○三宅正一君 私は、共産党を除く
野党各派を代表いたしまして、国会解散
要求決議案の趣旨を弁明せんとするものであります。(
拍手)
まず
決議案文を朗読いたします。
衆議院解散に関する
決議案
衆議院をすみやかに解散すべし。
右決議する。
理 由
わが国は、講和條約発効とともに、永年にわたる占領行政から解放され、真に自主独立にふさ
わしき国家の態勢を整えるため、庶政一新の必要に迫られている。
しかるに現
衆議院は、被占領時代の遺物であつて、その構成において既に世論の正しき反映と認めることは出来ない。
われらは、すみやかに
衆議院を解散して新しき民意に添う国会を形成すべきを至当とする。
以上の
理由をもちまして、私
どもは国会解散
要求の
決議案を本院に
提出いたしたのでありますが、国会が解散を行われる場合といたしましては、現行日本憲法によりますれば、第六十九條によつて内閣
不信任案が可決されるか、ないしは信任
決議案が否決された場合は、内閣は当然に総辞職するか、国会を解散せねばならぬことは、あらためて申し上げるまでもありません。この憲法第六十九條に定める場合のほかにも、さきに両院法規
委員会が勧告せるごとく、民主政治の
運営上、新たに国民の総意を問う必要があると客観的に判断され得る十分の
理由ある場合には、内閣は憲法第七條により解散の助言と
承認をなし得るが、この場合、内閣の專恣的判断に陥るおそれなしとしないので、その判断が適正なるものであるような保障あることが望ましく、現行憲法の運用といたしましては、たとえば
衆議院が解散に関する決議を成立せしめた場合においては、内閣はこれを尊重し、憲法第七條により解散の助言と
承認を行うというがごとき
慣例を樹立することが望ましいと述べておるのでりまして、われわれはこの立場に立つてここに解散
要求の
決議案を上程した次第であります。(
拍手)
本来、世界的に確認せられました民主主義政治運用のルールの上に立つて考えまして
吉田内閣は、今までに少くとも五回以上、その政治
責任上当然に総辞職か解散か、二者その一を選ぶべき機会があ
つたにかかわらず、もつぱら党利党略のために、厚顔にも、ほおかむりして、それを見送つて参
つたのであります。(
拍手)
その第一回の機会は、
昭和二十五年、第七通常国会、すなわち、さきの
参議院選挙の前の国会におきまして、政治上重大な
責任を負うべき重大法案である地方税法が握りつぶされ、食糧
確保臨時措置の一部
改正法案が否決されたときであります。いやしくも
責任政治のもとにおいて、かかる重要法案が否決されたときにおいては、当然に内閣は解散か総辞職か、二者その一を選んで
責任の所在を明白にすべきことは、民主主義政治運用の当然のルールであります。(
拍手)政府は、地方税法にはほおかむりをし、食糧
確保改正法案の否決に対しては、ポ政令をもつてこれを強行するという重大なる憲法違反をあえてし、てんとして恥ずるところを知らなか
つたのであります。
当然に解散か総辞職すべき第二の機会は、
吉田内閣が一枚看板の政策として公約し、これにより絶対多数を獲得いたしました主食統制撤廃の実現不可能と
なつたときであります。主食統制撤廃を旗じるしに
選挙に勝
つた吉田内閣は、二年有余の準備の末根本農林大臣をして米の統制撤廃を実行せしめんといたしましたが、輿論の総反撃と、総司令部の不
承認にあい、遂にこれがとりやめを声明いたしましたのは、
昭和二十六年十一月六日であります。この重大な政治的失敗に際しても、ひとり根本農相に
責任を負
わしめて、内閣自体はごうもその
責任をとらざるごときはわれわれはその政治感覚を疑わざるを得ないのであります。(
拍手)米の統制撤廃は、一根本伴食大臣の
責任にあらず……(「伴食とは何か」と呼ぶ者あり、笑声)
自由党の金看板であり、当然に
吉田内閣及び
自由党全体の連帯
責任でありまして、これが流産した
責任は、総辞職か解散をもつてこたえらるべきであると信ずるのであります。(
拍手)
第三の解散の機会は、講和
会議出席の前であります。サンフランシスコの講和
会議に臨むにあたつては、講和を予定せずして
選挙された
吉田内閣の立場を謙虚に反省し、
会議に臨む態勢として、国会を解散して、この講和の形式と内容を主題として国民輿論に問い、新しき基盤の上に衆望を得た新政権をして講和
会議に対処さすべきことが当然であり、輿論も強くこれを要望せるにかかわらず、
吉田内閣はこの機会をも逸したのであります。(
拍手)かりに百歩を讓りまして、講和
会議は
吉田内閣がその
責任において臨んでも、民族百年の運命を決する講和両條約の批准にあたつては、これに先だつて国会を解散し、国民の新しき総意を集結いたしまして、その
承認、不
承認の態度を決すべきであります。もし
吉田内閣にして、国民を代表して自信をもつて調印せるものならば、当然この挙に出ずべきであ
つたにかかわらず、この機会をも失
つたことは、これ第四回目の民主主義ルールの侵犯であるといわねばなりません。(
拍手)
しかして、解散第五回目の機会は、四月二十八日、講和條約が発効して日本が独立した日がこれであります。占領下の国会が独立国会に生れかわつて、独立の完成、経済の自立、世界平和の推進に寄與するためには、講和発効の機会こそ国会解散の絶対にして最良の時期であ
つたのであります。(
拍手)内外の輿論がこれを
要求したのみならず、
自由党初代総裁鳩山一郎氏もまた、去る六月二十七日の記者会見において、いずれにしても私としては、解散の時期は去る五月が最適であ
つたと思つていたと言われたことをもつていたしましても、この時期が最適であ
つたことは明白であります。すなわち、
與党、
野党の立場を離れても、講和発効の時期こそは解散の最良の時期であ
つたと信ずるのであります。(
拍手)
以上五回にわたる解散の時期を見送り、政権に恋々たる
吉田内閣は、満身創痍、今国会においては会期を無理押しに延長すること実に五回、延長日数のみにて八十五日、常会の会期百五十日に通算すれば、実に延々八箇月、二百三十五日の長きに達し、わが国国会史上空前にして、おそらくは絶後でありましよう。(
拍手)この空前の会期延長の
責任は、憲法を蹂躪し、国会を軽視し、世論を無視して、国民生活を顧みずして権力主義を振りま
わし、ひたすら逆コースを行かんとする
吉田内閣の施政そのものにあることは申すまでもありませんが、特に党内統制の実力を喪失した
自由党自体の内部
混乱と、国会最終目にすら欠席して、みずから
議員たるの義務を怠り、行政府の長たる
責任を顧みず、驕慢僣上の旧式貴族趣味におぼれて国会を軽視した吉田首相がその
責任の大部分を負わなければならぬものであることは申すまでもありません。(
拍手)
しかも、その行うところ外交は、自主性なき腰抜け外交に終始し、内政は失敗と腐敗と不統一を重ね、権力と
暴力と相激突するところ、今や国内に三十八度線がつくられ、国内治安は内乱前夜をほうふつさせるものがあることを、
諸君はお考えにならなければならぬと存じます。(
拍手)経済は、他国の援助と僥倖的な特需と、婦人の貞操とによつて、かろうじて支えられ、国民の生活水準は戦前の八〇%に停滯し、しかも所得の不公平は一家心中の続出と
なつて現われておるのであります。ひとり鼓腹撃攘の享楽をほしいままにしておるのは、大資本につながる少数の特権階級と、横行する汚職官吏と、政治の一切を利権化して顧みない一部の
諸君のみのであると私は考えるのであります。(
拍手)
さきに内閣
不信任案において、
吉田内閣数々の失政は、同僚
議員が鋭く追究したところでありまするから、私は、それをこの上ここに 喋々することはいたしません。政局の
混乱、国民生活の不安、治安の紊乱はもとよりでありますが、かかる末期的症状を反映して、
與党内部の対立抗争も日を追うてはげしくなり、
吉田内閣は内部的にも崩壊のきざしを示すに至つておるのであります。特に最近の
吉田内閣と
自由党の
混乱は、正視するに忍びざる断末魔の形相を呈しており、(
拍手)一箇月にわたる長期の第四回の会期延長も、党内
混乱のために、みずから
議事を澁滯させ、てんやわんやのうちに会期を空費して、最終日の昨日、五十に近き議案をかかえ込んで四苦八苦しながら、しかも
総理は国会をサボるのわがままをして、さらに五回目の会期延長を強行する、正気のさたとは言えぬ醜態をさらけ出しておるのであります。(
拍手)
政府提案の
教育委員会法等の一部
改正法も、
野党総退場のもとで、
委員会で政府提案を
與党が強行して否決するという、議会史上いまだかつてない逆コースをあえてやりながら、(
拍手)輿論の反撃にあつて、その取扱いに窮し、これを流産させるため四苦八苦をするに至りましては、この一事をもつていたしましても、内閣は投げ出すべく、党は解党して罪を天下に謝すべきであると存ずる次第であります。(
拍手)
独立後九十日を経て、国連関係の英軍の駐留條件をきめ得ずして、無條約状態のもとに外国軍を駐留さすぞとき失態も、これみな不自然の多数にたよつて政権に恋々とした罪の報いというべく、その
責任は重大であります。福永
幹事長を吉田総裁が指名して党内の総反撃をくらい、月余にわたり党内鳴動、沸騰して決せず、党の
混乱がひいて国会
運営の
混乱となり、国政の澁滯と
なつて、今や收拾の道はま
つたく絶えたという最後のどたんばで、
林議長の
幹事長就任で一応危機を切り抜けたことは大慶にたえませんけれ
ども、禍根はますます深まりつつあるといわなければなりません。この原因は、おほりばたの権威に隠れて、ワン・マンのわがままを通し、側近の阿諛仰合に誤まられた人事が、独立によつて占領軍の権威に隠れることができなく
なつて、神通力を失
つた吉田氏に向つて爆発したものであることはもとよりでありますが、その根本的な
理由は、天下の輿論に抗して政権にかじりつき、解散によつて人心を新たにすることを忘れた結果であり、この内外の行詰まりと鬱血を打開するためのただ一つの手段は、国家のためにも、政府のためにも、すみやかなる解散の断行にあることを絶叫いたしたいのであります。(
拍手)
自由党の国会対策
委員会は、さきに
野党の本
決議案に同調することを決議し、
山口喜久一郎君は、さきの
不信任案反対
討論において、不信任決議は反対だが、解散
決議案ならば受けて立つと、この
議場において、
自由党を代表して天下に公約したのであります。(
拍手)それが單なるやせがまんや恫喝ならいざ知らず、言うならば、
自由党は当然この
決議案に同調すべきであると私は確信いたすのであります。(
拍手)しかして、われわれは、正式に
自由党に対して同調方を申し入れたのである。
私は、ここにあらためて解散
要求の
理由を述べることをやめて、鳩山氏の談話の一節をかりて解散
要求の結論といたします。新聞の報ずるところによれば、鳩山氏は次のごとく言つておるのであります。今はだれも
吉田内閣が任期一ぱい政権を担当できるとは信じておらぬ、
吉田内閣の命脈は旦夕に迫つているとの感が深い、それはこれまでの罪悪の結晶であり、あやまちの集積がそう
なつたので、打解は困難である、このような状態に
なつてから立ち
上つた内閣はかつてなく、民心を離れた内閣は、策を弄して、ちよこまかして、日本の進路を誤らぬように善処すべきである。命脈の盡きている内閣は、総辞職すべきか、解散すべきか、どちら一つの方法を選ぶべきであつて、政界の常道から行けば解散すべきである、その際解散の
理由は、につちもさつちも行かぬから解散ということがよかろうと、教えておるのであります。(
拍手)さすがは、死の一歩手前まで行きながら、強固な
意思と熱情とをもつて勇敢に病気と闘い、政界に復帰して最後の奉公を熱願されている先輩の声やよし。
吉田内閣の命脈は旦夕に迫
つたが、その原因は罪悪と誤りの集積の結果である、こう
なつたら、ちよこまか悪あがきをすることをやめて、日本の進路を誤らぬように善処すべきである、善処の方法は総辞職か解散だが、この際解散がよろしかろう、解散の
理由は、につちもさつちも行かぬから解散ということがよかろうと言うておるのであります。まさに平易適切、痛烈にして的を射た言というべきでありまして、内閣解散の主文も
理由も説き得て妙であります。
私は、
自由党の
諸君が、この大先輩の声を天の声と聞いて、われわれ
提出の決議に同調されんことを熱望いたしまして、議案
提出の
趣旨弁明にかえる次第でございます。(
拍手)