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青柳一郎君 ただいま議題となりました
日本赤十字社法案について、厚生
委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。赤十字は、
世界の平和と人類の幸福をもたらすために、一八六四年、ジユネーヴにおいて、スイス国外十一箇国の間に締結せられた、戰時における戰傷病者を救済しようとする赤十字條約によ
つて確立せられ、一九〇六年及び一九二九年の再度の條約改正を経て、現在
わが国を初め七十箇国によ
つて支持せられておるのであります。また赤十字社は、赤十字條約加盟各国において、この條約の崇高な使命を達成するために奉仕しようとする、平和を愛好する人々によ
つて組織せられ、その活動は、赤十字條約の規定に
従つて戰時における戰傷病者の救済に奉仕するほか、常時において人々の健康を増進し、疾病を予防し、また天災地変その他不測の不幸から派生する生活上の苦痛を軽減することにあらゆる努力と奉仕がなされ、しかもこの努力と奉仕は、自
国民のみにとどまることなく、各国赤十字社相協力して、可能なる限り広く
世界各国の人々の上になされるものであり、このため、赤十字條約加盟国の各赤十字社は国際赤十字機関を構成して、組織ある赤十字活動を展開し、かつ赤十字活動を通じて強固な国際親善の基礎をつちかい、
世界恒久平和の達成に貢献いたしており、各国
政府も自国赤十字社を公認し、種の特権と便宜を與え、その発展振興に当
つておりますことは、御
承知の
通りであります。
ことに、昨年九月平和條約調印の際、
日本は平和條約発効後一年以内に、千九百四十九年八月十二日の戰争犠牲者の保護に関するジユネーヴ諸條約に加入することを
世界に宣言いたしましたことから、
日本赤十字社の制度をこの際すみやかに確立して、該條約受入れの態勢を整えますことは、平和を愛好する
わが国の真摯なる
態度を
世界に宣明するものであると深く信ずる次第であります。
従つて、
日本赤十字社に対し、その所期する活動を期待いたしますためには、現在のような民法上の一般社団法人として運営せしめることなく、
日本赤十字社の性格とその実態に即し、特殊法人としての法的根拠を與え、国の指導援助のもとに、強力にしてかつ健全な運営をはからしめることが最も緊要であると信ずる次第であります。
以上が
日本赤十字社法案提案の理由であります。
本法案の内容のおもなる点について申し上げますれば、第一に、
日本赤十字社は、赤十字に関する諸條約等の精神にのつと
つて、赤十字の理想とする人道的任務の達成に当ることを目的とすることにいたしたのであります。
第二に、
日本赤十字社の国際的な性格にかんがみ、その運営の成否は国際信用の土に至大の関係を持つものでありますので、国際赤十字の一員としてその本来の使命を果すよう、国際協力の原則を規定したことであります。
第三に、
日本赤十字社に対する国の立場を明らかにしたのであります。
日本赤十字社の活動は、赤十字條約の規定に基き、篤志赤十字機関として国の赤十字に関する條約業務に奉仕し、平時においては健康の増進、疾病の予防及び苦痛の軽減等のための国家的施設を補足するものでありますから、国は
日本赤十字社によ
つて実施せられるこれらの役割に対し、その代償として必要な特権と便宜を與え、また物心両面にわたる援助をなすことといたしたのであります。しかしながら、他面、
日本赤十字社の役員の決定、その他運営の本質に直接関係ある事項につきましては、赤十字国際
会議において決議せられた諸原則を
尊重し、またその国際的な性格から考えて中立性を保持せしめる必要より、その自主性を重んじ、不当な関與はこれを避けしめることといたしたのであります。
第四に、
日本赤十字社淡現在なお一千三百万人に及ぶ社員を擁する全国的組織の社団たる性格にかんがみ、その基盤たる社員について一章を設け、その資格、加入、脱退並びに
権利義務等を明確ならしめておるのであります。
第五に、
日本赤十字社の業務を明らかにするとともに、赤十字に関する條約に基く業務並びに非常災害時または伝染病流行時における非常救護のために必要とする
看護婦等救護要員の確保について、必要な
看護婦の養成等に関する事項を規定したことであります。
次に、
日本赤十字社の行う事業に対し、国または地方公共団体が助成の道を講じたことであります。
日本赤十字社は、その性格から、社員の醵金により維持経営せられるのが理想でありますが、非常救護のための救護班の派遣、病院、
診療所及び療養所の施設、あるいはまた救護員の養成等のためには多額の費用を要することが予想せられるのでありまして、單に社員の醵金のみをも
つては、とうていまかなうことができないのみならず、これらの業務はいずれも国家的施設の補足をなすものでありますので、これらの費用に対して、国または公共団体は、あるいは補助金を支出し、あるいは有利な條件で貸付金を支出し、または財産を讓渡貸付できることとして助成することにいたしたのであります。
最後に、
日本赤十字社は、その本来の業務に必要な資金について寄附金を募集し得る旨の規定を設けたのであります。
日本赤十字社がその業務を行うに必要なる経費につき、社員の醵金で不足する分については、従来いわゆる白い羽募金を毎年一回定期に実施して参
つたのでありますが、これについては、社会福祉事業に要する経費を除いた
日本赤十字社本来の業務に必要な募金を行う場合には厚生大臣へ届け出ることといたし、さらに特別の事情に基ことといたし、さらに特別の事情に基き必要な経費に充てるため臨時に実施する寄付金募集については厚生大臣の許可を受けることといたしたのであります。
本法案に関しましては、その重要性にかんがみ、五月十六日特に小
委員会を設け、連日
会議を開いて調査研究に当
つたのでありますが、その間しばしば
日本赤十字社副社長以下の関係者、中央共同募金
委員会関係者等を参考人とし招致し、
日本赤十字社の組織、運営その他各般の問題について慎重審議が続けられたのであります。
かくして成案を得ましたので、本月七日、
日本共産党を除く各派の共同提案をも
つて本
委員会に付託せられ、十日、
提案者を代表して私より提案理由の説明を聽取した後、ただちに審議に入り、引続き十一日の
委員会において、
日本赤十字社の目的、性格、本支部の機構、救護員の養成、寄付金募集等の諸点について、きわめて熱心なる質疑応答が行われたのでありまするが、その詳細については
会議録によ
つて御
承知願いたいと存じます。
かくして質疑を打切りましたところ、自由党の
中川委員より寄付金募集の点につき修正案が
提出せられたのであります。その要旨は、
日本赤十字社の事業に必要なる経費は、原則としてまず社員の醵出金でまかなうのが当然であり、その不足ある場合に限り募金を認めることとすべきであるが、それも当分の間に限るべきである、その意味において、本法案の第三十六條及び第三十七條を附則に移し、これに伴う條文字句の整理をしようとするものであります。
次いで、右の修正案並びに修正部分を除く原案について討論に入りましたところ、
日本社会党を代表して岡委員、
日本社会党第二十三控室を代表して福田委員より、それぞれ希望を述べて
賛成意見の開陳があり、
日本共産党を代表して苅田委員より
反対意見が述べられたのであります。
右をも
つて討論を終り、ただちに修正案につき採決に入りましたところ、
日本共産党を除く多数をも
つてこれを可決し、次に修正案を除く原案について採決しましたところ、これまた同様多数をも
つて原案
通り可決すべきものと決した次第でございます。
以上御報告申し上げます。(
拍手)