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西村(榮)
委員 あなたは正式に声明して行かれたわけではないが、なかなか出発ときには、色気たつぷりなかつこうで出かけられたので、
国民は
期待してお
つたのですが、失望することははなはだしく、今日に至
つてなお
政府の借款の問題についての具体的な
構想を承れないということは、はなはだ遺憾であります。
そこで一番問題になりますのは、あなたは民間の外資が入らぬために、
一つの法令を制定せねばならぬという御説でありますが、私は
日本の国に入
つて来た金を出さないで置くというような、現在の変則的な立場はよくないと思います。たとえば民間の外資が入るときには、
日本の産業のいわゆる
民族資本の擁護の立場において、政治的に
考慮して行かなければならぬ。たとえば過去七年の間において、
日本が外資の導入々々とい
つて非常に待望し、
期待したが、これが入
つて来なか
つた。しかも
期待し、待望した根拠というものは、單に
日本国民だけのから頼みではありませんでした。誘う水あらば、あるいは魚心あらばというようないろいろなゼスチュアも彼我両国の間にあ
つて、外資の問題というものは出て来たり消えたりした。しかも過去六年間に入
つた外資というものは、
政府のこの間お
示しくださ
つた統計を見ても、株式投資が千五百七十三万ドル、技術援助費が五千百九十三万ドル、技術援助費は、金は何も入
つて来ておりません。もちろん
日本は技術の援助もきわめて必要でありますが、
日本の産業が待望しておるのは資金なのです。しかも資金を求めておる
日本の産業界に、技術援助というのは、戰前の権利を継承したのが大部分なのです。これが外資導入と騒がれた鳴りもの入りの中に三倍半を占めておる。しかもあなたが今指摘された二百数十万ドルという投資が入
つたというのでありますが、この二百数十万ドルの投資の中をお
考えにな
つても、私は将来民間外資の導入について注意しておかなければならぬものがたくさんあると思う。一例を東亜燃料という会社に——私は何も
関係がありませんから公正に言えるのですが、私がさつき電力の問題を心配して
お尋ねしたのはここなのです。
日本の産業の食糧ともいうべき電力と石油と石炭の問題を
考えてみますると、東亜燃料への資金の入り方を見ましても、資本金額の六割入
つた。入
つた後における決算期には四割五分の配当をさせられた。そうすれば大体二年半で、入
つた資金が回収できる。同時にもう
一つ見のがすことのできないのは、東亜燃料で精製した油は、全部スタンダード会社が販売権を掌握いたしまして、製造元は一滴の油も販売することはできません。従来東亜燃料から受けてお
つた販売店は、一割の手数料をと
つていた。ところがスタンダード会社が販売権を握るや、それを五分の一に切り下げて、大体二分の手数料ということに
なつた。そのことは一体何を
意味するか。一割の手数料を拂
つて東亜燃料が引き合
つていたものが、手数料が八分減額されたということは、一体
日本の経済の中に入
つて来たのがスタンダード会社の中に入
つて来たのかということを
考えてみると、外資の導入というものも、外から資金の援助によ
つて日本の産業を再建して行かなければならぬということは、議論の余地はありませんが、その導入の條件は、私は将来財務当局として
考えておいていただかなければならぬ、こう思うのです。私はその一例を申すと、あなたが
政府的借款というものはまだ具体的に日程に上
つていないと説明された中において、参考になるのは、明治三十年——古いことを申し上げますけれ
ども、
日本の興業銀行が設立されたときの歴史を、この外資導入と関連して思い出していただきたい。興業銀行は主として外国から資金の供給を仰いで、日露戦争後における疲弊した
日本の産業を立て直すために外資を導入した、そのときにおける條件というものは、外国から入
つて来る資本は一括して興業銀行が借り受けました。これに対して
政府は元利支拂いの保証をいたしました。同時にその興業銀行が各個別の産業に投資する條件は、興業銀行の自主的な判断にまかされた。私はこれを
考えてみると、金は借りたが、屋台骨まで持
つて行かれたというような結果を生じ、すなわち
日本の産業をそつくり持
つて行かれてしまう。政治的には独立したが、経済ののど首はよその国に締めつけられておるというような外資の導入の仕方というものは困ると思うのであります。この点外資の導入を私
どもは大いに歓迎しなければならぬし、同時にその外資を優遇する條件も、元利の支拂いの保証に対しては、われわれはその資金を持
つて来た人に安心の行くような
法律をつくらなければならぬのでありますが、
日本の産業の屋台骨を持
つて行かれるような外資の導入の仕方は困る。特にあなたが今
政府対
政府の借款というものは具体的にな
つていないという御説明を承
つて、以上の点を外資導入について
考えておいていただきたい。
最後にあなたに御
質問しますが、それならば問題は総理大臣が本
会議で、あるいはあなた自身も、外資導入によ
つて日本の産業は立ち直
つて行くのだというがごとき演説をされた。あれは
国民に対して
一つのうれしがらせだと
考えていいのですか。