○仲内憲治君 ただいま
議題となりました
国際植物防疫條約の
締結について
承認を求めるの件、千九百二十三年十一月三日に
ジユネーヴで署名された
税関手続の
簡易化に関する
国際條約及び
署名議定書の
締結について
承認を求めるの件、
国際復興開発銀行協定への
加入について
承認を求めるの件、
国際通貨基金協定への
加入について
承認を求めるの件、
外国の
領事官に交付する
認可状の
認証に関する
法律案の四條約案件並びに一
法律案に関する外務
委員会における
審議の
経過並びに結果について
報告申し上げます。
〔
議長退席、副
議長着席〕
上述の第一、第二の條約案件は五月七日、第三、第四の條約案件は五月八日、第五の
法律案は五月十日にそれぞれ本
委員会に付託されましたので、本
委員会は数回にわたり慎重に
審議を重ねました。その
審議の
内容については、これを
委員会議録に讓ることといたしますが、五案件はいずれも
政府提出の案件でありますので、
政府当局の
説明と、本
委員会の
審議における
経過に基きまして、各案件の概要について申上げることといたします。
第一に、
国際植物防疫條約の
締結について国会の
承認を求めるの件につきましては、この條約は、わが国が昨年末
加盟いたしました国際連合食糧農業
機関の提唱によ
つて作成されたもので、昨年十二月六日にローマで
関係各国が署名し、現在まで三十国が署名を了しております。この條約は三署名
政府の批准書の寄託と同時に効力を発生することとな
つており、すでに本年四月三日にセイロン、スペイン及びチリーの間で効力を発生しております。
この條約の
目的とするところは、植物の病害虫の防除を国際的協力によ
つて促進することでありまして、そのために、国際取引に関連する植物及び植物生産物に対する防疫
事業の強化、統一された植物検疫証明書様式の採用、植物の病害虫の発生状況に関する情報の交換等の実現をはかるものであります。わが国は、この條約に
加入して、植物の病害虫の防除に関して国際的に協力することがはなはだ有意義であると認め、昨年十二月六日にこの條約に署名したものであります。
第二に、千九百二十三年十一月三日に
ジユネーヴで署名された
税関手続の
簡易化に関する
国際條約及び
署名議定書の
締結について
承認を求めるの件につきましては、この
国際條約及び
署名議定書は、一九二三年、すなわち大正十二年十一月三日に
ジユネーヴで署名されたものでありまして、その
加盟国は三十六箇国に上
つております。この條約及び議定書は、
税関手続の
簡易化をはかることが通商の公平な待遇を実現する重要な手段であることにかんがみ、
税関手続の
簡易化及び公平なる適用並びに関税率及びその関税規則の公表について国際的に協力することを
目的として作成されたもので、すでに公私の貿易及び通商において国際的に
承認された公正な慣行とな
つております。
わが国は、大正十三年三月十七日にこの條約に署名し、その後歴代の内閣はしばしばこの條約の批准方を奏請したのでありますが、その都度、内閣更迭等の事情により、その奏請は返戻されて、今日まで批准されるに至らなか
つたのであります。わが国は昨年九月八日に、サンフランシスコにおいて、この條約及び
署名議定書に
加入することを宣言しておりますから、これに
加入することはわが国の国際信用を高めるゆえんであります。
第三に、
国際復興開発銀行協定は、
国際通貨基金協定と同様に、ブレトン・ウツズの連合国通貨金融
会議に基くものでありまして、同協定に基いて、一九四六年三月、
国際復興開発銀行の創立総務会が、米国
政府の招請により、
国際通貨基金の創立総務会と合同で、米国ジヨージア州サヴアンナで開かれ、同年六月二十五日より業務を開始しているのであります。
銀行及び
基金は、いずれも
戰後の国際経済の秩序ある発展をはかるために設立せられた国際経済
機関でありまして、
基金が主として経常的な国際決済に関する比較的短期の国際金融操作を
目的とするのに対し、本
銀行は比較的長期にわたる国際投資等を促進しようとするものでありまして、特に今次の戰争によ
つて破壞せられた世界経済の復興及び戰時経済から平時経済への円滑な移行をその主たる
目的としているのであります。従いまして、本
銀行の
目的とするところは、一、
加盟国の復興及び開発を援助すること、二、民間投資を保証し、またはこれに参加して、民間の対外投資を促進すること及び直接
貸付を行うことによ
つて民間投資を補足すること、三、
加盟国の生産資源の開発のための国際投資を助長し、それによ
つて、その領域内における生産性、生活水準及び労働條件の向上を援助することにより国際貿易の発展及び国際收支の均衡維持を促進すること、四、
銀行が行い、または保証する
貸付について、有用度及び緊要度の高い
事業計画が優先処置を受けるように
措置すること、五、国際投資の
加盟国経済に及ぼす影響を適当に考慮して
銀行の業務を行うこと及び戰時経済から平時経済への円滑な移行を援助することとな
つておるのであります。
本
銀行への
加盟には、
国際通貨基金の
加盟国であることを條件としており、
加盟国たるの地位の取得及びその
手続は、本協定の第二條第一項、第十一條第二項に
規定するごとく、国内法の
手続を経て、本協定受諾の上は義務履行上遺憾の点なき旨を述べた文書を米合衆国
政府に寄託することにな
つておるのであります。本
銀行の
加盟国は、一九五二年一月三日現在において五十一箇国とな
つております。本
銀行への
加盟によ
つて、わが国、復興開発のための必要な外貨資金を直接
銀行から措り入れ、また
銀行の保証を受けて、民間の外資の導入の円滑をはかることのほか、わが国の国際経済社会への復帰に一歩を進めることができるものと思われるのであります。
わが国は、
銀行の定める條件に
従つて、
銀行への
加盟が容認されるならば、株式応募額の拂込みの義務を負うことになりますが、本協定第一條第五項によりまして、応募額二億五千万ドルの二〇%を拂い込むことになります。しかし、同條約第七項の
規定によりますと、応募額の二%、すなわち五百万ドルは金または
合衆国ドルで拂い込むことにな
つており、残余の一八%は自国通貨をも
つて所定の時期までに
銀行に拂い込まなければならないのであります。但し、自国通貨による拂込みのうち、
銀行が業務上必要としない
部分は、
政府またはその指定した保管所の
発行する
讓渡禁止かつ無利子で要求拂いを條件とする手形その他の債務証書をも
つてかえることができるのであります。応募額の残余の八〇%は、
銀行の借入資金または保証に基いて生じた債務を
銀行が弁済するために必要なときに限り拂込み請求が行われ、拂込国の選択により金、
合衆国ドルまたはその拂込み請求の
目的と
なつた
銀行の債務履行に必要な通貨のいずれかで行われることにな
つておりますが、八〇%の
部分の拂込み請求は、今までのところ行われていないのであります。なお、わが国の拂込額のうち、五百万ドルに見合う円資金十八億円は、二十七年度予算に計上した二百億円の
範囲内でまかなう予定とのことであります。
次に、第四の
国際通貨基金協定も、また前述の
国際復興開発銀行協定と同じく、いわゆるブレトン・ウツズ協定の一つでありまして、本協定は一九四五年十二月二十七日に効力を発生し、一九四六年十二月十九日に平価の第一次決定が行われ、この日において、一九四七年三月一日から為賛取引を開始することが各
加盟国に通知されておるのであります。新たにこの
基金に
加盟せんとするには、本協定第二條第二項によりまして、
基金が定める時期と條件に
従つて加盟することになるのでありますが、前記の時期及び條件は、申請の都度、総務会の決議によ
つて定められるのが従来の例とな
つております。新たに
加盟を申請する国は、申請書を
提出し、この申請が総務会により
承認された後に、その国内法に
従つてこの協定を受諾したこと及びこの協定に基くすべての義務を履行するため必要なすべての
措置をとつたことを述べた文書を米国
政府に寄託し、かつこの協定の原本に署名した日から
基金の
加盟国となることに
規定してあります。本
基金の
加盟国は、一九五二年一月三日現在五十一箇国とな
つております。
本
基金に
加盟することによ
つてわが国の受ける利益を考慮いたしますと、次の三点をあげることができようと思います。第一、
基金への
加盟は、わが国の国際経済社会への復帰の一環をなすものであ
つて、これによ
つてわが国の対外信用を高めるとともに、他の国際
機関への
加盟を容易にするものであり、特に
国際復興開発銀行は、
基金加盟国であることをその
加盟の條件としているのであります。第二、
基金の資金を利用することができる点でありまして、わが国の必要とする特定の外貨を一定限度内で
基金より買い入れることによ
つて、対外收支の一時的不均衡を調節することができる点であります。第三、国際通貨問題に対して正当な発言の機会を與えられることであります。
なお、わが国に対して
基金が定めた
割当額は二億五千万ドルとのことでありまして、わが国は、木協定第三條第三項の
規定に従いまして、その二五%、すなわち六千二百五十万ドルを金で、
残額を自国通貨で拂い込むことにな
つておりますが、
政府は
国際通貨基金、
国際復興開発銀行への
加盟について必要な国内的
措置、
加盟に関する諸
手続、協定に定められた寄託所の設定、金買上げ等を
内容とした
国際通貨基金及び
国際復興開発銀行への
加盟に伴う
措置に関する
法律案を本国会に
提出いたしておりますことは、かねて
諸君の御承知の
通りであります。
第五に、
外国の領事館に交付する
認可状の
認証に関する
法律案につきまして
報告申し上げます。
平和條約の効力発生に伴い、諸
外国から
領事官がわが国に派遣されて来ることとなりましたが、この
領事官の派遣につきましては、各
領事官が本国の元首や
政府から委任状を持
つて参りまして、これをわが国の
政府に
提出し、わが国の
政府からこの
領事官に
認可状または
認証状を交付することによ
つて正式にわが国における
領事官としての地位を獲得するというのが国際慣例とな
つているのであります。しかして、相手国元首の委任状を
提出した
領事官に交付する
認可状に対しては天皇が
認証することが従来の慣例でありました。しかるに、日本国憲法によりますと、その第七條において、天皇の国事に関する行為が列挙されておりますが、そのうちで、第五号には「全権委任状及び大使及び公使の信任状を
認証すること。」等を掲げ、さらに第八号には「批准書及び
法律の定めるその他の外交文書を
認証すること。」と定めてありまして、国際慣例によりまして
認証を必要とする外交文書に対する天皇の
認証につきましては、いずれも
法律によ
つてこれを定めることを予想しているので、特にこの
法律を設ける必要があるのであります。
政府当局に対する
質疑終了の後、まず第一に、
国際植物防疫條約の
締結について
承認を求めるの件を
議題となし、
討論を
省略、
採決の結果、本
委員会は本條約案件を全会一致をも
つて承認することに決定いたしたのであります。
第二に、千九百二十三年十一月三日に
ジユネーヴで署名された
税関手続の
簡易化に関する
国際條約及び
署名議定書の
締結について
承認を求めるの件を
議題となし、
討論に移り、それぞれ党を代表して、
自由党の北澤委員、改進党の並木委員及び
日本社会党の戸叶委員より
賛成の
意見、
日本共産党の林委員より
反対の
意見が述べられて、
討論を終結、
採決の結果、本
委員会は多数をも
つて本條約案件を
承認することに決定いたしたのであります。
第三に、
国際復興開発銀行協定への
加入について
承認を求めるの件、
国際通貨基金協定への
加入について
承認を求めるの件の両條約案件を一括
議題となして
討論に移り、それぞれ党を代表して、
自由党の北澤委員、改進党の並木委員及び
日本社会党の戸叶委員より
賛成の
意見、
日本共産党の林委員より
反対の
意見が述べられて、
討論を終結、
採決の結果、本
委員会は多数をも
つて両條約案件を一括して
承認することに決定いたしたのであります。
第四に、
外国の
領事官に交付する
認可状の
認証に関する
法律案を
議題となして
討論に移り、それぞれ党を代表して、
自由党の北澤委員、改進党の並木委員及び
日本社会党の戸叶委員より
賛成の
意見、
日本共産党の林委員より
反対の
意見が述べられて、
討論を終結、
採決の結果、本
委員会は多数をも
つて本案を
原案通り可決することに決定いたしたのであります。
以上御
報告申し上げます。(
拍手)