喝采を送つている。これは日本の問題です。これをやるための徴兵じやないか。岡崎国務大臣、どうです。
  170. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 蒋介石氏もしくはスパークマン氏等が自分意見を述べたり、拍手喝采したりすることは、これはまつたくかつてであります。徴兵は政府がやると別に何も言つたことはありません。
  171. 塚田十一郎

    塚田委員長 風早君に申し上げますけれども、御要求の他の大臣もお見えになつておりますから、なるべく質疑をお進め願いたいと存じます。
  172. 風早八十二

    ○風早委員 木村法務総裁にお尋ねいたします。一月中に木村法務総裁は第一弁護士会において、大臣就任の祝賀会に臨んで、その席上であいさつをして、私は死を賭して共産党撲滅のために闘う。私が死んだら盛大な葬式をやつてもらいたい、こういうことを言つておる。一体木村総裁は共産党撲滅のために大臣になつたのか。東条と同じじやないか。私はこういうフアツンヨ大臣に対して即時やめろということを要求したい。
  173. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 お答えいたします。私は第一東京弁護士会の祝賀に臨んだことがあります。その席上で言つたことはただいま風早君の言つたこととは事実がはなはだしく相違しておる。私は、日本の治安が確立しなければ平和国家を建設することはできないのである。かるがゆえに自分は身を挺して今日の国家治安の任に当ろう、という悲壮な決心を述べたのであります。共産党撲滅なんということは言いません。もしも共産党がかような破壊的な行動に出ることを心に持つておられるならば、これは私の対象になるのですけれども、私は風早君がそういうばかげたことはしないだろうと考えておる。いやしくも日本の破壊的活動をするものであれば、これに対しては自分は断じて許さない。今日日本の平和国家建設途上において、暴力を振い、破壊活動を行わんとするものがあるとすれば、これはいささかも許しておくことはできないのであるから私は身を挺してやるということを申したのであります。
  174. 塚田十一郎

    塚田委員長 山口君に発言を許します。
  175. 山口武秀

    ○山口(武)委員 大分木村法務総裁きれいな口を聞かれたようですね。いやしくも日本の国家の治安を乱すものは容赦しない、こう言われた。そのような決意でいられるならば、まず第一にあなたは吉田政府を取締ればいい。(「何を言うか」と呼ぶ者あり)そうじやないか、だれに頼まれて再軍備をやつているのだ。     〔「答弁不要」と呼びその他発言する者多し〕
  176. 塚田十一郎

    塚田委員長 私語を禁じます。御静粛に願います。
  177. 山口武秀

    ○山口(武)委員 だれに頼まれて憲法を蹂躙しているのだ。あなたはこの間、日本の予備隊はこれは軍隊ではない、戦力を持たないから軍隊ではない、こう言つた。あとでとやかくの取消しも言つているようですが、こう言つたことはまぎれもない事実である。ここで私はあなたにお聞きしたいのだ。なるほど日本では飛行機もないかもしれない。原子爆弾もないかもしれない。ところがだ、そういうようなみじめな状態の戦力しか予備隊が持たないとしても、かりにアメリカの下請軍隊になつてみろ、そうすれば戦力が持てるのだ。アメリカがジエツト戦闘機を飛ばすのだ、アメリカがでかい大砲を持つているのだぞ、軍艦も持つているのだ。原子爆弾もアメリカが受持つのだ。その下でバズーカ砲をかつがせられたり、通信の事務を担当させられたり、あるいは機関銃を持たせられたり、こういう場合は戦力になり得るのだ。これでもなお戦力にならないと言うのか。
  178. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 しばしば私が言つたように、日本の予備隊というものは、日本の治安の確保のために設けられたものであつて、断じて兵力でないということを言つておく。
  179. 山口武秀

    ○山口(武)委員 私は、あなたの戦力定義の問題を聞いたのだ。それを答えてくれ。あなたがこの前答弁したことについて聞いているのだ。
  180. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 戦力とは、戦争を有効適切に遂行し得る能力である。これが戦力の定義である。
  181. 山口武秀

    ○山口(武)委員 そうすると、日本の予備隊がバズーカ砲を持ち、大砲を持ち、あるいは機関銃を特つたりしている。これは有効適切な戦力ではないのか。
  182. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 かようなものを持つても、外国の軍隊と戦争し得る能力は絶対になし。ただ国内治安確保のためである。
  183. 山口武秀

    ○山口(武)委員 なるほどそれだけではソ連と戦えない、それだけでは中国と戦えないかもしれない。しかしアメリカ軍隊の傭兵となつた場合には、その一部分に繰入れられた場合には戦えるのではないか。
  184. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 日本の警察隊は断じてアメリカの傭兵にあらず。また、なるつもりではありません。
  185. 山口武秀

    ○山口(武)委員 しかし、予備隊というのはだれがつくつたのだ。(「共産党がつくつたのだ」と呼ぶ者あり一体共産党に対して予備隊が何の必要があつたのか。だれがつくつたのか、マツカーサーのさしずではないか。また、そのものの受ける訓練も全部アメリカのさしずでやつているのではないか。何が日本のものなのか、そういうものをつくつて平然と憲法を蹂躙しているではないか。これを蹂躙したのは政府ではないか。それをもつて何を取締るというのか、政府自体を取締つたらよいではないか。あなた自身を取締れ。――答弁できないならばあとで聞くからいい、これ以上言わない。
  186. 風早八十二

    ○風早委員 今、木村法務総裁から軍隊の定義が出ているようでありますが、これは同僚山口委員が今言つた通りであつて、戦争を有効適切にやるに足る戦力というのは一体何であるか。日本の場合においては、とにかく行政協定と安全保障条約、こういうものによつて米軍と日本の兵力というものとは一体になつている。一体になつて初めてこの戦争というものが問題になる。日本で今バズーカ砲の訓練や、また飛行機訓練や、さらに高射砲の訓練までやつているというが、そういうものがかりにないとしても、かりにこれは肉弾そのものであるとしても、アメリカのり軍隊の一部としてやつた場合においてはやはりそれは軍隊なのだ。ただ素手でその肉弾に供せられるという役割を分担させられるだけであつて、これは明らかに軍隊である。こういう軍隊論はとつくに済んでいる。ただ問題は、政府が、この明白な事実をそうでないといまだに言うだけの話である。  次に、木村法務総裁に対してさらに団規法の問題をただしたいと思うのであります。団規法というものがいよいよ来る十五日ごろに国会に具体的に上程されるということであるが、この団規法というものは一体何をねらつているのであるか。団規法の内容については、政府内部でもいろいろ重要な異議があつて、いろいろ変化があると聞いておりますが、現在すでに具体的にも提出せられようとしているところの団規法について、その重要なポイントをまず木村法務総裁から明示してもらいたいと思う。
  187. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 まだそういう法案は、いつ国会へ提出するか未定であります。その内容は主として暴力的、破壊的活動をすることを目的とする不法団体を規正して行くという精神にほかならない。
  188. 風早八十二

    ○風早委員 政府は、この団規法において、労働者、農民、市民、また各新聞社からも一齊に反撃を食らつておる。これを何とか押えて、あるいはごまかして、どうでもこうでもこの団規法というものを国会に上程しようとしていることは、これは明らかだ。しかしながら今その口実がない。この団規法を通したならば、前の治安維持法より以上のフアシヨ的なものである。これを出すのには、何か口実をつくらなければならない。そのために――これはもう明日に迫りましたが、二月十日を期して全国一齊に、いわゆる共産党の暴動なるものをでつち上げて、大検挙をやろうというようなことを、これは政府自身が各地で飛ばしておるデマだ。われわれは先般から各地からいろいろ問合せがあるので聞いてみると、そういうふうなデマがどこからともなく、これは系統的に流されているというわけである。これは明らかに団規法を通そうとする政府の実に卑劣きわまる陰謀である。こういうふうなデマに対して政府はどういう責任をとるか、木村法務総裁
  189. 木村篤太郎

    ○木村国務大臣 さようなデマの出所に対しては、政府責任を持ちません。政府はさようなデマを断じて飛ばしません。また二月十日を期して共産党云々という言がありましたが、さような事実は毛頭ないということを私は申し上げる。
  190. 風早八十二

    ○風早委員 岡崎国務大臣にさらにお尋ねしたいのでありますが、わが党の議員を初め、多数の共産党幹部が追放になつておることは御承知の通り。この追放なるものはいくらこれを検討してみても根拠がなつい追放なんだ。しかもまた、これに対して、何ら回復の手段がないというものなのだ。これを一体どうするつもりであるか。これを岡崎国務大臣に答弁を願いたい。
  191. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 追放につきましては、根拠は十分あります。なお今回の訴願につきましては、共産党員の追放された人も、訴願を出すことは自由であります。
  192. 風早八十二

    ○風早委員 一体この追放というものは、当然勅令第一号によつてこれは行われなければならないものである。それには資格審査委員会というものがあつて、必ずこれの諮問を経なければならないことになつておる。しかもそういう資格審査委員会がすでになくなつており、何らその手続を経ないで、ただ吉田総理の一片の指令でもつて、議員その他の党幹部、その他の多数の者の追放が、今日白昼行われておる。これはいかなる法的根拠によつてなされたか。これは今さら訴願とかなんとかいう問題ではない。訴願とは一体何だ。われわれは、この追放そのものが、これはあくまで不法、違法、非立憲であつて、これを即刻取消すことを要求する。何らの法的根拠なしにこういうものが行われておる。いやしくも数万の選挙民から選ばれて、われわれは国会へ出て来ておる。それが一片の指令で、まるでそこらのだいこんでも切るように首を切られて、今さら訴願しろとは何事だ。いまだかつてこれに対する答弁を聞いたことがない。
  193. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 この追放の理由については前の国会において、追放当時しばしば議論になり、しばしば説明しておりますからして、速記録をごらんになればよくわかると思います。
  194. 風早八十二

    ○風早委員 いくらしばしば説明したか知らぬが、少しも法的根拠を示しておらぬじやないか。どこに法的根拠があるか。資格審査委員会というものを経ておらない。まつたくやみ討ちをやつているのだ。これについては何ら答弁がないわけだ。これは一体どういうわけか。これは今でも必ず聞いておかなければならない。われわれはもう機会のあるたびごとに聞かなければならない。いまさら訴願というような、そんなばかげたことではない。その追放そのものが不当であるということは、政府は認めなければならない。
  195. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 訴願をやられるかやられないか、それはかつてであります。追放については、当時のマツカーサー元帥の手紙によつてまず行われたものであり、その手紙には、追放の理由が詳細に書いてあります。あなたの言われる公職資格審査委員会というのは、戦争終了までの軍国主義その他によつて追放されたものである。それから今度の問題は、戦争終了後に新しく追放されたもので、これにはおのずから区別があります。
  196. 風早八十二

    ○風早委員 マツカーサー元帥の書簡なるものを持出し━━━━━━━━━━━━━━━━━これに対しては、これがまつつたく無効であるということの、無効確認の訴状がすでに出ておるわけであります。これは同僚上村進君外六名の名前をもつて出ておりますが、この中にも詳細に出してある通り、一体マツカーサー書簡なつるものは、今日いよいよ批准がなされる、政府のいわゆる日本がこれで独立国になるという場合において、少くも現在において無効たらざるを得ないのである。そういう場合に、その紙片によつて首を切られた者の身分というものは、当然回復せざるを得ない。これは自動的に回復せざるを得ない。訴願の問題ではない。この点については、政府は一体どういう見解を持つておるか。
  197. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 降伏文書等によりまして、マツカーサー元帥が最高司令官として出したる指令については、日本政府はこれを忠実に遵奉する義務を持つております。そうしてこのマツカーサ一元帥の指令は、まつたく合法的のものと信じており、なおこのマツカーサー元帥の手紙の趣旨は非常にけつこうなものでありますから、独立後もなるべくこの趣旨を残すように、何とか立法したいと考えております。
  198. 風早八十二

    ○風早委員 あまりこの問題に時間をとりたくない。あまりに明々白々たるものである。このマツカーサー元帥の紙片というものは、これは具体的に名前を二十四名はつきり指定してやつて来ておる追放であります。しかし少くとも今度の追放においては、そういうことは一つもない。このマツカーサー元帥のやつを援用するというだけの話だ。援用してよろしいということは一つもない。これは具体的にその事項に対して出した指令でありまして、それをかつてに拡張したのは、これは政府責任だ。政府は当然この責任をとらなければならない。この点は岡崎国務大臣も当然認めなければならぬ。率直にこれは認めなければならぬと思う。
  199. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 むろん政府責任において追放したのであります。
  200. 塚田十一郎

    塚田委員長 ただいまの質疑に関連して横田委員より質疑をいたしたいとの申出があります。この際これを許します。
  201. 横田甚太郎

    ○横田委員 岡崎国務大臣に伺います。追放の目的は一体どんなものですか。その実際的な効果を承りたい。
  202. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 追放の目的は、その当該人物を公職から排除することにあります。
  203. 横田甚太郎

    ○横田委員 公職から排除するその結果として、政治活動がますます熾烈になつている現状を、どうお認めになつておりますか。
  204. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 公職から排除された者は政治活動をしないはずであります。
  205. 横田甚太郎

    ○横田委員 しないはずの徳田、野坂が、どうして政府の悩みの種となつているか。この点が一点。政府に良心があつたら、そんな恥知らずのことは言えない。なぜかと申しますと、日本の現状では右を問わず左を問わず、日本の再建のためにじやまになつた追放解除者までも――ついさつきまでその辺に現われておりました木村法務総裁という人までが、出て来て法務の責任者として活動している。追放解除者たちが選挙に出て、今の強力なワンマン総理吉田氏に対立する鳩山氏を自由党の新しい行き方として迎える機運が非常に多い。こういう点について私は聞きたい。これは今までの占領政治が非常に失敗であつた。この占領政治を笑う意味において、追放者がこういうような間違つた形において迎えられる機運があるのではなかろうか。その点に対する見解はどうですか。
  206. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 いろいろ人の名前をあげて言われましたが、個人に対する批評は差控えます。
  207. 横田甚太郎

    ○横田委員 追放者が右も迎えられ、左も活発に活動し、治安関係費がべらぼうにふえても目的は果さない。これは日本の現状から見て、今の政治を笑つている姿である。その追放というものが浮いたものであつて、法が浮いている。実体に即していない浮いた法なんか守つている自由党政権が、アメリカの傭兵になつて、いくら治安費を積んだところが目的を達せられないのですが、その点に対する見解はどうか。答弁がないなら聞かないでおく。
  208. 塚田十一郎

    塚田委員長 御答弁がないようであります。風早君
  209. 風早八十二

    ○風早委員 時間が大体切れたそうであります。私は今日は全部の大臣を呼んであるはずで、池田大蔵大臣、安本長官、運輸大臣、農林大臣、労働大臣、通産大臣その他全部の大臣に対して、まだ質疑が残つているわけでありますから、これは留保して一応今日の質疑は打切りたいと思いますが、一点横田甚太郎君から関連質問の希望がありますから、それに若干の時間を譲りたいと思います。
  210. 塚田十一郎

    塚田委員長 横田委員より関連質問の申出があります。これを許します。  なお横田君に申し上げますが、本日は三時半で委員会終了の申合せでありますから、そのようにお運び願います。
  211. 横田甚太郎

    ○横田委員 引揚者の問題は自由党が一番ためにするための得意の手でありますが、ゆつくり聞いていただきたい。岡崎さんに伺います。  もし日本から出た人で帰つて来なかつたのがあれば、自由党といわず共産党といわず帰つて来なければならない。帰つて来てならぬということはだれも言わない。そこで問題が起るのです。ここにあります統計は、岡崎さんがまだ閣僚でない時代に、私たちが当選して参りました三年前の国会引揚委員会に、これは政府からいただいた資料であります。これによりますと、日本の軍隊は今度の戦争に際しまして、六百六十一方三千八百八十四人出征している。その人たちが六百十四万四千八百四十三人帰つて来た。帰らない者が四十六万九千四十一人だというのであります。それからいろいろの地区から帰つて来た。この帰らない人としては、大体ソビエト地区並びに中共地区があげられている。それでその端的な例をあげますと、米軍が預かりました人員は九十九万三千三百四十七人、これがフイリピン、中部太平洋、それから南鮮、本土隣接諸島、ハワイ、琉球、これだけの地区にまたがつてつた。そのうち一番ふしぎに思いますのは、フイリピンには十三万二千九十四人の人員がおつた。そこからやはり同日の調べによりまして十三万二千九十四人帰つている。そういたしますと残つている者はない。従つてゼロになつている。ところが、このごろの新聞を政府もよく御存じでしよう、比島のルバング島には日本人がおる。これは機銃を持つておる。そしてアメリカにそそのかされて、フイリピンを対象にして講和と賠償の話をしているが、そのフイリピンという治安のよく治まつたとかいう国が、この日本人を警察としかも軍隊まで動員して鎮圧しなければならないといきまいた。ところが軍隊は出せなかつたようだ。投降を勧告しているが、数はわからない。ここで問題が起りますのは、日本との講和の対象になるフイリピン政権なるものは、日本の残留者はここで見るとゼロですから、何にもおらない日本人の影におびえて、警察を出して騒がねばならぬほど、たよりない治安状態のところなんでしようか、これが一つ。それから、もしそうでなしに、りつぱなフイリピンでありながら、しかもこういう形において日本の残留者の問題を問題にしなければならないというのであれば、日本人は一体どのくらい多くおるのか。ゼロがどうして残留者に化けたかを承りたい。
  212. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 フイリピン政府の批評は差控えます。今示された数字は、おそらく三年か、あるいは三年少し前にできた数字だと思いますが、外務省ではわかり次第訂正しております。人間のつくつたものでありますから、多少の異動のあるのはやむを得ぬことであります。その時々刻々わかり次第訂正しつつあります。
  213. 横田甚太郎

    ○横田委員 訂正はけつこうですが、もつと訂正する政策があるのではないか。ここへも出ておりますように、六百六十一万三千八百八十四人の人がおつて、そのうちフイリピンに十三万二千九十四人おつたのが、十三万二千九十四人帰つて来たからゼロじやないか。ところが現に人がおるのですから、ほんとうは残つていないほかのところへそれが押しつけられている。このやり方は、アメリカの兵隊が中心になりまして、われわれが調査に行きましても、共産党員には引揚げ関係の事務はなるたけ見せませんといつて、私も舞鶴から見ずに帰つたことがあります。このやり方ではまず、十三万二千九十四人がフイリピンから帰つて来たんだから、そこにおつたのはこれだけだろう、あとはソビエトにつけておけ、そうしたら、日本人があとで怒つて対ソ戦争するときに役立つだろうという謀略材料であつたのだろう。だから私が聞きたいのは、これはあなたの方で出された資料であるかないか。すれば、どのくらい詭弁を弄してラジオの国会放送討論会で毒説をたたこうとも、事は明らかなんですから、これはあなたの方の資料ですか、そうでないですか、それを承りたい。
  214. 岡崎勝男

    ○岡崎国務大臣 それは遠くの方でよくわかりませんが、外務省の資料なら、資料としてもさしつかえないと思います。但しソ連に入つてまだ帰つて来ない数十万の人――フイリピンにはかりに何かの間違いであつたとしても、百人なり八十人なり、ごく数の少いもので、それを引いても引かなくても、数十万のソ連、中共地区の人の数の大体においては何ら変更はありません。
  215. 横田甚太郎

    ○横田委員 のめのめと大臣でありながら、そのくらい道徳の基準にもならない恥知らずの答弁ができたものだ。あなたの答弁のおかげでどのくらい困つている人があるか。これは最近の話題であつて、サンデー毎日も扱つております。ここに出ておりますが、アナタハンから帰りましたところの埼玉県の本畠村に小高信一さんという夫婦がおる。この奥さんはむめさんという三十七歳の人です。信一さんは、戦死したものだと思つて、親戚の決議で、兄さんの奥さんと弟さんが結婚した。すると戦死したはずの夫が八年ぶりに帰つて来たことは、ここで読んだら笑われるほど古いが大きな問題でしたでしよう。この問題の場合に、日本の憲法によりますと、一夫一婦であつて、戦争時代、出征流行時代言いました日本の古い道徳は、一たび女が嫁した場合には、短刀をのんで行け、二度の夫を迎えるものじやないという古めかしいことを言われ教えられてとついだこの人たちが、親族会議で結婚させられた。しかも政府が夫は戦死したという。政府の公文書を信じてやつたがために喜び迎えねばならない夫の帰りがのろいとなる道徳的破綻者になり、結婚の面においては、これは姦通になつたのです。これは政府の罪じやないですか。例をあげたらいろいろあるのです。だから今のめのめとゼロというような発表をしたこの数字は、数学教室へ行つて、最も頭のいい生徒にどのくらい教えてもわからないのです。なぜかというと、ゼロはゼロで、何もないのを日本ではゼロというのです。ゼロから一が、さらに多くの数が生れた。これではゼロじやない。もちろん自由党の政権のもとには、池田さんというふうな非常に魔術的な数学の名人がおられるのですから、計算のことは別なのでございますけれども、あまりにも人をばかにし、愚弄したところの、この真実を曲げた政策的な破綻は、必ず日本において間違いを犯し、国民の憎悪の的になる、こういうものがあなたたちが感じられる間接的な危険であり、革命であるとか、共産党の蜂起であると心配の種となる、こうなるんじやないですか。ここまで言いますと、おそらく答弁はしつぺ返しでしようから、私ははつきり言つておきますが、ゼロからものが生れないのだということ、それが生れたということ、一つだけじやなしに、例がほしいのだつたら、ここにたくさん例を持つて来ております。  それからこれは読売新聞です。これは共産党のことを一ぺんもよく言うてくれなかつた新聞社のですが……。
  216. 塚田十一郎

    塚田委員長 横田君いかがでしようか、大分時間がたちました。     〔「時間厳守だ」と呼ぶ者あり〕
  217. 横田甚太郎

    ○横田委員 ここにあるのを拾うただけでも恐ろしいことが出ているじやないですか。「白骨の島」がある。「ネムの枝に花と咲く遺骨」「暗黒の壕内に燃える燐光」「触れれば崩れ去るミイラ」「白骨雨ざらしの不審を解く」「遺骨に偲ぶ斬込隊の最後」「南の諸島ウエーク、グアム」「遺骨の収容は困難な仕事」こう書いてある。これに対してあなたたちが敬虔な気持をもつて日本人の血が通つているのだつたら、再軍備はできないし、引揚問題をこんなにもそこつには扱えないだろうと思う。(発言する者あり)そうであるにもかかわらず、こんな扱いをするところに、こんなばかなやじを飛ばす自由党の代議士がある。だからこの点において私の質問はやめておきますが、要はゼロから一は生れないということ。それから委員長、B二九はどうでしよう。
  218. 塚田十一郎

    塚田委員長 今日は時間ですから、また適当なときに関連して……。
  219. 横田甚太郎

    ○横田委員 それでは明後日最初にやります。
  220. 塚田十一郎

    塚田委員長 十一、十二は公聴会がありますから……。  本日の風早委員及び横田委員の発言にもし不穏当の言辞がありますれば、速記録を調べました上、適当の処置をとることといたします。本日の会議はこの程度にとどめることといたします。  なお明後十一日は午前十時より公聴会を開きますから、時間励行の上委員各位におかれては、なるべく多数が御出席に相なりまして、公述人の意見を聴取されますように特に委員長より切望いたす次第であります。  これにて散会いたします。     午後三時三十五分散会