○小林信一君 私は、ただいま上程になりました
義務教育費国庫負担法案に対しまして、
共産党を除く野党各派の共同
提案になります修正案について
提案の理由を申し上げて、全員の御賛同を得ようとするものであります。(
拍手)
われわれの修正の根本理念は、地方教育費の大部分を現行平衡交付金制度から除外して、義務教育の無償を実現するために、大幅な国庫負担を確立し、教育費の確保をはからんとするものでありまして、教育制度の改革がなされましても、実際においては父兄大衆の犠牲によ
つてのみ実現が可能である現実に対し、その財政的に過重な負担にたえられなくなる地方の将来を憂慮するとともに、憲法の
精神と新制度の目的にかんがみまして、以下述べるような規模と内容とをも
つて原案を修正せんとするものであります。(
拍手)
第一に、適用範囲について原案と異なります点は、公立の幼稚園、高等学校を対象の中に入れた点であります。児童福祉と地方産業の進展の上から、幼稚園設置の必要は一般に
要望されながらも、経費の点で行き悩んでいる
現状を見ますとき、この際適用範囲にぜひ入れるべきであると確信する次第であります。さらに高等学校は、新制度
実施以来、その存在がまことに軽視されまして、その卒業生の六割が実社会に出て中堅的存在となるのに対しまして、適切な教育がなされておらないと、とかくの非難があります。これは、地方財政の窮乏から非常に冷酷に取扱われまして、十分な施設がない結果でありますので、この際国庫の費用によ
つて維持運営をはかられたいと考えたのであります。特に定時制高等学校は、働く青年
諸君のために設けられた制度であります。その
要望また切なるものがあるのでありますが、遺憾ながら実際には無視されておるような
状態で、一面、青少年の不良化が強く叫ばれながらも、これを放置することは、機会均等の原則からも許されない点でありまして、過去において半額国庫負担の対象になつた事実から考えましても、当然これもこの中に入れるべきである、こう確信して入れたわけであります。(
拍手)
さらに負担の種類といたしまして、第二の問題を申し上げますが、原案におきましては、給與費と建築費、教材費、災害復旧費と出ておりますが、私
たちは、これに加えて教科書と学校給食の費用をどうしても入れていただきたい、こういう念願で修正したのであります。教科書につきましては、昨年、
政府提案によ
つて、義務教育無償の原則を
促進する第一歩として
実施するという
趣旨の
もとに立法されて、一年生に、わずか二冊の本ではありますが、支給されたのであります。ところが、本年これが訂正されまして、入学のお祝いとして国家が贈呈するというような、憲法の
精神を徹底する重大な
責任を持
つております文部省が、その
精神に逆行し、小さな
国民に理解に苦しむような
措置をあえてしておることは、遺憾のきわみであります。しかも、教科書を何とかして安くしてくれと、子を持つ親はひとしく悲鳴をあげておるのが
現状であります。これを考えますときに、この法案にやはり教科書も含めて行かなければ非常に無意味なものになる、かく考えまして、これを入れたわけであります。
さらに学校給食におきましては、昨年、現
政府の方針といたしまして、これに対するところの補助打切りが宣告されたのでありますが、給食は教育の一環として、その重要性はすでに父兄の各位に確認されておるのであります。設備に対しまして父兄が支出した金は、全国通算いたしますと百億を越える
状態であります。
政府の理解のない、しかも一貫しない教育行政に対して、この
政府の方針に対して怨嗟の声が高まつたことは、
皆さんの御
承知のことであります。(
拍手)これに対しまして、
政府は、ところもあろうに、農林省から、この費用二十四億を本年度予算に計上して、この
国民の抗議を避けたのでありますが、かえ
つて国民からその無知無能を暴露される結果にな
つているのであります。
国民からとる税金であります。それが児童のために使う金ならば、なぜ文部省から出さないか、何かこの補助金を確保するところに利権がつきまとうのではないかというような疑いを持ち、教育のことにまで官庁の権限争ういを介入させるのか、どうしてこんなに文部省は弱いのかと、いろいろな疑惑と不信を招いておる
現状から思考いたしましても、この際大英断をも
つて、負担法の中に入れて
処置すべきであると私
たちは考える次第であります。(
拍手)
第三につきましては簡單に申し上げますが、その一つとして、負担額を二分の一としてありますのは、か
つて半額国庫負担をしたことがありますた、これに返るならば無慮味であります。やはり、われわれは、この際教育の重大性を認識するとともに、真に文化国家として行こうとするならば、国家の財源をこれに割愛すべきである、こういう観点からいたしまして、われわれは五分の四を
要求しておるのであります。
さらに二点といたしましては、職員数についてであります。原案でも、産休の補助教員とか、あるいは
病気で休む先生、あるいは事故で休む先生等がありますが、この先生
たちの休まれる場合に、子供がとかく放任されまして、非常に悪影響がある点から、原案におきましても、病欠、事故欠等の補助教員をつくりたい、さらに養護教諭の問題、事務職員等の問題をうた
つてはありますけれども、これらは一切含めまして一・五とか一・八とかいうような漠然たるもので、はたして実際の数が確保されるかどうかわからない法案にな
つておりますので、私
たちは、法文にこの数をしつかり明記して、その数が適切に確保されるようにしたのであります。
第三番におきましては、この法律によりまして教職員の給與が
現状より下ることがないよう、地方の
実情を尊重しようとする点であります。
四番といたしまして、老朽校舎の建築費でありますが、その起債を認めるだけでなく、半額国庫負担をしなければ、今日地方の経済事情から考えますときに、老朽校舎はその危険の
状態を持続する以外にない
状態からして、どうしても半額国庫負担をお願したい、こう私
たちは考えたのであります。(
拍手)
さらに五番といたしまして、災害復旧費は、原案には二分の一の補助金が書かれてあるのでございますが、やはりこれは、一般災害と同様に三分の二が補助されなければならぬという見地から、これを修正したのでございます。
以上、修正の要点だけを説明したのでありますが、その比較対照をしたものは、自由党の議員
提出によります原案でありまして、昨日文部
委員会を通過しましたものは、原案と似ておよそ非なる修正案で、自由党の原案を自由党で修正し、野党全部の
反対の中に通過したものであります。これだけで、その内容は
皆さんに御了解がつくと用いますが、各條項とも、その
数字、金額等はすべて政令でこれを定めるとして、一つとして完全にその
実施内容が明確にされておらないのでありまして、これでは、
国民が一体何がどの程度負担されるのか、おそらく了解に苦しむと私は思うのであります。(
拍手)しかも、その
実施期日は政令で定めるとあるに至りましては、いよいよも
つて私
たちはこの修正案を信ずることができないのでありまして、かかる修正案をも
つて真に教育を愛するというような政党がもしあるならば、おそらく
国民からその信をただちに失うものと私は確信する次第であります。
こういう
状態でありますので、
提案者側からは附帯
決議が出されております。これは確信のない法律であることをみずから裏書きしたというべく、そのほかに何ものもないのであります。(
拍手)しかし、私は、同じ文部
委員といたしまして、自由党の
委員が、
委員長初め、いかにしてこの法案の実現を期するかに専心
努力されたことにつきましては敬意を表しております。原案を
提出しながら、党内が紛糾して意見の一致がなされず、廃案のやむなきに至るかとまで憂慮されながら約一箇月、全員重大な決意をして臨まれたことは私は
承知しておるのでありますが、しかし、かく自由党の
諸君がなぜ決意をしなければならなかつたか、この事実は、結局教育無視の
政府並びに
與党の真意を如実に証明するものでありまして、新制中学校はできたが、一方、小学校は腐朽して、その使用に危険さえ感ぜられながらも修理改築ができない。建物があ
つても、現在の教育が
要求するような施設、内容、教材は依然として整備されない、戰災復旧はいまだ終了しない、教育
委員会は財政的権限が付與されないために、その機能を発揮するに至
つていない、この地方教育の事実を無視して、文部
委員諸君の熱意も報いられず、本法案が、かくも無残に、満身創痍の姿にな
つてここに現われるところを見ると、現
政府の文教政策の根拠を疑わなければならないのであります。(
拍手)
政府は、最近いろいろな取締り法案を濫発しております。これは文化国家への道を忘れて、警察国家への転換でも考えられておるのではないかと、私は非常に疑
つておるのでございますが、こういう点からにらみ合せてみますと、この教育立法から考えまして、これは当然のことのようにうかがわれまして、まことに遺憾千万というべきであります。
現在
委員会に上程されております教育
委員会法等の一部改正
法律案も、かかる教育無視、警察国家への強化、
党利党略に目的を置く
政府、
與党の策謀によ
つて、同じような運命をたどりつつあるのであります。各新聞とも、社説によ
つて、この事実を指摘し、その政略的意図を暴露しておる。自由党文部
委員の
諸君でさえも、これに対して非難攻撃しておりながら、何ら反省することなく、
参議院を通過して一箇月もたな上げして、ようやく
委員会に上程し、今これの握りつぶしを計画しておると、本日朝日新聞にも堂々とすつぽ抜いてあるのであります。(
拍手)かかるふまじめな、悪辣な教育行政をあえてして、施設の不十分な、内容の整わないような学校で
日本の教育を……。