○岡(良)
委員 私は議事進行に関しまして動議を提出いたしたいと思います。
それは衆議院規則第五十三條にのつとりまして、前厚生
大臣橋本龍伍氏を証人として、本
委員会の決議をも
つてその証言を求めるという動議であります。
その理由は、申し上げるまでもなく、戰争犠牲者、なかんずく戰歿者の遺族と、傷痍軍人、その他の国家補償の問題は、單に
わが国だけではなく、
国際的にも重大な戦後の跡始末の問題といたしまして、すでにイタリアや西ドイツにおいても一昨年十月にその法制化が終り、昨
年度の
予算においては
相当大規模な
予算措置をも
つて国家補償の全きを期しておるのであります。従いまして、われわれ衆議院といたしましても、すでに数次にわた
つて各党共同の決議で、院議をも
つてその国家補償の徹底を要望いたして参つたことは御存じの
通りでありまするが、なかんずく昨年五月以来厚生常任
委員会は、特にこの問題のための小
委員を設置いたしまして、無慮三十数回にわたる小
委員会の議を経て、昨年十一月二十八日には厚生常任
委員会の決議をも
つて、強く厚生省当局にその
決定の実現を要望いたしたのであります。その案を簡單に説明いたします。遺族の国家補償に関する要望書、戰歿者の遺族に対しては国家補償の観念に立脚し、援護を與えるものとし、左の事項に留意するものである。第一、その対象は軍人、準軍人、軍属、または未復員者にして、公務のため負傷し、または疾病にかかり死亡した者の遺族、なおこの要望書に関連いたしまして、中でも特に重要な点は援護の種類でありますが、その援護の種類といたしましては、まず第一に年金の支給、特に遺族年金の支給に関しましては、その支給の対象たる遺族の範囲及び順位は配偶者、子、父母、孫、祖父母というきわめて広汎な範囲を含めておいたのであります。そのほか遺族一時金の支給や、また生活の実態にかんがみまして、増加加給の実現等を強く要望いたしたのであります。その結果といたしまして最近、昨年の終りから本年の初めにかけて厚生省原案なるものが、新聞で示されております。これを拝見いたしますると、戰歿者に対する国家補償の建前から、妻、十八歳未満の子供、孫、六十歳以上の父母、祖父母には年金を與え、それ以外の遺族には公債を支給する。補償基準の伍長の線において、年金は妻二千円、未成年の子供人につき千円、六十歳以上で扶養義務者のない両親は四千円、片親二千円、未亡人と同居する両親、祖父母、孫は一人につき五百円云々、この
予算は総額三百九十億でありまして、その他に交付公債の一千余億円が見込まれております。この原案にいたしましても、先ほ
ども申し述べました遺族援護に関する各党一致の小
委員会の
決定とは、おそろしく隔た
つておりまして、たとえばこの原案によるところの補償の基準を伍長の線においていたしまするときに、戰争中における営外居住の伍長の月の所得は約五十円であります。これをベース・アツプいたしまして、それに対しまして適当なる遺族扶助率を加算いたしまするならば、当然三千円を上まわる数字が出るのでありまして、
委員会といたしましては、一致した見解には到達いたしませんが、われわれはその
委員会においても、かかる数字を強く主張したことは、
委員長の
高橋さんもよく御存じのことと存じます。そういうようなわけでありまして、われわれといたしましては、超党派的な気持からいたしまして、戰争犠牲者の援護に関してはできるだけ納得のいく
方法を講じてもらうということが、今後国家が
独立をして、
経済自立のために国民が相携えて大きく奮い立つためにも、最も適切なる方途といたしまして
政府の善処方を強く要望いたしておつたのであります。ところが今度提出されましたところの遺族援護の
予算は、きわめて低調子であります。すでにこの
予算書にも見えまするように、総額といたしまして、たとえば二百三十一億余円の障害年金、あるいは遺族年金その他更正援護なり、あるいは遺兒の育英
資金というものが要求されておりますが、こういうことではなかなか容易に現在の遺族、ひいてはこの問題に対して重大なる関心と同情を示している国民を納得させることはできないと存ずるのであります。大藏省のただいま
予算に提出されておられます数字を拝見いたしますると、れれわれはすでに衆議院の小
委員会においても、遺族援護に関してはあくまでも国家補償の観念に立
つてもらいたいということを、強く要求いたしておるのであります。しかしながら、依然として
予算書に提出されておりまする
政府の遺族に対する底意は、單なる一片の援護にすぎないのでありまして、この国のために強制的に尊い一命を失い、あるいはまた不治の疾患あるいは不具のために、
生産能力を奪い去られ出た諸君に対する報い方は、援護というようなそういう
考え方ではなく、あくまでも国が国の責任において、その一切のめんどうに対して補償に立とうという思いやりが、当然あろうと思うのでありますが、それが言いならわされている援護という
言葉にな
つていることは、まことに遺憾にたえないのであります。しかもその
内容におきましても、あるいは遺家族の年金が一千円であるとか、あるいは身体障害者のうちで特に重症なる者で、両眼を失つた者については年五万六千円であるとか、あるいは
予算書を見ますると、七千六百人の高等学校や大学の遺兒に対して、育英
資金が供されるのでありますが、われわれの調査によれば、一万四千人を上まわる大学、高等学校の遺兒がおるのでありまして、現在残されている母や、あるいは死に去つたところの父親にいたしましても、子供の育英ということは、ほんとうに心からの念願であつたろうと思うのであります。しかしながら、これは
予算的にも、またその調査においても、きわめて粗漏であることは遺憾千万であります。そういうようなわけでありまして、われわれ衆議院の常任
委員会で
決定いたしまして、昨年十一月二十八日
政府に送達いたしましたるわれわれの要望とはおそろしく違い、かつまた新聞紙の報ずるところによれば、その問題に関連いたしまして、厚生
大臣の橋本龍伍氏は、その職を辞しておられるのであります。厚生
大臣の橋本龍伍氏は厚生行政の主務
大臣といたしまして、強くわれわれの要望に沿わんと
努力されたのであるが、それがあえなくその職を辞されたのでありまして、これは決して一橋本龍伍氏の問題ではなく、国がこの問題を大きく取扱わんとする段階に立
つて、厚生
大臣たる国務
大臣の職責において、その職を賭してまでも強く国家補償の線を維持されたことに対して、
政府の中においてとうとうこの
意見が用いられずして捨て去られたということは、われわれはこの重大なる問題を
審議いたしまする場合におきましては、当然重要なる参考といたしまして、橋本龍伍氏の所感を十分に承りたいと思うのであります。(「その
通り」)この点におきまして私は、衆議院規則第五十三條に基きまして、
委員員が、
委員会の
決定をも
つて橋本龍伍氏をこの席に証人として出頭を求め、その証言を要求されるところの決議に到達せられんことを希望いたす次第であります。(拍手)