○河原伊三郎君 ただいま
議題となりました
地方自治法の一部を
改正する
法律案につきまして、
地方行政
委員会における
審議の
経過並びに結果の概要を御
報告申し上げます。
まず最初に本法案の内容の概略を申し上げたいと思います。そもそも
政府が今回の
改正を意図したゆえんのものは、
政府の説明するところによりますれば、新
憲法とともに自治法が施行せられてより本年でちようど満五年、時あたかもわが国が
独立の日を迎えることになりましたので、この機会におきまして、本法施行の既往の実績と、いまだ脆弱の域を脱せぬわが
地方自治の現状並びに
独立後の新情勢とに深く思いをいたし、
地方自治の基盤をいよいよ確実にするとともに、
国民負担の軽減をはかり、さらに進んで
地方自治の運営における不合理を是正して、
地方自治に対する信頼の念を高めようとするにあるのであります。従いまして、本法案の内容は複雑かつ広範囲にわたり、また相当画期的な
改正を含んでおりますが、
改正の目標としては大よそ次のごとき主眼点を持
つておるのであります。
その第一点は、
地方公共団体の自主的な
事務処理を保障することにより、
地方自治の強化をはかるとともに、その運営の合理化に役立たせようとした点であります。その第二点は、
地方公共団体の組織及び運営の簡素化及び能率化をはか
つた点であります。その第三点は、
地方公共団体の組織及び運営の合理化をはかる点であります。
以下、
改正の主要事項を具体的に列挙いたしますれば、まず
改正目標の第一点に属する事項といたしましては、
地方公共団体及び
地方公共団体の執行機関に処理を義務づけている事務並びに
地方公共団体に設置を義務づけている行政機関及び
職員等をすべて別表として
地方自治法中に掲げることとし、現在おびただしい数に上
つている
地方団体及びその機関に対するいわゆる委任事務や必置行政機関及び
職員等を一目瞭然たらしめ、も
つて地方公共団体の自主的な
事務処理の確保に便ならしめたこと、また
地方公共団体または
地方共
公団体の機関に事務を委任し、または
経費を負担さるには必ず法律またはこれに基く政令によらなければならないこととし、従来総理府令、法務府令、省令その他の政令以外の命令によ
つて委任し、または負担させてお
つたものについては、ひの法律施行後一年以内に、法律については必要な
改正の
措置をとらなければならないこととし、総理府令、法務府令、省令その他の政令以外の命令については、法律に基く政令に改めなければならないこととして、
地方自治の保障をさらに厚くすることとしたこと、さらに議員定数の定め方その他
地方公共団体の組織についても、その組織及び運営の簡素化に努めつつも、なお
地方公共団体が自主的にこれを決定し得る建前を基本とすることに改めて、
地方の自主性の確保をはかることができるような配慮を加えたことなのであります。
次に
改正目標の第二点に属する事項といたしましては、まず
地方公共団体の議会については、第一に、議員の定数の法定主義を改めて、法律には議員定数決定の場合の基準のみを定め、議員定数は
地方公共団体が條例で自主的に定めることができるようにするとともに、法律に掲げる基準定数はおおむね戰前の定数に近いものとし、第二に、議会制度合理化の
措置として、定例会制度を通常会制度に改めるとともに、議員より臨時会招集の請求のあ
つた場合には、都道府県にあ
つては三十日、市町村にあ
つては二十日以内に必ずこれを招集しなければならないものとし、さらに議員全員の改選または長の更送のあ
つた場合には必ず臨時会を招集しなければならないものとしたこと。
次に
地方公共団体の執行機関については、まず第一に、都道府県の局部に関し、現在法律上必置の局が七、部が六で、事実上は任意設置を含めて六ないし十二の局や部が設けられているのを、人口段階別に最低四部、最高八局部の基準を法定することに改め、都道府県知事は條例で局や部の数を増減し、局部の名称または所掌事務を変更することができることとしたこと。
第二に、都道府県の副知事及び副出納長並びに市の助役の設置を任意制に改め、
選挙管理
委員は都道府県及び五大市にあ
つては四人、その他の市及び町村にあ
つては三人とし、四人の監査
委員を置くことができる市は政令で指定する市に限ることとしたこと。
第三に、各種
委員会の
委員及び監査
委員は非常動を建前とすることに改め、
地方公共団体の長と
委員会との協力関係に関すも規定を整備して、
委員会の事務局または出先機関等の簡素化に資しようとしたこと。
第四に、
地方公共団体がその事務を共同処理し、もしくは他の
地方公共団体に委託し、または行政機関もしくは
職員等を共同設置することによ
つて、その組織及び運営の簡素化及び能率化をはかることができるようにするため、新たに
地方公共団体の協議会、
地方公共団体の機関または
職員の共同設置及び
地方公共団体の事務の委託に関する手続その他の規定を設けることとしたこと。
さらに、大都市行政に関しては、特別市の行政区及び都の特別区の区長の公選制を廃止するほか、都については、さらに特別区の
性格、都区の間における事務の配分、都区の関係の調整の方法等に
改正を加えて、二軍機構、二重行政的の弊を排除し、大都市における行政の統一的かつ能率的な処理をできるだけ確保しようとしたこと。すなわち、特別区については、その実態に即するように、大都市の内部的部分団体としてその
性格に変更を加えて、都と特別区の一体的関係を明確にするとともに、特別区の区域内の都民に身近な事務は原則として特別区が処理することとし、都及び特別区間並びに特別区相互間の
事務処理の一体化をできるだけ確保すると同時に、特別区の
性格にかんがみ、その自治権との調和をはかるため、区長の公選制度を改めて、都知事が、特別区の議会の議員の
選挙権を有する年齢満二十五年以上の者について、特別区の議会の同意を得て選任することに改めようということであります。
最後に、
改正目標の第三点に属する事項といたしましては、まず市町村の規模の合理化について、都道府県知事に市町村の廃置分合または境界変更の計画を立て、これを関係市町村に勧告する権限を認めることとし、この勧告に基く市町村の廃置分合または境界変更については、国の関係行政機関にこれを促進するため必要な
措置を講ずべき義務を課することとしたこと。次に市町村の境界に関する争論その他
地方公共団体相互の間または
地方公共団体の機関相互の間における紛争を、なるべく当事者の互讓により円満かつ迅速に解決するために、自治紛争調停
委員を設けることとし、これは常置の制をとらず、
事件ごとに任命する臨時の機関としたこと。さらに、国と
地方公共団体との間の合理的な協力関係設定の必要上、
地方公共団体の自主性を尊重しつつ、国または都道府県がその有する技術、知識、経験等をも
つて、できるだけ
地方公共団体に協力する態勢を確立するため、主務大臣並びに都道府県知事及び都道府県の
委員等に技術的な助言、勧告、情報提供等、非権力的な関與を認めることとしたことであります。
以上が本法案の内容の概要でありますが、これらの
改正点は、いずれもさきに行政事務の再配分に関して
政府及び
国会に対してなされた
地方行政調査
委員会議の勧告の
趣旨により、あるいは政令諮問
委員会の答申または
地方行政簡素化本部における研究の成果等に基き、
政府当局が現段階において比較的早急に実施すべき
改正として立案したものでありまして、爾余の
地方制度の全般にわたる根本的改革に至りましては、近く設置せられることにな
つている
地方制度調査会の愼重な調査研究をま
つて立案しようとの意図を持
つているのであります。
さて、本法案は、去る四月二十三日
地方行政
委員会に付託せられたのでありますが、本
委員会は、同月二十五日、岡野
国務大臣から提案
理由の説明を聽取、爾来一箇月余、ほとんど連日
委員会を開き、
委員と
政府当局との間には熱心な質疑応答が行われ、その間、五月十九日には、東京都議会
議長菊池君外十三人に及ぶ関係各界代表者、学識経験者等を招いて公聽会を開き、同月二十三日には茨城県知事友末君外七人の
地方公共団体の理事者及び議会のそれぞれの
全国的代表者等を参考人として招致してその意見を聽取するなど、本法案の
重要性にかんがみ、きわめて愼重に
審議を重ねたのであります。
審議の過程における質疑応答や論議の詳細は、複雑多岐にわたりますので、すべて
会議録についてごらんを願うこととし、ここには論議の中心となりました若干の点について御
報告いたすにとどめたいと存じます。
まず第一に、総括的質疑といたしまして、今回の
改正案を大観するとき、
政府の将来における自治行政に対する考え方が織り込まれているように見受けられるが、
政府ははたしていかなる見解をも
つて本案を立案したか、またどこに将来の自治行政の基礎を置くか、
地方議会の議員定員の低減といいい、特別区の区長の任命制といい、あるいはまた都道府県の部局制に関する
政府に対する協議、そのほか市町村の廃合や境界変更に関する都道府県知事の勧告、監査
委員や
選挙管理委員会の設置問題等を通じて、
政府は
地方行政の簡素合理化の名のもとに、むしろ
地方自治を圧縮し、中央集権に逆行せしめる意図を包蔵するものではないかという質疑があ
つたのでありますが、これに対して
政府は、今回の
改正は、神戸
委員会並びに政令諮問
委員会を参考にすると同時に、
地方の行政簡素化ということを主題として立案したもので、この
地方の行政簡素化ということに非常に重点が置かれており、
政府としては、あくまでも市町村を基礎として、
民主主義の基盤たる自治行政の完全なる発展を期しておるのであ
つて、ただ
地方行政の組織及び運営を
独立後のわが国の現状に即応せしめ、合理化し、これによ
つて地方自治運営の不合理、不
経済等に名をかりて
地方自治に対する不信の声の台頭するのを避けようとしたものである旨の答弁があ
つたのであります。
次に
地方議会に関する問題といたしましては、議員の定数を減少するほか、定例会制度を廃して通常会と臨時会の制度をと
つたことは
地方行政における住民の意思の発現の機会を少からしめ、議会活動を
制限して、
民主主義の進展をはばむものではないかとの論議があ
つたのでありますが、議員定員は、これを機械的一律に法定するものではなく、人口数に段階を設けて、ただ基準となるべき数を示すにとどまり、
地方は條例をも
つて、その実情に応じて増減し得るものであり、また議会の臨時会はその必要に応じて何回でも開き得るもので、議員の側からも招集を請求し得るものであるから、かような心配はなく、かえ
つて地方の自主性を拡大し、議会制度運営の合理化をはか
つたものである旨
政府は答弁をいたしたのであります。
さらに都道府県における部局の定めにつきましては、行政機構の改革は、單に機構の変改をなすのでは意味をなさず、住民の側から見て真に簡素であり能率的でなくてはならぬから、また
地方ごとに違
つた事情もあるから、むしろ
政府が
地方に干渉がましい、いわゆる機構いじりをなすべきではないとの論、及びこれとは
反対に、現在の府県庁の機構は頭が大き過ぎ、末端が貧弱であるような情景を呈しているから、徹底的な縮小を行う必要があると考えるが、
政府は何ゆえこれを強行規定としなか
つたかとの説があ
つたのでありますが、
政府はこれに対し、現在の実情は、府県の大小や財政、産業等にはなはだしい差があるにもかかわらず、大体同じような部局を持
つており、現行法の必置部局制と任意部局制では、十分に
地方の実情に適合させ、一面簡素化をもはかりたいので、これを改めて、標準部局を法律に掲げ、その決定は
地方の自主性を尊重してこれを任意にしたのであ
つて、自己の都道府県の組織をいかように簡素化するか、あるいは合理化するか、また能率化するかということは、できるだけ各
地方団体の自主性によ
つて決定せしめるようにすることが
地方自治の本旨にも合するゆえんであると考えるとの答弁を行
つたのであります。
最も論議の対象となりましたものは、特別区長の任命制の問題であります。すなわち、東京都における都と区との関係の現状にかんがみ行政の簡素合理化ないし大都市行政の一元的統一の見地から、特別区の区長は、区民の中から、区議会の同意を得て都知事が任命するように改めようとすることに対しまして、これは
憲法第九十三條第二項の、
地方公共団体の長はその
地方公共団体の住民が直接
選挙するという規定との関係において直接
選挙制でなくすることはいかがであるか、またこの点に関連して、特別区の
性格ははたしていかなるものであるか、区長の任命制はやがて府県知事の任命制につながるもりではないか、また都と区との関連において、都民の自治行政はどの段階において行わせようとするのか、区民が区長に親しみを持
つて初めてよい自治
政治が行われるのであるから区長は公選制が望ましく、また事務能率の向上、行政の簡素化のためにも、現在の区を自治区と認め、できるだけ区民に近接する事務を区に委讓することが望ましい、さらに進んで、将来府県制を根本的に検討する場合には、特別区は、現行自治法第一條のいわゆる特別
地方公共団体のわくをはずして、むしろ普通
地方公共団体に組みかえた方がよいとの論議があ
つたのであります。
政府は、これらの問題に対し、次のような見解を明らかにしました。まず
憲法問題については、
憲法がその長の直接
選挙制を
要求しているのは、都道府県、市町村のごとき普遍的、基礎的な
地方公共団体を意味するのであ
つて、特殊な
性格を有する
地方公共団体に対して、一律に公選制の原則を適用することを
憲法は意図していない、都区の関係においては、都の区域全体が基盤的な
地方公共団体であ
つて、都の長である都知事の公選は絶対に必要な原則であるが、都のもとにおける特別な
地方公共団体であるところの特別区について、その長を直接
選挙にするかいなかということは、
憲法上の問題というよりも、自治政策上の問題であ
つて、都という
一つの大都市社会の実態に最もよく合致するような制度を自治法上に考えればよいと考える。従
つてこの
改正も
憲法に違反するものではない、特別区の
性格は自治区ではあるが、基礎的、普遍的な
地方公共団体ではなく、
制限された権能を持つ特別な
地方団体である、沿革や
現実から見て、もとより單なる行政区ではないが、さりとて、これに一切の権限を大幅に與えて完全自治区の方向に進めることは、能率的にも、財政的にも、大都市の一体性から見てとり得ないところである、また区長任命制は、特別市の市長や都道府県知事の任命制とは何のかかわりもないことであ
つて、特別市は、本来一般の市よりもさらに強い権限を持
つた市であり、府県とともに基礎的な
地方公共団体であるから、それらの長の任命は性質上不可能なことであり、また
政府としては、さような意図は毛頭持つものではないと述べたのであります。
最後に、今後の自治行政の展望に関する問題として、現在
地方行政において大きな部分を占める委任事務については、その相当分量はむしろ固有事務に移して、自治行政の対象とした方が
民主主義の建前上よいのではないか、また今回の
改正では單に議員の定数減や機構の縮小が考えられているが、
地方団体が真に自主的に自己の責任において事務を執行するには、どうしても財政的に責任を持ち得る形式が必要である、現行の平衡交付金あるいは
地方税制、さらに起債等の取扱いは自主的運営の余地が非常に少いから、われわれの負担というものと、
地方団体の機構というものとの関連性をもつと明確ならしめる必要がある、また国と市町村との中間機関としての府県の
性格をいかに考えるか等の論に対しましては、
政府は、できるだけ
地方に対する委任事務を制圧して、委任でなければ性質上できないもののみを残し、
地方に委讓し得るものは全部その固有事務に順次まかせて行きたい、今回の
改正法案において、
地方に委任されているようなものを全部別表に掲げて、自治法上に総括的に明示し、今後は
国会の定める法律によらなければ
地方に事務を委任されないとしたのもその
趣旨であること、また自治行政における財政どの関連は、單に
地方税のみならず、国税との関係もあり、卒衡交付金その他
地方制度の全般については、これを総合的に検討すべきであり、府県のあり方と道州制、市町村の適正規模等、これら問題の一切はあげて
地方制度調査会にまつべく、その目的のためにこの調査会を設置しようとするものであるとの答弁をいたしたのであります。
かくて、昨六月六日質疑を終了したのでありますが、本法案は、以上のように幾多の重要な問題点を含んでおりますので、
審議の過程において、
委員の間に本法案に対する
修正の議が進められ、
討論に先だち、野村
委員より、
自由党、改進党の両党共同提案になる
修正の
動議が提案せられたのであります。
修正案の内容は次の
通りであります。
修正の第一点、
地方議会制度に関連いたしましては、まず議員の基準定員に関する
改正規定を削除して、議員定員数は現行
通りとする。但し、都道府県の議会の議員の定数についても、條例をも
つてこれを減少することができることとするように改める。次に、通常会、臨時会に関する
改正規定を改めて定例会と臨時会の現行制度を存置することとし、ただ定例会の開催回数は、現行の毎年六回以上招集を毎年四回招集に改めることとする。さらにこれに関連して、普通
地方公共団体の長は、おそくも
年度開始前、都道府県及び五大市にあ
つては三十日、その他の市及び町村にあ
つては二十旧までに当該
年度予算を議会に
提出するようにしなければならない旨を定める規定を新設する。
修正の第二点、都道府県における事務分掌の局部の制度に関連いたしましては、まず都の置くべき標準部局の中に主税局、港湾局の二局を加え、それぞれ税務行政、港湾行政を所管せしめることとする。また道及び人口二百五十万以上の府県には建築部を置き、住宅及び建築に関する事項を分掌せしめることとする。
修正の第三点、特別市に関する
改正規定を削除または改めて、特別市の行政区の区長及び
選挙管理委員会は現行法
通りとする。すなわち、区長は公選、
選挙管理委員会は存置するものとする。
修正の第四点、特別区に関する問題につきましては、まず区長の任命制に関する
改正規定を改めて、区長は特別区の議会が都知事の同意を得てこれを選任することに改め、なおこの法律施行の際、現にその職にある特別区の区長は、
改正後の本法のこの規定にかかわらず、その任期中に限りなお従前の例によ
つて在職するものとする。
次に、特別区の名称に関する第二百八十一條第一項の
改正規定を改め、現行法
通りとし、同條第二項に掲げられたる事務、すなわち特別区が処理すべき公共事務及び行政事務として
改正法案が新たに法定した事務の中に、現在特別区が処理しているところの診療所、小売市場、共同作業場を設置し、及び管理することを加えることとする。
また都は、特別区に属する事務及びその区長または
委員会もしくは
委員の権限に属する事務の処理または管理もしくは執行に要する
経費の財源について、政令の定めるところにより、特別区の意見を聞いて、條例で都と特別区及び特別区相互の間の調整上必要な
措置を講じなければならないこととするため新たな規定を設ける。
なお、特別区が現に有する競馬法第一條の指定は引続きその効力を有するものとするため、競馬法の適用については、当分の間、市は特別区を含むものとする旨本法案附則の
改正條項を改める。
その他字句の整理等法文の整備を行う。
右の
修正案について
趣旨の弁明があり、次いで門司
委員より、
日本社会党、
日本社会党第二十三控室及び社会民主党の三党共同提案になる
修正案が提案され、その
趣旨弁明があ
つたのでありますが、その内容は次の
通りであります。
一、市の廃置分合をしようとするとき、都道府県知事は、内閣
総理大臣に、あらかじめ協議をしなければならないことにしようとする第七條の
改正規定を改めて、この協議を要しないものとする。
二、所属未定地の編入に関する内閣の処分権を定めた第七條の二の
改正規定を削除する。
三、市町村の規模の適正化をはかるための都道府県知事の勧告権に関する第八條の二の
改正規定を削除する。
四、市町村の境界に関する争論が調停または裁定によ
つて解決し、市町村の境界が確定した場合の効力の発生を内閣
総理大臣の告示にかからしめている第九條第七項の
改正規定及びこれを準用している第九條の二第六項の
改正規定中「及び第七項」を削る。
五、
地方議会の議員の定数に関する第九十條、第九十一條の
改正規定を改めて現行
通りとする。但し、都道府県の議会の議員についても條例をも
つてその数を減少することができることとする。
六、
地方議会の定例会及び臨時会に関する第二百條の
改正部分を削り現行
通りとする。
七、第百五十八條の
改正規定を改めて、都の置くべき局として主税局と港湾局の二を加え、道及び人口二百五十万以上の府県に建築部を置くこととする。
八、特別市の行政区の
選挙管理委員会はこれを現行
通り存置するため、第二百七十條の
改正に関する部分を削除する。
九、特別区の区長の選任に関する第二百八十一條の二の
改正に関する部分を創る。
十、第二百八十二條の二として一條を新設して、「都は、特別区の処理する業務に要する財源について、特別区との協議により、充分な財源を確保できるように財源
措置を講じなければならない。」と定める。
十一、
改正前の規定により設けた都道府県の局部のうち、道における建築部並びに府県における農地部、労働都及び建築部については、なお従前の例により存続させることができるものとし、都道府県におけるその他の局部については、この法律施行の日から起算して五月以内に限り、なお従前の例により存続させることができるものとするため、附則第七項をそのように改める。
以上
二つの
修正案に対する質疑応答があり、次いで、これらの
修正案並びに原案を一括して
討論に付しましたが、大泉
委員は
自由党を、床次
委員は改進党をそれぞれ代表して、ともに自由、改進両党の共同提案になる第一の
修正案並びにこの
修正部分を除く原案に
賛成、第二の
修正案には、第一の
修正案と共通する部分を除いて
反対の意を表され、大矢
委員は
日本社会党を、八百板
委員は
日本社会党第二十三控室を、さらに大石
委員は社会民主党をそれぞれ代表して、三党共同提案になる第二の
修正案に
賛成、これと一致する部分を除く第一の
修正案に
反対、従
つて第一の
修正案の
修正部分を除く原案に
反対の意を表されました。
次いで採決に入りましたが、まず
二つの
修正案の共通部分については
賛成総員をも
つて可決され、次にこの共通部分を除く第二の
修正案は
賛成少数をも
つて否決されました。この共通部分を除く第一の
修正案は
賛成多数をも
つて可決され、最後にすでに
修正可決と議決せられた部分を除く原案は
賛成多数をも
つて可決せられました。
かくて本法案は
修正議決すべきものと議決せられた次第であります。
右御
報告申し上げます。
次に、ただいま
議題となりました
警察官等に協力援助した者の
災害給付に関する
法律案につき、
地方行政
委員会における
審議の
経過並びに結果の概要を
報告いたします。
まず
本案を
提出いたしました
理由は、職務によらないで、国家
地方警察の
警察官または市町村
警察の
警察吏員に協力援助し、災害を受けた者に対して、国または
地方公共団体が療養その他の給付を行う制度を確立せんとするものであります。
警察に協力援助して災害を受けた者に対する給付は、従来、明治十五年太政官達第六十七号「一般人民二シテ巡査同様ノ働ヲナシ死傷セシ者ノ弔祭扶助療治料支給方」によ
つて行われて来たのでありますが、この太政官達は、
日本国憲法の施行に伴
つてその効力を失うことと
なつたのでありまして、現在それにかわるべきものがなく、
警察官または
警察吏員に協力援助して、そのために災害を受けても、それについての法的の救済方法が確定していないため統一を欠いて、と
かく紛議をかもしやすく、その実効性を欠いているのであります。そこで、これら
警察官等に協力援助して、そのため災害を受けた者について、その本人及び遺族に対して必要と認められる給付を行い、これら
警察に協力、援助したことに対する公的な救済手段をとる必要があると存ずるのであります。
次に、
本案の内容について簡單に説明いたします。この法案は、本文十三條及び附則一項からな
つております。
まず第一條は、この法律の目的について定めてあります。
第二條は、職務執行中の国家
地方警察の
警察官または市町村
警察の
警察吏員が援助を求めた場合、その他これに協力援助することが相当と認められる場合に、職務によらないで、当該
警察官等の職務遂行に協力援助した者が、そのため災害を受けました場合に、国または
地方公共団体がその療養その他の給付をする責めに任ずることを規定したものであります
第三條は、給付を行う者について定めたのであります。すなわち、協力援助者が、一、国家
地方警察の
警察官に協力援助した場合、二、都道府県公安
委員会の
要求により援助におもむいた自治体
警察の
警察吏員に協力援助した場合、三、国家非常事態の布告のあ
つた際において、派遣を命ぜられて職務を執行する自治体
警察の
警察吏員に協力援助した場合には国が給付を行うこととし、二、三以外の場合における自治体
警察の
警察吏員に協力援助した場合には当該
地方公共団体が給付を行うことといたし、あわせて、自治体
警察相互間の援助の際には、援助を
要求した
地方公共団体において給付を行うことといたしたのであります。
第四條は、この法律に基き給付を実施する機関として、国が行うべき給付の実施機関は国家
地方警察本部とし、
地方公共団体が行うべき給付の実施機関は、当該
地方公共団体が條令で定めることとしたのであります。
第五條は給付の種類について規定したものでありまして、すなわち、一、療養給付、二、障害給付、三、遺族給付、四、葬祭給付、五、打切給付の五種類といたし、特に必要がある場合には休業給付をすることができるといたしたのであります。
第六條は、本法により国の行う給付の範囲、金額及び支給の方法その他給付に関し必要な事項は国家公務員災害補償法の規定を参酌して政令で定めることといたしたのであります。
地方公共団体が行う給付の範囲については、当該
地方公共団体がこの政令の規定に準じて條例で定めることとしたのであります。
第七條においては、国または
地方公共団体がこの法律に基く給付を行
つたときの損害賠償の免責について規定し、第八條において給付を受けるべき者が、他の法令による給付または補償を受けたときは、その限度においてこの法律に基く給付の責めを免れるものとし、かつ第三者より損害賠償を受けたときは、その価額の限度においてこの給付の責めを免れるものとし、あわせて第三者に対する損害賠償の請求権の取得について規定したのであります。
次に第九條ないし第十三條において、時効、給付を受ける権利の保護、非課税及び戸籍の無料証明について、他の災害補償の法律の規定に準じて本法に規定することとしたのであります。
最後に附則において、この法律の施行の日を公布の日から三月を
経過した日からとしたのであります。
以上が
本案の
提出理由及びその内容の
大要であります。
本案は、五月三十日、
川本末治君外八名から衆法第五十六号として
提出せられ、同日、本
委員会に付託せられました。本
委員会においては、六月二日
委員会を開いて、
提出者から法案
提出の
理由を聽取した上、引続き質疑応答を行い、
愼重審議の結果、六月六日質疑を打切り、同日
討論採決の結果、多数をも
つて原案の
通り可決すべきものと議決いたした次第であります。
右御
報告申し上げます。(
拍手)